(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】含ケイ素ポリマー、膜形成用組成物、含ケイ素ポリマー被膜の形成方法、シリカ系被膜の形成方法、及び含ケイ素ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/60 20060101AFI20240402BHJP
C08L 83/16 20060101ALI20240402BHJP
C09D 183/16 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08G77/60
C08L83/16
C09D183/16
(21)【出願番号】P 2020085312
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019091495
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
(72)【発明者】
【氏名】久保 慧輔
(72)【発明者】
【氏名】木下 洋平
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203025(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186167(WO,A1)
【文献】特開2018-172499(JP,A)
【文献】特開2019-189564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08L 83/00- 83/16
C09D 183/00-183/16
CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖中
にポリ又はオリゴシラン
鎖を含む含ケイ素ポリマーであって、
前記含ケイ素ポリマーにおいて、ケイ素原子上に、下記式(1)で表される基が1以上結合している含ケイ素ポリマー;
-R
1-S-R
2-SiR
3
nR
4
(3-n)・・・(1)
前記式(1)において、R
1、及びR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、R
3は、水酸基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基であり、R
4は、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、nは1以上3以下の整数である。
【請求項2】
前記分子鎖が
、ポリ又はオリゴシラン鎖のみからなる、請求項1に記載の含ケイ素ポリマー。
【請求項3】
前記分子鎖が直鎖状である、請求項1又は2に記載の含ケイ素ポリマー。
【請求項4】
前記式(1)で表される基のモル数が、前記含ケイ素ポリマー中のケイ素原子1モルに対して、0.05モル以上2.0モル以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の含ケイ素ポリマー。
【請求項5】
前記式(1)で表される基のモル数が、前記含ケイ素ポリマー中のケイ素原子1モルに対して、0.2モル以上1.0モル以下である、請求項4に記載の含ケイ素ポリマー。
【請求項6】
前記R
3が、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、前記nが3である、請求項1~5のいずれか1項に記載の含ケイ素ポリマー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の含ケイ素ポリマー(A)と、溶剤(S)とを含む、膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を乾燥する工程と、を含む、含ケイ素ポリマー被膜の形成方法。
【請求項9】
請求項7に記載の膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を乾燥して含ケイ素ポリマー被膜を形成した後に、前記含ケイ素ポリマー被膜を焼成するか、前記塗布膜を焼成する工程と、を含む、シリカ系被膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載される含ケイ素ポリマーの製造方法であって、
分子鎖中
にポリ又はオリゴシラン
鎖を含み、且つケイ素原子上に下記式(2-I)で表される不飽和炭化水素基、又は下記式(2-II)で表されるメルカプト基含有基が結合している前駆ポリマーと、下記式(1-I)で表されるメルカプトシラン化合物、又は下記式(1-II)で表される不飽和基含有シラン化合物との間で、エンチオール反応を生じさせることを含む、製造方法;
-R
5-CR
6=CH
2・・・(2-I)
前記式(2-I)において、R
5は、単結合、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R
6は、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R
5及びR
6がともに炭化水素基である場合、R
5としての炭化水素基の炭素原子数と、R
6としての炭化水素基の炭素原子数との合計が2以上8以下であり、
-R
1-SH・・・(2-II)
前記式(2-II)において、R
1は、前記式(1)におけるR
1と同様であり、
HS-R
2-SiR
3
nR
4
(3-n)・・・(1-I)
前記式(1-I)において、R
2、R
3、R
4、及びnは、前記式(1)におけるR
2、R
3、R
4、及びnと同様であり、
CH
2=CR
8-R
7-SiR
3
nR
4
(3-n)・・・(1-II)
前記式(1-II)において、R
3、R
4、及びnは、前記式(1)におけるR
3、R
4、及びnと同様であり、R
7は、単結合、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R
8は、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R
7及びR
8がともに炭化水素基である場合、R
7としての炭化水素基の炭素原子数と、R
8としての炭化水素基の炭素原子数との合計が2以上8以下である。
【請求項11】
前記前駆ポリマーにおいて、ケイ素原子上に前記式(2-I)で表される前記不飽和炭化水素基が結合している前記前駆ポリマーと、前記式(1-I)で表される前記メルカプトシラン化合物との間にエンチオール反応を生じさせる、請求項10に記載の含ケイ素ポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素ポリマーと、当該含ケイ素ポリマーを含む膜形成用組成物と、当該膜形成用組成物を用いる含ケイ素ポリマー被膜の形成方法と、当該膜形成用組成物を用いるシリカ系被膜の形成方法と、前述の含ケイ素ポリマーの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の素子における層間絶縁膜、LED素子や有機EL素子のような発光素子の封止材料、半導体基板への不純物拡散用の塗布膜、及び半導体プロセス用のギャップフィル材料等の用途でシリカ系被膜が使用されている。かかるシリカ系被膜は、一般的には、シロキサン樹脂のようなケイ素含有樹脂を含む液状の組成物を、基板上に塗布して塗布膜を形成した後、当該塗布膜を焼成して形成されている。
【0003】
このようなシリカ系被膜を形成する際に使用される塗布膜を形成するための材料としては、例えば、特定の構造のシロキサン樹脂と、シリカと、有機溶剤とを含む液状の組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1に記載されるような組成物を用いて塗布膜を形成し、形成された塗布膜を焼成してシリカ系被膜を形成する場合、塗布膜を備える基板を、焼成を行う焼成炉等へ移送する際に、移送方法によっては塗布膜が剥離してしまう場合がある。
【0006】
このような事情から、基板への密着性が良好であり基板から剥離しにくい塗布膜を形成可能な組成物を与える含ケイ素ポリマーが求められている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、基板への密着性が良好であり基板から剥離しにくい塗布膜を形成可能な組成物を与える新規な含ケイ素ポリマーと、当該含ケイ素ポリマーを含む膜形成用組成物と、当該膜形成用組成物を用いる含ケイ素ポリマー被膜の形成方法と、当該膜形成用組成物を用いるシリカ系被膜の形成方法と、及び前述の含ケイ素ポリマーの製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含む含ケイ素ポリマーにおいて、例えば、エンチオール反応によって、分子鎖上に、縮合反応し得るシリル基と、スルフィド基とを有する基を導入することにより、上記の課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含む含ケイ素ポリマーであって、
含ケイ素ポリマーにおいて、ケイ素原子上に、下記式(1)で表される基が1以上結合している含ケイ素ポリマーである;
-R1-S-R2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1)
式(1)において、R1、及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、R3は、水酸基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基であり、R4は、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、nは1以上3以下の整数である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる含ケイ素ポリマー(A)と、溶剤(S)とを含む、膜形成用組成物である。
【0011】
本発明の第3の態様は、
前述の膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を乾燥する工程と、を含む、含ケイ素ポリマー被膜の形成方法である。
【0012】
本発明の第4の態様は、第2の態様にかかる膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を乾燥して含ケイ素ポリマー被膜を形成した後に、含ケイ素ポリマー被膜を焼成するか、塗布膜を焼成する工程と、を含む、シリカ系被膜の形成方法である。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様にかかる含ケイ素ポリマーの製造方法であって、
分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含み、且つケイ素原子上に下記式(2-I)で表される不飽和炭化水素基、又は下記式(2-II)で表されるメルカプト基含有基が結合している前駆ポリマーと、下記式(1-I)で表されるカルボン酸誘導体、又は下記式(1-II)で表される不飽和基含有化合物との間で、エンチオール反応を生じさせることを含む製造方法である;
