(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】油分含有廃液からの油分回収方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B01D 11/04 20060101AFI20240402BHJP
B01D 3/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B01D11/04 C
B01D3/00 B
(21)【出願番号】P 2022087647
(22)【出願日】2022-05-30
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山田 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恒行
(72)【発明者】
【氏名】和田 敏
(72)【発明者】
【氏名】内田 大貴
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222476(JP,A)
【文献】特開2010-247050(JP,A)
【文献】特開2008-100166(JP,A)
【文献】特開2005-288201(JP,A)
【文献】特表2016-504288(JP,A)
【文献】特開昭61-157301(JP,A)
【文献】特開2018-062512(JP,A)
【文献】特開2007-054815(JP,A)
【文献】特開2010-240609(JP,A)
【文献】特開平04-197403(JP,A)
【文献】特開2006-102596(JP,A)
【文献】特開昭59-059787(JP,A)
【文献】特開2007-283224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00-8/00
B01D 11/00-12/00
B01B 1/00-1/08
C02F 1/26
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分含有廃液を溶媒で抽出処理することにより該油分含有廃液中の油分を該溶媒へ移行させる抽出工程と、該抽出した油分を含む溶媒と該廃液とを分離する分離工程と、分離された該油分を含む溶媒から油分を分離して回収する油分回収工程とを有し、該油分回収工程で油分が分離された溶媒を前記抽出工程で再利用する油分含有廃液からの油分回収方法であって、
前記油分含有廃液が、水性切削廃液、製紙又はパルプ工場から排出されるターペンチン油含有排水、食品排水のいずれかであり、
かつ
該油分含有廃液は、鉱物油、植物油のいずれかである油分を0.05~1重量%含有する油分含有廃液であり、
前記溶媒が、ノルマルヘキサンであることを特徴とする油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項2】
前記溶媒は回収対象油分より低い沸点を有しており、前記油分回収工程において、前記油分を含む溶媒から加温蒸留により前記油分を分離する請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項3】
前記加温蒸留による分離において、分離された前記溶媒または前記油分の有する熱を、熱交換器またはヒートポンプを用いて前記油分を含む溶媒の加温に利用する請求項2に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項4】
前記抽出工程に先立ち、前記油分含有廃液を濃縮する濃縮工程をさらに有する請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項5】
前記分離工程で分離された廃液中に残存する溶媒を分解または分離する溶媒処理工程をさらに有する請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項6】
前記分離工程で分離された廃液を排水処理工程に供する請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項7】
前記抽出工程に先立ち、前記油分含有廃液に塩、アルカリ又は酸を添加する添加工程をさらに有する請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項8】
前記分離工程で分離された油分を含む溶媒中の油分濃度が1重量%以上である請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項9】
前記油分回収工程で回収された油分を、前記油分含有廃液排出場所のエネルギー源として使用する請求項1に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【請求項10】
油分含有廃液を溶媒で抽出処理することにより該油分含有廃液中の油分を該溶媒へ移行させる抽出手段と、該抽出した油分を含む溶媒と該廃液とを分離する分離手段と、分離された該油分を含む溶媒から油分を分離して回収する油分回収手段と、該油分回収手段で油分が分離された溶媒を前記抽出手段へ送給する給液手段とを有する油分含有廃液からの油分回収装置であって、
前記油分含有廃液が、水性切削廃液、製紙又はパルプ工場から排出されるターペンチン油含有排水、食品排水のいずれかであり、
かつ
該油分含有廃液は、鉱物油、植物油のいずれかである油分を0.05~1重量%含有する油分含有廃液であり、
前記溶媒がノルマルヘキサンであることを特徴とする油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項11】
前記溶媒は回収対象油分より低い沸点を有しており、前記油分回収手段は、前記油分を含む溶媒から加温蒸留により前記油分を分離する手段である請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項12】
前記加温蒸留により分離された前記溶媒または前記油分の有する熱を用いて、前記油分を含む溶媒を加温するための熱交換器またはヒートポンプを有する請求項11に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項13】
