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特許7464913無機酸化物粒子、無機酸化物粒子分散液及びその製造方法、並びに表面修飾剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】無機酸化物粒子、無機酸化物粒子分散液及びその製造方法、並びに表面修飾剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/146 20060101AFI20240403BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20240403BHJP
   C01G 19/02 20060101ALI20240403BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20240403BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C01B33/146
B01J13/00 B
B01J13/00 C
C01G19/02 B
C01G23/04 Z
C01G25/02
C08K9/06
C08L83/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021501920
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005616
(87)【国際公開番号】W WO2020175159
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019031669
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 智也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-530255(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181997(WO,A1)
【文献】特開2009-120437(JP,A)
【文献】国際公開第2007/110920(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B01J 13/00
C01G 19/02
C01G 23/04
C01G 25/02
C08K 9/06
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機酸化物粒子。
【化1】

〔式(1)中、
はメチル基又はエチル基を示し、
は炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、又はそれらの組合せを示し、
はB基とC基との反応による化学基を含む連結基であり、
B基はエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、
C基はカルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、
はエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基を示し、OR基の加水分解によるOH基によりシリカ粒子表面のシラノール基を修飾するものであり、
単位構造Aは、下記一般式(1-1)の単位構造及び下記一般式(1-2)の単位構造を含み、且つ、単位構造Aが含む一般式(1-1)の単位構造の数と一般式(1-2)の単位構造の数はそれぞれn4、n5であり、
【化2】

(式(1-2)中、Rはエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基、又は水素原子を示す)、
n1は1~3の整数であり、n2は0~1の整数であり、n1+n2=3であり、n3=n4+n5であって、n3は1~100の整数であり、0≦n4≦100であり、1≦n5≦100である。〕
【請求項2】
無機酸化物粒子の平均一次粒子径が5~100nmである、請求項に記載の無機酸化物粒子。
【請求項3】
無機酸化物粒子が、シリカ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、及び酸化スズ粒子からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の無機酸化物粒子。
【請求項4】
B基がエポキシ基であり、C基がアミノ基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
【請求項5】
上記R及び/又はRが、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及びOH基からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
【請求項6】
無機酸化物粒子が、一般式(a)又は一般式(1)で表される表面修飾剤で0.1~10個/nmとして表面修飾されたシリカ粒子である、請求項1~5のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
【請求項7】
無機酸化物粒子が、さらにその表面にトリメチルシリル基を0.3~20個/nmで有する請求項1~6のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
【請求項8】
シリコーンオイル中に、請求項1~7のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子が分散した分散液。
【請求項9】
シリコーンオイルが、粘度100センチストークス~5000センチストークスのジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、又はメチルハイドロジェンシリコーンオイルである、請求項に記載の分散液。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の表面修飾剤の製造方法であって、
側鎖、片末端、両末端、又はそれらの組合せからなる部位に官能基(b)を含むシリコーンオイルと、官能基(c)を含むシランカップリング剤とを、アルコール溶剤中で、官能基(b):官能基(c)を1:1~1:0.8のモル比で反応させる工程を含み、
官能基(b)は、エポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基からなる群から選択され、
官能基(c)は、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基からなる群から選択される、
表面修飾剤の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の分散液の製造方法であって、
工程(i):炭化水素溶剤中で、炭化水素とアルコールの混合溶剤分散無機酸化物ゾルと、一般式(1)で表される表面修飾剤のアルコール溶液とを、無機酸化物:一般式(1)で表される表面修飾剤=1:0.1~10の重量比で混合する工程、
工程(ii):60℃~150℃で、0.1~60時間の反応を行う工程、
工程(iii):アルコール溶剤を除去して炭化水素溶剤に分散した表面変性無機酸化物ゾルを得る工程、
工程(iv):炭化水素溶剤に分散した表面変性無機酸化物ゾルと、シリコーンオイルを混合して炭化水素を除去する工程、
