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特許7464005接合部材の解体方法及び接合部材並びに易解体性の液状シリコーン系接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】接合部材の解体方法及び接合部材並びに易解体性の液状シリコーン系接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/06 20060101AFI20240402BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240402BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240402BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240402BHJP
   C08J 11/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C09J5/06
C09J183/04 ZAB
C09J11/04
C09J11/06
C08J11/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021090750
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022183437
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 宜良
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208341(WO,A1)
【文献】特開2019-147874(JP,A)
【文献】特開2002-187973(JP,A)
【文献】特開2004-123943(JP,A)
【文献】国際公開第00/040648(WO,A1)
【文献】特開2019-123772(JP,A)
【文献】特開平05-125285(JP,A)
【文献】特開2015-071716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0329942(US,A1)
【文献】特開2019-031620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115368739(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 5/06
C08J 11/00
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化アルミニウムを35~70質量%含有する硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物で複数の部材同士が接合された接合部材について、該硬化物を160℃以上で1分間以上加熱することにより、前記複数の部材同士を分離して接合部材を解体する工程を含む接合部材の解体方法。
【請求項2】
硬化性液状シリコーン系接着剤が縮合硬化型液状シリコーン系接着剤又は付加硬化型液状シリコーン系接着剤のいずれかである請求項1記載の接合部材の解体方法。
【請求項3】
接合部材が180℃以上の耐熱性を有する金属製部材及び有機樹脂製部材から選ばれる同一又は異種の複数の部材同士が接合されたものである請求項1又は2記載の接合部材の解体方法。
【請求項4】
接合された複数の部材のうち少なくとも1個が金属製部材である請求項3に記載の接合部材の解体方法。
【請求項5】
加熱方法がジュール熱を利用した抵抗加熱方法である請求項1~4のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法。
【請求項6】
加熱温度が160℃以上で、かつ解体する部材の耐熱温度未満である請求項1~5のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法。
【請求項7】
上記硬化性液状シリコーン系接着剤における水酸化アルミニウムの含有量が35~65質量%である請求項1~6のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法。
【請求項8】
上記接合部材の解体が人手又はスクレーパーにより前記複数の部材から硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物を剥離する工程を含むものである請求項1~7のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法。
【請求項9】
上記接合部材が使用環境温度150℃以下で前記複数の部材の接合状態が維持されるものである請求項1~8のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法。
【請求項10】
接合部材が自動車部品又は電気・電子部品である請求項1~9のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法に用いられる接合部材。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の接合部材の解体方法に用いられる下記(A)~(E)成分を含有する易解体性の縮合硬化型液状シリコーン系接着剤。
(A)水酸化アルミニウム:全体量の35~70質量%、
(B)ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(C)ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~40質量部、
(D)硬化触媒:0.001~20質量部、及び
(E)シランカップリング剤:0.05~20質量部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車電装部品等の自動車部品、電気・電子製品などの回収、修理、リサイクル時の作業を容易に行うことができる硬化性液状シリコーン系接着剤を使用した接合部材の解体方法及び該方法に使用する接合部材並びに易解体性の液状シリコーン系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境にやさしく、コストも低減できる点から、様々な分野でリサイクル性が要求されている。自動車分野、電気・電子分野等においてもリサイクルするため、接合部材における部材同士の解体が必要とされている。一方で接合部材は外部の埃や水分の侵入を防ぎ、内部の部品を保護するために重要な役割を果たすため、確かなシール性能も求められる。そのシール性能は接着によるシールが最も優れるため、様々な条件(耐熱、耐湿など)においても接着性を維持することが求められる。そのため、通常は基材に硬化物が強く接着しており、接合部材の除去は容易ではない。
