(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】体温計測用耳標及び体温データ管理システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20240402BHJP
A01K 11/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A01K29/00
A01K11/00 A
(21)【出願番号】P 2020050892
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田元 望
(72)【発明者】
【氏名】増原 裕久
(72)【発明者】
【氏名】三澤 太輔
(72)【発明者】
【氏名】一杉 晃男
(72)【発明者】
【氏名】新居 遼太
(72)【発明者】
【氏名】兼為 直道
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-298020(JP,A)
【文献】特開2010-259302(JP,A)
【文献】特開平07-201368(JP,A)
【文献】登録実用新案第3118465(JP,U)
【文献】特開2017-192353(JP,A)
【文献】中国実用新案第207979666(CN,U)
【文献】特開2014-180217(JP,A)
【文献】特開2005-224214(JP,A)
【文献】特開2003-333950(JP,A)
【文献】特開2020-027454(JP,A)
【文献】特開平03-009724(JP,A)
【文献】特開2008-011837(JP,A)
【文献】特表2019-519318(JP,A)
【文献】特開昭61-120026(JP,A)
【文献】特開2005-224617(JP,A)
【文献】特開2001-188553(JP,A)
【文献】特開2018-134137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A01K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳標タグと、前記耳標タグの脱落を防止する留め具と、を有し、
前記耳標タグ
に太陽電池が搭載され、前記太陽電池によって発電した電力によって、動物の体温を計測するための第1の温度センサを動作させ
、
前記第1の温度センサの近傍に接触センサを配することを特徴とする体温計測用耳標。
【請求項2】
前記第1の温度センサが、動物の外耳道に接触し、前記第1の温度センサと外耳道との接触部に固定部材を有する、請求項1に記載の体温計測用耳標。
【請求項3】
前記第1の温度センサがサーミスタである、請求項1から2のいずれかに記載の体温計測用耳標。
【請求項4】
前記第1の温度センサが赤外線センサであり、動物の外耳道に配置され、鼓膜周辺から外耳道にかけて放射される赤外線を検出する、請求項1から2のいずれかに記載の体温計測用耳標。
【請求項5】
前記太陽電池への水分の侵入を防止するための透明な封止部材を備える、請求項1から4のいずれかに記載の体温計測用耳標。
【請求項6】
前記留め具にも耳標タグが設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の体温計測用耳標。
【請求項7】
前記第1の温度センサと外気との間に、断熱部材を有する、請求項1から6のいずれかに記載の体温計測用耳標。
【請求項8】
前記耳標タグに、更に蓄電池が搭載され、前記太陽電池によって発電した電力を蓄電池に蓄電し、前記蓄電池に蓄電された電力により、前記第1の温度センサが動作する、請求項1から7のいずれかに記載の体温計測用耳標。
【請求項9】
前記耳標タグに、更に外気温度を計測するための第2の温度センサが搭載され、前記第2の温度センサは、前記太陽電池及び前記蓄電池の少なくともいずれかの電力により動作する、請求項8に記載の体温計測用耳標。
【請求項10】
前記耳標タグは、耳殻を貫通可能な槍状部を有し、前記留め具は、前記槍状部を差し込むことによって前記耳標タグの脱落を防止し、
前記第1の温度センサが、前記槍状部に設けられ、前記槍状部を動物の耳殻に貫通させることにより、前記第1の温度センサが耳殻の内部に配される、請求項1に記載の体温計測用耳標。
【請求項11】
体温計測用耳標を用いた体温データ管理システムであって、
前記体温計測用耳標は、耳標タグと、前記耳標タグの脱落を防止する留め具と、を有し、
前記耳標タグに、太陽電池と、前記太陽電池によって発電した電力によって動作する、動物の体温を計測するための第1の温度センサと、外気温度を計測するための第2の温度センサと、が搭載され、
前記第1の温度センサによって計測された第1の温度データを、前記第2の温度センサによって計測された第2の温度データによって補正を行い、外気温度の影響を加味した動物の体温データを提供することを特徴とする体温データ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温計測用耳標及び体温データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物の体温を測定するニーズが高まっている。動物の中でも、例えば、牛の体温データは、健康管理や分娩管理等に広く用いられる。現在、牛の体温測定は、直腸に温度計を挿入する方法が一般的であるが、体温の常時計測は不可能であるため、何か異常があった時に体温を測定している。そのため、容態がかなり悪化してから対処する状態が日常化しており、対応が後手に回ってしまっている。また、直腸で体温を測定する方法は、牛が暴れることが多く、作業が大変である上に、飼育者が怪我をする恐れもあった。
一方、牛の個体識別のために耳標が耳殻に取り付けられており、この耳標を体温計測に利用すると、常時、体温データが得られ、異常時や発情時を早期に認識でき、農家の作業負担を軽減できる。
