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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光学異方性複層物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021550516
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033911
(87)【国際公開番号】W WO2021065377
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019179969
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-38598(JP,A)
【文献】特開2012-220904(JP,A)
【文献】特開2000-75325(JP,A)
【文献】特開2009-14843(JP,A)
【文献】特開2008-129480(JP,A)
【文献】特開2009-249482(JP,A)
【文献】特開2013-33248(JP,A)
【文献】特表2001-500984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)を備える光学異方性複層物であって、
前記光学異方性層(Sm)は、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化された液晶化合物(A-Sm)を含む光学異方性層であり、
前記光学異方性層(N)は、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化された液晶化合物(A-N)を含む光学異方性層であり、
前記光学異方性層(Sm)及び前記光学異方性層(N)における、面内の遅相軸の方向が共通の方向であり、
前記光学異方性層(Sm)についてのReドロップの値ReD(Sm)が正であり、
前記光学異方性層(N)についてのReドロップの値ReD(N)が負であり、
前記Reドロップの値は、式ReD=((Re1-Re0)/Re0)×100より求められる値ReD(%)であり、
前記Re0は、前記光学異方性層を85℃、50時間の加熱条件で加熱処理する前の面内レターデーションReの値であり、
前記Re1は、前記光学異方性層を85℃、50時間の加熱条件で加熱処理した後の面内レターデーションReの値である、光学異方性複層物。
【請求項2】
前記液晶化合物(A-Sm)及び前記液晶化合物(A-N)が、同一の液晶化合物(A-SmN)であり、
前記液晶化合物(A-SmN)が、スメクチック液晶相及びネマチック液晶相を呈しうる化合物である、請求項1に記載の光学異方性複層物。
【請求項3】
前記液晶化合物(A-SmN)が、逆波長分散性重合性液晶化合物である、請求項2に記載の光学異方性複層物。
【請求項4】
前記液晶化合物(A-SmN)が、下記式(I)で表される化合物である、請求項3に記載の光学異方性複層物:
【化1】
但し、式(I)において、
Arは、下記式(III-2)で表される基を表し、
【化2】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【請求項5】
前記液晶化合物(A-SmN)が、下記式(A-2)で表される化合物である、請求項4に記載の光学異方性複層物。
【化3】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学異方性複層物の製造方法であって、
液晶化合物(A-Sm)を含む液晶組成物(Sm)を、スメクチック液晶相を呈した状態で硬化させ、光学異方性層(Sm)を得る工程、
液晶化合物(A-N)を含む液晶組成物(N)を、ネマチック液晶相を呈した状態で硬化させ、光学異方性層(N)を得る工程、及び
光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)を貼合する工程
を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性複層物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルム等の光学部材を構成するための材料として、光学異方性層、即ち層状の構造を有する構造物であって、光学異方性を有するものが用いられる。
光学異方性層の製造方法の一例として、液晶化合物を含む液晶組成物を、配向させ、硬化する方法が知られている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-282009号公報(対応公報:米国特許出願公開第2010/157204号明細書)
【文献】特開2015-200861号公報(対応公報:米国特許出願公開第2015/079380号明細書)
【文献】特開2016-051178号公報(対応公報:米国特許出願公開第2016/068756号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶組成物を用いて形成された光学異方性層は、その耐久性が不足する場合がある。例えば、光学異方性層を85℃100時間といった耐久試験条件下に置くことにより、その位相差が大きく変化することがある。面内レターデーションReに着目し、かかる位相差をReの減少としてとらえた場合、かかるReの減少を「Reドロップ」と呼ぶ場合がある。Reドロップは、光学異方性層を、表示装置等の高熱を発生する装置の構成要素として使用する場合、その耐久性を低下させる要因となり得る。
【0005】
したがって、本発明の目的は、液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を含む構造物であって、熱負荷に対する耐久性が高いもの及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく検討したところ、かかる検討の過程において、液晶組成物のうちのある種のものは、その硬化物が正のReドロップを起こす場合と、及び負のReドロップを起こす場合がある、という、これまで知られていなかった知見を得た。本発明者はさらに、Reドロップを起こす性質の異なる複数の層を、光学異方性複層物において共存させることにより、Reドロップを相互に打ち消すことができ、その結果光学異方性複層物の耐久性を向上させることを着想した。本発明は、かかる着想に基づき完成されたものである。
即ち、本発明によれば、以下のものが提供される。
【0007】
〔1〕 光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)を備える光学異方性複層物であって、
前記光学異方性層(Sm)は、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化された液晶化合物(A-Sm)を含む光学異方性層であり、
前記光学異方性層(N)は、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化された液晶化合物(A-N)を含む光学異方性層であり、
前記光学異方性層(Sm)及び前記光学異方性層(N)における、面内の遅相軸の方向が共通の方向である、光学異方性複層物。
〔2〕 前記液晶化合物(A-Sm)及び前記液晶化合物(A-N)が、同一の液晶化合物(A-SmN)であり、
前記液晶化合物(A-SmN)が、スメクチック液晶相及びネマチック液晶相を呈しうる化合物である、〔1〕に記載の光学異方性複層物。
〔3〕 前記液晶化合物(A-SmN)が、逆波長分散性重合性液晶化合物である、〔2〕に記載の光学異方性複層物。
〔4〕 前記液晶化合物(A-SmN)が、下記式(I)で表される化合物である、〔3〕に記載の光学異方性複層物:
【化1】
但し、式(I)において、
Arは、下記式(III-2)で表される基を表し、
【化2】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
〔5〕 前記液晶化合物(A-SmN)が、下記式(A-2)で表される化合物である、〔4〕に記載の光学異方性複層物。
【化3】
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学異方性複層物の製造方法であって、
液晶化合物(A-Sm)を含む液晶組成物(Sm)を、スメクチック液晶相を呈した状態で硬化させ、光学異方性層(Sm)を得る工程、
液晶化合物(A-N)を含む液晶組成物(N)を、ネマチック液晶相を呈した状態で硬化させ、光学異方性層(N)を得る工程、及び
光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)を貼合する工程
を含む製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を含む構造物であって、熱負荷に対する耐久性が高いもの及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0010】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0011】
以下の説明において、フィルム又は層の遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルム又は層の面内における遅相軸を表す。