を含む、分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面修飾剤で表面修飾された無機酸化物粒子に関する。また、本発明は、特定の表面修飾剤で表面修飾された無機酸化物粒子をシリコーンオイル中に分散した分散液及びその製造方法に関する。また、本発明は、無機酸化物粒子を表面修飾するための表面修飾剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物粒子、特にシリカ粒子は、シリコーンオイル中に分散したフィラーとして好適に用いることができる。例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物をシリコーンオイル中に分散した分散液(ゾル)は、樹脂に混合したり、あるいは基材に塗布することにより、屈折率や機械的特性を変化させることができるため、屈折率や機械的特性の改善に有効な材料である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、アルコキシシラン又はハロゲン化シランの加水分解物との含有する低誘電率シリカ系被膜形成用塗布液が開示され、被塗布面との密着性、機械的強度、耐薬品性に優れるとともに、耐クラック性に優れた絶縁膜を形成できることが記載されている(特許請求の範囲、要約書参照)。
特許文献2には、(A)炭化水素系オイル70~90質量%及びシリコーンオイル5~15質量%よりなるベースと、(B)ビニル基含有ポリシロキサン2.0~8.0質量%及びアルキルトリアルコキシシラン2.0~8.0質量%よりなる表層形成成分と、(C)シリカ微粉末を含有する潤滑離型性表層形成用コーティング組成物が開示され、金属基体の作用面に、密着性が高く、耐熱性、耐圧性及び耐久性に優れた潤滑離型性表層を形成できることが記載されている(特許請求の範囲、要約書参照)。
特許文献3及び4には、シリカ粒子等の無機酸化物粒子表面に予めカルボン酸やアミン等の特定の分散剤を結合させて疎水性溶媒への分散性を持たせた後、無機酸化物粒子を疎水性溶媒中に分散させ、疎水性溶媒中で、無機酸化物粒子表面に予め結合している特定の分散剤と、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤とを置換させることで、無機酸化物粒子の表面に、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーよりなる表面修飾剤の該1官能基を結合させた後、得られた片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーが結合することにより表面修飾された無機酸化物粒子とシリコーン樹脂とを複合化することが開示され、シリコーン樹脂と無機酸化物粒子とが良好に複合化されることにより、相分離の発生やポアやクラックの発生がない複合組成物を製造し得ることが記載されている(要約書、明細書段落[0039][0042]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-50007号公報
【文献】特開2012-115841号公報
【文献】特開2012-021117号公報
【文献】特開2013-064163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、末端に反応性官能基(有機官能基)有するポリシロキサンを用いて、該官能基とシリカ粒子表面のシラノール基との間で脱水反応によりシリカ粒子表面にポリシロキサンをグラフトする技術が記載されているが、有機官能基とシラノール基とは親水性・疎水性が相違することから、これらが十分に反応してシリカ粒子表面にポリシロキサンをグラフトすることが困難であるという問題がある。
特許文献3及び4に記載の技術においても同様な問題がある。特許文献3及び4には、前記の通り、シリカ粒子表面にカルボン酸やアミン等の分散剤を予め結合させた後、シリカ粒子を疎水性溶媒中に分散させ、次いでシリカ粒子表面に予め結合している特定の分散剤と、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーからなる表面修飾剤とを置換させることで、シリカ粒子の表面に、片末端に1官能基を有するポリジメチルシロキサン骨格ポリマーよりなる表面修飾剤の該1官能基を結合させ、表面修飾されたシリカ粒子を得る技術が記載されているが、特許文献1と同様に、有機官能基とシラノール基とは親水性・疎水性が相違することから、これらが十分に反応してシリカ粒子表面にポリシロキサンをグラフトすることが困難であるという問題がある。
なお、特許文献2には、前記の通り、炭化水素系オイル及びシリコーンオイルよりなるベースと、ビニル基含有ポリシロキサン及びアルキルトリアルコキシシランよりなる表層形成成分と、シリカ微粉末を含有する潤滑離型性表層形成用コーティング組成物が開示されているが、当該ビニル基含有ポリシロキサン及びアルキルトリアルコキシシランと、シリカ微粉末とを反応させて、シリコーンオイル中に分散させることは記載も示唆もされていない。
【0006】
親水性物質であるシリカ粒子の表面にポリシロキサンをグラフトさせることにより、非極性溶媒であるシリコーンオイル中にシリカ粒子を分散させる方法において、上記先行技術を用いると、反応性官能基(有機官能基)とシリカ粒子表面のシラノール基との間の反応は、有機物質と無機物質との反応であるため、十分に反応が進行せず、シリカ粒子表面にポリシロキサンをグラフトすることが困難であるという問題があり、ひいてはシリカ粒子表面に十分にポリシロキサンがグラフトされたシリカ粒子を得ることが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題及びその他の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、一例として、表面がシラノール基等で親水性を有する無機酸化物粒子をシリコーンオイル等の非極性溶媒(疎水性溶媒)に相溶性良く分散可能にするための表面修飾剤(表面被覆剤)の製造方法と、その表面修飾剤で被覆された無機酸化物粒子と、その表面変性された無機酸化物粒子をシリコーンオイル等の非極性溶剤に分散させた無機酸化物分散液(ゾル)及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の手段によって、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 下記一般式(a)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機酸化物粒子。
【化1】

〔式(a)中、Sは加水分解性シランを示し、Kはシリコーンを示す。〕

<2> 下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機酸化物粒子。
【化2】

〔式(1)中、
はメチル基又はエチル基を示し、
は炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、又はそれらの組合せを示し、
はB基とC基との反応による化学基を含む連結基であり、
B基はエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、
C基はカルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、
はエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基を示し、OR基の加水分解によるOH基によりシリカ粒子表面のシラノール基を修飾するものであり、