【0003】
硬化性樹脂組成物を用いた接合部材のリサイクル方法として、例えば、特開2003-026784号公報(特許文献1)には、ポリオール系の硬化性組成物を用いてなる接合部材を、150~200℃に加熱することにより軟化又は液状化させて、該硬化物で接合された部材同士を解体することが提案されている。また、特開2002-327163号公報(特許文献2)には、ウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化型接着剤を用いた接着構造物の接着部分に、ハロゲン系有機溶剤を接触させることにより、接着部分の接着力を低下させた後、接着部分から接着構造物の構成部材を剥離解体することが提案されている。更に、特開2008-120903号公報(特許文献3)には、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とするビニル系モノマー混合物からなる接着剤を用い、接合時には高い常態接着力を維持しつつ、接合部を分離・解体する際には、加熱により接着力が低下して、容易に分離・解体することができる再剥離型粘着テープが提案されている。そして、特許第6221630号公報(特許文献4)には、オキシアルキレン重合体に粘着性付与剤樹脂を含有させることによりリワーク可能であり、リワーク後も再結合でき、シール性能を維持できることが提案されている。
【0004】
一方、シリコーン系の接着剤やシーリング材は、上記の有機系接着剤より、耐熱性、耐候性等の特性に優れるため、自動車分野、電気電子分野、建築分野等で広く使用されている。その反面、熱をかけてもシリコーン系の接着剤やシーリング材が分解し難いため、修理あるいはリサイクルし難いという問題がある。
【0005】
部材同士の解体が容易で、かつ、シール性を発揮できるシリコーン系接着剤としてマスキング型シリコーン系接着剤が提案されている。接着付与剤を含まないマスキング型シリコーン系接着剤は、剥離性付与剤を添加してガラス、金属への離型性を付与したシリコーン系接着剤がある。しかし、このようなシリコーン系接着剤は、200℃を超える高温耐久において剥離性付与剤自体が熱分解してその効力を失い、部材とシリコーン系接着剤が熱により接着することで解体が難しく、回収・修理することが困難となる。
【0006】
そのため、シリコーン系接着剤で接着接合される用途においてもリサイクル可能な接合部材とその解体方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-026784号公報
【文献】特開2002-327163号公報
【文献】特開2008-120903号公報
【文献】特許第6221630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、接合された接着部材がシリコーン系の接着剤であり、室温(23℃±15℃、以下同じ)で、更に150℃程度の高温に晒された後もシール性能を発揮しつつ、160℃以上の高温に晒すことにより容易にリサイクルすることができる接合部材及びその接合部材の解体方法、並びに該接合部材に用いる易解体性の液状シリコーン系接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、電気・電子製品などの回収・修理、リサイクル作業の効率化を図るために、接合部材の接着部材として用いる硬化性液状シリコーン系接着剤に160℃付近から分解する水酸化アルミニウムを特定割合で配合することにより、該硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物で特に金属製及び/又は有機樹脂製等の複数(特には2個)の部材同士が接合された接合部材は、接合された接着部材(硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物)が室温、更に150℃程度の高温に晒された後もシール性を発揮しつつ、160℃以上の高温に晒すことによりシール性が低下することから、該接着部材(硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物)を160℃以上で1分間以上加熱することにより、前記金属製及び/又は有機樹脂製等の複数(特には2個)の部材同士を分離して接合部材を容易に解体することができ、該金属製及び/又は有機樹脂製等の部材をリサイクルすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明は、以下の接合部材の解体方法及び接合部材並びに易解体性の液状シリコーン系接着剤を提供する。
[1]
水酸化アルミニウムを35~70質量%含有する硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物で複数の部材同士が接合された接合部材について、該硬化物を160℃以上で1分間以上加熱することにより、前記複数の部材同士を分離して接合部材を解体する工程を含む接合部材の解体方法。
[2]
硬化性液状シリコーン系接着剤が縮合硬化型液状シリコーン系接着剤又は付加硬化型液状シリコーン系接着剤のいずれかである[1]記載の接合部材の解体方法。
[3]
接合部材が180℃以上の耐熱性を有する金属製部材及び有機樹脂製部材から選ばれる同一又は異種の複数の部材同士が接合されたものである[1]又は[2]記載の接合部材の解体方法。
[4]
接合された複数の部材のうち少なくとも1個が金属製部材である[3]に記載の接合部材の解体方法。
[5]
加熱方法がジュール熱を利用した抵抗加熱方法である[1]~[4]のいずれかに記載の接合部材の解体方法。
[6]
加熱温度が160℃以上で、かつ解体する部材の耐熱温度未満である[1]~[5]のいずれかに記載の接合部材の解体方法。
[7]
上記硬化性液状シリコーン系接着剤における水酸化アルミニウムの含有量が35~65質量%である[1]~[6]のいずれかに記載の接合部材の解体方法。
[8]
上記接合部材の解体が人手又はスクレーパーにより前記複数の部材から硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物を剥離する工程を含むものである[1]~[7]のいずれかに記載の接合部材の解体方法。
[9]
上記接合部材が使用環境温度150℃以下で前記複数の部材の接合状態が維持されるものである[1]~[8]のいずれかに記載の接合部材の解体方法。
[10]
