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特許7464810漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサ
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20240403BHJP
   A01K 1/03 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01M3/16 N
A01K1/03 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021112690
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2020067467の分割
【原出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021165753
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】516130754
【氏名又は名称】三和株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】古尾谷 将之
(72)【発明者】
【氏名】王 振吉
(72)【発明者】
【氏名】浦野 徹
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-033043(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234255(US,A1)
【文献】米国特許第4297686(US,A)
【文献】国際公開第2017/061457(WO,A1)
【文献】特表2017-524945(JP,A)
【文献】特開平10-185753(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107747967(CN,A)
【文献】特開平07-055623(JP,A)
【文献】特表2014-530007(JP,A)
【文献】実開平01-151229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00~3/40
A01K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージに設けられる漏水検知センサ用構造体であって、
構造体本体と、前記構造体本体を前記ケージの内部に吊り下げ可能な吊り下げ部と、を備え、
前記構造体本体は、漏水を検知するセンサを配置可能な載置体を有し、
前記載置体は、前記ケージにおける前記構造体本体の配置面に隣接する載置面を含み、
前記載置面には、その面方向と略垂直方向に貫通して構成された漏水侵入孔が設けられており、
前記吊り下げ部は、その吊り下げ長さを調節可能な調節部を有する、漏水検知センサ用構造体。
【請求項2】
前記構造体本体は、前記センサの上方を覆い、前記載置体と共に前記センサを収容する内部空間を形成する被覆体を有する、請求項1に記載の漏水検知センサ用構造体。
【請求項3】
前記載置体と前記被覆体とは、それぞれ別体に構成されている、請求項2に記載の漏水検知センサ用構造体。
【請求項4】
前記構造体本体は、前記載置面を、前記配置面から所定間隔離間させる間隔保持部を有する、請求項1~3の何れかに記載の漏水検知センサ用構造体。
【請求項5】
前記構造体本体は、前記漏水侵入孔を覆って設けられる漏水侵入孔用板状体を有する、請求項1~4の何れかに記載の漏水検知センサ用構造体。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の漏水検知センサ用構造体と、前記センサと、を備えた漏水検知センサであって、
前記センサは、前記載置体に、前記載置面と略平行に載置される漏水検知シートと、前記漏水検知シートに連結されるセンサ装置と、を備え、
前記漏水検知シートは、相互に絶縁状態とされた複数の電極構成部を有し、
前記センサ装置は、前記電極構成部を介して漏水を検知処理する検知部と、検知処理結果を含むセンサ情報を発信する発信手段と、を有する、漏水検知センサ。
【請求項7】
前記構造体本体は、前記センサ装置が露出可能な露出孔を有する、請求項6に記載の漏水検知センサ。
【請求項8】
前記載置体は、前記漏水検知シートを、前記載置面から所定間隔離間して支持する、漏水検知シート支持部を含む、請求項7に記載の漏水検知センサ。
【請求項9】
前記構造体本体は、前記露出孔を覆って設けられる露出孔用板状体を有する、請求項7又は8に記載の漏水検知センサ用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験動物が飼育されるケージに設けられる漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、教育や研究、生物学的製剤の製造等の科学上の利用に、実験動物が広く用いられてきた。
