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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】処理システム及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240402BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20240402BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20240402BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/02 A
B23K26/08 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021541916
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034089
(87)【国際公開番号】W WO2021038821
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真路
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-212941(JP,A)
【文献】特開2018-153842(JP,A)
【文献】特開2007-111763(JP,A)
【文献】特開2016-048188(JP,A)
【文献】特開2005-169397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムであって、
計測光源からの計測光を、第1光と、第2光と、に分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面を加工する前記加工光と、前記第2光と、を前記物体の表面の少なくとも一部に照射可能な照射光学系と、
前記物体に到達する前記加工光の進む方向において、前記加工光の集光位置を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる第3光と、前記第1光と、の干渉光に基づいて、前記位置変更装置に対してフィードバック制御を行う制御装置と
を備える処理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記干渉光に基づいて、前記物体に到達する前記加工光の進む方向において、前記物体と、前記加工光の集光位置と、の距離を所定の距離とするように前記位置変更装置を制御する
請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記位置変更装置は、前記物体に到達する前記加工光の進む方向と直交する方向において、前記物体と、前記加工光の集光位置と、の相対的な位置関係を変更可能とする
請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記位置変更装置は、前記照射光学系を介した、前記加工光源からの前記加工光と、前記計測光源からの前記第2光と、が前記物体の前記表面に照射される位置を変更する照射位置変更光学系を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
前記位置変更装置は、前記物体に対する前記照射光学系の位置を変更する
請求項1から4のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第3光と前記第1光との干渉光に基づいて、前記加工光が前記物体の前記表面に照射されるべき目標照射領域と前記物体との相対的な位置関係を所定の位置関係に維持させるように前記位置変更装置を制御する
請求項1から5のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記干渉光が生じる間隔から算出された前記第2光が進む第2光路及び前記第3光が進む第3光路の長さと前記第1光が進む第1光路の長さとの差に関する計測量と、前記加工光による加工処理での前記物体の加工量と、に基づいて、前記位置変更装置を制御する
請求項1から6のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項8】
前記加工処理は、前記物体の一部を除去する除去処理を含み、
前記制御装置は、前記除去処理が行われた除去部分についての前記計測量を補正する一方で、前記除去処理が行われていない非除去部分についての前記計測量を補正しない除去量反映処理を行い、前記除去量反映処理が行われた前記計測量に基づいて、前記位置変更装置を制御する
請求項7に記載の処理システム。
【請求項9】
前記除去部分についての前記計測量の補正は、前記計測量を減算することを含む
請求項8に記載の処理システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記物体と前記照射光学系との相対的な位置関係を所定の位置関係に維持させるように前記位置変更装置を制御し、
前記所定の位置関係は、前記除去量反映処理が行われた前記計測量が一定になるという位置関係を含む
請求項8又は9に記載の処理システム。
【請求項11】
前記加工処理は、前記物体に構造物を付加する付加処理を含み、
前記制御装置は、前記付加処理が行われた付加部分についての前記計測量を補正する一方で、前記付加処理が行われていない非付加部分についての前記計測量を補正しない付加量反映処理を行い、前記付加量反映処理が行われた前記計測量に基づいて、前記位置変更装置を制御する
請求項7から10のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項12】
前記付加部分についての前記計測量の補正は、前記計測量を加算することを含む
請求項11に記載の処理システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記物体と前記照射光学系との相対的な位置関係を所定の位置関係に維持させるように前記位置変更装置を制御し、
前記所定の位置関係は、前記付加量反映処理が行われた前記計測量が一定になるという位置関係を含む
請求項12に記載の処理システム。
【請求項14】
前記第1光は、互いに位相同期され干渉性のある参照光としての光周波数コムを含み、
前記第2光は、測定光としての光周波数コムを含み、
前記分岐光学系からの前記第1光が入射する参照面を備え、
前記制御装置は、前記物体に照射された前記第2光によって前記物体から生じる前記第3光と、前記参照面から戻された第1光と、の干渉光に基づいて、前記位置変更装置を制御する
請求項1から13のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の処理システムの少なくとも一部が前記物体に対して変位可能な状態で前記処理システムの少なくとも一部を支持する支持部と、
前記支持部を介して前記処理システムの少なくとも一部を駆動する駆動部と
を備えるロボットシステム。
【請求項16】
前記駆動部は、多関節構造を有する
請求項15に記載のロボットシステム。
【請求項17】
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理方法であって、
計測光源からの計測光を、第1光と、第2光と、に分岐することと、
照射光学系を介して、前記物体の表面の少なくとも一部に、前記加工光と、前記第2光と、を照射することと、
前記物体に到達する前記加工光の進む方向において、前記加工光の集光位置を変更することと、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる第3光と、前記第1光と、の干渉光に基づいて、前記加工光の集光位置に対してフィードバック制御を行うことと
を含む処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に対する処理を行う処理システム及びロボットシステムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を対象とする処理を行う処理システムの一例として、物体を加工可能な加工システムがあげられる。例えば、特許文献1には、物体の表面に加工光を照射して構造を形成する加工システムが記載されている。この種の処理システムでは、物体を対象とする処理を行うために用いられる部材と物体との相対的な位置関係を適切に制御することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4,994,639号
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムであって、計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、前記物体の表面に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、前記物体と前記照射光学系との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、前記検出装置からの出力を用いて、前記位置変更装置を制御する制御装置とを備える処理システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムであって、計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、前記物体の表面の少なくとも一部に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、前記物体と前記加工光の集光位置との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、前記検出装置からの出力を用いて、前記位置変更装置を制御する制御装置とを備える処理システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、物体に対して作用する作用部材を用いた処理、及び前記物体の情報を取得する取得部材を用いた処理のうち少なくとも一方の処理を行う処理システムであって、計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、前記物体の表面に第2光を照射する照射光学系と、前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、前記作用部材及び前記取得部材のうちの少なくとも一方と前記物体との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、前記検出装置からの出力を用いて、前記位置変更装置を制御する制御装置とを備える処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態の加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
図3図3は、第1実施形態の加工ヘッドの構造を示す断面図である。
図4図4は、検出器に入射する計測光と、検出器が検出した干渉光とを示すタイミングチャートである。
図5図5は、ヘッド駆動系の構造を示す断面図である。
図6図6は、ヘッド駆動系が備える第2駆動系の構造を示す断面図である。
図7図7(a)は、ワーク上の複数の被照射領域を示す平面図であり、図7(b)は、ワーク上の複数の被照射領域を示す斜視図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、複数の被照射領域と加工ヘッドとの間の距離が互いに同一になるように位置関係が制御されている加工ヘッドとワークとを示す断面図である。
図9図9は、除去加工が行われた加工済み領域と除去加工が行われていない未加工領域とを示す断面図である。
図10図10は、加工済み領域と加工ヘッドとの間の距離が未加工領域と加工ヘッドとの間の距離と同一になるように位置関係が制御されている加工ヘッドとワークとを示す断面図である。
図11図11は、付加加工が行われた加工済み領域と付加加工が行われていない未加工領域とを示す断面図である。
図12図12は、加工済み領域と加工ヘッドとの間の距離が未加工領域と加工ヘッドとの間の距離と同一になるように位置関係が制御されている加工ヘッドとワークとを示す断面図である。
図13図13は、ワーク上の複数の被照射領域を示す平面図である。
図14図14は、ワーク上の複数の被照射領域を示す平面図である。
図15図15は、計測光の目標照射領域の移動軌跡の一例を示す平面図である。
図16図16は、対象ショット領域と計測ショット領域との位置関係の一例を示す平面図である。
図17図17は、加工光が照射されているワークを示す平面図である。
図18図18(a)は、ワークの一例を示す上面図であり、図18(b)は、ワークの一例を示す斜視図である。
図19図19は、第3のアライメント動作を行う場合のワーク上の複数の被照射領域を示す平面図である。
図20図20は、アライメントマークが形成されたワークを示す平面図である。
図21図21は、第2実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である
図22図22は、エンドエフェクタを備える加工装置の構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、処理システム、ロボットシステム、制御装置及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。以下では、加工光ELを用いてワークWを加工する(つまり、ワークWを対象とする加工処理を行う)加工システムSYSを用いて、処理システム、ロボットシステム、制御装置及びコンピュータプログラムの実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0009】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0010】
(1)第1実施形態の加工システムSYSa
初めに、第1実施形態の加工システムSYS(以降、第1実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSa”と称する)について説明する。
【0011】
(1-1)加工システムSYSaの構造
初めに、図1及び図2を参照しながら、第1実施形態の加工システムSYSaの構造について説明する。図1は、第1実施形態の加工システムSYSaの構造を模式的に示す断面図である。図2は、第1実施形態の加工システムSYSaのシステム構成を示すシステム構成図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、加工システムSYSaは、加工装置1と、ステージ装置3と、制御装置5とを備えている。加工装置1及びステージ装置3は、筐体4に収容されている。但し、加工装置1及びステージ装置3は、筐体4に収容されていなくてもよい。つまり加工システムSYSaは、加工装置1及びステージ装置3を収容する筐体4を備えていなくてもよい。
【0013】
加工装置1は、制御装置5の制御下で、ワークWを加工可能である。加工装置1は、制御装置5の制御下で、ワークWを対象とする加工処理を行うことが可能である。ワークWは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、半導体(例えば、シリコン)であってもよいし、樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)や塗料(一例として基材に塗布された塗料層)等)であってもよいし、ガラスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。
【0014】
加工装置1は、ワークWを加工するために、ワークWに対して加工光ELを照射する。加工光ELは、ワークWに照射されることでワークWを加工可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。第1実施形態では、加工光ELがレーザ光である例を用いて説明を進めるが、加工光ELは、レーザ光とは異なる種類の光であってもよい。更に、加工光ELの波長は、ワークWに照射されることでワークWを加工可能である限りは、どのような波長であってもよい。例えば、加工光ELは、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光及び紫外光の少なくとも一方等)であってもよい。加工光ELは、パルス光を含むが、パルス光を含んでいなくてもよい。言い換えると、加工光ELは、連続光であってもよい。
【0015】
加工装置1は、ワークWに加工光ELを照射して、ワークWの一部を除去する除去加工(典型的には、切削加工又は研削加工)を行ってもよい。除去加工を行う場合には、加工装置1は、リブレット構造をワークW上に形成してもよい。リブレット構造は、ワークWの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗、乱流摩擦抵抗)を低減可能な構造である。リブレット構造は、例えば、ワークWの表面に沿った第1の方向(例えば、Y軸方向)に沿って延びる溝が、ワークWの表面に沿っており且つ第1の方向に交差する第2方向(例えば、X軸方向)に沿って複数配列された構造を含んでいてもよい。ワークWが基材と基材の表面に塗布された塗装膜(塗料層)とを含む場合には、加工装置1は、基材が塗装膜から露出しないように塗装膜の一部を除去することで、除去されることなく残留した塗装膜から構成されるリブレット構造を基材の表面に形成してもよい。
【0016】
加工装置1は、除去加工に加えて又は代えて、ワークWに加工光ELを照射して、ワークWに新たな構造物を付加する付加加工を行ってもよい。この場合、加工装置1は、付加加工を行うことで、上述したリブレット構造をワークWの表面に形成してもよい。加工装置1は、除去加工及び付加加工の少なくとも一方に加えて又は代えて、ワークWに加工光ELを照射して、ワークWの表面に所望のマークを形成するマーキング加工を行ってもよい。
【0017】
加工装置1は更に、制御装置5の制御下で、ワークWを計測可能である。加工装置1は、ワークWを計測するために、ワークWに対して計測光MLを照射する。計測光MLは、ワークWに照射されることでワークWを計測可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。第1実施形態では、計測光MLがレーザ光である例を用いて説明を進めるが、計測光MLは、レーザ光とは異なる種類の光であってもよい。更に、計測光MLの波長は、ワークWに照射されることでワークWを計測可能である限りは、どのような波長であってもよい。例えば、計測光MLは、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光及び紫外光の少なくとも一方等)であってもよい。計測光MLは、パルス光を含む。
【0018】
計測光MLの波長は、加工光ELの波長と異なっていてもよい。例えば、計測光MLの波長は、加工光ELの波長よりも短くてもよい。一例として、計測光MLとして266nm又は355nmの波長帯の光が用いられ、加工光ELとして532nm、1μm又は10μmの波長帯の光が用いられてもよい。この場合、ワークW上での計測光MLのスポット径が、ワークW上での加工光ELのスポット径よりも小さくなる。その結果、加工光ELによる加工分解能よりも、計測光MLによる計測分解能が高くなる。但し、計測光MLの波長は、加工光ELの波長よりも短くなくてもよい。計測光MLの波長は、加工光ELの波長と同じであってもよい。
【0019】
加工装置1は、ワークWの状態を計測可能であってもよい。ワークWの状態は、ワークWの位置を含んでいてもよい。ワークWの位置は、ワークWの表面の位置を含んでいてもよい。ワークWの表面の位置は、ワークWの表面を細分化した各面部分のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つにおける位置を含んでいてもよい。ワークWの状態は、後述する加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを含んでいてもよい。加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dは、加工ヘッド11とワークWとを結ぶ軸であるZ軸に沿った方向における距離を意味していてもよい。加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dは、典型的には、加工ヘッド11の基準部分とワークWの表面との間の距離である。加工ヘッド11の基準部分とワークWの表面との間の距離は、加工ヘッド11の基準部分とワークWの表面を細分化した各面部分との間の距離を含んでいてもよい。ワークWの状態は、ワークWの形状(例えば、3次元形状)を含んでいてもよい。ワークWの形状は、ワークWの表面の形状を含んでいてもよい。ワークWの表面の形状は、上述したワークWの表面の位置に加えて又は代えて、ワークWの表面を細分化した各面部分の向き(例えば、各面部分の法線の向きであり、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに対する各面部分の傾斜量と実質的に等価)を含んでいてもよい。ワークWの状態は、ワークWのサイズ(例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つにおけるサイズ)を含んでいてもよい。
【0020】
ワークWを加工及び計測するために、加工装置1は、ワークWに対して加工光EL及び計測光MLのそれぞれを射出する加工ヘッド11と、加工ヘッド11を移動させるヘッド駆動系12とを備える。加工ヘッド11は、ワークWに対して加工光EL及び計測光MLのそれぞれを射出することが可能な任意の部材を意味する。このため、加工ヘッド11は、ヘッドという文言を含んでいるものの、必ずしも何かの部材の先端に取り付けられる部材を意味していなくてもよい。このため、加工ヘッド11は、加工部材と称されてもよい。加工ヘッド11は、ワークWに対する加工処理を行う装置であるとも言える。加工ヘッド11は、ワークWを計測する装置であるとも言える。更に、加工ヘッド11は、加工光源111と、加工光学系112と、計測光源113と、計測光学系114と、合成光学系115と、共通光学系116とを備える。尚、加工ヘッド11及びヘッド駆動系12の構造については、図3から図6を参照しながら、後に詳述する。但し、加工ヘッド11は、ワークWに対して加工光EL及び計測光MLのそれぞれを射出することができる限りは、どのような構造を有していてもよい。加工ヘッド11は、ワークWに対して加工光EL及び計測光MLのそれぞれを射出することができる限りは、加工光源111、加工光学系112、計測光源113、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116の少なくとも一つを備えていなくてもよい。
【0021】
ヘッド駆動系12は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って加工ヘッド11を移動させる。加工ヘッド11が移動すると、後述するステージ32(更には、ステージ32に載置されたワークW)と加工ヘッド11との位置関係が変わる。つまり、加工ヘッド11が移動すると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との相対位置が変わる。従って、加工ヘッド11を移動させることは、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11が備える各光学系(つまり、加工光学系112、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116の少なくとも一つ)との位置関係が変わる。従って、加工ヘッド11を移動させることは、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11が備える各光学系との位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11の筐体117との位置関係が変わる。従って、加工ヘッド11を移動させることは、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11の筐体117との位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ワークW上に設定される目標照射領域EA及び目標照射領域MAのそれぞれのワークW上での位置が変わる。尚、目標照射領域EAは、加工ヘッド11が加工光ELを照射することが予定されている領域である。目標照射領域MAは、加工ヘッド11が計測光MLを照射することが予定されている領域である。従って、加工ヘッド11を移動させることは、ワークW上での目標照射領域EA及び目標照射領域MAのそれぞれの位置を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ワークW上で加工光EL及び計測光MLのそれぞれが実際に照射される照射位置が変わる。従って、加工ヘッド11を移動させることは、ワークW上での加工光EL及び計測光MLのそれぞれの照射位置を変更することと等価であるとみなしてもよい。
【0022】
ステージ装置3は、定盤31と、ステージ32とを備える。定盤31は、筐体4の底面上(或いは、筐体4が載置される床面等の支持面上)に配置される。定盤31上には、ステージ32が配置される。筐体4の底面或いは筐体4が載置される床面等の支持面と定盤31との間には、不図示の防振装置が設置されていてもよい。更に、定盤31上には、加工装置1を支持する不図示の支持フレームが配置されていてもよい。
【0023】
ステージ32上には、ワークWが載置される。ステージ32は、載置されたワークWを保持してもよい。例えば、ステージ32は、ワークWを真空吸着及び/又は静電吸着することで、ワークWを保持してもよい。或いは、ステージ32は、載置されたワークWを保持しなくてもよい。
【0024】
ステージ32は、制御装置5の制御下で、ワークWが載置されたまま定盤31上を移動可能である。ステージ32は、定盤31及び加工装置1の少なくとも一方に対して移動可能である。ステージ32は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って移動可能である。この場合、ステージ32は、XY平面に平行なステージ走り面(移動面)に沿って移動可能である。ステージ32は更に、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動可能であってもよい。ステージ32を移動させるために、ステージ装置3は、ステージ駆動系33を備えている。ステージ駆動系33は、例えば、任意のモータ(例えば、リニアモータ等)を用いて、ステージ32を移動させる。更に、ステージ装置3は、ステージ32の位置を計測するためステージ位置計測器を備えていてもよい。ステージ位置計測器は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0025】