接合部材が自動車部品又は電気・電子部品である[1]~[9]のいずれかに記載の接合部材の解体方法。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の接合部材の解体方法に用いられる接合部材。
[12]
[1]~[10]のいずれかに記載の接合部材の解体方法に用いられる下記(A)~(E)成分を含有する易解体性の縮合硬化型液状シリコーン系接着剤。
(A)水酸化アルミニウム:全体量の35~70質量%、
(B)ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(C)ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~40質量部、
(D)硬化触媒:0.001~20質量部、及び
(E)シランカップリング剤:0.05~20質量部。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接合部材の解体方法によれば、室温から150℃程度の高温まで接着性及び/又はシール性を発揮しつつも、160℃以上の高温に晒すことにより硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物の接着性及び/又はシール性を低下させて容易に複数の部材、特に金属製及び/又は有機樹脂製等の複数(特には2個)の部材同士を分離して接合部材を解体できるため、該金属製及び/又は有機樹脂製等の部材を容易にリサイクルすることができる。また、該接合部材の接着部材として用いられる硬化性液状シリコーン系接着剤は、耐熱性が必要であり、かつリサイクルが必要な接合箇所の接着剤又はシール材として有用である。
なお、本発明において、解体する部材の「耐熱温度」とは、当該部材を特定の温度下に1分間静置した際に、該部材が熱分解又は軟化を生じない温度の上限を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の接合部材の解体方法は、水酸化アルミニウムを35~70質量%含有する硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物で複数の部材、特に金属製及び/又は有機樹脂製等の同一又は異種の複数の(特には2個の)部材同士が接合された接合部材について、該硬化物を160℃以上で1分間以上加熱することにより、該硬化物の接着力を低下させて、該硬化物で接合された複数の部材、特に金属製及び/又は有機樹脂製等の部材同士を分離して接合部材を解体する工程を含むものである。
【0013】
〔硬化性液状シリコーン系接着剤〕
本発明に使用される硬化性液状シリコーン系接着剤は、硬化して複数の部材、特に金属製及び/又は有機樹脂製等の部材同士を接合する接着部材となるもので、水酸化アルミニウムを35~70質量%含有し、主鎖がシロキサン結合からなる高分子をベースポリマーに使用した接着剤であり、硬化タイプは、縮合硬化型、付加反応硬化型が好ましい。
【0014】
〔水酸化アルミニウム〕
本発明の接合部材の解体方法において使用する、硬化性液状シリコーン系接着剤(好ましくは縮合硬化型液状シリコーン系接着剤又は付加硬化型液状シリコーン系接着剤)は、所定量の水酸化アルミニウムを含有するものである。
【0015】
水酸化アルミニウムは、160℃付近から分解を開始し、180℃付近から短時間で分解が始まり、分解により水が発生するため、消炎効果があり、難燃性材料に利用される。本発明においては、この分解により発生する水を利用して、硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物中に発生する気泡により接着力を低下させることによって、接合部材の解体を容易にすることができる。
【0016】
水酸化アルミニウムは、平均粒子径が50μm以下、好ましくは0.5~20μmのものが使用される。水酸化アルミニウムの平均粒子径が50μmより大きいと分解性が低下してしまう。なお、平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0017】
水酸化アルミニウムの表面は、未処理でも処理(疎水化処理)されていてもよい。表面処理する場合、処理剤は一般的に用いられているものであり、シランカップリング剤や脂肪酸が挙げられる。表面処理は、公知の方法によって行うことができる。その処理量は特に制限はないが、3質量%以下(通常、0.1~3質量%)、特に0.2~2質量%であることが好ましい。
【0018】
水酸化アルミニウムの配合量は、硬化性液状シリコーン系接着剤全体量の35~70質量%であり、35~65質量%であることが好ましく、45~60質量%であることがより好ましい。35質量%未満であると水酸化アルミニウムの分解(発泡)が不十分で接着部材の接着力の低下が起こらず、70質量%を超える量であると硬化物の硬度が上がり、気泡の発生が抑制されて接合部材の解体が容易でなくなる。
【0019】
なお、水酸化アルミニウムは、1種を単独で使用してもよいが、平均粒子径や表面処理方法が異なるものを2種以上併用して使用することもできる。
【0020】
[縮合硬化型液状シリコーン系接着剤]
縮合硬化型液状シリコーン系接着剤は、上述した水酸化アルミニウム(A)以外に、(B)ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン(ベースポリマー)、(C)ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(架橋剤)、(D)硬化触媒、(E)シランカップリング剤(接着性付与剤)及び必要に応じて(F)充填剤を含み、室温において大気中の水分(湿気)による加水分解・縮合反応を利用して硬化物を得る液状シリコーン系接着剤である。
【0021】
(B)ベースポリマー(主剤)としてのオルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)及び/又は加水分解性シリル基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。ここで、加水分解性シリル基としては、アルコキシシリル基又はアルコキシ置換アルコキシシリル基が好ましい。
【0022】
ケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)を有する場合は、分子鎖の両末端に、ケイ素原子に結合した水酸基(即ち、ヒドロキシシリル基又はシラノール基)を一つずつ有するのがよい。
加水分解性シリル基として末端にアルコキシシリル基又はアルコキシ置換アルコキシシリル基を有する場合は、分子鎖の両末端に、ケイ素原子に結合するアルコキシ基(即ち、アルコキシシリル基)又はケイ素原子に結合するアルコキシ置換アルコキシ基(即ち、アルコキシアルコキシシリル基)を、2つ又は3つずつ有する(即ち、ジアルコキシオルガノシリル基又はビス(アルコキシアルコキシ)オルガノシリル基や、トリアルコキシシリル基又はトリス(アルコキシアルコキシ)シリル基として存在する)のがよい。
