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特許7463838ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法および洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/0281 20160101AFI20240402BHJP
   B01D 19/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08G75/0281
B01D19/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087268
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181527
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】船橋 誓良
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英樹
(72)【発明者】
【氏名】古澤 高志
(72)【発明者】
【氏名】竹中 麻朗
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-121133(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167782(WO,A1)
【文献】特開2007-222721(JP,A)
【文献】特開2016-056232(JP,A)
【文献】特開2019-104873(JP,A)
【文献】特表2018-505949(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0025208(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00-75/32
B01D 19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄工程を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、
該洗浄工程を、発生する泡を消泡しながら行うことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項2】
発生した泡を吸引して金属製容器内から除去する、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項3】
吸引した泡を破壊して液化し、再び、金属製容器内に戻す、請求項2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項4】
金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法であって、
発生する泡を消泡しながら行うことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。また、本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略すことがある)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂と略すことがある)は、耐熱性、耐薬品性に優れた熱可塑性ポリマーである。その成形体は各種の成形加工分野に利用されている。しかし、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造は、腐食性の高い原料を用いて苛酷な重合条件下で行われることから、反応装置の接液部等から金属系の異物が混入し易い傾向にある。このため、ポリアリーレンスルフィド樹脂の成形品は、設計上、原料としては含まれていないはずの異物として不可避に含まれてしまう。そして、この異物は、これを起点として、電気絶縁性、特に耐絶縁破壊性の低下のおそれがあった。また不純物混入により、成形時の結晶化を遅延させるおそれがあった。
【0003】
そこで、成形品中に含まれる異物を極力少なくすることが求められている。例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造時に、金属異物の混入を抑制する工夫として、接液部を中心に高価なチタンやジルコニウム系の反応用装置(反応釜)を使用し重合反応を行なう等といった材質の工夫が種々行なわれている(特許文献1)。しかしながらこれらの工夫は、不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-104873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その原因としては種々考えられるが、本発明者らは以下の理由が含まれるものと考えている。
【0006】
主にポリアリーレンスルフィド樹脂の製造は、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略すことがある)などの有機アミド溶媒を重合用溶媒として用い、ジクロロベンゼンと、硫化ナトリウム及び/又は水硫化ナトリウムと、必要に応じて水酸化ナトリウムとを重合反応させる方法が採用されている。この重合反応では、目的物質のポリアリーレンスルフィド樹脂と共に、重合用溶媒や、少なくとも、重合反応せずに残留した硫化ナトリウム及び/又は水硫化ナトリウムと、塩化ナトリウム等の副生成物を含有する粗反応生成物が得られる。粗反応生成物は重合反応後に適当な金属製容器に取り出され、その際に、粗反応生成物中の重合用溶媒は溶媒乾燥装置、濾過器、遠心分離器等の適当な固液分離装置を用いて脱溶媒処理される。
【0007】