-R5-CR6=CH2・・・(2-I)
式(2-I)において、R5は、単結合、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R6は、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R5及びR6がともに炭化水素基である場合、R5としての炭化水素基の炭素原子数と、R6としての炭化水素基の炭素原子数との合計が2以上8以下であり、
-R1-SH・・・(2-II)
式(2-II)において、R1は、式(1)におけるR1と同様であり、
HS-R2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1-I)
式(1-I)において、R2、R3、R4、及びnは、式(1)におけるR2、R3、R4、及びnと同様であり、
CH2=CR8-R7-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1-II)
式(1-II)において、R3、R4、及びnは、式(1)におけるR3、R4、及びnと同様であり、R7は、単結合、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R8は、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R7及びR8がともに炭化水素基である場合、R7としての炭化水素基の炭素原子数と、R8としての炭化水素基の炭素原子数との合計が2以上8以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板への密着性が良好であり基板から剥離しにくい塗布膜を形成可能な組成物を与える新規な含ケイ素ポリマーと、当該含ケイ素ポリマーを含む膜形成用組成物と、当該膜形成用組成物を用いる含ケイ素ポリマー被膜の形成方法と、当該膜形成用組成物を用いるシリカ系被膜の形成方法と、及び前述の含ケイ素ポリマーの製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪含ケイ素ポリマー≫
含ケイ素ポリマーは、分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含む。なお、ポリ又はオリゴシロキサン鎖はポリシロキサン鎖又はオリゴシロキサン鎖のことであり、ポリ又はオリゴシラン鎖は、ポリシラン鎖又はオリゴシラン鎖のことである。
含ケイ素ポリマーにおいて、ケイ素原子上に、下記式(1)で表される基が1以上結合している。
-R1-S-R2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1)
前記式(1)で表される基は、好ましくはポリもしくはオリゴシロキサン鎖又はポリもしくはオリゴシラン鎖中のケイ素原子に直接結合している。
【0016】
式(1)において、R1、及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である。R3は、水酸基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基である。R4は、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である。nは1以上3以下の整数である。
【0017】
含ケイ素ポリマーは、上記式(1)で表される基を有するため、基板表面上の水酸基と縮合して共有結合を形成し得る。このため、上記式(1)で表される基を有する含ケイ素ポリマーを含有する組成物を用いると、基板に良好に密着した、基板から剥離しにくい塗布膜を形成できる。また、上記式(1)で表される基同士の縮合も可能である。このため、上記式(1)で表される基を有する含ケイ素ポリマーは、硬化性組成物の成分として用いることもできる。
【0018】
含ケイ素ポリマーの製造が容易であったり、ポリシランとしての特性やポリシロキサンとしての特性を活かしやすかったりすることから、含ケイ素ポリマーが有する分子鎖は、その全部、特に主鎖の全部がポリ又はオリゴシロキサン鎖のみからなるか、ポリ又はオリゴシラン鎖のみからなるのが好ましい。
【0019】
含ケイ素ポリマーの分子鎖の構造は特に限定されない。分子鎖の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、網目状であってもよく、環状であってもよい。分子量の制御や、含ケイ素ポリマーの種々の物性の調整が容易であることから、含ケイ素ポリマーの分子鎖の構造は直鎖状、特に全て直鎖構造であるのが好ましい。
なお、含ケイ素ポリマーは、分子鎖の構造が異なる分子を組み合わせて含んでいてもよい。例えば、含ケイ素ポリマーは、直鎖状の分子と、分岐鎖状の分子とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0020】
以下、ポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖とについて説明する。
【0021】
<ポリ又はオリゴシロキサン鎖>
含ケイ素ポリマー中の、ポリ又はオリゴシロキサン鎖の構造は、含ケイ素ポリマーが上記の式(1)で表される基を有する限り特に限定されない。
ポリ又はオリゴシロキサン鎖としては、例えば下式(A1)で表されるシラン化合物から選択される少なくとも1種を加水分解縮合して得られるポリ又はオリゴシロキサン鎖が好ましい。
R4-mSi(OR’)m・・・(A1)
【0022】
式(A1)において、Rは水素原子、上記の式(1)で表される基、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R’はアルキル基又はフェニル基を表し、mは2以上4以下の整数を表す。Siに複数のRが結合している場合、該複数のRは同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(OR’)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
また、Rとしての脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1以上20以下の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基である。Rとしての脂肪族炭化水素基は、1以上、例えば1以上3以下の不飽和結合を有していてもよい。
Rとしての脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ビニル基、及びアリル基等が好ましい。
【0024】
Rがアリール基、又はアラルキル基である場合、これらの基に含まれるアリール基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アリール基の好適な例としては、下記の基が挙げられる。
【0025】
【0026】
上記式の基の中では、下式の基が好ましい。
【化2】
【0027】
上記式中、Ra1は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等のアルキル基を包含する炭化水素基である。上記式中Ra2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。
【0028】
Rがアリール基又はアラルキル基である場合の好適な具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、及びピレニル基等が挙げられる。
【0029】
アリール基又はアラルキル基に含まれるベンゼン環の数は1~3個であることが好ましい。ベンゼン環の数が1~3個であると、ポリ又はオリゴシロキサン鎖の形成が容易である。アリール基又はアラルキル基は、置換基として水酸基を有していてもよい。
【0030】
また、R’としてのアルキル基は好ましくは炭素原子数1以上5以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。R’としてのアルキル基の炭素原子数は、特に加水分解速度の点から1又は2が好ましい。
式(A1)におけるmが4の場合のシラン化合物(i)は下式(A2)で表される。
Si(ORA1)a(ORA2)b(ORA3)c(ORA4)d・・・(A2)
【0031】
式(A2)中、RA1、RA2、RA3及びRA4は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0032】
a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、且つa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
【0033】
式(A1)におけるmが3の場合のシラン化合物(ii)は下記式(A3)で表される。
RA5Si(ORA6)e(ORA7)f(ORA8)g・・・(A3)
【0034】
式(A3)中、RA5は水素原子、上記の式(1)で表される基、上記Rと同じ脂肪族炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を表す。RA6、RA7、及びRA8は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0035】
e、f、及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、且つe+f+g=3の条件を満たす整数である。
【0036】
式(A1)におけるmが2の場合のシラン化合物(iii)は下記式(A4)で表される。
RA9RA10Si(ORA11)h(ORA12)i・・・(A4)
【0037】
式(A4)中、RA9及びRA10は水素原子、上記の式(1)で表される基、上記Rと同じ脂肪族炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を表す。RA11、及びRA12は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0038】
h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、且つh+i=2の条件を満たす整数である。
【0039】
シラン化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0040】
シラン化合物(ii)の具体例としては、
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、及びモノフェニルオキシジエトキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びメチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のメチルシラン化合物;