【0023】
アルコキシ基としては、炭素原子数1~10、特に炭素原子数1~4のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシ置換アルコキシ基としては、炭素原子数2~10、特に炭素原子数2~4のアルコキシ置換アルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等が挙げられる。
【0024】
ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンとしては、特に、ジオルガノポリシロキサンの両末端、好ましくは両末端のみに水酸基(シラノール基)、メトキシ基又はエトキシ基を有するものが好ましい。
【0025】
水酸基及び加水分解性基以外の、ケイ素原子に結合する有機基としては、非置換又は置換の、炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基が挙げられる。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基が好ましい。
【0026】
ベースポリマー(主剤)としてのオルガノポリシロキサンの23℃における粘度は、50~1,000,000mPa・sであることが好ましく、100~300,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が上記下限値未満だと硬化物に十分な機械特性が得られない場合があり、また上記上限値を超えると作業性が低下する場合がある。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定した23℃における値である(以下、同じ)。
【0027】
(C)架橋剤(硬化剤)としての加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する、加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(即ち、残存加水分解性基を分子中に3個以上有するシロキサンオリゴマー等のシロキサン化合物)である。加水分解性オルガノシラン化合物は分子中に3個以上存在する加水分解性基が上記ベースポリマーとしてのケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンと加水分解・縮合反応して架橋構造を形成する架橋剤(硬化剤)として作用するものである。
【0028】
加水分解性オルガノシラン化合物が有する加水分解性基としては、炭素原子数1~10である、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、アシロキシ基、アルケノキシ基、ケトオキシム基、アミノキシ基、及びアミド基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基;アセトキシ基、オクタノイルオキシ基等のアシロキシ基;ビニロキシ基、イソプロペノキシ基、1-エチル-2-メチルビニルオキシ基等のアルケノキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等のケトオキシム基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N-メチルアセトアミド基、N-エチルアセトアミド基等のアミド基が挙げられる。
【0029】
加水分解性オルガノシラン化合物は、上記加水分解性基以外の、ケイ素原子に結合する有機基を有していてもよい。このような加水分解性基以外の、ケイ素原子に結合する有機基としては、非置換又は置換の、炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基で置換したもの、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。中でも、非置換又は置換の一価炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。
【0030】
加水分解性オルガノシラン化合物及びその部分加水分解縮合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン;メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシムシラン;メチルトリ(メトキシメトキシ)シラン、エチルトリ(メトキシメトキシ)シラン、ビニルトリ(メトキシメトキシ)シラン、フェニルトリ(メトキシメトキシ)シラン、メチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、エチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、ビニルトリ(エトキシメトキシ)シラン、フェニルトリ(エトキシメトキシ)シラン、テトラ(メトキシメトキシ)シラン、テトラ(エトキシメトキシ)シラン等のアルコキシ置換アルコキシシラン;メチルトリス(N,N-ジエチルアミノキシ)シラン等のアミノキシシラン;メチルトリス(N-メチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N-ブチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N-シクロヘキシルアセトアミド)シラン等のアミドシラン;メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のアルケノキシシラン;メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアシロキシシラン、及びこれらの加水分解性オルガノシラン化合物の部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0031】
架橋剤(硬化剤)としての加水分解性オルガノシラン化合物は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する官能性基で置換された一価炭化水素基を分子中に有さないものである点において、後述する接着性付与剤としてのシランカップリング剤とは明確に区別されるものである。
【0032】
加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