重合用溶媒は脱溶媒処理により分離され除去されるが、重合反応せずに残留した硫化ナトリウム及び/又は水硫化ナトリウムと副生成物(以下、これを単に「副生成物等」とも称する)は、表面に付着されたり、内包されるなど、目的物質のポリアリーレンスルフィド樹脂から除去されずに留まる。このため脱溶媒後の、副生成物等を含むポリアリーレンスルフィド樹脂は、水や有機溶剤などの洗浄用溶媒で洗浄される。
【0008】
この洗浄の際、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂と水を接触させ攪拌すると、ポリアリーレンスルフィド樹脂(粉体)は濡れ性が非常に悪い、つまりポリアリーレンスルフィド樹脂が疎水性であることに起因して、攪拌時に巻き込んだ空気により泡が発生して容器壁面に付着するだけでなく、液面下ではスラリーが流動していても、泡自体は流動せずに付着部に留まる傾向にある。本発明者らは、この泡の成分を分析したところ、上記の副生成物等が泡の成分として含まれること、このような容器壁面に付着した泡が乾燥等により濃縮され高濃度化すると該容器付着壁面を腐食させ、不純物として発生した錆に含まれる金属分がポリアニーレンスルフィド樹脂中に取り込まれることにより各種性能を低下させることをつきとめるに至った。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌して、ポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際に、該容器接液部における泡滞留物からの腐食により発生する錆等の不純物量を抑制する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法、ないし、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らはさらに種々の検討を行った結果、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する際に、発生する泡を抑制する、すなわち、消泡することにより、容器接液部における泡滞留物からの腐食により発生する錆等の不純物量を抑制することを見出し、本発明を解決するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄工程を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、
該洗浄工程を、発生する泡を消泡しながら行うことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法であって、
発生する泡を消泡しながら行うことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌して、ポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際に、泡滞留物からの腐食により発生する錆等の不純物量を抑制する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法、ないし、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄工程を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、該洗浄工程を、発生する泡を消泡しながら行うことを特徴とする。また、本発明は、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄工程を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の洗浄方法であって、該洗浄工程を、発生する泡を消泡しながら行うことを特徴とする。
【0015】
本発明において使用するポリアリーレンスルフィド樹脂は、特に限定されず、例えば、重合用溶媒の存在下、ポリハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを重合反応させる工程(以下、単に「重合工程」ともいう)、該重合工程で得られた、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、重合用溶媒と、少なくとも、未反応スルフィド化剤および前記副生成物とを含有する粗反応生成物から、重合用溶媒を脱溶媒する工程(以下、「脱溶媒工程」とも称する)を経て得られたポリアリーレンスルフィド樹脂やそれらを微粒子化、多孔質化したものなどが挙げられるが、当該重合工程および脱溶媒工程を経て得られた少なくとも、未反応スルフィド化剤および前記副生成物とを含む反応生成物中に含まれるポリアリーレンスルフィド樹脂が好ましいものとして挙げられる。
【0016】
ここで、前記重合工程で用いられるポリハロ芳香族化合物としては、例えば、芳香族環に直接結合した2個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物であり、具体的には、p-ジクロルベンゼン、o-ジクロルベンゼン、m-ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、テトラクロルベンゼン、ジブロムベンゼン、ジヨードベンゼン、トリブロムベンゼン、ジブロムナフタレン、トリヨードベンゼン、ジクロルジフェニルベンゼン、ジブロムジフェニルベンゼン、ジクロルベンゾフェノン、ジブロムベンゾフェノン、ジクロルジフェニルエーテル、ジブロムジフェニルエーテル、ジクロルジフェニルスルフィド、ジブロムジフェニルスルフィド、ジクロルビフェニル、ジブロムビフェニル等のジハロ芳香族化合物及びこれらの混合物が挙げられ、これらの化合物をブロック共重合してもよい。これらの中でも好ましいのはジハロゲン化ベンゼン類であり、特に好ましいのはp-ジクロルベンゼンを80モル%以上含むものである。また、枝分かれ構造とすることによってポリアリーレンスルフィド樹脂の粘度増大を図る目的で、1分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を分岐剤として所望に応じて用いてもよい。このようなポリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,4-トリクロルベンゼン、1,3,5-トリクロルベンゼン、1,4,6-トリクロルナフタレン等が挙げられる。