ステージ32が移動すると、ステージ32(更には、ステージ32に載置されたワークW)と加工ヘッド11との位置関係が変わる。つまり、ステージ32が移動すると、加工ヘッド11とステージ32及びワークWとの相対位置が変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11が備える各光学系との位置関係が変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11が備える各光学系との位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11の筐体117との位置関係が変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11の筐体117との位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、目標照射領域EA及び目標照射領域MAのそれぞれのワークW上での位置が変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ワークW上での目標照射領域EA及び目標照射領域MAのそれぞれの位置を変更することと等価であるとみなしてもよい。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ワークW上で加工光EL及び計測光MLのそれぞれが実際に照射される照射位置が変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ワークW上での加工光EL及び計測光MLのそれぞれの照射位置を変更することと等価であるとみなしてもよいとみなしてもよい。
【0026】
制御装置5は、加工システムSYSaの動作を制御する。例えば、制御装置5は、ワークWの加工条件を設定すると共に、設定した加工条件に従ってワークWが加工されるように加工装置1及びステージ装置3を制御する。例えば、制御装置5は、ワークWの計測条件を設定すると共に、設定した計測条件に従ってワークWが計測されるように加工装置1及びステージ装置3を制御する。
【0027】
制御装置5は、例えば、演算装置と記憶装置とを含んでいてもよい。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit))の少なくとも一方を含んでいてもよい。制御装置5は、演算装置がコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSaの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置5が行うべき後述する動作を制御装置5(例えば、演算装置)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSaに後述する動作を行わせるように制御装置5を機能させるためのコンピュータプログラムである。演算装置が実行するコンピュータプログラムは、制御装置5が備える記憶装置(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置5に内蔵された又は制御装置5に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、演算装置は、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置5の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0028】
制御装置5は、加工システムSYSaの内部に設けられていなくてもよく、例えば、加工システムSYSa外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置5と加工システムSYSaとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置5と加工システムSYSaとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置5は、ネットワークを介して加工システムSYSaにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSaは、制御装置5からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。或いは、制御装置5が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSaの内部に設けられている一方で、制御装置5が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSaの外部に設けられていてもよい。
【0029】
尚、演算装置が実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置5(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置5内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置5が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0030】
(1-2)加工ヘッド11の構造
続いて、図3を参照しながら、加工ヘッド11の構造の一例について説明する。図3は、加工ヘッド11の構造の一例を示す断面図である。
【0031】
図3に示すように、加工ヘッド11は、加工光源111と、加工光学系112と、計測光源113と、計測光学系114と、合成光学系115と、共通光学系116とを備える。加工光源111、加工光学系112、計測光源113、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116は、筐体117内に収容されている。但し、加工光源111、加工光学系112、計測光源113、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116の少なくとも一つが、筐体117内に収容されていなくてもよい。
【0032】
加工ヘッド11が各光学系を備えるがゆえに(つまり、各光学系が加工ヘッド11に配置されるがゆえに)、各光学系は、加工ヘッド11に対して(例えば、筐体117に対して)固定された位置に配置される。つまり、ヘッド駆動系12による加工ヘッド11の移動に伴い、各光学系もまた加工ヘッド11(例えば、筐体117)と同様に移動する。
【0033】
加工光源111は、加工光ELを生成可能である。加工光ELがレーザ光である場合には、加工光源111は、例えば、レーザダイオードを含んでいてもよい。更に、加工光源111は、パルス発振可能な光源であってもよい。この場合、加工光源111は、パルス光(例えば、発光時間がピコ秒以下のパルス光)を加工光ELとして生成可能である。加工光源111は、生成した加工光ELを、加工光学系112に向けて射出する。
【0034】
加工光学系112は、加工光源111から射出された加工光ELが入射する光学系である。加工光学系112は、加工光学系112に入射した加工光ELを、合成光学系115に向けて射出する光学系である。つまり、加工光学系112は、加工光源111から射出された加工光ELを、合成光学系115に導く光学系である。加工光学系112が射出した加工光ELは、合成光学系115及び共通光学系116を介してワークWに照射される。このため、加工光学系112は、合成光学系115及び共通光学系116を介して加工光ELをワークWに向けて射出する(照射する)光学系であるとも言える。
【0035】
加工光学系112は、位置調整光学系1121と、角度調整光学系1122と、フォーカス調整光学系1123を含む。位置調整光学系1121は、加工光学系112からの加工光ELの射出位置を調整可能である。位置調整光学系1121は、例えば、加工光ELの進行方向に対して傾斜可能な平行平面板を備え、平行平面板の傾斜角を変えることで加工光ELの射出位置を変更してもよい。図3の例では、位置調整光学系1121は、互いに傾斜方向が異なる複数の平行平面板を用いて、加工光ELの射出位置をYZ平面内の任意の位置に設定することができる。加工光学系112からの加工光ELの射出位置が変わると、加工光ELの入射角度(例えば、ワークWに対する入射角度)が変わる。角度調整光学系1122は、加工光学系112からの加工光ELの射出角度を調整可能である。角度調整光学系1122は、例えば、加工光ELの進行方向に対して傾斜可能なミラーを備え、このミラーの傾斜角を変えることで加工光ELの射出角度を変更してもよい。図3の例では、角度調整光学系1122は、互いに傾斜方向が異なる複数のミラーを用いて、加工光ELの射出角度を、θX軸周り及びθY軸周りの任意の方向に向かって加工光ELが射出する任意の角度に設定することができる。加工光学系112からの加工光ELの射出角度が変わると、加工光ELの照射位置(例えば、ワークW上での照射位置)が変わる。フォーカス調整光学系1123は、加工光ELの集光位置を調整(典型的には、変更)可能である。このため、フォーカス調整光学系1123は、加工光ELの集光位置を調整可能なフォーカス変更部材として機能する。フォーカス調整光学系1123は、少なくとも一つが光軸に沿って移動可能な複数のレンズを備える。フォーカス調整光学系1123は、少なくとも一つのレンズを移動させることで、ワークWの表面に対する加工光ELの光軸方向の集光位置を調整する。具体的には、フォーカス調整光学系1123は、少なくとも一つのレンズを移動させることで、ワークWの表面に対する加工光ELのフォーカス位置を、fθレンズ1162の光軸AXに沿った方向(図3に示す例では、Z軸方向であり、ワークWの表面に交差する方向)において調整する。尚、フォーカス調整光学系1123は、典型的には、ワークWの表面に加工光ELのフォーカス位置が位置するように、加工光ELのフォーカス位置を調整してもよい。但し、加工光学系112は、位置調整光学系1121、角度調整光学系1122及びフォーカス調整光学系1123の少なくとも一つを含んでいなくてもよい。加工光学系112は、位置調整光学系1121、角度調整光学系1122及びフォーカス調整光学系1123の少なくとも一つに加えて又は代えて、その他の光学素子や光学部材(これらを光学系と称してもよい、以下同じ)を含んでいてもよい。
【0036】
加工光学系112から射出された加工光ELは、合成光学系115に入射する。合成光学系115は、ビームスプリッタ(例えば、偏光ビームスプリッタ)1151を含む。ビームスプリッタ1151は、ビームスプリッタ1151に入射した加工光ELを、共通光学系116に向けて射出する。図3に示す例では、ビームスプリッタ1151に入射した加工光ELは、偏光分離面を透過することで共通光学系116に向けて射出される。このため、図3に示す例では、加工光ELは、偏光分離面を透過可能な偏光方向(偏光分離面に対してp偏光となる偏光方向)を有する状態でビームスプリッタ1151の偏光分離面に入射する。
【0037】
合成光学系115から射出された加工光ELは、共通光学系116に入射する。共通光学系116は、共通光学系116に入射した加工光ELを、ワークWに向けて射出する。共通光学系116は、ガルバノミラー1161と、fθレンズ1162とを備える。
【0038】
ガルバノミラー1161には、合成光学系115から射出された加工光ELが入射する。ガルバノミラー1161は、加工光ELを偏向する(つまり、加工光ELの射出角度を変更する)ことで、ワークW上での加工光ELの照射位置を変更する。つまり、ガルバノミラー1161は、加工光ELを偏向することで、加工光ELが照射される予定の領域としてワークW上に又は加工光ELの光路上に設定される目標照射領域EAの位置を変更する。尚、ガルバノミラー1161がfθレンズ1162の入射瞳位置又はその近傍に配置されているため、ガルバノミラー1161による加工光ELの射出角度の変化は、fθレンズ1162によって、加工光ELの照射位置(つまり、目標照射領域EAの位置)の変化に変換される。例えば、ガルバノミラー1161は、X走査ミラー1161Xと、Y走査ミラー1161Yとを含む。X走査ミラー1161X及びY走査ミラー1161Yのそれぞれは、ガルバノミラー1161に入射する加工光ELの光路に対する角度が変更される傾斜角可変ミラーである。X走査ミラー1161Xは、ワークW上での加工光ELのX軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、加工光ELの光路に対するX走査ミラー1161Xの角度を変更する)ことで加工光ELを偏向する。Y走査ミラー1161Yは、ワークW上での加工光ELのY軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、加工光ELの光路に対するY走査ミラー1161Yの角度を変更する)ことで加工光ELを偏向する。
【0039】
fθレンズ1162には、ガルバノミラー1161からの加工光ELが入射する。このため、ガルバノミラー1161は、合成光学系115とfθレンズ1162との間における加工光ELの光路上に配置される。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161とワークWとの間における加工光ELの光路上に配置される。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161と目標照射領域EAとの間における加工光ELの光路上に配置される。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161からの加工光ELをワークWに照射するための光学系である。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161からの加工光ELを目標照射領域EAに照射するための光学系である。特に、fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161からの加工光ELをワークW上に集光するための光学系である。このため、fθレンズ1162は、収斂状態の加工光ELをワークWに照射する。その結果、加工光ELによってワークWが加工される。尚、fθレンズ1162は、加工光ELをワークWに照射する(特に、ワークWの表面に照射する)がゆえに、照射光学系と称されてもよい。尚、ガルバノミラー1161による加工光ELの偏向に起因してワークW上で移動する目標照射領域EAの移動範囲を、加工ショット領域ESA(後述する図7参照)と称してもよい。言い換えると、目標照射領域EAは、加工ショット領域ESA内で移動するものとみなしてもよい。
【0040】
続いて、計測光源113は、計測光MLを生成可能である。計測光MLがレーザ光である場合には、計測光源113は、例えば、レーザダイオードを含んでいてもよい。特に、上述したように計測光MLがパルス光を含むため、計測光源113は、パルス発振可能な光源である。この場合、計測光源113は、パルス光(例えば、発光時間がピコ秒以下のパルス光)を計測光MLとして生成可能である。計測光源113は、生成した計測光MLを、計測光学系114に向けて射出する。
【0041】
第1実施形態では、計測光源113は、光コム光源を含む。光コム光源は、周波数軸上で等間隔に並んだ周波数成分を含む光(以降、“光周波数コム”と称する)をパルス光として生成可能な光源である。この場合、計測光源113は、周波数軸上で等間隔に並んだ周波数成分を含むパルス光を、計測光MLとして射出する。但し、計測光源113は、光コム光源を含んでいなくてもよい。
【0042】
図1に示す例では、加工ヘッド11は、複数の計測光源113を備えている。例えば、加工ヘッド11は、計測光源113#1と、計測光源113#2とを備えている。複数の計測光源113は、互いに位相同期され且つ干渉性のある複数の計測光MLをそれぞれ射出する。例えば、複数の計測光源113は、発振周波数が異なっていてもよい。このため、複数の計測光源113がそれぞれ射出する複数の計測光MLは、パルス周波数(例えば、単位時間当たりのパルス光の数であり、パルス光の発光周期の逆数)が異なる複数の計測光MLとなる。一例として、計測光源113#1は、パルス周波数が25GHzとなる計測光ML#1を射出し、計測光源113#2は、パルス周波数が25GHz+α(例えば、+100kHz)となる計測光ML#2を射出してもよい。但し、加工ヘッド11は、単一の計測光源113を備えていてもよい。
【0043】
計測光学系114は、計測光源113から射出された計測光MLが入射する光学系である。計測光学系114は、計測光学系114に入射した計測光MLを、合成光学系115に向けて射出する光学系である。つまり、計測光学系114は、計測光源113から射出された計測光MLを、合成光学系115に導く光学系である。計測光学系114が射出した計測光MLは、合成光学系115及び共通光学系116を介してワークWに照射される。このため、計測光学系114は、合成光学系115及び共通光学系116を介して計測光MLをワークWに向けて射出する光学系であるとも言える。
【0044】
計測光学系114は、加工光学系112とは光学的に分離されている。このため、加工光源111と合成光学系115との間における加工光ELの光路と、計測光源113と合成光学系115との間における計測光MLの光路とは、光学的に分離されている。尚、ある光学系と別の光学系とが光学的に分離されているとは、ある光学系の光路と、別の光学系の光路とが互いに重畳しないことを指してもよい。
【0045】
計測光学系114は、例えば、ビームスプリッタ1141と、ビームスプリッタ1142と、検出器1143と、ビームスプリッタ1144と、ミラー1145と、検出器1146と、ミラー1147と、ガルバノミラー1148とを備える。
【0046】
計測光源113から射出された計測光MLは、ビームスプリッタ1141に入射する。具体的には、計測光源113#1から射出された計測光ML(以降、“計測光ML#1”と称する)及び計測光源113#2から射出された計測光ML(以降、“計測光ML#2”と称する)は、ビームスプリッタ1141に入射する。ビームスプリッタ1141は、ビームスプリッタ1141に入射した計測光ML#1及びML#2を、ビームスプリッタ1142に向けて射出する。
【0047】
ビームスプリッタ1142は、ビームスプリッタ1142に入射した計測光ML#1の一部である計測光ML#1-1を検出器1143に向けて反射する。ビームスプリッタ1142は、ビームスプリッタ1142に入射した計測光ML#1の他の一部である計測光ML#1-2をビームスプリッタ1144に向けて射出する。つまり、ビームスプリッタ1142は、計測光ML#1を、ビームスプリッタ1142から検出器1143に延びる光路を進行する計測光ML#1-1と、ビームスプリッタ1142からビームスプリッタ1144に向かう光路を進行する計測光ML#1-2とに分岐する分岐光学系として機能する。ビームスプリッタ1142は、ビームスプリッタ1142に入射した計測光ML#2の一部である計測光ML#2-1を検出器1143に向けて反射する。ビームスプリッタ1142は、ビームスプリッタ1142に入射した計測光ML#2の他の一部である計測光ML#2-2をビームスプリッタ1144に向けて射出する。つまり、ビームスプリッタ1142は、計測光ML#2を、ビームスプリッタ1142から検出器1143に延びる光路を進行する計測光ML#2-1と、ビームスプリッタ1142からビームスプリッタ1144に向かう光路を進行する計測光ML#2-2とに分岐する分岐光学系として機能する。
【0048】
ビームスプリッタ1142から射出された計測光ML#1-1及びML#2-1は、検出器1143に入射する。検出器1143は、計測光ML#1-1と計測光ML#2-1とが干渉することで生成される干渉光を検出する。つまり、検出器1143は、計測光ML#1-1と計測光ML#2-1とが干渉することで生成される干渉光に基づく干渉信号を検出する。具体的には、検出器1143は、干渉光を受光することで、干渉光を検出する。このため、検出器1143は、光を受光可能な受光素子(受光部であり、典型的には、光電変換素子)を備えていてもよい。検出器1143の検出結果は、制御装置5に出力される。
【0049】
ビームスプリッタ1142から射出された計測光ML#1-2及びML#2-2は、ビームスプリッタ1144に入射する。ビームスプリッタ1144は、ビームスプリッタ1144に入射した計測光ML#1-2の少なくとも一部をミラー1145に向けて射出する。ビームスプリッタ1144は、ビームスプリッタ1144に入射した計測光ML#2-2の少なくとも一部をミラー1147に向けて射出する。つまり、ビームスプリッタ1144は、ビームスプリッタ1144に同じ方向から入射する計測光ML#1-2及びML#2-2(つまり、実質的には、計測光源113からの計測光ML)を、ビームスプリッタ1144からミラー1145に延びる光路を進行する計測光ML#1-2と、ビームスプリッタ1144からミラー1147に向かう光路を進行する計測光ML#2-2とに分岐する分岐光学系として機能する。
【0050】
ビームスプリッタ1144から射出された計測光ML#1-2は、ミラー1145に入射する。ミラー1145に入射した計測光ML#1-2は、ミラー1145の反射面(反射面は、参照面と称されてもよい)によって反射される。具体的には、ミラー1145は、ミラー1145に入射した計測光ML#1-2をビームスプリッタ1144に向けて反射する。つまり、ミラー1145は、ミラー1145に入射した計測光ML#1-2を、その反射光である計測光ML#1-3としてビームスプリッタ1144に向けて射出する(戻す)。ミラー1145から射出された計測光ML#1-3は、ビームスプリッタ1144に入射する。ビームスプリッタ1144は、ビームスプリッタ1144に入射した計測光ML#1-3をビームスプリッタ1142に向けて射出する。ビームスプリッタ1144から射出された計測光ML#1-3は、ビームスプリッタ1142に入射する。ビームスプリッタ1142は、ビームスプリッタ1142に入射した計測光ML#1-3を検出器1146に向けて射出する。
【0051】
一方で、ビームスプリッタ1144から射出された計測光ML#2-2は、ミラー1147に入射する。ミラー1147は、ミラー1147に入射した計測光ML#2-2をガルバノミラー1148に向けて反射する。つまり、ミラー1147は、ミラー1147に入射した計測光ML#2-2をガルバノミラー1148に向けて射出する。
【0052】
ガルバノミラー1148は、計測光ML#2-2を偏向する(つまり、計測光ML#2-2の射出角度を変更する)ことで、ワークW上での計測光ML#2-2の照射位置を変更する。つまり、ガルバノミラー1148は、計測光ML#2-2を偏向することで、計測光MLが照射される予定の領域としてワークW上に又は計測光ML#2-2の光路上に設定される目標照射領域MAの位置を変更する。例えば、ガルバノミラー1148は、X走査ミラー1148Xと、Y走査ミラー1148Yとを含む。X走査ミラー1148X及びY走査ミラー1148Yのそれぞれは、ガルバノミラー1148に入射する計測光ML#2-2の光路に対する角度が変更される傾斜角可変ミラーである。X走査ミラー1148Xは、ワークW上での計測光ML#2-2のX軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、計測光ML#2-2の光路に対するX走査ミラー1148Xの角度を変更する)ことで計測光ML#2-2を偏向する。Y走査ミラー1148Yは、ワークW上での計測光ML#2-2のY軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、計測光ML#2-2の光路に対するY走査ミラー1148Yの角度を変更する)ことで計測光ML#2-2を偏向する。尚、ガルバノミラー1148によって計測光ML#2-2の照射位置が変更されるがゆえに、ガルバノミラー1148は、照射位置変更光学系と称されてもよい。
【0053】
ガルバノミラー1148は、偏向した計測光ML#2-2を、合成光学系115に向けて射出する。ガルバノミラー1148から射出された計測光ML#2-2は、合成光学系115に入射する。合成光学系115のビームスプリッタ1151は、ビームスプリッタ1151に入射した計測光ML#2-2を、共通光学系116に向けて射出する。図3に示す例では、ビームスプリッタ1151に入射した計測光ML#2-2は、偏光分離面において反射されることで共通光学系116に向けて射出される。このため、図3に示す例では、計測光ML#2-2は、偏光分離面で反射可能な偏光方向(偏光分離面に対してs偏光となる偏光方向)を有する状態でビームスプリッタ1151の偏光分離面に入射する。
【0054】
ここで、上述したように、ビームスプリッタ1151には、計測光ML#2-2に加えて加工光ELが入射する。つまり、計測光ML#2-2及び加工光ELの双方がビームスプリッタ1151を通過する。ビームスプリッタ1151は、ビームスプリッタ1151に異なる方向からそれぞれ入射してきた加工光EL及び計測光ML#2-2を、同じ方向に向けて(つまり、同じ共通光学系116に向けて)射出する。従って、ビームスプリッタ1151は、実質的には、加工光EL及び計測光ML#2-2を合成する光学系として機能する。尚、上述したビームスプリッタ1151から加工光EL及び計測光ML#2-2のそれぞれが射出される方向は、合成光学系115の射出側に位置する共通光学系116に加工光EL及び計測光ML#2-2が入射するように加工光EL及び計測光ML#2-2が射出される方向に設定されてもよい。共通光学系116に加工光EL及び計測光ML#2-2が入射する限りは、加工光EL及び計測光ML#2-2が射出される方向が若干異なっていてもよい。
【0055】
尚、合成光学系115は、加工光EL及び計測光ML#2-2を合成することができる限りは、どのような構造を有していてもよい。例えば、合成光学系115は、ビームスプリッタ1151を用いることに加えて又は代えて、ある波長帯域の光を反射し且つ別の波長帯域の光を透過するダイクロイックミラーを用いて加工光EL及び計測光ML#2-2を合成してもよい。
【0056】
合成光学系115から射出された計測光ML#2-2は、共通光学系116に入射する。共通光学系116は、共通光学系116に入射した計測光ML#2-2を、ワークWに向けて射出する。
【0057】
具体的には、ガルバノミラー1161には、合成光学系115から射出された計測光ML#2-2が入射する。ガルバノミラー1161は、計測光ML#2-2を偏向することで、ワークW上での計測光ML#2-2の照射位置を変更する。つまり、ガルバノミラー1161は、計測光ML#2-2を偏向することで、計測光ML#2-2が照射される領域としてワークW上に又は計測光ML#2-2の光路上に設定される目標照射領域MAの位置を変更する。尚、ガルバノミラー1161がfθレンズ1162の入射瞳位置又はその近傍に配置されているため、ガルバノミラー1161による計測光ML#2-2の射出角度の変化は、fθレンズ1162によって、計測光ML#2-2の照射位置(つまり、目標照射領域MAの位置)の変化に変換される。例えば、X走査ミラー1161Xは、ワークW上での計測光ML#2-2のX軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、計測光ML#2-2の光路に対するX走査ミラー1161Xの角度を変更する)ことで計測光ML#2-2を偏向する。Y走査ミラー1161Yは、ワークW上での計測光ML#2-2のY軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、計測光ML#2-2の光路に対するY走査ミラー1161Yの角度を変更する)ことで計測光ML#2-2を偏向する。尚、ガルバノミラー1161によって計測光ML#2-2の照射位置(更には、加工光ELの照射位置)が変更されるがゆえに、ガルバノミラー1161は、照射位置変更光学系と称されてもよい。