【0003】
実験動物の代表例としては、マウスやラット、モルモット、ウサギ、イヌ等が挙げられる。そして、これらの実験動物は、専用のケージの中で飼育される。
【0004】
ところで、このケージ内部には、通常、実験動物の飲み水を確保するための給水管が引き込まれており、実験動物が、その先端部を突っつくことにより給水が行われる構成となされている。
【0005】
ここで、実験動物が、給水管の先端部を齧る、先端部にケージ内の木くず等床材を詰める、といった行動をすることにより、給水管から常時給水が行われ、漏水状態となる事態が生じることがあった。
そして、実験動物の管理者がこの事態に気付かず、長時間経過してしまうと、ケージ内部が水没し、実験動物の生命を脅かしてしまう、という問題があった。
【0006】
このような問題点を解決するために、特許文献1には、自動給水器の先端部から漏水してしまう事態を防止するための、実験用動物飼育装置に関する発明が記載されている。
【0007】
この実験用動物飼育装置は、ケージ内部に金属線格子が収容される。この金属線格子には、実験動物が運動する飼育室側と水呑室側とに区画する、金属網の仕切板が取り付けられており、この仕切板によって、実験動物のけとばす木くずが水呑室に入らないように構成されている。
そして、実験動物が水を飲む際には、仕切板に設けられた穴に自身の頭部を挿入し、ケージ内部に挿入された自動給水器の先端部を咥えることで、水呑細管先端より少しずつ出る水を飲むことができる。
【0008】
また、自動給水器の水呑細管口は、水呑細管口を覆う外管の先端部より少し内方に後退させて構成されている。
これにより、実験動物が水を飲む際、外管の先端部より漏れた水を、外管内を通して自動給水器の基部に取付けられたU字形トラップを経てケージ外部に流出させ、ケージ内部には漏水しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平1-117731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ケージの構造や給水管の構造に予め工夫を施しておくものであるため、既存のケージに適用させることが困難となる。そして、自動給水器の故障等、何らかの原因で漏水が発生した際、管理者が迅速にこの事態を認知することができず、ケージ内部が水没してしまう。
【0011】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、既存のケージに対して柔軟に適応でき、確実に漏水の発生を検知することを可能とする、漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、ケージに設けられる漏水検知センサ用構造体であって、
構造体本体を備え、
前記構造体本体は、漏水を検知するセンサを配置可能な載置体を有し、
前記載置体は、前記ケージにおける前記構造体本体の配置面に隣接する載置面を含み、
前記載置面には、その面方向と略垂直方向に貫通して構成された漏水侵入孔が設けられている。
【0013】
本発明によれば、配置面をケージの底面として構造体本体を配置することで、漏水の発生によりケージ内部の水位が上昇すると、漏水侵入孔を介して、漏水がセンサに接触し、漏水を検知することが可能となる。
即ち、管理者は、本漏水検知センサ用構造体を既存のケージに配置し、センサを載置体に配置するのみで、確実に漏水の発生を検知することが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記構造体本体は、前記センサの上方を覆い、前記載置体と共に前記センサを収容する内部空間を形成する被覆体を有する。
【0015】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、センサを実験動物から保護し、実験動物のいたずら等によるセンサの不具合の発生を防止することが可能となる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記載置体と前記被覆体とは、それぞれ別体に構成されている。
【0017】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、センサの内部空間への収容作業や、取り出し作業が容易となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記構造体本体は、前記載置面を、前記配置面から所定間隔離間させる間隔保持部を有する。