単位構造Aは、下記一般式(1-1)の単位構造及び下記一般式(1-2)の単位構造を含み、且つ、単位構造Aが含む一般式(1-1)の単位構造の数と一般式(1-2)の単位構造の数はそれぞれn4、n5であり、
【化3】

(式(1-2)中、Rはエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基、又は水素原子を示す)、
n1は1~3の整数であり、n2は0~1の整数であり、n1+n2=3であり、n3=n4+n5であって、n3は1~100の整数であり、0≦n4≦100であり、1≦n5≦100である。〕
<3> 無機酸化物粒子の平均一次粒子径が5~100nmである、<1>又は<2>に記載の無機酸化物粒子。
<4> 無機酸化物粒子が、シリカ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、及び酸化スズ粒子からなる群から選択される、<1>~<3>のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
<5> B基がエポキシ基であり、C基がアミノ基である、<2>~<4>のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
<6> 上記R及び/又はRが、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及びOH基からなる群から選択される、<2>~<5>のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
<7> 無機酸化物粒子が、一般式(a)又は一般式(1)で表される表面修飾剤で0.1~10個/nmとして表面修飾されたシリカ粒子である、<2>~<6>のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
<8> 無機酸化物粒子が、さらにその表面にトリメチルシリル基を0.3~20個/nmで有する<1>~<7>のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子。
<9> シリコーンオイル中に、<1>~<8>のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子が分散した分散液。
<10> シリコーンオイルが、粘度100センチストークス~5000センチストークスのジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、又はメチルハイドロジェンシリコーンオイルである、<9>に記載の分散液。
<11> <1>~<8>のいずれか1項に記載の表面修飾剤の製造方法であって、
側鎖、片末端、両末端、又はそれらの組合せからなる部位に官能基(b)を含むシリコーンオイルと、官能基(c)を含むシランカップリング剤とを、アルコール溶剤中で、官能基(b):官能基(c)を1:1~1:0.8のモル比で反応させる工程を含み、
官能基(b)は、エポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基からなる群から選択され、
官能基(c)は、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基からなる群から選択される、
表面修飾剤の製造方法。
<12> <9>又は<10>に記載の分散液の製造方法であって、
工程(i):炭化水素溶剤中で、炭化水素とアルコールの混合溶剤分散無機酸化物ゾルと、一般式(1)で表される表面修飾剤のアルコール溶液とを、無機酸化物:一般式(1)で表される表面修飾剤=1:0.1~10の重量比で混合する工程、
工程(ii):60℃~150℃で、0.1~60時間の反応を行う工程、
工程(iii):アルコール溶剤を除去して炭化水素溶剤に分散した表面変性無機酸化物ゾルを得る工程、
工程(iv):炭化水素溶剤に分散した表面変性無機酸化物ゾルと、シリコーンオイルを混合して炭化水素を除去する工程、
を含む、分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、一態様として、シリコーン分子の末端や側鎖に反応性の官能基を有するシリコーン(反応性シリコーン)を無機酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)の被覆剤として用い、上記反応性基にシランカップリング剤を反応させて、シリコーン分子の末端や側鎖にアルコキシシリル基を有するシリコーン材料を表面修飾剤として合成する。本発明によれば、当該アルコキシシリル基が加水分解し、シラノール基を生成するために、シリカ粒子表面のシラノール基との間で脱水反応が生じ、シリカ粒子表面にシリコーン骨格を有する表面修飾部位を強固に形成することができる。
本発明によれば、一態様として、この表面修飾部位は、無機酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)表面にシロキサン結合によって固定化されているために、シリカ粒子から脱離せず、分散媒であるシリコーンオイル中に安定に分散することができる。
本発明によれば、一態様として、表面修飾無機酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)がシリコーンオイル中に安定に分散できるため、当該シリコーンオイルは、長期安定性に優れている。
本発明によれば、一態様として、特定の表面修飾剤で修飾された無機酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)は、シリコーンオイル中に安定に分散し、分散液の屈折率や機械的物性の改善に有効に寄与し得るとともに、分散液の透明性の高さにも寄与し得るため、当該無機酸化物粒子、表面修飾剤及び分散液は、種々の用途、例えば、シリコーン樹脂への配合剤やLED用封止剤に用いることができる。
本発明によれば、上記無機酸化物粒子は、シリカ粒子のみならず、酸化スズ粒子、ジルコニア粒子及びチタニア粒子であっても同様に機能し得る。
本発明によれば、一態様として、ポリシロキサン末端にアルコキシシランが存在する変性ポリシロキサンを用い、シリカ粒子表面のシラノール基との間で、シラノール基間の脱水反応を行うことによりSi-O-Siによる無機物質と無機物質の強固な反応がスムーズに進行し、十分にシリカ粒子表面にポリシロキサンがグラフトしたシリカ粒子を得ることができ、シリコーンオイル中に分散したシリカゾルが得られる。また、上記シリカ粒子に代えて、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子等の無機酸化物粒子を使用しても、表面層にシリカ成分を形成することで、Si-O-Siにより無機酸化物粒子表面にポリシロキサンをグラフトさせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
(無機酸化物粒子及び無機酸化物粒子をシリコーンオイル中に分散した分散液)
本発明の一実施形態では、無機酸化物粒子は、下記一般式(a)又は下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾されている。
本発明の一実施形態では、表面修飾された(コロイド状)無機酸化物粒子を含む分散質が、シリコーンオイル中に分散した分散液(ゾル)であって、表面修飾剤が、下記一般式(a)又は下記一般式(1)で表される分散液である。
【0012】
【化4】

一般式(a)中、Sは加水分解性シランを示し、Kはシリコーンを示す。
