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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】共形性炭素膜堆積
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/26 20060101AFI20240402BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C23C16/26
H01L21/302 104H
H01L21/302 105A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020569882
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019035695
(87)【国際公開番号】W WO2019241012
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】62/685,413
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マンナ, プラミット
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アビジート
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-231810(JP,A)
【文献】Fabrication and characterization of camphor-based amorphous carbon thin films,Procedia Engineering,2013年,Vol.56,p.743-749
【文献】Opto-electrical properties of amorphous carbon thin film deposited from natural precursor camphor,Applied Surface Science,2007年02月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/26
H01L 21/3065
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)


の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって前記基板上にアモルファスカーボン膜を形成することを含み、
式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択され、
前記アモルファスカーボン膜が、ハードマスク層であり、前記基板が、パターニングされるべき層を含む、方法。
【請求項2】
前記炭素前駆体が、カンフル、L-フェンコン、3-クロロ-2-ノルボルナノン、ノルボルナノン、1,3,7,7-テトラメチル-2-ノルボルナノン、ノルカンフル、(1R)-(-)-フェンコン、(+)-フェンコン、又は(-)-フェンコンのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板が、100℃から650℃の温度範囲に維持され、前記アモルファスカーボン膜を形成することが、1Torrから600Torrの範囲内の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素前駆体が、アンプル内で加熱され、水素(H)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、又は窒素(N)のうちの1つ又は複数を含むキャリアガスと共に前記基板へと流入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アモルファスカーボン膜が、熱分解処理によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アモルファスカーボン膜が、共形性又はアッシング可能のうちの1つ又は複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が、接着層又は誘電体層のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が、ピーク、トレンチ、又はビアから選択される少なくとも1つのフィーチャを含み、前記アモルファスカーボン膜が、共形性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
基板をエッチングする方法であって、
前記基板上にアモルファスカーボンハードマスクを形成することであって、当該アモルファスカーボンハードマスクが、少なくとも1つの開口を有し、式(I)


の構造を有する炭素前駆体に前記基板を曝露することによって形成され、式中、R~R10の各々が、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される、前記基板上にアモルファスカーボンハードマスクを形成することと、
前記少なくとも1つの開口を通して前記基板をエッチングすること
を含む方法。
【請求項10】