【0019】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、例えば、実験動物の尿により床材が濡れた場合に、誤ってセンサが検知、発信してしまう事態を防止し、漏水のみを確実に検知することが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記構造体本体は、空間エンリッチメントを取付け可能な、空間エンリッチメント取付け部を有する。
【0021】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、センサによる漏水の検知を行いつつ、構造体本体をケージ内の環境に適応させ、実験動物のストレスを軽減させることが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記構造体本体を前記ケージの内部に吊り下げ可能な吊り下げ部を備える。
【0023】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、構造体本体がケージの底面の一定面積を占有しないため、センサによる漏水の検知を行いつつ、ケージの底面をより広く活用することができる。これにより、飼育に必要な所望の物品を配置する等、柔軟にケージ内部の環境を変更することが可能となる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記吊り下げ部は、その吊り下げ長さを調節可能な調節部を有する。
【0025】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、ケージの大きさに合わせて、構造体本体のケージの底面からの距離を調節し、漏水検知の迅速性を向上させることが可能となる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記構造体本体は、前記漏水侵入孔を覆って設けられる漏水侵入孔用板状体を有する。
【0027】
このような構成の漏水検知センサ用構造体を用いることで、漏水侵入孔を介して、例えば実験動物の尿が入り込み、センサ装置が誤ってセンサ情報を発信してしまう事態を防止することが可能となる。
【0028】
また、本発明は、前記漏水検知センサ用構造体と、前記センサと、を備えた漏水検知センサであって、
前記センサは、前記載置体に、前記載置面と略平行に載置される漏水検知シートと、前記漏水検知シートに連結されるセンサ装置と、を備え、
前記漏水検知シートは、相互に絶縁状態とされた複数の電極構成部を有し、
前記センサ装置は、前記電極構成部を介して漏水を検知処理する検知部と、検知処理結果を含むセンサ情報を発信する発信手段と、を有し、
前記構造体本体は、前記センサ装置が露出可能な露出孔を有する。
【0029】
このような構成の漏水検知センサを用いることで、構造体本体がセンサの発信を阻害することなく、露出孔を介して、センサによるスムーズな外部機器への発信を行うことが可能となる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記載置体は、前記漏水検知シートを、前記載置面から所定間隔離間して支持する、漏水検知シート支持部を含む。
【0031】
このような構成の漏水検知センサを用いることで、漏水検知シートが載置面に面接触することを防止することができ、例えば、実験動物の尿により床材が濡れた場合に、誤ってセンサが検知、発信してしまう事態を防止し、漏水のみを確実に検知することが可能となる。
【0032】
本発明の好ましい形態では、前記構造体本体は、前記露出孔を覆って設けられる露出孔用板状体を有する。
【0033】
このような構成の漏水検知センサを用いることで、露出孔を介して、例えば実験動物の尿が入り込み、センサ装置が誤ってセンサ情報を発信してしまう事態を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、既存のケージに対して柔軟に適応でき、確実に漏水の発生を検知することを可能とする、漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係る漏水検知センサ用構造体の概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る漏水検知センサ用構造体の分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る漏水検知センサ用構造体の分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るセンサを示す図であって、(a)漏水検知シートの概略斜視図(b)、(c)センサ装置の概略斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る漏水検知センサの分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る漏水検知センサに空間エンリッチメントを取付ける様子を示した概略斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