本発明の一実施形態において、表面修飾された(コロイド状)無機酸化物粒子とは、無機酸化物粒子表面のヒドロキシル基と、一般式(a)の表面修飾剤のアルコキシシリル基が加水分解して生じたシラノール基とが反応することによって、一般式(a)の表面修飾剤分子が無機酸化物粒子表面に形成されているものを指す。
【0013】
【化5】

式(1)中、Rはメチル基又はエチル基を示し、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、又はそれらの組み合わせを示し、RはB基とC基の反応による化学基を含む連結基であり、B基はエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、C基はカルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、単位構造Aは式(1-1)及び式(1-2)であり、n1は1~3の整数を示し、n2は0~1の整数を示し、n1+n2=3であり、n3=n4+n5=1~100の整数を示し、n4は0≦n4≦100、n5は1≦n5≦100であり、Rはエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基、又は水素原子を示し、OR基の加水分解によるOH基によりシリカ粒子表面のシラノール基を修飾するものである。
【0014】
本発明の一実施形態において、表面修飾された(コロイド状)無機酸化物粒子とは、無機酸化物粒子表面のヒドロキシル基と、一般式(a)又は一般式(1)の表面修飾剤のアルコキシシリル基が加水分解して生じたシラノール基とが反応することによって、一般式(a)又は一般式(1)の表面修飾剤分子が無機酸化物粒子表面に形成されているものを指す。
【0015】
式(1-2)中、Rはエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基、又は水素原子を示し、式(1)中の式(1-1)の単位構造の数がn4、式(1)中の式(1-2)単位構造の数がn5である。
【0016】
式(1)中、Rはメチル基又はエチル基を示し、加水分解によりシラノール基を生成し、シリカ粒子表面のシラノール基と反応してシリカ粒子表面に式(1)のシリコーン分子鎖が形成される。
【0017】
上記炭素原子数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0018】
また、炭素原子数6~40のアリール基としては、例えば、アリ-ル基としては、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられる。
【0019】
上記Rはアルキル基とアリール基を組み合わせて、例えばアリールアルキル基として用いることもできる。
【0020】
一般式(1)の表面修飾剤は、反応性シリコーンの官能基と、シランカップリング剤の官能基とを反応させて、両官能基が反応して形成された新たな化学基を含む連結基Rが形成され、シリコーン分子にアルコキシシリル基を導入することができる。式(1)中でアルコキシシリル基のアルコキシ基の数n1は1~3個である。アルコキシシリル基は有機基Rを含むことができ、上述のアルキル基やアリール基を例示することができる。式(1)中のRの数n2は0~1の整数を例示することができる。そしてn1+n2=3の整数である。
【0021】
式(1)中のRは、B基とC基の反応による化学基を含む連結基である。
【0022】
反応性シリコーンとシランカップリング剤の両者の官能基は、それぞれB基がエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基であり、C基がカルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基を例示することができる。
【0023】
B基の官能基とC基の官能基は、付加反応、脱水反応、又は脱炭酸反応により新たな化学基が形成されるが、その時に水が反応系に関与することもできる。
【0024】
例えば、エポキシ基とカルボキシル基の付加反応、エポキシ基と酸無水物基の付加反応、エポキシ基とアミノ基の付加反応、エポキシ基とチオール基との付加反応、エポキシ基とヒドロキシル基の付加反応、ビニル基とチオール基の付加反応、ヒドロキシル基とヒドロキシル基との脱水反応、イソシアネート基とカルボキシル基との付加反応、イソシアネート基と酸無水物基との付加反応、イソシアネート基とアミノ基との付加反応、イソシアネート基とチオール基との付加反応、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応、イソシアネート基同士の環化反応が挙げられる。特に、エポキシ基とアミノ基の付加反応を用いることが好ましい。Rは、例えば下記の連結基が挙げられる。
【0025】
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】
【0026】
上記化学基を含む連結基の中でT、Tは、反応性シリコーンやシランカップリング剤に官能基と共に含まれる基であり、アルキレン基や、アリーレン基、又はそれらの組み合わせであり、酸素原子や窒素原子を含んでいて良い。これらアルキレン基、アリーレン基は上述のアルキル基、アリール基に対応する基であり上述の例示を挙げることができる。また※印は反応性シリコーン及びシランカップリング剤のシリコン原子との結合部分を示す。
【0027】
式(1)中で、単位構造Aは式(1-1)、式(1-2)を示すことができる。式(1)中での式(1-1)の単位構造の数n4、式(1)中での単位構造の数n5とした時に、式(1)中での単位構造Aの数n3はn3=n4+n5=1~100であり、n4は0≦n4≦100、n5は1≦n5≦100とすることができる。
【0028】
式(1)中に含まれるR、Rはそれぞれエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、若しくはチオール基を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基を示す。
【0029】
本発明の一実施形態では、上記分散液中の無機酸化物濃度は、通常0.1~50質量%であり、好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。
【0030】
本発明の一実施形態では、上記無機酸化物粒子の平均一次粒子径は、通常5~100nmであり、好ましくは5~30nmであり、さらに好ましくは5~20nmである。平均一次粒子径は、窒素ガス吸着法による比表面積からの換算粒子径による方法(BET法)や、透過型電子顕微鏡観察により測定された値を用いることができる。本願発明では窒素ガス吸着法による比表面積からの換算粒子径による方法(BET法)で示す。
【0031】
無機酸化物粒子は、シリカ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、及び酸化スズ粒子からなる群から選択することができる。
【0032】
無機酸化物粒子は、一般式(a)又は一般式(1)で表される表面修飾剤で、好ましくは0.1~10個/nm、より好ましくは0.2~4個/nmであり、さらに好ましくは0.3~2個/nmとして表面修飾されたシリカ粒子であってもよい。
【0033】
無機酸化物粒子は、さらにその表面にトリメチルシリル基を、好ましくは0.3~20個/nm、より好ましくは0.5~10個/nmであり、さらに好ましくは1~10個/nm、最も好ましくは0.5~1.0個/nmで有してもよい。