前記炭素前駆体が、カンフル、L-フェンコン、3-クロロ-2-ノルボルナノン、ノルボルナノン、1,3,7,7-テトラメチル-2-ノルボルナノン、ノルカンフル、(1R)-(-)-フェンコン、(+)-フェンコン、又は(-)-フェンコンのうちの1つ又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エッチングの前にフォトレジストを形成することをさらに含み、前記フォトレジストが、前記基板と前記アモルファスカーボンハードマスクとの間に、又は前記アモルファスカーボンハードマスク上に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記基板をエッチングした後に、前記アモルファスカーボンハードマスクを除去することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記アモルファスカーボンハードマスクが、600℃未満の温度及び1Torrから600Torrの範囲内の圧力で形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
基板表面を有する基板を設けることと、
00℃から650℃の範囲内の温度及び1Torrから600Torrの範囲内の圧力で前記基板を炭素前駆体に曝露して、前記基板表面にカーボンハードマスクを形成することであって、前記炭素前駆体が、式(I)


の構造を有し、式中、R~R10の各々が、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される、前記基板表面にカーボンハードマスクを形成することと、
前記カーボンハードマスクにおける開口を通して前記基板の少なくとも一部をエッチングすることと、
アッシングによって前記基板表面から前記カーボンハードマスクを除去すること
を含む方法。
【請求項15】
アモルファスカーボン膜を形成するための方法であって、
式(I)


の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって前記基板上にアモルファスカーボン膜を形成することを含み、
式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択され、
前記アモルファスカーボン膜が、ハードマスク層であり、前記基板が、パターニングされるべき層を含む、方法。
【請求項16】
プラズマの不在下で且つ100℃から300℃未満の範囲内の温度で式(I)


の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって前記基板上にアモルファスカーボン膜を形成することを含み、
式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される、方法。
【請求項17】
アモルファスカーボン膜を形成するための方法であって
プラズマの不在下で且つ100℃から300℃未満の範囲内の温度で式(I)


の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって前記基板上にアモルファスカーボン膜を形成することを含み、
式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、電子デバイス製造の分野に関し、具体的には、集積回路(IC)製造に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、パターニング用途に使用可能な共形性炭素膜を堆積させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
[0002]集積回路は、単一チップ上に数百万個ものトランジスタ、コンデンサ、及び抵抗器が搭載され得る複雑なデバイスへと進化を遂げている。チップ設計の進化には、より高速な回路及びより高い回路密度が継続的に必要とされる。より高い回路密度を有するより高速な回路が要求されており、この要求は、かような集積回路の製造に使用される材料についても同様の要求を課している。特に、集積回路部品の寸法が縮小するにつれて、かような部品から適切な電気的性能を得るためには、低抵抗率導電性材料や低誘電率絶縁材料を使用する必要がある。
【0003】
[0003]より大きな集積回路密度に対する要求は、集積回路構成要素の製造に使用される処理シーケンスにも要求を課す。例えば、従来のフォトリソグラフィ技法を使用する処理シーケンスでは、基板に配置された材料層のスタックの上にエネルギー感受性レジストの層が形成される。このエネルギー感受性レジスト層は、パターンの像に露光され、フォトレジストマスクが形成される。その後、エッチング処理を使用して、マスクパターンがスタックの材料層のうちの1つ又は複数に転写される。このエッチング処理で使用される化学エッチャントは、エネルギー感応性レジストのマスクに対してよりも、スタックの材料層に対してより高いエッチング選択性を有するように選択される。つまり、この化学エッチャントは、エネルギー感受性レジストよりもはるかに速い速度で材料スタックの1つ又は複数の層をエッチングする。レジスト上のスタックの1つ又は複数の材料層に対するエッチング選択性により、パターン転写が完了する前のエネルギー感受性レジストの消耗が防止される。
【0004】
[0004]パターン寸法が縮小するにつれて、パターン解像度を制御するために、エネルギー感応性レジストの厚さも相応に縮小しなければならない。かかる薄いレジスト層は、化学エッチャントの浸食により、パターン転写工程中に下層の材料層をマスキングするのに不十分であり得る。ハードマスクと呼ばれる中間層(例えば、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、又は炭素膜)は、エネルギー感受性レジスト層と下層の材料層との間に使用されることが多く、化学エッチャントに対する耐性がより高いので、パターン転写を容易にする。限界寸法(CD:critical dimension)が縮小するにつれて、下層の材料(例えば、酸化物及び窒化物)に対して所望のエッチング選択性を有するとともに、高い堆積速度を有するハードマスク材料が望まれる。しかしながら、複数のパターニングスキームは、共形性であり且つアッシング可能な膜の現像を必要とする。
【0005】