例えば、個体識別用の耳標を取り付ける家畜等動物の体温管理を正確且つ確実に行うことができるようにするために、票札片と、動物の耳を貫通する留めピンとを有し、留めピン適所に温度センサを配し、更に温度検出部、個体識別信号認識部、無線送受信部を設けた体温測定用耳標が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、耳殻は外気温の影響を受けやすく、正確な体温を計測し難いという問題があり、結局直腸で測定する方法が用いられているのが実情であった。また、温度センサの電源として電池が用いられるが、それを耳標に取り付けると、電池が重いために耳殻の穴が広がったり、耳殻がちぎれたり、顔を動かす度に頭や目にぶつかったりして、牛に余計なストレスを与えるだけでなく、飼育者にとっても危険である問題があった。電池に小型のものを使用すると上記の問題は幾分軽減されるものの、気づかないうちに電池が切れて、必要な時に体温データが取得されていなかったり、電池交換を頻繁に行う必要が生じたりして、むしろ飼育者の負担を増加させてしまい、これまで実現されるに至っていなかった。また、牛の耳殻以外にも尾根部や足の付け根で計測する方法も検討されているが、温度センサが脱落し易いという課題があり、体温を正確に、かつ常時安定に測定できる方法が熱望されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外気温の影響を受けにくく、より正確な体温を計測でき、軽量かつ薄型で電池交換が不要な体温計測用耳標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の体温計測用耳標は、耳標タグと、前記耳標タグの脱落を防止する留め具と、を有し、前記耳標タグにフレキシブル太陽電池が搭載され、前記太陽電池によって発電した電力によって、動物の体温を計測するための第1の温度センサを動作させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、外気温の影響を受けにくく、より正確な体温を計測でき、軽量かつ薄型で電池交換が不要な体温計測用耳標を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、従来の体温測定用耳標の一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、従来の体温測定用耳標の留めピンの形状の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る体温計測用耳標の他の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明で用いられる太陽電池の層構成の一例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明で用いられる太陽電池の層構成の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(体温計測用耳標)
本発明の体温計測用耳標は、耳標タグと、前記耳標タグの脱落を防止する留め具と、を有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0009】
前記体温計測用耳標は、前記耳標タグにフレキシブル太陽電池が搭載され、更に動物の体温を計測するための第1の温度センサが設けられ、前記第1の温度センサは、前記太陽電池によって発電した電力により動作する。第1の温度センサは、従来公知の体温計測方法をすべて使用することが可能である。
体温計測方法の一例としては、前記槍状部に体温を計測するための第1の温度センサが設けられ、前記第1の温度センサは、フレキシブル太陽電池によって発電した電力により動作し、かつ前記第1の温度センサは動物の耳殻の内部に配される方法が挙げられる。
【0010】
従来技術では、
図1及び
図2に示すように、温度センサ24が耳標タグ22とは別体の留めピン23の方に設けられており、耳標タグ22に太陽電池を搭載すると配線が複雑になってしまう。また、従来の体温計測用耳標21は、構造的に外気温の影響を受けやすく、外気にさらされた状態にあると、動物の耳部の体内温度が正確に測定できないという問題がある。
また、従来の体温計測用耳標は、電池を搭載する場合には重量が重くなり、動物の耳殻に取り付けるのが困難となる。また、電池交換が必要になるため、農家の作業負担が大きくなる。更に、動物の耳は外気温の影響を大きく受けるため、そのままでは正確に体温を測定することが困難である。
【0011】
本発明においては、動物の耳殻の厚みと温度センサの厚みの関係に着目し、次式、温度センサの厚み>耳殻の厚み、を充たす温度センサを選択(例えば、牛の耳の厚みは、通常、5mm~10mmであるため、これよりも小さい温度センサを選択)し、温度センサを動物の耳殻の内部から露出しないように配することによって、外気温の影響を受けにくくなり、正確な体内温度の測定を実現できる。
【0012】
体温計測方法の他の一例としては、第1の温度センサを、動物の外耳道に接触させて固定することにより、体温を計測する方法が挙げられる。耳標タグに搭載された太陽電池と、動物の外耳道に接触させた第1の温度センサとを配線することにより(図示せず)、フレキシブル太陽電池によって発電された電力により、前記第1の温度センサによって体温を計測することができる。
更に、他の一例としては、第1の温度センサに赤外線センサを用い、これを外耳道に配置し、鼓膜周辺から外耳道にかけて放射される赤外線を検知することによって、体温を計測する方法が挙げられる。前記第1の温度センサは、耳標タグが搭載されたフレキシブル太陽電池と接続されており、太陽電池によって発電された電力により、前記第1の温度センサによって体温を計測することができる。
このように、耳標タグ及び/又は留め具にフレキシブル太陽電池が搭載され、更に動物の体温を計測するための第1の温度センサが設けられ、前記第1の温度センサは、前記太陽電池によって発電した電力により動作するものであれば、従来公知の如何なる体温計測方法を用いてもよい。
【0013】
<耳標タグ>
耳標タグは、個々の動物を識別可能とする番号札としての役割を果たすと共に、常時、体温を測定することができる。