上記nm当たりの表面修飾基の個数は、シリカ粒子に対して添加した表面修飾剤が反応によりシリカ粒子表面を表面修飾したものとして計算した数値である。
【0034】
本発明の一実施形態では、シリコーンオイル中に上記の無機酸化物粒子が分散した分散液である。
【0035】
シリコーンオイルの例として、粘度100センチストークス~5000センチストークスのジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、及びメチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられ、例えば、信越化学工業(株)製、KF-96(100センチストークス)、KF-96(300センチストークス)、KF-96(500センチストークス)、KF-96(1000センチストークス)、KF-96(5000センチストークス)を例示することができる。
【0036】
(表面修飾剤の製造方法)
反応性シリコーンは、そのシリコーン分子中の官能基の場所が片末端型、両末端型、側鎖型、側鎖両末端型のタイプのいずれかを選択することができるが、片末端型の反応性シリコーンを好ましく用いることができる。両末端型の反応性シリコーンを選択した場合は、シランカップリング剤のモル比を反応性シリコーンのモル比より低く設定することで選択的に一方の官能基にシランカップリング剤を反応させることができる。
それらの反応性シリコーンをシランカップリング剤と反応させて式(1)の表面修飾剤を合成することができる。アルコキシシリル基のアルコキシ基が加水分解を生じ、生成したシラノール基がシリカ粒子表面のシラノール基と反応してシリカ粒子表面にシリコーン成分を被覆することができる。
【0037】
反応性シリコーンの官能基に対する、シランカップリング剤の官能基は等モル又はそれ以下(合成上は1:1~1:0.8)のモル比で反応させることにより、反応性シリコーン1分子にアルコキシシリル基を1個有する表面修飾剤が得られる。表面修飾剤中のアルコキシシリル基は1分子中に1個が好ましく、このようにすることで、シリカ粒子同士が架橋することを防ぎ、凝集や粗大粒子形成の原因を除去し得るので好ましい。
【0038】
表面修飾剤の1分子中にアルコキシシリル基を1個導入する方法は、片末端型の反応性シリコーンと、シランカップリング剤を反応することにより好ましく製造することができる。片末端型の反応性シリコーンを用いた場合、式(1)、式(1-2)中のR及び/又はRは炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基、又はOH基とすることができる。
【0039】
側鎖、片末端、両末端、又はそれらの組み合わせからなる部位に官能基(b)を含むシリコーンオイルと、官能基(c)を含むシランカップリング剤をアルコール溶剤中で、反応性基(b):反応性基(c)を1:1~1:0.8のモル比で反応させる式(1)の表面修飾剤の製造方法であり、反応性基(b)と反応性基(c)はそれぞれエポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基から選ばれる反応性基と、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基から選ばれる反応性基とすることができる。
【0040】
(分散液(ゾル)の製造方法)
本発明の一実施形態において、一般式(1)の表面修飾剤とシリカゾルを反応させることにより、表面変性シリカゾルを生成して、シリコーンオイルに分散させる方法として、以下の工程(i)~工程(iv)を含む方法を挙げることができる。
【0041】
工程(i):炭化水素溶剤中で、炭化水素とアルコールの混合溶剤分散シリカゾルと上記式(1)の表面修飾剤のアルコール溶液とを、シリカ:式(1)の表面修飾剤=1:0.1~10の重量比で混合する工程、
工程(ii):60℃~150℃で、0.1~60時間の反応を行う工程、
工程(iii):アルコール溶剤を除去して炭化水素溶剤に分散した表面変性シリカゾルを得る工程、
工程(iv):炭化水素溶剤に分散した表面変性シリカゾルと、シリコーンオイルを混合して炭化水素を除去する工程からなる分散液の製造方法を示すことができる。
【0042】
炭化水素溶媒を除去する前は透明無色の分散液であるが、炭化水素溶媒を除去した後は透明なコロイド色の分散液となる。
【0043】
上記炭化水素溶剤としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン系の脂肪族炭化水素、ナフテン系環状脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素が好ましく、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0044】
上記アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0045】
シリカゾル中のシリカ粒子の表面を式(1)の表面修飾剤で被覆する時、0.1~10個/nm、又は0.1~5個/nm、0.5~5個/nm、又は0.5~1.5個/nmの割合で被覆することができる。
【0046】
本発明では式(1)の表面修飾剤で被覆した後に、さらにトリメチルシリル基で表面を疎水化させることができる。トリメチル化剤としては例えばトリメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。シリカゾル中のシリカ粒子の表面に1~20個/nm、又は5~15個/nmの割合で被覆することができる。
【0047】
本発明はコロイド状無機酸化物粒子が平均一次粒子径5~100nmのシリカ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子が挙げられる。シリカ粒子同様に、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子でも同様に表面被覆することができる。
【0048】
本発明ではポリシロキサン末端にアルコキシシランが存在する変性ポリシロキサンを用い、シリカ粒子表面のシラノール基との間で、シラノール基間の脱水反応を行うことによりSi-O-Siによる無機物質と無機物質の強固な反応がスムーズに進行し、十分にシリカ粒子表面にポリシロキサンがグラフトしたシリカ粒子を得ることができ、シリコーンオイルに分散したシリカゾルが得られる。また、上記シリカ粒子に代えて、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化スズ等の無機酸化物粒子を使用しても、表面層にシリカ成分を形成することで、Si-O-Siにより無機酸化物粒子表面にポリシロキサンをグラフトさせることができる。ジルコニア粒子やチタニア粒子では表面層にシリカ成分を形成するためにシリカ成分を含有する物質でジルコニア粒子やチタニア粒子を変性した後に、変性ポリシロキサンをグラフトさせることが好ましい。
【0049】
シリカ成分含有物質としては、シリカコロイド粒子を用いることができる。ここに用いるシリカコロイド粒子はシリカ単独でも可能であるが、屈折率調整や密着性改良のため、他の金属酸化物コロイド粒子と複合させることが可能であり、例えば、平均一次粒子径が5nm以下。例えば1~4nmの二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子等が挙げられる。
【0050】