[0005]通常、共形性膜を堆積するためにALDが使用されるが、ALDは、炭素膜の堆積のために実行可能な堆積技法ではない。したがって、共形性であり且つアッシング可能な炭素膜を堆積させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]集積回路を製造するための装置及び方法が説明される。1つ又は複数の実施形態では、基板上にアモルファスカーボン膜を形成する方法が説明される。一実施形態では、アモルファスカーボン膜は、式(I)
の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって基板上に形成され、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。
【0007】
[0007]1つ又は複数の実施形態は、基板をエッチングする方法を提供する。アモルファスカーボンハードマスクは、基板上に形成される。アモルファスカーボンハードマスクは、少なくとも1つの開口を有し、式(I)
の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって形成され、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。この開口を通して、基板がエッチングされる。
【0008】
[0008]1つ又は複数の実施形態は、ある方法を対象とする。基板表面を有する基板が設けられる。この基板は、約100℃から約650℃の範囲内の温度及び約1Torrから約600Torrの範囲内の圧力で炭素前駆体に曝露され、基板表面にカーボンハードマスクが形成される。炭素前駆体は、式(I)
の構成を有し、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。基板の少なくとも一部が、カーボンハードマスクにおける開口を通してエッチングされる。カーボンハードマスクは、アッシングによって基板表面から除去される。
【0009】
[0009]本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによって、得ることができる。そのうちの幾つかの実施形態は添付の図面で例示されている。しかし、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを例示しており、したがって、本開示が他の同等に有効な実施形態も許容し得ることから、添付の図面が、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。本明細書に記載された実施形態は、添付図面では限定ではなく例示として図示されており、図面において類似の参照符号は、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】従来技術に係る基板の断面図を示す。
図1B】従来技術に係る基板の断面図を示す。
図1C】従来技術に係る基板の断面図を示す。
図1D】従来技術に係る基板の断面図を示す。
図1E】従来技術に係る基板の断面図を示す。
図2】従来技術に係る基板の断面図を示す。
図3】1つ又は複数の実施形態に係る基板の断面図を示す。
図4A】1つ又は複数の実施形態に係る基板の断面図を示す。
図4B】1つ又は複数の実施形態に係る基板の断面図を示す。
図4C】1つ又は複数の実施形態に係る基板の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0020]本開示の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示が以下の記載で提示される構成又は処理ステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。
【0012】
[0021]本明細書で使用される「基板」とは、製造プロセス中に膜処理が実行される任意の基板又は基板上に形成された材料表面のことを指す。例えば、処理が実行可能な基板表面には、用途に応じて、シリコン、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、炭素がドープされた酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに金属、金属窒化物、金属合金、及びその他の導電材料などの任意の他の材料が含まれる。基板は半導体ウェハを含むが、これに限定されない。基板表面を、研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、及び/又はベークするために、基板を前処理プロセスに曝露してよい。本開示では、基板自体の表面に直接的に膜処理を行うことに加えて、より詳細に後述するように、開示されている膜処理ステップのうちのいずれかが、基板上に形成された下部層にも行われることもある。「基板表面」という語は、文脈によって示唆されるように、このような下部層を含むことが意図されている。ゆえに、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面に堆積されている場合、新たに堆積された膜/層の曝露面が基板表面となる。
【0013】
[0022]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「前駆体」、「反応物」、「反応性ガス」などの用語は、基板表面と反応し得る任意のガス種を指すために、交換可能に使用される。
【0014】