対象となる動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、牛、馬、シマウマ、羊、山羊、豚、猿、ゴリラ、チンパンジー、犬、熊、猫、虎、豹、ライオンなどが挙げられる。
【0014】
耳標タグの形状、大きさ、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
耳標タグの形状及び大きさは、対象となる動物の耳殻の形状及び大きさに応じて適宜選定される。
耳標タグの材質としては、例えば、プラスチックが一般に用いられ、プラスチックとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0015】
耳標タグは、動物の耳殻に貫通可能な槍状部を有し、フレキシブル太陽電池が搭載されている。耳標タグは、耳標タグを動物の耳殻に取り付ける際に、留め具の挿入穴と係合する突出部を有している。
耳標タグには、通常個体識別番号やバーコード等が記載される場合がある。そのため、これに太陽電池を搭載する場合、これらの表示を隠してしまうことは好ましくない。後述するように、本発明においては、個体識別番号などが記載されたメインの耳標タグとは別の耳標タグ(補助耳標タグ)として取り付けることも可能である。
【0016】
<留め具>
留め具は、槍状部に差し込むことによって耳標タグの脱落を防止する。
留め具の形状、大きさ、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
留め具の形状及び大きさは、耳標タグの形状及び大きさに応じて適宜選定される。
留め具の材質としては、例えば、プラスチックが一般に用いられ、プラスチックとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
また、留め具にもタグを設け、これに個体識別番号等を記載し、耳標タグとして使用することも可能である。留め具に個体識別番号等が記載されたタグを設けると、前記耳標タグにフレキシブル太陽電池を搭載することが容易になる。この場合、留め具のタグが前から見えるように設置されるため、耳標タグは耳の裏側に配置されることになる。耳標タグに搭載されたフレキシブル太陽電池は、耳の裏側に配置された方が光に当たりやすく、発電力が向上する効果が得られる。また、耳の裏側に配置されていた方が汚れにくいため、高い発電力を得る上で非常に有効である。
【0017】
<第1の温度センサ>
第1の温度センサは、フレキシブル太陽電池で発電した電力、又は太陽電池で発電した電力を蓄電した電力により動作する。
前述の通り、第1の温度センサは、従来公知の如何なる温度センサでも使用可能である。
第1の温度センサは、フレキシブル太陽電池で発電した電力、又は太陽電池で発電した電力を蓄電した電力により動作し、かつ第1の温度センサは動物の耳殻の内部に固定されている。
第1の温度センサとしては、動物の耳殻の中に収まる小型の温度センサであることが好ましく、例えば、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体(RTD)、IC温度センサ、赤外線センサなどが挙げられる。
サーミスタは、温度変化に対し、電気抵抗の変化が大きい抵抗体を利用して温度を測定する。
熱電対は、2種の異種金属の一の片側を接触させ、他の片側に現れた電位差により温度を測定する。
測温抵抗体(RTD)は、金属の抵抗値と温度が一定の関係にあることを利用して温度を測定する。
IC温度センサは、IC(集積回路)で構成され、温度と出力電圧との関係を利用して温度を計測する。
赤外線センサは、放射された赤外線を検知し、温度変化を読み取り、電気信号に変換することで温度を測定する。
これらの中でも、サーミスタ、IC温度センサ、赤外線センサが好ましく、サーミスタ、赤外線センサがより好ましい。
【0018】
太陽電池は封止部材によって封止され、外部から水などの侵入を防止する。封止部材としては、透明材料を用いることが好ましく、硬化樹脂や低融点ガラス樹脂がより好ましい。
硬化樹脂としては、光や熱によって硬化する樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、中でも、アクリル樹脂やエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
アクリル樹脂の硬化物は、分子内にアクリル基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
エポキシ樹脂の硬化物は、分子内にエポキシ基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
これらの中でも、基板との接着力が高く、水分や酸素のバリア性に優れるエポキシ樹脂がより好ましく用いられる。その結果、出力が高く、安定性に優れる本発明で用いられる太陽電池の耐久性を更に高めることが可能になる。
エポキシ樹脂としては、例えば、水分散型、無溶剤型、固体型、熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられるが、これらの中でも、熱硬化型、紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても加熱されてもよい。
また、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエ-テル型、グリシジルエステル型などが挙げられるが、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記封止部材には、必要に応じて、硬化剤、各種添加剤を含んでもよい。
【0019】
また、シート状封止材を用いることも可能であり、有効である。シート状封止材とは、シート上に予め樹脂層を形成したもので、太陽電池を覆うように耳標タグに貼り付け、必要に応じて樹脂を硬化させることで封止を行うことができる。シートはガスバリア性が高い材質であれば如何なるシートでも使用できるが、特にガスバリア性の高いフィルムが好適に用いられる。
