IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

特許7464123遊走性算出装置、遊走性評価方法およびコンピュータに遊走性評価方法を実行させるコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】遊走性算出装置、遊走性評価方法およびコンピュータに遊走性評価方法を実行させるコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240402BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240402BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240402BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/34 A
G06T7/00 630
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022535002
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023586
(87)【国際公開番号】W WO2022009663
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020116664
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高崎 哲臣
(72)【発明者】
【氏名】市橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】紀伊 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 純矢
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/066684(WO,A1)
【文献】特開2010-119314(JP,A)
【文献】国際公開第2014/126125(WO,A1)
【文献】特開2009-022276(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167398(WO,A1)
【文献】特開2017-093467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
G06T
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の観察対象時系列で複数回撮像して得られたそれぞれの画像に基づいて、前記観察対象の領域内に基準位置を設定し、それぞれの前記基準位置を時系列に線分で結ぶことにより、前記観察対象の移動の軌跡を生成する軌跡生成ステップと、
前記観察対象の移動の軌跡上において、前記軌跡の始点と最も遠い最遠点との距離である到達距離を、前記観察対象の遊走性尺度として算出する遊走性算出ステップと、
前記観察対象の前記遊走性尺度に基づいてあらかじめ定められた閾値を基準に判断することで前記観察対象の遊走性の程度を評価する遊走性評価ステップと、を備える、
遊走性評価方法。
【請求項2】
前記遊走性算出ステップは前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の軌跡の始点と前記観察対象の移動の軌跡を構成する各前記基準位置との間のそれぞれの距離を算出することで、前記始点から前記最遠点までを直線で結んだ距離である前記到達距離を算出する到達距離算出ステップを含み、
前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記閾値である第一閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択するステップを含む、
請求項1に記載の遊走性評価方法。
【請求項3】
前記遊走性算出ステップは前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、さらに、前記観察対象の始点から終点までの軌跡の全長である総移動距離算出するステップを含み、
前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記第一閾値以上のもの、かつ前記総移動距離前記閾値である第二閾値以上であるものを遊走性が高いものとして選択するステップを含む、
請求項2に記載の遊走性評価方法。
【請求項4】
前記遊走性算出ステップは、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、さらに、前記観察対象の始点から終点までの軌跡の全長である総移動距離を算出し、前記観察対象の始点から終点までの直線距離である始点終点間距離を前記総移動距離で除して算出した前記軌跡の直線性を算出するステップを含み、
前記遊走性評価ステップは、さらに、複数の前記観察対象のうち、前記直線性前記閾値である第三閾値以上であるものを遊走性が高いものとして選択するステップを含む、
請求項1または2に記載の遊走性評価方法。
【請求項5】
前記軌跡生成ステップは、前記観察対象の領域の重心、中心、端部、前記観察対象に蛍光標識したタンパク質が存在する位置、の少なくとも一つを前記基準位置として設定することにより、前記基準位置を時系列に線分で結んで前記観察対象の前記軌跡を生成するステップを含む、
請求項1または2に記載の遊走性評価方法。
【請求項6】
命令を内部に有するコンピュータプログラムであって、
前記命令は、プロセッサまたはプログラム可能回路に実行されると、前記プロセッサまたは前記プログラム可能回路に、
生体の観察対象時系列で複数回撮像することにより複数の画像を取得するステップと、
前記複数の画像に基づいて、前記観察対象のそれぞれの領域内に基準位置を設定し、それぞれの前記基準位置を時系列に線分で結ぶことにより、移動の軌跡を生成する軌跡生成ステップと、
前記観察対象の移動の軌跡上において、前記軌跡の始点と最も遠い最遠点との距離である到達距離を、前記観察対象遊走性尺度として算出する遊走性算出ステップと、
前記観察対象の前記遊走性尺度に基づいて、あらかじめ定められた閾値を基準に判断することで前記観察対象の遊走性の程度を評価する遊走性評価ステップと、
を含む動作を実行させる、
コンピュータプログラム。
【請求項7】
前記遊走性算出ステップは前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の軌跡の始点と前記観察対象の移動の軌跡を構成する各前記基準位置との間のそれぞれの距離を算出することで、前記始点から前記最遠点までを直線で結んだ距離である前記到達距離を算出する到達距離算出ステップを含み、
前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記閾値である第一閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択するステップを含む、
請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記遊走性算出ステップは前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、さらに、前記観察対象の総移動距離を算出するステップを含み、
前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記第一閾値以上のもの、かつ前記総移動距離前記閾値である第二閾値以上であるものを遊走性が高いものとして選択するステップを含む、
請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記遊走性算出ステップは前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、さらに、前記観察対象の始点から終点までの軌跡の全長である総移動距離を算出し前記観察対象の始点から終点までの直線距離である始点終点間距離を前記総移動距離で除して算出した前記移動の軌跡の直線性を算出するステップを含み、
前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記第一閾値以上かつ前記直線性前記閾値である第三閾値以上であるものを、遊走性が高いものとして選択するステップを含む、
請求項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
生体の観察対象時系列で複数回撮像して得られた、それぞれの画像に基づいて、前記観察対象の領域内に基準位置を設定し、それぞれの前記基準位置を時系列に線分で結ぶことにより、前記観察対象の移動の軌跡を生成する軌跡生成部と、
前記観察対象の移動の軌跡上において、前記軌跡の始点と最も遠い最遠点との距離である到達距離を、前記観察対象の遊走性尺度として算出する遊走性算出部と、
を備える、遊走性算出装置。
【請求項11】
前記遊走性算出装置は、前記観察対象の前記遊走性尺度に基づいて、前記観察対象が、あらかじめ定められた閾値を基準に判断することで前記観察対象の遊走性の程度評価する遊走性評価部を備える、
請求項1に記載の遊走性算出装置。
【請求項12】
前記遊走性算出部は前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の軌跡の始点と前記観察対象の移動の軌跡を構成する各前記基準位置との間のぞれぞれの距離を算出することで、前記始点から前記最遠点までを直線で結んだ距離である前記到達距離を算出し、
前記遊走性評価部は、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離前記閾値である第一閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択する、
請求項1に記載の遊走性算出装置。
【請求項13】
前記遊走性算出部は前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、さらに、前記観察対象の総移動距離算出し、
前記遊走性評価部は、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記第一閾値以上のもの、かつ前記総移動距離前記閾値である第二閾値以上であるものを遊走性が高いものとして選択する、