る漏水検知センサのPP´線断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る漏水検知センサの使用例を示す概略斜視図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る漏水検知センサを示す概略斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る漏水検知センサの使用例を示す概略斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係る漏水検知センサ用構造体の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図1図8を用いて、本発明の実施形態に係る漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号1は、本実施形態に係る漏水検知センサ用構造体を示す。
【0037】
図1図3に示すように、漏水検知センサ用構造体1は、略直方体状に概略構成された構造体本体1aを備えている。
なお、図1(a)は、漏水検知センサ用構造体1を折曲部B2側から見た概略斜視図、図1(b)は、漏水検知センサ用構造体1を折曲部B3側から見た概略斜視図である。
また、図2は、漏水検知センサ用構造体1を折曲部B2側から見た分解斜視図、図3は、漏水検知センサ用構造体1を折曲部B3側から見た分解斜視図である。
【0038】
構造体本体1aは、漏水を検知するセンサ2(図4参照)を配置可能な載置体Aと、センサ2の上方を覆い、載置体Aと共にセンサ2を収容する内部空間R(図7参照)を形成する被覆体Bと、を有する。
なお、構造体本体1aは、実験動物の齧りによる損傷を防止するために、ステンレス等の金属性素材や耐熱性の樹脂素材で構成することが好ましい。
【0039】
載置体Aについて詳述すれば、載置体Aは、可撓性の薄板状体を湾曲させることにより概略構成されている。
また、載置体Aは、ケージZ(図8図10参照)における構造体本体1aの配置面G(図7参照)に隣接する載置面A1を含み、載置面A1には、その面方向と略垂直方向に貫通して構成された漏水侵入孔A1aが複数設けられている。
さらに、載置体Aは、その両短辺から、後述する被覆面B1に向かって湾曲形成された折曲部A2、A3を含む。
【0040】
載置面A1は、略長方形状に概略構成され、その両長辺から折曲部A2、A3の突出方向と対向する方向に向かって、それぞれ2つずつ舌片状の間隔保持部A1bが突設され、折曲部A2、A3の突出方向に向かって、それぞれ2つずつ舌片状のズレ防止部A1cが突設されている。
【0041】
各漏水侵入孔A1aは、略角丸長方形状に構成され、載置面A1の短辺方向に6個並べられ、この漏水侵入孔A1a群が、載置面A1の長辺方向に3個形成されている。
【0042】
折曲部A2には、その略中央に、折曲部A3に向かって突設された、舌片状の漏水検知シート支持部A2aと、載置面A1に亘って形成された断面L字状の貫通孔A2bと、が設けられている。
【0043】
折曲部A3には、略角丸長方形状の3個のA3aと、載置面A1に亘って形成された断面L字状の4個の貫通孔A3bと、が設けられている。
【0044】
被覆体Bについて詳述すれば、被覆体Bは、載置体Aと同様に、可撓性の薄板状体を湾曲させることにより概略構成されている。
また、被覆体Bは、載置面A1と対向する、略長方形状に概略構成された被覆面B1を含む。
さらに、被覆体Bは、被覆面B1の両短辺から、載置体Aが設けられる方向に湾曲形成された折曲部B2、B3と、被覆面B1の両長辺から、載置体Aが設けられる方向に湾曲形成された折曲部B4、B5と、を含む。
【0045】
被覆面B1には、センサ装置D(図4参照)が露出可能な複数の露出孔B1aが設けられている。
また、被覆面B1には、空間エンリッチメントE(図6参照)を取付け可能な、複数の空間エンリッチメント取付け部B1bが設けられている。
【0046】
各露出孔B1aは、略角丸長方形状に構成され、被覆面B1の短辺方向に12個並べられている。
空間エンリッチメント取付け部B1bは、被覆面B1の長辺方向に、それぞれ2つずつ設けられ、折曲部B4、B5に亘って形成された断面L字状の貫通孔として構成されている。
【0047】
折曲部B2には、その略中央から載置面A1に向かって脚部B2aが延設されている。
【0048】
折曲部B4、B5には、それぞれ、中央からやや折曲部B2寄りに、被覆面B1に向かう窪みが形成されることで、2つの脚部B4aが形成されている。
また、折曲部B4、B5には、それぞれ、折曲部B3側に、略角丸長方形状の貫通孔B4b、B5bが設けられている。
【0049】
図4に示すように、センサ2は、載置体Aに、載置面A1と略平行に配置される、略長方形状の漏水検知シートCと、漏水検知シートCに連結されるセンサ装置Dと、を備えている。