【0017】
また、前記重合工程で用いられるスルフィド化剤としてはアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ金属水硫化物が挙げられる。ここでアルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。また、アルカリ金属水硫化物としては水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びこれらの混合物が含まれる。アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを併用することができる。アルカリ金属水酸化物としては例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム挙げられ、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、固形のアルカリ金属硫化物の生成が促進される点から、アルカリ金属水硫化物1モル当たり、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上から、好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.1以下までの範囲である。尚、通常、アルカリ金属硫化物中に微量存在するアルカリ金属水硫化物、チオ硫酸アルカリ金属と反応させアルカリ金属硫化物とするために、少量のアルカリ金属水酸化物を加えても差し支えない。
【0018】
前記重合工程で用いられる重合用溶媒としては有機アミド溶媒(アミド系溶媒ともいう)が挙げられる。有機アミド溶媒としては、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、ε-カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン酸などのアミド系の有機抑制溶媒及びこれらの混合物を挙げることができ、これらの中でもN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
【0019】
前記重合工程において、重合条件は一般な条件でよく、温度が、好ましくは200℃以上から、好ましくは330℃以下までの範囲である。圧力は重合用溶媒及び重合モノマーであるポリハロ芳香族化合物を実質的に液相に保持するような範囲であるべきであり、好ましくは0.1MPa以上から、好ましくは20MPa以下、より好ましくは2MPa以下までの範囲より選択される。ポリハロ芳香族化合物の仕込み量は、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.2モル以上から、好ましくは5.0モル以下までの範囲、好ましくは0.8~1.3モルの範囲、さらに好ましくは0.9~1.1モルの範囲となるよう調製する。また、重合用溶媒の仕込み量は、使用する化合物の種類及び系内の水分割合によっても異なり、一概に規定することはできないものの、均一な重合反応が可能な反応系の粘度を保持すること、また、ある程度の生産性を維持するため、その量が、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モル当り、好ましくは1.0モル以上、より好ましくは1.2モル以上、さらに好ましくは1.5モル以上から、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下までの範囲である。
【0020】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合終了後に得られる粗反応混合物中には、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、重合用溶媒と、少なくとも、未反応スルフィド化剤および前記副生成物とが含まれる。
【0021】
続いて、脱溶媒工程は、得られた粗反応混合物から重合用溶媒を固液分離して、液相成分を分離除去する工程である。脱溶媒工程により得られた固相成分は後述する金属製容器に取り出されることが好ましい。脱溶媒工程後に得られた固相成分は、目的物質のポリアリーレンスルフィド樹脂と、分離除去されずに残留した成分として、少なくとも、前記未反応スルフィド化剤および前記副生成物とを含む。
【0022】
該固液分離には大きく分けて、後述するフラッシュ法とクウェンチ法の2種類がある。フラッシュ法は、重合用溶媒を蒸発させて溶媒回収し、同時に固形物を回収する方法であり、一般的に、減圧下に、好ましくは130℃以上から、好ましくは200℃以下までの範囲で加熱して溶媒を留去することにより行われる。フラッシュ法で溶媒回収した直後の溶媒温度はおおむね90℃以上から190℃以下までの範囲である。
【0023】