【0058】
fθレンズ1162には、ガルバノミラー1161からの計測光ML#2-2が入射する。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161からの計測光ML#2-2をワークW上に集光するための光学系である。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161からの計測光ML#2-2をワークWに照射するための光学系である。fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161からの計測光ML#2-2を目標照射領域MAに照射するための光学系である。このため、fθレンズ1162は、ガルバノミラー1161と目標照射領域MAとの間における計測光ML#2-2の光路上に配置される。特に、fθレンズ1162は、収斂状態の計測光ML#2-2をワークWに照射する。その結果、計測光ML(具体的には、計測光ML#2-2)によってワークWが計測される。尚、fθレンズ1162は、計測光ML#2-2をワークWに照射する(特に、ワークWの表面に照射する)がゆえに、照射光学系と称されてもよい。尚、ガルバノミラー1161による計測光ML#2-2の偏向に起因してワークW上で移動する目標照射領域MAの移動範囲を、計測ショット領域MSA(後述する図7参照)と称してもよい。言い換えると、目標照射領域MAは、計測ショット領域MSA内で移動するものとみなしてもよい。
【0059】
ここで、上述したように、共通光学系116には、計測光ML#2-2に加えて加工光ELが入射する。つまり、共通光学系116には、合成光学系115が合成した加工光EL及び計測光ML#2-2が入射する。従って、計測光ML#2-2及び加工光ELの双方が同じ共通光学系116(具体的には、同じガルバノミラー1161及び同じfθレンズ1162)を通過する。
【0060】
このため、ガルバノミラー1161は、ワークW上での加工光ELの照射位置とワークW上での計測光ML#2-2の照射位置とを同期して変更可能である。ガルバノミラー1161は、ワークW上での加工光ELの照射位置とワークW上での計測光ML#2-2の照射位置とを連動して変更可能である。つまり、ガルバノミラー1161は、ワークWに対する目標照射領域EAの相対位置とワークWに対する目標照射領域MAの相対位置とを同期して及び/又は連動して変更可能である。
【0061】
また、fθレンズ1162は、加工光ELと計測光MLとの双方をワークWに照射するために、加工光ELと計測光MLとの双方を、fθレンズ1162からワークWに向かう方向に向けて射出する。つまり、fθレンズ1162は、加工光ELと計測光MLとの双方を同じ方向に向けて射出する。fθレンズ1162は、fθレンズ1162から加工光ELが射出される方向と同じ方向に向けて計測光MLを射出する。fθレンズ1162は、fθレンズ1162から計測光MLが射出される方向と同じ方向に向けて加工光ELを射出する。
【0062】
一方で、上述したように、計測光ML#2-2は、ガルバノミラー1148を介してワークWに照射される一方で、加工光ELは、ガルバノミラー1148を介することなくワークWに照射される。このため、加工システムSYSaは、ワークW上での加工光ELの照射位置に対して、ワークW上での計測光ML#2-2の照射位置を独立して移動させることができる。加工システムSYSaは、加工光ELの目標照射領域EAに対して、計測光ML#2-2の目標照射領域MAを独立して移動させることができる。加工システムSYSaは、ワークW上での加工光ELの照射位置と、ワークW上での計測光ML#2-2の照射位置とを独立して変更することができる。加工システムSYSaは、目標照射領域EAの位置と目標照射領域MAの位置とを独立して変更することができる。加工システムSYSaは、ワークW上での加工光ELの照射位置とワークW上での計測光ML#2-2の照射位置との位置関係を変更することができる。
【0063】
ワークWに計測光ML#2-2が照射されると、計測光ML#2-2の照射に起因した光がワークWから発生する。つまり、ワークWに計測光ML#2-2が照射されると、計測光ML#2-2の照射に起因した光がワークWから射出される。計測光ML#2-2の照射に起因してワークWから射出される光(つまり、計測光ML#2-2の照射に起因した光)は、ワークWで反射された計測光ML#2-2(つまり、反射光)、ワークWで散乱された計測光ML#2-2(つまり、散乱光)、ワークWで回折された計測光ML#2-2(つまり、回折光)、及び、ワークWを透過した計測光ML#2-2(つまり、透過光)のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0064】
計測光ML#2-2の照射に起因してワークWから射出される光の少なくとも一部(以下、この光を“計測光ML#2-3”と称する)は、共通光学系116に入射する。共通光学系116に入射した計測光ML#2-3は、fθレンズ1162及びガルバノミラー1161を介して、合成光学系115に入射する。合成光学系115のビームスプリッタ1151は、ビームスプリッタ1151に入射した計測光ML#2-3を、計測光学系114に向けて射出する。図3に示す例では、ビームスプリッタ1151に入射した計測光ML#2-3は、偏光分離面において反射されることで計測光学系114に向けて射出される。このため、図3に示す例では、計測光ML#2-3は、偏光分離面で反射可能な偏光方向を有する状態でビームスプリッタ1151の偏光分離面に入射する。
【0065】
合成光学系115から射出された計測光ML#2-3は、計測光学系114のガルバノミラー1148を介してミラー1147に入射する。ミラー1147は、ミラー1147に入射した計測光ML#2-3をビームスプリッタ1144に向けて反射する。ビームスプリッタ1144は、ビームスプリッタ1144に入射した計測光ML#2-3の少なくとも一部をビームスプリッタ1142に向けて射出する。ビームスプリッタ1142は、ビームスプリッタ1142に入射した計測光ML#2-3の少なくとも一部を検出器1146に向けて射出する。つまり、検出器1146には、ビームスプリッタ1144から、ミラー1147、ガルバノミラー1148、合成光学系115及び共通光学系116をこの順に通過してワークWに到達する光路OP#2-2を進行してワークWの表面に照射された計測光ML#2-2によって生ずる光のうちの少なくとも一部が、計測光ML#2-3として入射する。検出器1146には、光路OP#2-2を進行してワークWの表面に照射された計測光ML#2-2によって生ずる光のうちの、共通光学系116、合成光学系115、ガルバノミラー1148、ミラー1147、ビームスプリッタ1144及びビームスプリッタ1142をこの順に通過して検出器1146に至る光路OP#2-3を進行して検出器1146に到達する計測光ML#2-3が入射する。尚、計測光ML#2-3は、測定光又は物体光と称されてもよい。
【0066】
更に、上述したように、検出器1146には、計測光ML#2-3に加えて、計測光ML#1-3が入射する。具体的には、検出器1146には、ビームスプリッタ1144から、ミラー1145、ビームスプリッタ1144及びビームスプリッタ1142をこの順に通過して検出器1146に至る光路OP#1-3を進行して検出器1146に到達する計測光ML#1-3が入射する。検出器1146には、ミラー1145が形成する光路OP#1-3(言い換えれば、ミラー1145を介した光路OP#1-3)を進行して検出器1146に到達する計測光ML#1-3が入射する。尚、計測光ML#1-3は、参照光と称されてもよい。
【0067】
ここで、計測光ML#1-3及び計測光#ML2-3は、互いに位相同期され且つ干渉性のある複数の計測光ML(特に、複数の光周波数コム)に相当する。なぜならば、上述したように、計測光源113#1及び113#2は、互いに位相同期され且つ干渉性のある計測光ML#1及びML#2をそれぞれ射出するからである。その結果、検出器1146は、計測光ML#1-3と計測光ML#2-3とが干渉することで生成される干渉光を検出する。つまり、検出器1146は、計測光ML#1-3と計測光ML#2-3とが干渉することで生成される干渉光に基づく干渉信号を検出する。具体的には、検出器1146は、干渉光を受光することで、干渉光を検出する。このため、検出器1146は、光を受光可能な受光素子(受光部)を備えていてもよい。検出器1146の検出結果は、制御装置5に出力される。
【0068】
制御装置5は、検出器1143の検出結果(つまり、検出器1143の出力)及び検出器1146の検出結果(つまり、検出器1146の出力)に基づいて、ワークWの状態を算出する。ここで、図4を参照しながら、検出器1143の検出結果及び検出器1146の検出結果に基づいてワークWの状態を算出する原理について説明する。
【0069】
図4は、検出器1143に入射する計測光ML#1-1、検出器1143に入射する計測光ML#2-1、検出器1143が検出した干渉光、検出器1146に入射する計測光ML#1-3、検出器1146に入射する計測光ML#2-3及び検出器1146が検出した干渉光を示すタイミングチャートである。計測光ML#1のパルス周波数と計測光ML#2のパルス周波数とが異なるため、計測光ML#1-1のパルス周波数と計測光ML#2-1のパルス周波数とが異なる。従って、計測光ML#1-1と計測光ML#2-1との干渉光は、計測光ML#1-1を構成するパルス光と計測光ML#2-1を構成するパルス光とが同時に検出器1143に入射したタイミングに同期してパルス光が現れる干渉光となる。同様に、計測光ML#1-3のパルス周波数と計測光ML#2-3のパルス周波数とが異なる。従って、計測光ML#1-3と計測光ML#2-3との干渉光は、計測光ML#1-3を構成するパルス光と計測光ML#2-3を構成するパルス光とが同時に検出器1146に入射したタイミングに同期してパルス光が現れる干渉光となる。
【0070】
ここで、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光の位置(時間軸上の位置)は、計測光ML#1-3が通過する光路を含む光路OP#1-3の長さと、計測光ML#2-3が通過する光路を含む光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分に応じて変動する。更に、光路OP#2-2及びOP#2-3の長さが、計測光学系114(特に、検出器1146)とワークWとの位置関係に応じて変動する一方で、光路OP#1-3の長さは、計測光学系114(特に、検出器1146)とワークWとの位置関係に応じて変動することはない。なぜならば、計測光ML#2-3がワークWを介して検出器1146に入射する一方で、計測光ML#1-3は、ワークWを介することなく検出器1146に入射するからである。その結果、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光の位置は、計測光学系114(特に、検出器1146)とワークWとの位置関係に応じて変動する。一方で、検出器1143が検出する干渉光を作るパルス光の位置(時間軸上の位置)は、計測光学系114とワークWとの位置関係に応じて変動することはない。なぜならば、計測光ML#1-1及びML#2-1は、ワークWを介することなく検出器1143に入射するからである。このため、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1143が検出する干渉光を作るパルス光との時間差は、計測光学系114とワークWとの位置関係(典型的には、計測光学系114とワークWとの間の距離)を間接的に示していると言える。更には、計測光学系114等の各光学系が加工ヘッド11の筐体117に配置されている(つまり、各光学系の位置が加工ヘッド11に対して固定されている)がゆえに、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1143が検出する干渉光を作るパルス光との時間差は、加工ヘッド11とワークWとの位置関係(典型的には、加工ヘッド11とワークWとの間の距離D)を間接的に示していると言える。例えば、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1143が検出する干渉光を作るパルス光との時間差は、加工ヘッド11のfθレンズ1162とワークWとの位置関係(典型的には、fθレンズ1162とワークWとの間の距離D)を間接的に示していると言える。
【0071】
このため、制御装置5は、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1143が検出する干渉光を作るパルス光との時間差に基づいて、ワークWの状態を算出することができる。具体的には、制御装置5は、検出器1146が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1143が検出する干渉光を作るパルス光との時間差に基づいて、光路OP#1-3の長さと光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分を算出することができる。更に、制御装置5は、算出した差分(つまり、光路OP#1-3の長さと光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分の計測量)に関する光路差情報に基づいて、ワークWの状態を算出することができる。より具体的には、制御装置5は、光路差情報に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との間の相対的な位置関係を算出することができる。例えば、制御装置5は、光路差情報に基づいて、ワークWのうち計測光ML#2-2が照射された被照射領域WA(被照射部分、以下同じ)と加工ヘッド11との間の距離を算出することができる。つまり、制御装置5は、ワークWのうち計測光ML#2-2が照射された被照射領域WAの位置に関する情報を求めることができる。更には、ワークWの複数個所に計測光ML#2-2が照射されれば及び/又はワークWの表面を走査するように計測光ML#2-2が照射されれば、制御装置5は、ワークW上の複数の被照射領域WAのそれぞれと加工ヘッド11との間の距離Dに基づいて、ワークWの少なくとも一部の形状も算出することができる。
【0072】
光路差情報に基づいて算出されたワークWと加工ヘッド11との間の距離Dに関する距離情報(つまり、光路差情報に基づいて算出されたワークWと加工ヘッド11との間の相対的な位置関係に関する位置情報、以下同じ)は、加工システムSYSaを制御するために用いられてもよい。具体的には、距離情報は、加工装置1を制御するために用いられてもよい。距離情報は、加工ヘッド11を制御するために用いられてもよい。距離情報は、ヘッド駆動系12を制御するために用いられてもよい。距離情報は、ステージ装置3を制御するために用いられてもよい。距離情報は、ステージ駆動系33を制御するために用いられてもよい。
【0073】
例えば、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。つまり、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御可能な(典型的には、変更可能な)装置を制御してもよい。ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御可能な装置の一例として、ヘッド駆動系12及びステージ駆動系33の少なくとも一方があげられる。尚、加工ヘッド11が各光学系(例えば、加工光学系112、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116の少なくとも一つ)を備えているがゆえに、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作は、実質的には、ワークWと加工ヘッド11が備える各光学系との相対的な位置関係を制御する動作と等価であるとみなしてもよい。特に、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作は、実質的には、ワークWとfθレンズ1162との相対的な位置関係を制御する動作と等価であるとみなしてもよい。
【0074】
ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作は、所定の位置関係にはなっていないワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が所定の位置関係となるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する(典型的には、変更する)動作を含んでいてもよい。ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作は、所定の位置関係となっているワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を所定の位置関係に維持させるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作を含んでいてもよい。
【0075】
ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を所定の位置関係に維持させる場合には、加工ヘッド11は、加工ヘッド11に対して実質的に静止しているワークWに対して加工光ELを照射することができる。つまり、加工ヘッド11は、加工ヘッド11に対して実質的に静止しているワークWを加工することができる。このため、加工ヘッド11に対して実質的に静止していない(例えば、移動する)ワークWを加工する場合と比較して、ワークWの加工品質(例えば、加工精度)が向上する。尚、「所定の位置関係」の一例として、ワークW上の所望位置に設定された加工ショット領域ESAに加工光ELを適切に照射することが可能な位置関係があげられる。加工ショット領域ESAは、上述したように、ガルバノミラー1161によってワークW上で移動する目標照射領域EAの移動範囲を示す。つまり、加工ショット領域ESAは、加工ヘッド11及びステージ32を移動させることなくガルバノミラー1161が加工光ELで走査可能なワークW上の領域を示す。
【0076】
この場合、加工システムSYSaは、以下の手順を経て、ワークWを加工してもよい。まず、加工システムSYSaは、ワークW上の第1位置に第1の加工ショット領域ESAが設定されるように、ヘッド駆動系12及び/又はステージ駆動系33を用いて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を変更する。その後、加工システムSYSaは、第1の加工ショット領域ESAに適切に加工光ELを照射可能となる状態を維持するようにヘッド駆動系12及び/又はステージ駆動系33を制御したまま、ガルバノミラー1161を用いて第1の加工ショット領域ESA内の所望領域に加工光ELを照射する。つまり、加工システムSYSaは、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が、ワークW上の第1位置に設定された第1の加工ショット領域ESAに加工光ELを適切に照射可能となる第1の位置関係のまま維持されるようにヘッド駆動系12及び/又はステージ駆動系33を制御したまま、ガルバノミラー1161を用いて第1の加工ショット領域ESA内の所望領域に加工光ELを照射する。その結果、第1の加工ショット領域ESAが加工される。その後、ワークW上の第1位置とは異なる第2位置に第2の加工ショット領域ESAが設定されるように、ヘッド駆動系12及び/又はステージ駆動系33を用いて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を変更する。その後、加工システムSYSaは、第2の加工ショット領域ESAに適切に加工光ELを照射可能となる状態を維持するようにヘッド駆動系12及び/又はステージ駆動系33を制御したまま、ガルバノミラー1161を用いて第2の加工ショット領域ESA内の所望領域に加工光ELを照射する。つまり、加工システムSYSaは、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が、ワークW上の第2位置に設定された第2の加工ショット領域ESAに加工光ELを適切に照射可能となる第2の位置関係のまま維持されるようにヘッド駆動系12及び/又はステージ駆動系33を制御したまま、ガルバノミラー1161を用いて第2の加工ショット領域ESA内の所望領域に加工光ELを照射する。その結果、第2の加工ショット領域ESAが加工される。以降、同様の動作が、ワークWの加工が完了するまで繰り返される。
【0077】
尚、ワークWに計測光MLを照射し、計測光MLの検出結果(つまり、検出器1143及び1146の検出結果)に基づいて光路OP#1-3の長さと光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分を算出し、算出した差分に関する光路差情報に基づいてワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作を、第1実施形態では、「アライメント動作」と称する。以下では特に、説明の便宜上、ワークWに計測光MLを照射し、計測光MLの検出結果に基づいて(つまり、計測光MLの検出結果から算出される光路差情報に基づいて)加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを算出し、算出した距離Dに関する距離情報に基づいてワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作がアライメント動作となる例について説明する。尚、アライメント動作については、後に図7等を参照しながら詳述する。ここで、加工ヘッド11とワークWとの距離Dは、照射光学系としてのfθレンズ1162を構成する光学部材のうち最もワーク側に配置される光学部材のワークW側の光学面からワークWまでの、fθレンズ1162の光軸AXと平行な方向に沿った距離としてもよい。尚、距離Dは、照射光学系(fθレンズ1162)及び計測光学系114を構成する光学部材のうち、任意の光学部材の任意の光学面からワークWまでの、計測光MLの光路に沿った方向の長さとしてもよい。また、計測光MLの光路中の任意の位置からワークWまでの、当該計測光MLの光路に沿った方向の長さを距離Dとしてもよい。このように、距離Dは、計測光MLの検出結果から算出される光路差に既知のオフセットをのせた量とすることができる。
【0078】
加工システムSYSaは、加工システムSYSaがワークWを加工している加工期間のうちの少なくとも一部において、アライメント動作を行ってもよい。加工システムSYSaは、加工期間のうちの少なくとも一部において、ワークWに計測光MLを照射し、加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを算出し、算出した距離Dに関する距離情報に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。加工期間は、加工システムSYSaがワークWを対象とする加工処理を行っている期間を含んでいてもよい。加工期間は、加工システムSYSaがワークWを対象とする加工処理を開始してから、当該加工処理を終了するまでの間の期間のうちの少なくとも一部を含んでいてもよい。但し、加工システムSYSaは、加工期間とは異なる期間のうちの少なくとも一部において、アライメント動作を行ってもよい。
【0079】
より具体的には、加工システムSYSaは、加工システムSYSaが加工ショット領域ESAを加工している加工ショット期間のうちの少なくとも一部において、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を所定の位置関係に維持させる動作を、アライメント動作の一部として行ってもよい。一方で、加工システムSYSaは、一の加工ショット領域ESAに対する加工が完了してから次の加工ショット領域ESAに対する加工を開始するまでの期間のうちの少なくとも一部において、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を、加工ヘッド11が一の加工ショット領域ESAを加工可能な位置関係から、加工ヘッド11が次の加工ショット領域ESAを加工可能な位置関係へと変更する動作を、アライメント動作の一部として行ってもよい。
【0080】
また、上述したように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が変わると、目標照射領域EAのワークW上での位置(つまり、ワークW上で加工光ELが実際に照射される照射位置)が変わる。このため、アライメント動作は、ワークWに計測光MLを照射し、計測光MLの検出結果に基づいて加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを算出し、算出した距離Dに関する距離情報に基づいて目標照射領域EAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での加工光ELの照射位置)を制御する動作を含んでいてもよい。この場合、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークW上の所望位置に目標照射領域EAが設定される(つまり、加工光ELが照射される)ように、目標照射領域EAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での加工光ELの照射位置)を変更してもよい。つまり、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークW上の所望位置に目標照射領域EAが設定されるように、目標照射領域EAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での加工光ELの照射位置)を変更可能な装置を制御してもよい。目標照射領域EAのワークW上での位置(つまり、ワークW上で加工光ELの照射位置)を変更可能な装置の一例として、加工光学系112の角度調整光学系1122、加工光学系112のフォーカス調整光学系1123、共通光学系116のガルバノミラー1161、ヘッド駆動系12及びステージ駆動系33があげられる。
【0081】