【0050】
図4(a)に示すように、漏水検知シートCは、その表面に、相互に絶縁状態とされた2つの電極構成部C1と、センサ装置Dの一対の突起部D2が挿通される一対の挿通孔C2と、を有している。
各電極構成部C1は、それぞれ、漏水検知シートCの長辺方向に沿って、漏水検知シートCの両短辺に亘って延び、漏水検知シートCの短辺方向に沿って互いに隣接して配置された、一対の導電部C1a及びC1bを含む。
【0051】
導電部C1aには、漏水検知シートCの短辺方向に沿って、且つ導電部C1bに向かって突出する、細長形状の正電極部Cpが3本設けられている。
導電部C1bには、漏水検知シートCの短辺方向に沿って、且つ導電部C1aに向かって突出する、細長形状の負電極部Cmが2本設けられている。
【0052】
正電極部Cp及び負電極部Cmは、導電部C1a及びC1bの延びる方向(漏水検知シートCの長辺方向)に沿って、交互に隣接して配置されている。
なお、正電極部Cp及び負電極部Cmの数は、これに限定されずに、幾つであっても良い。また、正電極部Cp及び負電極部Cmの形状も、細長形状でなくてもよく、例えば四角形状等であっても良い。
【0053】
各電極構成部C1は、漏水検知シートC上に、導電性インクで印刷されることで形成されている。
導電性インクに用いられる導電性材料としては、カーボン粉末を主成分とするもの、銀や銅等の金属の粉末を配合したもの、カーボンナノチューブ、分散剤、バインダ、樹脂、硬化剤等を混ぜた混合物等が挙げられる。
なお、導電部C1a及びC1bと正電極部Cp及び負電極部Cmとは、それぞれ同一の導電性材料により形成されることが好ましいが、異なる導電性材料により形成されていても良い。また、電極構成部C1は、例えば、電気を通す金属或いは炭素の粒子を混ぜて作られた合成繊維や繊維表面に金属或いは炭素を被覆した繊維、ステンレス等の金属繊維等の導電性糸を、漏水検知シートCに縫付けることにより形成されても良い。また、本実施形態では、各電極構成部C1は、漏水検知シートCの一方の面にのみ形成されているが、両面に形成しても良い。
【0054】
図4(b)、(c)は、センサ装置Dの概略斜視図であって、(b)挟持部D1を閉じた状態、(c)挟持部D1を開いた状態を示す図である。
図4(b)、(c)に示すように、センサ装置Dは、漏水検知シートCを挟持する挟持部D1と、一対の挿通孔C2に挿通される一対の突起部D2と、着用者の排泄を検知処理する複数の検知部D3と、検知処理結果を有するセンサ情報を発信する発信手段(図示せず)と、を有している。
挟持部D1は、(c)に示すように、検知部D3が外部に露出するように、回動可能に構成されている。また、挟持部D1と一対の突起部とには、それぞれ、嵌合突起pと嵌合溝gが設けられており、これにより、挟持部D1を閉じた状態が安定的に維持される。
【0055】
図5に示すように、センサ2を使用する際には、実験動物の管理者等の使用者は、一対の突起部D2を一対の挿通孔C2に挿通させた後、挟持部D1を閉じることで、漏水検知シートCとセンサ装置Dとを連結する。また、この際、使用者は、漏水検知シートCの各電極構成部C1が設けられている面と各検知部D3とを対向させて連結することで、各電極構成部C1と各検知部D3とを接触させる。
なお、図5における各電極構成部C1は漏水検知シートCの裏面に設けられており、便宜上、点線で示している。
【0056】
上記のように構成されたセンサ2を、載置体Aの載置面A1上に配置し(矢印a)、上方から被覆体Bを被せることで(矢印b)、構造体本体1aに形成された内部空間R(図7参照)に、センサ2が収容され、漏水検知センサSが構成される。
【0057】
図6に示すように、被覆体Bは、空間エンリッチメント取付け部B1bにより空間エンリッチメントEを取付けることができる。
【0058】
ここで、「空間エンリッチメント」とは、実験動物の正常な行動の多様性を引き出し、異常行動を減らすことで、実験動物の福祉と健康を改善するために用いられる、遊具や床材、梁等の構造体のことである。
本実施形態では、空間エンリッチメントEは、下面が開放された略コ字状部材であり、被覆体Bに取付けられることで、トンネル状の構造体を形成する。
【0059】
詳述すれば、空間エンリッチメントEは、その両側面からそれぞれ2つずつ、下方に向かって突設された嵌合突起E1を有している。
各嵌合突起E1は、各空間エンリッチメント取付け部B1bに対応した位置に設けられている。
各嵌合突起E1を各空間エンリッチメント取付け部B1bに挿通させることで(矢印c)、空間エンリッチメントEが、被覆体Bに取付けられる。
【0060】
図7は、漏水検知センサSのPP´線断面図であり、(a)は、被覆体Bのみを分解した状態を示している。また、図7では、配置面Gを、仮想的に直線により示している。
【0061】
図7に示すように、漏水検知シートCのセンサ装置Dが設けられていない側の端部が、漏水検知シート支持部A2aに載置されることで、漏水検知シートCが載置面A1と略平行となるように、内部空間Rに収容される。