架橋剤(硬化剤)としての加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物の配合量は、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~40質量部であり、好ましくは1~20質量部である。加水分解性オルガノシラン化合物の量が上記下限値(0.1質量部)未満では、硬化性や保存性の低下を招くおそれがある。また、上記上限値(40質量部)を超えると、価格的に不利になるばかりか、硬化物の伸びが低下したり、耐久性の低下を招いたりするおそれがある。
【0034】
(D)硬化触媒は、縮合硬化型液状シリコーン系接着剤(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)の硬化促進剤として従来から一般的に使用されている縮合触媒が使用でき、例えば、ジブチルスズメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、ジメトキシチタンジアセチルアセトナート等の有機チタン化合物;ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のアミン化合物やこれらの塩などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
硬化触媒の配合量は、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.001~20質量部であり、好ましくは0.005~5質量部、更に好ましくは0.01~2質量部である。硬化触媒の配合量が上記下限値(0.001質量部)未満であると、触媒効果が得られない場合があり、また、硬化触媒の配合量が上記上限値(20質量部)を超えると、価格的に不利になるばかりか、組成物の耐久性が低下する場合、あるいは接着性が低下する場合がある。
【0036】
縮合硬化型液状シリコーン系接着剤には、更に(E)成分として、接着強度を向上させると共に接着性付与成分としての作用を有するシランカップリング剤(窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する官能性基(但し、グアニジル基を除く)で置換された一価炭化水素基を分子中に有する加水分解性シラン化合物、いわゆるカーボンファンクショナルシラン化合物)を添加する。
【0037】
接着性付与成分としてのシランカップリング剤は、当該技術分野で公知のシランカップリング剤が好適に使用される。特には加水分解性基としてアルコキシ基又はアルケノキシ基を有するものが好ましく、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等が例示される。特にはアミノ基含有シランカップリング剤の使用が好ましい。
【0038】
このシランカップリング剤の配合量は、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.05~20質量部、好ましくは0.1~15質量部、特に好ましくは0.5~10質量部である。0.05質量部未満では十分な接着性が得られず、20質量部を超えると耐候性や機械特性に劣るものとなる。
【0039】
縮合硬化型液状シリコーン系接着剤には、任意成分として(F)充填剤を配合することができる。充填剤として、具体的には、乾式法シリカ(煙霧質シリカなど)、湿式法シリカ(沈降シリカなど)、石英微粉末、ケイソウ土粉末、微粒子状アルミナ、マグネシア粉末、及びこれらをシラン類、シラザン類、低重合度ポリシロキサン類等で表面処理した微粉末状の無機質充填剤(但し、水酸化アルミニウムを除く)が例示できる。
充填剤を配合する場合、その配合量は、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~800質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~600質量部である。
【0040】
縮合硬化型液状シリコーン系接着剤には、上記成分以外にも、任意成分を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。この任意成分としては、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤;抗菌剤;防カビ剤;シリコーンオイル(無官能性オルガノポリシロキサン)等の可塑剤などが挙げられる。
【0041】
縮合硬化型液状シリコーン系接着剤は、上述した各成分を、公知の混合機を用いて湿気を遮断した状態(乾燥雰囲気中や減圧下)で常法に準じて均一に混合することにより調製することができる。
また、得られた縮合硬化型液状シリコーン系接着剤は、例えば室温(23℃±10℃)で放置することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、縮合硬化型液状シリコーン系接着剤の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができ、例えば、23℃/50%RHの条件下で大気中に数時間~数日間(例えば、6時間~7日間)程度静置することにより硬化させることができる。
【0042】
[付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤]
付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤は、上述した水酸化アルミニウム(A)以外に、(G)ケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するシリル基で分子鎖両末端が封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン(ベースポリマー)、(H)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)、及び(I)白金族金属触媒(ヒドロシリル化付加反応触媒)を含み、SiH基のビニル基への付加反応(ヒドロシリル化反応)により架橋し硬化物を得る液状シリコーン系接着剤である。
【0043】
(G)ベースポリマー(主剤)としてのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端がケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するシリル基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンであり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して少なくとも1個、好ましくは2個以上(通常、2~20個、特には2~10個、更には2~5個程度)有するオルガノポリシロキサンである。このアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の、通常、炭素原子数2~6個、好ましくは炭素原子数2~4個程度の低級アルケニル基等が挙げられる。