また、上述したように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が変わると、目標照射領域MAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での計測光MLが実際に照射される照射位置)が変わる。このため、アライメント動作は、ワークWに計測光MLを照射し、計測光MLの検出結果に基づいて加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを算出し、算出した距離Dに関する距離情報に基づいて目標照射領域MAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での計測光MLの照射位置)を制御する動作を含んでいてもよい。この場合、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークW上の所望位置に目標照射領域MAが設定される(つまり、計測光MLが照射される)ように、目標照射領域MAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での計測光MLの照射位置)を変更してもよい。つまり、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークW上の所望位置に目標照射領域MAが設定されるように、目標照射領域MAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での計測光MLの照射位置)を変更可能な装置を制御してもよい。目標照射領域MAのワークW上での位置(つまり、ワークW上での計測光MLの照射位置)を変更可能な装置の一例として、共通光学系116のガルバノミラー1161、計測光学系114のガルバノミラー1148、ヘッド駆動系12及びステージ駆動系33があげられる。
【0082】
(1-3)ヘッド駆動系12の構造
(1-3-1)ヘッド駆動系12の全体構造
続いて、図5を参照しながら、ヘッド駆動系12の構造の一例について説明する。図5は、ヘッド駆動系12の構造の一例を示す断面図である。
【0083】
図5に示すように、ヘッド駆動系12は、第1駆動系121と、第2駆動系122とを備える。第1駆動系121には、第2駆動系122が取り付けられている。第1駆動系121は、第2駆動系122を支持する。第2駆動系122には、加工ヘッド11が取り付けられている。第2駆動系122は、加工ヘッド11を支持する。このため、第2駆動系122は、実質的には、第1駆動系121と加工ヘッド11とを接続する接続装置として機能してもよい。
【0084】
第1駆動系121は、制御装置5の制御下で、第2駆動系122をワークWに対して移動させる。つまり、第1駆動系121は、第2駆動系122をワークWに対して移動させる移動装置として機能する。第2駆動系122に加工ヘッド11が取り付けられているため、第1駆動系121は、第2駆動系122を移動させることで、加工ヘッド11をワークWに対して移動させていると言える。つまり、第1駆動系121は、第2駆動系122と共に加工ヘッド11を移動させる。第1駆動系121は、第2駆動系122を介して加工ヘッド11を移動させる。第1駆動系121は、第2駆動系122を介して加工ヘッド11が備える各光学系を移動させる(言い換えれば、駆動する)駆動部として機能する。
【0085】
第2駆動系122は、制御装置5の制御下で、加工ヘッド11をワークWに対して移動させる。つまり、第2駆動系122は、加工ヘッド11をワークWに対して移動させる移動装置として機能する。第2駆動系122は、加工ヘッド11をワークWに対して移動させる移動装置として機能する。上述したように第2駆動系122が加工ヘッド11を支持しているため、第2駆動系122は、加工ヘッド11がワークWに対して変位可能な状態で加工ヘッド11を支持すると言える。この場合、第2駆動系122は、加工ヘッド11が備える各光学系がワークWに対して変位可能な状態で加工ヘッド11が備える各光学系を支持する支持部として機能する。
【0086】
以下、このような第1駆動系121及び第2駆動系122について順に説明する。
【0087】
(1-3-1-1)第1駆動系121の構造
図5に示すように、第1駆動系121は、基台1211と、アーム駆動系1212とを備えている。
【0088】
基台1211は、筐体4(例えば、筐体4の天井部材)又は不図示の支持フレーム(支持構造体)に取り付けられている。基台1211には、アーム駆動系1212が取り付けられている。基台1211は、アーム駆動系1212を支持する。基台1211は、アーム駆動系1212を支持するためのベース部材として用いられる。
【0089】
アーム駆動系1212は、複数のアーム部材12121を備えている。複数のアーム部材12121は、少なくとも一つのジョイント部材12122を介して揺動自在に連結されている。従って、アーム駆動系1212は、いわゆる垂直多関節構造を有するロボットである。尚、アーム駆動系1212は、垂直多関節構造を有するロボットには限定されず、例えば、水平多関節構造を有するロボット極座標型ロボット、円筒座標型ロボット、直角座標型ロボット、又はパラレルリンク型ロボットであってもよい。アーム駆動系1212は、単一の関節(つまり、ジョイント部材12122によって規定される駆動軸)を備えていてもよい。或いは、アーム駆動系1212は、複数の関節を備えていてもよい。図5は、アーム駆動系1212が三つの関節を備えている例を示している。各関節を介して連結されている二つのアーム部材12121は、各関節に対応するアクチュエータ12123によって揺動する。図5は、三つの関節に対応してアーム駆動系1212が三つのアクチュエータ12123を備えている例を示している。その結果、少なくとも一つのアーム部材12121が移動する。このため、少なくとも一つのアーム部材12121は、ワークWに対して移動可能である。つまり、少なくとも一つのアーム部材12121は、少なくとも一つのアーム部材12121とワークWとの相対的な位置関係が変更されるように移動可能である。
【0090】
アーム駆動系1212には、第2駆動系122が取り付けられている。具体的には、複数のアーム部材12121のうちの基台1211から最も遠い位置に位置する一のアーム部材12121に、第2駆動系122が取り付けられている。以下、説明の便宜上、第2駆動系122が取り付けられる一のアーム部材12121を、先端アーム部材12124と称する。第2駆動系122は、先端アーム部材12124に直接取り付けられていてもよいし、他の部材を介して先端アーム部材12124に間接的に取り付けられていてもよい。
【0091】
上述したアクチュエータ12123によって先端アーム部材12124が移動すると、先端アーム部材12124に取り付けられている第2駆動系122もまた移動する。このため、アーム駆動系1212(つまり、第1駆動系121)は、第2駆動系122を移動させることができる。具体的には、アーム駆動系1212は、ワークWに対して第2駆動系122を移動させることができる。アーム駆動系1212は、第2駆動系122とワークWとの相対的な位置関係が変更されるように、第2駆動系122を移動させることができる。また、第2駆動系122が移動すると、第2駆動系122に取り付けられている加工ヘッド11もまた移動する。このため、アーム駆動系1212(つまり、第1駆動系121)は、加工ヘッド11を移動させることができる。
【0092】
尚、第1駆動系121は、多関節ロボットには限定されず、第2駆動系122をワークWに対して移動させることが可能である限りは、どのような構造を有していてもよい。
【0093】
(1-3-1-2)第2駆動系122の構造
続いて、図6を参照しながら、第2駆動系122の構造について説明する。図6は、第2駆動系122の構造を示す断面図である。
【0094】
図6に示すように、第2駆動系122は、支持部材1221と、支持部材1222と、エアスプリング1223と、ダンパ部材1224と、駆動部材1225とを備える。
【0095】
支持部材1221は、第1駆動系121に取り付けられている。具体的には、支持部材1221は、第1駆動系121の先端アーム部材12124に取り付けられている。支持部材1222は、加工ヘッド11に取り付けられている。
【0096】
支持部材1221と支持部材1222とは、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225を介して結合されている(言い換えれば、連結されている、或いは、接続されている)。つまり、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225のそれぞれは、支持部材1221と支持部材1222とを結合するように、支持部材1221及び1222に取り付けられている。支持部材1221に第1駆動系121が取り付けられ且つ支持部材1222に加工ヘッド11が取り付けられているため、エアスプリング1223、ダンパ部材1224及び駆動部材1225のそれぞれは、実質的には、第1駆動系121と加工ヘッド11とを結合するように、支持部材1221及び1222に取り付けられているとも言える。
【0097】
エアスプリング1223は、制御装置5の制御下で、気体(一例として空気)の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与する。エアスプリング1223は、制御装置5の制御下で、気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方に付与する。特に、エアスプリング1223は、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向(図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与してもよい。つまり、エアスプリング1223は、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と加工ヘッド11とが並ぶ方向(図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方に付与してもよい。尚、エアスプリング1223は、弾性部材と称されてもよい。
【0098】
気体の圧力に起因した弾性力を付与するために、エアスプリング1223には、気体供給装置12261から配管12262及びバルブ12263を介して気体が供給される。制御装置5は、エアスプリング1223内の機体の圧力を計測する圧力計1226の計測結果に基づいて、気体供給装置12261及びバルブ12263の少なくとも一方を制御する。尚、気体供給装置12261、配管12262及びバルブ12263はなくてもよい。この場合、エアスプリング1223は、制御装置5の制御とは無関係に、内部の気体の圧力に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与してもよい。
【0099】
エアスプリング1223は、制御装置5の制御下で、弾性力を利用して、支持部材1222の重量を支持してもよい。具体的には、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向に沿って支持部材1222の重量を支持してもよい。支持部材1222に加工ヘッド11が取り付けられているため、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、支持部材1222に取り付けられた加工ヘッド11の重量を支持してもよい。具体的には、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と加工ヘッド11とが並ぶ方向に沿って加工ヘッド11の重量を支持してもよい。この場合、エアスプリング1223は、加工ヘッド11の自重をキャンセルする自重キャンセラとして機能してもよい。尚、エアスプリング1223は、制御装置5の制御とは無関係に、弾性力を利用して、支持部材1222の重量を支持してもよい。
【0100】
エアスプリング1223は、制御装置5の制御下で、弾性力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。つまり、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰してもよい。具体的には、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121から第2駆動系122を介して加工ヘッド11へと向かう(つまり、伝達される)振動を低減(減衰)してもよい。つまり、エアスプリング1223は、弾性力を利用して、第1駆動系121のうち第2駆動系122が取り付けられている部分(つまり、先端アーム部材12124)から、加工ヘッド11のうち第2駆動系122が取り付けられている部分へと向かう振動を低減(減衰)してもよい。この場合、制御装置5は、圧力計1226の計測結果に基づいて、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動が低減される(つまり、減衰される)ように、気体供給装置12261及びバルブ12263の少なくとも一方を制御してもよい。尚、エアスプリング1223(或いは、エアスプリング1223を含む第2駆動系122)は、振動低減装置又は振動減衰装置と称されてもよい。尚、エアスプリング1223は、制御装置5の制御とは無関係に、弾性力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。
【0101】
ダンパ部材1224は、空気の圧力とは異なる要因に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与する。ダンパ部材1224は、空気の圧力とは異なる要因に起因した弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方に付与する。特に、ダンパ部材1224は、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向(図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与してもよい。つまり、ダンパ部材1224は、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と加工ヘッド11とが並ぶ方向(図6に示す例では、Z軸方向であり、重力方向)に沿って、弾性力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方に付与してもよい。尚、ダンパ部材1224は、弾性部材と称されてもよい。
【0102】
ダンパ部材1224は、弾性力を付与可能である限りはどのような部材であってもよい。例えば、ダンパ部材1224は、圧縮バネコイルを含んでいてもよい。例えば、ダンパ部材1224は、板バネを含んでいてもよい。
【0103】
ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、支持部材1222の重量を支持してもよい。具体的には、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、支持部材1221と支持部材1222とが並ぶ方向に沿って支持部材1222の重量を支持してもよい。支持部材1222に加工ヘッド11が取り付けられているため、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、支持部材1222に取り付けられた加工ヘッド11の重量を支持してもよい。具体的には、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121(特に、先端アーム部材12124)と加工ヘッド11とが並ぶ方向に沿って加工ヘッド11の重量を支持してもよい。この場合、ダンパ部材1224は、加工ヘッド11の自重をキャンセルする自重キャンセラとして機能してもよい。
【0104】
ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。つまり、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰してもよい。具体的には、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121から第2駆動系122を介して加工ヘッド11へと向かう(つまり、伝達される)振動を低減(減衰)してもよい。このため、ダンパ部材1224(或いは、ダンパ部材1224を含む第2駆動系122)は、振動低減装置又は振動減衰装置と称されてもよい。
【0105】
ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、エアスプリング1223の振動を減衰振動に変換してもよい。つまり、ダンパ部材1224は、弾性力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰振動に変換してもよい。
【0106】
駆動部材1225は、制御装置5の制御下で、駆動力を発生可能である。駆動部材1225は、発生させた駆動力を支持部材1221及び1222の少なくとも一方に付与可能である。駆動部材1225は、発生させた駆動力を、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を介して、第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方に付与可能である。駆動部材1225は、駆動力を発生可能である限りは、どのような構造を有していてもよい。例えば、駆動部材1225は、電気的に駆動力を発生可能な構造を有していてもよい。例えば、駆動部材1225は、磁気的に駆動力を発生可能な構造を有していてもよい。一例として、図6は、駆動部材1225が、電気的に駆動力を発生可能なボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)である例を示している。尚、ボイスコイルモータがリニアモータの一種であるところ、駆動部材1225はボイスコイルモータと異なるリニアモータであってもよい。駆動部材1225は、直線状の軸に沿った駆動力を発生させるものであってもよい。
【0107】
尚、駆動部材1225は、駆動部材1225のうちの支持部材1221に取り付けられる部材と、駆動部材1225のうちの支持部材1222に取り付けられる部材とが物理的に接触しない構造を有していてもよい。例えば、駆動部材1225がボイスコイルモータである場合には、駆動部材1225のうちの支持部材1221に取り付けられる部材(例えば、コイル及び磁極のいずれか一方を含む部材)と、駆動部材1225のうちの支持部材1222に取り付けられる部材(例えば、コイル及び磁極のいずれか他方を含む部材)とが物理的に接触することはない。
【0108】
駆動部材1225は、制御装置5の制御下で、駆動力を利用して、支持部材1221及び1222の少なくとも一方を移動させてもよい。駆動部材1225は、制御装置5の制御下で、駆動力を利用して支持部材1221及び1222の少なくとも一方を移動させることで、第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方を移動させてもよい。この場合、駆動部材1225は、駆動力を利用して第1駆動系121及び加工ヘッド11の少なくとも一方を移動させることで、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を変更してもよい。この場合、駆動部材1225を含む第2駆動系122は、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置が変更可能になるように第1駆動系121と加工ヘッド11とを結合していると言える。つまり、上述したエアスプリング1223及びダンパ部材1224(更には、駆動部材1225)は、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置が駆動部材1225によって変更可能となるように、第1駆動系121と加工ヘッド11とを結合していると言える。尚、駆動部材1225は、位置変更装置と称されてもよい。
【0109】
駆動部材1225は、制御装置5の制御下で、第2駆動系122が備える位置計測装置1227の計測結果に基づいて、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を変更してもよい。位置計測装置1227は、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を計測する。例えば、位置計測装置1227は、支持部材1221に取り付けられた検出部12271と、支持部材1222に取り付けられたスケール部12272とを含むエンコーダであってもよい。位置計測装置1227の計測結果は、支持部材1221と支持部材1222との相対位置に関する情報を含む。支持部材1221に第1駆動系121が取り付けられ且つ支持部材1222に加工ヘッド11が取り付けられているため、支持部材1221と支持部材1222との相対位置に関する情報は、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置に関する情報を含む。従って、制御装置5は、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を適切に特定することができる。その結果、制御装置5は、位置計測装置1227の計測結果に基づいて、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を適切に変更することができる。
【0110】
駆動部材1225は、制御装置5の制御下で、第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を変更する(典型的には、第1駆動系121に対して加工ヘッド11を移動させる)ことで、ワークWに対して加工ヘッド11を移動させてもよい。駆動部材1225は、加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係が変更されるように、加工ヘッド11を移動させてもよい。
【0111】
駆動部材1225は、制御装置5の制御下で、駆動力を利用して第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を変更することで、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を低減してもよい。つまり、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰してもよい。具体的には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121から第2駆動系122を介して加工ヘッド11へと向かう(つまり、伝達される)振動を低減(減衰)してもよい。このため、駆動部材1225(或いは、駆動部材1225を含む第2駆動系122)は、振動低減装置又は振動減衰装置と称されてもよい。
【0112】
駆動部材1225は、駆動力を利用して第1駆動系121と加工ヘッド11との相対位置を変更することで、エアスプリング1223の振動を減衰振動に変換してもよい。つまり、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121と加工ヘッド11との間で第2駆動系122を介して伝達される振動を減衰振動に変換してもよい。この場合、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121から加工ヘッド11に向かう振動に起因した第1駆動系121と加工ヘッド11との相対的な変位量を低減していると言える。具体的には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、第1駆動系121から加工ヘッド11に向かう振動に起因した、第1駆動系121のうち第2駆動系122が接続されている部分(つまり、先端アーム部材12124)と加工ヘッド11のうち第2駆動系122が接続されている部分との相対的な変位量を低減していると言える。尚、駆動部材1225がエアスプリング1223の振動を減衰振動に変換可能である場合には、第2駆動系122は、ダンパ部材1224を備えていなくてもよい。但し、駆動部材1225がエアスプリング1223の振動を減衰振動に変換可能でない場合であっても、第2駆動系122は、ダンパ部材1224を備えていなくてもよい。また、エアスプリング1223の数と、ダンパ部材1224の数と、駆動部材1225の数とは、互いに等しくなくてもよい。
【0113】
駆動部材1225は、エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224が弾性力を付与する方向の成分を含む方向に沿って作用する駆動力を付与してもよい。図6に示す例で言えば、エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224がZ軸方向に沿った弾性力を付与しているため、駆動部材1225は、Z軸方向の成分を含む方向に沿って作用する駆動力を付与してもよい。エアスプリング1223及び/又はダンパ部材1224が弾性力を付与する方向の成分を含む方向に沿って作用する駆動力を駆動部材1225が発生する場合には、駆動部材1225は、この駆動力を利用して、エアスプリング1223の振動を減衰振動に変換することができる。エアスプリング1223の振動を減衰振動にする際には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、エアスプリング1223の共振周波数を変更してもよい。典型的には、駆動部材1225は、駆動力を利用して、エアスプリング1223の共振周波数を高くしてもよい。
【0114】
エアスプリング1223等の弾性部材と駆動部材1225とを用いて能動的に振動を低減する装置は、能動型防振装置と称されてもよい。このため、第2駆動系122は、能動型防振装置と称されてもよい。能動型防振装置は、能動型振動分離システム(AVIS:Active Vibration Isolation System)と称されてもよい。
【0115】
(1-4)アライメント動作
続いて、アライメント動作について説明する。第1実施形態では、加工システムSYSaは、アライメント動作として、第1のアライメント動作から第4のアライメント動作のうちの少なくとも一つを行ってもよい。従って、以下では、第1のアライメント動作から第4のアライメント動作について順に説明する。
【0116】
(1-4-1)第1のアライメント動作
第1のアライメント動作は、ワークWの表面上の任意の複数個所に計測光MLを照射し、計測光MLの検出結果に基づいて加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを算出し、算出した距離Dに関する距離情報に基づいてワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作である。
【0117】
第1のアライメント動作を行う場合には、加工ヘッド11は、ワークW上の三つ以上の被照射領域WAのそれぞれに計測光MLを照射する。つまり、加工ヘッド11は、ワークWの表面上の三か所以上に計測光MLを照射する。例えば、ワークW上の複数の被照射領域WAを示す平面図である図7(a)及びワークW上の複数の被照射領域WAを示す斜視図である図7(b)に示すように、加工ヘッド11は、ワークW上の四つの被照射領域WA(具体的には、被照射領域WA#1からWA#4)のそれぞれに計測光MLを照射してもよい。
