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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】N型シリコン単結晶ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240402BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20240402BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C30B29/06 C
C30B33/00
C30B15/00 Z
H01L21/304 611
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020170112
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061877
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】陣祐 徹寛
(72)【発明者】
【氏名】竹安 志信
(72)【発明者】
【氏名】添田 聡
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-058800(JP,A)
【文献】特開2004-224577(JP,A)
【文献】特開2002-047095(JP,A)
【文献】特開2013-256445(JP,A)
【文献】特開2007-031187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 -35/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法によりAlをドープして製造したN型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことを含むN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、
前記CZ法により、酸素濃度が8ppma以下であり且つ抵抗率が30Ω・cm以上である前記N型シリコン単結晶を製造し、
予め、前記N型シリコン単結晶のライフタイム値と、前記N型シリコン単結晶の製造終了から前記ウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との間の関係を求め、
前記関係に基づいて、前記N型シリコン単結晶の前記ブロックについての、切り出した前記ウェーハにOSFが発生しない、前記N型シリコン単結晶の製造を終了してから前記ウェーハに切り出すまでの最長保管日数を決定し、
前記決定した最長保管日数までに、前記N型シリコン単結晶の前記ブロックから前記ウェーハを切り出すことを特徴とするN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項2】
化率が大きいブロックほど前記最長保管日数が短くなるように、前記最長保管日数を決定することを特徴とする請求項1に記載のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記CZ法は、同一ルツボから複数本の単結晶を引き上げるマルチプーリング法であって、
総結晶重量/総投入原料重量で算出される総合固化率が大きいブロックほど前記最長保管日数が短くなるように、前記最長保管日数を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記CZ法は、同一ルツボから複数本の単結晶を引き上げるマルチプーリング法であって、
前記最長保管日数の決定において、
前記ライフタイム値と、前記ウェーハに切り出すまでの前記日数と、前記OSF発生の有無との間の前記関係に基づいて、OSFの発生確率を予測し、前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、前記OSFの発生確率の高さに応じてランク付けする第1工程と、
前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、固化率によりランク付けする第2工程と、
前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、総結晶重量/総投入原料重量で算出される総合固化率によりランク付けする第3工程と
を行ない、
前記第1工程から前記第3工程において、各ランクをそれぞれ数値化し、対象のブロックについて、前記第1工程から前記第3工程での各ランクの数値を合計した数値を求め、
該合計した数値が所定の値以下となるように、前記対象のブロックについての前記最長保管日数を決定し、
