(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】仕切り部材及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20240402BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240402BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240402BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240402BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240402BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/658
(21)【出願番号】P 2021509623
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020013897
(87)【国際公開番号】W WO2020196806
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019062041
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019062042
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-131428(JP,A)
【文献】特開2019-102244(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032697(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124231(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/169044(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107562(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/651
H01M 10/658
H01M 50/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
液体を保持することが可能な断熱材と、
該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、
外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D1)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式1及び/又は下記式2の関係を満たす仕切り部材。
式1:0.25 ≦ V1/(S1×D1) ≦ 0.70
式2:0.35 ≦ S2/S1
【請求項2】
前記S1が下記式3の関係を満たす、請求項1に記載の仕切り部材。
式3:10cm
2 ≦ S1 ≦ 2000cm
2
【請求項3】
前記S2が下記式4の関係を満たす、請求項1又は2に記載の仕切り部材。
式4:10cm
2 ≦ S2 ≦ 2000cm
2
【請求項4】
前記V1が下記式5の関係を満たす、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の仕切り部材。
式5:0.02cm
3 ≦ V1 ≦ 1000cm
3
【請求項5】
前記D1が下記式6の関係を満たす、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の仕切り部材。
式6:0.10mm ≦ D1 ≦ 5.0mm
【請求項6】
前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の仕切り部材。
【請求項7】
厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材と複数の単電池とを含む組電池であって、
該仕切り部材が、
液体を保持することが可能な断熱材と、
該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、
外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D2)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式7及び/又は下記式2の関係を満たす組電池。
式7:0.40 ≦ V1/(S1×D2) ≦ 1.00
式2:0.35 ≦ S2/S1
【請求項8】
前記S1が下記式3の関係を満たす、請求項7に記載の組電池。
式3:10cm
2 ≦ S1 ≦ 2000cm
2
【請求項9】
前記S2が下記式4の関係を満たす、請求項7又は8に記載の組電池。
式4:10cm
2 ≦ S2 ≦ 2000cm
2
【請求項10】
前記V1が下記式5の関係を満たす、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の組電池。
式5:0.02cm
3 ≦ V1 ≦ 1000cm
3
【請求項11】
前記D2が下記式8の関係を満たす、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の組電池。
式8:0.10mm ≦ D2 ≦ 5.0mm
【請求項12】
前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項13】
前記液体として常圧における沸点が80~250℃であるものを含む、請求項7乃至12のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項14】
厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
液体を保持することが可能な断熱材と、
該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、