【0118】
具体的には、加工ヘッド11は、ガルバノミラー1148を用いて計測光ML#2-2を偏向することで、第1の偏向状態にある計測光ML#2-2である計測光ML#2-2-1を、被照射領域WA#1に照射する。つまり、加工ヘッド11は、fθレンズ1162から被照射領域WA#1に向かう方向に沿って進行する計測光ML#2-2-1を、被照射領域WA#1に照射する。加工ヘッド11は、ガルバノミラー1148を用いて計測光ML#2-2を偏向することで、第2の偏向状態にある計測光ML#2-2である計測光ML#2-2-2を、被照射領域WA#2に照射する。つまり、加工ヘッド11は、fθレンズ1162から被照射領域WA#2に向かう方向に沿って進行する計測光ML#2-2-2を、被照射領域WA#2に照射する。加工ヘッド11は、ガルバノミラー1148を用いて計測光ML#2-2を偏向することで、第3の偏向状態にある計測光ML#2-2である計測光ML#2-2-3を、被照射領域WA#3に照射する。つまり、加工ヘッド11は、fθレンズ1162から被照射領域WA#3に向かう方向に沿って進行する計測光ML#2-2-3を、被照射領域WA#3に照射する。加工ヘッド11は、ガルバノミラー1148を用いて計測光ML#2-2を偏向することで、第4の偏向状態にある計測光ML#2-2である計測光ML#2-2-4を、被照射領域WA#4に照射する。つまり、加工ヘッド11は、fθレンズ1162から被照射領域WA#4に向かう方向に沿って進行する計測光ML#2-2-4を、被照射領域WA#4に照射する。
【0119】
尚、被照射領域WAは、ワークW上に予め設定されている必要は必ずしもなく、ワークWの表面のうちの計測光MLが実際に照射された領域が、被照射領域WAと称されてもよい。つまり、ワークWの表面のうちのワークWに計測光MLが照射されたタイミングで目標照射領域MAと重なっていた領域が、被照射領域WAと称されてもよい。
【0120】
加工ヘッド11は、計測光MLが三つ以上の被照射領域WAに順に照射されるように、ガルバノミラー1148を用いて計測光ML(具体的には、計測光ML#2-2)を偏向する。図7(a)及び図7(b)に示す例では、加工ヘッド11は、計測光MLが被照射領域WA#1からWA#4に順に照射されるように、ガルバノミラー1148を用いて計測光MLを偏向する。この場合、加工ヘッド11は、目標照射領域MAが被照射領域WA#1に重なるようにガルバノミラー1148を制御すると共に、目標照射領域MAが被照射領域WA#1に重なったタイミングで計測光MLを被照射領域WA#1に照射する。その後、加工ヘッド11は、目標照射領域MAが被照射領域WA#1から被照射領域WA#2に移動するようにガルバノミラー1148を制御すると共に、目標照射領域MAが被照射領域WA#2に重なったタイミングで計測光MLを被照射領域WA#2に照射する。その後、加工ヘッド11は、目標照射領域MAが被照射領域WA#2から被照射領域WA#3に移動するようにガルバノミラー1148を制御すると共に、目標照射領域MAが被照射領域WA#3に重なったタイミングで計測光MLを被照射領域WA#3に照射する。その後、加工ヘッド11は、目標照射領域MAが被照射領域WA#3から被照射領域WA#4に移動するようにガルバノミラー1148を制御すると共に、目標照射領域MAが被照射領域WA#4に重なったタイミングで計測光MLを被照射領域WA#4に照射する。その後、加工ヘッド11は、目標照射領域MAが被照射領域WA#4から被照射領域WA#1に移動するようにガルバノミラー1148を制御すると共に、目標照射領域MAが被照射領域WA#4に重なったタイミングで計測光MLを被照射領域WA#1に照射する。以降、同様の動作が繰り返されてもよい。
【0121】
ここで、上述したように計測光MLがパルス光を含んでいるため、加工ヘッド11は、ワークW上の三つ以上の被照射領域WAに、それぞれ異なるパルス光を照射する。つまり、加工ヘッド11は、計測光MLに含まれる第1のパルス光を第1の被照射領域WAに照射し、計測光MLに含まれる第1のパルス光とは異なる第2のパルス光を第1の被照射領域WAとは異なる第2の被照射領域に照射する。図7(a)及び図7(b)に示す例では、加工ヘッド11は、被照射領域WA#1からWA#4に、それぞれ異なるパルス光を照射する。つまり、加工ヘッド11は、計測光MLに含まれる第1のパルス光を被照射領域WA#1に照射し、計測光MLに含まれる第2のパルス光を被照射領域WA#2に照射し、計測光MLに含まれる第3のパルス光を被照射領域WA#3に照射し、計測光MLに含まれる第4のパルス光を被照射領域WA#4に照射する。
【0122】
このようにワークW上の三つ以上の被照射領域WAに計測光MLが照射されると、検出器1146は、三つ以上の被照射領域WAのそれぞれからの計測光ML(具体的には、計測光ML#2-3)と参照光(具体的には、計測光ML#1-3)との干渉光を検出する。図7(a)及び図7(b)に示す例では、検出器1146は、被照射領域WA#1からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光、被照射領域WA#2からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光、被照射領域WA#3からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光及び被照射領域WA#4からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光を検出する。
【0123】
その結果、制御装置5は、三つ以上の被照射領域WAのそれぞれと加工ヘッド11との間の距離Dを算出することができる。図7に示す例では、制御装置5は、被照射領域WA#1からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光の検出結果に基づいて、光路OP#1-3の長さと被照射領域WA#1を介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分を算出し、算出した差分に基づいて、被照射領域WA#1と加工ヘッド11との間の距離D#1を算出することができる。制御装置5は、被照射領域WA#2からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光の検出結果に基づいて、光路OP#1-3の長さと被照射領域WA#2を介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分を算出し、算出した差分に基づいて、被照射領域WA#2と加工ヘッド11との間の距離D#2を算出することができる。制御装置5は、被照射領域WA#3からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光の検出結果に基づいて、光路OP#1-3の長さと被照射領域WA#3を介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分を算出し、算出した差分に基づいて、被照射領域WA#3と加工ヘッド11との間の距離D#1を算出することができる。制御装置5は、被照射領域WA#4からの計測光ML#2-3と計測光ML#1-3との干渉光の検出結果に基づいて、光路OP#1-3の長さと被照射領域WA#4を介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分を算出し、算出した差分に基づいて、被照射領域WA#4と加工ヘッド11との間の距離D#1を算出することができる。
【0124】
その後、制御装置5は、三つ以上の被照射領域WAにそれぞれ対応する三つ以上の距離Dに関する距離情報に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する。例えば、上述したように、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が所定の位置関係となるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。「所定の位置関係」の一例として、上述したように、ワークW上の所望位置に設定された加工ショット領域ESAに加工光ELを適切に照射することが可能な位置関係があげられる。
【0125】
「所定の位置関係」の他の一例として、ワークW上の所望位置に設定された加工ショット領域ESAに加工光ELを適切に照射することが可能であることに加えて又は代えて三つ以上の被照射領域WAにそれぞれ対応する三つ以上の距離Dが所定の距離関係を有するという位置関係があげられる。この場合、制御装置5は、距離情報に基づいて、三つ以上の距離Dが所定の距離関係を有するように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。図7(a)及び図7(b)に示す例では、制御装置5は、距離D#1から距離D#4が所定の距離関係を有するように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。ここで、図7(a)及び図7(b)に示すように、ワークWの表面は、典型的には、XY平面に沿った面であり且つZ軸に交差する。この場合、制御装置5は、三つ以上の距離Dが所定の距離関係を有するようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御することで、Z軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御することができる。
【0126】
但し、θX方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御するためには、計測光MLは、Y軸方向に沿って離れた少なくとも二つの被照射領域WAのそれぞれに照射されてもよい。従って、制御装置5がθX方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する場合には、加工ヘッド11は、Y軸方向に沿って離れた少なくとも二つの被照射領域WAのそれぞれに計測光MLを照射してもよい。同様に、θY方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御するためには、計測光MLは、X軸方向に沿って離れた少なくとも二つの被照射領域WAのそれぞれに照射されてもよい。従って、制御装置5がθY方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する場合には、加工ヘッド11は、X軸方向に沿って離れた少なくとも二つの被照射領域WAのそれぞれに計測光MLを照射してもよい。
【0127】
所定の距離関係の一例として、三つ以上の被照射領域WAにそれぞれ対応する三つ以上の距離Dが互いに同一になるという関係があげられる。図7(a)及び図7(b)に示す例では、所定の距離関係の一例は、距離D#1から距離D#4が互いに同一になるという関係になる。このような距離関係は、例えば、ワークWの表面が平面である場合に用いられてもよい。
【0128】
例えば、図8(a)及び図8(b)は、距離D#1から距離D#4が互いに同一になる(具体的には、目標値D_targetになる)ように位置関係が制御されている加工ヘッド11とワークWとを示す断面図である。その結果、図8(a)及び図8(b)に示すように、加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dが、目標値D_targetに設定可能となる。
【0129】
尚、Z軸方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係(典型的には、上述した距離D)が変わると、Z軸方向におけるワークWの表面に対する加工光ELの集光位置が変わる。このため、Z軸方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作は、実質的には、Z軸方向におけるワークWの表面に対する加工光ELの集光位置を制御する動作と等価であるとみなしてもよい。この場合、制御装置5は、加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dが目標値D_targetとなるようにZ軸方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御することに加えて又は代えて、Z軸方向におけるワークWの表面と加工光ELの集光位置との相対的な位置関係が、距離Dが目標値D_targetとなる場合のZ軸方向におけるワークWの表面と加工光ELの集光位置との相対的な位置関係と同じになるように、Z軸方向におけるワークWの表面に対する加工光ELの集光位置を制御してもよい。尚、Z軸方向におけるワークWの表面に対する加工光ELの集光位置を制御可能な装置の一例として、上述した加工光学系112のフォーカス調整光学系1123があげられる。
【0130】
更には、三つ以上の被照射領域WAにそれぞれ対応する三つ以上の距離Dが互いに同一になる場合には、ワークWに対する加工ヘッド11の意図せぬ傾斜が発生しにくくなる。例えば、図8(a)に示すように、ワークWに対する加工ヘッド11のθY方向における意図せぬ傾斜が発生しにくくなる。つまり、加工ヘッド11とワークWとは、XZ平面に沿った面内において、適切な位置関係を有することになる。同様に、図8(b)に示すように、ワークWに対する加工ヘッド11のθX方向における意図せぬ傾斜が発生しにくくなる。つまり、加工ヘッド11とワークWとは、YZ平面に沿った面内において、適切な位置関係を有することになる。
【0131】
但し、上述したように、第1実施形態の加工システムSYSaは、ワークWを加工する。このようなワークWに対する加工の結果、ワークWの表面が平面でなくなる可能性がある。つまり、ワークWの表面が凹凸面を含む可能性がある。なぜならば、ワークWの表面のうち既に加工処理が行われた加工済み領域FA1の高さ(Z軸方向の高さ)は、ワークWの表面のうち未だに加工処理が行われていない未加工領域FA2の高さと異なる可能性があるからである。この場合、三つ以上の被照射領域WAのそれぞれと加工ヘッド11との間の距離Dが互いに同一になるようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が制御されると、以下に示す技術的問題が生ずる可能性がある。
【0132】
例えば、除去加工が行われた加工済み領域FA1と除去加工が行われていない未加工領域FA2とを示す断面図である図9に示すように、加工済み領域FA1の高さは、未加工領域FA2の高さよりも低くなる可能性がある。その結果、図9に示すようにワークWに対して加工ヘッド11が傾斜していないにも関わらず、加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D(図9では、距離D#2)が、未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離D(図9では、距離D#4)よりも大きくなってしまう可能性がある。具体的には、加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D#2が、未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離D#4よりも、除去加工によって除去されるワークWの厚み方向のサイズに相当する除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)だけ大きくなってしまう可能性がある。他の一例として、除去加工によって加工済み領域FA1にリブレット構造が形成された場合には、加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D#2は、加工済み領域FA1に形成されたリブレット構造の山に相当する部分をフィッティングすることで得られる仮想的な面(典型的には、未加工領域FA2の表面に対応する面)と加工ヘッド11との間の距離Dよりも除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)だけ大きくなってしまう可能性がある。このような状況下で加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D#2と未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離D#4とが同一になるようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が制御されると、図10に示すように、当初はワークWに対して傾斜していなかった加工ヘッド11が、ワークWに対して傾斜してしまう可能性がある。
【0133】
或いは、加工済み領域FA1にリブレット構造が形成されている場合には、加工済み領域FA1内においても、リブレット構造の溝に相当する部分(つまり、加工済み領域FA1内において実際に除去加工が行われた部分)の高さは、リブレット構造の山に相当する部分(つまり、加工済み領域FA1内において実際に除去加工が行われなかった部分)の高さよりも低くなる可能性がある。具体的には、リブレット構造の溝に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dが、リブレット構造の山に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dよりも、除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)だけ大きくなってしまう可能性がある。このような状況下でリブレット構造の溝に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dとリブレット構造の山に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dとが同一になるようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が制御されると、当初はワークWに対して傾斜していなかった加工ヘッド11が、ワークWに対して傾斜してしまう可能性がある。
【0134】
同様に、付加加工が行われた加工済み領域FA1と付加加工が行われていない未加工領域FA2とを示す断面図である図11に示すように、例えば、加工済み領域FA1の高さは、未加工領域FA2の高さよりも高くなる可能性がある。その結果、ワークWに対して加工ヘッド11が傾斜していないにも関わらず、加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D(図9では、距離D#4)が、未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離D(図9では、距離D#2)よりも小さくなってしまう可能性がある。具体的には、加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D#4が、未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離D#2よりも、付加加工によって付加される構造物の厚み方向のサイズに相当する付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)だけ小さくなってしまう可能性がある。このような状況下で加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離D#4と未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離D#2とが同一になるようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が制御されると、当初はワークWに対して傾斜していなかった加工ヘッド11が、ワークWに対して傾斜してしまう可能性がある。
【0135】
或いは、加工済み領域FA1にリブレット構造が形成されている場合には、加工済み領域FA1内においても、リブレット構造の山に相当する部分(つまり、加工済み領域FA1内において実際に付加加工が行われた部分)の高さは、リブレット構造の溝に相当する部分(つまり、加工済み領域FA1内において実際に付加加工が行われなかった部分)の高さよりも高くなる可能性がある。具体的には、リブレット構造の山に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dが、リブレット構造の溝に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dよりも、付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)だけ小さくなってしまう可能性がある。このような状況下でリブレット構造の溝に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dとリブレット構造の山に相当する部分と加工ヘッド11との間の距離Dとが同一になるようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が制御されると、当初はワークWに対して傾斜していなかった加工ヘッド11が、ワークWに対して傾斜してしまう可能性がある。
【0136】
そこで、制御装置5は、距離情報に加えて、上述した除去量Ra及び/又は付加量Aaに基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。具体的には、除去量Ra及び/又は付加量Aaに基づいてワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御するために、制御装置5は、まず、距離情報を、除去量Ra及び/又は付加量Aaに基づいて補正してもよい。
【0137】
例えば、上述したように、除去加工が行われた加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離Dは、除去加工が行われていない未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離Dよりも除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)だけ大きくなってしまう。そこで、制御装置5は、計測光MLの検出結果から算出された距離Dに対して、除去量Raによる影響を排除するための除去量反映処理を施してもよい。除去量反映処理は、加工済み領域FA1内に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dから除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算する一方で、未加工領域FA2内に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dから除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算しない処理を含んでいてもよい。また、除去量反映処理は、リブレット構造の溝に相当する部分に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dから除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算する一方で、リブレット構造の山に相当する部分に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dから除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算しない処理を含んでいてもよい。その後、制御装置5は、除去量反映処理が施された距離Dが互いに同一になるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。その結果、ワークWの少なくとも一部に対して既に除去加工が行われた場合であっても、ワークWに対する加工ヘッド11の意図せぬ傾斜が発生しにくくなる。
【0138】
同様に、例えば、上述したように、付加加工が行われた加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離Dは、付加加工が行われていない未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離Dよりも付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)だけ小さくなってしまう。そこで、制御装置5は、計測光MLの検出結果から算出された距離Dに対して、付加量Aaによる影響を排除するための付加量反映処理を施す。付加量反映処理は、加工済み領域FA1内に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dに付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算する一方で、未加工領域FA2内に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dに付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算しない処理を含んでいてもよい。また、付加量反映処理は、リブレット構造の山に相当する部分に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dに付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算する一方で、リブレット構造の溝に相当する部分に位置する被照射領域WAと加工ヘッド11との間の距離Dに付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算しない処理を含んでいてもよい。その後、制御装置5は、付加量反映処理が施された距離Dが互いに同一になるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。その結果、ワークWの少なくとも一部に対して既に付加加工が行われた場合であっても、ワークWに対する加工ヘッド11の意図せぬ傾斜が発生しにくくなる。
【0139】