前記最長保管日数に基づいて、前記対象のブロックの保管日数の管理を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記N型シリコン単結晶のライフタイムの測定は、前記N型シリコン単結晶のテール部の位置から切り出したサンプルを用いて行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N型シリコン単結晶ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CZ法によるシリコン単結晶の製造では、黒鉛ルツボに内挿した石英ルツボ内に多結晶シリコンを充填し、黒鉛ルツボの外周より黒鉛ヒーターで加熱溶融してシリコン融液とし、融液に引上げワイヤーで吊下げられた種結晶を浸漬し、種結晶を回転しながら上方に引上げてシリコン単結晶を成長させる。
【0003】
成長する単結晶は、P型とN型の2種類の導電型があり、原料の多結晶シリコンに3価または5価の元素をドーパントとして加える事で、導電型が造り分けられる。ここでP型のドーパントに3価元素のボロン等が用いられ、N型のドーパントに5価元素のリン、アンチモン等が使用される。
【0004】
CZ法によるシリコン単結晶には、酸化誘起積層欠陥(以下、OSFと表記)が発生する事がある。このOSFは、単結晶をウェーハにスライスし(切り出し)、ポリッシング(鏡面研磨)したウェーハ(以下、PWと表記)に集積回路素子を製造する際に種々の障害をもたらし、集積回路素子の製造歩留を著しく低下させる為、OSFの発生しないシリコン単結晶が望まれる。OSFの発生は単結晶中の重金属不純物が核となって起こるとされ、近年、原料の多結晶シリコンの高純度化、炉内の黒鉛部品と石英ルツボの高純度化等によりOSFの発生が減少してきた。
【0005】
ところで、N型のシリコン単結晶においては、結晶引上げ後の初期のOSF検査では全くOSFが発生していなくてもインゴット状態で長期間、常温で保存すると、その後のOSF検査でOSFが多発する事があり、これは単結晶中の微量不純物が常温保存中に徐々に拡散、凝集してOSFの核を形成する為と考えられた。そこで、単結晶インゴットの低温貯蔵方法(特許文献1)が考案された。しかし、低温で貯蔵するには冷凍設備等が必要となる。また、比較的短時間の保存後に切断してスライスして研磨したPWではOSFの形成が抑制される事が分かった。
【0006】
その後、研究が進み、OSF経時変化と使用した石英ルツボの含有不純物との関係から、OSF経時変化を起こさない為には、石英ルツボのCu濃度が0.5ppbw以下であり、内表層のAl濃度が一定量必要である事が分かった。また、そのAlは単結晶の引上げ初期に必要量が原料融液中に溶け込む必要がある事が分かった。そして、N型のシリコン単結晶中に取り込まれるCuの量を減少させ、OSF経時変化を抑制するAlの量を単結晶中に所定量ドープする事により、ほぼ完全にOSF経時変化を起こさないN型のシリコン単結晶の製造方法が見出された(特許文献2)。
【0007】
ところが、酸素濃度が8ppma以下で、かつ、抵抗率が30Ωcm以上のN型の単結晶においては、所定量のAlをドープしていたものであっても、単結晶をPWに加工するまでの間、インゴット状態で長期間保管していた単結晶から切り出したPWでは、経時変化によりOSFが発生することが分かった。この為、この様なAlドープをした低酸素濃度で高抵抗率のN型の単結晶は短期間でインゴットからウェーハを切り出す様にした。しかし、低酸素濃度で高抵抗率のN型の単結晶の要求量が増えると、生産計画やウェーハ保存に大きな問題が生じていた。
【0008】
このように短期間でインゴットからウェーハを切り出す類似の技術として、特許文献3に記載のシリコンウェーハの製造方法では、偏在LPDの発生を防止または抑制できる方法として、ホウ素濃度が5×1014~7×1014atoms/cm、かつ、酸素ドナー濃度が4×1014~8×1014atoms/cmである場合に、インゴットの結晶育成完了後50日以内に、インゴットからウェーハを切り出すとしている。しかし、ここでの偏在LPDは、特許文献3の段落0010に記載の通り、特許文献3の出願時においてはデバイス(集積回路素子)の特性に問題を与える事はないと考えられるものであり、OSFのように集積回路素子の製造歩留を著しく低下させるものとは課題が異なる。また、この偏在LPDはホウ素濃度と酸素ドナー濃度とがほぼ同じであるP/N型反転(混在)領域に、ニッケル(Ni)、または銅(Cu)がトラップされる事を一因として形成されると考えられるものである。すなわち、特許文献3で対象とするウェーハは、N型の単結晶ウェーハとは導電型が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-58800号公報
【文献】特開平8-73293号公報
【文献】特開2017-200878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、PWでのOSF発生を防止できるN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、CZ法によりAlをドープして製造したN型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことを含むN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、