該仕切り部材と複数の単電池とを含む組電池を構成したときに、
外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D2)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式7及び/又は下記式2の関係を満たす仕切り部材。
式7:0.40 ≦ V1/(S1×D2) ≦ 1.00
式2:0.35 ≦ S2/S1
【請求項15】
前記S1が下記式3の関係を満たす、請求項14に記載の仕切り部材。
式3:10cm
2 ≦ S1 ≦ 2000cm
2
【請求項16】
前記S2が下記式4の関係を満たす、請求項14又は15に記載の仕切り部材。
式4:10cm
2 ≦ S2 ≦ 2000cm
2
【請求項17】
前記V1が下記式5の関係を満たす、請求項14乃至16のいずれか一項に記載の仕切り部材。
式5:0.02cm
3 ≦ V1 ≦ 1000cm
3
【請求項18】
前記D2が下記式8の関係を満たす、請求項14乃至17のいずれか一項に記載の仕切り部材。
式8:0.10mm ≦ D2 ≦ 5.0mm
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り部材及び組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の電源としての使用が急増している二次電池について、車両等の限られた空間に搭載する際の自由度を向上させる目的や、一度の充電に対して走行可能な航続距離を伸ばす等の目的から、二次電池の高エネルギー密度化の検討が進められている。一方、二次電池の安全性はエネルギー密度とは相反する傾向にあり、高エネルギー密度を有する二次電池となるほど安全性は低下する傾向にある。例えば、航続距離が数百kmに及ぶような電気自動車に搭載される二次電池では、過充電や内部短絡等により二次電池が損傷した場合の電池表面温度が数百℃を超え、1000℃近くに及ぶ場合もある。
【0003】
車両等の電源に使用される二次電池は一般に複数の単電池から成る組電池として用いられるため、組電池を構成する単電池の一つが損傷して上記のような温度域に到達した場合、その発熱により隣接する単電池が損傷を受け、連鎖的に組電池全体に損傷が拡がるおそれがある。このような単電池間の損傷の連鎖を防ぐため、単電池と単電池の間に仕切り部材を設け、損傷した単電池を冷却する技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、シート状の袋の中に水等の冷却剤を入れた構成の仕切り部材を単電池と単電池の間に設置するモジュールがある(例えば、特許文献1)。このモジュールによれば、隣接する単電池からの発熱を効率よく近隣の単電池に移動させるほか、隣接する単電池が損傷し、電池表面が高温に至った場合には、開封部から袋中の水が放出され、損傷した電池を冷却することができる。また、シート状の袋の中に水等の冷却剤を含浸させた多孔質体を入れた構成の仕切り部材がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5352681号公報
【文献】特開2013-131428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等がこれらの従来の技術を詳細に検討した結果、以下のような課題があることが分かった。即ち、組電池中の単電池は、組電池製造時に拘束圧がかかる。また、単電池は、充電される際に単電池内の電極が膨張するため、その筐体も膨張し、隣接する部材を圧迫する。更に、単電池は繰り返しの使用により、単電池内の電解液からのガスが発生して膨張することによっても圧力がかかる。これらの理由から単電池の間に設置される仕切り部材には、耐圧性が要求される。しかしながら、特許文献1、2に開示されている仕切り部材については、耐圧性に関する検討は十分になされていない。
【0007】
一方、本発明者等は液体を保持した断熱材と、これらを収容する外装体とを含む仕切り部材を構成した。この仕切り部材は、液体の蒸気圧が外装体の破裂強度を越える温度(開口温度)の前後で熱抵抗が切り替わる特性を有している。開口温度未満では外装材内部に保持された液体により低い熱抵抗を示す一方、開口温度以上では液体が揮発し、残った断熱材により高い熱抵抗を示す。この特性により、過充電や内部短絡等により異常な温度上昇を生じた単電池に接する仕切り部材は開口し、その高い熱抵抗により隣接する単電池への熱伝導を抑えることができる。その一方で、異常を生じた単電池以外の単電池間の仕切り部材は、低い熱抵抗を有しており、異常を生じた単電池からの伝熱による各電池の温度上昇を抑えることができる。
【0008】
しかしながら、このような特性を得ようとした場合、断熱材、液体、外装体の構成によっては、開口温度が十分に高くならなかったり、開口後の熱抵抗が十分高くならない場合があったり、開口前後で熱抵抗の切り替わりが適切に起こらなかったりする場合があることがわかった。以上の問題点を鑑み、本発明の課題は、開口温度が十分に高く、開口後の熱抵抗が十分高く、開口前後で熱抵抗を適切に切り替えることができる仕切り部材及び組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が前記課題を解決するために鋭意検討した結果、液体を保持することが可能な断熱材と、該断熱材及び液体を収容する外装体とを含む仕切り部材において、外装体の内部空間面積、断熱材の大きさ、断熱材の厚み、及び液体の体積の関係を適切に設定することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
[1] 厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
液体を保持することが可能な断熱材と、
該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、
外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D1)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式1及び/又は下記式2の関係を満たす仕切り部材。