尚、上述したように距離Dが光路差情報に基づいて算出されることを考慮すれば、距離情報を補正する動作は、実質的には、光路差情報を間接的に補正する動作と等価であるとみなしてもよい。或いは、制御装置5は、距離情報を補正することに加えて又は代えて、光路差情報を直接的に補正してもよい。つまり、制御装置5は、光路差情報を直接的に補正することで、距離情報を間接的に補正してもよい。この場合、除去量反映処理は、加工済み領域FA1内に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分から除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算する一方で、被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分から除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算しない処理を含んでいてもよい。除去量反映処理は、リブレット構造の溝に相当する部分に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分から除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算する一方で、リブレット構造の山に相当する部分に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分から除去量Ra(或いは、除去量Raに応じた分量)を減算しない処理を含んでいてもよい。付加量反映処理は、加工済み領域FA1内に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分に付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算する一方で、未加工領域FA2内に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分に付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算しない処理を含んでいてもよい。また、付加量反映処理は、リブレット構造の山に相当する部分に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分に付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算する一方で、リブレット構造の溝に相当する部分に位置する被照射領域WAを介した光路OP#2-2及びOP#2-3の長さと光路OP#1-3の長さの差分に付加量Aa(或いは、付加量Aaに応じた分量)を加算しない処理を含んでいてもよい。その後、制御装置5は、除去量反映処理又は付加量反映処理が施された光路差情報に基づいて、距離Dを算出してもよい。ここで算出される距離Dは、除去量反映処理又は付加量反映処理が施された距離Dと実質的に同一になる。その後、制御装置5は、算出した距離Dが互いに同一になるようにワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。
【0140】
このような除去量反映処理及び/付加量反映処理を行う場合には、制御装置5は、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定してもよい。
【0141】
例えば、加工ヘッド11は、制御装置5の制御下でワークWを加工している。従って、ワークW上における加工済み領域FA1の位置は、制御装置5にとって既知の情報であるとも言える。そこで、制御装置5は、ワークWを加工するように加工ヘッド11を制御するために用いた情報に基づいて、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定してもよい。典型的には、制御装置5は、ワークW上における加工済み領域FA1の位置を直接的に又は間接的に示す内部情報に基づいて、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定してもよい。
【0142】
例えば、制御装置5は、ワークの表面の状態を観察可能な観察装置の観察結果に基づいて、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定してもよい。このような観察装置の一例として、カメラ等の撮像装置があげられる。尚、第2実施形態で説明する位置計測装置6bが、観察装置として用いられてもよい。
【0143】
例えば、制御装置5は、複数の被照射領域WAにそれぞれ対応する複数の距離Dの間の関係に基づいて(つまり、距離情報に基づいて)、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定してもよい。具体的には、(i)複数の被照射領域WAのうちの複数の第1の被照射領域WAに対応する複数の距離Dが互いに同一であり、(ii)複数の被照射領域WAのうちの複数の第1の被照射領域WA以外の残りの複数の第2の被照射領域WAに対応する複数の距離Dが互いに同一であり、且つ、(iii)複数の第1の被照射領域WAのそれぞれに対応する距離Dと複数の第2の被照射領域WAのそれぞれに対応する距離Dとの差分が上述した除去量Ra又は付加量Aaと一致する(或いは、一定量である)場合には、複数の第1の被照射領域WAが加工済み領域FA1及び未加工領域FA2のいずれか一方に位置しており、複数の第2の被照射領域WAが加工済み領域FA1及び未加工領域FA2のいずれか他方に位置している可能性が相対的に高いと推定される。特に、加工ヘッド11が除去加工を行う状況下では、複数の第1の被照射領域WAのそれぞれに対応する距離Dが、複数の第2の被照射領域WAのそれぞれに対応する距離Dよりも一定量だけ大きい(例えば、上述した除去量Raだけ大きい)場合には、複数の第1の被照射領域WAが加工済み領域FA1に位置しており、複数の第2の被照射領域WAが未加工領域FA2に位置している可能性が相対的に高いと推定される。一方で、加工ヘッド11が付加加工を行う状況下では、複数の第1の被照射領域WAのそれぞれに対応する距離Dが、複数の第2の被照射領域WAのそれぞれに対応する距離Dよりも一定量だけ大きい(例えば、上述した付加量Aaだけ大きい)場合には、複数の第1の被照射領域WAが未加工領域FA2に位置しており、複数の第2の被照射領域WAが加工済み領域FA1に位置している可能性が相対的に高いと推定される。このように、制御装置5は、複数の被照射領域WAにそれぞれ対応する複数の距離Dの間の関係に基づいて、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定する(言い換えれば、推定する)ことができる。
【0144】
また、加工ヘッド11が行った加工とは異なる要因で、ワークWの表面が平面でない可能性もある。加工ヘッド11が加工を行っていない状況下であってもワークWの表面が平面でない可能性もある。例えば、ワークWの表面の形状がそもそも平面でない可能性がある。この場合にも、当初はワークWに対して傾斜していなかった加工ヘッド11がワークWに対して傾斜してしまう可能性があるという上述した技術的問題が生ずる可能性がある。しかしながら、上述した除去量Ra及び付加量Aaとは異なり、制御装置5にとってワークWの表面の形状が既知の情報であるとは限らない。一方で、ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射されれば、上述した技術的問題が生ずる可能性は小さくなる。つまり、ワークWの表面のうち平面でない部分を避けて計測光MLが照射されれば、上述した技術的問題が生ずる可能性は小さくなる。なぜならば、上述した技術的問題が生ずる原因は、ワークWの表面のうち高さが異なる複数の部分(例えば、凹凸面)に計測光MLが照射されることであるからである。
【0145】
そこで、制御装置5は、複数の被照射領域WAにそれぞれ対応する複数の距離Dの中から、他の距離Dと比較して明らかに異常値である(例えば、他の距離Dとの差分が明らかに大きい)とみなすことができる少なくとも一つの距離Dを排除してもよい。制御装置5は、排除した距離Dを用いることなく、排除されなかった距離Dに基づいて、ワークWと加工ヘッド11との間の位置関係を制御してもよい。その結果、ワークWに対する加工ヘッド11の意図せぬ傾斜が相対的に発生しにくくなる。尚、一の距離Dと他の距離Dとの差分が予め決定した値よりも大きいときに、当該一の距離Dを異常値として判定して排除してもよい。
【0146】
或いは、制御装置5は、異常値である(例えば、他の距離Dとの差分が過度に大きい)とみなすことができる距離Dを排除することに加えて又は代えて、ワークWの面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性を高めるための処理を行ってもよい。
【0147】
ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性を高めるための処理の一例として、計測光MLが照射される三つ以上の被照射領域WAのうちの少なくとも一つの位置を変更する処理があげられる。この場合、制御装置5は、少なくとも一つの被照射領域WAのワークW上での位置を変更してもよい。より具体的には、制御装置5は、少なくとも一つの被照射領域WAのワークW上での位置を、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って変更してもよい。例えば、図13は、被照射領域WA#1の位置が変更される様子を示す平面図である。少なくとも一つの被照射領域WAの位置が変わると、ワークW上での三つ以上の被照射領域WAの分布態様もまた変わる。このため、制御装置5は、ワークW上での三つ以上の被照射領域WAの分布態様を変更してもよい。少なくとも一つの被照射領域WAの位置が変わると、ワークW上で三つ以上の被照射領域WAを結ぶ軌跡もまた変わる。このため、制御装置5は、三つ以上の被照射領域WAを結ぶ軌跡を変更してもよい。その結果、三つ以上の被照射領域WAが常に固定されている場合と比較して、ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性が高くなる。特に、異なる複数種類のワークWがステージ32に順に載置される状況下において、ステージ32に載置されるワークWごとに三つ以上の被照射領域WAのうちの少なくとも一つの位置が変更されれば、複数種類のワークWのそれぞれに計測光MLが照射される可能性が高くなる。
【0148】
尚、計測光MLを用いた計測装置(計測光源113、計測光学系114、合成光学系115,共通光学系116)と異なる別の計測装置を用いて、ワークWの表面のうち平面となる部分を特定してもよい。この別の計測装置は、制御装置5と接続されていてもよい。このとき、制御装置5は、別の計測装置からの出力を用いて、ワークWの表面のうち平面となる部分を特定し、その部分内に計測光MLが照射される被照射領域WAが位置するように、被照射領域WAの位置を変更する制御をしてもよい。
【0149】
制御装置5は、計測光MLの照射位置を変更することで、三つ以上の被照射領域WAのうちの少なくとも一つの位置を変更してもよい。この場合、制御装置5は、ガルバノミラー1148を制御することで、計測光MLの照射位置を変更してもよい。上述したように、被照射領域WAには、計測光MLに含まれるパルス光が照射される。このため、制御装置5は、計測光MLに含まれるパルス光の照射位置を変更することで、三つ以上の被照射領域WAのうちの少なくとも一つの位置を変更してもよい。この場合、制御装置5は、ガルバノミラー1148を制御することで、パルス光の照射位置を変更してもよい。或いは、制御装置5は、ガルバノミラー1148を制御することに加えて又は代えて、計測光源113を制御してパルス光の発光周波数を変更する(つまり、発光周期を変更する)ことで、パルス光の照射位置を変更してもよい。なぜならば、ワークW上での目標照射領域MAの移動速度(つまり、ガルバノミラー1148による計測光MLの走査速度)が一定である状況では、パルス光の発光周波数が変わればパルス光の照射位置もまた変わるからである。例えば、制御装置5は、目標照射領域MAの移動軌跡MTを変更することで、三つ以上の被照射領域WAのうちの少なくとも一つの位置を変更してもよい。この場合、制御装置5は、ガルバノミラー1148を制御することで、移動軌跡MTを変更してもよい。
【0150】
上述したように、計測光MLは、計測ショット領域MSA内に照射される。つまり、被照射領域WAは、計測ショット領域MSAに含まれる。この場合、少なくとも一つの被照射領域WAのワークW上での位置を変更する処理は、少なくとも一つの被照射領域WAの計測ショット領域MSA内での位置を変更する処理を含んでいてもよい。つまり、制御装置5は、計測ショット領域MSA内での少なくとも一つの被照射領域WAの位置を変更してもよい。また、制御装置5はワークW上での計測ショット領域MSAそのものの位置を変更してもよい。この場合、計測ショット領域MSAの位置の変更に伴って、計測ショット領域MSAに含まれる少なくとも一つの被照射領域WAのワークW上での位置が変更される。
【0151】
ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性を高めるための処理の一例として、被照射領域WAの数を変更する処理があげられる。この場合、制御装置5は、被照射領域WAの数を変更してもよい。例えば、制御装置5は、被照射領域WAの数が多くなるように変更してもよい。例えば、図14は、被照射領域WAの数が、4つから8つに変更される例を示す平面図である。つまり、図14は、被照射領域WA#1からWA#4に計測光MLが照射されている状況下で、計測光MLが新たに被照射領域WA#5からWA#8にも照射されるように被照射領域WAの数が変更される例を示す平面図である。その結果、被照射領域WAの数が相対的に少ない場合と比較して、ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性が高くなる。尚、図14は、被照射領域WAの数に加えて、目標照射領域MAの移動軌跡MTの形状が矩形から円形に変更される様子も合わせて示している。
【0152】
尚、上述した別の計測装置を用いてワークWの表面のうち平面となる部分を特定し、その部分内に計測光MLが照射される被照射領域WAが位置するように、被照射領域WAの数を変更してもよい。
【0153】
制御装置5は、ガルバノミラー1148による計測光MLの走査速度を制御することで、被照射領域WAの数を変更してもよい。つまり、制御装置5は、ガルバノミラー1148を制御することで、被照射領域WAの数を変更してもよい。或いは、制御装置5は、ガルバノミラー1148を制御することに加えて又は代えて、計測光源113を制御してパルス光の発光周波数を変更する(つまり、発光周期を変更する)ことで、被照射領域WAの数を変更してもよい。なぜならば、ワークW上での目標照射領域MAの移動速度(つまり、ガルバノミラー1148による計測光MLの走査速度)が一定である状況では、パルス光の発光周波数が変われば一定時間以内にワークWに照射されるパルス光の数もまた変わるからである。
【0154】
尚、制御装置5は、ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性を高める目的とは異なる目的で、少なくとも一つの被照射領域WAの位置及び/又は被照射領域WAの数を変更してもよい
このように、加工ヘッド11が三つ以上の被照射領域WAに計測光MLを照射する場合には、制御装置5は、Z軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を適切に制御することができる。
【0155】
但し、加工ヘッド11は、二つの被照射領域WAに計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、ワークWの表面上の二か所に計測光MLを照射してもよい。この場合、制御装置5は、Z軸方向と、Z軸に直交する一の軸周りに沿った方向とのそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を適切に制御することができる。具体的には、制御装置5は、Z軸方向と、Z軸及び二つの被照射領域WAを結ぶ軸の双方に直交する一の軸周りに沿った方向とのそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を適切に制御することができる。
【0156】
或いは、加工ヘッド11は、単一の被照射領域WAに計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、ワークWの表面上のただ一か所に計測光MLを照射してもよい。この場合、制御装置5は、Z軸方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を適切に制御することができる。
【0157】
図7及び図14に示すように、加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAを結ぶ軌跡が、今から加工される又は今まさに加工されている加工ショット領域ESA(加工予定の加工ショット領域ESA又は加工中の加工ショット領域ESA、以降、対象ショット領域ESAと称する)を取り囲むように、計測光MLを照射してもよい。計測光MLの目標照射領域MAが三つ以上の被照射領域WAを経由して移動することから、加工ヘッド11は、目標照射領域MAの移動軌跡MTが対象ショット領域ESAを取り囲むように、計測光MLを照射してもよい。目標照射領域MAは、計測ショット領域MSA内で移動することは上述した通りである、このため、加工ヘッド11は、計測ショット領域MSAが対象ショット領域ESAと少なくとも部分的に重なる状態で、計測光MLを照射してもよい。この場合、三つ以上の被照射領域WAを結ぶ軌跡が対象ショット領域ESAを取り囲まない場合と比較して、複数の被照射領域WAがワークWの表面上の相対的に広い範囲に渡って分布する可能性が相対的に高くなる。つまり、加工ヘッド11は、ワークWの表面上で相対的に広く分散した位置に計測光MLを照射することができる可能性が相対的に高くなる。その結果、制御装置5は、距離情報に基づいて、ワークWが加工ヘッド11に対してどのような位置関係にあるかをより高精度に特定することができる。なぜならば、仮に複数の被照射領域WAがワークWの表面上の相対的に狭い範囲に偏っている場合には、ワークWの表面のうち加工ヘッド11に対する位置関係を距離情報に基づいて特定できる範囲が、計測光MLが照射された相対的に狭い範囲に限られてしまうからである。従って、ワークWの表面上で相対的に広く分散した位置に計測光MLが照射されれば、制御装置5は、距離情報に基づいてワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係をより適切に制御することができる。
【0158】
図7は、目標照射領域MAの移動軌跡MTが矩形である例を示している。このような矩形の移動軌跡MTは、対象ショット領域ESAを取り囲むことが可能な移動軌跡MTの一例である。その他、対象ショット領域ESAを取り囲むことが可能な移動軌跡MTの他の一例として、円形の移動軌跡MT(図14参照)、楕円形状の移動軌跡MT、多角形状の移動軌跡MT及びループ状の移動軌跡MTの少なくとも一つがあげられる。
【0159】
但し、移動軌跡MTは、対象ショット領域ESAを取り囲んでいなくてもよい。三つ以上の被照射領域WAを結ぶ軌跡が、対象ショット領域ESAを取り囲んでいなくてもよい。移動軌跡MTの少なくとも一部は、対象ショット領域ESAを横切ってもよい。移動軌跡MTの少なくとも一部は、対象ショット領域ESAの内部に位置していてもよい。移動軌跡MTの少なくとも一部は、対象ショット領域ESAの外部に位置していてもよい。例えば、移動軌跡MTの他の例を示す平面図である図15に示すように、移動軌跡MTは、第1の方向(スキャン方向と称してもよい)に向かって目標照射領域MAが移動する軌跡と、第1の方向に交差する第2の方向(ステップ方向と称してもよい)の方向成分を含む方向に向かって目標照射領域MAが移動する軌跡とが交互に繰り返される軌跡であってもよい。
【0160】
加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAの少なくとも一つが、対象ショット領域ESA内に配置されるように、計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、対象ショット領域ESA内に一回以上、計測光MLを照射してもよい。加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAの少なくとも一つが、対象ショット領域ESAの近傍又は周辺に配置されるように、計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、対象ショット領域ESAの近傍又は周辺に一回以上、計測光MLを照射してもよい。加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAの少なくとも一つが、対象ショット領域ESAからX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されるように、計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、対象ショット領域ESAからX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に一回以上、計測光MLを照射してもよい。
【0161】
図7及び図13から図14は、被照射領域WA#1から#4のそれぞれが、対象ショット領域ESAの近傍又は周辺に配置される例を示している。つまり、図7及び図13から図14は、加工ヘッド11が、対象ショット領域ESAの近傍又は周辺に計測光MLを複数回照射する例を示している。特に、図7及び図13から図14は、被照射領域WA#1が、対象ショット領域ESAから-Y側に向かって離れた位置に配置され、被照射領域WA#2が、対象ショット領域ESAから-X側に向かって離れた位置に配置され、被照射領域WA#3が、対象ショット領域ESAから+Y側に向かって離れた位置に配置され、被照射領域WA#4が、対象ショット領域ESAから+X側に向かって離れた位置に配置される例を示している。つまり、図7及び図13から図14は、加工ヘッド11が、対象ショット領域ESAから-Y側に向かって離れた位置、被照射領域WA#2が、対象ショット領域ESAから-X側に向かって離れた位置、対象ショット領域ESAから+Y側に向かって離れた位置、及び、対象ショット領域ESAから+X側に向かって離れた位置のそれぞれに計測光MLを照射する例を示している。一方で、図15は、複数の被照射領域WAの一部が、対象ショット領域ESAの近傍又は周辺に配置され、複数の被照射領域WAの他の一部が、対象ショット領域ESA内に配置される例を示している。
【0162】
或いは、上述した図7及び図13から図15は、いずれも、対象ショット領域ESAの全体が計測ショット領域MSAに含まれる例を示している。しかしながら、対象ショット領域ESAの少なくとも一部が計測ショット領域MSAの外部に位置していてもよい。例えば、対象ショット領域ESAと計測ショット領域MSAとの位置関係の一例を示す平面図である図16に示すように、対象ショット領域ESAの全体が計測ショット領域MSAの外部に位置していてもよい。この場合、計測ショット領域MSAの位置は、対象ショット領域ESAの位置に基づいて設定されてもよい。加工ヘッド11は、対象ショット領域ESAの位置に基づいて定まる位置に計測光MLを照射してもよい。或いは、計測ショット領域MSAの位置は、対象ショット領域ESAの位置とは無関係に設定されてもよい。加工ヘッド11は、対象ショット領域ESAの位置とは無関係に、ワークW上の所望位置に計測光MLを照射してもよい。
【0163】
加工ヘッド11は、加工光ELに起因した影響が及ぶ領域を避ける目的で、三つ以上の被照射領域WAの少なくとも一つが、加工光ELに起因した影響が及ぶ領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されるように、計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、加工光ELに起因した影響が及ぶ領域を避ける目的で、加工光ELに起因した影響が及ぶ領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に、計測光MLを照射してもよい。典型的には、計測ショット領域MSAそのものが、加工光ELに起因した影響が及ぶ領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されてもよい。この場合、加工ヘッド11は、加工光ELに起因した影響を受けることなく、計測光MLをワークWに照射することができる。つまり、加工ヘッド11は、加工光ELに起因した影響を受けていない計測光MLを、ワークWに照射することができる。その結果、制御装置5は、ワークWと加工ヘッド11との間の距離Dをより高精度に算出することができる。その結果、制御装置5は、ワークWと加工ヘッド11との間の相対的な位置関係をより適切に制御することができる。
【0164】
加工光ELに起因した影響が及ぶ領域の一例として、加工光ELがワークWに照射されることで発生するヒューム(或いは、その他の不要物質)が流れ込む領域があげられる。例えば、図17は、加工光ELが照射されているワークWを示す平面図である。図17に示すように、加工光ELがワークWに照射されると、ヒューム(或いは、その他の不要物質)が発生する可能性がある。このようなヒュームは、ワークWに対する計測光MLの照射を妨げる可能性がある。そこで、加工ヘッド11は、計測光MLの光路がヒュームと重ならないように、計測光MLを照射してもよい。具体的には、加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAの少なくとも一つが、ヒュームが流れ込む領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されるように、計測光MLを照射してもよい。計測ショット領域MSAが、ヒュームが流れ込む領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されてもよい。図17に示す例では、加工ヘッド11は、被照射領域WA#1から#4の全てが、ヒュームが流れ込む領域から+X側に沿って離れた(つまり、加工ショット領域ESAからヒュームが流れ出る方向とは逆側の方向に向かって離れた)位置に配置されるように、計測光MLを照射している。つまり、図17に示す例では、加工ヘッド11は、ヒュームが流れ込む領域から+X側に沿って離れた位置に、計測光MLを照射している。特に、図17に示す例では、計測ショット領域MSAそのものが、ヒュームが流れ込む領域から+X側に沿って離れた(つまり、加工ショット領域ESAからヒュームが流れ出る方向とは逆側の方向に向かって離れた)位置に配置されている。
【0165】
尚、図17に示す例においては、加工ショット領域ESAの+X軸方向側に位置する気体供給装置(不図示)から気体をワークWの表面に沿って供給してもよい。このとき、被照射領域WAの少なくとも一つが加工ショット領域ESAと気体供給装置(特に、その気体供給口)との間(照射光学系の光軸方向から見て、照射光学系と気体供給装置(特に、その気体供給口)との間)に位置していてもよい。
【0166】
加工光ELに起因した影響が及ぶ領域の他の一例として、加工光ELがワークWに照射されることで発生する熱の影響を受ける領域があげられる。この場合も、加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAの少なくとも一つが、加工光ELがワークWに照射されることで発生する熱の影響が及ぶ領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されるように、計測光MLを照射してもよい。つまり、加工ヘッド11は、加工光ELがワークWに照射されることで発生する熱の影響が及ぶ領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に、計測光MLを照射してもよい。計測ショット領域MSAが、加工光ELがワークWに照射されることで発生する熱の影響が及ぶ領域からX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って離れた位置に配置されてもよい。