【0044】
また、ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1~12、好ましくは1~10の、脂肪族不飽和結合を除く一価炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0045】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの具体例は、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0046】
ベースポリマー(主剤)としてのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの23℃における粘度は、100~500,000mPa・sであることが好ましく、700~100,000mPa・sであることがより好ましい。
【0047】
(H)架橋剤(硬化剤)としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均で、1分子中に少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは上限が500個、更に好ましくは上限が200個、特に好ましくは上限が100個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するものであって、好ましくは分子中に脂肪族不飽和結合を有しないものである。
【0048】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、前記ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合有機基は、特に限定されないが、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1~10、好ましくは1~6の一価炭化水素基等が挙げられる。その具体例としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの説明において、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基として例示したものと同様のものやビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基等の脂肪族不飽和結合を有しない非置換一価炭化水素基、より好ましくはメチル基、フェニル基等である。
【0049】
1分子中のケイ素原子の数は2~300個、特に3~150個、とりわけ4~100個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中(非末端)のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、及び三次元網目状のいずれであってもよい。本発明において、重合度(又は、分子中のケイ素原子数の尺度である主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位の繰り返し数)は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0050】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基やフェニル基などで置換したものなどが挙げられる。
【0051】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対してケイ素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3モル、好ましくは0.05~2.5モル、より好ましくは0.2~2モルとなる量である。
【0052】
(I)白金族金属触媒(ヒドロシリル化付加反応触媒)は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合アルケニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子との付加反応を促進させるための触媒として使用されるものである。この白金族金属触媒は公知のものを使用することができる。その具体例としては、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸等のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などの白金系触媒が例示される。
【0053】
白金族金属触媒の配合量は有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができるが、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量に対して、白金族金属原子の質量で、通常0.1~1,000ppm、好ましくは1~300ppmの範囲である。この配合量が多すぎると得られる硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
【0054】
付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤には、更に接着強度を向上させると共に接着性付与成分としての作用を有する(J)シランカップリング剤(酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する官能性基で置換された一価炭化水素基を分子中に有する加水分解性シラン化合物、いわゆるカーボンファンクショナルシラン化合物)を添加することが好ましい。
【0055】
接着性付与成分としてのシランカップリング剤は、当該技術分野で公知のシランカップリング剤が好適に使用される。特には加水分解性基としてアルコキシ基又はアルケノキシ基を有するものが好ましく、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等が例示される。
【0056】
このシランカップリング剤を配合する場合、その配合量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(ベースポリマー)100質量部に対して0.05~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~15質量部、特に好ましくは0.5~10質量部である。0.05質量部未満では十分な接着性が得られない場合があり、20質量部を超えると耐候性や機械特性に劣るものとなる場合がある。