[0023]本明細書で使用される「アモルファス水素化炭素(amorphous hydrogenated carbon)」(「アモルファスカーボン(amorphous carbon)」とも呼ばれ、a-C:Hとして示される)という用語は、例えば、およそ、約10から45原子%で、実質的な水素含有量を含有し得る、長距離結晶秩序を有さない炭素材料のことを指す。アモルファスカーボンは、その化学的不活性、光透過性、及び良好な機械的特性のゆえに、半導体用途においてハードマスク材料として使用されている。プラズマ化学気相堆積(PECVD)は、コスト効率及び膜特性の多用性のゆえに、アモルファスカーボン膜を堆積するために広く使用されている。PECVD処理では、炭化水素源(例えば、気相炭化水素、又はキャリアガス中に混入した液相炭化水素の蒸気)が、PECVDチャンバ内に導入される。プラズマ開始ガス、典型的にはヘリウムもチャンバ内に導入される。次いで、チャンバ内でプラズマが開始され、励起されたCHラジカルが生成される。励起されたCHラジカルは、チャンバ内に位置付けされた基板の表面に化学的に結合し、その上に所望のアモルファスカーボン膜が形成される。
【0015】
[0024]アモルファスカーボンハードマスク層を使用するデバイス製造業者は、以下の2つの重要な要件を満たすことを要求する。(1)下層の材料をドライエッチングしている間のハードマスクの非常に高い選択性、及び(2)リソグラフィック・レジストレーション精度のための可視スペクトルにおける高い光透過性。本明細書で使用される「ドライエッチング」という用語は、概して、材料が化学溶液中への浸漬よっても溶解しないエッチング処理のことを指しており、これには、反応性イオンエッチング、スパッタエッチング、及び気相エッチングなどの方法が含まれる。さらに、トポグラフィックフィーチャを有する基板にハードマスク層が堆積される用途の場合、アモルファスカーボンハードマスクについては、ハードマスク層がトポグラフィックフィーチャのすべての表面を共形に覆うことがさらに要求される。ここで使用される「トポグラフィックフィーチャ(topographic feature)」という用語は、トレンチ、ビア、ピークなどのうちの1つ又は複数のことを指す。「共形(conformal)」という語は、膜/コーティングが、トポグラフィックフィーチャの輪郭に適合することを意味する。膜/層の共形性は、通常、フィーチャの側壁に堆積された層の平均厚さと、基板のフィールド(又は上面)の同じ堆積層の平均厚さとの比によって定量化される。
【0016】
[0025]アモルファスカーボン膜を堆積するためにPECVDが広く使用されているにも関わらず、PECVDは、非共形であり、基板表面を汚染する粒子を多数有し、且つ基板を過度に加熱しなければならないアモルファスカーボン膜をもたらすことが多い。
【0017】
[0026]1つ又は複数の実施形態の方法は、有利には、熱化学気相堆積(CVD)を使用するアモルファスカーボン膜を堆積する。この方法は、良好なエッチング選択性や高い光透過性を有し、1つ又は複数のフィーチャを有する基板に共形に堆積することができ、比較的低い温度で生成することができるアモルファスカーボン膜の堆積を有利に提供する。
【0018】
[0027]ハードマスクは、半導体処理においてエッチング停止層として使用される。アッシング可能(ashable)なハードマスクは、一旦その目的を果たすと、アッシング(ashing)と呼ばれる技法より除去されることが可能である化学組成を有する。アッシング可能なハードマスクは、概して、微量の1つ又は複数のドーパント(例えば、窒素、フッ素、ホウ素、シリコン)を有する炭素及び水素から構成される。典型的な用途では、エッチング後、ハードマスクは、その目的を果たして下層の層から除去される。これは、概して、少なくとも部分的に「プラズマアッシング」又は「ドライストリッピング」とも呼ばれるアッシングによって達成される。アッシングされるべきハードマスクを有する基板、概して、部分的に製造された半導体ウェハは、真空下でチャンバ内に配置される。それから酸素が導入され、高周波電力に曝され、これにより、酸素ラジカル(プラズマ)が生成される。ラジカルは、ハードマスクと反応し、ハードマスクを水、一酸化炭素、及び二酸化炭素に酸化する。場合によっては、ハードマスクの完全な除去は、例えば、アッシング可能なハードマスクが、アッシングだけでは除去できない任意の残留物を残したとき、アッシングの後の追加の湿式エッチング処理又はドライエッチング処理によって達成され得る。
【0019】
[0028]ハードマスク層は、狭い且つ/又は深いコンタクトエッチング用途で使用されることが多く、フォトレジストが下層の層をマスキングするのに十分な厚さではない場合がある。このことは、限界寸法が縮小するときに特に当てはまる。
【0020】
[0029]図1Aから図1Eは、先行技術に係る、ハードマスクとしてのアモルファスカーボン層を組み込む集積回路製造シーケンスの種々の段階における基板100の概略断面図を示す。基板構造150は、基板100上に形成された他の材料層と共に基板100を示す。図1A(従来技術)は、材料層102が従来通りに上に形成された基板構造150の断面図を示す。材料層102は、低誘電率材料及び/又は酸化物(例えば、SiO)であってもよい。図1B(従来技術)は、図1Aの基板構造150上に堆積されたアモルファスカーボン層104を示す。アモルファスカーボン層104は、PECVDなどの従来の手段によって基板構造150上に形成される。アモルファスカーボン層104の厚さは、処理の特定の段階に応じて可変である。典型的には、アモルファスカーボン層104は、約500Åから約10,000Åの範囲内の厚さを有する。製造シーケンスで使用されるエネルギー感応性レジスト材料108のエッチング化学作用に応じて、エネルギー感応性レジスト材料108を形成する前に、任意選択的なキャッピング層(図示せず)をアモルファスカーボン層104上に形成することができる。任意選択的なキャッピング層は、パターンが転写されるときにアモルファスカーボン層104のマスクとして機能し、アモルファスカーボン層104をエネルギー感受性レジスト材料108から保護する。図1Bに示すように、エネルギー感受性レジスト材料108は、アモルファスカーボン層104上に形成される。エネルギー感受性レジスト材料108の層は、約2000Åから約6000Åの範囲内の厚さで基板上にスピンコーティングされ得る。