予め、前記N型シリコン単結晶のライフタイム値と、前記N型シリコン単結晶の製造終了から前記ウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との間の関係を求め、
前記関係に基づいて、前記N型シリコン単結晶の前記ブロックについての、切り出した前記ウェーハにOSFが発生しない、前記N型シリコン単結晶の製造を終了してから前記ウェーハに切り出すまでの最長保管日数を決定し、
前記決定した最長保管日数までに、前記N型シリコン単結晶の前記ブロックから前記ウェーハを切り出すことを特徴とするN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法を提供する。
【0012】
N型シリコン単結晶のライフタイム値と、N型シリコン単結晶の製造終了からウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との間の関係に基づいて、切り出したウェーハにOSFが発生しない最長保管日数を決定し、この最長保管日数までに、N型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことにより、このようにして切り出したウェーハを研磨して得られるPWでのOSF発生を防止することができる。そのため、PW不良によるロスを防止することができる。
【0013】
また、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、各ブロックのスライス(切り出し)までの日数を管理する際、どのブロックを優先的に切り出すべきかを明確にでき、OSFの経時変化のしやすさを基準として各ブロックの切り出し加工(スライス加工)を順序良く計画的に進める事ができ、効率的に切り出し加工ができる。
【0014】
結晶位置の固化率が大きいブロックほど前記最長保管日数が短くなるように、前記最長保管日数を決定することが好ましい。
【0015】
N型シリコン単結晶のブロックの結晶位置の固化率を更に考慮に入れて決定した最長保管日数までにN型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことにより、PWでのOSF発生を更に確実に防止しながら、OSFの経時変化のしやすさを基準として各ブロックの切り出し加工をより計画的に進める事ができ、更に効率的に切り出し加工ができる。
【0016】
前記CZ法は、同一ルツボから複数本の単結晶を引き上げるマルチプーリング法であってもよく、この場合、総合固化率が大きいブロックほど前記最長保管日数が短くなるように、前記最長保管日数を決定することが好ましい。
【0017】
マルチプーリング法を用いる場合、N型シリコン単結晶のブロックの総合固化率を更に考慮に入れて決定した最長保管日数までにN型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことにより、PWでのOSF発生を更に確実に防止しながら、OSFの経時変化のしやすさを基準として各ブロックの切り出し加工をより計画的に進める事ができ、更に効率的に切り出し加工ができる。
【0018】
例えば、前記CZ法が同一ルツボから複数本の単結晶を引き上げるマルチプーリング法である場合、
前記最長保管日数の決定において、
前記ライフタイム値と、前記ウェーハに切り出すまでの前記日数と、前記OSF発生の有無との間の前記関係に基づいて、OSFの発生確率を予測し、前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、前記OSFの発生確率の高さに応じてランク付けする第1工程と、
前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、固化率によりランク付けする第2工程と、
前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、総合固化率によりランク付けする第3工程と
を行ない、
前記第1工程から前記第3工程において、各ランクをそれぞれ数値化し、対象のブロックについて、前記第1工程から前記第3工程での各ランクの数値を合計した数値を求め、
該合計した数値が所定の値以下となるように、前記対象のブロックについての前記最長保管日数を決定し、
前記最長保管日数に基づいて、前記対象のブロックの保管日数の管理を行うことが好ましい。
【0019】
以上のように、OSFの発生確率の高さ、固化率、及び総合固化率に関してランク付けし、各ランクを数値化したものを合計し、合計した数値が所定の値以下のとなるように最長保管日数を決定し、決定した最長保管日数に基づいてブロックの保管日数の管理を行うことにより、PWでのOSF発生を更に確実に防止しながら、OSFの経時変化のしやすさを基準として各ブロックの切り出し加工をより計画的に進める事ができ、更に効率的に切り出し加工ができる。
【0020】
前記N型シリコン単結晶のライフタイムの測定は、前記N型シリコン単結晶のテール部の位置から切り出したサンプルを用いて行うことが好ましい。
【0021】
N型シリコン単結晶のテール部の位置から採取したサンプルで得られたライフタイムを考慮して上記最長保管日数を決定し、決定した最長保管日数までにウェーハの切り出しを行うことにより、PWでのOSF発生を更に確実に防止することができる。