【0167】
(1-4-2)第2のアライメント動作
続いて、第2のアライメント動作について説明する。第2のアライメント動作は、上述した光路差情報(つまり、光路差情報に基づいて算出される距離Dに関する距離情報)に加えて、ワークWの形状に関する形状情報にも基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作である。
【0168】
第2のアライメント動作を行う場合には、制御装置5は、ワークWの形状に関する形状情報を取得する。形状情報は、ワークWの3次元モデルであるワークモデルWMに関するモデルデータ(例えば、CAD(Computer Aided Design)データ)を含んでいてもよい。制御装置5は、加工システムSYSaの外部の装置から形状情報を取得してもよい。或いは、加工システムSYSaが3次元形状計測機を備えている場合には、制御装置5は、加工システムSYSaが備える3次元形状計測機から形状情報を取得してもよい。3次元形状計測機の一例として、ワークWに対して移動可能であって且つワークWに接触可能なプローブを有する接触型の3次元形状計測機があげられる。3次元形状計測機の他の一例として、非接触型の3次元形状計測機があげられる。非接触型の3次元形状計測機の一例として、パターン投影方式の3次元形状計測機、光切断方式の3次元形状計測機、タイム・オブ・フライト方式の3次元形状計測機、モアレトポグラフィ方式の3次元形状計測機及びホログラフィック干渉方式の3次元形状計測機があげられる。尚、加工システムSYSaが3次元形状計測機を備えている場合、この3次元形状計測機は、加工ヘッド11、ひいては、共通光学系116(特に、fθレンズ1162)との相対的な位置関係が固定されていてもよい。また、この3次元形状計測機が光学式の3次元形状計測機である場合には、この光学式の3次元形状計測機の光軸と加工ヘッド11の光学系(特に共通光学系116(特に、fθレンズ1162))の光軸AXとの配置関係が固定されていてもよい。
【0169】
更に、第2のアライメント動作を行う場合においても、第1のアライメント動作を行う場合と同様に、制御装置5は、三つ以上の被照射領域WAのそれぞれと加工ヘッド11との間の距離Dを算出する。
【0170】
その後、制御装置5は、算出した距離Dに関する距離情報に基づいて、ワークWの形状(特に、ワークWの表面のうち計測光MLが照射された領域を含む面の形状)を推定する。尚、物体の複数個所までの距離に基づいて物体の形状を推定する方法としては、既知の方法を用いてもよいため、その詳細な説明は省略する。
【0171】
その後、制御装置5は、距離情報から推定したワークWの形状と形状情報が示すワークモデルWMの形状とのマッチング処理(例えば、形状マッチング処理又はパターンマッチング処理)を行う。具体的には、制御装置5は、距離情報から形状を推定したワークWの表面の一部が、形状情報が示すワークモデルWMの表面のどの部分に対応するかを特定するようにマッチング処理を行う。その後、制御装置5は、マッチング処理の結果に基づいて、距離情報から形状を推定したワークWの表面の少なくとも一部に対してワークモデルWMをフィッティングする。その結果、制御装置5は、加工ヘッド11とワークモデルWMとの相対的な位置関係を特定することができる。ここで、ワークWの表面の少なくとも一部に対してワークモデルWMがフィッティングされているがゆえに、加工ヘッド11とワークモデルWMとの相対的な位置関係は、加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係と等価である。このため、制御装置5は、加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定することができる。特に、制御装置5は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定することができる。
【0172】
その後、制御装置5は、加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係に基づいて、加工ヘッド11とワークWと相対的な位置関係を制御する。特に、制御装置5は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御することができる。なぜならば、上述したように、制御装置5は、距離情報及び形状情報に基づいて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定することができるからである。
【0173】
このような第2のアライメント動作によれば、制御装置5は、加工ヘッド11と任意の形状を有するワークWとの相対的な位置関係を制御することができる。具体的には、どのような形状を有するワークWがステージ32に載置されたとしても、制御装置5は、加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御することができる。例えば、制御装置5は、加工ヘッド11と表面が平面でないワークWとの相対的な位置関係を制御することができる。例えば、制御装置5は、加工ヘッド11と表面が凹凸面、曲面及び傾斜面の少なくとも一つを含むワークWとの相対的な位置関係を制御することができる。
【0174】
但し、ワークWの表面のうちの特徴の少ない部分(例えば、単なる平面となる部分)だけに計測光MLが照射される場合には、制御装置5は、マッチング処理を適切に完了することができない可能性がある。具体的には、制御装置5は、距離情報から形状を推定したワークWの表面の一部が、形状情報が示すワークモデルWMの表面のどの部分に対応するかを適切に特定することができない可能性がある。このため、加工ヘッド11は、ワークWの表面のうちの特徴的な形状を有する特徴点及び/又は当該特徴点の近傍に計測光MLを照射してもよい。つまり、計測光MLが照射される少なくとも一つの被照射領域WAは、ワークWの表面のうちの特徴的な形状を有する特徴点又は当該特徴点の近傍に位置していてもよい。例えば、ワークWの一例を示す上面図である図18(a)及びワークWの一例を示す斜視図である図18(b)に示すように、錐体形状を有するワークWの頂点Pが特徴点として用いられる場合には、加工ヘッド11は、頂点P及び/又は頂点Pの近傍に計測光MLを照射してもよい。その他、ワークWの辺、角、凹点及び凸点の少なくとも一つが、特徴点の一例としてあげられる。
【0175】
尚、ワークWの表面のうちの特徴的な形状を有する部分が特徴点として用いられるに加えて又は代えて、ワークWの表面のうちの特徴的な特性を有する部分が特徴点として用いられてもよい。例えば、ワークWの表面のうちの特徴的な色(つまり、その他の部分とは異なる色)を有する部分が、特徴点が用いられてもよい。特徴的な色を有する部分は、特徴的な分光透過率を有する部分及び特徴的な反射率特性を有する部分の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、ワークWの表面のうちの特徴的な屈折率(つまり、他の部分とは異なる屈折率)を有する部分が、特徴点が用いられてもよい。
【0176】
但し、制御装置5は、距離情報及び形状情報に基づいて加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定するまでは、ワークWの特徴点の位置を特定することができない可能性がある。このため、制御装置5は、上述した「ワークWの表面のうち平面となる部分に計測光MLが照射される可能性を高めるための処理」を行うことで、計測光MLが特徴点及び/又は特徴点の近傍に照射される可能性を高めてもよい。つまり、制御装置5は、少なくとも一つの被照射領域WAの位置を変更する及び/又は被照射領域WAの数を変更することで、計測光MLが特徴点及び/又は特徴点の近傍に照射される可能性を高めてもよい。
【0177】
特徴点及び/又は特徴点の近傍に計測光MLが照射される場合には、制御装置5は、ワークWの特徴点を基準に、加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。つまり、制御装置5は、ワークWの特徴点と加工ヘッド11との相対的な位置関係(より具体的には、ワークWの表面のうち特徴点を含む領域と加工ヘッド11との相対的な位置関係)が所定の位置関係となるように、加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0178】
(1-4-3)第3のアライメント動作
続いて、第3のアライメント動作について説明する。第3のアライメント動作は、上述した光路差情報(つまり、光路差情報に基づいて算出される距離Dに関する距離情報)に加えて、加工光ELによるワークWの加工跡に関する加工跡情報にも基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作である。
【0179】
第3のアライメント動作を行う場合においても、第1のアライメント動作を行う場合と同様に、制御装置5は、三つ以上の被照射領域WAのそれぞれと加工ヘッド11との間の距離Dを算出する。その結果、制御装置5は、算出した距離Dに関する距離情報に基づいて、Z軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御する。
【0180】
第3のアライメント動作を行う場合は更に、制御装置5は、距離情報に基づいて、加工光ELによるワークWの加工跡の位置を特定する。例えば、制御装置5は、加工済み領域FA1の位置を特定してもよい。また、ワークWの表面のうち未加工領域FA2以外の領域が加工済み領域FA1になるがゆえに、未加工領域FA2の位置もまた、加工跡の位置を間接的に示していると言える。このため、例えば、制御装置5は、距離情報に基づいて、未加工領域FA2の位置を特定してもよい。また、加工済み領域FA1は境界Bを介して未加工領域FA2と隣接するがゆえに、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界B(図19参照)の位置もまた、加工跡の位置を間接的に示していると言える。このため、例えば、制御装置5は、距離情報に基づいて、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bの位置を特定してもよい。尚、図8及び図11を参照しながら説明したように、加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離Dは、未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離Dとは一定量だけ異なる。このため、制御装置5は、距離情報に基づいて、計測光MLが照射された被照射領域WAが、加工済み領域FA1内に位置しているのか又は未加工領域FA2内に位置しているのかを判定することができる。従って、制御装置5は、この判定結果を用いて、加工跡の位置を特定することができる。
【0181】
加工済み領域FA1と加工ヘッド11との間の距離Dと未加工領域FA2と加工ヘッド11との間の距離Dとが一定量だけ異なるという事象が加工跡の位置を特定するために用いられることを考慮すれば、制御装置5は、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との双方に計測光MLが照射されるように、加工ヘッド11を制御してもよい。例えば、第3のアライメント動作を行う場合のワークW上の複数の被照射領域WAを示す平面図である図19に示すように、加工ヘッド11は、目標照射領域MAが加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bを跨って移動するように、計測光MLを照射してもよい。加工ヘッド11は、目標照射領域MAの移動軌跡MTが加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bに交差するように、計測光MLを照射してもよい。その結果、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との双方に計測光MLが適切に照射される。
【0182】
その後、制御装置5は、加工跡に関する加工跡情報(典型的には、特定した加工跡の位置に関する情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向、θZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御する。具体的には、加工跡は、XY平面に沿った面であるワークWの表面上で所定のパターンを形成している。例えば、図19に示す例では、加工跡が、Y軸方向に沿って延びる境界B1と、境界B1の-Y側の端部からX軸方向に沿って+X側に向かって延びる境界B2と、境界B1の+Y側の端部からX軸方向に沿って-X側に向かって延びる境界B3とを含むパターンを形成している。このような加工跡のパターンは、制御装置5にとって既知の情報である。なぜならば、上述したように、制御装置5の制御下で加工ヘッド11がワークWを加工することで、このような加工跡のパターンが形成されるからである。従って、制御装置5は、このような加工跡のパターンに基づいて、加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定することができる。特に、制御装置5は、このような加工跡のパターンに基づいて、X軸方向、Y軸方向、θZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定することができる。なぜならば、加工跡のパターンは、XY平面に沿ったワークWの表面に形成されているからである。その結果、制御装置5は、加工跡情報に基づいて特定された加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係に基づいて、X軸方向、Y軸方向、θZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWと相対的な位置関係を制御することができる。
【0183】
尚、第3のアライメント動作は、ワークWの加工跡をワークWの特徴点として実質的に用いている動作であるとも言える。例えば、第3のアライメント動作は、加工済み領域FA1の少なくとも一部及び/又は未加工領域FA2の少なくとも一部を、ワークWの特徴点として実質的に用いている動作であるとも言える。例えば、第3のアライメント動作は、ワークWのうち境界Bの少なくとも一部に位置する部分を、ワークWの特徴点として実質的に用いている動作であるとも言える。この場合、第3のアライメント動作は、ワークWの特徴点を用いて加工ヘッド11とワークWと相対的な位置関係を制御するという点で、第2のアライメント動作と共通する動作であるとも言える。但し、第3のアライメント動作は、必ずしもワークWの形状に関する形状情報を必要としない。
【0184】
また、加工システムSYSaは、第3のアライメント動作と共に、第2のアライメント動作を行ってもよい。具体的には、加工システムSYSaは、距離情報及び形状情報の少なくとも一方に基づいてZ軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。加工システムSYSaは、形状情報及び加工跡情報の少なくとも一方に基づいて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0185】
(1-4-4)第4のアライメント動作
続いて、第4のアライメント動作について説明する。第4のアライメント動作は、上述した光路差情報(つまり、光路差情報に基づいて算出される距離Dに関する距離情報)に加えて、ワークWに形成されたアライメントマークAMに関するマーク情報にも基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御する動作である。このため、加工システムSYSaは、アライメントマークAMが形成されたワークWがステージ32に載置された場合に、当該ワークWに対して第4のアライメント動作を行ってもよい。一方で、加工システムSYSaは、アライメントマークAMが形成されていないワークWがステージ32に載置された場合に、当該ワークWに対して第4のアライメント動作を行わなくてもよい。
【0186】
アライメントマークAMの一例が図20に示されている。図20に示すように、アライメントマークAMは、ワークWの表面に形成されていてもよい。アライメントマークAMは、ワークWの表面のうち、アライメントマークAMを形成するためのマーク領域AMAに形成されていてもよい。マーク領域AMAは、加工光ELによって加工されてもよいし、加工されなくてもよい。マーク領域AMAには、少なくとも三つのアライメントマークAMが形成されている。例えば、マーク領域AMAには、X軸方向に沿って離れた(つまり、X軸方向における位置が異なる)二つのアライメントマークAMを含む少なくとも三つのアライメントマークAMが形成されていてもよい。例えば、マーク領域AMAには、Y軸方向に沿って離れた(つまり、Y軸方向における位置が異なる)二つのアライメントマークAMを含む少なくとも三つのアライメントマークAMが形成されていてもよい。但し、マーク領域AMAには、二つ以下のアライメントマークAMが形成されていてもよい。図19に示す例では、マーク領域AMAには、三つのアライメントマークAMが形成されている。
【0187】
第4のアライメント動作を行う場合においても、第1のアライメント動作を行う場合と同様に、制御装置5は、三つ以上の被照射領域WAのそれぞれと加工ヘッド11との間の距離Dを算出する。その結果、制御装置5は、算出した距離Dに関する距離情報に基づいて、Z軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御する。
【0188】
第4のアライメント動作を行う場合は更に、制御装置5は、距離情報に基づいて、アライメントマークAMの位置を特定する。このため、第4のアライメントを行う場合には、加工ヘッド11は、マーク領域AMAに計測光MLを照射する。加工ヘッド11は、マーク領域AMAと計測ショット領域MSAとが少なくとも部分的に重なっている状態で、計測光MLを照射する。
【0189】
尚、距離情報に基づいてアライメントマークAMの位置を特定するために、アライメントマークAMは、ワークWの表面からZ軸方向に沿って一定の突き出し量だけ突き出た又は一定のくぼみ量だけ窪んだ構造物(凸又は凹の構造物)であってもよい。また、この突き出し量及び/くぼみ量は、制御装置5にとって既知の情報であってもよい。この場合、制御装置5は、距離情報に基づいて加工跡の位置を特定する場合と同様の方法で、距離情報に基づいて、アライメントマークAMの位置を特定することができる。つまり、制御装置5は、距離情報に基づいて、計測光MLがワークWの表面に照射されているのか又はアライメントマークAMに照射されているのかを判定することができる。
【0190】
その後、制御装置5は、アライメントマークAMに関するマーク情報(典型的には、特定したアライメントマークAMの位置に関する情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向、θZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御する。具体的には、アライメントマークAMは、XY平面に沿った面であるワークWの表面上で所定の配列パターンで配列されている。この配列パターンは、制御装置5にとって既知の情報であるものとする。この場合、制御装置5は、マーク情報に基づいて(つまり、アライメントマークAMの実際の位置に基づいて)、加工ヘッド11とアライメントマークAMとの間の相対的な位置関係を特定することができる。更に、アライメントマークAMがワークWの表面に形成されているがゆえに、制御装置5は、マーク情報に基づいて、加工ヘッド11とワークWとの間の相対的な位置関係を特定することができる。特に、制御装置5は、マーク情報に基づいて、X軸方向、Y軸方向、θZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係を特定することができる。なぜならば、アライメントマークAMは、XY平面に沿ったワークWの表面上で所定の配列パターンで配列されているからである。その結果、制御装置5は、マーク情報に基づいて特定された加工ヘッド11とワークWとの現在の相対的な位置関係に基づいて、X軸方向、Y軸方向、θZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWと相対的な位置関係を制御することができる。
【0191】
また、第4のアライメント動作は、ワークWに予め形成されたアライメントマークAMをワークWの特徴点として実質的に用いている動作であるとも言える。この場合、第4のアライメント動作は、ワークWの特徴点を用いて加工ヘッド11とワークWと相対的な位置関係を制御するという点で、第2のアライメント動作と共通する動作であるとも言える。但し、第4のアライメント動作は、必ずしもワークWの形状に関する形状情報を必要としない。
【0192】
また、加工システムSYSaは、第4のアライメント動作と共に、第2のアライメント動作及び第3のアライメント動作の少なくとも一方を行ってもよい。具体的には、加工システムSYSaは、距離情報及び形状情報の少なくとも一方に基づいてZ軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。加工システムSYSaは、形状情報、加工跡情報及びマーク情報の少なくとも一つに基づいて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0193】
また、ワークWには、アライメントマークAMとは異なる任意の指標が形成されていてもよい。任意の指標が計測光MLによって計測可能である限りは、加工システムSYSaは、任意の指標が形成されたワークWに対して第4のアライメント動作を行うことができる。
【0194】
(1-5)加工システムSYSaの技術的効果
以上説明した加工システムSYSaは、加工光ELを用いてワークWを適切に加工することができる。更に、加工システムSYSaは、計測光MLを用いてワークWを適切に計測することができる。特に、第1実施形態では、計測光MLとして光周波数コムが用いられるがゆえに、ワークWの計測精度が向上する。但し、計測光MLとして、光周波数コムとは異なる光が用いられてもよい。
【0195】
また、加工システムSYSaは、計測光MLの計測結果から算出される光路の差分(つまり、光路OP#1-3の長さと光路OP#2-2及びOP#2-3の長さとの差分)に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との間の相対的な位置関係を適切に制御することができる。その結果、加工ヘッド11は、ワークWを適切に加工することができる。例えば、加工ヘッド11は、加工ヘッド11に対して実質的に静止しているワークWを加工することができる。加工ヘッド11は、ワークWに対して実質的に静止した状態でワークWを加工することができる。このため、加工ヘッド11に対して実質的に静止していない(例えば、移動する)ワークWを加工する場合と比較して、ワークWの加工品質(例えば、加工精度)が向上する。
【0196】
(2)第2実施形態の加工システムSYSb
続いて、図21を参照しながら、第2実施形態の加工システムSYS(以降、第2実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSb”と称する)について説明する。図21は、第2実施形態の加工システムSYSbの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0197】
図21に示すように、第2実施形態の加工システムSYSbは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、位置計測装置6bを更に備えているという点で異なる。加工システムSYSbのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。
【0198】
位置計測装置6bは、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測する。第2実施形態では、位置計測装置6bは、加工ヘッド11に対するワークWの位置を計測する。加工ヘッド11に対するワークWの位置を計測するために、位置計測装置6bは、ワークWを計測してもよい。尚、加工ヘッド11が各光学系を備えているため、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測する動作は、実質的には、ワークWと加工ヘッド11が備える各光学系との相対的な位置関係を計測する動作と等価であるとみなしてもよい。つまり、加工ヘッド11に対するワークWの位置を計測する動作は、実質的には、加工ヘッド11が備える各光学系に対するワークWの位置を計測する。ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測する動作は、実質的には、ワークWとfθレンズ1162との相対的な位置関係を計測する動作と等価であるとみなしてもよい。
【0199】
位置計測装置6bは、加工ヘッド11(特に、加工ヘッド11が備える各光学系)に対して固定された位置に配置されてもよい。位置計測装置6bは、加工ヘッド11に対する相対位置が固定された位置に配置されてもよい。位置計測装置6bは、ヘッド駆動系12が加工ヘッド11を移動させたとしても加工ヘッド11と位置計測装置6bとの相対位置が変わらない位置に配置されてもよい。例えば、図21は、位置計測装置6bが、加工ヘッド11の外面(例えば、筐体117の外面)に取り付けられている例を示している。
【0200】
加工ヘッド11に対して固定された位置に位置計測装置6bが配置される場合には、位置計測装置6bからの出力(つまり、位置計測装置6bの計測結果)は、加工ヘッド11に対するワークWの位置に関する情報を含むことになる。具体的には、位置計測装置6bの計測結果は、位置計測装置6bに対するワークWの位置に関する情報を含む。つまり、位置計測装置6bの計測結果は、位置計測装置6bの計測座標系におけるワークWの位置に関する情報を含む。ここで、加工ヘッド11に対して固定された位置に位置計測装置6bが配置されている場合には、位置計測装置6bに対するワークWの位置に関する情報は、実質的には、位置計測装置6bに対して固定された位置に配置されている加工ヘッド11に対するワークWの位置に関する情報を含むことになる。従って、制御装置5は、加工ヘッド11に対するワークWの位置を適切に特定することができる。
【0201】
位置計測装置6bは、ワークWを計測可能である限りは、どのような種類の計測装置であってもよい。例えば、位置計測装置6bは、ワークW等の物体の表面を撮像可能な撮像装置(つまり、カメラ)を含んでいてもよい。位置計測装置6bは、ワークW上で所定のパターンを描く計測光をワークWに照射する照射装置と、計測光によってワークWに描かれたパターンを撮像する撮像装置とを含んでいてもよい。このように、位置計測装置6bは、非接触方式(一例として、光検出方式、音波検出方式及び電波検出方式等の少なくとも一つ)でワークWを計測する計測装置であってもよい。