請求項1に記載の遊走性算出装置。
【請求項14】
前記遊走性算出部は前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、さらに、前記観察対象の始点から終点までの軌跡の全長である総移動距離を算出し、前記観察対象の始点から終点までの直線距離である始点終点間距離を前記総移動距離で除して算出した前記移動の前記軌跡の直線性を算出し、
前記遊走性評価部は、複数の前記観察対象のうち、前記到達距離が前記第一閾値以上かつ前記直線性前記閾値である第三閾値以上であるものを、遊走性が高いものとして選択する、
請求項12に記載の遊走性算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊走性算出装置、遊走性評価方法およびコンピュータに遊走性評価方法を実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の遊走とは、細胞がある場所から別の場所に移動することをいう。細胞の遊走は、創傷治癒、細胞の分化、胚発生および腫瘍の転移において重要な役割を果たしている。
【0003】
細胞の遊走を観察する方法としては、スクラッチアッセイが知られている。スクラッチアッセイではスクラッチした領域を経時的に観察することができる。特許文献1には、細胞の遊走試験装置が開示されている。
[特許文献1]特許第6035844号公報
【一般的開示】
【0004】
本発明の第1の態様においては、遊走性評価方法を提供する。前記遊走性評価方法は、生体の観察対象の観察画像を時系列で複数回撮像して得られた、前記観察対象の複数の画像に基づいて、前記観察対象の移動の軌跡を生成する軌跡生成ステップを備えてよい。前記遊走性評価方法は、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象が一定の方向に遊走する程度を示す遊走性尺度を算出する遊走性算出ステップを備えてよい。前記遊走性評価方法は、前記観察対象の前記遊走性尺度に基づいて、前記観察対象が、あらかじめ定められた条件を満たすか否かを評価する遊走性評価ステップを備えてよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、前記遊走性評価方法の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の軌跡の始点から終点までの直線距離である始点終点間距離を算出するステップを含んでよい。前記遊走性評価方法の前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記始点終点間距離が閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択するステップを含んでよい。
【0006】
本発明の第3の態様においては、前記遊走性評価方法の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の総移動距離、および/または、前記移動の軌跡の直線性を算出するステップを含んでよい。前記遊走性評価方法の前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、総移動距離が閾値以上かつ直線性が閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択するステップを含んでよい。
【0007】
本発明の第4の態様においては、前記遊走性評価方法の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡における始点と前記始点から最も遠い最遠点との到達距離を算出するステップを含んでよい。前記遊走性評価方法の前記遊走性評価ステップは、前記到達距離が閾値以下である前記観察対象を、遊走性が高いものとして選択しないステップを含んでよい。
【0008】
本発明の第5の態様においては、前記遊走性評価方法の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の速さを算出するステップを含んでよい。前記遊走性評価方法の前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記観察対象の移動の速さが閾値以上のものを、遊走性が高いものとして選択するステップを含んでよい。
【0009】
また、本発明の第6の態様においては、命令を内部に有するコンピュータプログラムを提供する。前記命令は、プロセッサまたはプログラム可能回路に実行されると、前記プロセッサまたは前記プログラム可能回路に、生体の観察対象の観察画像を時系列で複数回撮像して得られた前記観察対象の複数の画像を取得するステップを備えてよい。前記命令は、前記複数の画像に基づいて、前記観察対象の移動の軌跡を生成する軌跡生成ステップを備えてよい。前記命令は、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象が一定の方向に遊走する程度を示す遊走性尺度を算出する遊走性算出ステップを備えてよい。前記命令は、前記観察対象の前記遊走性尺度に基づいて、前記観察対象が、あらかじめ定められた条件を満たすか否かを評価する遊走性評価ステップを備えてよい。
【0010】
本発明の第7の態様においては、前記命令の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の軌跡の始点から終点までの直線距離である始点終点間距離を算出するステップを含んでよい。前記命令の前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記始点終点間距離が閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択するステップを含んでよい。
【0011】
本発明の第8の態様においては、前記命令の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の総移動距離、および/または、前記移動の軌跡の直線性を算出するステップを含んでよい。前記命令の前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、総移動距離が閾値以上かつ直線性が閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択するステップを含んでよい。
【0012】
本発明の第9の態様においては、前記命令の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡における始点と前記始点から最も遠い最遠点との到達距離を算出するステップを含んでよい。前記命令の前記遊走性評価ステップは、前記到達距離が閾値以下である前記観察対象を、遊走性が高いものとして選択しないステップを含んでよい。
【0013】
本発明の第10の態様においては、前記命令の前記遊走性算出ステップは、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の速さを算出するステップを含んでよい。前記命令の前記遊走性評価ステップは、複数の前記観察対象のうち、前記観察対象の移動の速さが閾値以上のものを、遊走性が高いものとして選択するステップを含んでよい。
【0014】
また、本発明の第11の態様においては、遊走性算出装置を提供する。前記遊走性算出装置は、生体の観察対象の観察画像を時系列で複数回撮像して得られた、前記観察対象の複数の画像に基づいて、前記観察対象の移動の軌跡を生成する軌跡生成部を備えてよい。前記遊走性算出装置は、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象が一定の方向に遊走する程度を示す遊走性尺度を算出する遊走性算出部を備えてよい。
【0015】
本発明の第12の態様においては、前記遊走性算出装置は、前記観察対象の前記遊走性尺度に基づいて、前記観察対象が、あらかじめ定められた条件を満たすか否かを評価する遊走性評価部を備えてよい。
【0016】
本発明の第13の態様においては、前記遊走性算出装置の前記遊走性算出部は、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の軌跡の始点から終点までの直線距離である始点終点間距離を算出してよい。前記遊走性算出装置の前記遊走性評価部は、複数の前記観察対象のうち、前記始点終点間距離が閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択してよい。
【0017】
本発明の第14の態様においては、前記遊走性算出装置の前記遊走性算出部は、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡に基づいて、前記観察対象の総移動距離、および/または、前記移動の軌跡の直線性を算出してよい。前記遊走性算出装置の前記遊走性評価部は、複数の前記観察対象のうち、総移動距離が閾値以上かつ直線性が閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択してよい。
【0018】
本発明の第15の態様においては、前記遊走性算出装置の前記遊走性算出部は、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の軌跡における始点と前記始点から最も遠い最遠点との到達距離を算出してよい。前記遊走性算出装置の前記遊走性評価部は、前記到達距離が閾値以下である前記観察対象を、遊走性が高いものとして選択しなくてよい。
【0019】
本発明の第16の態様においては、前記遊走性算出装置の前記遊走性算出部は、前記遊走性尺度の少なくとも一部として、前記観察対象の移動の速さを算出してよい。前記遊走性算出装置の前記遊走性評価部は、複数の前記観察対象のうち、前記観察対象の移動の速さが閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択してよい。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態における、遊走性評価装置の装置構成の一例を示す。
図2】本実施形態における、遊走性算出装置の具体的な構成の一例を示す。
図3】本実施形態の遊走性評価方法のフローの一例を示す。
図4】本実施形態における、S210の観察対象の複数の画像を生成するフローの一例を示す。