【0012】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0013】
以下の説明において、別に断らない限り、「逆波長分散特性」とは、波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(650)が、下記の式(1)を満たす特性をいう。逆波長分散特性を有する材料は、好ましくは下記式(1)及び式(2)の両方を満たす。
Re(450)/Re(550)<1.00 (1)
Re(650)/Re(550)>1.00 (2)
【0014】
以下の説明において、別に断らない限り、「順波長分散特性」とは、Re(450)、Re(550)、及びRe(650)が、下記の式(1’)を満たす特性をいう。順波長分散特性を有する材料は、好ましくは下記式(1’)及び式(2’)の両方を満たす。
Re(450)/Re(550)>1.00 (1’)
Re(650)/Re(550)<1.00 (2’)
【0015】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0016】
〔1.光学異方性複層物:液晶化合物(A-Sm)(A-N)(A-SmN)の性質〕
本発明の光学異方性複層物は、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)を備える。光学異方性層(Sm)は、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化された液晶化合物(A-Sm)を含む光学異方性層である。光学異方性層(N)は、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化された液晶化合物(A-N)を含む光学異方性層である。
【0017】
一般に液晶化合物は、それ自体を配向させた際又は組成物に配合した状態において配向させた際に、液晶相を呈しうる化合物である。また、本願では、液晶化合物のみからなる材料又は液晶化合物及びその他の任意成分を含む組成物であって、流動性のある状態であり、それ自体液晶相を呈しうるものを「液晶組成物」と称する。
【0018】
本願において「固定化」された液晶化合物とは、液体状態及び液晶状態等の流動性を有する状態ではなく、液晶相の配向を維持したまま固体の状態とされた液晶化合物である。
【0019】
液晶化合物(A-Sm)及び液晶化合物(A-N)としては、重合性液晶化合物を採用しうる。重合性液晶化合物とは、液晶相を呈した状態で、液晶組成物中で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる液晶化合物である。液晶化合物(A-Sm)及び液晶化合物(A-N)が重合性液晶化合物である場合、これらのいずれかを含む液晶組成物において、液晶化合物の重合反応を行うことにより、液晶組成物が硬化し、かかる液晶化合物の固定化が達成される。かかる重合による固定化の結果、「固定化された液晶化合物」は、光学異方性層において、単量体たる液晶化合物の分子そのものとしては存在せず、単量体の重合反応の結果得られた重合体中の重合単位として存在する。
【0020】
液晶化合物(A-Sm)は、スメクチック液晶相を呈しうる液晶化合物であり、液晶化合物(A-N)は、ネマチック液晶相を呈しうる液晶化合物である。即ち、液晶化合物(A-Sm)は、配向に際しての条件を選択することにより、スメクチック液晶相を呈するよう配向させることができ、液晶化合物(A-N)は、配向に際しての条件を選択することにより、ネマチック液晶相を呈するよう配向させることができる。
【0021】
スメクチック液晶相とは、一般的に知られる通り、液晶化合物の分子のダイレクタが、ランダムな方向ではない、平行又はそれに近い一定の方向に配向しており、且つかかる配向方向と垂直又は斜め方向の面に沿った層を多数備える層状構造を有している液晶相である。本発明において、スメクチック液晶相は、最も一般的なスメクチックA層に加えて、スメクチックC層、スメクチックCA層、スメクチックC層といった各種のスメクチック液晶相を含みうる。一方、ネマチック液晶相とは、一般的に知られる通り、液晶化合物の分子のダイレクタが、かかる一定の方向に配向しているが、前記層状構造を有しない液晶相である。
【0022】
光学異方性層(Sm)の材料となる液晶化合物(A-Sm)と、光学異方性層(N)の材料となる液晶化合物(N)とは、異なる化合物であってもよいが、同一の液晶化合物(A-SmN)であってもよい。製造の容易さ及び耐久性の向上の観点からは、液晶化合物(A-Sm)と液晶化合物(N)とは、同一の液晶化合物(A-SmN)であることが好ましい。液晶化合物(A-Sm)及び液晶化合物(A-N)が同一の液晶化合物(A-SmN)である場合、液晶化合物(A-SmN)は、スメクチック液晶相及びネマチック液晶相を呈しうる化合物である。液晶化合物(A-SmN)は、スメクチック液晶相及びネマチック液晶相を呈しうるので、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化することもでき、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化することもできる。以下においては、液晶化合物(A-Sm)、液晶化合物(A-N)及び液晶化合物(A-SmN)を総称して「液晶化合物(A)」という。
【0023】
一般的に、液晶組成物は、昇温により固相(結晶相)から等方相に相転移し、降温により等方相から固相に相転移する。そして、固相から等方相への相転移の過程の間、及び等方相から固相への相転移の過程の間のいずれか又は両方において、液晶組成物は、液晶相を呈しうる。液晶化合物(A-SmN)は、かかる相転移において、液晶相を呈する温度範囲のうちに、スメクチック液晶相を呈する温度範囲及びネマチック液晶相を呈する温度範囲の両方を有する。通常、液晶化合物(A-SmN)がスメクチック液晶相を呈する温度範囲は、通常ネマチック液晶相を呈する温度範囲より低温であるが、液晶化合物(A-SmN)はこれに限定されない。かかる昇温及び降温における相転移の観察及び相転移温度の検出は、顕微鏡による観察、光学的特性(例えばRe(450)/Re(550)の値)の変化と温度との相関の観察、及び示差走査熱量測定のうちの一つ又はこれらの二つ以上の組み合わせにより行いうる。
【0024】
液晶化合物(A)は、順波長分散性重合性液晶化合物であってもよく、逆波長分散性重合性液晶化合物であってもよいが、好ましくは、逆波長分散性重合性液晶化合物である。逆波長分散性重合性液晶化合物とは、重合性液晶化合物のうち、逆波長分散性を有するものである。
【0025】
逆波長分散性を有する液晶化合物とは、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。また、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、逆波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0026】
順波長分散性を有する液晶化合物とは、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。また、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、順波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0027】
通常は、液晶化合物をホモジニアス配向させた場合に、液晶化合物の層が示す複屈折の波長分散性を調べることで、その液晶化合物が示す複屈折の波長分散性を確認できる。液晶化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶化合物を含む層を形成し、その層における液晶化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。
【0028】
具体的には、重合性液晶化合物が、逆波長分散性であることは、下記の方法により確認しうる。
(1)重合性液晶化合物、界面活性剤、及び溶媒を含む液晶組成物を調製する。
(2)配向規制力が表面に付与された基材に、液晶組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させて、重合性液晶化合物の層を形成する。
(3)必要に応じて重合性液晶化合物の層を加熱して、重合性液晶化合物の層において重合性液晶化合物を配向させて、重合性液晶化合物の層の、波長450nm、550nm、及び650nmにおける面内レターデーションRe(450)、Re(550)、及びRe(650)を測定し、Re(450)/Re(550)<1.00であること(又は、Re(450)/Re(550)<1.00であり且つRe(650)/Re(550)>1.00であること)を確認する。
【0029】