本発明の原料に用いるシリカゾルは、水性シリカゾルを製造して有機溶媒シリカゾルに溶媒置換して用いることができる。原料シリカゾルのシリカ粒子の平均一次粒子径は5~100nmの範囲で用いることができる。平均一次粒子径は、窒素ガス吸着法による比表面積からの換算粒子径による方法(BET法)や、透過型電子顕微鏡観察により測定された値を用いることができる。本願発明では窒素ガス吸着法による比表面積からの換算粒子径による方法(BET法)で示す。
【0051】
水性シリカゾルは、固形分濃度1~10質量%の珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換することで得られたpH1~6の珪酸液を、アルカリ存在下で50℃~110℃で加熱することにより得られる。上記陽イオン交換処理は強酸性陽イオン交換樹脂に接触させることで行われる。カラムに充填されたイオン交換樹脂に処理液を通液させることで行われる。
【0052】
得られた水性シリカゾルは、強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させ高純度のアルカリ水性シリカゾルが得られる。また、さらに強酸性陽イオン交換樹脂と接触させ高純度の酸性水性シリカゾルが得られる。そして、不純物の除去や固形分濃縮のため限外濾過を行うことができる。
【0053】
上記珪酸アルカリは、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用可能であり、1号ナトリウム水ガラス、2号ナトリウム水ガラス、3号ナトリウム水ガラス等の名称で市販されている珪酸ナトリウムを用いることができる。また、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のアルコキシシランを加水分解して得られた珪酸液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化第4級アンモニウムを添加して得られる珪酸アルカリを用いることができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、得られた水性シリカゾルには、さらに下記工程(I)と工程(II)を施すことができる。
工程(I)は、室温~50℃、pH1~4の酸性条件下で保持する工程(I-i)、100~200℃で加熱することによる工程(I-ii)、又はそれらの組合せによる工程(I-iii)を含む。
工程(II)は、陽イオン交換と陰イオン交換を順次行う工程(II-i)、又は陽イオン交換と陰イオン交換と陽イオン交換を順次行う工程(II-ii)を含む。
工程(I)において、pH1~4の酸性条件下で保持する工程(I-i)は、シリカ(a)粒子分散液(ゾル)水溶液中のシリカ(a)粒子表面から酸を用いてナトリウムイオンを取り除き、ナトリウムイオンが低減された層が形成されたシリカ(A)粒子を形成するものである。pH1~4の調整は、シリカ(a)粒子分散水溶液に硫酸、硝酸、塩酸等を添加することで達成される。
工程(I)において、100~200℃で加熱することによる工程(I-ii)はシリカ(a)粒子分散液(ゾル)水溶液をオートクレーブ装置を用いてシリカ(a)粒子表面からナトリウムイオンを取り除き、ナトリウムイオンが低減された層が形成されたシリカ(A)粒子を形成するものである。
【0055】
工程(I)では、工程(I-i)と工程(I-ii)とを組み合わせて用いることができる。例えば、工程(I-ii)を行った後に工程(I-i)を行うことができる。
【0056】
シリカ(A)水性ゾルは、工程(I)の後に、工程(II)を経て得られる。工程(II)は、陽イオン交換と陰イオン交換を順次行う工程(II-i)、又は陽イオン交換と陰イオン交換と陽イオン交換を順次行う工程(II-ii)であるが、工程(II-ii)を経ることにより残留イオンを低減したシリカ水性ゾルが得られる。
【0057】
得られた水性シリカゾルは、減圧蒸留、限外濾過法等により分散媒としての水を有機溶媒に置換することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素類、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等を例示することができる。
【0058】
本発明の一実施形態では、加水分解可能なアルコキシシランを加水分解して重縮合させてシリカゾルを得ることができる。アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランを例示することができる。アルコキシシランは水を含む溶媒中で加水分解と重縮合され、シリカゾルが製造される。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素類、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等を例示することができる。これらの溶媒は混合溶媒として用いることができる。
【0059】
水の量は、アルコキシシランのアルコキシ基1モルに対して1~10モルを用いることができる。
【0060】
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属;アンモニア;テトラメチル水酸化アンモニウム、テトラエチル水酸化アンモニウム等の水酸化第4級アンモニウム;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、尿素、エタノールアミン等のアミン類が挙げられる。
(用途)
【0061】
本発明の一実施形態において、表面修飾されたコロイド状無機酸化物粒子を含む分散質が、シリコーンオイルに分散した分散液は、従来のシリコーンオイルを用いていた用途に屈折率や機械的物性を改善したシリコーンオイルとして適用でき、また、透明性が高いことから、当該無機酸化物粒子、表面修飾剤及び分散液は、種々の用途、例えば、シリコーン樹脂への配合剤やLED用封止剤などに用いることができる。
【実施例
【0062】
(ポリマー型シランカップリング剤の合成)
1リットルのナスフラスコに片末端エポキシ変性シリコーン(官能基当量4700g/mol、粘度60mm/s、製品名:X-22-173DX、信越化学工業株式会社製)を128g入れ、次いでブタノール(関東化学(株)製)を367g添加して攪拌した後、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM-903、信越化学工業株式会社製)を5.0g添加した。その後、攪拌下にて110℃で24時間保持し、下記ポリマー型シランカップリング剤の1-ブタノール溶液(ポリマー濃度は21.3質量%)を得た。得られた溶液のエポキシ当量測定から、エポキシ基とアミノ基の反応率は80%であった。
【化10】
【0063】
[実施例1] トルエン分散シリコーンポリマーグラフトシリカゾルの作製-1
200ミリリットルのナスフラスコに、メタノール分散シリカゾル(製品名:MT-ST、平均一次粒子径12nm、シリカ濃度30質量%、日産化学株式会社製)30gを入れ、n-ブタノール8.4gを添加した。該シリカゾルの分散媒の一部を、ロータリーエバポレーターを用いてトルエン溶媒に置換することで、トルエンとn-ブタノールの混合比率が6:4の溶媒に分散したシリカゾル(平均一次粒子径12nm、シリカ濃度30質量%)30gを得た。
このシリカゾルに、上記ポリマー型シランカップリング剤のn-ブタノール溶液を50g添加し、さらにトルエン(関東化学(株)製)を36.7g加えて、攪拌下に110℃で24時間保持した。その後、トリメチルシリル基としてヘキサメチルジシロキサン(製品名KF-96L、信越化学工業株式会社製)を5.5g添加し、60℃で16時間加熱した後、再度ヘキサメチルジシロキサンを5.5g加え、60℃で8時間加熱した。