【0202】
位置計測装置6bの計測結果(つまり、加工ヘッド11に対するワークWの位置に関する情報)は、加工システムSYSaを制御するために用いられてもよい。具体的には、位置計測装置6bの計測結果は、加工装置1を制御するために用いられてもよい。位置計測装置6bの計測結果は、加工ヘッド11を制御するために用いられてもよい。位置計測装置6bの計測結果は、ヘッド駆動系12を制御するために用いられてもよい。位置計測装置6bの計測結果は、ステージ装置3を制御するために用いられてもよい。位置計測装置6bの計測結果は、ステージ駆動系33を制御するために用いられてもよい。
【0203】
例えば、制御装置5は、位置計測装置6bの計測結果に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御してもよい。例えば、制御装置5は、位置計測装置6bの計測結果に基づいて、ワークW上の所望位置に目標照射領域EAが設定される(つまり、加工光ELが照射される)ように、ワークWに対する目標照射領域EAの相対位置を変更してもよい。例えば、制御装置5は、位置計測装置6bの計測結果に基づいて、ワークW上の所望位置に目標照射領域MAが設定される(つまり、計測光ML#2-2が照射される)ように、ワークWに対する目標照射領域MAの相対位置を変更してもよい。
【0204】
第2実施形態では特に、制御装置5は、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を制御するためのアライメント動作を行う際に、距離情報に加えて位置計測装置6bの計測結果を用いてもよい。
【0205】
位置計測装置6bの計測結果がアライメント動作のために用いられる場合には、位置計測装置6bは、上述した加工跡の位置を計測してもよい。この場合、位置計測装置6bは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測することができる。つまり、位置計測装置6bは、ワークWと加工ヘッド11とを結ぶ軸(特に、ワークWとfθレンズ1162とを結ぶ軸であり、実質的には、fθレンズ1162の光軸AXに沿った軸)であるZ軸と交差するX軸方向及びY軸方向のそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測することができる。更には、位置計測装置6bは、θZ方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測することができる。つまり、位置計測装置6bは、ワークWと加工ヘッド11とを結ぶ軸(特に、ワークWとfθレンズ1162とを結ぶ軸であり、実質的には、fθレンズ1162の光軸AXに沿った軸)であるZ軸周りの回転方向におけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測することができる。その理由は、上述した第3のアライメント動作において説明済みである。その結果、制御装置5は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御することができる。例えば、制御装置5は、距離情報に基づいてZ軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御し、位置計測装置6bの計測結果(つまり、上述した加工跡情報と実質的に等価であるとみなせる情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0206】
或いは、位置計測装置6bは、加工跡の位置を計測することに加えて又は代えて、上述したアライメントマークAMの位置を計測してもよい。この場合も、位置計測装置6bは、X軸方向、Y軸方向及びθZ方向のそれぞれにおけるワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を計測することができる。その理由は、上述した第4のアライメント動作において説明済みである。その結果、制御装置5は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。例えば、制御装置5は、距離情報に基づいてZ軸方向、θX方向及びθY方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御し、位置計測装置6bの計測結果(つまり、上述したマーク情報と実質的に等価であるとみなせる情報)に基づいて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向のそれぞれにおける加工ヘッド11とワークWとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0207】
尚、第2実施形態において、位置計測装置6bは、加工ヘッド11の外面に取り付けられているが、位置計測装置6bの一部が加工ヘッド11の内部(筐体117の内部)に取り付けられていてもよく、位置計測装置6b全体が加工ヘッド11の内部(筐体117の内部)に取り付けられていてもよい。
【0208】
このような第2実施形態の加工システムSYSbは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第7実施形態の加工システムSYSbは、検出器1143及び1146の検出結果に加えて、位置計測装置6bの検出結果を用いてワークWを加工することができる。このため、加工システムSYSbは、より適切にワークWを加工することができる。例えば、加工システムSYSbは、より高精度にワークWを加工することができる。
【0209】
(3)変形例
上述した説明では、加工ヘッド11は、ガルバノミラー1148を用いて単一本の計測光MLを偏向することで、ワークW上の三つ以上の被照射領域WAのそれぞれに計測光MLを照射する。しかしながら、加工ヘッド11は、三つ以上の被照射領域WAにそれぞれ照射される三本以上の計測光MLを射出してもよい。例えば、三つ以上の被照射領域WAにそれぞれ照射される三本以上の計測光MLをそれぞれ射出する三つ以上の光源及び/又は三つ以上の光学系を備えていてもよい。
【0210】
上述した説明では、加工ヘッド11は、筐体117の内部に加工光源111及び計測光源113を備えている。しかしながら、加工ヘッド11は、筐体117の内部に加工光源111及び計測光源113のうちの少なくとも一方を備えていなくてもよい。加工ヘッド11は、筐体117の外部又は加工ヘッド11の外部に配置される加工光源111が射出する加工光ELを、ワークWに対して射出してもよい。この場合、外部の加工光源111から射出された加工光ELは、光ファイバ等の光伝送部材を介して筐体117の外部から筐体117の内部の加工光学系112に入射してもよい。加工ヘッド11は、筐体117の外部又は加工ヘッド11の外部に配置される計測光源113が射出する計測光MLを、ワークWに対して射出してもよい。この場合、外部の計測光源113から射出された計測光MLは、光ファイバ等の光伝送部材を介して筐体117の外部から筐体117の内部の計測光学系114に入射してもよい。
【0211】
上述した説明では、加工ヘッド11は、筐体117の内部に加工光学系112及び計測光学系114を備えている。しかしながら、加工ヘッド11は、筐体117の内部に加工光学系112及び計測光学系114のうちの少なくとも一方を備えていなくてもよい。加工ヘッド11は、筐体117の外部又は加工ヘッド11の外部に配置される加工光学系112が射出する加工光ELを、ワークWに対して射出してもよい。この場合、外部の加工光学系112から射出された加工光ELは、光ファイバ等の光伝送部材を介して筐体117の外部から筐体117の内部の合成光学系115に入射してもよい。加工ヘッド11は、筐体117の外部又は加工ヘッド11の外部に配置される計測光学系114が射出する計測光MLを、ワークWに対して射出してもよい。この場合、外部の計測光学系114から射出された計測光MLは、光ファイバ等の光伝送部材を介して筐体117の外部から筐体117の内部の合成光学系115に入射してもよい。但し、計測光学系114が筐体117の外部又は加工ヘッド11の外部に配置される場合には、計測光学系114は、加工ヘッド11(特に、加工ヘッド11が備える各光学系や筐体117)に対して固定された位置に配置されてもよい。
【0212】
上述した説明では、加工ヘッド11は、合成光学系115を用いて合成した加工光ELと計測光MLとをワークWに照射している。しかしながら、加工ヘッド11は、加工光ELと計測光MLとを合成することなく、加工光ELと計測光MLとをワークWに照射している。つまり、加工光源111からワークWに至るまでの加工光ELの光路と、計測光源113からワークWに至るまでの計測光MLの光路とは、光学的に分離されていてもよい。つまり、加工ヘッド11は、加工光ELをワークWに照射するための光学系と、計測光MLをワークWに照射するための光学系とを、両者が光学的に分離された状態で備えていてもよい。この場合、加工ヘッド11は、加工光ELをワークWに照射するための光学系として、上述した加工光学系112と、上述した共通光学系116と同一の構成を有し且つ加工光学系112から射出される加工光ELをワークWに照射するための照射光学系とを備えていてもよい。加工ヘッド11は、計測光MLをワークWに照射するための光学系として、上述した計測光学系114と、上述した共通光学系116と同一の構成を有し且つ計測光学系114から射出される計測光MLをワークWに照射するための照射光学系とを備えていてもよい。但し、計測光MLをワークWに照射するための光学系は、加工ヘッド11(特に、加工光ELをワークWに照射するための光学系や筐体117)に対して固定された位置に配置されてもよい。
【0213】
加工システムSYSは、加工光ELをワークWに照射する一方で計測光MLをワークWに照射しない加工ヘッドと、計測光MLをワークWに照射する一方で加工光ELをワークWに照射しない計測ヘッドとを別個に備えていてもよい。但し、計測ヘッド(特に、計測ヘッドが備える光学系)は、加工ヘッド(特に、加工ヘッドが備える光学系や筐体117)に対して固定された位置に配置されてもよい。
【0214】
上述した説明では、制御装置5は、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116を介してワークWに照射された計測光MLの検出結果に基づいて、加工ヘッド11とワークWとの間の距離Dを算出している。しかしながら、距離の算出方法がこの例に限定されることはない。加工ヘッド11(特に、計測光学系114、合成光学系115及び共通光学系116)は、計測光MLを用いて加工ヘッド11とワークWとの間の距離を算出することができる限りは、どのような構造を有していてもよい。例えば、加工ヘッド11は、計測光学系114に代えて、ワークWからの計測光MLを受光する受光部を備えており、制御装置5は、受光部の受光結果に基づいて、タイム・オブ・フライト方式等の距離測定方法を用いて加工ヘッド11とワークWとの間の距離を算出してもよい。
【0215】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面にリブレット構造を形成している。しかしながら、加工システムSYSは、ワークWの表面上に、任意の形状を有する任意の構造を形成してもよい。この場合であっても、形成するべき構造に応じた走査軌跡に沿ってワークWの表面を加工光ELが走査するように制御装置5が加工ヘッド11等を制御すれば、任意の形状を有する任意の構造が形成可能である。任意の構造の一例としては、規則的又は不規則的に形成されたマイクロ・ナノメートルオーダの微細テクスチャ構造(典型的には凹凸構造)があげられる。このような微細テクスチャ構造は、流体(気体及び/又は液体)による抵抗を低減させる機能を有するサメ肌構造及びディンプル構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、撥液機能及びセルフクリーニング機能の少なくとも一方を有する(例えば、ロータス効果を有する)ハスの葉表面構造を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、液体輸送機能を有する微細突起構造(米国特許公開第2017/0044002号公報参照)、親液性機能を有する凹凸構造、防汚機能を有する凹凸構造、反射率低減機能及び撥液機能の少なくとも一方を有するモスアイ構造、特定波長の光のみを干渉で強めて構造色を呈する凹凸構造、ファンデルワールス力を利用した接着機能を有するピラーアレイ構造、空力騒音低減機能を有する凹凸構造、及び、液滴捕集機能を有するハニカム構造等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0216】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造をワークWに形成している。しかしながら、加工システムSYSは、表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造とは異なるその他の構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、流体とワークWの表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減するためのリブレット構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、ワークWの表面上の流体の流れに対して渦を発生する構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、ワークWの表面に疎水性を与えるための構造をワークWに形成してもよい。
【0217】
上述した説明では、加工光ELでワークWを加工する加工システムSYSについて説明されている。つまり、上述した説明では、加工システムSYSが加工ヘッド11を備える例について説明されている。しかしながら、加工システムSYSは、加工ヘッド11に加えて又は代えて、エンドエフェクタを備えていてもよい。例えば、エンドエフェクタを備える加工装置1cの構造の一例を示す図22に示すように、加工システムSYSは、エンドエフェクタ13cを備える加工装置1cを備えていてもよい。図22に示す例では、エンドエフェクタ13cがヘッド11cに取り付けられており、第2駆動系122は、ヘッド11cを介してエンドエフェクタ13cと第1駆動系121とを接続している。但し、エンドエフェクタ13cがヘッド11cを介することなく第2駆動系122に取り付けられていてもよい。このようなエンドエフェクタ13cを備える加工システムSYSは、ロボットシステムと称されてもよい。ロボットシステムは、エンドエフェクタ13cを用いた処理を、ワークWに対して行うシステムであるとも言える。
【0218】
尚、ヘッド11cは、加工光ELに関する構成要素(具体的には、加工光源111及び加工光学系112)を備えていなくてもよいという点で、加工ヘッド11とは異なっていてもよい。更には、ヘッド11cが加工光ELに関する構成要素を備えていない場合には、ヘッド11cは、加工光ELと計測光MLとを合成させなくともよいがゆえに、合成光学系115を備えていなくてもよい。但し、ヘッド11cは、加工光ELに関する構成要素及び合成光学系115を備えていてもよい。
【0219】
このようなエンドエフェクタ13cを備える加工システムSYSもまた、上述したアライメント動作を行ってもよい。つまり、エンドエフェクタ13cを備える加工システムSYSもまた、ワークWに計測光MLを照射し、計測光MLの検出結果に基づいてエンドエフェクタ13cとワークWとの間の距離Dを算出し、算出した距離Dに関する距離情報に基づいてワークWとエンドエフェクタ13cとの相対的な位置関係を制御するアライメント動作を行ってもよい。
【0220】
加工システムSYSがエンドエフェクタ13cを備えている場合には、ワークWに対してエンドエフェクタ13cが配置される方向は、ワークWに対して共通光学系116(特に、fθレンズ1162)が配置される方向と同一であってもよい。図22に示す例では、エンドエフェクタ13c及び共通光学系116(特に、fθレンズ1162)の双方が、ワークWよりも+Z側に配置されている。つまり、エンドエフェクタ13c及び共通光学系116(特に、fθレンズ1162)の双方が、ワークWの上方に配置されている。
【0221】
尚、エンドエフェクタ13cは、ワークW(或いは、任意の物体、以下この段落において同じ)に直接働きかける(つまり、作用する)機能を持つ部材であってもよい。この場合、エンドエフェクタ13cは、ワークWに作用する作用部材と称してもよい。このようなワークWに直接働きかける機能を持つ部材の一例として、ロボットハンド、グリッパー及びバキュームヘッドの少なくとも一つがあげられる。また、エンドエフェクタは、ワークWのプロパティ(つまり、ワークWに関する任意の情報)を取得するための部材であってもよい。この場合、エンドエフェクタ13cは、ワークWのプロパティを取得する取得部材と称してもよい。ここで、ワークWのプロパティは、ワークWの状態、ワークWのサイズ、ワークWの形状、ワークWの位置、ワークWの特徴点の位置、ワークWの姿勢、ワークWの表面性状(例えば、反射率、分光反射率、表面粗さ及び色等の少なくとも一つ)、及び、ワークWの硬さ等の少なくとも一つを含んでいてもよい。このようなワークWのプロパティを取得するための部材の一例として、ワークWを計測する計測装置、ワークWの特性を検出する検出装置及びワークWを撮像する撮像装置の少なくとも一つがあげられる。尚、上述の説明における加工ヘッド11及び位置計測装置6bは、エンドエフェクタの一種であるとみなすことができる。
【0222】
上述した説明では、加工光源111と計測光源113とが別々の光源となっている。しかしながら、単一の光源が、加工光源111及び計測光源113の夫々として用いられてもよい。この場合、単一の光源が生成する光が、加工光ELとしても用いられるし、計測光MLとしても用いられる。
【0223】
上述した説明では、照射位置変更光学系としてガルバノミラーが用いられている。しかしながら、照射位置変更光学系として、ガルバノミラーに加えて又は代えて、ポリゴンミラーやMEMSミラーが用いられてもよい。照射位置変更光学系として、ガルバノミラーに加えて又は代えて、光の照射位置を変更可能な位置調整光学系が用いられてもよい。加工光ELの照射位置を変更するために用いられる位置調整光学系は、加工光ELの光路と直交する面における加工光ELの位置を調整する(例えば、任意の位置に設定する)ために、加工光ELの進行方向に対して傾斜可能な平行平面板を有していてもよい。計測光MLの照射位置を変更するために用いられる位置調整光学系は、計測光MLの光路と直交する面における計測光MLの位置を調整する(例えば、任意の位置に設定する)ために、計測光MLの進行方向に対して傾斜可能な平行平面板を有していてもよい。
【0224】
上述した説明では、加工光EL及び/又は計測光MLをワークWに照射する照射光学系として、射影特性がfθであるfθレンズ1162が用いられている。しかしながら、照射光学系として、他の射影特性を有する光学系が用いられてもよい。また、照射光学系は、上述した説明のように全屈折型の光学系(ディオプトリック光学系)には限定されず、反射屈折型の光学系(カタディオプトリック光学系)であってもよいし、全反射型の光学系(カタプトリック光学系)であってもよい。
【0225】
上述した説明では、ヘッド駆動系12は、ロボットである。しかしながら、ヘッド駆動系12は、加工ヘッド11を移動可能である限りは、ロボットに限定されることはない。例えば、ヘッド駆動系12は、例えば、加工ヘッド11を支持したまま、ワークWから離れた位置を飛行可能な飛行体であってもよい。飛行体の一例として、航空機、ドローン、ヘリコプター、気球及び飛行船の少なくとも一つがあげられる。
【0226】
(9)付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムを制御する制御装置であって、
前記処理システムは、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、
前記物体と前記照射光学系との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と
を備え、
前記検出装置からの出力を用いて、前記位置変更装置を制御する
制御装置。
[付記2]
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムを制御する制御装置であって、
前記処理システムは、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面の少なくとも一部に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、
前記物体と前記加工光の集光位置との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と
を備え、
前記検出装置からの出力を用いて、前記位置変更装置を制御する
制御装置。
[付記3]
物体に対して作用する作用部材を用いた処理、及び前記物体の情報を取得する取得部材を用いた処理のうち少なくとも一方の処理を行う処理システムを制御する制御装置であって、
前記処理システムは、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面に第2光を照射する照射光学系と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、
前記作用部材及び前記取得部材のうちの少なくとも一方と前記物体との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と
を備え、
前記検出装置からの出力を用いて、前記位置変更装置を制御する
制御装置。
[付記4]
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムであって、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、
前記物体と前記照射光学系との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、
前記検出装置からの出力を用いて前記位置変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置と
を備える処理システム。
[付記5]
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムであって、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面の少なくとも一部に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、
前記物体と前記加工光の集光位置との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、
前記検出装置からの出力を用いて前記位置変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置と
を備える処理システム。
[付記6]
物体に対して作用する作用部材を用いた処理、及び前記物体の情報を取得する取得部材を用いた処理のうち少なくとも一方の処理を行う処理システムであって、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面に第2光を照射する照射光学系と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、
前記作用部材及び前記取得部材のうちの少なくとも一方と前記物体との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記検出装置からの出力を用いて前記位置変更装置を制御する制御信号を受信する受信装置と
を備える処理システム。
[付記7]
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記処理システムは、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、
前記物体と前記照射光学系との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と
を備え、
前記検出装置からの出力を用いて前記位置変更装置を制御する処理を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム。
[付記10]
加工光源からの加工光を物体の少なくとも一部に照射して前記物体を加工処理する処理システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記処理システムは、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面の少なくとも一部に前記加工光を照射し、前記物体の前記表面に前記第2光を照射する照射光学系と、
前記物体と前記加工光の集光位置との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と
を備え、
前記検出装置からの出力を用いて前記位置変更装置を制御する処理を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム
[付記9]
物体に対して作用する作用部材を用いた処理、及び前記物体の情報を取得する取得部材を用いた処理のうち少なくとも一方の処理を行う処理システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記処理システムは、
計測光源からの計測光を、第1光路を進行する第1光と第2光路を進行する第2光とに分岐する分岐光学系と、
前記物体の表面に第2光を照射する照射光学系と、
前記物体の前記表面に照射された前記第2光によって生じる光のうち第3光路を進行する第3光と前記第1光との干渉光を検出する検出装置と、
前記作用部材及び前記取得部材のうちの少なくとも一方と前記物体との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と
を備え、
前記検出装置からの出力を用いて前記位置変更装置を制御する処理を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0227】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う処理システム、ロボットシステム、制御装置及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0228】
1 加工装置
11 加工ヘッド
111 加工光源
112 加工光学系
113 計測光源
114 計測光学系
115 合成光学系
116 共通光学系
12 ヘッド駆動系
5 制御装置
EL 加工光
ML 計測光
SYS 加工システム
図1
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