更に、前記封止部材の上に、紫外線をカットする膜を形成することも可能である。用いる太陽電池が、有機系太陽電池の場合には、紫外線により劣化が早まる可能性があり、紫外線をカットする膜を太陽電池の上に設けることにより、耐久性を大幅に向上できる場合がある。
また、前記紫外線をカットする膜は、太陽電池上だけでなく、耳標タグ並びに留め具の表面に設けることも可能である。耳標タグ及び留め具もプラスチックで形成されているため、紫外線により劣化し、耳標タグの脱落を招く懸念がある。紫外線をカットすることで耳標タグを形成する樹脂の劣化を防止でき、耳標タグの脱落を防止する効果が得られる。
紫外線をカットする膜は、少なくとも400nm以下の光をカットするものであれば、従来公知の方法を用いることが可能である。例えば、紫外線をカットできるフィルムを表面に貼り付ける方法や、紫外線をカットする材料を含む塗布液を用い、表面に塗布することで膜を形成することができる。
【0020】
<第2の温度センサ>
耳標タグは、更に外気温度を計測するための第2の温度センサが搭載されることが好ましい。第1の温度センサによって耳の中で体温測定を行うと共に、第2の温度センサによって計測された第2の温度データによって補正を行い、外気温度の影響を加味したより正確な動物の体温データを提供することができる。
耳で体温を計測する場合には、外気温度の影響を比較的受けやすくなる。そのため、温度変化は検知できたとしても、外気温度によって体温の絶対値が変化する場合がある。体温データと外気温度データを取得し、それらの関係性を明らかにできれば、第1の温度センサで得られた体温データを、第2の温度センサで得られた外気温度データで補正することにより、正確な体温データを提供することが可能になる。
第2の温度センサを搭載する位置としては、外気温度を計測することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
<接触センサ>
第1の温度センサの近傍に接触センサを配することが好ましい。第1の温度センサの近傍に接触センサを配することによって、第1の温度センサが耳殻あるいは外耳道などと接していることを確認でき、正確な体温を測定することができる。
接触センサとしては、例えば、光電センサ、誘電型近接センサ、静電容量型近接センサ、磁気型近接センサなどが挙げられる。
【0022】
<断熱部材>
前記第1の温度センサと外気との間に断熱部材を有することが好ましい。第1の温度センサは、どのような体温計測方法においても、その周辺に外気に近い領域があり、外気温度の影響を大きくなる。そのため、第1の温度センサと外気との間に断熱部材を設けることにより、外気温度の影響を低減することができ、有効である。
例えば、耳殻の内部に第1の温度センサを配置する場合には、耳殻と耳標タグ及び留め具との間に断熱部材を有することによって、第1の温度センサが接する耳殻の部分が外気の影響を受けにくくなり、より正確に体温を計測することができる。
第1の温度センサを外耳道に接触させる場合には、第1の温度センサが外耳道と接触している周辺はいずれも外気の影響を受けやすいため、第1の温度センサと外耳道の接触部分の周囲に断熱部材を設けて固定することが好ましい。
また、赤外線センサを用いる場合には、第1の温度センサより外耳道の外側に断熱部材を設けることが好ましい。
断熱部材の形状、大きさ、構造、材質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
断熱部材の形状としては、例えば、シート状、薄板状、繊維状などが挙げられる。
断熱部材の大きさとしては、留め具、耳殻、外耳道及び耳標タグの大きさに応じて適宜選定することができる。
断熱部材の構造としては、単層構造又は2層構造以上の多層構造などが挙げられる。
断熱部材の材質としては、例えば、無機繊維、天然繊維、発泡ゴム、発泡樹脂などが挙げられる。無機繊維としては、グラスウール、ロックウールなどが挙げられる。天然繊維としては、セルロースファイバ、ウールプレス等が挙げられる。発泡樹脂としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン等の樹脂の発泡体などが挙げられる。
【0023】
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる、例えば、通信部、記憶部、加速度センサ、アクティブRFIDなどが挙げられる。
【0024】
通信部としては、第1の温度センサから得られた温度の情報信号を発信可能とする無線送受信部を有する。
【0025】
加速度センサを搭載していれば、動物の動きを捉えることができ、生存確認や活動状況を把握することができる。
【0026】
アクティブRFIDを搭載していれば、数十メートル以上離れていても通信が可能であり、固体識別が可能となる。
【0027】
ここで、本発明の体温計測用耳標の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。 なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0028】
<体温計測用耳標の第1の実施形態>
最初に、前述の耳殻内部に第1の温度センサを配置する場合の実施形態を説明する。
ここで、
図3は、第1の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す側面図、
図4は、第1の実施形態に係る体温計測用耳標を耳殻に取り付けた状態を示す図である。
この
図3の体温計測用耳標は、耳標タグ101と、留め具104とを有し、耳標タグ101と留め具104とは、耳標タグ101の突出部101aが、留め具104の挿入穴104aに、動物の耳殻を介して挿入することによって、
図4に示すように、耳標タグ101が動物の耳殻106に取り付けられる。留め具104には個体識別番号等を記載する補助耳標タグ107が設けられている。