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びエチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のエチルシラン化合物;
プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、及びプロピルトリフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びプロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、等のプロピルシラン化合物;
ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジブロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のブチルシラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリペンチルオキシシラン、フェニルトリフェニルオキシシラン、フェニルモノメトキシジエトキシシラン、フェニルモノメトキシジプロポキシシラン、フェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、フェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のフェニルシラン化合物;
ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシフェニルシラン化合物;
ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、ナフチルトリペンチルオキシシラン、ナフチルトリフェニルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジエトキシシラン、ナフチルモノメトキシジプロポキシシラン、ナフチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びナフチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のナフチルシラン化合物;
ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、ベンジルトリペンチルオキシシラン、ベンジルトリフェニルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のベンジルシラン化合物;
ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリエトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシベンジルシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリペンチルオキシシラン、ビニルトリフェニルオキシシラン、ビニルモノメトキシジエトキシシラン、ビニルモノメトキシジプロポキシシラン、ビニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ビニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ビニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びビニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のビニルシラン化合物;
アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリペンチルオキシシラン、アリルトリフェニルオキシシラン、アリルモノメトキシジエトキシシラン、アリルモノメトキシジプロポキシシラン、アリルモノメトキシジペンチルオキシシラン、アリルモノメトキシジフェニルオキシシラン、アリルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びアリルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のアリルシラン化合物;
が挙げられる。
【0041】
上記の化合物が有する、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、ヒドロキシベンジル基、ビニル基、又はアリル基が、上記式(1)で表される基に置換された化合物も、シラン化合物(ii)として好ましい。
【0042】
シラン化合物(iii)の具体例としては、
ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、及びエトキシフェニルオキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルエトキシプロポキシシラン、メチルジプロポキシシラン、メチルジペンチルオキシシラン、メチルジフェニルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン等のメチルヒドロシラン化合物;
エチルジメトキシシラン、エチルメトキシエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルメトキシペンチルオキシシラン、エチルエトキシプロポキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、エチルメトキシフェニルオキシシラン等のエチルヒドロシラン化合物;
プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルメトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシペンチルオキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジプロポキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシフェニルオキシシラン等のプロピルヒドロシラン化合物;
ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルメトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシペンチルオキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルジペンチルオキシシラン、ブチルジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシフェニルオキシシラン等のブチルヒドロシラン化合物;
フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フェニルエトキシプロポキシシラン、フェニルジプロポキシシラン、フェニルジペンチルオキシシラン、フェニルジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン等のフェニルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシフェニルジメトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシフェニルジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシフェニルヒドロシラン化合物;
ナフチルジメトキシシラン、ナフチルメトキシエトキシシラン、ナフチルジエトキシシラン、ナフチルメトキシプロポキシシラン、ナフチルメトキシペンチルオキシシラン、ナフチルエトキシプロポキシシラン、ナフチルジプロポキシシラン、ナフチルジペンチルオキシシラン、ナフチルジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシフェニルオキシシラン等のナフチルヒドロシラン化合物;
ベンジルジメトキシシラン、ベンジルメトキシエトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメトキシプロポキシシラン、ベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ベンジルエトキシプロポキシシラン、ベンジルジプロポキシシラン、ベンジルジペンチルオキシシラン、ベンジルジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のベンジルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシベンジルジメトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシベンジルジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシベンジルヒドロシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルメトキシプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン等のジメチルシラン化合物;
ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシエトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジペンチルオキシシラン、ジエチルジフェニルオキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン等のジエチルシラン化合物;
ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルメトキシプロポキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジプロピルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジプロピルシラン化合物;
ジブチルジメトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジペンチルオキシシラン、ジブチルジフェニルオキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン等のジブチルシラン化合物;