好ましくは、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)は、Reドロップの挙動が相違する。このようなReドロップの挙動の相違は、これらを85℃100時間といった加熱条件で加熱処理し、かかる加熱処理によるこれらの面内レターデーションReの変化を観察することにより評価しうる。Reの測定波長は、例えば590nmとしうる。Reドロップの値ReD(%)は、処理前のReの値Re0と、処理後のReの値Re1から、式ReD=((Re1-Re0)/Re0)×100により求めうる。具体的には、かかる加熱処理の結果、光学異方性層(Sm)のReドロップの値ReD(Sm)が正となり、光学異方性層(N)のReドロップの値ReD(N)が負となることが好ましい。このようなReドロップの挙動を示す光学異方性層を与える液晶化合物を採用し、本発明の光学異方性複層物を構成することにより、特に高い耐久性を得ることができる。液晶化合物(A-Sm)及び液晶化合物(A-N)が同一の液晶化合物(A-SmN)である場合、液晶化合物(A-SmN)は、Reドロップの挙動が、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化された場合と、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化された場合とで相違する化合物であることが好ましい。
【0030】
好ましくは、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)は、加熱処理された際の波長分散の変化の挙動が相違する。このような波長分散の変化の挙動の相違は、これらを85℃100時間といった加熱条件で加熱処理し、かかる加熱処理によるこれらのRe(450)/Re(550)の値の変化を観察することにより評価しうる。具体的には、かかる加熱処理の結果、光学異方性層(Sm)のRe(450)/Re(550)の値が増加し、光学異方性層(N)のRe(450)/Re(550)の値が減少することが好ましい。このような波長分散の変化の挙動を示す液晶化合物を採用し、本発明の光学異方性複層物を構成することにより、特に高い耐久性を得ることができる。液晶化合物(A-Sm)及び液晶化合物(A-N)が同一の液晶化合物(A-SmN)である場合、液晶化合物(A-SmN)は、加熱処理された際の波長分散の変化の挙動が、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化された場合と、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化された場合とで相違することが好ましい。
【0031】
逆波長分散性重合性液晶化合物のうちのある一群のものは、その一部が、ReD(Sm)が正となり、ReD(N)が負となる傾向にあり、且つ、加熱処理による硬化物(Sm)のRe(450)/Re(550)の値が増加し、加熱処理による硬化物(N)のRe(450)/Re(550)の値が減少する傾向にある。さらに、それらのうちのさらなる一部は、スメクチック液晶相及びネマチック液晶相を呈しうる性質を有する。したがって、そのような一群の逆波長分散性重合性液晶化合物から、そのような性質を有する化合物を適宜選択することにより、本発明を容易に実施しうる。そのような化合物の具体例は後述する。
【0032】
液晶化合物(A)のそれぞれとしては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
液晶化合物(A)のそれぞれの分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する液晶化合物(A)を用いることにより、所望の配向を容易に得ることができる。
【0034】
〔2.光学異方性組成物:遅相軸の方向〕
本発明の光学異方性複層物においては、光学異方性層(Sm)及び前記光学異方性層(N)における遅相軸の方向が共通の方向である。好ましくは、光学異方性層(Sm)及び前記光学異方性層(N)における遅相軸の方向が共通の方向であり、且つこれらの層において、液晶化合物(A)は、ホモジニアス配向した状態で固定化されている。本発明の光学異方性複層物は、かかる構成を有することにより、Reドロップ及び加熱による波長分散の変化が抑制された、耐久性の高い層とすることができる。
【0035】
「遅相軸の方向が共通」である状態とは、光学異方性層(Sm)の遅相軸方向と、光学異方性層(N)の遅相軸方向とが、平行又はそれに近い角度であることをいい、具体的には、光学異方性複層物と垂直な方向から観察した場合におけるこれらのなす角が、好ましくは3°以内、より好ましくは2°以内、さらにより好ましくは1°以内であることをいう。このように、遅相軸の方向が共通な方向であることにより、光学異方性複層物を、Reドロップ及び加熱による波長分散の変化が抑制された、耐久性の高い複層物とすることができる。
【0036】
〔3.光学異方性複層物の製造方法〕
本発明の光学異方性複層物は、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)をそれぞれ得て、これらを貼合することにより製造しうる。貼合は、これらの層の遅相軸方向を、平行又はそれに近い角度に揃えた状態で行う。貼合は、これらの層を直接又は適当な接着剤を介した状態で圧接させることにより達成しうる。また、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)のそれぞれを、遅相軸方向と長手方向とがなす角が等しい長尺のフィルムとして形成した場合、これらをロールツーロールで貼合することにより、効率的な貼合を達成することができる。本発明の光学異方性複層物は、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)をそれぞれ1層ずつ有するものとしうるが、これに限られず、例えばどちらか一方又は両方を、2層以上有していてもよい。光学異方性複層物における、光学異方性層(Sm)の総厚みと、光学異方性層(N)の総厚みとの比は、7:3~5:5であることが好ましい。光学異方性複層物は、光学異方性層に加えて、透明樹脂基材、ガラス板基材等の基材、及び接着剤層等の任意の層を含みうる。
【0037】
〔4.光学異方性層の任意成分、及び光学異方性層の製造方法〕
本発明の光学異方性複層物を構成する光学異方性層(Sm)は、液晶化合物(A-Sm)を含む液晶組成物(Sm)を、スメクチック液晶相を呈した状態で硬化させることにより製造しうる。一方、光学異方性層(N)は、液晶化合物(A-N)を含む液晶組成物(N)を、ネマチック液晶相を呈した状態で硬化させることにより製造しうる。より具体的には、液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を硬化させ硬化物とすることにより、光学異方性層を製造しうる。
【0038】
液晶組成物は、液晶化合物(A)に加えて、任意成分を含みうる。任意成分の種類及び割合は、液晶組成物が所望の特性(光学異方性層の製造の過程においてスメクチック液晶相又はネマチック液晶相を呈しうる特性、及びかかる液晶相を呈した状態で硬化しうる特性)を備えうる範囲で適宜選択しうる。かかる任意成分の例としては、架橋剤、界面活性剤、酸化防止剤、各種の有機溶媒等の溶媒、及び重合開始剤が挙げられる。重合開始剤としては、紫外線重合開始剤等の光重合開始剤が、重合の操作が容易である観点から好ましい。
【0039】
液晶組成物の塗膜の形成は、適当な基材の一方の表面上に液晶組成物を塗布し、基材及び塗膜を含む複層物を得ることにより行いうる。基材としては、当該技術分野に応じて一般的に用いられるものを適宜選択しうる。基材は、その表面において配向規制力を有するものとしうる。例えば、延伸処理、ラビング処理等により、その表面に、液晶化合物(A)の配向方向を規制する規制力を付与したものとしうる。
【0040】
液晶組成物の塗膜を形成した後、その温度を調整することにより、液晶組成物中の液晶化合物を配向させ、所望の液晶相を呈した状態としうる。液晶組成物が、昇温時及び降温時の両方において所望の液晶相を呈する場合は、配向処理における温度の調整は、昇温の操作及び降温の操作のうちのいずれであってもよい。液晶組成物が、昇温時及び降温時のいずれか一方のみにおいて所望の相転移を呈する場合は、昇温の操作及び降温の操作のうち、液晶組成物が当該液晶相を呈するほうを選択する。例えば、液晶組成物が降温時のみにおいて所望の液晶相を呈する場合は、必要であれば予備的な加熱を行った後、液晶組成物を所望の液晶相を呈する温度まで降温させる。
【0041】
液晶組成物の硬化は、液晶組成物中の重合性の化合物の重合を進行させることにより達成しうる。具体的には、液晶組成物として、重合性液晶化合物及び必要であれば光重合開始剤を含むものを採用し、塗膜にエネルギー線を照射することにより、硬化を達成しうる。エネルギー線としては、液晶組成物の硬化を達成するのに適したものを適宜選択でき、具体的には紫外光等の光を用いうる。かかる硬化により、塗膜の重合を達成し、光学異方性層を形成することができる。
【0042】
エネルギー線の照射は、基材及び塗膜を含む複層物のどちらか一方の面側から行いうる。照射は、窒素等の不活性ガス雰囲気下にて行うことが、重合度の高い重合を行う観点から好ましい。
【0043】
得られた光学異方性層は、その使用において発生するReドロップの挙動及び波長分散の変化の挙動が、光学異方性層(Sm)と光学異方性層(N)とで相違するため、光学異方性複層物においてこれらが打消し合い、その結果、使用に際しての熱負荷に対する耐久性が高い光学異方性複層物となり得る。
【0044】
〔5.光学異方性複層物の用途〕
本発明の光学異方性複層物は、位相差フィルムとして用いうる。具体的には、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置における、位相差を有する光学フィルムとして用いうる。例えば、偏光子層と組み合わせて構成された反射防止フィルムとして用いうる。本発明の光学異方性複層物は、使用に際しての熱負荷に対する耐久性が高いため、それを備える装置の寿命を延長させることができる。