図5】本実施形態における、遊走性評価装置の出力部に表示されるタイムラプス撮像の実施経過確認用画面の一例を示す。
図6】本実施形態における、S220の観察対象の移動の軌跡を生成するフローの一例を示す。
図7A】本実施形態における、S222の観察対象の基準位置の定義の一例である。
図7B】本実施形態における、S222の観察対象の基準位置の定義の一例である。
図7C】本実施形態における、S222の観察対象の基準位置の定義の一例である。
図8】本実施形態における、S223の観察対象の軌跡を生成して出力する一例である。
図9A】本実施形態における、2つの観察対象の移動の軌跡の一例である。
図9B図9Aに示す2つの観察対象の移動の軌跡をグラフ化した一例である。
図10】本実施形態における、S240の観察対象の遊走性尺度を算出するフローの一例である。
図11】本実施形態における、S250の観察対象の遊走性を評価して遊走性の高いものを選択するフローの一例である。
図12】本実施形態における、S252の総移動距離の閾値に基づいて観察対象を評価するフローの一例である。
図13】本実施形態における、S252の直線性の閾値に基づいて観察対象を評価するフローの一例である。
図14】本実施形態における、S252の総移動距離および直線性の閾値に基づいて観察対象を評価するフローの一例である。
図15】本実施形態における、S222の観察対象の基準位置の定義の変形例である。
図16】本実施形態における、S240の観察対象の遊走性尺度を算出するフローの変形例である。
図17】本実施形態における、S246の到達距離について説明する図である。
図18】本実施形態における、S252の観察対象を評価するフローの変形例である。
図19】本実施形態における、S240の観察対象の遊走性尺度を算出するフローの他の変形例である。
図20】本実施形態における、S252の観察対象を評価するフローの変形例である。
図21】コンピュータのハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本実施形態における、遊走性評価装置の装置構成の一例を示す。本願発明に係る遊走性評価装置1は、観察対象の偽の移動の影響を排除し、観察対象の実際の移動に基づいて観察対象の遊走性を評価する。遊走性評価装置1は、撮像装置10と、遊走性算出装置170と、出力部160と、入力部180とを備える。
【0024】
撮像装置10は、生体の観察対象を撮像し、画像を生成する装置である。撮像装置10は、生体の観察対象の観察画像を時系列で複数回撮像して、観察対象の複数の画像を生成する。撮像装置10は、顕微鏡部150と、カメラ300と、透過照明部40と、励起用光源70と、光ファイバ7とを有する。
【0025】
顕微鏡部150は、生体の観察対象を顕微鏡を用いて拡大して観察するための装置である。生体の観察対象は、細胞であってよい。また、生体の観察対象は、細胞以外の移動可能な微小な生体であってもよい。一例として、生体の観察対象は、微生物、菌類、藻類、生体組織などであってもよい。顕微鏡部150には、ステージ23と、対物レンズ部27と、蛍光フィルタ部34と、結像レンズ部38と、偏光ミラー452と、フィールドレンズ411と、コレクタレンズ41とを備える。
【0026】
ステージ23には、チャンバ100が載置される。チャンバ100は透明な培養容器20を有する。培養容器20には培地が満たされており、培地中に細胞が培養されている。蛍光画像を観察するために、細胞は、1種類または2種類以上の蛍光物質で標識されていてよい。チャンバ100の底面の一部aと、チャンバ100の上面の一部bとはそれぞれ透明になっていてよい。チャンバ100の上面は開放されていてもよいし、透明なふたで覆われていてもよい。チャンバ100の上面または底面が透明であったり、チャンバ100の上面が開放されるか、透明なふたで覆われたりすることで、生体の観察対象を観察するのに適した培養環境を提供することができる。
【0027】
対物レンズ部27は、図1のx軸方向(紙面に垂直な方向)に複数の対物レンズを備える。対物レンズ部27をx軸方向に動かすことにより、撮像装置10の光路に配置される対物レンズが切り替えられる。これにより、対物レンズの種類および倍率を切り替えることができる。
【0028】
蛍光フィルタ部34は、図1のx軸方向に複数の種類のフィルタブロックを備える。蛍光フィルタ部34をx軸方向に動かすことにより、撮像装置10の光路に配置されるフィルタブロックが切り替えられる。
【0029】
透過照明部40は、観察対象を位相差観察する場合に用いる光源ユニットである。透過照明部40は、透過照明用光源47と、フィールドレンズ44と、偏光ミラー45とを備える。透過照明部40は、観察対象を透過する光を当てる。
【0030】
励起用光源70は、観察対象を蛍光観察する場合に用いる光源である。励起用光源70は、顕微鏡部150を介して、観察対象に反射させる光を当てる。
【0031】
光ファイバ7は、励起用光源70から射出した光を顕微鏡部150に導入する部品である。
【0032】
遊走性算出装置170は、撮像装置10と接続され、撮像装置10を制御する。遊走性算出装置170は、撮像装置10の光路に配置される対物レンズ部27の対物レンズの種類および/または蛍光フィルタ部34のフィルタブロックの種類との組み合わせを切り替える。例えば、位相差観察と蛍光観察は、光路に配置されるフィルタブロックの種類と対物レンズの種類の双方が異なる。また、2種対の蛍光観察は、光路に配置されるフィルタブロックの種類のみが異なる。また、位相差観察と蛍光観察は、使用する光源(透過照明部40および励起用光源70)も異なる。このため、遊走性算出装置170の内部(例えば、後述する撮像装置制御部171)は、位相差観察および1種類または2種類以上の蛍光観察のいずれの観察を行うかに応じて、フィルタブロック、対物レンズ、および光源の1つ以上を切り替えるものであってよい。
【0033】
位相差観察を行う場合、遊走性算出装置170は、透過照明部40の光路を有効にするために、透過照明用光源47をオンにし、励起用光源70をオフにする。位相差観察を行う場合、透過照明用光源47から射出した光は、フィールドレンズ44、偏光ミラー45、およびチャンバ100の上部bを介して、培養容器20の観察ポイントcを照明する。観察ポイントcを透過した光は、培養容器20の底面、チャンバ100の底部a、対物レンズ部27、蛍光フィルタ部34、および結像レンズ部38を介して、カメラ300の受光面に達する。このとき、培養容器20の観察ポイントcにおける位相差像がカメラ300に形成される。カメラ300は位相差像を撮像し、画像を生成する。生成された画像のデータは、遊走性算出装置170の内部(例えば、後述する記録部190)に記録され、および/または、出力部160に出力されてよい。
【0034】
蛍光観察を行う場合、遊走性算出装置170は、励起用光源70の光路を有効にするために、励起用光源70をオンにし、透過照明用光源47をオフにする。蛍光観察を行う場合、励起用光源70から射出した光は、光ファイバ7、コレクタレンズ41、フィールドレンズ411、偏光ミラー452、蛍光フィルタ部34、対物レンズ部27、チャンバ100の底部a、および培養容器20の底面を介して、培養容器20の観察ポイントcを照明する。培養容器20で培養されている細胞が蛍光標識されている場合、観察ポイントcにある細胞の蛍光物質は励起され、蛍光を発する。細胞から発せられた蛍光は、培養容器20の底面、チャンバ100の底部a、対物レンズ部27、蛍光フィルタ部34、および結像レンズ部38を介して、カメラ300の受光面に達する。このとき、培養容器20の観察ポイントcにおける蛍光像がカメラ300に形成される。カメラ300は蛍光像を撮像し、画像を生成する。生成された画像のデータは、遊走性算出装置170の内部(例えば、後述する記録部190)に記録され、および/または、出力部160に出力されてよい。
【0035】
カメラ300は、撮像センサー(図示せず)を有する。カメラ300は、冷却カメラであってもよい。冷却カメラは、撮像センサーを冷却することによって、熱によって発生するノイズを抑えることができるカメラである。撮像センサーは、CMOSイメージセンサー(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCDイメージセンサー(Charge Coupled Device)であってよい。また、カメラ300による撮像のフォーカスを合わせるため、遊走性算出装置170は、ステージ23のx座標およびy座標、ならびに対物レンズ部27のz座標を制御する。また、カメラ300は、撮像装置10とは異なる筐体に収められてもよい。
【0036】
チャンバ100には、シリコンチューブを介して加湿器(図示せず)が接続されてよい。加湿器が接続されることにより、遊走性算出装置170は、チャンバ100の内部の湿度および炭酸ガス濃度を、細胞の培養に適した値の近傍に制御することができる。また、チャンバ100には、熱交換機(図示せず)が備えられる。チャンバ100に熱交換機が備えられることで、チャンバ100の内部の温度を、細胞の培養に適した値の近傍に制御することができる。チャンバ100の内部の湿度、炭酸ガス濃度、および温度は、センサ(図示せず)により測定される。測定結果は遊走性算出装置170に送られる。
【0037】
遊走性算出装置170は、撮像装置10の制御に加えて、撮像装置10が撮像した観察対象の複数の画像を撮像装置10から受信し、複数の画像に基づいて、観察対象の移動の軌跡を生成し、軌跡に基づいて、観察対象が一定の方向に遊走する程度を示す遊走性尺度を算出する。遊走性算出装置170の構成については後述する。
【0038】
出力部160は、遊走性算出装置170の処理結果を出力する。例えば、出力部160は、観察対象の遊走性を評価した結果を出力する。例えば、出力部160は、遊走性算出装置170に接続されたモニターである。
【0039】
入力部180は、遊走性算出装置170に観察者からの指示やデータなどを入力する。例えば、入力部180は、観察者からの観察対象を撮像する条件に関する指示を入力する。また、入力部180は、観察者からの遊走性尺度の閾値を入力する。例えば、入力部180は、遊走性算出装置170に接続されたキーボードまたはマウスである。
【0040】