【0022】
前記CZ法により、酸素濃度が8ppma以下であり且つ抵抗率が30Ω・cm以上である前記N型シリコン単結晶を製造することができる。
【0023】
本発明によれば、特にOSFの経時変化を生じ易い酸素濃度が8ppma以下であり且つ抵抗率が30Ω・cm以上であるN型シリコン単結晶のブロックから切り出して得られたPWにおいても、OSF発生を防止できる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法であれば、切り出したウェーハを研磨して得られるPWでのOSF発生を効果的に防止できる。そのため、PW不良によるロスを防止することができる。
【0025】
したがって、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法は、先に説明した、N型の単結晶において、所定量のAlをドープしたにもかかわらずOSFが経時変化するという現象に、例えば冷凍設備等を用いずとも、対応することができる。
【0026】
また、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、各ブロックのスライス(切り出し)までの日数を管理する際、どのブロックを優先的に切り出すべきかを明確にでき、OSFの経時変化のしやすさを基準として各ブロックの切り出し加工を順序良く計画的に進める事ができ、効率的に切り出し加工ができる。
【0027】
例えば、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、PWでのOSF発生を防止するために、OSFが発生しやすいブロックほど切り出すまでの日数が短くなるように保管日数を管理することができるし、又はOSFが発生しないブロックのみを選別して切り出し加工する選別方法にも適用できる。
【0028】
すなわち、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、OSFの発生を防止しながら、PWを高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法で用いることができる、ライフタイム値と、切り出しまでの日数と、OSF発生の有無との間の関係の一例を示すグラフである。
図2】N型シリコン単結晶のブロックの位置別のOSF発生率の一例を示すグラフである。
図3】N型シリコン単結晶のブロックのマルチ次数別のOSF発生率の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、PWでのOSF発生を防止できるN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法の開発が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、N型シリコン単結晶のライフタイム値と、N型シリコン単結晶の製造終了からウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との間の関係に基づいて、切り出したウェーハにOSFが発生しない最長保管日数を決定し、この最長保管日数までに、N型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことにより、切り出したウェーハを研磨して得られるPWでのOSF発生を効果的に防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明は、CZ法によりAlをドープして製造したN型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことを含むN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法であって、
予め、前記N型シリコン単結晶のライフタイム値と、前記N型シリコン単結晶の製造終了から前記ウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との間の関係を求め、
前記関係に基づいて、前記N型シリコン単結晶の前記ブロックについての、切り出した前記ウェーハにOSFが発生しない、前記N型シリコン単結晶の製造を終了してから前記ウェーハに切り出すまでの最長保管日数を決定し、
前記決定した最長保管日数までに、前記N型シリコン単結晶の前記ブロックから前記ウェーハを切り出すことを特徴とするN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法である。
【0033】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
一般にライフタイム値(以下、LT値と表記することもある)が低いほどN型シリコン単結晶中のFe、Cu、Ni等の金属濃度が高く、逆にLT値が高いほど前記金属濃度が低い。従って、N型シリコン単結晶のLT値が低いほどN型シリコン単結晶中の金属濃度が高い事になり、OSF経時変化が進行しやすい事になる。
【0035】