【0045】
〔6.重合性液晶化合物〕
液晶化合物(A)の例である、重合性液晶化合物のより具体的な例としては、下記式(I)で表される液晶化合物が挙げられる。式(I)で表される液晶化合物は、通常、逆波長分散性の複屈折を発現できる。式(I)で表される液晶化合物の一部は、スメクチック液晶相及びネマチック液晶相を呈しうる性質を有し、ReD(Sm)が正となり、ReD(N)が負となる傾向にあり、且つ、加熱処理による硬化物(Sm)のRe(450)/Re(550)の値が増加し、加熱処理による硬化物(N)のRe(450)/Re(550)の値が減少する傾向にある。したがって、式(I)で表される液晶化合物から、そのような性質を有する化合物を適宜選択することにより、本発明を容易に実施しうる。
【0046】
【化4】
【0047】
式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0048】
Arの好ましい例としては、例えば、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基が挙げられる。式(II-1)~式(II-4)において、*は、Z又はZとの結合位置を表す。また、Arは、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
【0049】
【化5】
【0050】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、E及びEは、それぞれ独立して、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。また、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。中でも、E及びEは、それぞれ独立して、-S-であることが好ましい。
【0051】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、D~Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D及びDは、一緒になって環を形成していてもよい。D~Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
【0052】
~Dにおける非環状基の炭素原子数は、1~13が好ましい。D~Dにおける非環状基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基;シアノ基;カルボキシル基;炭素原子数1~6のフルオロアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;-C(=O)-CH;-C(=O)NHPh;-C(=O)-OR;が挙げられる。中でも、非環状基としては、シアノ基、カルボキシル基、-C(=O)-CH、-C(=O)NHPh、-C(=O)-OC、-C(=O)-OC、-C(=O)-OCH(CH、-C(=O)-OCHCHCH(CH)-OCH、-C(=O)-OCHCHC(CH-OH、及び-C(=O)-OCHCH(CHCH)-C、が好ましい。前記のPhは、フェニル基を表す。また、前記のRは、炭素原子数1~12の有機基を表す。Rの具体例としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基、または、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。
【0053】
~Dにおける非環状基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
は、炭素原子数1~6のアルキル基;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基若しくは炭素原子数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0055】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0056】
における炭素原子数1~20のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは4~10である。Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基等が挙げられる。
【0057】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;及び、ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12である。Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。
【0059】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
【0061】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。
【0063】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
及びDが一緒になって環を形成している場合、前記のD及びDによって環を含む有機基が形成される。この有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。下記式において、*は、各有機基が、D及びDが結合する炭素と結合する位置を表す。
【0065】
【化6】
【0066】
は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
**は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
***は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
****は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、水酸基、及び、-COOR13からなる群より選ばれる基を表す。R13は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
フェニル基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基及びアルコキシ基が好ましい。フェニル基が有する置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、Dは、-C(R)=N-N(R)R、-C(R)=N-N=C(R)R、及び、-C(R)=N-N=Rからなる群より選ばれる基を表す。Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。
【0068】
は、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0069】
は、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0070】
における置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、又は、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;-G-Y-F;-SO;-C(=O)-R;-CS-NH-R;が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。
【0071】
における炭素原子数1~20のアルキル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基と同じである。
【0072】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;-SO;-SR;-SRで置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基と同じである。
【0074】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0075】
における炭素原子数2~20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基等が挙げられる。
【0076】
における炭素原子数2~20のアルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、Rにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基と同じ例が挙げられる。
【0078】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基がより好ましい。