式1:0.25 ≦ V1/(S1×D1) ≦ 0.70
式2:0.35 ≦ S2/S1
【0011】
[2] 前記S1が下記式3の関係を満たす、[1]に記載の仕切り部材。
式3:10cm2 ≦ S1 ≦ 2000cm2
[3] 前記S2が下記式4の関係を満たす、[1]又は[2]に記載の仕切り部材。
式4:10cm2 ≦ S2 ≦ 2000cm2
[4] 前記V1が下記式5の関係を満たす、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
式5:0.02cm3 ≦ V1 ≦ 1000cm3
[5] 前記D1が下記式6の関係を満たす、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
式6:0.10mm ≦ D1 ≦ 5.0mm
【0012】
[6] 外装体の内気圧が外気圧よりも低いものである、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[7] 前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[8] 前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅箔から選ばれる少なくとも1つである、[7]に記載の仕切り部材。
[9] 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である[7]又は[8]に記載の仕切り部材。
[10] 前記液体として常圧における沸点が80~250℃であるものを含む、[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[11] 前記液体として水を含む、[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
【0013】
[12] 厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材と複数の単電池とを含む組電池であって、
該仕切り部材が、
液体を保持することが可能な断熱材と、
該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、
外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D2)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式7及び/又は下記式2の関係を満たすものである組電池。
式7:0.40 ≦ V1/(S1×D2) ≦ 1.00
式2:0.35 ≦ S2/S1
【0014】
[13] 前記S1が下記式3の関係を満たす、[12]に記載の組電池。
式3:10cm2 ≦ S1 ≦ 2000cm2
[14] 前記S2が下記式4の関係を満たす、[12]又は[13]に記載の組電池。
式4:10cm2 ≦ S2 ≦ 2000cm2
[15] 前記V1が下記式5の関係を満たす、[12]乃至[14]のいずれか一つに記載の組電池。
式5:0.02cm3 ≦ V1 ≦ 1000cm3
[16] 前記D2が下記式8の関係を満たす、[12]乃至[15]のいずれか一つに記載の組電池。
式8:0.10mm ≦ D2 ≦ 5.0mm
[17] 前記D2が下記式9の関係を満たす、[12]乃至[16]のいずれか一つに記載の組電池。
式9:0.10mm ≦ D2 < 1.0mm
【0015】
[18] 外装体の内気圧が外気圧よりも低いものである、[12]乃至[17]のいずれか一つに記載の組電池。
[19] 前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、[12]乃至[18]のいずれか一つに記載の組電池。
[20] 前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅箔から選ばれる少なくとも1つである、[19]に記載の組電池。
[21] 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である[19]又は[20]に記載の組電池。
[22] 前記液体として常圧における沸点が80~250℃であるものを含む、[12]乃至[21]のいずれか一つに記載の組電池。
[23] 前記液体として水を含む、[12]乃至[22]のいずれか一つに記載の組電池。
[24] 厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
液体を保持することが可能な断熱材と、
該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、
該仕切り部材と複数の単電池とを含む組電池を構成したときに、
外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D2)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式7及び/又は下記式2の関係を満たす仕切り部材。
式7:0.40 ≦ V1/(S1×D2) ≦ 1.00
式2:0.35 ≦ S2/S1
[25] 前記S1が下記式3の関係を満たす、[24]に記載の仕切り部材。
式3:10cm2 ≦ S1 ≦ 2000cm2
[26] 前記S2が下記式4の関係を満たす、[24]又は[25]に記載の仕切り部材。
式4:10cm2 ≦ S2 ≦ 2000cm2
[27]前記V1が下記式5の関係を満たす、[24]乃至[26]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
式5:0.02cm3 ≦ V1 ≦ 1000cm3
[28] 前記D2が下記式8の関係を満たす、[24]乃至[27]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
式8:0.10mm ≦ D2 ≦ 5.0mm
【0016】