前記抽出手段の前段に、前記油分含有廃液を濃縮する濃縮手段をさらに有する請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項14】
前記分離手段で分離された廃液中に残存する溶媒を分解または分離する溶媒処理手段をさらに有する請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項15】
前記分離手段で分離された廃液を排水処理手段に供する送液手段を更に有する請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項16】
前記抽出手段の前段に、前記油分含有廃液に塩、アルカリ又は酸を添加する添加手段をさらに有する請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項17】
前記分離手段で分離された油分を含む溶媒中の油分濃度が1重量%以上である請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【請求項18】
前記油分回収手段で回収された油分を、前記油分含有廃液排出場所へエネルギー源として供給する手段を更に有する請求項10に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分含有廃液からの油分回収方法及び装置に係り、特に溶媒抽出を利用した油分含有廃液からの油分回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油プロセス、鉄鋼圧延工程、紙パルプ製造、金属切削工程、食品製造、皮革製造、厨房、下水等から発生する濃厚な有機廃水である含油廃水の処理方法としては、凝集処理(特許文献1)や、活性炭処理と凝集処理と膜分離処理とを組み合わせた処理(特許文献2)、生物処理(特許文献3)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-96284号公報
【文献】特開平8-323350号公報
【文献】特開2009-39709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油分の凝集分離処理では条件が複雑であり、原水濃度変化に対して処理水濃度が不安定である。膜処理では処理水油分濃度は安定するが、膜が閉塞し易いという問題がある。生物処理では油分の低減はなされるものの、排水中の主たるBOD成分処理の活性低下を招くなどの問題がある。
【0005】
本発明は、油分含有廃液から油分を安定かつ効率的に分離して回収することができる油分含有廃液からの油分回収方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、溶媒抽出を利用することにより、油分含有廃液から油分を安定かつ効率的に分離して回収することができることを見出した。
本発明は、次を要旨とするものである。
【0007】
[1] 油分含有廃液を溶媒で抽出処理することにより該油分含有廃液中の油分を該溶媒へ移行させる抽出工程と、該抽出した油分を含む溶媒と該廃液とを分離する分離工程と、分離された該油分を含む溶媒から油分を分離して回収する油分回収工程とを有し、該油分回収工程で油分が分離された溶媒を前記抽出工程で再利用することを特徴とする油分含有廃液からの油分回収方法。
【0008】
[2] 前記溶媒は回収対象油分より低い沸点を有しており、前記油分回収工程において、前記油分を含む溶媒から加温蒸留により前記油分を分離する[1]に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0009】
[3] 前記加温蒸留による分離において、分離された前記溶媒または前記油分の有する熱を、熱交換器またはヒートポンプを用いて前記油分を含む溶媒の加温に利用する[2]に記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0010】
[4] 前記抽出工程に先立ち、前記油分含有廃液を濃縮する濃縮工程をさらに有する[1]~[3]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0011】
[5] 前記分離工程で分離された廃液中に残存する溶媒を分解または分離する溶媒処理工程をさらに有する[1]~[4]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0012】
[6] 前記分離工程で分離された廃液を排水処理工程に供する[1]~[5]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0013】
[7] 前記抽出工程に先立ち、前記油分含有廃液に塩、アルカリ又は酸を添加する添加工程をさらに有する[1]~[6]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0014】
[8] 前記分離工程で分離された油分を含む溶媒中の油分濃度が1重量%以上である[1]~[7]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0015】
[9] 前記油分含有廃液が、鉱物油を含有する自動車等の部品製造工場の廃液、ターペンチ油を含有する紙パ工場の廃液、動植物油を含有する製油工場、食品飲料工場又は飲食産業事業からの廃液のいずれかである[1]~[8]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0016】
[10] 前記油分含有廃液が、非極性溶媒に抽出された有機物含有廃液である[1]~[8]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0017】
[11] 前記油分回収工程で回収された油分を、前記油分含有廃液排出場所のエネルギー源として使用する[1]~[10]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収方法。