【0080】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基等が挙げられる。中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基等の、単環の芳香族複素環基;並びに、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、及びベンゾチアジアゾリル基等の、縮合環の芳香族複素環基;がより好ましい。
【0082】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の2価の脂肪族炭化水素基;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR14-C(=O)-、-C(=O)-NR14-、-NR14-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);からなる群より選ばれる有機基を表す。R14は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
【0084】
は、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15-、-O-C(=O)-NR15-、-NR15-C(=O)-O-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれる基を表す。R15は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。中でも、Yとしては、-O-、-O-C(=O)-O-及び-C(=O)-O-が好ましい。
【0085】
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。この有機基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは30以下である。前記の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子を含まない。
【0086】
における芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族炭化水素環を有する場合、複数の芳香族炭化水素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0087】
における芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;等が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0088】
における芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等の、炭素原子数2~30の芳香族複素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族複素環を有する場合、複数の芳香族複素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0089】
における芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族複素環が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0090】
の好ましい例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~20の環状基」が挙げられる。以下、この環状基を、適宜「環状基(a)」ということがある。
【0091】
環状基(a)が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0092】
環状基(a)の好ましい例としては、少なくとも一つの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の炭化水素環基が挙げられる。この炭化水素環基を、以下、適宜「炭化水素環基(a1)」ということがある。
【0093】
炭化水素環基(a1)としては、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数10)、アントラセニル基(炭素原子数14)、フェナントレニル基(炭素原子数14)、ピレニル基(炭素原子数16)、フルオレニル基(炭素原子数13)、インダニル基(炭素原子数9)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素原子数10)、1,4-ジヒドロナフチル基(炭素原子数10)等の、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0094】
前記の炭化水素環基(a1)の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。
【0095】
【化7】
【0096】
環状基(a)の別の好ましい例としては、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~18の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基が挙げられる。この複素環基を、以下、適宜「複素環基(a2)」ということがある。
【0097】
複素環基(a2)としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドーリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;およびテトラヒドロフラニル基;が挙げられる。
【0098】
前記の複素環基(a2)の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。下記式中、Xは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。YおよびZは、それぞれ独立して、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。Eは、-NR-、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子;または、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO-は、それぞれ隣接しないものとする。)。
【0099】
【化8】
【0100】
の好ましい別の例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基で、少なくとも一つの水素原子が置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい、炭素原子数1~18のアルキル基」が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「置換アルキル基(b)」ということがある。
【0101】
置換アルキル基(b)における炭素原子数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
【0102】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」としては、例えば、環状基(a)として説明した範囲の基が挙げられる。
【0103】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、炭素原子数1~18のアルキル基の炭素原子に、直接に結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15などが挙げられる。R15の意味は、上述した通りである。よって、置換アルキル基(b)における「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」には、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基等の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する基;置換されていてもよい芳香族炭化水素環基;置換されていてもよい芳香族複素環基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基;が含まれる。
【0104】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0105】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0106】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基の好ましい例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基が挙げられる。
【0107】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0108】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、等が挙げられる。
【0109】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0110】