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシエトキシシラン、ジフェニルメトキシプロポキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジペンチルオキシシラン、ジフェニルジフェニルオキシシラン、ジフェニルエトキシプロポキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン等のジフェニルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
ジナフチルジメトキシシラン、ジナフチルメトキシエトキシシラン、ジナフチルメトキシプロポキシシラン、ジナフチルジエトキシシラン、ジナフチルジペンチルオキシシラン、ジナフチルジフェニルオキシシラン、ジナフチルエトキシプロポキシシラン、ジナフチルジプロポキシシラン等のジナフチルシラン化合物;
ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルメトキシエトキシシラン、ジベンジルメトキシプロポキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ジベンジルジペンチルオキシシラン、ジベンジルジフェニルオキシシラン、ジベンジルエトキシプロポキシシラン、ジベンジルジプロポキシシラン等のジベンジルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシエトキシシラン、メチルエチルメトキシプロポキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン等のメチルエチルシラン化合物;
メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルメトキシエトキシシラン、メチルプロピルメトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジペンチルオキシシラン、メチルプロピルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルエトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジプロポキシシラン等のメチルプロピルシラン化合物;
メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルメトキシエトキシシラン、メチルブチルメトキシプロポキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジペンチルオキシシラン、メチルブチルジフェニルオキシシラン、メチルブチルエトキシプロポキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン等のメチルブチルシラン化合物;
メチル(フェニル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(フェニル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
メチル(ナフチル)ジメトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジエトキシシラン、メチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のメチル(ナフチル)シラン化合物;
メチル(ベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ベンジル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、エチルプロピルメトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルプロピルジペンチルオキシシラン、エチルプロピルジフェニルオキシシラン、エチルプロピルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジプロポキシシラン等のエチルプロピルシラン化合物;
エチルブチルジメトキシシラン、エチルブチルメトキシエトキシシラン、エチルブチルメトキシプロポキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、エチルブチルジペンチルオキシシラン、エチルブチルジフェニルオキシシラン、エチルブチルエトキシプロポキシシラン、エチルブチルジプロポキシシラン等のエチルブチルシラン化合物;
エチル(フェニル)ジメトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジエトキシシラン、エチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(フェニル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
エチル(ナフチル)ジメトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジエトキシシラン、エチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のエチル(ナフチル)シラン化合物;
エチル(ベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ベンジル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルメトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、プロピルブチルジペンチルオキシシラン、プロピルブチルジフェニルオキシシラン、プロピルブチルエトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジプロポキシシラン等のプロピルブチルシラン化合物;
プロピル(フェニル)ジメトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジエトキシシラン、プロピル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(フェニル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
プロピル(ナフチル)ジメトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジエトキシシラン、プロピル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ナフチル)シラン化合物;
プロピル(ベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ベンジル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
ジビニルジメトキシシラン、ジビニルメトキシエトキシシラン、ジビニルメトキシプロポキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジペンチルオキシシラン、ジビニルジフェニルオキシシラン、ジビニルエトキシプロポキシシラン、ジビニルジプロポキシシラン等のジビニルシラン化合物;
ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルメトキシエトキシシラン、ビニルメチルメトキシプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジペンチルオキシシラン、ビニルメチルジフェニルオキシシラン、ビニルメチルエトキシプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン等のビニルメチルシラン化合物;
ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルメトキシエトキシシラン、ビニルエチルメトキシプロポキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルエチルジペンチルオキシシラン、ビニルメチルジフェニルオキシシラン、ビニルエチルエトキシプロポキシシラン、ビニルエチルジプロポキシシラン等のビニルエチルシラン化合物;
ビニル(フェニル)ジメトキシシラン、ビニル(フェニル)メトキシエトキシシラン、ビニル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、ビニル(フェニル)ジエトキシシラン、ビニル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、ビニル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、ビニル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、ビニル(フェニル)ジプロポキシシラン等のビニル(フェニル)シラン化合物;
ジアリルジメトキシシラン、ジアリルメトキシエトキシシラン、ジアリルメトキシプロポキシシラン、ジアリルジエトキシシラン、ジアリルジペンチルオキシシラン、ジアリルジフェニルオキシシラン、ジアリルエトキシプロポキシシラン、ジアリルジプロポキシシラン等のジアリルシラン化合物;
アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルメトキシエトキシシラン、アリルメチルメトキシプロポキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルメチルジペンチルオキシシラン、アリルメチルジフェニルオキシシラン、アリルメチルエトキシプロポキシシラン、アリルメチルジプロポキシシラン等のアリルメチルシラン化合物;
アリルエチルジメトキシシラン、アリルエチルメトキシエトキシシラン、アリルエチルメトキシプロポキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン、アリルエチルジペンチルオキシシラン、アリルメチルジフェニルオキシシラン、アリルエチルエトキシプロポキシシラン、アリルエチルジプロポキシシラン等のアリルエチルシラン化合物;
アリル(フェニル)ジメトキシシラン、アリル(フェニル)メトキシエトキシシラン、アリル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、アリル(フェニル)ジエトキシシラン、アリル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、アリル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、アリル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、アリル(フェニル)ジプロポキシシラン等のアリル(フェニル)シラン化合物;