【0057】
付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤には、上記成分以外にも、任意成分を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、上述の縮合硬化型液状シリコーン系接着剤において例示したものと同様の無機質充填剤(但し、水酸化アルミニウムを除く)、ケイ素原子結合水素原子(SiH基)及びケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン(いわゆる無官能性シリコーンオイル)、耐熱添加剤、難燃付与剤等、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0058】
付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤は、上述した各成分を公知の混合機を用いて常法に準じて均一に混合することにより調製することができる。
また、付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤の硬化条件としては、23~150℃、特に23~100℃にて10分~8時間、特に30分~5時間とすることができる。
【0059】
水酸化アルミニウムを所定量含有する硬化性液状シリコーン系接着剤(好ましくは縮合硬化型液状シリコーン系接着剤又は付加硬化型液状シリコーン系接着剤)を硬化して得られる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)の硬さは、JIS K6253のデュロメータータイプAで70以下であり、65以下であることが好ましい。硬さが70を超えるとゴム硬度が高くなり、気泡の発生が抑制される。硬さの下限は20以上、特には30以上であればよい。
【0060】
[接合部材]
本発明の接合部材の解体方法において、接合部材は、所定量の水酸化アルミニウムを含有する硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物からなる接着部材)によって同一又は異種の複数(特には2個)の部材同士が接合された接合部材であって、該接合部材において、接合された各部材は、金属製部材及び有機樹脂製部材から選ばれる同一又は異種のものであることが好ましく、接合された複数の部材のうち少なくとも1個(一方)が金属製部材であることがより好ましい。このような部材の組合せとしては、例えば、同一又は異種の金属製の部材同士の組合せ、金属製部材と有機樹脂製部材の組合せなどが挙げられる。金属製部材を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、SUS、銅などが挙げられ、有機樹脂製部材を構成する有機樹脂としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PA66(ナイロン66)、PA6(ナイロン6)等のポリアミド樹脂、PC(ポリカーボネート樹脂)などが挙げられる。なお、金属製部材又は有機樹脂製部材を構成する上記の金属又は有機樹脂は、それぞれ耐熱温度が180℃以上、特には200℃以上、更には250℃以上であることが望ましい。
【0061】
[接合部材の作製方法]
所定量の水酸化アルミニウムを含有する硬化性液状シリコーン系接着剤を、手又は機械吐出で片側の金属製又は有機樹脂製の部材の表面に接合箇所(例えばガスケット等)の形状に塗布し、もう一方の部材を貼り合わせて接合し、硬化させる。その後必要に応じてボルトなどで固定する。本発明の硬化性液状シリコーン系接着剤が縮合硬化型液状シリコーン系接着剤の場合、室温において空気中の湿分によって硬化するので、複数の部材を合体後、放置しておけば硬化が進行する。硬化速度を大きくしたい場合には加湿することが有効である。また、本発明の硬化性液状シリコーン系接着剤が付加反応硬化型液状シリコーン系接着剤の場合、23~150℃の温度において付加反応により硬化するので、複数の部材を合体後、放置又は加熱すれば硬化が進行する。
上記接合部材としては、エンジン、トランスミッション、ECUやPCUなどの自動車部品、スマートフォン、タブレット、液晶、バッテリーなどの電気・電子部品等を例示することができ、自動車部品、電気・電子部品であることが好ましい。
【0062】
上記接合部材は、使用環境温度が150℃以下、好ましくは室温~120℃で部材の接合状態が維持されるものである。
上記接合部材は、通常使用時にはある程度の接着力で接合されていて、加熱後に部材の分離が可能な程度に接着力が低下する易解体性の接合部材であることが好ましい。具体的には、上記接合部材の初期せん断接着力が1.2MPa以上、特には1.5MPa以上であることが好ましく、該接合部材を180℃以上にて3時間加熱後のせん断接着力が1MPa以下であることが好ましい。このせん断接着力はJIS K6850に規定する方法に準じて測定した値である。なお、初期及び加熱後のせん断接着力を上記範囲とするためには、硬化性液状シリコーン系接着剤の組成を上述した特定範囲の組成とすることにより達成できる。
【0063】
〔解体方法〕
本発明の接合部材の解体方法は、接合部材の接着部材である硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)を160℃以上、好ましくは180℃以上で、かつ解体する部材の耐熱温度未満の温度になるように、1分間以上、好ましくは5分間~5時間、より好ましくは10分間~3時間加熱後、室温まで冷却し、これに手で力を加えるか、スクレーパーなどの器具を使用して金属製の部材同士を剥離させることにより接合部材を解体することができる。
【0064】
硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)の加熱温度は、該硬化物の接着力を低下させるために160℃以上が必要である。また、硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)の加熱時間は、水酸化アルミニウムを分解させて十分に接着力を低下させるために1分間以上が必要であり、それ以上の接着力の低下が見込めないことから5時間以下であることが好ましい。
【0065】
硬化性液状シリコーン系接着剤を硬化させてなる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)の加熱方法は、ニクロム線のような導体に電気を流すことにより発生するジュール熱を利用した抵抗加熱方法などがあり、加熱する部材や環境により選択できる。
【実施例
【0066】