一方、クウェンチ法は、重合反応物を、除冷して粒子状となったポリアリーレンスルフィド樹脂を回収する方法であり、一般的に、反応用容器(釜内)に反応スラリーを必要に応じて貧溶媒を加えながら冷却し、ポリアリーレンスルフィド樹脂を晶析させた後に固液分離する方法が挙げられる。クウェンチ法における固液分離は、濾過やスクリューデカンター等の遠心分離機を用いて分離した後、得られた濾過残渣に直接水を加えスラリー化したのち、固液分離を繰り返し行う方法や、得られた濾過残渣を非酸化性雰囲気下で加熱して、残存する溶媒を除去する方法などが挙げられる。クウェンチ法で溶媒回収した直後の溶媒温度はおおむね90℃以上から190℃以下までの範囲である。フラッシュ法は、固形物を比較的簡便に回収することができる点で好ましく、クウェンチ法は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の粒度を制御しやすい点や晶析時にポリマー粒子にアルカリ金属含有無機塩やその他の不純物を取り込みにくくなるため、高純度のポリマーが得られやすい点で好ましい。
【0024】
前記脱溶媒工程を経て得られた反応混合物中には、ポリアリーレンスルフィド樹脂が含まれる。また、前記粗反応生成物のうちの一部が残留物として、未反応スルフィド化剤および前記副生成物とが含まれる。
【0025】
本発明において洗浄工程は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂を、金属製容器内で、洗浄用溶媒と接触させ攪拌することにより洗浄し、当該洗浄の際に、発生する泡を消泡しながら行う。
【0026】
洗浄工程において、例えば、脱溶媒工程後に得られたポリアリーレンスルフィド樹脂(固形分)に洗浄用溶媒を加えて撹拌した後にろ過装置を用いてろ過する方法、前記したろ過によって得られた洗浄用溶媒を含むろ過残渣(以下、「含溶媒ケーキ」とも称する。)に、再度、洗浄用溶媒を加えてスラリーとし攪拌した後にろ過する方法等が挙げられる。いずれの場合であっても、洗浄用溶媒を加えた際、攪拌した際に発生する泡を抑制、すなわち消泡する。
【0027】
消泡には、公知の消泡装置(脱泡装置または気泡除去装置ともいう)を用いることができる。例えば、剪断式消泡脱泡装置、遠心分離式脱泡装置等を用いて、液面上の泡を吸引して除去する方法が好ましい。吸引後、消泡装置内で泡は液化され、スラリーとすることで再利用する。
【0028】
剪断式消泡装置を用いる場合には、液面上の泡をブロワーにより吸引口より吸引して剪断式消泡装置内に引き込む。該装置内では回転円板とオリフィス板の間隙に作用するせん断力により泡を破壊する。
遠心分離式消泡装置を用いる場合には、液面上の泡をブロワーにより吸引口より吸引して遠心分離式消泡装置内に引き込む。該装置内では内部回転体の遠心力により泡を破壊する。
【0029】
消泡装置を用いて液面上の泡を吸引して除去する際、泡の吸引速度は特に限定されるものではないが、液面1mに対して1分間あたり、好ましくは10リッター以上、より好ましくは50リッター以上の範囲であり、また、好ましくは1000リッター以下、より好ましくは500リッター以下の範囲である。
【0030】
消泡装置で破壊された泡、すなわち、液化された洗浄用溶媒はスラリー状として消泡装置の排出口から前記金属製容器へ直接、または、次の洗浄工程に用いるために容器等へ排出された後、該容器等から前記金属製容器へ戻されることにより、再利用することで全て十分に洗浄を行う。液化された洗浄用溶媒が、前記金属製容器へ戻される量は特に限定されるものではないが、液面1mに対して1分間あたり、好ましくは0.5リッター以上、より好ましくは2.5リッター以上の範囲であり、また、好ましくは50リッター以下、より好ましくは25リッター以下の範囲である。
【0031】
本発明によれば、金属製容器内で、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させ攪拌して、ポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際に、泡滞留物からの腐食により発生する錆等の不純物量を抑制することが可能である。ポリアリーレンスルフィド樹脂中に含まれる金属量については特に限定されるものではないが、好ましくは、洗浄工程後に得られるポリアリーレンスルフィド樹脂中に含まれる溶出金属量として50ppm以下とすることもでき、さらに好ましくは30ppm以下とすることもできる。
また、洗浄による泡の除去により、泡と伴に流動せずに付着部に留まっていた副生成物の除去も十分なものとなり、ポリアニーレンスルフィド樹脂中に残存する副生成物を低減することもでき、それにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂が本来有する各種性能も向上するため好ましい。
【0032】
ここで、洗浄用溶媒としては、重合用溶媒と混和し、かつ、ポリアリーレンスルフィド樹脂に対して洗浄時の温度範囲で貧溶媒であるものを用いることができる。例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール溶媒やフェノール溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6-ジクロロトルエン等のハロゲン溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、サリチル酸メチル、蟻酸エチル等のカルボン酸エステル溶媒および水が例示でき、なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、水が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、アセトン、酢酸エチル、水が特に好ましく、メタノール、アセトン、水がよりいっそう好ましく、水が特に好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
【0033】