【0018】
[12] 油分含有廃液を溶媒で抽出処理することにより該油分含有廃液中の油分を該溶媒へ移行させる抽出手段と、該抽出した油分を含む溶媒と該廃液とを分離する分離手段と、分離された該油分を含む溶媒から油分を分離して回収する油分回収手段と、該油分回収手段で油分が分離された溶媒を前記抽出手段へ送給する給液手段とを有することを特徴とする油分含有廃液からの油分回収装置。
【0019】
[13] 前記溶媒は回収対象油分より低い沸点を有しており、前記油分回収手段は、前記油分を含む溶媒から加温蒸留により前記油分を分離する手段である[12]に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0020】
[14] 前記加温蒸留により分離された前記溶媒または前記油分の有する熱を用いて、前記油分を含む溶媒を加温するための熱交換器またはヒートポンプを有する[13]に記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0021】
[15] 前記抽出手段の前段に、前記油分含有廃液を濃縮する濃縮手段をさらに有する[12]~[14]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0022】
[16] 前記分離手段で分離された廃液中に残存する溶媒を分解または分離する溶媒処理手段をさらに有する[12]~[15]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0023】
[17] 前記分離手段で分離された廃液を排水処理手段に供する送液手段を更に有する[12]~[16]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0024】
[18] 前記抽出手段の前段に、前記油分含有廃液に塩、アルカリ又は酸を添加する添加手段をさらに有する[12]~[17]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0025】
[19] 前記分離手段で分離された油分を含む溶媒中の油分濃度が1重量%以上である[12]~[18]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0026】
[20] 前記油分含有廃液が、鉱物油を含有する自動車等の部品製造工場の廃液、ターペンチ油を含有する紙パ工場の廃液、動植物油を含有する製油工場、食品飲料工場又は飲食産業事業からの廃液のいずれかである[12]~[19]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0027】
[21] 前記油分含有廃液が、非極性溶媒に抽出された有機物含有廃液である[12]~[19]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【0028】
[22] 前記油分回収手段で回収された油分を、前記油分含有廃液排出場所へエネルギー源として供給する手段を更に有する[12]~[21]のいずれかに記載の油分含有廃液からの油分回収装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、溶媒抽出を利用することにより、油分含有廃液から油分を安定かつ効率的に分離して回収することができる。また、本発明では、抽出に用いた溶媒を再利用するので、処理コストも安価である。
本発明によれば、排水処理を阻害する油分含有廃液中の油分を大幅に低減すると共に、高純度の油分を回収してこれを再利用することができると共に、従来、産業廃棄物として処分されていた油分含有廃液を排水処理に適用することが可能となり、その工業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油分含有廃液からの油分回収方法及び装置を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の油分含有廃液からの油分回収方法及び装置の実施の形態を
図1を参照して説明するが、本発明は何ら以下のものに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態に係る油分含有廃液からの油分回収方法及び装置を示すフロー図である。
なお、本発明において処理対象となる油分含有廃液としては、石油プロセス、鉄鋼圧延工程、紙パルプ製造、金属切削工程、食品製造、皮革製造、厨房、下水等から発生する濃厚な油分含有廃液、具体的には、水性切削液廃液、製紙やパルプ工場から排出されるターペンチ油含有排水、食品排水が挙げられるが、何らこれらに限定されない。また、油分含有廃液中の油分についても鉱物油、植物油のいずれでもよい。これらの油分含有廃液の油分濃度は、通常0.05~1重量%程度である。
油分含有廃液としては、より具体的には、鉱物油を含有する自動車等の部品製造工場の廃液、ターペンチ油を含有する紙パ工場の廃液、動植物油を含有する製油工場、食品飲料工場又は飲食産業事業からの廃液が挙げられる。
また、油分含有廃液は、非極性溶媒に抽出された有機物含有廃液であってもよい。
【0033】
図1において、油分含有廃液は、配管1を介して膜分離装置2に導入され、膜分離により濃縮される。膜を透過した透過水の一部は、配管4Aから膜分離装置2に返送される。透過水の残部は、配管4Bを介して排水処理設備(図示せず)へ送水され、処理される。
【0034】
膜分離装置2の濃縮水及び抽出用溶媒は、それぞれ配管5及び配管7を介して抽出装置6の混合部6aに供給される。
【0035】
