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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/04 20060101AFI20240402BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240402BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B24B49/04 Z
B24B49/12
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020040366
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137942
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】佃 昌治
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 由希
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-009030(JP,A)
【文献】特開2019-016662(JP,A)
【文献】特開2009-111238(JP,A)
【文献】特開2017-072583(JP,A)
【文献】特開2004-154928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/00 - 7/30
B24B 49/04
B24B 49/12
H01L 21/304
G01B 7/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面を加工する加工装置であって、
前記ワークを吸着保持した状態で回転可能なチャックテーブルと、
前記ワークの表面までの距離を非接触で測定する測定手段と、
前記チャックテーブルの回転に応じて前記ワークの周方向に移動する前記測定装置の測定点の軌跡上において、前記チャックテーブルの回転数、前記チャックテーブルの回転周期及び前記測定装置のサンプリング周期に応じて算出される前記測定点間の距離が前記測定点のスポット径を下回り、前記測定点が前記軌跡の全周に亘って隙間なく設定されるように、前記チャックテーブルの回転周期及び前記測定装置のサンプリング周期を調整可能な制御手段と、
を備えていることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記測定装置は、光干渉式の変位センサであることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記測定装置は、光量測定センサであることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面を加工する加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を薄く平坦に研削するものとして、回転する研削砥石の研削面をワークに押し当て、ワークの研削を行う研削装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、粗研削加工及び精研削加工の順にワークを加工する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-117648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワークに対して研削加工又は研磨加工を行う際に、ワークの表面(被加工面)に溝状のクラックが生じることがある。特に、目の粗い研削砥石を用いる粗研削加工では、クラックが生じやすい傾向にある。クラックが生じると、ワークから剥離した破片が砥石に噛み込んで、その後に加工するワークにひっかき傷のような深刻なダメージを与える虞があった。
【0006】
しかしながら、従来は、オペレ―タが加工後のワークを目視で検査するため、クラックの発生を事後的に確認するに留まっており、さらに、クラックが何れのタイミングで形成されたかが定かではないため、クラック発生の原因究明に時間を要するという問題があった。
【0007】
そこで、クラックを速やかに検知するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る加工装置は、ワークの表面を加工する加工装置であって、前記ワークを吸着保持した状態で回転可能なチャックテーブルと、前記ワークの表面までの距離を非接触で測定する測定手段と、前記チャックテーブルの回転に応じて前記ワークの周方向に移動する前記測定装置の測定点の軌跡上において、前記チャックテーブルの回転数、前記チャックテーブルの回転周期及び前記測定装置のサンプリング周期に応じて算出される前記測定点間の距離が前記測定点のスポット径を下回り、前記測定点が前記軌跡の全周に亘って隙間なく設定されるように、前記チャックテーブルの回転周期及び前記測定装置のサンプリング周期を調整可能な制御手段と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、測定装置の測定点がワーク上で周方向に略全周に拡がるため、ワークの加工中に、ワーク表面に生じたクラックを直ちに検知することができる。