洗浄工程において、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってポリアリーレンスルフィド樹脂や洗浄用溶媒が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させる際の温度に特に制限はないが、大気圧下でおこなうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での環流温度以下にすることが望ましく、前述した好ましい溶剤を用いる場合、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上から、洗浄効率の点でより好ましくは70℃以上から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下までの範囲である。
【0034】
洗浄工程において、ポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄用溶媒と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く特に限定はないが、たとえばポリアリーレンスルフィド樹脂に洗浄用溶剤を連続的にまたは複数回に分割して投入して攪拌すればよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを接触させる際の洗浄用溶媒の使用量に特に制限はないが、たとえばポリアリーレンスルフィド樹脂の理論収量に対して質量基準で、好ましくは2倍以上から、好ましくは100倍以下までの範囲である。この様な比率の範囲の場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒とを均一に混合し易く、効率よく消泡しつつ、かつ、未反応スルフィド化剤や副生成物を洗浄することが可能となるため好ましい。なお、ポリアリーレンスルフィド樹脂と洗浄用溶媒との接触を繰り返し行う場合は、すなわち、洗浄を繰り返す場合、より小さい比率でも良く、十分な効果を得られる場合が多い。
【0035】
以下に、洗浄用溶媒として水を用いた洗浄の態様について詳述する。
洗浄用溶媒として水を用いて洗浄する場合(以下、「水洗浄」という)、ポリアリーレンスルフィド樹脂に加える水の量は最終的に得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の理論収量に対して質量基準で2倍以上から10倍以下までの範囲にあることが洗浄効率の点から好ましく、上記の量の水を、好ましくは2回以上から、好ましくは10回以下、より好ましくは4回以下までの範囲で分割して水洗浄に供することが好ましい。前記水洗浄は、窒素ないし空気雰囲気下、溶媒温度が、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上から、洗浄効率の点でより好ましくは70℃以上から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下までの範囲である。前記水洗浄は、一回または複数回繰り返し行うことができる。複数回繰り返し水洗浄する場合、前記雰囲気・温度条件は同一でも異なっていても良い。
【0036】
水洗浄を行った場合、残留する前記未反応スルフィド化剤や前記副生成物の多くは除去されるが、除去しきれずに残留するものもあるため、さらに100℃以上から275℃以下までの範囲の水と接触させた後に固液分離し(以下、「熱水洗浄」ということがある)することが好ましい。
【0037】
熱水洗浄の温度は、例えば、120℃以上から275℃以下までの範囲であることが好ましい。更に具体的には、反応器内の気相の圧力を0.2MPa以上から4.6MPa以下までの条件下、140℃以上から260℃以下までの範囲の熱水で抽出処理を行うことが好ましい。
【0038】
このような熱水洗浄を行う具体的方法は、前記の水洗浄後に濾別されたポリアリーレンスルフィド樹脂を圧力容器中において所定の圧力条件及び温度条件下に熱水を加えて、さらに攪拌することにより洗浄する方法が挙げられる。熱水洗浄時の水量はポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは200質量部以上から、好ましくは10000質量部以下、より好ましくは5000質量部以下、さらに好ましくは1000質量部以下の範囲である。までの範囲であることが好ましく、この量の熱水を2回以上に分けて熱水洗浄を行ってもよい。例えば、熱水洗を2回繰り返す場合、1回目の熱水洗と2回目の熱水洗の間にはろ過を行い、熱水を加えてから、2回目の攪拌を行うことが好ましい。また、熱水洗を一回実施した後に濾過を行い、前記した水洗浄を実施しても良い。また1回目の熱水洗浄工程と2回目の熱水洗浄工程の条件は前記の条件より任意に選ぶことができるものの、1回目の熱水洗浄工程の温度は例えば120℃以上から200℃以下までの範囲にある温度に設定して、まず高アルカリ性の濾液を濾別して除去した後に、2回目の熱水洗浄工程の温度を1回目の熱水洗浄工程の温度より高い温度、例えば150℃以上から275℃以下までの範囲にある温度に設定して実施することが前記熱水洗浄で用いられる金属製容器からの不純物低減の点から好ましい。
【0039】
なお、熱水洗浄に際して、熱水洗浄前、熱水洗浄時あるいは熱水洗浄後に酸や塩基を添加してpH調整をすることができ、特にポリアリーレンスルフィド樹脂中に副成分として含まれることがあるカルボキシアルキルアミノ基含有化合物においてカルボキシ基がアルカリ金属塩となることによって、水に抽出され易くなる。このことから、熱水洗後のpHが10.0以上から13.0未満の範囲になるように制御することが好ましい。その際に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、炭酸、酢酸、シュウ酸等が挙げられ、これらの中でも炭酸、酢酸、シュウ酸が好ましい。また、常圧または加圧下で炭酸ガスを導入し接触させても良い。一方、塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、または炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウム等が挙げられ、これらの中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