【0062】
また、図7(b)に示すように、載置体A及び被覆体Bにより内部空間Rを形成した状態とすると、被覆体Bの脚部B2a、B4a及びB5aの下端部が、それぞれ配置面Gに接触する。これにより、構造体本体1aが全体的に安定した状態で配置面G上に配置される。
また、折曲部B2、B3は、それぞれ折曲部A3、A4に面接触し、各ズレ防止部A1cは、それぞれ折曲部B4、A5に面接触した状態で、内部空間Rが形成される。
【0063】
図8は、漏水検知センサSの使用例を示す概略斜視図である。
本実施形態においては、実験動物Xとしてマウスが2匹飼育されているが、これに限られず、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ等であっても良い。
【0064】
図8に示すように、ケージZは、上部が開口された略直方体状のケージ本体Z1と、ケージ本体Z1の開口を覆って設けられる網蓋部Z2と、網蓋部Z2上に配置される給水部Z3と、ケージ本体Z1の底面全体に敷設された木片からなる床材Z4と、内部に餌やトイレ用の砂等飼育のための必要物が収容される飼育用物品収容部Z5と、を有している。
【0065】
給水部Z3は、内部に水wが収容された給水部本体Z3aと、給水部本体Z3aから網蓋部Z2を介してケージ本体Z1内部に伸びる給水管Z3bと、を含む。
実験動物Xが、給水管Z3bの先端部を突っつくことにより、給水部Z3による給水が行われる。
【0066】
漏水検知センサSは、空間エンリッチメントEが取付けられた状態で、ケージ本体Z1の底面を配置面Gとして、ケージ本体Z1に配置されている。
ここで、漏水検知センサSは、漏水検知の迅速性を向上させるため、配置部分の床材Z4を除去し、載置面A1が床材Z4を介さず、直接配置面Gと対向するように配置されることが好ましい。
【0067】
上記のような状態となされたケージZ内部において、実験動物Xが、給水管Z3bの先端部を齧る、先端部に床材Z4を詰める、といった行動をすることにより、給水管Z3bから常時給水が行われ、漏水状態となる事態が生じた場合、水wがケージ本体Z1の底面に広がっていき、次第に水位が上昇する。
【0068】
そして、水位の上昇により、水wが、載置面A1の漏水侵入孔A1aを通過し、内部空間Rに浸入する。
【0069】
そして、さらなる水位の上昇により、水wが、漏水検知シートCが配置されている高さまで到達した時点で、センサ装置Dが電極構成部C1を介して漏水を検知し、発信手段により、PC等の外部端末(図示せず)に検知結果を発信する。
【0070】
これにより、管理者は、即座に漏水の発生を認識でき、給水部Z3を回収する、といった措置を迅速に行うことが可能となる。
【0071】
本実施形態によれば、漏水検知センサ用構造体1を既存のケージZに配置し、センサ2を載置体A(内部空間R)に配置するのみで、確実に漏水の発生を検知することが可能となる。
【0072】
また、被覆体Bにより、センサ2を実験動物Xから保護し、実験動物Xのいたずら等によるセンサ2の不具合の発生を防止することが可能となる。
【0073】
また、載置体と前記被覆体とが、それぞれ別体に構成されていることで、センサ2の内部空間Rへの収容作業や、取り出し作業が容易となる。
【0074】
また、構造体本体1aが、載置面A1を、配置面Gから所定間隔離間させる間隔保持部A1bを有することで、例えば、実験動物Xの尿により床材Z4が濡れた場合に、誤ってセンサ2が検知、発信してしまう事態を防止し、漏水のみを確実に検知することが可能となる。
【0075】
また、構造体本体1aが、空間エンリッチメントEを取付け可能な、空間エンリッチメント取付け部B1bを有することで、センサ2による漏水の検知を行いつつ、構造体本体1aをケージZ内の環境に適応させ、実験動物Xのストレスを軽減させることが可能となる。
【0076】
また、被覆体Bが、センサ装置Dが露出可能な露出孔B1aを有することで、構造体本体1aがセンサの発信を阻害することなく、露出孔B1aを介して、センサ2によるスムーズな外部機器への発信を行うことが可能となる。
【0077】
また、載置体Aは、漏水検知シートCを、載置面A1から所定間隔離間して支持する、漏水検知シート支持部A2aを含むことで、漏水検知シートCが載置面A1に面接触することを防止することができ、例えば、実験動物Xの尿により床材Z4が濡れた場合に、誤ってセンサ2が検知、発信してしまう事態を防止し、漏水のみを確実に検知することが可能となる。
【0078】
以下、図9及び図10を用いて、本発明の他の実施形態に係る漏水検知センサ用構造体及びそれを備えた漏水検知センサについて説明する。
【0079】
図9に示すように、漏水検知センサ用構造体1は、構造体本体1aをケージZの内部に吊り下げ可能な吊り下げ部1bを備えていても良い。
【0080】