[29] 外装体の内気圧が外気圧よりも低いものである、[24]乃至[28]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[30] 前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、[24]乃至[29]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[31] 前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅箔から選ばれる少なくとも1つである、[30]に記載の仕切り部材。
[32] 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である[30]又は[31]に記載の仕切り部材。
[33] 前記液体として常圧における沸点が80~250℃であるものを含む、[24]乃至[32]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[34] 前記液体として水を含む、[24]乃至[33]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[35] 前記D2が下記式9の関係を満たす、[24]乃至[34]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
式9:0.10mm ≦ D2 <1.0mm
[36] 前記厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材と複数の単電池とを含む組電池を製造する際の拘束圧が0.1~10MPaである[12]乃至[23]のいずれか一つに記載の組電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開口温度が十分高く、開口後の熱抵抗が十分高く、開口前後で熱抵抗を適切に切り替えることができる仕切り部材及び組電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、本発明の仕切り部材の第1の構成例を示す正面図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに示した仕切り部材をA-A線で切断した場合の端面を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、組電池を構成する単電池の一例を示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、組電池を構成する単電池の一例を示す正面図である。
【
図2C】
図2Cは、組電池を構成する単電池の一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、複数の単電池を用いて形成された組電池を、単電池の端子を通る高さ方向の面で切断した場合の端面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。以下に記載する説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0020】
本発明の仕切り部材は、厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、液体を保持することが可能な断熱材と、該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D1)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式1及び/又は下記式2の関係を満たすものである。
式1:0.25 ≦ V1/(S1×D1) ≦ 0.70
式2:0.35 ≦ S2/S1
【0021】
組電池における単電池以外の部材は、例えば、底面及び四方の側面を有し、組電池を構成する単電池及び仕切り部材を収容する筐体である。外装体の内部空間の面積とは、外装体により密閉された空間の面積のことであり、断熱材に保持された液体が移動可能な領域範囲を示す。
【0022】
上記式1は、液体体積と、内部空間面積と断熱材厚みの積で計算される内部空間体積の比の適切な範囲を示している。断熱材に保持された液体は内部空間体積内を移動可能であることから、液体体積と内部空間体積の比は、開口前の仕切り部材の熱伝導において、液体の熱伝導が占める影響の度合いを決定する。この比が小さいと、液体の熱伝導の影響が小さくなり、開口前の熱抵抗が高くなる。その結果、開口前後で熱抵抗を適切に切り替えることができなくなる。一方、仕切り部材の温度上昇に伴い、断熱材に保持された液体は次第に揮発する。液体体積と、内部空間体積の比は、揮発したガスを保持できる空間を決定する。この比が大きいと、ガスを保持できる空間が小さくなってしまい、十分温度が高くなる前に内部空間体積の内圧が外装体の破裂強度を越えてしまう。
【0023】
前記式1を満足することにより、本発明の仕切り部材は開口前後の熱抵抗の差が大きく、また高い開口温度を示すようになるが、「V1/(S1×D1)」の値は、開口前の熱抵抗をより低く保つ観点から、好ましくは0.28以上であり、より好ましくは0.30以上であり、一方、より安定した高い開口温度を得る観点から、好ましくは0.65以下であり、より好ましくは0.63以下である。
【0024】
本発明に関する仕切り部材では、断熱材は仕切り部材に対する外力に応じて変形する。仕切り部材に対する外力は、例えば、組電池の製造工程における拘束力、仕切り部材によって仕切られる単電池の充電に伴う膨張により単電池から受ける力、電池の繰り返し使用による電池内の電解液からのガス発生による電池の膨張により単電池から受ける力等である。例えば、断熱材は、対向する単電池の膨張又は拘束力により、厚さ方向に縮む。断熱材が圧縮変形すれば、その変形量に応じて熱抵抗が低くなってしまう。上記式2は、断熱材面積と内部空間面積の比の適切な範囲を示している。この比が大きいと、仕切り部材に対する外力により断熱材部が受ける圧力が小さくなり、その結果、断熱材の圧縮変形量が小さくなることを意味する。
【0025】
前記式2を満足することにより、本発明の仕切り部材は開口後の熱抵抗が十分高くなるものであるが、「S2/S1」の値は、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.45以上である。一方、上限としては特に制限されないが、通常、0.85以下である。