ほとんどのエネルギー感受性レジスト材料は、約450nm未満の波長を有する紫外線(UV)放射に対して敏感であり、幾つかの用途では、245nm又は193nmの波長を有する。マスク110のようなパターニングデバイスを通してエネルギー感受性レジスト材料108をUV放射130に曝露し、続いて適切なデベロッパでエネルギー感受性レジスト材料108を現像することによって、パターンがエネルギー感受性レジスト材料108の層に導入される。エネルギー感応性レジスト材料108が現像された後、図1C(従来技術)に示すように、開孔/開口140からなる所望のパターンがエネルギー感応性レジスト材料108に存在することになる。その後、図1D(従来技術)を参照すると、エネルギー感受性レジスト材料108において画定されたパターンは、エネルギー感受性レジスト材料108がマスクとして使用されて、アモルファスカーボン層104を貫通するように転写される。エネルギー感受性レジスト材料108及び材料層102よりもアモルファスカーボン層104を選択的にエッチングする適切な化学エッチャントが使用されて、開口140が材料層102の表面まで延びる。適切な化学エッチャントには、オゾン、酸素、又はアンモニアプラズマが含まれる。図1E(従来技術)を参照すると、次に、アモルファスカーボン層104をハードマスクとして使用して、パターンが材料層102を貫通するように転写される。この処理工程では、ドライエッチング、すなわち非反応性プラズマエッチングなど、アモルファス炭素層104よりも材料層102を選択的に除去するエッチャントが使用される。材料層102がパターニングされた後、アモルファスカーボン層104を任意選択的に基板100から剥離することができる。
【0021】
[0030]上述したように、幾つかの用途では、ハードマスク層は、下層にトポグラフィックフィーチャ(例えば、トレンチ、ビア、又はピーク)を有する基板に堆積され得る。これらの用途では、下層のトポグラフィーに対して高度に共形であるアモルファスカーボン層も望ましい。図2(従来技術)は、フィーチャ204及び上部に形成された非共形性アモルファスカーボン層206を有する基板200の概略断面図を示す。非共形性アモルファスカーボン層206は、フィーチャ204の側壁208を完全に覆わないので、その後のエッチング処理が側壁208の望ましくない浸食をもたらす恐れがある。非共形性アモルファスカーボン層206によって側壁208が完全に被覆されないことにより、非共形性アモルファスカーボン層206の下方の材料のフォトレジスト被毒が生じることもある。フォトレジスト被毒は、電子デバイスを損傷することで知られている。層の共形性は、通常、フィーチャの側壁に堆積された層の平均厚さと、基板のフィールド(又は上面)の同じ堆積層の平均厚さとの比によって定量化される。
【0022】
[0031]1つ又は複数の実施形態では、基板上にアモルファスカーボン膜を形成する方法が説明される。一実施形態では、アモルファスカーボン膜は、式(I)
の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって、基板上に形成され、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。
【0023】
[0034]1つ又は複数の実施形態の方法の利点は、図3に示すように、他のアモルファスカーボン堆積処理よりも共形性が強化されることである。図3は、少なくとも1つのフィーチャ304が上部に形成された基板302の断面図300を示す。1つ又は複数の実施形態では、基板は、少なくとも1つのトポグラフィックフィーチャ(例えば、ピーク、トレンチ、又はビア)を含む。図3に示すように、基板302は、少なくとも1つのフィーチャ304を含み、これはトレンチであり得る。アモルファスカーボン層306は、基板302上に形成され、少なくとも1つのフィーチャ304に適合し、それを充填する。アモルファスカーボン層306は、1つ又は複数の実施形態の方法を使用して堆積された炭素膜の外観を示す。
【0024】
[0035]定性的には、アモルファスカーボン層306は、高度に共形であり、少なくとも1つのフィーチャ304の側壁308及び底面310を完全に覆う。図3を参照すると、定量的には、アモルファスカーボン層306は、約95%を超える共形性を有し得る。共形性は、側壁308に堆積されたアモルファスカーボン層306の平均厚さSと、基板302の上面312上のアモルファスカーボン層306の平均厚さTとの比として定義される。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン層306は、約95%超(約96%超、約97%超、約98%超、及び約99%超を含む)の共形性を有し得る。図2(従来技術)に戻って参照すると、一般式Iではない前駆体で堆積された膜の概略的な外観を示す非共形性アモルファスカーボン層206は、典型的に、約75%未満の共形性を有する。
【0025】
[0036]1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、アッシング可能である。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、共形性又はアッシング可能のうちの1つ又は複数である。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、共形性又はアッシング可能の両方である。
【0026】
[0037]1つ又は複数の実施形態の方法のもう一つの利点は、所望の密度及び透明度を有するアモルファスカーボン層を生成するために、より低温の処理を使用してもよいことである。通常、堆積中のより高い基板温度は、より高密度の膜の形成を促すために使用される処理パラメータである。式(I)