次に、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、室温は23℃であり、粘度は回転粘度計により測定した23℃における値を示し、平均粒子径はレーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)として求めた値を示す。
【0067】
[組成物調製例1]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が700mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径が10μmであり、表面が未処理の水酸化アルミニウム120質量部、煙霧質シリカ4質量部、ビニルトリメトキシシラン6質量部、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1質量部、及びジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を均一に混ぜ、組成物1(水酸化アルミニウム含有量:52.1質量%)を得た。また、この組成物を23℃/50%RHにて7日間養生することにより得られた硬化物のJIS K6253のデュロメータータイプA硬度は62であった。
【0068】
[組成物調製例2]
分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖され、粘度が30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン80質量部、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、粘度が100mPa・sのジメチルポリシロキサン20質量部、平均粒子径が10μmであり、表面が未処理の水酸化アルミニウム120質量部、煙霧質シリカ4質量部、ビニルトリメトキシシラン4質量部、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1質量部、及びジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を均一に混ぜ、組成物2(水酸化アルミニウム含有量:52.4質量%)を得た。また、この組成物を23℃/50%RHにて7日間養生することにより得られた硬化物のJIS K6253のデュロメータータイプA硬度は38であった。
【0069】
[組成物調製例3]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖され、粘度が700mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、平均粒子径が10μmであり、表面が未処理の水酸化アルミニウム220質量部、煙霧質シリカ4質量部、ビニルトリメトキシシラン7.5質量部、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1質量部、及びジオクチルスズジネオデカノエート0.2質量部を均一に混ぜ、組成物3(水酸化アルミニウム含有量:66.1質量%)を得た。また、この組成物を23℃/50%RHにて7日間養生することにより得られた硬化物のJIS K6253のデュロメータータイプA硬度は85であった。
【0070】
[接合部材の作製]
基材(金属製部材)として幅25mm、長さ100mmのアルミニウム製基材(耐熱温度:260℃以上)を2枚使用し、硬化性液状シリコーン系接着剤として上記組成物1~3のいずれかを使用し、接着厚みが0.5mm、接着面積が2.5cm2になるように2枚のアルミニウム基材を貼り合わせ、23℃/50%RHにて7日間養生することによって、硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)で2枚のアルミニウム基材同士が接合された接合部材を作製した。
【0071】
[実施例1~4、比較例1]
上記で作製した接合部材を用いて、下記に示す評価方法により接着力、発泡の有無、解体性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0072】
[評価方法]
(1)接着力(初期)
上記で作製した接合部材を用いて金属製部材に対する接着性シリコーンゴム硬化物のせん断接着力(初期)をJIS K6850に規定する方法に準じて測定した。
【0073】
(2)接着力(加熱後)
上記で作製した接合部材を、表1に示す所定の温度に設定したシーズヒーターを使用した恒温器に3時間放置し、加熱した。
加熱後、室温になるまで冷却し、金属製部材に対する接着性シリコーンゴム硬化物のせん断接着力(加熱後)を(1)と同様の方法により測定した。
【0074】
(3)発泡の有無
(2)接着力(加熱後)の評価後、それぞれ所定の加熱温度下における加熱後の接着力を測定した接合部材の試験片を目視により観察し、気泡が発生しているものを○、発泡していないものを×として評価した。
【0075】
(4)解体性
(3)発泡の有無の評価後、それぞれ所定の加熱温度下における加熱後の接着力を測定した接合部材の試験片を用いて、解体性を評価した。スクレーパーにより金属製部材から接着性シリコーンゴム硬化物が容易に剥離できたものを○、剥離できるが力を掛ける必要があったものを△、剥離できなかったものを×とした。
【0076】
【表1】
【0077】
上記の結果から明らかなように、本発明の接合部材の解体方法において使用する硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物は、160℃以上の加熱において水酸化アルミニウムが分解して発泡することで接着力が低下する。これにより、該硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)で接合された金属製の接合部材を容易に解体することができる。
一方、比較例1のように、硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)の加熱温度が150℃では、水酸化アルミニウムが分解しないため、解体性は得られない。即ち、加熱後においても接着性シリコーンゴム硬化物(接着部材)の接着力はほとんど変化しておらず、耐熱性(接着性)を維持しているため、金属製の接合部材を解体することはできなかった。
また、実施例4では、硬化性液状シリコーン系接着剤の硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)の加熱温度が180℃であり、水酸化アルミニウムが分解して接着力は低下するものの、水酸化アルミニウムを比較的多量に含有していることから硬さが高くなるため発泡が見られず、解体するのに力を掛ける必要があった。