耳標タグの突出部101aには第1の温度センサ102が設けられており、耳標タグ101が動物の耳殻106に取り付けられた際に、第1の温度センサ102は、耳殻106の中央部に配置される。これによって、第1の温度センサ102が動物の耳殻の内部から露出しないので、外気温の影響を受けにくくなり、正確な体内温度の測定を実現できる。第1の温度センサ102としてはサーミスタが好ましい。
103は太陽電池であり、太陽電池で発電した電力によって第1の温度センサ102が動作する。なお、太陽電池によって発電した電力を、蓄電池に蓄電し、蓄電池に蓄電された電力により、第1の温度センサを動作させてもよい。
太陽電池103としては、フレキシブル太陽電池が用いられる。太陽電池103は透明な封止部材105によって封止され、外部から水などの侵入を防止する。
【0029】
<体温計測用耳標の第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す側面図である。
この
図5の体温計測用耳標は、耳標タグ101に、外気温度を計測するための第2の温度センサ107が搭載されている以外は、第1の実施形態と同様である。なお、第2の実施形態において、既に説明した第1の実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
第2の温度センサ107は、太陽電池及び前記蓄電池の少なくともいずれかの電力により動作する。
第2の実施形態に係る体温計測用耳標によると、第2の温度センサによって計測された第2の温度データによって補正を行い、外気温度の影響を加味したより正確な動物の体温データを提供することができる。
【0030】
<体温計測用耳標の第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る体温計測用耳標の一例を示す側面図である。
この
図6の体温計測用耳標は、留め具104と耳殻106の間及び耳標タグ101と耳殻106の間に断熱部材108を有する以外は、第1の実施形態と同様である。なお、第2の実施形態において、既に説明した第1の実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
第3の実施形態に係る体温計測用耳標によると、断熱部材を有することによって、第1の温度センサが接する耳殻の部分が外気の影響を受けにくくなり、より正確に体温を計測することができる。
【0031】
<体温計測用耳標の第4の実施形態>
図7は、前述の外耳道に第1の温度センサを配置する場合の実施形態を説明する。
耳標タグ101には太陽電池103が搭載されており、外耳道112には第1の温度センサ102が外耳道112と接触して配置され、太陽電池と第1の温度センサ102は配線により接続されている。第1の温度センサ102は、リング状の固定部材110により固定され、太陽電池103で発電した電力によって第1の温度センサ102が動作する。
なお、太陽電池によって発電した電力を、蓄電池に蓄電し、蓄電池に蓄電された電力により、第1の温度センサ102を動作させてもよい。
太陽電池103としては、フレキシブル太陽電池が用いられる。太陽電池103は透明な封止部材105によって封止され、外部から水などの侵入を防止する。
耳標タグ101には、外気温度を計測するための第2の温度センサ107が搭載されていてもよい。また、第1の温度センサ102と固定部材との間に、断熱部材を設けてもよい。また、図示しないが、留め具に耳標タグを設け、太陽電池を搭載した耳標タグを耳の後ろ側に配置させてもよい。
【0032】
<体温計測用耳標の第5の実施形態>
図8は、前述の第1の温度センサに赤外線センサを用いた場合の実施形態を説明する。
耳標タグ101には太陽電池103が搭載されており、外耳道112には第1の温度センサ102として赤外線センサを内蔵した体温計測装置111が挿入されている。なお、
図8中113は鼓膜である。
太陽電池103と体温計測装置111は配線により接続されている。第1の温度センサ102を含む体温計測装置は、固定部材111により耳から脱離しないように固定され、太陽電池103で発電した電力によって第1の温度センサ102が動作する。なお、太陽電池103によって発電した電力を、蓄電池に蓄電し、蓄電池に蓄電された電力により、第1の温度センサ102を動作させてもよい。
なお、耳標タグ101には、外気温度を計測するための第2の温度センサ107が搭載されていてもよい。また、図示しないが、留め具に耳標タグを設け、太陽電池を搭載した耳標タグを耳の後ろ側に配置させてもよい。
【0033】
(体温データ管理システム)
本発明の体温データ管理システムは、本発明の体温計測用耳標を用いた体温データ管理システムであって、
前記第1の温度センサによって計測された第1の温度データを、前記第2の温度センサによって計測された第2の温度データによって補正を行い、外気温度の影響を加味した体温データを提供する。
例えば、1年間以上の長期間にわたって、第1の温度センサによって計測された第1の温度データと、第2の温度センサによって計測された第2の温度データとを取得し、蓄積された第1の温度データと第2の温度データとの関係から、補正式を導き出し、この補正式を用いて、外気温度の影響を加味した動物の体温データを得ることができる。
【0034】
前記体温データ管理システムは、制御手段を有することが好ましい。制御手段は、体温データ管理システムの各手段を制御する手段である。制御手段にはROMやRAMなどの記憶手段及びCPU、FPGAなどの計算手段を含んでよい。記憶手段には、体温データを補正するためのプログラムが記憶されている。
【0035】
<太陽電池>
本発明の体温計測用耳標に搭載する太陽電池としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軽量及び柔軟性の点から、フレキシブル太陽電池であることが好ましく、アモルファスシリコン太陽電池や、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池等の有機系太陽電池がより好ましく、有機薄膜太陽電池が特に好ましい。
以下、本発明において好適な太陽電池の具体的な構成について詳細するが、本発明で用いられる太陽電池はこれに制限されるものではない。
【0036】