置換アルキル基(b)が有しうる環状基以外の置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0111】
置換アルキル基(b)の具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0112】
【化9】
【0113】
特に、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される基であることが好ましい。また、特に、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-13)のいずれかで表される基であることが好ましい。下記式(i-1)~(i-13)で表される基は、置換基を有していてもよい。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0114】
【化10】
【0115】
更には、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-18)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-24)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。下記式(ii-1)~(ii-24)で表される基は、置換基を有していてもよい。下記の式において、Yの意味は、上述した通りである。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0116】
【化11】
【0117】
【化12】
【0118】
Arが式(II-2)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0119】
上述したものの中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;並びに、-G-Y-F;が好ましい。その中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;並びに、-G-Y-F;が特に好ましい。
【0120】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0121】
の好ましい例としては、(1)一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基、が挙げられる。この芳香族炭化水素環を有する炭化水素環基を、以下、適宜「(1)炭化水素環基」ということがある。(1)炭化水素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0122】
【化13】
【0123】
(1)炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。(1)炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基、が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
の別の好ましい例としては、(2)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。この芳香環を有する複素環基を、以下、適宜「(2)複素環基」ということがある。(2)複素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0125】
【化14】
【0126】
【化15】
【0127】
【化16】
【0128】
【化17】
【0129】
【化18】
【0130】
【化19】
【0131】
【化20】
【0132】
【化21】
【0133】
(2)複素環基は、置換基を有していてもよい。(2)複素環基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0134】
の更に別の好ましい例としては、(3)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「(3)置換アルキル基」ということがある。
【0135】
(3)置換アルキル基における「炭素原子数1~12のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0136】
(3)置換アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。(3)置換アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0137】
の更に別の好ましい例としては、(4)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルケニル基が挙げられる。この置換されたアルケニル基を、以下、適宜「(4)置換アルケニル基」ということがある。
【0138】
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~12のアルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0139】
(4)置換アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。(4)置換アルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0140】
の更に別の好ましい例としては、(5)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルキニル基が挙げられる。この置換されたアルキニル基を、以下、適宜「(5)置換アルキニル基」ということがある。
【0141】
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~12のアルキニル基」としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0142】
(5)置換アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。(5)置換アルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0143】
の好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0144】
【化22】
【0145】
の更に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0146】
【化23】
【0147】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0148】
【化24】
【0149】
上述したRの具体例は、更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0150】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0151】
の好ましい例としては、一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基が挙げられる。
また、Rの別の好ましい例としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。
【0152】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。
【0153】
【化25】
【0154】
式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基は、D~D以外に更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のチオアルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0155】
式(I)におけるArの好ましい例としては、下記の式(III-1)~式(III-7)で表される基が挙げられる。また、式(III-1)~式(III-7)で表される基は、置換基として炭素原子数1~6のアルキル基を有していてもよい。下記式中、*は、結合位置を表す。中でも、Arは、式(III-2)で表される基が好ましい。
【0156】
【化26】
【0157】
式(III-1)の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。下記式中、*は、結合位置を表す。
【0158】
【化27】
【0159】
【化28】
【0160】
式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0161】
式(I)において、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A、A、B及びBが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
【0162】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
【0163】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0164】