が挙げられる。
【0043】
上記の化合物が有する、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、ヒドロキシベンジル基、ビニル基、又はアリル基のうちの少なくとも1つが、上記式(1)で表される基に置換された化合物も、シラン化合物(iii)として好ましい。
【0044】
以上説明したシラン化合物を、常法に従って加水分解縮合することによりポリ又はオリゴシロキサン鎖が形成される。
【0045】
ポリ又はオリゴシロキサン鎖としては、下記式(A3-1)で表される単位、及び/又は下記式(A4-1)で表される単位とからなるシロキサン鎖が好ましく、式(A4-1)で表される単位からなる直鎖シロキサン鎖がより好ましい。
-(SiRA13O3/2)-・・・(A3-1)
-(SiRA14RA15O2/2)-・・・(A4-1)
式(A3-1)及び式(A4-1)中、RA13、RA14、及びRA15は、それぞれ独立に、上記式(1)で表される基、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又はフェニル基であり、RA13、また、RA14、及びRA15の少なくとも一つが上記式(1)で表される基であるのが好ましい。
【0046】
<ポリ又はオリゴシラン鎖>
含ケイ素ポリマー中のポリ又はオリゴシラン鎖の構造は、含ケイ素ポリマーが上記の式(1)で表される基を有する限り特に限定されない。ポリ又はオリゴシラン鎖は、シラノール基及び/又はアルコキシ基を含有していてもよい。
ポリ又はオリゴシラン鎖は、例えば、下式(A5)~(A7)で表される単位の少なくとも1つから構成されるのが好ましい。
【化3】
(式(A5)、(A7)、及び(A8)中、R
a3及びR
a4は、水素原子、有機基又はシリル基を表す。R
a5は、水素原子又はアルキル基を表す。R
a5がアルキル基である場合、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましい。)
【0047】
Ra3及びRa4について、有機基としては、前述の式(1)で表される基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基や、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
これらの基の中では、前述の式(1)で表される基、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基が好ましい。アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の好適な例は、前述の式(A1)中のRがアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である場合の例と同様である。
【0048】
R
a3及びR
a4がシリル基である場合、シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi
1-10シラニル基(Si
1-6シラニル基等)が挙げられる。
ポリ又はオリゴシラン鎖は、下記(A10)から(A13)の単位を含むのが好ましい。
【化4】
(A10)から(A13)中、R
a3及びR
a4は、式(A5)、(A7)、及び(A8)中におけるR
a3及びR
a4と同様である。a、b、及びcは、それぞれ、2~1000の整数である。
a、b、及びcは、それぞれ、3以上500以下が好ましく、10~500がより好ましく、10~100がさらに好ましい。各ユニット中の構成単位は、ユニット中に、ランダムに含まれていても、ブロック化された状態で含まれていてもよい。
【0049】
以上説明したポリ又はオリゴシラン鎖の中では、それぞれケイ素原子に結合している、式(1)で表される基と、アルキル基と、アリール基又はアラルキル基とを組み合わせて含むポリ又はオリゴシラン鎖、並びに、それぞれケイ素原子に結合している、式(1)で表される基と、アルキル基とを組み合わせて含むポリ又はオリゴシラン鎖が好ましい。
【0050】
より具体的には、それぞれケイ素原子に結合している、式(1)で表される基と、メチル基と、ベンジル基とを組み合わせて含むポリ又はオリゴシラン鎖、それぞれケイ素原子に結合している、式(1)で表される基と、メチル基と、フェニル基とを組み合わせて含むポリ又はオリゴシラン鎖、それぞれケイ素原子に結合している、式(1)で表される基と、メチル基とを組み合わせて含むポリ又はオリゴシラン鎖、並びにそれぞれケイ素原子に結合している、式(1)で表される基のみを含むポリ又はオリゴシラン鎖が好ましく使用される。ケイ素原子に結合している上記の基は、ケイ素原子に直接結合していることが好ましい。
【0051】
<式(1)で表される基>
含ケイ素ポリマーは、式(1)で表される基を有することにより、基板に対して良好に密着した塗布膜を与える。
【0052】
含ケイ素ポリマーを含む組成物を用いて塗布膜を形成する際に、塗布膜の基板への密着性が良好である点で、含ケイ素ポリマー中の、式(1)で表される基のモル数は、含ケイ素ポリマー中のケイ素原子1モルに対して、0.05モル以上2.0モル以下が好ましく、0.2モル以上1.0モル以下がより好ましい。
【0053】
上記式(1)中の、R1、及びR2としての炭化水素基は、炭素原子数1以上10以下である限り特に限定されない。R1としての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせであってもよい。
【0054】
R1、及びR2としての炭化水素基が脂肪族炭化水素基である場合や、R1、及びR2としての炭化水素基が脂肪族炭化水素基を含む場合、脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、環状骨格を含んでいてもよい。原料の入手が容易である点や、含ケイ素ポリマーのアルカリ溶解性が特に良好である点とから、R1、及びR2としての炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基が好ましく、直鎖状の炭化水素基がより好ましい。
【0055】
原料の入手や、含ケイ素ポリマーの合成が容易であることから、nは1であるのが好ましい。R2は2価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0056】
R1、及びR2としての炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、及びナフタレン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
【0057】
R1、及びR2としての上記の炭化水素基の中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、p-フェニレン基、及びm-フェニレン基が好ましく、エタン-1,2-ジイル基、及びプロパン-1,3-ジイル基がより好ましい。
【0058】
式(1)で表される基としては、下記式(1a)~(1d)で表される基が好ましい。
-CH2CH2-S-CH2CH2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1a)
-CH2CH2CH2-S-CH2CH2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1b)
-CH2CH2-S-CH2CH2CH2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1c)
-CH2CH2CH2-S-CH2CH2CH2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1d)
【0059】
式(1)において、R3は、水酸基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基である。R4は、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である。nは1以上3以下の整数である。
【0060】
R3としての加水分解によりシラノール基を生成させる基としては、アルコキシ基、イソシアネート基、ジメチルアミノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数1以上5以下の、直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn-ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0061】
加水分解によりシラノール基を生成させる基としては、速やかに加水分解されやすいことや、式(1)で表される基を有する含ケイ素ポリマーの調製が容易であることから、イソシアネート基、及び炭素原子数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、及びイソシアネート基が特に好ましい。
【0062】
R4としての置換基を有してもよい炭化水素基としては、例えば、無置換の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、及びアルコキシアルキル基等が挙げられる。これらの中では、無置換の炭化水素基が好ましい。炭化水素基が置換基を有する場合、当該置換基は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。
【0063】
無置換の炭化水素基の好適な例としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、及びn-デシル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、及び9-デセニル基が挙げられる。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、及びシクロデシル基等が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、及びフェネチル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフタレン-1-イル基、及びナフタレン-2-イル基等が挙げられる。
【0064】
R4としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0065】
nは1以上3以下の整数である。式(1)で表される基の反応性の点で、nとしては、2又は3が好ましく、3がより好ましい。
【0066】
以上説明した含ケイ素ポリマーの重量平均分子量(Mw)や、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率である分散度(Mw/Mn)は特に限定されない。含ケイ素ポリマーが、成膜性が良好である点で、重量平均分子量は、500以上12000以下が好ましく、1500以上8000以下がより好ましく、2500以上7000以下がさらに好ましい。