以下、太陽電池として、有機薄膜太陽電池を例に挙げて説明する。但し、本発明に用いられる太陽電池は、これらに限定されるものではない。
有機薄膜太陽電池は、第1の基板、第1の電極、電子輸送層、光電変換層、ホール輸送層、第2の電極を有し、必要に応じて第2の基板、封止部材、その他の層を有する。
【0037】
<基板>
太陽電池の基板としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。第1の基板は透明な材質のものが好ましく、例えば、ガラス、透明プラスチックフィルム、無機物透明結晶体等が挙げられるが、軽量でフレキシブルな基板がより好ましく、透明プラスチックフィルムが好適に用いられる。透明プラスチックフィルムは軽量であるため、耳標タグを大幅に軽量化することができる。また、透明プラスチックフィルムは、フレキシブルであるため、耳標が折り曲げられることによる破壊の影響を低減できる。
【0038】
<第1の電極、第2の電極>
電極は、少なくともいずれか一方は可視光に対して透明なものを使用し、他方は透明であっても不透明であっても構わない。
前記可視光に対して透明な電極としては、特に制限はなく、通常の光電変換素子又は液晶パネル等に用いられる公知のものを使用でき、例えば、スズドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、アルミニウムやガリウムがドープされた酸化亜鉛(以下、それぞれを「AZO」、「GZO」と称する)等の導電性金属酸化物が挙げられる。
前記可視光に対して透明な電極の平均厚みは、5nm~10μmが好ましく、50nm~1μmがより好ましい。
前記可視光に対して透明な電極は、一定の硬性を維持するため、可視光に透明な材質からなる基板上に設けることが好ましく、電極と基板が一体となっているものを用いることもでき、例えば、FTOや、ITO、酸化亜鉛:アルミニウム等を前述の基板にコートしたものが使用できる。
前記可視光に対して透明な電極は、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものや、カーボンナノチューブ、グラフェン等の透明性を有する程度に積層したものでもよい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、積層したものであっても構わない。
更に、基板抵抗を下げる目的で、金属リード線等を用いてもよい。前記金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。前記金属リード線は、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法が挙げられる。
第1の電極及び第2の電極のいずれか一方に不透明な電極を用いる場合の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム(Al)等の金属やグラファイトが挙げられる。前記不透明な電極の場合、厚みとしては、特に制限はなく、また、1種単独あるいは2種以上の積層構成で用いても構わない。
【0039】
<電子輸送層>
電子輸送層を形成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子受容性有機材料(例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物、カーボンナノチューブ(CNT)、CN-PPV等)、酸化亜鉛、酸化チタン、フッ化リチウム、カルシウム金属等の無機材料をゾルゲル法やスパッタリングで形成して用いることができる。
図9に示す層構成の太陽電池の場合には、酸化亜鉛が好ましく、
図10に示す層構成の太陽電池の場合には、フッ化リチウムが好ましい。
前記電子輸送層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、できるだけ全面を薄く覆うことが好ましく、10nm~60nmがより好ましい。
【0040】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を設けて、正孔の収集効率を向上させることができる。具体的には、PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸)のような導電性高分子、芳香族アミン誘導体のようなホール輸送性有機化合物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニッケル等の正孔輸送性を有する無機化合物をスピンコート、ゾルゲル法やスパッタリングで形成する。本発明においては酸化モリブデンを設けることが好ましい。
前記正孔輸送層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、できるだけ全面を薄く覆うことが好ましく、1nm~50nmがより好ましい。
【0041】
<光電変換層>
前記光電変換層は、前記電子輸送層とホール輸送層との間に形成される。
記光電変換層は、電子供与性有機材料(P型有機半導体)及び電子求引性有機材料(N型有機半導体)を含有し、前記P型有機半導体と前記N型有機半導体を混合したバルクへテロ接合型の光電変換層が好ましい。これにより、光電変換層内でナノサイズのPN接合が形成され、接合面で生じる光電荷分離を利用して電流を得ることができる。
前記光電変換層の平均厚みは、50nm~400nmが好ましく、60nm~250nmがより好ましい。前記平均厚みが、50nm未満であると、光電変換層による光吸収が少なくキャリア発生が不充分となることがあり、400nmを超えると、光吸収により発生したキャリアの輸送効率が一段と低下することがある。
【0042】
<<電子供与性有機材料(P型有機半導体)>>