図2は、本実施形態における、遊走性算出装置170の具体的な構成の一例を示す。遊走性算出装置170は、撮像装置制御部171と、記録部190と、軌跡生成部400と、遊走性算出部500と、遊走性評価部600とを有する。記録部190は、メモリ、内蔵ハードディスクドライブ、または外部の記録媒体であってよいが、これらに限らない。遊走性算出装置170は、中央演算処理装置(CPU)を有し、当該CPUが記録部190に記録されたコンピュータプログラムを実行することにより撮像装置制御部171などを実現する。
【0041】
撮像装置制御部171は、図1において説明した対物レンズ部27、蛍光フィルタ部34、透過照明部40、励起用光源70、およびカメラ300などの制御を行う。例えば、観察対象のタイムラプス撮像条件が入力部180に入力されると、撮像装置制御部171は、入力された撮像条件にしたがって、顕微鏡部150にある対物レンズ部27の対物レンズの種類の切り替え、透過照明用光源47と励起用光源70との切り替え、蛍光フィルタ部34の蛍光フィルタの種類の切り替え、ステージ23の位置および対物レンズ部27の対物レンズの高さのうち、撮像ごとに必要な調整を行う。撮像装置制御部171が必要な調整を行った後で、カメラ300は観察対象の撮像を行い、観察対象の画像を生成する。カメラ300は、生成した画像のデータを、軌跡生成部400に送る。また、生成された画像のデータは、記録部190に記録され、および/または、出力部160に出力されてよい。
【0042】
軌跡生成部400は、撮像装置10が撮像した画像から観察対象の移動の軌跡を生成する。軌跡を生成する方法の詳細については後述する。
【0043】
遊走性算出部500は、生成された軌跡に基づいて、観察対象が一定の方向に遊走する程度を示す遊走性尺度を算出する。遊走性尺度は、例えば、観察対象の軌跡における始点終点間距離、軌跡の直線性、軌跡における総移動距離、到達距離、および、移動の速さの少なくとも1つ以上を含んでよい。遊走性尺度の詳細は後述する。
【0044】
遊走性評価部600は、観察対象の遊走性尺度に基づいて、観察対象の遊走性を評価する。例えば、遊走性評価部600は、遊走性尺度に基づいて、観察対象が、あらかじめ定められた条件を満たすか否かを評価する。例えば、遊走性評価部600は、遊走性算出部500で算出された遊走性尺度が閾値以上であるか否かに基づいて、観察対象の遊走性を評価してよい。このとき、遊走性評価部600は、観察者が入力部180から入力した閾値を評価のために用いてよい。遊走性評価部600は、遊走性の評価結果を、記録部190に記録し、および/または、出力部160に出力してよい。
【0045】
図3は、本実施形態における、観察対象の遊走性を評価する方法のフローの一例である。本実施形態の観察対象の遊走性は、図3のS210~S250の処理を行うことによって評価することができる。なお、説明の便宜上、S210~S250の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよい。
【0046】
まず、S210において、撮像装置10は、生体の観察対象を撮像して、複数の画像を生成する。S210において、生体の観察対象を撮像して複数の画像を生成するステップは、図4に示すように、S211からS217のステップを含む。
【0047】
図4は、フローにおけるS210を示す。まず、S211において、撮像装置制御部171は、観察方法を低倍率の位相差観察に設定して、撮像装置10が観察対象を撮像する。これにより、撮像装置10が比較的広い領域の画像であるバードビュー画像を取得する。低倍率の観察に代えて、撮像装置制御部171が培養容器20の観察ポイントcをxy平面内で移動させながら、撮像装置10が位相差観察した複数の画像(タイル画像)を取得し、これらを1枚の画像(合成画像)になるように合成することで、バードビュー画像を取得してもよい。撮像装置10は、取得したバードビュー画像のデータを、記録部190に保存し、および/または、出力部160に出力してよい。バードビュー画像を取得した後で、撮像装置制御部171は処理をS212に進める。
【0048】
次に、S212において、撮像装置制御部171は、入力部180を介して、観察者からタイムラプス撮像の条件に関する入力を受ける。タイムラプス撮像の条件は、出力部160に出力されたバードビュー画像に基づいて観察者が決定してよい。タイムラプス撮像の条件は、インターバル、ラウンド数、観察ポイント、および観察方法のうちの1つまたは複数であってよいが、これらに限らない。タイムラプス撮像の条件が入力部180に入力された場合、撮像装置制御部171は当該入力を受けて、処理をS213に進めてよい。タイムラプス撮像の条件が入力されなかった場合、撮像装置制御部171は出力部160を介して、観察者に条件を入力するように要求してもよい。
【0049】
次に、S213において、撮像装置制御部171は、入力されたタイムラプス撮像の条件に基づいて、条件を書き込んだレシピを生成してよい。撮像装置制御部171は、生成したレシピを、記録部190に記録し、および/または、出力部160に出力してよい。レシピには、タイムラプス撮像のインターバル、ラウンド数、観察ポイント、および観察方法のうちの1つまたは複数に関する情報が含まれていてよい。レシピを生成した後で、撮像装置制御部171は処理をS214に進める。
【0050】
次に、S214において、撮像装置制御部171は、入力部180を介して、観察者からタイムラプス撮像の開始の指示を受けてよい。タイムラプス撮像の開始が指示された場合、撮像装置制御部171は当該指示を受けて、処理をS215に進めてよい。タイムラプス撮像の開始が指示されなかった場合は、撮像装置制御部171は出力部160を介して、観察者に開始を指示するように要求してもよい。または、タイムラプス撮像の開始が指示されなかった場合は、撮像装置制御部171は出力部160を介して、観察者に、前回入力した条件とは異なるタイムラプス撮像の条件を入力するように要求してもよい。
【0051】
次に、S215において、撮像装置制御部171は、観察対象のタイムラプス撮像を開始するよう、カメラ300に指示する。タイムラプス撮像は、S213で生成されたレシピにしたがって行われる。撮像装置制御部171は、レシピに記載された観察ポイントにしたがって、培養容器20の観察ポイントcの位置を調節する。また、レシピに記載された観察方法が3種類(例えば、位相差観察、緑色の蛍光観察、赤色の蛍光観察)であった場合、撮像装置制御部171は、レシピに記載された観察方法にしたがって、照明、フィルタブロック、および対物レンズを適切に切り替えながら、3種類の画像を連続的に取得するよう、カメラ300に指示してよい。カメラ300が3種類の画像を取得して、第1ラウンドの撮像が終了する。
【0052】
次に、撮像装置制御部171は、生成されたレシピにしたがって、第1ラウンドの撮像開始時刻から、レシピに記載されたインターバルだけ待機し、その後第1ラウンドの撮像と同様に第2ラウンドの撮像を行うよう、カメラ300に指示する。このように、レシピに記載されたラウンド数に達するまで、カメラ300は上記の撮像を繰り返す。
【0053】
次に、S216において、タイムラプス撮像が、レシピに記載されたラウンド数に達した場合は、撮像装置制御部171は撮像を終了するよう、カメラ300に指示する。タイムラプス撮像が、レシピに記載されたラウンド数に達しない場合は、指定されたラウンド数に達するまで、撮像装置制御部171は、カメラ300による上記の撮像を繰り返す。タイムラプス撮像を終了した後で、撮像装置制御部171は処理をS217へ進める。
【0054】
タイムラプス撮像の間、撮像装置制御部171は、撮像装置10が撮像した画像のデータを実施経過ファイルに蓄積する。撮像装置制御部171は、実施経過ファイルを、記録部190に記録する。また、撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像の撮像中または撮像後に、観察者から実施経過確認の指示が入力されると、入力時点における実施経過ファイルの内容を参照し、実施経過確認用画面を出力部160に出力する。
【0055】
次に、S217において、撮像装置制御部171は、実施経過ファイルに含まれる複数の画像を連結して動画像ファイルを生成する。撮像装置制御部171は、生成した動画像ファイルの動画を含むタイムラプス撮像の実施経過確認用画面を、出力部160に表示させる。
【0056】
図5は、出力部160に表示される、実施経過確認用画面の一例を示す。撮像装置制御部171は、表示領域101、102、103および104、ならびに再生コントロール部105を含むタイムラプス撮像の実施経過確認用画面を出力部160に表示させてよい。撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像した各ラウンドでの画像を観察方法ごとに時系列で連結して動画像ファイルとして生成する。例えば、撮像装置制御部171は、複数の位相差画像から位相差画像の動画像を生成し、および/または、複数の蛍光画像から蛍光画像の動画像を生成してよい。これに加えて/代えて、撮像装置制御部171は、位相差画像および蛍光画像をフレームごとに合成し、合成後の各フレームを時系列に連結して合成画像の動画像を生成してよい。撮像装置制御部171は、生成した動画像を、表示領域101、102、103および104の少なくとも一つ以上にそれぞれ表示させ、および/または記録部190に記録してよい。
【0057】
撮像装置制御部171は、生成された動画像ファイルを同時並列的に読み出し、動画像を出力部160に表示するための動画像信号を生成し、生成順に動画像信号を出力部160に送出して、動画像を表示領域101、102、103および104の少なくとも一つに表示してよい。撮像装置制御部171が行う、この動画像ファイルの読み出し、動画像信号の生成、動画像信号の送出の一連の処理を、「動画像ファイルの再生」とも記載する。
【0058】
再生コントロール部105は、動画像ファイルの再生に関する指示を、観察者が入力するために用いるGUI(Graphic User Interface)画像である。再生コントロール部105には、停止ボタン52、スキップボタン53、再生ボタン54、早送りボタン55、クリッピングボタン56、タイムライン50が配置される。
【0059】
再生ボタン54が入力部180を介して観察者によって選択されると、動画像ファイルの再生が開始され、表示領域101、102、103および104の少なくとも一つにおいて、動画像の表示が開始されてよい。停止ボタン52が観察者によって選択されると、動画像の再生が停止する。動画像ファイルにおける再生箇所は、タイムライン50に反映される。タイムライン50の左端は動画像ファイルの先頭、つまり、タイムラプス撮像の開始時点を示し、タイムライン50の右端は動画像ファイルの後尾、つまり、タイムラプス撮像の終了時点を示す。タイムラプス撮像が終了していない場合には、タイムラインの右端は現時点を示す。