分散度は、1以上4.5以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。
【0067】
≪膜形成用組成物≫
前述の含ケイ素ポリマー(A)と、溶剤(S)とを含む組成物は、膜形成用組成物として有用である。かかる膜形成組成物を塗布することにより、含ケイ素ポリマー(A)を主体する膜を形成することができる。含ケイ素ポリマー(A)を主体とする膜の用途は特に限定されない。例えば、含ケイ素ポリマー(A)を主体とする膜を焼成することによりシリカ系被膜を形成することができる。
【0068】
<含ケイ素ポリマー(A)>
含ケイ素ポリマー(A)については、前述の通りである。膜形成用組成物における含ケイ素ポリマー(A)の含有量は特に限定されず、所望の膜厚に応じて設定すればよい。製膜性の点からは、膜形成用組成物における含ケイ素ポリマー(A)の含有量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。コンフォーマル性の観点で、0.05質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0069】
<硬化剤(B)>
膜形成用組成物は、硬化剤(B)を含んでいてもよい。膜形成用組成物が硬化剤(B)を含む場合、低誘電率であって、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤により、溶解、膨潤、変形したりしにくい、有機溶剤耐性に優れるシリカ系被膜を形成しやすい。
【0070】
硬化剤(B)の好適な例としては、塩酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルメチルアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン)、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素)等の有機アミン類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタン等の有機リン化合物;トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムジシアナミド等の有機リン化合物の複合体;三フッ化ホウ素等のルイス酸の有機アミン錯体(有機アミンとしては例えばピペリジン);アザビシクロウンデセン、ジアザビシクロウンデセントルエンスルホン酸塩、又はジアザビシクロウンデセンオクチル酸塩等のアミジン類;が挙げられる。
【0071】
膜形成用組成物中の硬化剤(B)は、異なる分類又は種類の硬化剤を2種以上含んでいてもよい。
膜形成用組成物中の、硬化剤(B)の含有量は、典型的には、組成物全体の質量に対して、0.01質量%以上40質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0072】
<ニトロキシ化合物(C)>
膜形成用組成物は、ニトロキシ化合物(C)を含んでいてもよい。膜形成用組成物がニトロキシ化合物(C)を含む場合、より誘電率の低いシリカ系被膜を形成できるので好ましい。また、膜形成用組成物がニトロキシ化合物(C)を含む場合、シリカ系被膜を形成する際の焼成温度が、例えば250℃以下(例えば200℃以上250℃以下の範囲)の低い温度であっても、シリカ系被膜の膜中残渣(シリカ系被膜由来の不純物)を低減できるので好ましい。シリカ系被膜の膜中残渣が少ないと、シリカ系被膜が高温雰囲気や減圧雰囲気におかれる場合でも、シリカ系被膜からの、膜中残渣そのものや膜中残渣の分解物に由来するガス発生が抑制される。
【0073】
ニトロキシ化合物(C)としては、ニトロキシドラジカルとして安定に存在し得る化合物であれば特に限定されない。ニトロキシ化合物(C)の好適な例としては、下式(c1)で表される構造を含む化合物が挙げられる。
【化5】
【0074】
式(c1)中、Rc1、Rc2、Rc3、及びRc4は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~10の有機基である。Rc1とRc2とは、互いに結合して環を形成してもよい。また、Rc3とRc4とは、互いに結合して環を形成してもよい。
膜形成用組成物が、ニトロキシ化合物(C)として上記式(c1)で表される構造を含む化合物を含有すると、より誘電率の低いシリカ系被膜を形成しやすい。
式(c1)において、Rc1、Rc2、Rc3、及びRc4は、それぞれ独立に、アルキル基又はヘテロ原子で置換されたアルキル基であるのが好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基が好ましい。ヘテロ原子の好適な例としては、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等が挙げられる。
【0075】
ニトロキシ化合物(C)の好適な具体例としては、例えば、ジ-tert-ブチルニトロキシド、ジ-1,1-ジメチルプロピルニトロキシド、ジ-1,2-ジメチルプロピルニトロキシド、ジ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、及び下記式(c2)、(c3)、又は(c4)で表される化合物が好ましい。
中でも、より誘電率の低いシリカ系被膜を形成しやすい点で、下記式(c2)、(c3)、又は(c4)で表される化合物がより好ましい。
【0076】
【0077】
式(c2)、(c3)、及び(c4)中、Rc5は、水素原子、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ヘテロ原子で置換されたアルキル基、又はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、若しくはウレタン結合を介して結合した1価の有機基を表す。
Rc6は、2価又は3価の有機基を表す。
n1及びn2は、1≦n1+n2≦2を満たす整数である。
n3及びn4は、1≦n3+n4≦2を満たす整数である。
n5及びn6は、1≦n5+n6≦2を満たす整数である。
n7は、2又は3である。
【0078】
式(c2)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。下記式中、R
c7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基、又は置換基を有してもよい脂環式基を表す。
【化7】
【0079】
式(c3)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化8】
【0080】
式(c4)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化9】
【0081】
さらに好ましいニトロキシ化合物(C)としては、より誘電率の低いシリカ系被膜を形成しやすいことから、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-メタクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルベンゾアート フリーラジカル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、及び4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカルが挙げられる。
ニトロキシ化合物(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
膜形成用組成物のニトロキシ化合物(C)の含有量は微量であってよい。膜形成用組成物中のニトロキシ化合物(C)の含有量は、より誘電率の低いシリカ系被膜を形成しやすいことから、膜形成用組成物の溶剤(S)以外の成分の質量の合計に対して、0.005質量%以上が好ましく、0.009質量%以上がより好ましい。
また、膜形成用組成物中のニトロキシ化合物(C)の含有量は、膜形成用組成物の溶剤(S)以外の成分の質量の合計に対して、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0083】
<溶剤(S)>
膜形成用組成物は、溶剤(S)を含有する。溶剤(S)は、含ケイ素ポリマー(A)が可溶である限り特に限定されない。
【0084】
溶剤(S)の好適な例としては、
メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール等のモノアルコール類を包含するアルコール類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;
γ-ブチロラクトン等のラクトン環含有有機溶媒;
エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;
ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;
アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;
N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等の窒素含有有機溶媒;
が挙げられる。これらの溶剤は、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0085】
これらの溶剤の中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、及びブタノールが好ましい。
【0086】
溶剤(S)が、下式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含有するのも好ましい。膜形成用組成物が、(A)ケイ素含有樹脂とともに下式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含有する溶剤(S)を含むことにより、膜形成用組成物を用いて形成されるシリカ系被膜におけるクラックの発生を抑制しやすい。
【化10】
(式(S1)中、R
s1は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基であり、pは1以上6以下の整数であり、qは0以上(p+1)以下の整数である。)
【0087】
式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの具体例としては、シクロプロピルアセテート、シクロブチルアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、シクロヘプチルアセテート、及びシクロオクチルアセテートが挙げられる。
これらの中では、入手が容易であり、クラックの発生を抑制しやすいことから、シクロオクチルアセテートが好ましい。