このように得られたシリカゾルを、ロータリーエバポレーターでトルエン溶媒に置換し、トルエン分散シリコーンポリマーグラフトシリカゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0064】
(参考例1):被覆物となる二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子の調製及び変性ジルコニアゾル、変性チタニアゾルの製造
JIS3号珪酸ナトリウム(SiO換算で29.8質量%含有)77.2gを純水668.8gに溶解し、次いでスズ酸ナトリウムNaSnO・HO(SnO換算で55.1質量%含有)20.9gを溶解した。得られた水溶液を水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B)を充填したカラムに通液した。次いで得られた水分散ゾルにジイソプロピルアミンを7.2g添加した。得られたゾルはアルカリ性の二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)の水分散ゾルであり、pH8.0、全金属酸化物濃度(SnO、及びSiO)1.7質量%であった。透過型電子顕微鏡による観察で一次粒子径は1~4nmであった。
上記二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)の水分散ゾルと、ジルコニアゾル及びチタニアゾルとそれぞれ混合し、ジルコニア粒子及びチタニア粒子の表面に、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)が被覆された複合粒子を製造し、水性媒体をメタノール溶媒に置換し、メタノール分散ジルコニアゾル(SnO-SiO/ZrO質量比=20:100)、メタノール分散チタニアゾル(SnO-SiO/TiO質量比=30:100)を製造した。
得られたメタノール分散ジルコニアゾルを、後述の実施例2で使用し、得られたメタノール分散チタニアゾルを、後述の実施例3で使用した。
【0065】
[実施例2] トルエン分散シリコーンポリマーグラフトジルコニアゾルの作製
200ミリリットルのナスフラスコに、上記参考例1で得られたメタノール分散ジルコニアゾル(一次粒子径1~4nmのSnO-SiO複合粒子が被覆されている平均一次粒子径17nmのジルコニア粒子のメタノール分散体)30gにメタノール26.5gとn-ブタノール35.9g添加した。該ジルコニアゾルの分散媒の一部を、ロータリーエバポレーターを用いてトルエン溶媒に置換することで、トルエンとn-ブタノールの混合比率が2:8の溶媒に分散したジルコニアゾル(平均一次粒子径17nm、固形分濃度20質量%)を44g得た。
このジルコニアゾルに、ポリマー型シランカップリング剤のブタノール溶液24.7gにトルエンを39.3g混合させた溶液64gを添加し、攪拌下に110℃で24時間保持した。上記反応後、トリメチルシリル基としてヘキサメチルジシロキサンを3.9g添加し、110℃で16時間加熱した。その後、再度ヘキサメチルジシロキサンを3.9g加え、110℃で8時間加熱した。
このように得られたジルコニアゾルを、ロータリーエバポレーターでトルエン溶媒に置換し、トルエン分散シリコーンポリマーグラフトジルコニアゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0066】
[実施例3] トルエン分散シリコーンポリマーグラフトチタニアゾルの作製
200ミリリットルのナスフラスコに、上記参考例1で得られたメタノール分散チタニアゾル(一次粒子径1~4nmのSnO-SiO複合粒子が被覆されている平均一次粒子径17nmのチタニア粒子のメタノール分散体)30gを入れ、2-プロパノール40.5g、ブタノール40.5g添加した後、グリコール酸0.9gを添加した。該チタニアゾルの分散媒の一部を、ロータリーエバポレーターを用いてトルエン溶媒に置換することで、トルエンとn-ブタノールの混合比率が2:8の溶媒に分散したチタニアゾル(平均一次粒子径17nm、固形分濃度11.3質量%)を90g得た。
このチタニアゾルに、ポリマー型シランカップリング剤のブタノール溶液24.7gに、トルエン29.4g混合させた溶液54.1gを添加し、攪拌下に110℃24時間保持した。
上記反応後、トリメチルシリル基としてヘキサメチルジシラザン(SZ-31、信越化学工業株式会社製)を3.9g添加し、60℃で8時間加熱した。
このように得られたチタニアゾルを、ロータリーエバポレーターでトルエン溶媒に置換し、トルエン分散シリコーンポリマーグラフトチタニアゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0067】
[実施例4]トルエン分散シリコーンポリマーグラフトシリカゾルの作製-2
実施例1と同様にして、トルエンとn-ブタノールの混合比率が6:4の溶媒に分散したシリカゾル(平均一次粒子径12nm、シリカ濃度30質量%)を30g得た。
このシリカゾルに、上記ポリマー型シランカップリング剤のn-ブタノール溶液を25g添加し、更にトルエン(関東化学(株)製)を14.2g加えて、攪拌下に110℃で24時間保持した。その後、トリメチルシリル基としてヘキサメチルジシロキサン(製品名KF-96L、信越化学工業株式会社製)を5.5g添加し、60℃で16時間加熱した後、再度ヘキサメチルジシロキサンを5.5g加え、60℃で8時間加熱した。
このように得られたシリカゾルを、ロータリーエバポレーターでトルエン溶媒に置換し、トルエン分散シリコーンポリマーグラフトシリカゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0068】
[実施例5]トルエン分散シリコーンポリマーグラフトシリカゾルの作製-3
メタノール分散シリカゾル(製品名:MA-ST-M、平均一次粒子径22nm、シリカ濃度30質量%、日産化学株式会社製)30gを用いた以外は、実施例1と同様にしてトルエンとn-ブタノールの混合比率が6:4の溶媒に分散したシリカゾル(平均一次粒子径12nm、シリカ濃度30質量%)30gを得た。
このシリカゾルに、上記ポリマー型シランカップリング剤のn-ブタノール溶液を28.8g添加し、更にトルエン(関東化学(株)製)を21.1g加えて、攪拌下に110℃で24時間保持した。その後、トリメチルシリル基としてヘキサメチルジシロキサン(製品名KF-96L、信越化学工業株式会社製)を3.2g添加し、60℃で16時間加熱した後、再度ヘキサメチルジシロキサンを3.2g加え、60℃で8時間加熱した。
このように得られたシリカゾルを、ロータリーエバポレーターでトルエン溶媒に置換し、トルエン分散シリコーンポリマーグラフトシリカゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0069】
(参考例2)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子で被覆された変性酸化スズゾルの製造
シュウ酸((COOH)・2HO)37.5kgを純水383kgに溶解し、これを500Lベッセルにとり、攪拌下で70℃まで加熱し、35質量%過酸化水素水150kgと金属スズ(山石金属社製、商品名:AT-SNNO200N)75kgを添加した。過酸化水素水と金属スズの添加は交互に行った。初めに35質量%過酸化水素水10kgを、次いで金属スズ5kgを添加した。反応が終了するのを待って(この間5~10分)、この操作を繰り返した。過酸化水素水及び金属スズの全量を添加した後、更に35質量%過酸化水素水10kgを追加した。過酸化水素水及び金属スズの添加に要した時間は2.5時間であり、添加終了後、更に95℃で1時間加熱し、反応を終了させた。