OSF経時変化が進行しやすいN型シリコン単結晶のブロックほど、N型シリコン単結晶の製造を終了してからウェーハに切り出すまでの最長保管日数(スライスまでの日数)を短くする事により、PWでのOSF発生をより効果的に防止する事ができる。
【0036】
上記の通り、LT値とOSF経時変化の進行のしやすさとには相関関係があるので、LT値と、N型シリコン単結晶の製造終了からウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との間にも、互いに相関関係がある。本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、これらの相関関係に基づいて、切り出したウェーハにOSFが発生しない、N型シリコン単結晶の製造を終了してからウェーハに切り出すまでの最長保管日数を決定し、この決定した最長保管日数までにN型シリコン単結晶のブロックからウェーハを切り出すことにより、切り出したウェーハを研磨して得られるPWでのOSF発生を防止することができる。そのため、PW不良によるロスを防止することができる。
【0037】
また、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、N型シリコン単結晶のブロック毎に、ウェーハに切り出すまでの最長保管日数を決定できるので、各ブロックのスライス(切り出し)までの日数を管理する際、どのブロックを優先的に切り出すべきかを明確にでき、OSFの経時変化のしやすさを基準として各ブロックの切り出し加工を順序良く計画的に進める事ができ、効率的に切り出し加工ができる
【0038】
例えば、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、OSFが発生しやすいブロックほど切り出すまでの日数が短くなるように保管日数を管理することができる。また、保管日数を鑑みて、OSFが発生しないブロックのみを選別して、切り出し加工を行うこともできる。これにより、切り出したウェーハを研磨して得られるPWでのOSF発生を防止することができる。
【0039】
また、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法では、N型シリコン単結晶ウェーハの保管に、冷凍設備等を使用してもよいが、冷凍設備等の使用を必須としない。
【0040】
すなわち、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法によれば、OSFの発生を防止しながら、PWを高い生産性及び低コストで製造することができる。
【0041】
以下、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法をより詳細に説明する。
【0042】
ライフタイム値を測定するN型シリコン単結晶は、CZ法により得られたN型シリコン単結晶インゴットと呼ぶこともできる。N型シリコン単結晶インゴットの製造終了を、上記N型シリコン単結晶の製造終了とすることができる。
【0043】
N型シリコン単結晶のライフタイム値の測定は、N型シリコン単結晶のテール部の位置から切り出したサンプルを用いて行うことが好ましい。テール部の位置(P側)でLT値の測定を行う理由は、単結晶中の金属濃度が、偏析により、テール側ほど高くなり、LT値がテール側ほど低い為である。
【0044】
ここでLT値は、例えば、引き上げたN型シリコン単結晶インゴットのテール側より採取したウェーハを用いて、マイクロ波光導電減衰法(μ-PCD法)により測定することができる。
【0045】
N型シリコン単結晶のブロックは、例えば、N型シリコン単結晶(N型シリコン単結晶インゴット)の直胴部から切り出すことにより得ることができる。
【0046】
1つのN型シリコン単結晶から、複数のブロックを得ることもできる。この場合、該単結晶のテール側(P側)に近いブロックほど切り出しまでの日数が短くなるように管理する事が好ましい。これは、単結晶中の金属濃度が偏析により固化率が大きいテール側ほど高く、テール側ほどOSF経時変化が進行しやすい事に対応するものであり、LT値が同じ結晶の中でもテール側ほど切り出しまでの日数を短くすることが好ましい。言い換えると、結晶位置の固化率が大きいブロックほど、上記最長保管日数が短くなるように、上記最長保管日数を決定することが好ましい。
【0047】
また、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法では、CZ法を同一ルツボから複数本の単結晶を引き上げるマルチプーリング法とすることができる。この場合、該単結晶の総合固化率(=総結晶重量/総投入原料重量)が大きいマルチ次数が高いほど切り出しまでの日数が短くなるように管理する事が好ましい。これは、マルチ次数が高くなるほど単結晶を引き上げる原料融液中の金属不純物濃度が偏析により高くなっていくからである。この為、LT値が同じ単結晶の中でもマルチ次数が高い結晶ほどOSF経時変化の進行が速く、切り出しまでの日数をより短くすることが好ましい。言い換えると、総合固化率が大きいブロックほど上記最長保管日数が短くなるように、上記最長保管日数を決定することが好ましい。