、A、B及びBにおける芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0165】
、A、B及びBにおける芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0166】
式(I)において、Y~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0167】
式(I)において、G及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
【0168】
及びGにおける炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0169】
及びGにおける炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
【0170】
式(I)において、P及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。P及びPにおける重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH=C(CH)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0171】
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【0172】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0173】
式(I)で表される液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。
【0174】
【化29】
【実施例
【0175】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0176】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0177】
〔参考例1:液晶化合物(A):液晶相及び相転移温度〕
前記式(A-1)に示す構造を有する重合性液晶化合物(以下において「液晶化合物(A-1)」という)及び前記式(A-2)に示す構造を有する重合性液晶化合物(以下において「液晶化合物(A-2)」という)のそれぞれについて、温度を昇温及び降温させ、液晶相を観察したところ、液晶化合物(A-1)は液晶相としてネマチック液晶相のみを呈しうる組成物であり、液晶化合物(A-N)として用いうることが分かった。一方液晶化合物(A-2)は、低温側液晶相としてのスメクチック液晶相及び高温側液晶相としてのネマチック液晶相を、昇温時及び降温時のいずれにおいても呈しうる化合物であり、液晶化合物(A-SmN)として用いうることが分かった。
【0178】
さらに、液晶化合物(A-2)を、示差走査熱量測定(DSC)により分析したところ、昇温においては、39.9℃、降温においては37.4℃においてピークが観察され、この温度においてスメクチック液晶相-ネマチック液晶相の相転移が起こっていることが分かった。
【0179】
〔参考例2:光学異方性層製造用基材〕
熱可塑性ノルボルネン樹脂のフィルムを延伸してフィルム配向規制力を付与し、光学異方性層製造用の基材を得た。
【0180】
〔参考例3〕
液晶化合物(液晶化合物(A-1)又は(A-2))19.42部、架橋剤(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;新中村化学社製「NKエステルA-DCP」)1.94部、界面活性剤(DIC社製「メガファックF-562」)0.06部、光重合開始剤(BASF社製「Irgacure OXE03」)0.85部、酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール;BHT)0.02部、及び、1,3-ジオキソランとシクロペンタノンの混合溶媒(1,3-ジオキソラン:シクロペンタノン=60:40(重量比))77.71部を混合して、液晶組成物(A-1)及び(A-2)を得た。
【0181】
(R3-1.A-1N(1))
液晶組成物(A-1)を、基材(参考例2にて製造したもの。以下においても同じ。)に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、基材から剥離し、光学異方性層(A-1N(1))を、厚さ2.5μmのフィルムとして得た。
【0182】
(R3-2.A-2N(1))
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、基材から剥離し、光学異方性層(A-2N(1))を、厚さ2.5μmのフィルムとして得た。
【0183】
(R3-3.A-2Sm(1))
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、30℃にてスメクチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、基材から剥離し、光学異方性層(A-2Sm(1))を、厚さ2.5μmのフィルムとして得た。
【0184】
光学異方性層(A-1N(1))、(A-2N(1))、(A-2Sm(1))のそれぞれについて、様々な波長における面内方向のレターデーションReを測定し、その後85℃のオーブン中に50時間置き、再びReを測定した。
波長590nmにおける、処理前のReの値Re0と、処理後のReの値Re1から、Reドロップの値ReD(%)を、式ReD=((Re1-Re0)/Re0)×100に基づいて計算した。
さらに、処理前後のRe(450)/Re(550)の値を計算した。結果を下記に示す。
【0185】
光学異方性層(A-1N(1)):Reドロップ-3.0%、Re(450)/Re(550)処理前0.83、処理後0.81
光学異方性層(A-2N(1)):Reドロップ-3.0%、Re(450)/Re(550)処理前0.83、処理後0.81
光学異方性層(A-2Sm(1)):Reドロップ+2.0%、Re(450)/Re(550)処理前0.71、処理後0.75
【0186】
これらの結果から、液晶化合物(A-2)から得られた光学異方性層については、ネマチック液晶相を呈した状態で固定化された場合には、負のReドロップ及びRe(450)/Re(550)の減少が発生し、スメクチック液晶相を呈した状態で固定化された場合には、正のReドロップ及びRe(450)/Re(550)の減少が発生し、従って、これらが打消し合うような構成を採用することにより、耐久性の高い光学異方性複層物を得ること可能であることが分かる。
【0187】
〔実施例1〕
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、30℃にてスメクチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2Sm(2)))の層構成を有する複層物E1-1を得た。光学異方性層(A-2Sm(2))の厚みは、1.27μmであった。光学異方性層(A-2Sm(2))のRe(590)は72.5nmであった。
【0188】
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2N(2)))の層構成を有する複層物E1-2を得た。光学異方性層(A-2N(2))の厚みは、1.26μmであった。光学異方性層(A-2N(2))のRe(590)は73.1nmであった。
【0189】
複層物E1-1の光学異方性層側の面を、粘着剤層(日東電工社製、商品名「CS98611US)、以下において同じ。)付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、ガラス板からそれ以外の層を剥離し、(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(2)))/(基材)の層構成を有する複層物E1-3を得た。
【0190】
複層物E1-2の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2N(2)))の層構成を有する複層物E1-4を得た。
【0191】
複層物E1-3の粘着剤層側の面を、複層物E1-4の光学異方性層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2N(2)))/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(2)))の層構成を有する、光学異方性複層物E1-5を得た。貼合に際しては、2つの光学異方性層の遅相軸方向が一致するよう、これらを揃えた。光学異方性複層物E1-5のRe(590)は、145.6nmであった(粘着剤層及びガラス板は、等方な層であり、光学異方性複層物の位相差の計算においては、粘着剤層及びガラス板の厚みは、厚みdに含めない。以下において同じ。)。光学異方性複層物E1-5のRe(450)/Re(550)は0.77であった。
【0192】
光学異方性複層物E1-5を、85℃のオーブン中に50時間置いて加熱した後、室温にて再びReを測定した。波長590nmにおけるReドロップの値ReD(%)を求めたところ、ReD(%)は-0.84%であった。加熱後のRe(450)/Re(550)は0.78であった。
【0193】
〔実施例2〕