【0060】
タイムライン50にはスラーダーバー60が配置される。スラーダーバー60は、動画像ファイルにおける再生箇所をリアルタイムで示すものであってよい。スラーダーバー60の左右方向の位置は、観察者が自由に移動できるものであってよい。スラーダーバー60の左右方向の位置が観察者によって移動されると、動画像ファイルの再生箇所が変化する。
【0061】
タイムラプス撮像を長時間にわたって行った場合、生成される動画像ファイルの容量はかなり大きなものとなる。撮像装置制御部171は、時間クリッピングまたは空間クリッピングの手法を用いて、動画像ファイルの容量を軽減してよい。
【0062】
時間クリッピングとは、タイムラプス撮像の特定の時間だけをクリッピングして動画像ファイルを形成する方法である。例えば、撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像の期間中の、ある特定の期間において生成した複数の画像を用いて動画像ファイルを生成してよい。例えば、撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像の期間中に生成した複数の画像のうち、特定の時間間隔で間引いた複数の画像を用いて動画像ファイルを生成してよい。間引く時間間隔は、一定であってよい。間引く時間間隔は、例えば、最初の1時間は10分おき、次の1時間は15分おきなどのように、必ずしも一定でなくてもよい。
【0063】
クリッピングボタン56が観察者によって選択されると、撮像装置制御部171は、クリッピング指定用画面を出力部160に表示させてよい。撮像装置制御部171は、入力部180を介して、観察者によって、時間クリッピングを行う期間、または間引きする時間間隔に関する入力を受ける。
【0064】
空間クリッピングとは、タイムラプス撮像の特定の空間領域だけをクリッピングして動画像ファイルを生成する方法である。例えば、撮像装置制御部171は、タイムラプス撮像の期間中に生成した複数の画像のうち、ある特定の領域のみを切り出した複数の画像を用いて動画像ファイルを生成する。
【0065】
クリッピングボタン56が観察者によって選択されると、撮像装置制御部171は、クリッピング枠を出力部160に表示してよい。撮像装置制御部171は、入力部180を介して、観察者によって、表示されたクリッピング枠のうち、目的とする切り出し領域に関する入力を受ける。撮像装置制御部171は、入力部180から、目的とする切り出し領域に関する入力を受けることにより、この領域を中心とした空間クリッピングを行うことができる。
【0066】
上記のようにして、タイムラプス撮像した複数の画像から、動画像ファイルを生成することができる。動画像ファイルを生成した後で、撮像装置制御部171は処理をS220に進める。なお、S217は、必要に応じて行うステップであってよい。S216において、タイムラプス撮像を終了した後で、S217のステップをスキップして、S220に進んでよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、S211からS216のステップの一部を省略してもよい。
【0067】
次に、S220において、軌跡生成部400は、動画像ファイルに含まれる観察対象を時系列で複数回撮像して生成された複数の画像に基づいて、生体の観察対象の移動の軌跡を生成する。S220において、複数の画像に基づいて、生体の観察対象の移動の軌跡を生成するステップは、図6に示すように、S221からS223のステップを含む。
【0068】
図6は、フローにおけるS220を示す。まず、S221において、軌跡生成部400は、動画像ファイルに含まれる複数の画像のそれぞれにおいて、生体の観察対象の外周で囲まれる部分をマスキングする。軌跡生成部400は、複数の画像のそれぞれにおける観察対象の外周を抽出し、外周で囲まれる領域の内部をマスクすることにより、観察対象のマスキングを行う。例えば、軌跡生成部400は、分散フィルタを施した後、二値化する手法などの従来知られた方法により、観察対象の外周の抽出を行ってよい。観察対象をマスキングした後で、軌跡生成部400は処理をS222に進める。
【0069】
次に、S222において、軌跡生成部400は、観察対象のマスキングした領域内に、軌跡を生成するための基準位置を設定する。軌跡生成部400は、複数の画像のそれぞれの観察対象のマスキングした領域に対して、統一した定義により、基準位置を設定する。軌跡生成部400は、基準位置の定義として、マスキングした領域の重心、中心、または、端部などを用いてよい。
【0070】
図7A、7B、および7Cは、観察対象のマスキングした領域内に設定する基準位置の定義の例である。図7Aでは、観察対象のマスキングした領域500aの重心510aを基準位置とする。軌跡生成部400は、公知の方法により重心510aを算出してよい。例えば、軌跡生成部400は、観察対象をxy座標平面におき、x軸方向およびy軸方向ごとに、マスキングした領域500aに含まれる全画素の座標値の平均xmeanおよびymeanを算出し、得られた点(xmean,ymean)を重心510aとして設定してよい。
【0071】
図7Bでは、観察対象のマスキングした領域500bの中心510bを基準位置とする。軌跡生成部400は、公知の方法により中心510bを算出してよい。軌跡生成部400は、観察対象をxy座標平面におき、マスキングした領域500bのx軸の最小値550aと、最大値550bの平均値である550cを算出する。また、軌跡生成部400は、同様にして、マスキングした領域のy軸の最小値560aと、最大値560bの平均値である560cを算出する。軌跡生成部400は、得られた点(550c,560c)を中心510bとして設定してよい。
【0072】
図7Cでは、観察対象のマスキングした領域の端部を基準位置とする。例えば、軌跡生成部400は、観察対象をxy座標平面におき、観察対象の外周上の点のうち、x軸上またはy軸上であらかじめ定められた方向(+方向または-方向)において、端部となる点を基準位置として設定してよい。
【0073】
軌跡生成部400は、端部として、細胞が遊走する方向の最先端の点を取得してよい。例えば、軌跡生成部400は、移動の軌跡における各時点における細胞の移動ベクトルを算出し、観察対象をxy座標平面におき、観察対象の外周上の点のうち、移動ベクトルの+方向において端部となる点を基準位置(最先端の点)として設定してよい。ここで、軌跡生成部400は、その時点の観察対象の重心または中心と所定数前の時点(例えば1つ前の時点)の観察対象の重心または中心を結ぶことで移動ベクトルを取得してよい。
【0074】
軌跡生成部400は、上記(A)、(B)、および(C)以外の定義を用いて定めた位置を基準位置として設定してもよい。例えば、軌跡生成部400は、生体の観察対象に蛍光標識したタンパク質を発現させて、当該蛍光標識したタンパク質が存在する位置を基準位置として設定してもよい。また、軌跡生成部400は、上記の複数の定義により特定される点の重心(平均または重み付け重心など)を基準位置として設定してもよい。基準位置を設定した後で、軌跡生成部400は処理をS223に進める。
【0075】
次に、S223において、軌跡生成部400は、複数の画像の基準位置を時系列に線分で結んで、生体の観察対象の軌跡を生成して出力する。
【0076】
図8は、第1時刻から第5時刻までの期間に撮像した画像の基準位置を時系列に線分で結んで、観察対象の移動の軌跡を生成する一例である。図8の左列において、画像400aから400eは、間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell)の、それぞれ第1時刻から第5時刻までの位相差画像である。例えば、画像400aから400eは、図5の表示領域101に表示される。図8の中央列において、画像410aから410eは、それぞれ画像400aから400eに対して、マスキングを行った画像である。マスキングを行った画像410aから410eにおいて、軌跡生成部400は、基準位置を設定する。例えば、基準位置は、マスキングした領域の重心であってよい。軌跡生成部400は、基準位置を第1時刻から第5時刻まで時系列に線分で結んで、図8の右列のように観察対象の移動の軌跡420を生成してよい。このようにして、生成された基準位置の移動の軌跡を、観察対象の移動の軌跡としてよい。軌跡生成部400は、観察対象の移動の軌跡420を、図5の表示領域102に出力し、および/または、記録部190に記録してよい。なお、本願明細書では、観察対象として、間葉系幹細胞を用いているが、観察対象としては、間葉系幹細胞以外の細胞も好適に用いられる。また、軌跡を生成して出力する生体の観察対象は、1つであってもよいし、複数であってよい。
【0077】
図9Aは、2つの観察対象の移動の軌跡の一例である。軌跡生成部400は、左側の細胞と右側の細胞について、それぞれ移動の軌跡420aおよび420bを生成して、表示領域102に出力する。
【0078】
図9Bは、図9Aに示す2つの観察対象の移動の軌跡をグラフ化した一例である。軌跡生成部400は、生成した軌跡420aおよび420bを、図9Bに示すように、xy座標にプロットして、表示領域103に出力してよい。観察対象の移動の軌跡を生成した後で、軌跡生成部400は処理をS230に進める。
【0079】
ここで、軌跡420aで移動する細胞(左の細胞)は、一定の方向に実際に移動しており、遊走の程度が高いと考えられる。一方で、軌跡420bで移動する細胞(右の細胞)は、その場から大きく動かず変形するのみであり、実質的に遊走しているとは認められない。しかし、変形のために重心などが小刻みに移動していると評価されるため、移動量(移動総距離)のみで判断すると右の細胞も左の細胞と同程度の遊走性があると評価されてしまう。後述するように、本実施形態によれば左の細胞が高い遊走性を有するものとして評価し、右の細胞を遊走性が低いものとして評価することができる。
【0080】