【0048】
例えば、前記CZ法が同一ルツボから複数本の単結晶を引き上げるマルチプーリング法である場合、
前記最長保管日数の決定において、
前記ライフタイム値と、前記ウェーハに切り出すまでの前記日数と、前記OSF発生の有無との間の前記関係に基づいて、OSFの発生確率を予測し、前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、前記OSFの発生確率の高さに応じてランク付けする第1工程と、
前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、固化率によりランク付けする第2工程と、
前記ウェーハに切り出す前記N型シリコン単結晶の前記ブロックを、総合固化率によりランク付けする第3工程と
を行ない、
前記第1工程から前記第3工程において、各ランクをそれぞれ数値化し、対象のブロックについて、前記第1工程から前記第3工程での各ランクの数値を合計した数値を求め、
該合計した数値が所定の値以下となるように、前記対象のブロックについての前記最長保管日数を決定し、
前記最長保管日数に基づいて、前記対象のブロックの保管日数の管理を行うことが好ましい。
【0049】
例えば、1つの好ましい態様では、N型シリコン単結晶ウェーハの製造方法において、測定したN型シリコン単結晶のテール側のLT値と切り出しまでの日数との相関グラフでPWでのOSFが発生する領域と発生しない領域、及び発生する領域と発生しない領域の境界領域とに区分し、OSF発生が多い領域ほど点数が高くなる点数(ランク)付け(T1)を行う(第1工程)と共に、テール側(P側)に近いブロックほど高くなる点数(ランク)付け(T2)(第2工程)をし、また、マルチ次数が高いほど高くなる点数(ランク)付け(T3)(第3工程)をし、これらの点数の合計T1+T2+T3が基準値を超えないようにブロックの保管日数の管理を行う。そして、合計T1+T2+T3が基準値を超えてしまった場合にはPWでのOSFが発生する可能性が高いブロックとして切り出し加工しないように選別する事が好ましい。この様に選別する事でOSFの発生する可能性の低いブロックのみを切り出し加工することが可能となりPWでのOSF発生を確実に防止する事ができる。
【0050】
具体例として、図1に、横軸にLT値、縦軸に切り出しまでの日数としてOSF発生ありとOSF発生なしをプロットした、第1工程で用いる一例のグラフを示す。図1のグラフに示す様に、近似線2より上の横縞領域ではPWでのOSF発生が80%を超えており、この領域を6点とし、さらに近似線1より下の縦縞領域ではPWでのOSF発生が0%であり、この領域を2点とした。そして、近似線1と近似線2の間の境界領域ではPWでのOSF発生率が50%であり、この領域を4点とした。
【0051】
また、図2に、第2工程で用いることができる、ブロックのテール側の結晶位置(コーン部側からの距離)別のOSF発生率の一例を棒グラフに示した。ここで、発生率はOSFが発生したブロック数/総ブロック数であり、値が大きいほど発生率が高い。結晶位置が100cm以下1点、180cm以下で2点とした。
【0052】
さらに、第3工程で用いることができる、マルチ次数別のOSF発生率点数の一例を、図3に示す。1本目~3本目で1点、4本目~6本目で2点とした。
【0053】
具体例を示すと、マルチ4本目、結晶位置120~160cmのブロック、LT値が1200μsの場合は、切り出しまでの最長保管日数が基準点の7点以下となる115日以下になるように管理する。このとき、保管日数が例えば60日の場合は、合計点数が2点+2点+2点=6点となる。この例では、PWでのOSF発生を起こさない基準値は6点であり、このブロックではPWでのOSF発生が起こらないと判断し、切り出してPWへの加工を行うものとする。
【0054】
本発明では、LT値、ブロックの結晶位置の固化率、及びマルチ次数(総合固化率)のOSF経時変化に対する影響の大きさについて数値化する方法は特に限定されず、上記のようにそれぞれの影響量を点数化しその合計が所定の値以下になるように保管日数を管理してもよいし、それぞれの影響量を係数化してこれらの係数の積を求めて、この積の値が所定の値以下になるように保管日数を管理してもよい。
【0055】
例えば他の好ましい態様では、前記最長保管日数の決定において、対象のブロックについて、上記第1工程においてOSF発生確率に関する係数Aを取得し、上記第2工程において結晶位置に対応する固化率による影響に関する係数Bを取得し、上記第3工程においてマルチ次数に対応する総合固化率による影響に関する係数Cを取得し、係数A、B及びCの積A×B×Cが基準値を超えないようにブロックの保管日数の管理を行う。そして、積A×B×Cが基準値を超えてしまった場合にはPWでのOSFが発生する可能性が高いブロックとして切り出し加工しないように選別する。この様に選別する事でOSFの発生する可能性の低いブロックのみを切り出し加工することが可能となりPWでのOSF発生を確実に防止する事ができる。
【0056】