の構造を有し、式中、R~R10の各々が、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される炭素前駆体が使用される場合、堆積中、基板温度を、例えば、約300℃まで低下させながらもなお、所望の密度(すなわち、約1.2g/ccから約1.8g/cc)の膜を生成することができる。したがって、1つ又は複数の実施形態の方法は、約0.09まで低い吸収係数を有する、比較的高い密度の膜を生成することができる。さらに、すべての基板に対してより低い処理温度が概して望ましい。なせなら、これにより、処理の熱収支が低下し、基板上に形成されたデバイスがドーパントのマイグレーションから保護されるからである。
【0027】
[0040]一実施形態では、基板302は、半導体材料(例えば、シリコン(Si)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)、ヒ化ガリウムインジウム(InGaAs)、ヒ化アルミニウムインジウム(InAlAs))、他の半導体材料、又はこれらの任意の組合せを含む。一実施形態では、基板302は、バルク下部基板、中間絶縁層、及び上部単結晶層を含む、セミコンダクタ・オン・アイソレータ(SOI:semiconductor-on-isolator)基板である。上部単結晶層は、例えばシリコンのような上述のいずれかの材料を含み得る。様々な実施形態では、基板302は、例えば、有機、セラミック、ガラス、又は半導体基板であり得る。基板302を形成し得る材料の幾つかの例が記載されているが、パッシブ及びアクティブ電子デバイス(例えば、トランジスタ、メモリ、コンデンサ、インダクタ、抵抗器、スイッチ、集積回路、増幅器、光電子デバイス、又は任意の他の電子デバイス)を構築できる基礎として機能し得る任意の材料が、本開示の精神及び範囲内に含まれる。
【0028】
[0041]一実施形態では、基板302は、集積回路用の1つ又は複数の金属化相互接続層を含む。少なくとも幾つかの実施形態では、基板302は、金属化層を接続するように構成された相互接続子(例えば、ビア)を含む。少なくとも幾つかの実施形態では、基板302は、電子デバイス(例えば、トランジスタ、メモリ、コンデンサ、抵抗器、光電子デバイス、スイッチ、及び電気絶縁層(例えば、層間誘電体、トレンチ絶縁層、又は電子デバイス製造の当業者に公知の任意の他の絶縁層)によって分離される任意の他のアクティブ及びパッシブ電子デバイス)を含む。一実施形態では、基板302は、格子転位及び欠陥を閉じ込めるために、基板302の上に1つ又は複数の層を含む。
【0029】
[0042]アモルファスカーボン層306は、熱化学気相堆積(CVD)によって基板上に形成される。アモルファスカーボン層306の厚さは可変である。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン層306は、約5nmから約50nmの範囲(約10nmから約30nmの範囲を含む)の厚さを有し得る。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン層306は、約5nmから約50nmの範囲(約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、及び約50nmを含む)の厚さを有し得る。
【0030】
[0043]アモルファスカーボン層306を形成するために、基板302は、式(I)
の構造を有する炭素前駆体に曝露され、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。
【0031】
[0044]本明細書中で使用される「ハロゲン」とは、周期表中の元素の群、より具体的には、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びアスタチン(At)のうちの1つ又は複数のことを指す。
【0032】
[0045]本明細書中で使用される「アルキル」又は「alk」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチル-ペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、それらの種々の分岐鎖異性体などの、直鎖中に1から20個の炭素を含有する、直鎖及び分岐鎖状炭化水素の両方を含む。このような基は、1から4個までの置換基を任意選択的に含み得る。1つ又は複数の実施形態では、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。
【0033】
[0046]1つ又は複数の実施形態では、式(I)の化合物は、カンフル、L-フェンコン、3-クロロ-2-ノルボルナノン、ノルボルナノン、1,3,7,7-テトラメチル-2-ノルボルナノン、ノルカンフル、(1R)-(-)-フェンコン、(+)-フェンコン、(-)-orフェンコンのうちの1つ又は複数を含む。
【0034】
[0047]一実施形態では、炭素前駆体は、
の化学構造を有するカンフルを含む。
一実施形態では、炭素前駆体は、
の化学構造を有するL-フェンコンを含む。
一実施形態では、炭素前駆体は、
の化学構造を有する、3-クロロ-2-ノルボルナノンを含む。
【0035】
[0048]1つ又は複数の実施形態では、炭素前駆体は、処理チャンバに導入され、熱的にクラックすることが可能である。本明細書で使用される「熱的クラック」という表現は、熱の影響下での分子の分裂を表す。1つ又は複数の実施形態では、基板は、約100℃から約650℃の温度範囲で維持される。1つ又は複数の実施形態では、基板は、600℃未満の温度で維持される。1つ又は複数の実施形態では、基板は、約300℃から約600℃の範囲の温度で維持される。1つ又は複数の実施形態では、基板は、約300℃未満の温度で維持される。
【0036】
[0049]1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜の形成は、約1Torrから約600Torrの範囲内の圧力で行われる。