詳述すれば、吊り下げ部1bは、構造体本体1aに一対設けられており、帯状体を輪状にして形成された吊り下げ部本体1b1と、構造体本体1aの吊り下げ長さを調節可能な調節部1b2と、吊り下げ部本体1b1の端部に設けられた引っ掛け部1b3と、を有している。
【0081】
各吊り下げ部本体1b1は、3つの貫通孔A3aの内の両端の貫通孔A3aに、それぞれ挿通されている。
各調節部1b2は、本実施形態では所謂バックルであるが、面ファスナーを用いた調節構造等を採用しても良く、特に限定されない。
【0082】
図10に示すように、吊り下げ部1bにより、各引っ掛け部1b3をケージ本体Z1の開口端に引っ掛けることで、漏水検知センサS全体を、ケージZの内部に吊り下げた状態で配置することが可能となる。
漏水検知センサSをこのような配置とする場合、ケージZの側面が配置面Gとなる。
【0083】
なお、漏水検知センサSをこのような配置とする場合、被覆体Bの載置体Aからの脱離を防止するために、構造体本体1aの外周面に、脱離防止部材Tを圧着して設けておくことが好ましい。脱離防止部材Tとしては、例えば輪ゴムや任意の紐状体、帯状体等が好適に用いられる。
また、漏水検知の迅速性を向上させるために、各吊り下げ部本体1b1の長さは、調節部1b2により、構造体本体1aの下端(本実施形態においては折曲部A4)とケージZの底面とが接触するか、若しくは極力近接する長さに調節されていることが好ましい。
【0084】
本実施形態によれば、構造体本体1aをケージZの内部に吊り下げ可能な吊り下げ部1bを備えることで、構造体本体1aがケージZの底面の一定面積を占有しないため、センサ2による漏水の検知を行いつつ、ケージZの底面をより広く活用することができる。これにより、飼育に必要な所望の物品を配置する等、柔軟にケージZ内部の環境を変更することが可能となる。
【0085】
また、吊り下げ部1bが、その吊り下げ長さを調節可能な調節部1b2を有することで、ケージZの大きさに合わせて、構造体本体1aのケージZの底面からの距離を調節し、漏水検知の迅速性を向上させることが可能となる。
【0086】
なお、上述の各実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0087】
例えば、図11に示すように、漏水侵入孔A1a及び露出孔B1aを覆うように、載置面A1及び被覆面B1それぞれに、漏水侵入孔用板状体PA及び露出孔用板状体PBを設ける構成としても良い。各板状体PA及びPBは、例えばポリプロピレン等の耐熱性を有する合成樹脂により形成される。また、各板状体PA、PBは、例えば任意の接着剤を介して、載置面A1及び被覆面B1に固定しておくことが好ましい。
なお、図11(a)は、漏水検知センサ用構造体1の概略斜視図であり、露出孔用板状体PBは点線で示している。また、図11(b)は、載置体Aの平面図である。
【0088】
このようにすることで、漏水侵入孔A1aや露出孔B1aを介して、例えば実験動物Xの尿が入り込み、センサ装置Dが誤ってセンサ情報を発信してしまう事態を防止することが可能となる。
【0089】
また、図11(b)に示すように、漏水侵入孔用板状体PAには、複数の切り欠き部PA1が形成されており、各切り欠き部PA1を介して複数の漏水侵入孔A1aが部分的に露出するように構成されている。
【0090】
このようにすることで、センサ装置Dと外部機器との間の通信障害を起こりにくくすることが可能となる。
なお、本実施形態では、露出孔用板状体PBが露出孔B1aを全面的に覆っている例を示しているが、露出孔用板状体PBに、露出孔B1aを部分的に露出させるための切り欠き部PB1を設ける構成としても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 漏水検知センサ用構造体
1a 構造体本体
A 載置体
A1 載置面
A1a 漏水侵入孔
A1b 間隔保持部
A1c ズレ防止部
A2 折曲部
A2a 漏水検知シート支持部
A2b 貫通孔
A3 折曲部
A3a、A3b 貫通孔
B 被覆体
B1 被覆面
B1a 露出孔
B1b 空間エンリッチメント取付け部
B2 折曲部
B2a 脚部
B3 折曲部
B4、B5 折曲部
B4a、B5a 脚部
B4b、B5b 貫通孔
R 内部空間
1b 吊り下げ部
1b1 吊り下げ部本体
1b2 調節部
1b3 引っ掛け部
T 脱離防止部材
2 センサ
C 漏水検知シート
C1 電極構成部
C1a、C1b 導電部
Cp 正電極部
Cm 負電極部
C2 挿通孔
D センサ装置
D1 挟持部
D2 突起部
D3 検知部
S 漏水検知センサ
E 空間エンリッチメント
G 配置面
Z ケージ
Z1 ケージ本体
Z2 網蓋部
Z3 給水部
Z3a 給水部本体
Z3b 給水管
Z4 床材
Z5 飼育用物品収容部
w 水
X 実験動物
PA 漏水侵入孔用板状体
PB 露出孔用板状体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11