単結晶中の酸素濃度が低いほど、金属不純物の拡散が進行しやすい傾向があり、この為、酸素濃度が8ppma以下である低酸素濃度の単結晶では、OSF経時変化を抑制できる所定量のAlを単結晶中にドープしていてもOSF経時変化が進行し、PWでのOSFが発生しやすい。しかしながら、本発明のN型シリコン単結晶ウェーハの製造方法では、CZ法により酸素濃度が8ppma以下であり且つ抵抗率が30Ω・cm以上である前記N型シリコン単結晶を製造し、このN型シリコン単結晶のブロックから切り出して得られたPWにおいても、OSFの発生を十分に防止できる。
【実施例
【0057】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
(実験例)
引上装置の主チャンバー外周に水平磁場を印加する超電導磁石が配置されたMCZ引上装置を準備した。この装置において、口径26インチ(650mm)の石英ルツボ内で多結晶シリコン原料180kgと一緒にPとAlのドープ剤を溶融し、原料融液を得た。この原料融液から、4000ガウスの水平磁場を印加しながら、直胴部長さが160cmとなるまで引き上げて、N型、直径205mm、<100>、抵抗率45~65Ωcm、酸素濃度5.5ppm以下のシリコン単結晶を取り出した。
【0059】
取り出し後、取り出した単結晶の重量分の原料をリチャージし、溶融後にドープ剤のPを投入し、同条件で同品質の2本目の単結晶を引き上げた。同様に引上げとリチャージを繰り返し、同条件で同品質の3本目、4本目、5本目、6本目の単結晶を引き上げた。
【0060】
そして、引き上げた6本の単結晶について、直胴部を製品直径200mmまで円筒研磨し、該直胴部を長さ40cmずつのブロック1~4に4等分し、ブロックをストッカーに保管した。また、引き上げた6本の単結晶について、各テール側よりウェーハを採取し、採取したウェーハを用いてマイクロ波光導電減衰法によりLT値を測定した。
【0061】
次に、予め、N型シリコン単結晶のライフタイム値と、N型シリコン単結晶の製造終了からウェーハに切り出すまでの日数と、OSF発生の有無との関係を求めるため、20日ごとに各ブロックからサンプルウェーハを切り出し、PWに加工した。PWに加工後、OSF検査を実施したところ、図1に示す結果が得られた。
【0062】
Alをドープして製造した直径200mm、<100>、抵抗率45~65Ωcm、酸素濃度5.5ppma以下のリンドープN型シリコン単結晶ウェーハについて、OSFの発生しない切り出しまでの最長保管日数yと、テール側で測定したLT値xとの関係を調べると、y=0.692x-713.85という関係式1(近似線1)で表された。
【0063】
そして、この関係式より、図1でLT値が1150μsの場合はOSFの発生しない最長保管日数が82日と求められた。ここで、LT値1150μsの場合のOSFが発生しやすい領域は、最長保管日数が112日を超える場合であり、OSFが発生しない領域のブロックの最長保管日数を1とした場合にその比率である係数Aは112/82=1.37だった。
【0064】
そして、LT値が1150μsの場合には、保管日数が82日を超え、112日以下の場合に比率Aが1.0~1.37となり、この境界領域(係数Aが1.0~1.37)でのOSF発生率が50%以下であった。
【0065】
一方、OSFの発生しやすい切り出しまでの最長保管日数yと、テール側で測定したLT値xとの関係を調べると、y=0.692x-683.85という関係式2(近似線2)で表された。
【0066】
また、各ブロックのテール側の結晶位置(コーン部側からの距離)別のOSF発生率を調べ、ランク付けをした。その結果を図2に棒グラフとして示す。そして、マルチ次数別のOSF発生率を調べ、ランク付けをした。その結果を図3に棒グラフとして示す。
【0067】
(実施例1)
実施例1では、図1に基づいて、LT値が1150μsの場合、PWでOSFが発生しない最長保管日数を82日に決定した。同様に、LT値が1200μsでは最長保管日数を117日に決定し、1100μsでは最長保管日数を47日に決定した。このようにして、LT値から図1の最長保管日数の関係式1に従い、ブロックの保管日数の管理を行い、この保管日数の条件を満足したブロックのみを切り出した。その結果、PWに加工後にOSFは発生しなかった。
【0068】
(実施例2)
実施例2では、LT値、ブロック位置、及びマルチ次数のOSF経時変化に対する影響量を図1図3に示すように数値化して合計点数が6点以下になるようにブロックの保管日数管理を行い、この保管日数の条件を満足したブロックのみを切り出した。その結果、PWに加工後にOSFは発生しなかった。
【0069】
(実施例3)
実施例3では、以下に説明するように、係数の積A×B×Cに基づいて、ブロックの保管日数管理を行なった。
【0070】
図1に示すグラフにおける境界領域(4点の領域;係数Aが1.0~1.37)でOSFが発生しない場合を調べると、ブロックのテール側の結晶位置(コーン部からの距離)が100cm以下であり、かつ、マルチ次数が1本目~3本目までの場合だった。これを言い換えるとこの境界領域でOSFが発生する場合はブロックのテール側の結晶位置(コーン部からの距離)が120cm以上であり、かつ、マルチ次数が4本目~6本目までの場合だった。
【0071】