【0010】
また、本発明に係る加工装置は、前記測定装置が、光干渉式の変位センサであることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る加工装置は、前記測定装置が、光量測定センサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ワークの加工中に、ワーク表面に生じたクラックを直ちに検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る研削装置を示す正面図。
図2】チャックテーブルと測定装置の配置関係を示す平面図。
図3】チャックテーブルが回転する度に、測定装置の測定点が増加する様子を示す模式図。
図4】測定装置の測定点間の距離がスポット径に対して広い状態を示す模式図と、測定装置の測定値を示すグラフ。
図5】測定装置の地点間の距離がスポット径に対して狭い状態を示す模式図と、測定装置の測定値を示すグラフ。
図6】本発明の変形例において、クラックの有無を判定する様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0015】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0016】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0017】
研削装置1は、ワークWを薄く平坦に研削加工するものである。ワークWは、シリコンウェハ等の半導体ウェハである。研削装置1は、研削手段2と、チャックテーブル3と、を備えている。
【0018】
研削手段2は、研削砥石21と、砥石スピンドル22と、スピンドル送り機構23と、を備えている。
【0019】
研削砥石21は、例えば#600のカップ型砥石であり、下面がワークWを研削する研削面21aを構成している。研削砥石21は、砥石スピンドル22の下端に取り付けられている。
【0020】
砥石スピンドル22は、研削砥石21を回転軸2a回りに図2中の矢印A方向に回転駆動するように構成されている。なお、研削砥石21の回転方向は、図2中の矢印Aの向きに限定されず、反対向き(時計回り)であっても構わない。
【0021】
スピンドル送り機構23は、砥石スピンドル22を上下方向に昇降させる。スピンドル送り機構23は、公知の構成であり、例えば、砥石スピンドル22の移動方向を案内する複数のリニアガイドと、砥石スピンドル22を昇降させるボールネジスライダ機構と、で構成されている。スピンドル送り機構23は、砥石スピンドル22とコラム24との間に介装されている。
【0022】
チャックテーブル3は、チャックスピンドル31を備えている。チャックスピンドル31は、回転軸3a回りに図2中の矢印B方向に回転駆動するように構成されている。なお、チャックスピンドル31の回転方向は、図2中の矢印Bの向きに限定されず、反対向き(反時計回り)であっても構わない。
【0023】
チャックテーブル3は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。チャックテーブル3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャックテーブル3に載置されたワークWがチャックテーブル3に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ワークWとチャックテーブル3との吸着が解除される。
【0024】
研削装置1は、測定装置4を備えている。測定装置4は、チャックテーブル3の上方に配置されている。測定装置4は、光干渉式の変位センサであり、例えば、株式会社東京精密製のOpt-measure等である。
【0025】
測定装置4は、ワークWの表面に向けて照射光を照射し、ワークWの表面で反射した反射光を受光することで、測定装置4とワークW表面との距離(変位)を非接触で計測する。すなわち、測定装置4は、測定装置4の直下に設定される測定点PにおけるワークWまでの距離を測定する。
【0026】
測定点Pは、クラックが比較的生じ易いワークWの周縁付近(例えば、ワークWの外周から5mm程度内側)に設定されるのが好ましい。ワークW上の測定点Pは、チャックテーブル3の回転駆動により、図2中の円状の軌跡Lに沿ってワークWの周方向に移動する。
【0027】
研削装置1の動作は、制御装置5によって制御される。制御装置5は、研削装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置5は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置5の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0028】
次に、研削装置1でワークWを研削加工する手順について説明する。
【0029】
まず、ワークWをチャックテーブル3に吸着保持する。次に、スピンドル送り機構23のスライダによって研削砥石21をワークWの上方に移動させる。そして、研削砥石21及びチャックテーブル3をそれぞれ回転させながら、研削砥石21の研削面21aがワークWに押し当てられることにより、ワークWが研削される。