次に、S230において、軌跡生成部400は、入力部180を介して、観察者から評価の対象とする観察対象を選択する入力を受ける。例えば、動画像ファイルに含まれる複数の画像の全てにおいて基準位置が設定されて、軌跡が生成されている観察対象が観察者によって評価の対象として選択されてよい。または、動画像ファイルに含まれる複数の画像の全てにおいてバックグラウンドとのコントラストが明瞭な観察対象が、観察者によって評価の対象として選択されてよい。または、動画像ファイルに含まれる複数の画像の全てにおいて、隣り合う観察対象と重なり合っていない観察対象が、観察者によって評価の対象として選択されてよい。または、動画像ファイルに含まれる複数の画像の全てにおいて、細胞分裂を行わなかった観察対象が、観察者によって評価の対象として選択されてよい。または、観察対象の選択は、遊走性算出装置170が自動的に行ってもよい。なお、S230のステップは、S210のステップを行った直後に行ってもよい。評価の対象とする観察対象が選択された後で、軌跡生成部400は処理をS231に進める。
【0081】
次に、S231において、軌跡生成部400は、出力部160に、遊走性の評価の対象外とする観察対象を表示させる。例えば、評価の対象外とする観察対象は、S230のステップで、評価の対象として選択されなかった観察対象である。評価の対象外とする観察対象は、図5の表示領域104に表示される。表示領域104は、評価の対象外とする観察対象を、時系列に表示してよい。遊走性の評価の対象外とする観察対象を表示した後で、軌跡生成部400は処理をS232に進める。
【0082】
次に、S232において、軌跡生成部400は、評価の対象外とする観察対象を確認するよう、観察者に要求する。例えば、軌跡生成部400は、表示領域104に表示された画像を確認して、画像中の観察対象を評価の対象外とするかどうかを判断するよう、観察者に要求してよい。評価の対象外の観察対象であるという判断を観察者から入力した場合は、軌跡生成部400は当該観察対象に対してS240以降のステップを行わなくてよい。評価の対象とする観察対象であるという判断を観察者から入力した場合は、軌跡生成部400は当該観察対象に対してS240以降のステップを行ってよい。評価の対象とする観察対象であると観察者によって判断された場合は、表示領域104に表示された画像に基づいて、観察者によって当該観察対象の軌跡をマニュアルで修正されたうえで、軌跡生成部400は当該観察対象に対してS240以降のステップを行ってよい。
【0083】
なお、S230からS232の一部または全部は、省略してもよい。例えば、S230において、評価の対象とする観察対象を選択した後で、軌跡生成部400は、S231およびS232のステップをスキップして、処理をS240に進めてよい。
【0084】
次に、S240のステップにおいて、遊走性算出部500は、評価対象とする生体の観察対象の遊走性尺度を算出する。S240において、評価対象とする生体の観察対象の遊走性尺度を算出するステップは、図10に示すように、S241からS243のステップを含む。ここで、遊走性尺度とは、観察対象が一定の方向に遊走する程度を示すものである。例えば、遊走する細胞には、(1)少なくとも一定の時間以上にわたり、ほぼ一定の方向(例えば、誘引物質などに向かう方向、または、忌避物質などから遠ざかる方向)に移動するものと、(2)その場で変形を繰り返すか、および/または、活発に移動するものの一定の狭い領域内の移動にとどまり実質的な移動を行っていない(すなわち、偽の移動を行っている)と評価されるものとが含まれる。遊走性尺度とは、(1)前者の細胞(観察対象)のみに遊走性が高いものとして高い数値を与え、(2)後者の細胞(観察対象)と全く遊走しない細胞に遊走性が低いものとして低い数値を与える数値尺度である。一例として、遊走性尺度は、観察対象の軌跡における始点終点間距離、軌跡の直線性、軌跡における総移動距離、到達距離、および、移動の速さの少なくとも1つ以上を含んでよい。
【0085】
図10は、フローにおけるS240を示す。まず、S241において、遊走性算出部500は、S220で生成した生体の観察対象の軌跡に基づいて、観察対象の始点終点間距離を算出する。観察対象の軌跡の始点は、タイムラプス撮像の開始時刻における画像中の観察対象の基準位置である。ここで、タイムラプス撮像の開始時刻には、開始時刻のみでなく、開始時刻の近傍の時刻を含んでもよい。観察対象の軌跡の終点は、タイムラプス撮像の終了時刻における観察対象の画像中の基準位置であってよい。ここで、タイムラプス撮像の終了時刻には、終了時刻のみでなく、終了時刻の近傍の時刻を含んでもよい。始点終点間距離は、始点から終点までの直線距離であってよい。観察対象の始点終点間距離を算出した後で、遊走性算出部500は処理をS242に進める。
【0086】
次に、S242において、遊走性算出部500は、生成した生体の観察対象の軌跡に基づいて、観察対象の総移動距離を算出する。観察対象の総移動距離は、観察対象の始点から終点までの軌跡の全長であってよい。観察対象の軌跡の始点および終点は、上記の定義と同一であってよい。例えば、図9Aにおいて、左側の細胞の総移動距離は、軌跡420aの全長(すなわち、軌跡420aを構成する線分の長さの合計)であってよい。例えば、図9Aにおいて、右側の細胞の総移動距離は、軌跡420bの全長(すなわち、軌跡420bを構成する線分の長さの合計)であってよい。なお、S241のステップとS242のステップは、順序が逆になってもよいし、同時に行ってもよい。観察対象の総移動距離を算出した後で、遊走性算出部500は処理をS243に進める。
【0087】
次に、S243において、遊走性算出部500は、生体の観察対象の直線性を算出する。ここで、直線性とは、以下の式で定義されてよい。
[式1]
直線性=(観察対象の始点終点間距離)/(観察対象の総移動距離)
式1で、観察対象の始点終点間距離はS241で算出した値である。式1で、観察対象の総移動距離はS242で算出した値である。式1の定義によれば、直線性の値は0以上1以下の実数である。上記の直線性の定義によれば、同じ場所にとどまり、形態のみを変化している細胞は直線性が低く、始点から遠くへ移動した細胞は直線性が高く見積もられる。観察対象の直線性を算出した後で、遊走性算出部500は処理をS250に進める。
【0088】
次に、S250のステップにおいて、遊走性評価部600は、生体の観察対象の遊走性を評価して、遊走性の高いものを選択する。S250において、生体の観察対象の遊走性を評価して、遊走性の高いものを選択するステップは、図11に示すように、S251からS254のステップを含む。
【0089】
図11は、フローにおけるS250を示す。まず、S251において、遊走性評価部600は、入力部180を介して、遊走性尺度の閾値に関する入力を観察者から受ける。遊走性尺度は、始点終点間距離、総移動距離、直線性、到達距離および移動の速さのうちのいくつかであってよい。到達距離および移動の速さについては、後述する。閾値とは、観察対象の遊走性尺度が、これ以上の値を有するときに、観察対象の遊走性が高いものとして選択する値である。
【0090】
閾値は、予め定められた値を用いるか、または、観察者が任意に設定してよい。例えば、複数の観察対象の移動の軌跡などを出力部160に表示される動画像などに基づいて、観察者が適切と判断した閾値を設定してよい。その場合、遊走性算出装置170は、出力部160に閾値を入力させるためのウィンドウ画面などを表示し、観察者が閾値として入力した値を、入力部180を介して取得してよい。
【0091】
閾値は、遊走性算出装置170が自動的に設定してもよい。例えば、観察対象である細胞の種類が入力部180に入力されると、遊走性算出装置170が、入力された細胞の種類に応じてあらかじめ定められた閾値を設定してもよい。また、遊走性算出装置170は、S240で算出した遊走性尺度の統計値(平均、中央値、または、平均と標準偏差σの和や差など)を算出し、これを閾値として用いてよい。例えば、遊走性算出装置170は、S241で得た複数の観察対象の始点終点間距離の平均、中央値、平均+σ、平均-σ、平均+2σまたは平均-2σなどを算出し、これを後に始点終点間距離に対して適用する閾値としてよい。
【0092】
次に、S252において、遊走性評価部600は、設定された総移動距離および直線性の閾値に基づいて、生体の観察対象の遊走性を評価する。S252において、生体の観察対象の遊走性を評価するステップは、図12および13に示すように、S2521およびS2522のステップを含む。
【0093】
まず、図12のS2521において、遊走性評価部600は、観察対象の総移動距離が、閾値よりも長いかどうかを評価する。観察対象の総移動距離が閾値未満であった場合は、遊走性評価部600は、当該観察対象を総移動距離が小として評価してよい。観察対象の総移動距離が閾値以上であった場合は、遊走性評価部600は、当該観察対象を総移動距離が大として評価してよい。総移動距離が大として観察対象を評価した後、遊走性評価部600は処理をS2522に進める。
【0094】
次に、図13のS2522において、遊走性評価部600は、総移動距離が大として評価された観察対象の直線性の値が、閾値よりも大きいかどうかを評価する。観察対象の直線性の値が閾値未満であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を直線性が小として評価する。観察対象の直線性の値が閾値以上であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を直線性が大として評価する。なお、S2521のステップとS2522のステップは、順序が逆になってもよい。
【0095】
次に、S254において、遊走性評価部600は、生体の観察対象の遊走性の評価結果を出力する。遊走性評価部600は、生体の観察対象を、遊走性の評価結果により分類してよい。遊走性評価部600は、生体の観察対象のうち、遊走性の高いものを選択してよい。例えば、遊走性評価部600は、観察対象の遊走性尺度が第1の閾値を超える観察対象を、最も遊走性の高い群として選択し、観察対象の遊走性尺度が第1の閾値以下であって、第2の閾値を超える観察対象を、中程度の遊走性の群として選択し、観察対象の遊走性尺度が第2の閾値以下である観察対象を、遊走性の低い群として選択してよい。このように選択することで、遊走性評価部600は、観察対象を遊走性に応じて分類してよい。
【0096】