また、「S2/S1」が式2の関係を満足することは、仕切り部材にかかる荷重により断熱材部が受ける圧力が十分小さくなり、その結果、断熱材の圧縮変形量が小さくなることを意味する。この点からも、「S2/S1」の値は、0.40以上であることがより好ましい。
【0026】
本発明の仕切り部材において、前記S1は下記式3を満足することが好ましい。S1の値は開口前の熱抵抗を低くする観点から、式3の下限値を満足することが好ましく、より好ましくは20cm2以上であり、更に好ましくは40cm2以上であり、特に好ましくは50cm2以上であり、さらにより好ましくは60cm2以上である。一方、開口後の熱抵抗を高くする観点から、式3の上限値を満足することが好ましく、より好ましくは1500cm2以下であり、更に好ましくは1000cm2以下であり、特に好ましくは400cm2以下であり、さらにより好ましくは350cm2以下であり、特に好ましくは300cm2以下である。
式3:10cm2 ≦ S1 ≦ 2000cm2
【0027】
本発明の仕切り部材は、前記断熱材を前記厚み方向から平面視した場合における断熱材の面積(S2)が下記式4の関係を満たすことが好ましい。S2の値は、開口前の熱抵抗を低くする観点から、式4の下限値を満足することが好ましく、より好ましくは20cm2以上であり、更に好ましくは40cm2以上であり、特に好ましくは50cm2以上であり、より更に好ましくは60cm2以上である。一方、開口後の熱抵抗を高くする観点から、式4の上限値を満足することが好ましく、より好ましくは1500cm2以下であり、更に好ましくは1000cm2以下であり、より好ましくは400cm2以下であり、特に好ましくは350cm2以下であり、更により好ましくは300cm2以下である。
式4:10cm2 ≦ S2 ≦ 2000cm2
【0028】
本発明の仕切り部材において、前記V1は下記式5を満足することが好ましい。V1の値は、開口前の熱抵抗を低くする観点から、式5の下限値を満足することが好ましく、より好ましくは0.05cm3以上であり、更に好ましくは0.1cm3以上であり、特に好ましくは0.5cm3以上であり、更により好ましくは1.0cm3以上である。一方、開口温度を十分高くする観点から、式5の上限値を満足することが好ましく、より好ましくは700cm3以下であり、更に好ましくは500cm3以下であり、特に好ましくは150cm3以下であり、更により好ましくは100cm3以下である。
式5:0.02cm3 ≦ V1 ≦ 1000cm3
【0029】
本発明の仕切り部材において、前記D1は下記式6を満足することが好ましい。D1の値は、異常発熱を生じた単電池から隣接する単電池への熱伝導を抑える観点から、式6の下限値を満足することが好ましく、より好ましくは0.40mm以上であり、更に好ましくは0.70mm以上であり、一方、組電池の総厚みを薄くするという観点から、式6の上限値を満足することが好ましく、より好ましくは4.0mm以下であり、更に好ましくは3.0mm以下である。
式6:0.10mm ≦ D1 ≦ 5.0mm
【0030】
<仕切り部材>
図1Aは、本発明の仕切り部材の構成例を示す正面図である。
図1Bは、
図1Aに示した仕切り部材をA-A線で切断した場合の端面を示す図である。仕切り部材1の外形形状は、一例として、厚みを有する平板状、或いはシート状に形成される。
【0031】
図1A及び
図1Bに示す例では、仕切り部材1は、高さ、幅、厚みを有する平板状に形成され、厚み方向Dと面方向Pとを有する。面方向Pは厚み方向Dに直交する方向である。厚み方向Dと直交する限りにおいて、面方向Pは仕切り部材1の高さ方向H、幅方向W、及び斜め方向を含む。
【0032】
仕切り部材1は、その厚み方向Dにおいて、組電池を構成する単電池間、又は組電池を構成する単電池と単電池以外の部材とを仕切るために使用される。
【0033】
〔断熱材〕
断熱材110は、液体を保持することが可能なものであり、通常、弾性を有する。弾性を有する断熱材110は、単電池の膨張により、厚み方向Dに収縮又は変形する。
図1Aに示す例では、断熱材110は、平板状又はシート状に形成される。断熱材110は、平板状又はシート状の外装体120に収容され、外装体120の周縁部において密封されている。
【0034】
このような断熱材110は、粉末状無機物及び繊維状無機物を含むものであることが好ましい。本発明において、「繊維状無機物」は長径が短径の100倍以上の形状を有する無機物を意味し、「粉末状無機物」は長径が短径の100倍未満の形状を有する無機物を意味する。なお、特に繊維状である場合には「長径」は繊維長を意味し、「短径」は長径方向に対して直行する断面の径を意味する。
【0035】
繊維状無機物は、例えば、紙、コットンシート、ポリイミド繊維、アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、これらの中でもガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維から選ばれる少なくとも一つであることが特に好ましい。セラミック繊維は、主としてシリカとアルミナからなる繊維(シリカ:アルミナ=40:60~0:100)であり、具体的には、シリカ・アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維を用いることができる。
【0036】
また、粉末状無機物は、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ケイ酸カルシウム、粘土鉱物、バーミキュライト、マイカ、セメント、パーライト、フュームドシリカ及びエアロゲルからなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、これらの中でもシリカ粒子、アルミナ粒子、ケイ酸カルシウム及びバーミキュライトから選ばれる少なくとも一つであることが特に好ましい。ケイ酸カルシウムの種類の中では、ゾノトライト、トバモライト、ワラストナイト、ジャイロライトが好ましく、特に好ましいのはジャイロライトである。花弁状構造を持つジャイロライトは圧縮変形した際にも多孔質構造を保つため、保液性に優れる。粘土鉱物は主としてケイ酸マグネシウム(タルク、セピオライトを含む)、モンモリナイト、カオリナイトである。