過酸化水素水と金属スズとのモル比はH/Snとして2.61であった。得られた酸化スズ水性ゾルは非常に透明性が良好であった。この酸化スズ水性ゾルの収量は630kgで、比重1.154、pH1.51、SnOとして14.7質量%であった。得られたゾルを透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径10~15nmの球状で、よく分散されたコロイド粒子であった。このゾルは放置によりやや粘度上昇を示したが、室温6ヶ月放置ではゲル化は認められず安定であった。得られたゾル629kgに35質量%過酸化水素水231kg、純水52kgを添加し、SnOとして10質量%、仕込み時のシュウ酸に対してH/(COOH)モル比が8.0になるように調整した後、95℃に加熱して5時間熟成を行った。この操作により、含有するシュウ酸を過酸化水素との反応により炭酸ガスと水に分解させた。この操作により得られた酸化スズスラリーを約40℃まで冷却後、白金系触媒(ズードケミー触媒社製商品名:N-220)を約15L充填した触媒塔に通液し、循環して、過剰な過酸化水素の分解処理を行った。通液速度は約30L/min.で行い、5時間循環を行った。更に陰イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IRA-410:オルガノ社製)を充填したカラムに通液し、酸性の酸化スズ水性ゾル1545kgを得た。得られた酸性酸化スズ水性ゾルは、SnO濃度11.4質量%、pH3.97、電導度55μS/cmであった。
上記二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)の水分散ゾルと、酸化スズゾルを混合し、酸化スズ粒子の表面に、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)が被覆された複合粒子を製造し、水性媒体をメタノール溶媒に置換し、メタノール分散酸化スズゾル(SnO-SiO/SnO質量比=15:100)を製造した。
得られたメタノール分散スズゾルを、後述の実施例6で使用した。
【0070】
[実施例6]トルエン分散シリコーンポリマーグラフト酸化スズゾルの作製
200ミリリットルのナスフラスコに、上記参考例2で得られたメタノール分散酸化スズゾル(日産化学株式会社製、SnO-SiO複合粒子が被覆されている平均一次粒子径21nmの酸化スズ粒子のメタノール分散体)30gを入れ、n-ブタノール28.4g添加した。該スズゾルの分散媒の一部を、ロータリーエバポレーターを用いてトルエン溶媒に置換することで、トルエンとn-ブタノールの混合比率が2:8の溶媒に分散した酸化スズゾル(平均一次粒子径17nm、固形分濃度20質量%)を44g得た。
この酸化スズゾルに、ポリマー型シランカップリング剤のブタノール溶液24.7gにトルエン39gを混合させた溶液63.7gを添加し、攪拌下に110℃で24時間保持した。上記反応後、トリメチルシリル基としてヘキサメチルジシラザンを2.5g添加し、110℃で16時間加熱した。その後、再度ヘキサメチルジシラザンを2.5g加え、110℃で8時間加熱した。
このように得られたスズゾルを、ロータリーエバポレーターでトルエン溶媒に置換し、トルエン分散シリコーンポリマーグラフト酸化スズゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0071】
[比較例1] トルエン分散フェニルトリメトキシシラン被覆シリカゾルの作製
実施例1において、ポリマー型シランカップリング剤のn-ブタノール溶液を50gの代わりに、フェニルトリメトキシシランを1.5g用いたこと以外は、実施例1と同様にしてトルエン分散フェニルトリメトキシシラン被覆シリカゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0072】
[比較例2] メチルエチルケトン分散フェニルトリメトキシシラン被覆ジルコニアゾルの作製
実施例2において、ポリマー型シランカップリング剤のn-ブタノール溶液を50gの代わりに、フェニルトリメトキシシランを1.0g、トルエンの代わりにメチルエチルケトンを用いた以外は実施例2と同様にメチルエチルケトン分散フェニルトリメトキシシラン被覆ジルコニアゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はメチルエチルケトン)を得た。
【0073】
[比較例3] トルエン分散片末端エポキシ変性シリコーン被覆シリカゾルの作製
ポリマー型シランカアップリング剤の合成において、片末端エポキシ変性シリコーン(官能基当量4700g/mol、粘度60mm/s、製品名:X-22-173DX、信越化学工業株式会社製)を3-アミノプロピルトリメトキシシランを反応せずに、片末端エポキシ変性シリコーン(官能基当量4700g/mol、粘度60mm/s、製品名:X-22-173DX、信越化学工業株式会社製)のみを表面修飾剤として12.8gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてトルエン分散片末端エポキシ変性シリコーン被覆シリカゾル(固形分30.5質量%、ブタノール1.0質量%、残部はトルエン)を得た。
【0074】
(上記ゾルのシリコーンオイルへの分散)
20ミリリットルのガラス製サンプル瓶にジメチルシリコーンオイル(商品名KF-96:粘度100センチストークス、平均分子量5500、KF-96:粘度300センチストークス、平均分子量10000、KF-96:粘度500センチストークス、平均分子量18000、KF-96:粘度1000センチストークス、平均分子量25000、いずれも信越化学工業株式会社製)を2gずつ取り、トルエンを2gずつ添加してシリコーン溶液を作製した。
【0075】
その後、実施例1で得られたトルエン分散シリコーングラフトシリカゾルを2gずつ添加し、ホットプレート上で220℃、1時間加熱攪拌させ、トルエンを揮発させて除去して、脱トルエン溶媒後の分散液の外観を評価した。
【0076】
同様に実施例2で得られたトルエン分散シリコーングラフトジルコニアゾル、実施例3で得られたトルエン分散シリコーンポリマーグラフトチタニアゾル、比較例1で得られたトルエン分散フェニルトリメトキシシラン被覆シリカゾル、比較例2で得られたメチルエチルケトン分散フェニルトリメトキシシラン被覆ジルコニアゾル及び比較例3で得られたトルエン分散片末端エポキシ変性シリコーン被覆シリカゾルも同様に評価した。
【0077】
【表1】

表1中で(―――)は測定を行っていないことを示す。
表1で、無色透明とは透過率で95%の範囲を示し、透明コロイド色とは透過率で94~70%の範囲を示し、白濁とは透過率で1%以下の範囲を示す。
なお、透過率測定は、光路長2mmの石英セルを用いて行い、照射する光は、実施例1~3及び比較例1~3では650nmの光、実施例4~6では520nmの光で実施した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の表面修飾されたコロイド状無機酸化物粒子を含む分散質が、シリコーンオイル中に分散した分散液は、従来のシリコーンオイルを用いていた用途に屈折率や機械的物性を改善したシリコーンオイルとして適用でき、また、透明性が高いことから、当該無機酸化物粒子、表面修飾剤及び分散液は、種々の用途、例えば、シリコーン樹脂への配合剤やLED用封止剤などに用いることができる。