例えば、図14において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が小であると評価した観察対象を、A群に分類する。例えば、図14において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2522のステップで、直線性の値が小であると評価した観察対象を、B群に分類する。例えば、図14において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2522のステップで、直線性の値が大であると評価した観察対象を、C群に分類する。遊走性評価部600は、A群およびB群に分類した複数の観察対象を、遊走性が低いものとして評価する。遊走性評価部600は、C群に分類した複数の観察対象を、遊走性が高いものとして評価してよい。これに代えて遊走性評価部600は、A群を、遊走性が低いものとし、B群を遊走性が中程度のものとし、C群を遊走性が高いものと評価してもよい。
【0097】
例えば、遊走性算出部500は、A群に属する観察対象の、全体の観察対象に対する割合(「A群割合」ともいう)を算出してもよい。例えば、遊走性算出部500は、B群に属する観察対象の、全体の観察対象に対する割合(「B群割合」ともいう)を算出してもよい。例えば、遊走性算出部500は、C群に属する観察対象の、全体の観察対象に対する割合(「C群割合」ともいう)を算出してもよい。遊走性評価部600は、上記の各群の割合に基づいて、観察対象の遊走性を評価してよい。例えば、遊走性評価部600は、A群割合(またはA群割合とB群割合の合計)が閾値以上の観察対象の群に対して良好な遊走性を有すると評価してよい。遊走性の評価は、出力部160に出力され、および/または、記録部190に記録されてよい。
【0098】
上記の分類では、総距離移動が大であり、かつ、直線性の値が大である観察対象(例えば、図9Aの左側の細胞)を、遊走性が高い群に分類したが、このように分類することで、同じ場所に留まり、形態のみを変化させている細胞は遊走性が低いと評価される。また、総移動距離は大きいものの、始点の近傍で重心を移動させているに過ぎない細胞(例えば、図9Aの右側の細胞)は、直線性の値が低くなるため、遊走性が低いと評価される。そのため、上記の分類によれば、始点から遠くに移動した細胞群を、遊走性が高いとして評価できる。
【0099】
上記の例では、複数の観察対象をA群、B群、およびC群に分類するものであるが、観察対象が1つである場合にも、遊走性を評価してよい。また、上記の例では、総移動距離および直線性について、閾値をそれぞれ1つだけ設定しているが、それぞれの遊走性尺度について、閾値を2つ以上設定してもよい。それぞれの遊走性尺度について閾値を2つ以上設定することで、遊走性をより詳細に評価することができる。
【0100】
なお、図14では、遊走性尺度として総移動距離および直線性を用いて、観察対象の遊走性を評価したが、遊走性の評価方法はこれに限らない。例えば、遊走性評価部600は、観察対象の始点終点間距離が、閾値よりも長いかどうかを評価してよい。観察対象の始点終点間距離が閾値未満であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を始点終点間距離が小として評価してよい。始点終点間距離が小として評価された観察対象に対しては、遊走性評価部600は当該観察対象を遊走性が低いとして評価してよい。観察対象の始点終点間距離が閾値以上であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を始点終点間距離が大として評価してもよい。始点終点間距離が大として評価された観察対象に対しては、遊走性評価部600は当該観察対象を遊走性が高い観察対象として評価してもよい。
【0101】
観察対象の始点終点間距離を用いる場合、遊走性評価部600は、一段階で観察対象の遊走性を評価することができる。一方で、図14のS2521およびS2522のように総移動距離および直線性を用いる場合、観察対象の遊走性をよりきめ細かく分類することができる(例えば、A群とB群の分離など)。
【0102】
次に、本実施形態の変形例を示す。以下に示す変形例どうしを複数組み合わせて、観察対象の遊走性を評価してもよい。
【0103】
[第一変形例]
図15は、観察対象の基準位置の定義の変形例である。軌跡生成部400は、複数の観察画像において、隣接する時刻において異なる位置にある観察対象が重なる領域に基づいて、基準位置を設定してよい。例えば、軌跡生成部400は、観察対象が重なる領域の重心、中心、または端部を、基準位置として設定してよい。例えば、図15において、第1時刻における細胞500aと、第1時刻に隣接(例えば、後続)する第2時刻における細胞500bとが重なる領域の重心510aを、基準位置として設定してよい。また、図15において、第2時刻における細胞500bと、第2時刻に隣接(例えば、後続)する第3時刻における細胞500cとが重なる領域の重心510bを、基準位置として設定してよい。この場合、重心510aと重心510bとを結んだ線分520を、観察対象の移動の軌跡としてよい。このように、移動中に形態があまり変化しない細胞の場合、観察対象が重なる領域の重心を基準位置として設定し、遊走性を評価してもよい。また、ほぼ同じ位置で収縮を繰り返す細胞の場合、観察対象が重なる領域はほとんど変わらないため、観察対象が重なる領域の重心を基準位置として設定し、遊走性を評価することが適している。
【0104】
[第二変形例]
図16は、S240の観察対象の遊走性尺度を算出するフローの変形例である。S242で生体の観察対象の総移動距離を算出した後、または、S243で生体の観察対象の直線性を算出した後で、遊走性算出部500はS246のステップを追加的に行ってよい。S246において、遊走性算出部500は、生成した生体の観察対象の軌跡に基づいて、到達距離を算出してよい。ここで、到達距離とは、観察対象の移動の軌跡における始点と、始点から最も遠い位置である最遠点との距離である。例えば、遊走性算出部500は、観察対象の移動の軌跡における始点と、観察対象の移動の軌跡を構成する各基準位置との距離をそれぞれ算出し、そのうちの最大の距離を到達距離として設定してよい。
【0105】
図17は、到達距離について説明する図である。観察対象を第1時刻から第8時刻までタイムラプス撮像し、それぞれの時刻における観察対象の位置を500aから500hとする。また、それぞれの時刻における観察対象の基準位置を510aから510hとする。このとき、観察対象の移動の軌跡は、線分520aから520gまでを順次結んだもので表され、軌跡の始点は510a、軌跡の終点は510hである。図17では、軌跡の始点である510aから、最も遠い最遠点は、第4時刻における観察対象の基準位置である510dであるので、この場合の到達距離は、点510aと点510dとの距離540で表される。
【0106】
図18は、総移動距離および到達距離を遊走性尺度として用いた場合のフローである。S2521のステップの説明については、既に記載された説明がそのまま適用されてよい。S2521のステップにおいて、観察対象の総移動距離が閾値よりも長いと評価した後、遊走性評価部600は処理をS2523に進める。S2523において、遊走性評価部600は、総移動距離が大として評価した観察対象の到達距離が、閾値よりも大きいかどうかを評価する。ここで、到達距離の閾値は、S251において、観察者が任意に設定してよいし、遊走性算出装置170が自動的に設定してもよい。
【0107】
観察対象の到達距離が閾値未満であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を到達距離が小として評価してよい。観察対象の到達距離が閾値以上であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を到達距離が大として評価してよい。
【0108】
例えば、図18において、S2521のステップで、遊走性評価部600は、総移動距離が小であると評価した観察対象を、A群に分類してよい。例えば、図18において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2523のステップで、到達距離が小であると評価した観察対象を、B群に分類してよい。例えば、図18において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2523のステップで、到達距離が大であると評価した観察対象を、C群に分類してよい。遊走性評価部600は、A群、およびB群に分類した複数の観察対象を、遊走性が低いものとして評価してよい。遊走性評価部600は、C群に分類した複数の観察対象を、遊走性が高いものとして評価してよい。つまり、遊走性評価部600は、到達距離が閾値以下である観察対象を、遊走性が高いものとして選択しないことができる。
【0109】
例えば、図17に示す細胞の場合、細胞の総移動距離が大きいものの、移動の起点と終点とが近接しており、始点終点間距離(点510aおよび点510hとの距離)が小さいため、この細胞がS2522のステップを経た場合、遊走性評価部600が、この細胞を遊走性が低いと評価するおそれがある。しかし、上記の第二変形例の方法によれば、S2523によって、遊走性評価部600は、到達距離が大きいものは遊走性が高いと評価し、到達距離が小さいものは遊走性が低いと評価するため、この細胞は遊走性が高いと評価されることになる。つまり、観察対象の遊走性がより適切に評価される。なお、上記の第二変形例では、総移動距離および到達距離を遊走性尺度として用いて、観察対象の遊走性を評価したが、遊走性評価部600が直線性および到達距離を遊走性尺度として用いて、観察対象の遊走性を評価してもよい。
【0110】
[第三変形例]
図19は、S240の観察対象の遊走性尺度を算出するフローの他の変形例である。S243で生体の観察対象の直線性を算出した後で、遊走性算出部500は、S247のステップを追加的に行ってよい。S247において、遊走性算出部500は、生成した生体の観察対象の軌跡に基づいて、観察対象の移動の速さを算出してよい。ここで、移動の速さは、第1時刻における細胞の位置と、第2時刻における細胞の位置との間の距離を、第1時刻から第2時刻までの時間で除したものとして定義してよい。
【0111】
図20は、総移動距離および直線性に加えて、さらに移動の速さを遊走性尺度として用いた場合のフローである。S2521およびS2522のステップの説明については、既に記載された説明がそのまま適用されてよい。S2522のステップにおいて、観察対象の直線性が閾値よりも長いと評価した後、遊走性評価部600は処理をS2524に進める。S2524において、遊走性評価部600は、直線性が大として評価した観察対象の移動の速さが、閾値よりも大きいかどうかを評価する。ここで、移動の速さの閾値は、S251において、観察者が任意に設定してよいし、遊走性算出装置170が自動的に設定してもよい。移動の速い細胞の場合は、閾値を高めに設定してよい。移動の遅い細胞の場合は、閾値を低めに設定してよい。