【0037】
繊維状無機物と粉末状無機物を含む断熱材としては公知のものから選択して用いることができる。例えば、特開2003-202099号公報に記載されたものから選択して用いることができる。
【0038】
断熱材の密度は、軽量である点、及び高温下においても断熱性を優れたものとする観点から、その密度が0.20~1.10g/cm3のものであることが好ましい。断熱材の密度が、上記下限値以上であると、内部空隙に空気層を多く有するため、断熱性及び保液性の観点から好ましく、一方、上記上限値以下であると、圧縮時の変形量が小さくなる観点から好ましい。また、断熱材の密度は、これらの観点から、好ましくは0.35g/cm3以上であり、より好ましくは0.55g/cm3以上であり、一方、好ましくは1.05g/cm3以下であり、より好ましくは1.00g/cm3以下である。
【0039】
〔液体〕
仕切り部材1において、外装体の内部空間に収容される断熱材110に保持させる液体は、熱伝導性を有し、単電池からの発熱を、効率よく近隣の単電池に移動させることができるものであればよい。また、液体としては常圧(1気圧)における沸点が80℃以上250℃以下の液体が好ましく、常圧における沸点が100℃以上150℃以下の液体が更に好ましい。液体は、気化熱が大きい点、および汎用的に入手が可能である点から水が特に好ましい。
【0040】
液体は、例えば、水、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素類、フッ素系化合物及びシリコーン系オイルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0041】
液体に用いることのできるアルコール類としては、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の3~8個の炭素原子を含むアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール等の二価以上のアルコール等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0042】
液体に用いることのできるエステル類としては、アルキル脂肪族カルボン酸エステル、アルキル炭酸ジエステル、アルキルシュウ酸ジエステル及びエチレングリコールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。アルキル脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸メチル、ギ酸n-ブチル、ギ酸イソブチルなどの低級アルキルギ酸エステル;酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなどの低級アルキル酢酸エステル及びプロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチルなどの低級アルキルプロピオン酸エステルなどの低級アルキル脂肪族カルボン酸エステルなどが挙げられる。アルキル炭酸ジエステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジブチル、炭酸メチルエチルなどの低級アルキル炭酸ジエステルなどが挙げられる。アルキルシュウ酸ジエステルとしては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチルなどの低級アルキルシュウ酸ジエステルなどが挙げられる。エチレングリコールの脂肪酸エステルとしては、エチレングリコール酢酸エステル等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0043】
液体に用いることのできるエーテル類としては、n-ブチルエーテル、n-プロピルエーテル、イソアミルエーテル等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0044】
液体に用いることのできるケトン類としては、エチルメチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0045】
液体に用いることのできる炭化水素類としては、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0046】
液体に用いることのできるフッ素系化合物としては、冷媒の1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC-c447ef)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(HFC-76-13sf)等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0047】
液体に用いることのできるシリコーン系オイルとしては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状メチルシロキサン、及びシリコーンポリエーテルコポリマー等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0048】
また、液体は、不凍剤、防腐剤、pH調整剤を含んでいてもよい。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。液体は、不凍性を付与する物質(不凍剤)、防腐剤、pH調整剤などの添加物を含んでもよい。液体に含めるものはこれに限られず、必要に応じて追加することができる。
【0049】
〔外装体〕
外装体120は、密閉される周縁部120aを有し、密閉によって形成される内部空間に液体を保持した断熱材110を収容する。外装体120は、可撓性を有し単電池の膨張に応じて変形可能である。また、外装体120は、単電池が収縮した場合には、元の状態に復帰可能である。外装体120としては、例えば、樹脂シート、樹脂フィルムなどを適用できる。例えば、二枚、又は二つ折りの樹脂シート若しくは樹脂フィルムで断熱材110を挟み込み、二枚の樹脂シート又は樹脂フィルムが接する外装体120の周縁部を熱融着や接着することで、液体を含侵させた断熱材110を密封する。