【0037】
[0050]1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、熱分解処理を使用して形成される。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、熱化学気相堆積(CVD)を使用して形成される。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、プラズマの不在下で、使用せずに堆積される。
【0038】
[0051]1つ又は複数の実施形態では、式(I)
の構造を有する炭素前駆体であって、式中、R~R10の各々が、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される炭素前駆体は、アンプル中で加熱され、キャリアガスと共に基板へと流入する。本明細書で使用される「キャリアガス」という用語は、前駆体分子をある位置から別の位置に移動させることができる流体(気体又は液体)のことを指す。例えば、キャリアガスは、分子をアンプル中の固体前駆体からエアロソライザー(aerosolizer)に移動させる液体であり得る。幾つかの実施形態では、キャリアガスは、不活性ガスである。1つ又は複数の実施形態では、キャリアガスは、水素(H)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、又は窒素(N)のうちの1つ又は複数である。
【0039】
[0052]1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボン膜は、ハードマスク層である。
【0040】
[0053]1つ又は複数の実施形態では、基板は、パターニングされるべき層を有する。
【0041】
[0054]1つ又は複数の実施形態では、基板は、接着層又は誘電体層のうちの1つ又は複数を含む。
【0042】
[0055]1つ又は複数の実施形態は、基板をエッチングする方法を提供する。本明細書で使用される「エッチング」という用語は、半導体の製造中に基板(例えば、ウェハ)の表面から層を化学的に除去する処理のことを指す。エッチングは、半導体の製造中の極めて重要なプロセスであり、すべての基板が、完成前に多くのエッチングステップを経る。1つ又は複数の実施形態では、基板は、エッチングに抵抗するマスキング材料によってエッチャントから保護される。1つ又は複数の実施形態では、ハードマスク材料は、フォトリソグラフィを使用してパターニングされたフォトレジストである。
【0043】
[0056]1つ又は複数の実施形態は、基板をエッチングする方法を提供する。図4Aを参照すると、1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボンハードマスク404が基板400上に形成される。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボンハードマスクは、少なくとも1つの開口440を有し、式(I)
の構造を有する炭素前駆体に基板を曝露することによって形成され、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。1つ又は複数の実施形態では、基板400は、少なくとも1つの開口440を通してエッチングされる。
【0044】
[0057]1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボンハードマスクは、約600℃未満の温度及び約1Torrから約600Torrの範囲内の圧力で形成される。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボンハードマスク404は、フォトリソグラフィ又は当業者に周知の他の方法を使用してパターニングされている。
【0045】
[0058]1つ又は複数の実施形態では、エッチングの前にフォトレジストが基板上に形成される。1つ又は複数の実施形態では、フォトレジスト402が、基板400とアモルファスカーボンハードマスク404との間に形成される。図4Bを参照すると、1つ又は複数の実施形態では、フォトレジスト406が、アモルファスカーボンハードマスク404上に形成される。
【0046】
[0059]図4Cを参照すると、基板400がエッチングされた後、1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボンハードマスク404が除去される。1つ又は複数の実施形態では、アモルファスカーボンハードマスク404は、アッシングによって除去される。
【0047】
[0060]1つ又は複数の実施形態は、ある方法を対象とする。1つ又は複数の実施形態では、基板表面を有する基板が提供される。1つ又は複数の実施形態では、基板が、約100℃から約650℃の範囲内の温度及び約1Torrから約600Torrの範囲内の圧力で炭素前駆体に曝露され、基板表面上にカーボンハードマスクが形成される。炭素前駆体は、式(I)
の構造を有し、式中、R~R10の各々は、独立して、H、ハロゲン、又は置換若しくは非置換のC~Cアルキルから選択される。1つ又は複数の実施形態では、基板の少なくとも一部が、カーボンハードマスクにおける開口を通してエッチングされる。1つ又は複数の実施形態では、カーボンハードマスクは、アッシングによって基板表面から除去される。
【0048】
[0061]上述の明細書では、本開示の実施形態が、その特定の例示的な実施形態を参照しながら説明されてきた。以下の特許請求の範囲に提示される本開示の実施形態のより広い精神及び範囲から逸脱せずに、本開示に様々な修正を加えることができることが明らかであろう。したがって、明細書及び図面は、限定を意味するよりも、例示を意味すると見なすべきである。
図1A-2】
図3
図4A
図4B
図4C