前記P型有機半導体としては、例えば、ポリチオフェン又はその誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェン又はその誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン又はその誘導体、ポリフェニレンビニレン又はその誘導体、ポリチエニレンビニレン又はその誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体等の共役ポリマーや低分子化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、π共役を有する導電性ポリマーであるポリチオフェン又はその誘導体が好ましい。前記ポリチオフェン及びその誘導体は、優れた立体規則性を確保することができ、溶媒への溶解性が比較的高い点で有利である。
前記ポリチオフェン及びその誘導体としては、チオフェン骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェンに代表されるポリアルキルチオフェン、ポリ-3-ヘキシルイソチオナフテン、ポリ-3-オクチルイソチオナフテン、ポリ-3-デシルイソチオナフテン等のポリアルキルイソチオナフテン;ポリエチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
また、近年では、ベンゾジチオフェン、カルバゾール、ベンゾチアジアゾール及びチオフェンからなる共重合体であるPTB7(ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェネジル}))、PCDTBT(ポリ[N-9”-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-アルト-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)])などの誘導体が、優れた光電変換効率を得られる化合物として挙げられる。
更に、共役ポリマーだけでなく、電子供与性ユニットと電子吸引性ユニットとを結合させた低分子化合物でも優れた光電変換効率を得られる化合物が知られており、本発明にも用いることができる(例えば、ACS Appl Mater.Interfaces 2014,6,803-810参照)。
【0043】
<<電子求引性有機材料(N型有機半導体)>>
前記電子求引性有機材料としては、例えば、イミド誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、電荷分離及び電荷輸送の点から、フラーレン誘導体が好ましい。
前記フラーレン誘導体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよく、例えば、PC71BM(フェニルC71酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、PC61BM(フェニルC61酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、PC85BM(フェニルC85酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン社製)、ICBA(フラーレンインデン2付加体、フロンティアカーボン社製)などが挙げられる。また、この他にも、フラロピロリジン系フラーレン誘導体などが挙げられる。
【0044】
前記光電変換層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法などが挙げられる。これらの中から、厚み制御や配向制御など、作製しようとする有機材料薄膜の特性に応じて適宜選択することができる。
例えば、前記スピンコート塗布を行う場合には、P型有機半導体及びN型有機半導体の濃度が5mg/mL以上40mg/mL以下であることが好ましい。この濃度にすることにより均質な有機材料薄膜を容易に作製することができる。
作製した有機材料薄膜から有機溶媒を除去するため、減圧下又は不活性雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。前記アニーリング処理の温度は、40℃以上300℃以下が好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましい。また、前記アニーリング処理を行うことにより、積層した層が界面で互いに浸透して接触する実効面積が増加し、短絡電流を増大させることができる。なお、前記アニーリング処理は、電極の形成後に行ってもよい。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、o-クロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロロベンゼン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼンが好ましい。
また、前記P型有機半導体と前記N型有機半導体の相分離構造制御のために、前記有機溶媒に0.1質量%以上10質量%以下の添加剤を加えてもよい。前記添加剤としては、例えば、ジヨードアルカン(1,8-ジヨードオクタン、1,6-ジヨードヘキサン、1,10-ジヨードデカンなど)、アルカンジチオール(1,8-オクタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオールなど)、1-クロロナフタレン、ポリジメチルシロキサン誘導体などが挙げられる。
前記光電変換層の平均厚みは、50nm以上400nm以下が好ましく、60nm以上250nm以下がより好ましい。前記平均厚みが、50nm以上であれば、光電変換層による光吸収が少なくてキャリア発生が不充分となることはなく、400nm以下であれば、光吸収により発生したキャリアの輸送効率が一段と低下するようなことはない。
【0045】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガスバリア層、バッファ層、紫外線カット層、封止層などが挙げられる。
前記ガスバリア層は、ガスや水分の侵入を防止するために形成され、ガスバリア層の材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