固化率とOSFが発生しない最長日数との関係は、LT値が1150μsの場合、平均日数でみると、固化率が18%以下で112日、35%以下で102日、52%以下で92日、70%以下で82日であり、固化率が高いほど平均日数が低くなっていった。ここで固化率による影響を係数Bとしてさらに考慮に加えて、A×Bが1.37以下となるように保管日数の管理を行なった。具体的には、固化率が18%以下でB=0.8とし、35%以下でB=0.9、52%以下でB=1.2とした。前記係数Aが1.42でOSFが発生しやすい領域でも、固化率が18%以下であるブロックは発生しにくい傾向となった。
【0072】
また、マルチ次数を含めた総合固化率(=総結晶重量/総投入原料重量)では、各本目の引上げ終了後に残湯中の不純物濃度が最も上昇し、その後、原料をリチャージすると、その不純物濃度が減少するという不純物の濃度の増減を繰り返しながら、マルチ次数が進むほど単結晶のテール側の不純物濃度が上昇し、次数の高い単結晶ほどテール側LT値が低くなる傾向があった。
【0073】
具体的には、マルチ次数が1本目のLT値が1150μsの場合、2本目が1130μs、3本目が1100μs、4本目が1040μs、のように次数が進むほどLT値が低下していった。そこで、マルチ次数による影響を係数Cとしてさらに考慮に加えて、A×B×Cが1.37以下となるように保管日数の管理を行った。例えば、マルチ次数が1本目でC=1.0、2本目でC=1.05、同様に3本目C=1.1、4本目C=1.15、5本目C=1.25、6本目C=1.35とした。
【0074】
例えば、前記A=1.0であっても、固化率40%でB=1.2、マルチ次数4本目でC=1.15であると、積A×B×Cが1.38となり、Aが1.37を超える場合と同様にOSFが発生しやすい傾向となった。
【0075】
そして、本実施例3では、図1の4点の領域のLT値であっても、このようなブロックの保管日数の管理を行い、積A×B×Cが1.37以下のブロックのみを切り出した。その結果、PWに加工後にOSFは発生しなかった。
【0076】
ここで、実施例3のように、この積A×B×Cを1.37以下にする管理方法と、実施例2のように、影響量の数値の合計した数値値を基準点である6点以下に管理する方法との整合性について説明する。
【0077】
合計点数方式である実施例2では、影響量の数値の合計した数値を6点以下となるように管理した。例えば、マルチ4本目(2点)、結晶位置70~100cm(1点)のブロック場合は、LT値が1200μsの場合、最長保管日数は関係式1から116日以下(2点)となる。
【0078】
そして、積A×B×Cで管理した実施例3では上記で説明したように、関係式1と関係式2と、係数A、B及びCで表される影響量から、積A×B×Cを1.37以下となるように管理した。例えば、固化率係数B=1.2、マルチ次数係数C=1.15である場合、積A×B×Cを1.37以下にするためには、LT値係数Aを0.99以下にする必要がある。そのため、この場合に決定する最長保管日数は、関係式1から求めた116日×0.99の115日以下となる。
【0079】
このように、実施例2のような簡便な点数方式で決定する最長保管日数と、実施例3のような3係数の積に基づいて決定する最長保管日数とはおおよそ一致した。
【0080】
(比較例1及び2)
比較例1及び2では、図1に示すようなライフタイム値と保管期間とOSF発生の有無との関係を考慮せずに、N型シリコン単結晶ウェーハを製造した。具体的には以下のとおりである。
【0081】
先に説明した実験例と同様の手順で、Alをドープして製造した直径200mm、<100>、抵抗率45~65Ωcm、酸素濃度5.5ppma以下のリンドープN型シリコン単結晶を製造した。
【0082】
比較例1では、テール側で測定したLT値が1100μsであり、マルチ次数が4本目のN型シリコン単結晶のうち、固化率が32%である結晶位置からブロックを得た。このブロックを、ストッカーに保管し、保管日数が40日、60日、及び80日の時点でそれぞれウェーハに切り出した。切り出したウェーハから得られたPWでのOSFの発生を調べると、40日が発生なし、60日と80日が発生ありとなった。
【0083】
比較例2では、テール側で測定したLT値が1150μsであり、マルチ次数が5本目のN型シリコン単結晶のうち、固化率が48%である結晶位置からブロックを得た。このブロックを、ストッカーに保管し、保管日数が60日、80日、及び100日の時点でそれぞれウェーハに切り出した。切り出したウェーハから得られたPWでのOSFの発生を調べると、60日及び80日が発生なし、100日が発生ありとなった。
【0084】
比較例1及び2の結果を、以下の表1にまとめた。
【0085】
【表1】
【0086】
このように、AlドープをしたN型単結晶であっても、高抵抗率、低酸素の単結晶では経時変化によりPWに加工後にOSFが発生した。そして、本発明に従って決定した最長保管日数までにN型単結晶のブロックからウェーハを切り出さなかった比較例1及び2では、PWでのOSF発生を防止できなかった。
【0087】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3