【0040】
洗浄工程において使用される金属製容器としてはポリアリーレンスルフィド樹脂の製造に使用されるものであれば特に制限されるものではないが、少なくとも接液部が、ステンレス鋼や、チタン材、ジルコニウム材、ハステロイ合金などのクロムやモリブデン等を含むニッケル合金などの耐腐食性金属を用いて製造された容器が挙げられる。
また、当該金属製容器は各種の機構を備えていてもよい。例えば、撹拌機を有する金属製容器や、固液分離するための遠心分離機構を備えた金属製容器を用いることも可能であり、さらに、内部に撹拌翼を有し、且つ、底部に濾過用フィルターが配設された混合機能を有す金属製容器で行うことができる。また、100℃を超える熱水洗浄でも、撹拌機を有する水洗槽や、固液分離するための遠心分離機を用いることも可能であるが、容器内部に撹拌翼を有し、且つ、底部に濾過用フィルターが配設された密閉型あるいは密閉可能な混合機能を有す容器内で行うことができる。本発明において、洗浄は連続的に行っても良いし、バッチ式に行ってもいずれでも良い。
【0041】
洗浄工程を経て得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、その後、乾燥して粉末状ないし顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂として調製することができる。また、空気あるいは酸素富化空気中あるいは減圧条件下で熱処理を行い、酸化架橋させてもよい。この熱処理の温度は、目標とする架橋処理時間や処理する雰囲気によっても異なるものの、180℃以上から270℃以下までの範囲であることが好ましい。また、前記熱処理は押出機等を用いてポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上で、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融した状態で行ってもよいが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の熱劣化の可能性が高まるため、融点プラス100℃以下で行うことが好ましい。
【0042】
本発明により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、更に強度、耐熱性、寸法安定性等の性能を更に改善するために、各種充填材と組み合わせたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用することが出来る。充填材としては、特に制限されるものではないが、例えば、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等が使用出来る。また無機充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が使用出来る。また、成形加工の際に添加剤として離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤等の各種添加剤を含有せしめることができる。
【0043】
更に、本発明により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、用途に応じて、適宜、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂、或いは、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム等のエラストマーといった樹脂を配合してポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用してもよい。
【0044】
本発明の製造方法によって得られたポリアリーレンスルフィド樹脂およびその組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形の如き公知の各種溶融成形により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物に加工することができる。
【0045】
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、金属異物が少なく、溶融粘度を更に高めることが可能となり、ポリアリーレンスルフィド樹脂が本来有する耐熱性、寸法安定性等の諸性能に加え、機械的強度をさらに向上させることが可能であり、その成形品は、例えば、コネクタ、プリント基板及び封止成形品等の電気・電子部品、ランプリフレクター及び各種電装品部品などの自動車部品、各種建築物、航空機及び自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品、カメラ部品及び時計部品などの精密部品等の射出成形若しくは圧縮成形、若しくはコンポジット、シート、パイプなどの押出成形、又は引抜成形などの各種成形加工用の材料として、或いは繊維若しくはフィルム用の材料として幅広く有用である。
【実施例
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
【0047】
[比較例1]
〔合成例1〕
(重合工程) ポリフェニレンスルフィドの重合工程