溶剤(S)は、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0088】
溶剤(S)中の式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。溶剤(S)中の式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの含有量は、典型的には、例えば、30質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0089】
膜形成用組成物に含まれる含ケイ素ポリマー(A)がポリ又はオリゴシラン鎖を含む場合、シリカ系被膜におけるクラックを抑制する点又は誘電率の低いシリカ系被膜を形成しやすい点で、膜形成用組成物の水分量は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
膜形成用組成物の水分は、溶剤(S)に由来する場合が多い。このため、膜形成用組成物の水分量が上記の量となるように、溶剤(S)が脱水されているのが好ましい。
【0090】
溶剤(S)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。製膜性の点から、溶剤(S)は、膜形成用組成物の固形分濃度が、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下となるように用いられる。コンフォーマル性の観点で、膜形成用組成物の固形分濃度が、0.05質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0091】
含ケイ素ポリマー(A)の用途として、膜形成用組成物に用いる他、密着剤として、従来公知の感光性/感熱性組成物に添加してもよい。この場合の含ケイ素ポリマー(A)の添加量は、固形分濃度で例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0092】
<その他の成分>
膜形成用組成物は、含ケイ素ポリマー(A)、及び溶剤(S)以外に、従来から種々の用途に使用されている膜形成用組成物に添加されている、種々の成分を含んでいてもよい。
その他の成分の例としては、光重合開始剤、酸発生剤、塩基発生剤、触媒、シランカップリング剤、密着増強剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、及び着色剤等が挙げられる。
これらの成分は、それぞれ、通常使用される量に従って、膜形成用組成物に配合される。
【0093】
<膜形成用組成物の製造方法>
膜形成用組成物の製造方法は特に限定されない。典型的には、それぞれ所定量の以上説明した成分を均一に混合し、固形分を溶剤(S)に溶解させることにより膜形成用組成物が製造される。微小な不溶物を除去するため、膜形成用組成物を所望の孔径のフィルターを用いてろ過してもよい。
【0094】
≪含ケイ素ポリマー被膜の形成方法≫
含ケイ素ポリマー被膜の形成方法は、
前述の膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を乾燥する工程と、を含む。
【0095】
塗布膜を形成する方法は特に限定されない。例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、浸漬法、滴下法等の方法により膜形成用組成物を塗布して、基板上に塗布膜が形成される。
塗布膜の膜厚は特に限定されない。典型的には、塗布膜は、好ましくは0.1nm以上20μm以下、より好ましくは0.5nm以上1000nm以下、さらに好ましくは、0.5nm以上500nm以下、特に好ましくは1nm以上10nm以下の膜厚の含ケイ素ポリマー被膜を形成できるような厚さで形成される。
【0096】
基板の材質は、特に限定されないが、焼成に耐えられる材質が好ましい。基板の材質の好適な例としては、金属、シリコン、及びガラス等の無機材料、従来ウエハ(半導体ウエハ)の材質として用いられている種々の材料や、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の耐熱性の材料が挙げられる。基板の厚さは特に限定されず、基板は、フィルムやシートであってもよい。
【0097】
基板上には、凸部や凹部があってもよい。凸部は、例えば、リソグラフィー工程上で生じるウエハ基板上の段差や、ゲート電極の凸形状や、LED素子や有機EL素子等の種々の素子からなる。凹部は、例えば基板表面をエッチングして形成される。本発明にかかる膜形成用組成物を用いる場合、基板表面に凹凸があっても膜厚が均一であり、基板表面の凹凸形状に沿った塗布膜を形成しやすい。
【0098】
このようにして形成された塗布膜は、次いで乾燥される。塗布膜の乾燥方法としては、自然乾燥や60℃以上150℃以下の範囲の温度でのベーク処理が挙げられる。乾燥処理により、酸化防止等の保護機能を有する含ケイ素ポリマー被膜が基板表面に形成される。また、含ケイ素ポリマー被膜は、後述するシリカ系被膜の前駆膜としても有用である。
【0099】
≪シリカ系被膜の形成方法≫
シリカ系被膜の形成方法は、
前述の膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を乾燥して含ケイ素ポリマー被膜を形成した後に、含ケイ素ポリマー被膜を焼成するか、塗布膜を焼成する工程と、を含む。
【0100】
塗布膜を形成する方法は、含ケイ素ポリマー被膜の形成方法における塗布膜の形成方法と同様である。
塗布膜の膜厚は特に限定されない。典型的には、塗布膜は、好ましくは0.1nm以上20μm以下、より好ましくは0.5nm以上1000nm以下、さらに好ましくは、0.5nm以上500nm以下、特に好ましくは1nm以上10nm以下の膜厚のシリカ系被膜を形成できるような厚さで形成される。
【0101】
例えばシリカ系被膜を形成する際に、前述の含ケイ素ポリマーを含む組成物を用いると、基板に対する密着性が良好である塗布膜を形成できる。その結果、基板上の塗布膜を焼成することによって、基板への密着性に優れるシリカ系被膜を形成しやすい。また段差を有する基板に対して、コンフォーマル特性が良好なシリカ系被膜を形成しやすい。
【0102】
基板の材質は、特に限定されないが、焼成に耐えられる材質が好ましい。基板の材質の好適な例としては、含ケイ素ポリマー被膜の形成方法における基板の材質の好適な例と同様である。基板の厚さは特に限定されず、基板は、フィルムやシートであってもよい。
【0103】
基板上には、凸部や凹部があってもよい。凸部は、例えば、リソグラフィー工程上で生じるウエハ基板上の段差や、ゲート電極の凸形状や、LED素子や有機EL素子等の種々の素子からなる。凹部は、例えば基板表面をエッチングして形成される。本発明にかかる膜形成用組成物を用いる場合、基板表面に凹凸があっても膜厚が均一であり、基板表面の凹凸形状に沿った塗布膜を形成しやすい。
【0104】
基板上に塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥して含ケイ素ポリマー被膜を形成した後に、含ケイ素ポリマー被膜を焼成するか、塗布膜を焼成してシリカ系被膜を形成する。
乾燥方法としては、含ケイ素ポリマー被膜の形成方法について説明した通りである。
焼成方法は特に限定されないが、典型的には電気炉等を用いて焼成が行われる。焼成温度は、典型的には200℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、1000℃以下であり、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。焼成処理により、式(1)における-SiR3
nR4
(3-n)がシロキサン化された高い保護機能の被膜が基板表面に形成される。膜形成用組成物が硬化剤(B)及び/又はニトロキシ化合物(C)を含む場合、焼成温度の下限値を200℃に下げてもより誘電率の低いシリカ系被膜を形成することができ、シリカ系被膜の膜中残渣(シリカ系被膜由来の不純物)を低減できる。焼成雰囲気は特に限定されず、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲下、真空下、又は減圧下であってもよい。大気下であってもよいし、酸素濃度を適宜コントロールしてもよい。乾燥工程と焼成工程を両方行う場合は一連の流れで続けて処理が行われてもよいし、間に別の基板処理工程があってもよい。
【0105】
このようにして形成されたシリカ系被膜について、例えば、膜厚が0.1nm以上20μm以下である。上記の方法に従い形成されたシリカ系被膜は、層間絶縁材料等の用途に好適に用いられる。また、シリカ系被膜の膜中残渣(シリカ系被膜由来の不純物)を低減できる。
【0106】
≪含ケイ素ポリマーの製造方法≫
以下、前述の含ケイ素ポリマーの製造方法の好ましい一例について説明する。
前述の含ケイ素ポリマーの好ましい製造方法としては、
分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含み、且つケイ素原子上に下記式(2-I)で表される不飽和炭化水素基、又は下記式(2-II)で表されるメルカプト基含有基が結合している前駆ポリマーと、下記式(1-I)で表されるカルボン酸誘導体、又は下記式(1-II)で表される不飽和基含有化合物との間で、エンチオール反応を生じさせることを含む方法が挙げられる。
【0107】
式(2-I)、式(2-II)、式(1-I)、及び式(1-II)は以下の通りである。
-R5-CR6=CH2・・・(2-I)
-R1-SH・・・(2-II)
HS-R2-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1-I)
CH2=CR8-R7-SiR3
nR4
(3-n)・・・(1-II)
【0108】
式(2-I)において、R5は、単結合、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基であり、R6は、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基である。R5及びR6がともに炭化水素基である場合、R5としての炭化水素基の炭素原子数と、R6としての炭化水素基の炭素原子数との合計が2以上8以下である。
【0109】
式(1-II)において、R3、R4、及びnは、式(1)におけるR3、R4、及びnと同様である。R7は、単結合、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基である。R8は、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下の炭化水素基である。R7及びR8がともに炭化水素基である場合、R7としての炭化水素基の炭素原子数と、R8としての炭化水素基の炭素原子数との合計が2以上8以下である。
【0110】