【0050】
外装体120としては、例えば、樹脂や金属製のものを使用することができる。金属箔と樹脂をラミネートしたものが、耐熱性及び強度が高いため好ましい。金属と樹脂のラミネート体としては、樹脂層、金属層、樹脂シーラント層を含む3層以上のラミネート体が好ましい。
【0051】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔、燐青銅箔等が挙げられる。特に、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔が好ましく、さらに好ましくはアルミニウム箔である。
【0052】
樹脂として、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方を用いることができるが、特に熱可塑性樹脂が好ましい。樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルスルフィド、ポリカーボネート、アラミド等が挙げられる。特に、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0053】
外装体120の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~200μmである。上記の積層体(ラミネート体)の場合、金属箔を3μm~50μm、樹脂層を2μm~150μmとできる。
【0054】
また、外装体120は、二つの外装体の周縁部を熱融着や接着等により環状に接合することによって、液体及び断熱材110が外装体120内に密封(封止)される。或いは、1つの外装体を折り曲げて周縁部を熱融着や接着等により接合し、液体及び断熱材110を密封(封止)してもよい。外装体120は、可撓性(弾性)を有するのが好ましいが、可撓性を有しない場合もあり得る。
【0055】
外装体120の内気圧は、外気圧よりも低いことが開口温度を十分高くする観点から好ましい。このため、外装体120を封止する際に真空封止することが特に好ましい。
【0056】
<組電池>
本発明の組電池は、厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材と複数の単電池とを含む組電池であって、該仕切り部材が、液体を保持することが可能な断熱材と、該断熱材及び液体を収容する外装体とを含み、外装体と断熱材を厚み方向から平面視した場合における外装体の内部空間の面積(S1)と、前記断熱材の面積(S2)と、前記断熱材の厚み(D2)と、前記液体の体積(V1)とが、下記式7及び/又は下記式2の関係を満たすものである。
式7:0.40 ≦ V1/(S1×D2) ≦ 1.00
式2:0.35 ≦ S2/S1
【0057】
仕切り部材を用いた組電池を製造する際には通常、0.1~10MPa程度の拘束圧がかかり、これによって組電池とした際には断熱材の厚みD2は組電池を製造する前の厚みD1よりも小さな値となる。本発明の組電池は式7を満たすものであり、式7と、前述した本発明の仕切り部材が満足する式1とを比較すると、式1におけるD1を式7ではD2に置き換えた項を有するが、上記の理由により、D1よりもD2の値が小さくなる結果、「V1/(S1×D2)」が満たすべき上下限の値は「V1/(S1×D1)」が満たすべき値のそれぞれよりも大きな値となる。
前記式7を満足することにより、本発明の組電池は、開口前後の熱抵抗の差が大きく、また高い開口温度を示すようになるが、「V1/(S1×D1)」の値は、開口前の熱抵抗をより低く保つ観点から、好ましくは0.45以上であり、より好ましくは0.50以上であり、一方、より安定した高い開口温度を得る観点から、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.90以下である。
【0058】
同様の理由から、D2は下記式8を満たすことが好ましい。また、D2の値は、異常発熱を生じた単電池から隣接する単電池への熱伝導を抑える観点から、より好ましくは0.40mm以上であり、更に好ましくは0.70mm以上である。一方、組電池の総厚みを薄くする観点及び開口前の熱抵抗を十分小さくすることができる観点から、より好ましくは4.0mm以下であり、更に好ましくは3.0mm以下であり、更に好ましくは2.0mm以下であり、更に好ましくは1.2mm以下であり、特に好ましくは1.0mm未満であり、更に好ましくは0.80mm以下である。
式8:0.10mm ≦ D2 ≦ 5.0mm
【0059】
また、外装体の内部空間の面積(S1)と、断熱材の面積(S2)とが下記式2を満たすものである。
式2:0.35 ≦ S2/S1
【0060】
本発明の組電池は、前述の本発明の仕切り部材と同様、S1、S2及びV1のそれぞれが式3~式5のそれぞれを満足することが好ましい。
【0061】
図2Aは組電池を構成する単電池の一例を示す平面図であり、
図2Bは単電池の一例を示す正面図であり、
図2Cは、単電池の一例を示す側面図である。
【0062】
単電池200は、縦(厚み)、横(幅)、高さを有する直方体状を有し、その上面に端子210、端子220が設けられている。単電池200は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えるリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池以外に、リチウムイオン全固体電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池を適用し得る。
【0063】
図3は、複数の単電池を用いて形成された組電池を、単電池の端子を通る高さ方向Hの面で切断した場合の端面を示す図である。組電池100は、底面及び四方の側面を有する筐体300に、複数の単電池200を収容している。各単電池200間には上述した仕切り部材1が配置され、隣接する単電池200間は、仕切り部材1の厚み方向Dにおいて仕切られている。隣り合う単電池200の正極端子(例えば端子210)と負極端子(例えば端子220)とがバスバー(図示なし)によって電気的に直列に接続されることにより、組電池100は、所定の電力を出力する。