混合部6aに供給された濃縮水と抽出用溶媒は、混合部6aにて混合され、濃縮水中の油分を溶媒中に取り込む。即ち、濃縮水中の油分が抽出用溶媒に溶解する。油分が溶解した溶媒と油分が抽出された濃縮水(残液)は、分離部6bで分離され、油分が溶解した溶媒が配管8を介して熱交換器9の冷熱源流路に供給され、被冷却流体流路を流れる溶媒蒸気と熱交換し、昇温して配管10より蒸留塔11に導入される。蒸留塔11では低沸点成分である溶媒が塔頂側へ流れ、高沸点成分である油分が塔底側へ流れる。溶媒蒸気は、蒸留塔11から配管12を介して熱交換器9の被冷却流体流路に供給され、冷熱源流路を流れる抽出装置流出液(低温液)と熱交換して冷却され、液状溶媒となる。この液状溶媒が配管7によって抽出装置6の混合部6aに送液され、抽出用溶媒として再利用される。
【0036】
蒸留塔11の塔底からは、分離された油分が配管14を介して取り出される。この油分は、回収油として液体燃料又は助燃剤などとして、発電、その他の各種用途に利用される。なお、必要に応じ、回収油に対して更に他の処理が施されてもよい。
【0037】
前記抽出装置6の分離部6bからは、油分が抽出された残液が配管20を介して取り出され、膜分離装置21に送液され、膜分離により、該残液中の溶媒成分(残存溶媒)の濃縮が行われる。
【0038】
膜分離装置21の膜21aを透過した透過水は、配管22を介して処理水として取り出される。膜分離装置21の濃縮水は、配管23を介して排出され、廃液処理工程(図示せず)へ送られて、濃縮処理又は排水処理等に供される。
【0039】
上記実施の形態では、油分含有廃液を膜分離装置2で膜分離処理して油分濃度を高めるようにしているが、容易に油分と水分が分離する油成分については比重差やマイクロエアーを利用した油水分離機で分離処理を施し、その後、直ちに又は必要に応じ膜分離処理などの分離処理を行ってから、抽出装置6に送液してもよい。
抽出装置6などの抽出装置は連続式、バッチ式のいずれでもよい。工業的規模で用いられる連続液液抽出装置としては、ミキサーセトラ型、スプレー塔、多孔板塔(目皿塔)などがあるが、これら又はそれ以外のいずれでもよい。
【0040】
抽出に用いる溶媒は、抽出対象油との相性および溶媒再生の総合的観点から決定するのが好ましい。
【0041】
抽出により油分を含む溶媒から加温蒸留により油分を分離する場合は、該油分よりも沸点の低い溶媒が用いられる。この場合、抽出溶媒は分離対象油分の沸点(250~600℃程度)よりも沸点が低いものを用いることが必要であり、排水を直接蒸留するよりエネルギー的に低い必要があるため、100℃以下である必要がある。したがって、抽出に用いる溶媒の沸点は40~90℃程度であることが好ましい。
【0042】
抽出に用いる溶媒としては、具体的にはノルマルヘキサン、ヘプタン、ペンタン、オクタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1-オクタノール、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、アセトニトリルなどが挙げられるが、何らこれらの溶媒に限定されるものではない。
【0043】
図1では、加温蒸留により、油分を含む溶媒から油分を分離することで、溶媒を再生している。溶媒の再生には、このように油分と溶媒との沸点差を利用した加温蒸留が好適である。加温蒸留の方式としては、回分式蒸留と連続式蒸留のいずれも適用可能であり、フラッシュ蒸留、棚段塔、充填塔などの方式が適用可能である。
【0044】
本発明において、抽出に供する油分含有廃液中の油分濃度としては、0.05~5重量%程度(例えば0.1重量%以上)であることが、抽出効率の観点から好ましい。従って、油分含有廃液の油分濃度が上記範囲よりも低い場合には、抽出処理に先立ち、重力分離、加圧浮上や膜分離装置、その他の濃縮手段により濃縮するのが好ましい。なお、油分含有廃液の油分濃度が上記範囲を超える場合でも同法の適用は可能である。
【0045】
また、油分含有廃液からの油分の分離を促進するために、抽出処理に先立ち、油分含有廃液に塩化ナトリウムなどの塩や、アルカリ又は酸を添加してもよい。
たとえば、塩化ナトリウムであれば、0.05~1重量%程度の油分を含む油分含有廃液に0.1~30重量%程度添加、またはpHを2程度まで低下させることで、油分の分離効率を高めることができる。
【0046】
本発明においては、このようにして油分含有廃液から油分を抽出した後の溶媒の油分濃度としては、1重量%以上、特に4重量%以上であることが好ましい。例えば、ノルマルヘキサンを用いて抽出を行った場合、抽出後のノルマルヘキサンの油分濃度は2~10重量%程度であることが、油分分離効率、溶媒再生における熱エネルギー効率の観点から好ましい。
【0047】
図1では、膜分離装置21により、油分分離後の廃液(残液)中の残存物質を逆浸透膜処理を適用して分離しているが、そのうち溶媒成分の分離には活性炭などの吸着処理を適用してもよい。また、残存溶媒は、酸化剤添加により分解処理してもよい。
【実施例】
【0048】
以下に実施例に代わる実験例を挙げて本発明による効果を示す。
【0049】
[実験例1]
油分濃度:3g/L(ノルマルヘキサン抽出物濃度)の鉱物油含有廃水から油分をノルマルヘキサンで抽出した。なお、抽出処理に先立ち、廃液に食塩を30重量%添加した場合と、添加しない場合との2例について試験した。
抽出には試験管を用い、条件は次の通りとした。
A:廃液への食塩添加なし
B:廃液への食塩添加あり(NaCl濃度:30重量%)
廃液:ノルマルヘキサン容積比=10:1(A、B共通)
操作方法(A,B共通):
試験管攪拌混合(100回縦往復)→静置分離(30分)→上澄み採取
採取した上澄み(油分含有ノルマルヘキサン)中の油分濃度は、以下の通りであった。
A=0.5重量%
B=4.5重量%
この試験より、油分含有廃液より、溶媒抽出により油分を十分に分離回収できること、及び油分含有廃液に食塩を添加することにより、回収効率が向上することが認められた。
【0050】
[実験例2]
実験例1のBの抽出実験で得られた油分濃度4.5重量%のノルマルヘキサンを開放容器に10g入れホットプレートにて、80℃で1時間加温後に乾燥させたところ、残留油分として0.45gを得ることができ、加温蒸留により、油分を含む溶媒から油分を効率的に分離することができることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
2,21 膜分離装置
6 抽出装置
11 蒸留塔