分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖を含み、且つケイ素原子上に式(2-I)で表される不飽和炭化水素基、又は式(2-II)で表されるメルカプト基含有基が結合している前駆ポリマーは、ポリ又はオリゴシロキサン鎖について前述したように、例えば、シロキサン鎖の構造に応じた構造のアルコキシシラン化合物を加水分解縮合させることにより製造し得る。
【0111】
ポリ又はオリゴシラン鎖上への式(2-I)で表される基、又は式(2-II)で表される基の導入方法は特に限定されない。典型的には、式(2-I)で表される基、又は式(2-II)で表される基を有する、ハロシラン類を、金属マグネシウムの存在下に、単独で重合させるか、他のハロシラン類と共重合させることにより、式(2-I)で表される基、又は式(2-II)で表される基を有するポリ又はオリゴシラン鎖が形成される。
【0112】
分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含み、且つケイ素原子上に式(2-I)で表される不飽和炭化水素基が結合している前駆ポリマーと、式(1-I)で表されるメルカプトシラン化合物との間でエンチオール反応を行うことにより、前述の含ケイ素ポリマーが得られる。
式(2-I)で表される不飽和炭化水素基としては、ビニル基、及びアリル基が好ましい。
式(1-I)で表されるメルカプトシラン化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、及び2-メルカプトエチルメチルジエトキシシランが好ましい。
【0113】
また、分子鎖中にポリ又はオリゴシロキサン鎖と、ポリ又はオリゴシラン鎖との少なくとも一方を含み、且つケイ素原子上に式(2-II)で表されるメルカプト基含有基が結合している前駆ポリマーと、式(1-II)で表される不飽和基含有シラン化合物との間で、エンチオール反応を生じさせることによっても、前述の含ケイ素ポリマーが得られる。
式(2-II)で表されるメルカプト基含有基としては、メルカプトメチル基,2-メルカプトエチル基、及び3-メルカプトプロピル基が好ましい。
式(1-II)で表される不飽和基含有シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、及びアリルメチルジエトキシシランが好ましい。
【0114】
これらの方法の中では、前駆ポリマーの調製や入手が容易であること等から、ケイ素原子上に式(2-I)で表される不飽和炭化水素基が結合している前駆ポリマーと、式(1-I)で表されるカルボン酸誘導体との間でエンチオール反応を行うのが好ましい。
【0115】
エンチオール反応の条件については、エンチオール反応が良好に進行する限り特に限定されず、従来エンチオール反応の条件として採用されている種々の条件を採用し得る。
エンチオール反応を行う際には、反応を促進させる目的でラジカル発生剤を用いてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、及びジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ系ラジカル発生剤があげられる。これらのラジカル発生剤は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
エンチオール反応は、溶媒の存在下で行われても、無溶媒条件で行われてもよい。速やか且つ均一に反応を進行させやすい点から、エンチオール反応は溶媒の存在下に行われるのが好ましい。
溶媒は、極性溶媒であっても非極性溶媒であってもよいが、非極性溶媒が好ましい。
エンチオール反応に用いることができる溶媒の好適な具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリン、及びノルボルナン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジクロロメタン、及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノール等のアルコール系溶媒;水等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は特に限定されない。典型的には、原料化合物の質量の合計100質量部に対して、10質量部以上5000質量部以下が好ましく、50質量部以上2000質量部以下がより好ましい。
【0117】
エンチオール反応を行う際の反応温度としては、反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、反応温度は、20℃以上200℃以下が好ましく、反応効率の観点から、好ましくは30℃以上100℃以下がより好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。
反応時間は、所望する程度までエンチオール反応が進行するように適宜調整されればよい。反応時間は、典型的には、1時間以上96時間以下が好ましく、2時間以上48時間以下がより好ましく、3時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0118】
なお、式(1)で表される基を有する、ハロシラン類を、金属マグネシウムの存在下に、単独で重合させるか、他のハロシラン類と共重合させることによっても、前述の含ケイ素ポリマーを得ることができる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0120】
〔合成例1〕
(前駆ポリマー(メチルビニルシラン重合体)の合成)
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20μm以上1000μm以下)のマグネシウム43.45gと、触媒としてのトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)5.26gと、無水塩化リチウム1.26gとを仕込んだ。反応器内の雰囲気を50℃とし、且つ1mmHg(=133kPa)に減圧して、反応器(フラスコ)内部を乾燥した。その後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム―ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン(THF)132.13mlを反応器内に加えた。次いで、反応器内の内容物を、25℃で約60分間撹拌した。次いで、この反応器内に、予め蒸留により精製したメチルビニルジクロロシラン42.0g(0.3mol)をシリンジで加え、反応器内の反応混合物を25℃で約24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入した後、さらにトルエン500mlで生成した前駆ポリマーを抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄した後、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、トルエン相からトルエンを留去することにより、直鎖状のメチルビニルシラン重合体(質量平均分子量(Mw)4000)を35.81g得た。
【0121】
〔合成例2〕
メチルビニルジクロロシラン添加後の撹拌時間を12時間に変更することの他は合成例1と同様にして、前駆ポリマーとしてのメチルビニルシラン重合体を得た。得られたメチルビニルシラン重合体の質量平均分子量(Mw)は1900であった。
【0122】
〔合成例3〕
メチルビニルジクロロシラン添加後の撹拌時間を48時間に変更することの他は合成例1と同様にして、前駆ポリマーとしてのメチルビニルシラン重合体を得た。得られたメチルビニルシラン重合体の質量平均分子量(Mw)は7000であった。
【0123】
〔実施例1~3〕
表1に記載の前駆ポリマー4.3gと、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン6.45gと、AIBN0.43gと、テトラヒドロフラン(THF)及びシクロヘキシルアセテートからなる混合溶媒81.7mlとを300mlフラスコに入れた。フラスコ内の混合物を、撹拌しながら、湯浴80℃につけて6h程度還流を実施した。その後、エバポレータにて乾燥させて目的物質である2-(3-トリメトキシシリルプロピルチオ)エチル基を有する含ケイ素ポリマーを得た。IRにより、ビニル基が消失しトリメトキシシリル基が生成していることを確認した。得られた含ケイ素ポリマーの質量平均分子量(Mw)を表1に記す。
【0124】
【0125】
〔実施例4~7、及び比較例1~3〕
表2に記載の種類の含ケイ素ポリマーを、表2に記載の種類の溶媒に、固形分濃度が10質量%となるように溶解させて、各実施例及び各比較例の膜形成用組成物を得た。
表2中、CHXAはシクロヘキシルアセテートであり、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0126】
得られた膜形成用組成物を用いて、以下の方法に従って、耐熱性評価を行った。
【0127】
<耐熱性評価>
シリコンウエハに各実施例及び各比較例の膜形成用組成物をスピン塗布し、100℃2分でプリベークした。その後、350℃30分間、ポストベークを行い、含ケイ素ポリマーからなる膜を形成した。ポストベーク後の膜(膜厚:約1μm)について、10℃/分の速度で500℃まで昇温して、500℃到達時の膜の残存重量が97%以上である場合を〇と判定し、97%未満である場合を×と判定した。
【0128】
〔実施例8~11、及び比較例4~6〕
固形分濃度を10質量%から1質量%に変更することの他は、実施例4~7、及び比較例1~3と同様に、実施例8~11及び比較例4~6の膜形成用組成物を得た。
得られた膜形成用組成物を用いて、以下の方法に従って、密着性評価を行った。
【0129】
<密着性評価>
トレンチパターンを有するシリコンウエハ基板に、各実施例及び各比較例の膜形成用組成物の溶液を一定時間浸漬させて引き上げた。その後、シリコンウエハ基板をアルコールで洗浄・乾燥した。浸漬処理前後の基板について、SEMにより基板表面の変化の有無を観察した。観察の結果、基板表面に変化が認められた場合を〇と判定し、基板表面に変化が認められなかった場合を×と判定した。
【0130】
【0131】
表2から、実施例8~11の膜形成用組成物を用いた場合、浸漬により基板表面に含ケイ素ポリマーからなる膜が形成されたことがわかる。他方、比較例4~6の膜形成用組成物を用いた場合、浸漬により形成された膜がアルコール洗浄により剥離したことがわかる。
つまり、実施例8~11の膜形成用組成物を用いた場合、アルコール洗浄により容易に基板表面から剥離しない基板表面に強固に密着した膜が形成されたことが分かる。
なお、実施例8~11の膜形成用組成物を用いた密着性評価においては、SEM観察により、基板表面のトレンチパターンに沿った膜がコンフォーマルに形成されたことが確認された。