【0046】
前記紫外線カット層としては、太陽電池の受光面側に設けられ、紫外線による構成材料の劣化を防止するために用いられる。少なくとも400nm以下、好ましくは420nm以下の紫外線をカットすることにより、太陽電池の耐久性が向上できる場合がある。紫外線カット層としては、従来公知の紫外線カットフィルムを第一の基板の受光面側に貼り付けたり、紫外線を吸収あるいは反射する材料を含む塗布液を塗布する方法が挙げられる。
【0047】
封止層は、太陽電池を構成する各層に含まれる材料が、外部の環境から遮断することが可能であれば、従来公知の如何なる方法も使用可能である。封止層は、太陽電池の外縁部に硬化樹脂を付着し、第2の基板で封止する方法と、太陽電池の発電層をすべて硬化樹脂でシールする方法など、多種多様の方法が挙げられるが、本発明においては、太陽電池がフレキシブルであることが好ましいため、封止層もフレキシブルであることが好ましい。特に、フレキシブルのガスバリア性を有するシートに予め硬化樹脂が塗布されたシート状封止材は、封止が容易で、かつフレキシブル性を維持できることから、非常に有効である。
【0048】
本発明で用いられる太陽電池は、1つ以上の中間電極を介して2層以上の光電変換層を積層(タンデム化)して直列接合を形成してもよい。例えば、第1の基板/第1の電極/正孔輸送層/第1の光電変換層/中間電極/第2の光電変換層/電子輸送層/第2の電極という積層構成などが挙げられる。このように積層することにより、開放電圧を向上させることができる。
【0049】
次に、図面を用いて、本発明で用いられる太陽電池について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0050】
図9は、本発明で用いられる太陽電池の層構成の一例を示す概略図である。この
図9の太陽電池は、第1の基板1上に第1の電極2が形成され、第1の電極2上に電子輸送層3が形成され、更に光電変換層4、正孔輸送層5、及び第2の電極6が順次積層されてなる。
【0051】
図10は、本発明で用いられる太陽電池の層構成の他の一例を示す概略図である。この
図10の太陽電池は、第1の基板1上に、第1の電極2、正孔輸送層5、光電変換層4、電子輸送層3、第2の電極6が順次積層されてなる。
【0052】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 耳標タグと、前記耳標タグの脱落を防止する留め具と、を有し、
前記耳標タグにフレキシブル太陽電池が搭載され、前記太陽電池によって発電した電力によって、動物の体温を計測するための第1の温度センサを動作させることを特徴とする体温計測用耳標である。
<2> 前記耳標タグは、耳殻を貫通可能な槍状部を有し、前記留め具は、前記槍状部を差し込むことによって前記耳標タグの脱落を防止し、
前記第1の温度センサが、前記槍状部に設けられ、前記槍状部を動物の耳殻に貫通させることにより、前記第1の温度センサが耳殻の内部に配される、前記<1>に記載の体温計測用耳標である。
<3> 前記第1の温度センサが、動物の外耳道に接触し、前記第1の温度センサと外耳道との接触部に固定部材を有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<4> 前記第1の温度センサがサーミスタである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<5> 前記第1の温度センサが赤外線センサであり、動物の外耳道に配置され、鼓膜周辺から外耳道にかけて放射される赤外線を検出する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<6> 前記フレキシブル太陽電池への水分の侵入を防止するための透明な封止部材を備える、前記<1>から<5>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<7> 前記留め具にも耳標タグが設けられている、前記<1>から<6>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<8> 前記第1の温度センサの近傍に接触センサを配する、前記<1>から<7>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<9> 前記第1の温度センサと外気との間に、断熱部材を有する、前記<1>から<8>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<10> 前記耳標タグに、更に畜電池が搭載され、前記フレキシブル太陽電池によって発電した電力を、前記蓄電池に蓄電し、前記蓄電池に蓄電された電力により、前記第1の温度センサが動作する、前記<1>から<9>のいずれかに記載の体温計測用耳標である。
<11> 前記耳標タグに、更に外気温度を計測するための第2の温度センサが搭載され、前記第2の温度センサは、前記フレキシブル太陽電池及び前記蓄電池の少なくともいずれかの電力により動作する、前記<10>に記載の体温計測用耳標である。
<12> 前記<11>に記載の体温計測用耳標を用いた体温データ管理システムであって、
前記第1の温度センサによって計測された第1の温度データを、前記第2の温度センサによって計測された第2の温度データによって補正を行い、外気温度の影響を加味した動物の体温データを提供することを特徴とする体温データ管理システムである。
【0053】
前記<1>から<11>のいずれかに記載の体温計測用耳標、及び前記<12>に記載の体温データ管理システ記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 第1の基板
2 第1の電極
3 電子輸送層
4 光電変換層
5 正孔輸送層
6 第2の電極
101 耳標タグ
102 第1の温度センサ
103 太陽電池
104 留め具
105 封止部材
106 耳殻
109 補助耳標タグ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】