【0112】
観察対象の移動の速さが閾値未満であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を移動の速さが小として評価してよい。観察対象の移動の速さが閾値以上であった場合は、遊走性評価部600は当該観察対象を移動の速さが大として評価してよい。
【0113】
例えば、図20において、S2521のステップで、遊走性評価部600は、総移動距離が小であると評価した観察対象を、A群に分類してよい。例えば、図18において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2522のステップで、直線性の値が小であると評価した観察対象を、B群に分類してよい。例えば、図18において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2522のステップで、直線性の値が大であると評価し、S2524のステップで、移動の速さが小であると評価した観察対象を、C群に分類してよい。例えば、図18において、遊走性評価部600は、S2521のステップで、総移動距離が大であると評価し、S2522のステップで、直線性の値が大であると評価し、S2524のステップで、移動の速さが大であると評価した観察対象を、D群に分類してよい。遊走性評価部600は、A群、B群およびC群に分類した複数の観察対象を、遊走性が低いものとして評価してよい。遊走性評価部600は、D群に分類した複数の観察対象を、遊走性が高いものとして評価してよい。つまり、遊走性評価部600は、複数の観察対象のうち、観察対象の移動の速さが閾値以上のものを遊走性が高いものとして選択することができる。
【0114】
また、遊走性評価部600は、A~C群の遊走性を更に細かく分類してもよい。例えば、遊走性評価部600は、A群およびB群を遊走性が低いものとし、C群を遊走性が中程度のものとして評価してもよい。
【0115】
上記の第三変形例の方法によれば、遊走性尺度として距離以外に、時間の要素である速さについても評価するため、観察対象の遊走性がより詳細に評価される。
【0116】
図21は、遊走性算出装置170として機能するコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、および表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、およびCD-ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、および入出力チップ2070を有するレガシー入出力部を備える。
【0117】
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000およびグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010およびRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。表示装置2080には、遊走性算出装置170の内部で生成される様々な情報(例えば、動画像、遊走性の評価結果等)を、表示することができる。
【0118】
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、有線または無線によりネットワークを介して他の装置と通信する。また、通信インターフェイスは、通信を行うハードウェアとして機能する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラムおよびデータを格納する。CD-ROMドライブ2060は、CD-ROM2095からプログラムまたはデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
【0119】
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、および入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、および/または、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラムまたはデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続するとともに、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
【0120】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095、またはICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
【0121】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を遊走性算出装置170として機能させるプログラムは、軌跡生成モジュールと、遊走性算出モジュールと、遊走性評価モジュールと、撮像装置制御モジュールとを備える。これらのプログラムまたはモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、軌跡生成部400、遊走性算出部500、遊走性評価部600、撮像装置制御部171としてそれぞれ機能させてよい。
【0122】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である軌跡生成部400、遊走性算出部500、遊走性評価部600、撮像装置制御部171として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算または加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の遊走性算出装置170が構築される。
【0123】
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、またはCD-ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置または通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030または記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0124】
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060(CD-ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記録部、または記憶装置等と総称する。
【0125】
ここで、記憶装置等は、遊走性算出装置170の情報処理に必要な情報、例えば、動画像データなどを必要に応じて記憶し、遊走性算出装置170の各コンポーネントに必要に応じて供給する。
【0126】
本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、および/または記憶装置に含まれるものとする。
【0127】
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすか否かを判断し、条件が成立した場合(または不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
【0128】
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0129】
以上に示したプログラムまたはモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095の他に、DVDまたはCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
【0130】
本開示において、遊走性算出装置170が、プロセッサとしてCPU2000を有する構成を示したがプロセッサの種類は特に限定されない。例えば、プロセッサとして、GPU、ASIA,FPGA等を適宜使用することができる。また、本開示において、遊走性算出装置170が、補助記憶装置としてハードディスクドライブ2040を有する構成を示したが、補助記憶装置の種類は特に限定されない。例えば、ハードディスクドライブ2040に代えて、または、ハードディスクドライブ2040とともに、ソリッドステートドライブ等の他の記憶装置を用いてもよい。
【0131】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0132】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0133】
1 遊走性評価装置
7 光ファイバ
10 撮像装置
20 培養容器
23 ステージ
27 対物レンズ部
34 蛍光フィルタ部
38 結像レンズ部
40 透過照明部
41 コレクタレンズ
44 フィールドレンズ
45 偏光ミラー
47 透過照明用光源
50 タイムライン
52 停止ボタン
53 スキップボタン
54 再生ボタン
55 早送りボタン
56 クリッピングボタン
60 スラーダーバー
70 励起用光源
100 チャンバ
101 表示領域
102 表示領域
103 表示領域
104 表示領域
105 再生コントロール部
150 顕微鏡部
160 出力部
170 遊走性算出装置
171 撮像装置制御部
180 入力部
190 記録部
300 カメラ
400 軌跡生成部
411 フィールドレンズ
452 偏光ミラー
500 遊走性算出部
600 遊走性評価部
1900 コンピュータ
2000 CPU
2010 ROM
2020 RAM
2030 通信インターフェイス
2040 ハードディスクドライブ
2050 フレキシブルディスク・ドライブ
2060 CD-ROMドライブ
2070 入出力チップ
2075 グラフィック・コントローラ
2080 表示装置
2082 ホスト・コントローラ
2084 入出力コントローラ
2090 フレキシブルディスク
2095 CD-ROM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21