圧力計、温度計、コンデンサー、デカンター、を付けた撹拌翼付き150Lオートクレーブにp-ジクロロベンゼン(以下、DCBと略す)33.222kg(226mol)、NMP2.280kg(23mol)、47.23質量%水硫化ソーダ27.300kg(230mol)、及び49.21質量%苛性ソーダ18.533kg(228mol)を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで5時間掛けて昇温して、水27.3kgを留出させた後、釜を密閉した。脱水時に共沸により留出したDCBはデカンターで分離して随時釜内に戻し、脱水終了後の釜内は無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散した状態であった。更に、内温を160℃に冷却し、NMP47.492kg(479mol)を仕込み、185℃まで昇温した。留出したDCBと水の混合蒸気はコンデンサーで凝縮し、デカンターで分離して、DCBは釜へ戻した。留出水量は179gであった。次に、内温200℃から230℃まで3時間かけて昇温し、1時間撹拌した後、250℃まで昇温し1時間撹拌して反応終了後、オートクレープの底弁を開いて減圧状態のまま撹拌翼付き150リットル真空撹拌乾燥機(脱溶媒機ジャケット温度120度)にフラッシュさせてN-メチル-2-ピロリドンを抜き取り、室温まで冷却し、サンプリングした結果、不揮発分58%のPPS混合物を得た。
【0048】
(精製工程)
次に、室温まで冷却した混合物36kgを、真空乾燥機で150℃、2時間減圧し、NMPを留去して固形状残渣を得た後、ステンレス製容器(直径585mm×高さ898mm。壁面に底面からの高さを表記)に移した。続いて、得られた固形状残渣100質量部に対し、70℃のイオン交換水600質量部となる割合で加えた。その際、液面を基準点とした。その後、10分間撹拌し発泡させ、イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、発生した泡が到達した壁面の最も高い位置を計測し、基準点からの高さを算出した。
【0049】
その後、ろ過し、ろ過後の含水ケーキに70℃のイオン交換水を前記固形状残渣100質量部に対し600質量部となる割合で加えて10分間攪拌した。イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、発生した泡が到達した壁面の最も高い位置を計測し、基準点からの高さを算出した。この操作を9回行った。
【0050】
得られた含水ケーキを熱風乾燥機を用いて120℃で4時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は45Pa・sであった。
精製工程において計測した、基準点からの高さを算術平均して、表1に示した。また、得られたポリマー中の鉄原子含有量を測定し、その合計量を表1に示した。
【0051】
[実施例1]
(重合工程)
比較例1と同様にして、不揮発分58%のPPS混合物を得た。
(精製工程)
次に、室温まで冷却した混合物36kgを真空乾燥機で150℃、2時間減圧し、NMPを留去して固形状残渣を得た。その後、予め剪断式消泡装置(テクノアイ社製「Disc Defoamer」)を備え付けた前記ステンレス製容器に移した。続いて、得られた固形状残渣100質量部に対し、70℃のイオン交換水600質量部となる割合で加えた。その際、液面を基準点とした。その後、10分間撹拌し発泡させ、イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、発生した泡が到達した壁面の最も高い位置を計測し、基準点からの高さを算出した。イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、剪断式消泡装置を稼働させ、発生した泡を剪断式消泡装置の吸込口から、液面1m当たり200リッター/分の割合で吸引することにより、スラリー液面の泡を消泡した。吸引は、液化された泡が5リッター/分の割合でステンレス製容器内に戻る速度で行った。イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、発生した泡が到達した壁面の最も高い位置を計測し、基準点からの高さを算出した。
【0052】
その後、ろ過し、ろ過後の含水ケーキに70℃のイオン交換水を前記固形状残渣100質量部に対し600質量部となる割合で加えて10分間攪拌した。イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、剪断式消泡装置を稼働させ、発生した泡を剪断式消泡装置の吸込口から吸引することにより、スラリー液面の泡を消泡した。吸引は、液化された泡が5リッター/分の割合でステンレス容器内に戻る速度で行った。イオン交換水を加えてから攪拌終了までの間、発生した泡が到達した壁面の最も高い位置を計測し、基準点からの高さを算出した。この操作を9回行った。
得られた含水ケーキを遠心濾過機にて濾過した後、熱風乾燥機を用いて120℃で4時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は45Pa・sであった。
精製工程において計測した、基準点からの高さを算術平均して、表1に示した。また、得られたポリマー中の鉄含有量を測定し、その合計量を表1に示した。
【0053】
[実施例2]
剪断式消泡装置を用いた点を、遠心式消泡装置(豊興工業社製「バブけスII」)を用いた点に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。実施例1と同様、精製工程において計測した、基準点からの高さを算術平均して、表1に示した。また、得られたポリマー中の鉄含有量を測定し、その合計量を表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
(測定例)鉄含有量の測定
得られたポリマーを500℃で焼成し、次いで530℃で6時間焼成して得られた灰分を塩酸で溶解し、原子吸光光度計(島津製作所製「AA-6300」)で測定した。