図3に示されるように、組電池100は、筐体300の底面と各単電池200との間に、仕切り部材1と同様の構成を有する仕切り部材1Aを配置するものであってもよい。
【0064】
本発明の組電池は、例えば、電気自動車(EV、Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV、Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV、Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、電動重機、電動バイク、電動アシスト自転車、船舶、航空機、電車、無停電電源装置(UPS、Uninterruptible Power Supply)、家庭用蓄電システム、風力/太陽光/潮力/地熱等の再生可能エネルギーを利用した電力系統安定化用蓄電池システム等に搭載される電池パックに適用される。但し、組電池は、上述のEV等以外の機器に電力を供給する電力源としても使用し得る。
【実施例】
【0065】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
[仕切り部材の作製]
外装体として、縦150mm 横95mmの長方形に裁断されたアルミラミネートフィルム(樹脂層としてナイロン(外側)、ポリプロピレン(内側)を含む、厚み0.12mm)を2枚重ねあわせ、三辺を幅5mmで加熱融着(温度160℃、2秒)させた。外装体の融着されていない部位より、断熱材として、縦100mm、横50mmの長方形に裁断した多孔質シート(ケイ酸カルシウム紙、厚み0.9mm、密度0.5g/cm3、ケイ酸カルシウムを含む)を収納し、水を3.4g(cm3)注入した後、融着されていない部位を幅5mmで加熱融着させることにより真空封止し、縦150mm、横95mm、厚み1.1mmの仕切り部材を作製した。
断熱材の厚みD1は、真空封止する前の断熱材の厚みを測定する、もしくは真空封止された仕切り部材の断熱材と外装材が積層されている部位の厚みから外装材の厚みを差し引くことで求めた。また厚みを測定する際には、断熱材に加わる圧力は0.1MPa未満になるように調整した。
仕切り部材中の液体の体積V1は、真空封止する前に注入した水の重量を測定する、もしくは真空封止された仕切り部材の外装材シール部に孔を開け、液体を乾燥させることで生じる重量変化を測定することで求めた。
また、仕切り部材の外装材により密閉された部位において、断熱材と外装材が積層されている領域の厚みに比べて、断熱材がない領域の厚みの方が薄くなっていることを確認することで、外装材の内気圧が外気圧よりも低くなっていることが確認できる。
【0067】
[熱抵抗変化の測定]
ヒーターの上に、マイカシート(縦150mm、横100mm、厚み0.5mm)、真鍮板1(縦150mm、横100mm、厚み5mm)、仕切り部材、真鍮板2(縦150mm、横100mm、厚み5mm)、断熱板(ガラス繊維製、縦150mm、横100mm、厚み10mm)の順番で積層し、上側から油圧プレス機を用いて、荷重を2tになるように調整した。
断熱材の厚みD2は、油圧プレス機による荷重を加えた後、一旦、油圧プレス機から外装材を取り出し、仕切り部材の断熱材と外装材が積層されている部位の厚みから外装材の厚みを差し引くことで求めた。また厚みを測定する際には、断熱材に加わる圧力は0.1MPa未満になるように調整した。
【0068】
ヒーターを室温から200℃まで5℃/minの速度で昇温し、真鍮板1,2の温度変化を測定した。測定データを用い、下式から、仕切り部材の熱抵抗 R2[m2・K/W]を求めた。
R2=(t1-t2)/[{(th-t1)/R1}-(C/S)×Δt1]
R1 : マイカシートの熱抵抗 0.0032[m2・K/W]
th : ヒーター温度[K]
t1 : 真鍮板1温度[K]
Δt1 : 真鍮板1温度時間変化[K/s]
t2 : 真鍮板2温度[K]
C : 真鍮板1,2の熱容量[J/K]
S : 真鍮板1,2の面積[m2]
【0069】
融着部が開口し、水蒸気が放出される際の真鍮板1の温度を開口温度として記録し、開口前後の仕切り部材の熱抵抗の値をそれぞれ求めた。開口温度は165℃であり、仕切り部材として安定した動作を行うのに十分なだけ高く、また開口前後の熱抵抗がそれぞれ3.5×10-3、5.2×10-3[m2・K/W]となっており、開口温度が高く、また、開口前は熱抵抗が低く、開口後は熱抵抗が高くなっている。即ち、良好な熱抵抗スイッチ特性(仕切り部材の開口の前後で熱抵抗が切り替わる特性)を示した。
【0070】
<実施例2~5及び比較例1~3>
断熱材のサイズ(縦、横)、および水量を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様に仕切り部材を作製し、開口温度、開口前後の熱抵抗の値を測定した。
【0071】
表1に、各実施例及び各比較例における、断熱材のサイズ(縦、横、厚さ)、液体量、及び外装体の内部空間の領域のサイズ(縦、横)を示す。また、各実施例及び各比較例において、測定後の断熱材の厚み、及び開口温度、開口前後の熱抵抗の値を示す。開口温度、熱抵抗に関する結果には、良好であった場合には“○”、良好でなかった場合には“×”で示した。
【0072】
【0073】
比較例1は、液体量V1が内部空間体積(内部空間面積×断熱材厚み)に対して過度に大きいため、開口温度が低下してしまい、仕切り部材として安定した動作が行えなくなっている。
【0074】
比較例2は、液体量V1が内部空間体積(内部空間面積×断熱材厚み)に対して過度に小さいため、開口前の熱抵抗の値が大きくなっている。
【0075】
比較例3は、S2/S1が小さいため、断熱材の変形量が大きく、その結果、開口後の熱抵抗が小さくなっている。
【0076】
これらに対し、表1に示すように、実施例1~5のように仕切り部材として、式1を満たす場合に、開口温度が高く、また、開口前は熱抵抗が低く、開口後は熱抵抗が高くなっている。即ち、良好な熱抵抗スイッチ特性(仕切り部材の開口の前後で熱抵抗が切り替わる特性)が得られている。また、同様に組電池として、式5を満たす場合に、良好な熱抵抗スイッチ特性が得られた。
【符号の説明】
【0077】
1 仕切り部材
100 組電池
110 断熱材
120 外装体
120a 周縁部
120b 隙間
200 単電池
300 筐体