【0030】
次に、測定装置4は、ワークW上の測定点Pまでの距離を測定し、測定値を制御装置5に送る。また、ワークWが回転軸3a周りに回転するにしたがって、ワーク上の測定点Pが、ワークWの周方向に移動する。
【0031】
また、制御装置5は、ワークWを繰り返し回転させて、測定点Pが軌跡Lの全周に及ぶように、制御装置5は、チャックテーブル3の回転周期、測定装置4のサンプリング周期の位相差を調整する。チャックテーブル3、測定装置4の測定条件の一例を以下に示す。
【0032】
[測定条件]
・ワークWの外径:12inch
・ワークWの厚み:25μm
・チャックテーブル3の回転速度:201rpm
・チャックテーブル3の周期:3.35Hz
・測定点Pの位置:ワーク外周から内側に5mm
・測定点Pスポットの径:約50μm
・測定装置4のサンプリング周期:1025Hz
【0033】
図3(a)~(c)は、チャックテーブル3の回転数に応じて、測定点Pが増加する様子を示す模式図である。図3(a)は、ワークWが1回転した場合の測定点Pの位置関係を示し、図3(b)は、ワークWが2回転した場合の測定点Pの位置関係を示し、図3(c)は、測定点PがワークWの全周に及んだ状態を示す。なお、図3中の測定点Pのスポット径は、説明の都合により実際よりも拡大している。
【0034】
上述した測定条件においては、図3(a)に示すように、ワークWが1周した際の測定点Pの数は約306であり、測定点P間の距離は約2978μmとなる。同様に、図3(b)に示すように、ワークWが2周した際の測定点Pの数は約612であり、測定点P間の距離は約1489μmとなる。このように、ワークWの回転数が少ない場合には、測定点P間の距離が測定点Pのスポット径を上回っており、測定装置4の測定点Pが軌跡L上に疎らに散乱している状態である。
【0035】
その後もワークWを回転し続けて、ワークWが67周すると、図3(c)に示すように、測定点Pの数は約20500点になり、測定点P間の距離が44.4μmとなり、測定点Pのスポット径(50μm)を下回り、測定点Pが軌跡Lの全周に亘って隙間なく設定される。
【0036】
次に、制御装置5は、測定装置4の測定値に基づいてワークW表面にクラック(微小な段差)が生じているか否かを判定する。
【0037】
具体的には、図4(a)に示すように、ワークW上で隣り合う測定点P間の距離が測定点Pの径に比べて著しく長い場合、隣り合う測定点Pの間にクラックが形成されていると、図4(b)に示すように測定装置4の測定値に変動はないため、制御装置5は、変位の変動に基づいてクラックを検出することができない。なお、図4(b)に示す測定装置4の測定値は、測定装置4とワークW表面との距離の変動を微分したものであり、測定装置4とワークW表面との距離に変動がないため、測定値は略一定である。
【0038】
一方、図5(a)に示すように、隣り合う測定点Pが軌跡Lの略全周に拡がり、ワークW上で隣り合う測定点P間の距離が測定点Pの径に比べて短い場合には、少なくとも1つの測定点Pがクラック内に配置されるため、図5(b)に示すように測定装置4の測定値がクラックの位置に応じて変動するため、制御装置5は、変位の変動に基づいてクラックを検出することができる。なお、図5(b)に示す測定装置4の測定値は、測定装置4とワークW表面との距離の変動を微分したものであり、クラックの前後で測定値は増大した後に減少する。
【0039】
このようにして、制御装置5は、ワークWの研削加工中に、ワークW表面に形成されたクラックを直ちに検知することができる。
【0040】
そして、ワークWが所望の厚みまで研削されると、研削砥石21及びチャックテーブル3の回転を停止させ、スピンドル送り機構23のスライダが起動して、研削砥石21をワークWから離間させる。そして、チャックテーブル3によるワークWの吸着保持を解除して、研削装置1によるワークWの研削加工が終了する。
【0041】
なお、測定装置4は、上述した構成に代えて、ワークW表面で反射した反射光の光強度を測定する光量測定センサであっても構わない。この場合には、図6(a)、(b)に示すように、測定装置4の測定値は、クラックにおいて減少するように変動することから、制御装置5は、反射光の光強度の変動に基づいて、クラックの有無を検知することができる。なお、このような測定装置4としては、上述した変位センサの分光器を用いることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0043】
なお、本実施形態は、研削装置1に測定装置4を適用した場合を例に説明したが、ワークWを研磨パッドで研磨する研磨装置に測定装置4を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :研削装置(加工装置)
2 :研削手段
21 :研削砥石
21a:研削面
22 :砥石スピンドル
23 :スピンドル送り機構
24 :コラム
3 :チャックテーブル
3a :回転軸
31 :チャックスピンドル
4 :測定装置(測定手段)
5 :制御装置(制御手段)
L :軌跡
P :測定点
W :ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6