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、30℃にてスメクチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2Sm(3)))の層構成を有する複層物E2-1を得た。光学異方性層(A-2Sm(3))の厚みは、1.28μmであった。光学異方性層(A-2Sm(3))のRe(590)は74.3nmであった。
【0194】
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2N(3)))の層構成を有する複層物E2-2を得た。光学異方性層(A-2N(3))の厚みは、1.22μmであった。光学異方性層(A-2N(3))のRe(590)は71.2nmであった。
【0195】
複層物E2-2の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、ガラス板からそれ以外の層を剥離し、(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2N(3)))/(基材)の層構成を有する複層物E2-3を得た。
【0196】
複層物E2-1の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(3)))の層構成を有する複層物E2-4を得た。
【0197】
複層物E2-3の粘着剤層側の面を、複層物E2-4の光学異方性層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(3)))/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2N(3)))の層構成を有する、光学異方性複層物E2-5を得た。貼合に際しては、2つの光学異方性層の遅相軸方向が一致するよう、これらを揃えた。光学異方性複層物E2-5のRe(590)は、145.5nmであった。光学異方性複層物E2-5のRe(450)/Re(550)は0.77であった。
【0198】
光学異方性複層物E2-5を、85℃のオーブン中に50時間置いて加熱した後、室温にて再びReを測定した。波長590nmにおけるReドロップの値ReD(%)を求めたところ、ReD(%)は-0.93%であった。加熱後のRe(450)/Re(550)は0.78であった。
【0199】
〔実施例3〕
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、30℃にてスメクチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2Sm(4)))の層構成を有する複層物E3-1を得た。光学異方性層(A-2Sm(4))の厚みは、1.23μmであった。光学異方性層(A-2Sm(4))のRe(590)は72.0nmであった。
【0200】
液晶組成物(A-1)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-1N(4)))の層構成を有する複層物E3-2を得た。光学異方性層(A-1N(4))の厚みは、1.25μmであった。光学異方性層(A-1N(4))のRe(590)は73.5nmであった。
【0201】
複層物E3-1の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、ガラス板からそれ以外の層を剥離し、(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(4)))/(基材)の層構成を有する複層物E3-3を得た。
【0202】
複層物E3-2の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-1N(4)))の層構成を有する複層物E3-4を得た。
【0203】
複層物E3-3の粘着剤層側の面を、複層物E3-4の光学異方性層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-1N(4)))/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(4)))の層構成を有する、光学異方性複層物E3-5を得た。貼合に際しては、2つの光学異方性層の遅相軸方向が一致するよう、これらを揃えた。光学異方性複層物E3-5のRe(590)は、145.5nmであった。光学異方性複層物E3-5のRe(450)/Re(550)は0.77であった。
【0204】
光学異方性複層物E3-5を、85℃のオーブン中に50時間置いて加熱した後、室温にて再びReを測定した。波長590nmにおけるReドロップの値ReD(%)を求めたところ、ReD(%)は-0.85%であった。加熱後のRe(450)/Re(550)は0.78であった。
【0205】
〔比較例1〕
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2N(5)))の層構成を有する複層物CE1-1を得た。光学異方性層(A-2N(5))の厚みは、2.49μmであった。光学異方性層(A-2N(5))のRe(590)は144.9nmであった。
【0206】
複層物CE1-1の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2N(5)))の層構成を有する複層物CE1-2を得た。複層物CE1-2のRe(450)/Re(550)は0.83であった。
【0207】
複層物CE1-2を、85℃のオーブン中に50時間置いて加熱した後、室温にて再びReを測定した。波長590nmにおけるReドロップの値ReD(%)を求めたところ、ReD(%)は-3.07%であった。加熱後のRe(450)/Re(550)は0.81であった。
【0208】
〔比較例2〕
液晶組成物(A-2)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、30℃にてスメクチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-2Sm(6)))の層構成を有する複層物CE2-1を得た。光学異方性層(A-2Sm(6))の厚みは、2.51μmであった。光学異方性層(A-2Sm(6))のRe(590)は144.7nmであった。
【0209】
複層物CE2-1の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-2Sm(6)))の層構成を有する複層物CE2-2を得た。複層物CE2-2のRe(450)/Re(550)は0.71であった。
【0210】
複層物CE2-2を、85℃のオーブン中に50時間置いて加熱した後、室温にて再びReを測定した。波長590nmにおけるReドロップの値ReD(%)を求めたところ、ReD(%)は2.03%であった。加熱後のRe(450)/Re(550)は0.75であった。
【0211】
〔比較例3〕
液晶組成物(A-1)を、基材に塗布し、溶媒を揮発させて、70℃にてネマチック液晶相に配向させ、液晶組成物の塗膜を形成した。この塗膜に、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射して、液晶組成物の塗膜を硬化させ、(基材)/(光学異方性層(A-1N(7)))の層構成を有する複層物CE3-1を得た。光学異方性層(A-1N(7))の厚みは、2.50μmであった。光学異方性層(A-1N(7))のRe(590)は145.4nmであった。
【0212】
複層物CE3-1の光学異方性層側の面を、粘着剤層付きガラス板の粘着剤層側の面と貼合し、基材を剥離し、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層(A-1N(7)))の層構成を有する複層物CE3-2を得た。複層物CE3-2のRe(450)/Re(550)は0.83であった。
【0213】
複層物CE3-2を、85℃のオーブン中に50時間置いて加熱した後、室温にて再びReを測定した。波長590nmにおけるReドロップの値ReD(%)を求めたところ、ReD(%)は-2.97%であった。加熱後のRe(450)/Re(550)は0.81であった。
【0214】
実施例及び比較例の結果を、表1にまとめて示す。
【0215】
【表1】
【0216】
層構成:ReD及びRe(450)/Re(550)測定対象の層構成。g:ガラス板、a:粘着剤層、A1N:液晶組成物(A-1)を用いて調製したネマチック光学異方性層、A2N:液晶組成物(A-2)を用いて調製したネマチック光学異方性層、A2Sm:液晶組成物(A-2)を用いて調製したスメクチック光学異方性層。
下側:ガラス板側を下側にした状態における複層物中の、2の光学異方性層のうち下側のもの。
上側:ガラス板側を下側にした状態における複層物中の、2の光学異方性層のうち上側のもの。
Re(450)/Re(550) 0h:加熱前のRe(450)/Re(550)。
Re(450)/Re(550) 50h:加熱後のRe(450)/Re(550)。
厚みの単位はμm。Reの単位はnm。ReDの単位は%。
【0217】
実施例の結果から明らかな通り、光学異方性層(Sm)及び光学異方性層(N)を備える本発明の光学異方性複層物は、Reドロップの打消しの効果を奏し、それにより、比較例の複層物に比べて、熱負荷に対する耐久性が高いものとすることができる。