(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240403BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240403BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02M3/28 H
H02J7/02 A
(21)【出願番号】P 2022028889
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514007047
【氏名又は名称】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 範高
(72)【発明者】
【氏名】權藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】前▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大沼 喜也
(72)【発明者】
【氏名】宅間 春介
(72)【発明者】
【氏名】米田 昇平
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082926(JP,A)
【文献】特表2015-505454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0044558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/28
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
制御部は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、充電器。
【請求項2】
前記制御部は、前記コンデンサにかかる電圧が前記整流器の出力電圧よりも大きくなるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記交流電源から出力される電力の一部を前記コンデンサに充電するように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記コンデンサに充電された電力を放電するように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1または2に記載の充電器。
【請求項4】
前記制御部は、前記放電期間において、前記第2のスイッチをオフの状態に保つ、請求項3に記載の充電器。
【請求項5】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータのインダクタの動作波形が方形波形により近似可能な動作波形になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチングを制御する、請求項4に記載の充電器。
【請求項6】
制御部は、前記交流電源から入力される交流電圧の一周期の間に、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチング周波数を変化させる、請求項5に記載の充電器。
【請求項7】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータのスイッチおよび前記第1のスイッチのすべてがオフになる期間がゼロになるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチング周波数の値を制御する、請求項6に記載の充電器。
【請求項8】
前記制御部は、前記スイッチング周波数の最小値が所定の値になるように、前記方形波形の波高値の指定値を制御する、請求項6または7に記載の充電器。
【請求項9】
前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、請求項1から8のいずれか一項に記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車向け充電器として,種々の絶縁形単相AC/DCコンバータが検討されている。一般的には、電気自動車向け充電器として、力率改善(Power factor Correction(PFC))回路付きのダイオード整流器、直流リンク部の大容量コンデンサ、高周波絶縁形DC/DCコンバータからなる回路構成が用いられる。直流リンク部の大容量コンデンサは単相交流電源による電力の脈動を吸収するだけの容量が必要であり、このような回路構成では、小型化が困難であった。
【0003】
電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器として、非特許文献1には、Dual-Active-Bridge(DAB)コンバータに電力脈動吸収用のアクティブバッファを付加した充電回路とその制御が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】米田昇平, 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの検討」, 半導体電力変換研究会資料, 2021, SPC-21-003, pp. 13-18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献に開示された制御は、降圧動作には適用できるが、昇圧動作時には適用できないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の充電器は、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、制御部は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。
【
図2】交流電源から出力される瞬時電力p
SとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cとの関係を示す図である。
【
図3】各モードにおける各スイッチの状態を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(降圧シーケンス)。
【
図5】従来の制御方法による各期間のデューティー比の計算例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(昇圧シーケンスI)。
【
図7】各モードにおける各スイッチの状態を示す図である。
【
図8】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(昇圧シーケンスII)。
【
図9】降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスIIの3つの制御を用いて充電器100を動作させたときのデューティー比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<充電器100>
図1は、本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。充電器100は、整流器110と、DC/DCコンバータ120と、電力脈動吸収回路130と、制御部140と、を有する。充電器100は、単相交流電源200から入力された単相交流電圧v
Sを直流電圧V
dcに変換し、バッテリ300に出力する。
【0011】
整流器110は、DC/DCコンバータ120に接続されたカソード端子111、アノード端子112と、交流電源200に接続するための2つの入力端子113と、を有する。整流器110は、例えば、
図1に示すように、4つのダイオードから成るブリッジダイオード整流器であり、交流電源に接続した2つの入力端子111間から入力された交流電流を、直流電流に変換し、カソード端子111から出力する。整流器110は、
図1に示すように、インダクタLacとコンデンサCacを有するフィルタFを介して、交流電源200と接続されるようにしても良い。
【0012】
DC/DCコンバータ120は、例えば、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである。DC/DCコンバータ120は、整流器110のカソード端子111に接続した第1の端子121と、整流器110のアノード端子112に接続した第2の端子122と、バッテリ300の正極に接続するための第3の端子123と、バッテリ300の負極に接続するための第4の端子124と、を有する。DC/DCコンバータ120は、変圧器Trと、変圧器Trを挟んで、入力端側(1次側)に4つのスイッチ、第1のスイッチS21、第2のスイッチS22、第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を有し、出力側端側(2次側)に4つのスイッチ、第5のスイッチS25、第6のスイッチS26、第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を有する。8つのスイッチS21~S28の各々は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETは、
図1に示すように、スナバコンデンサを有するようにしても良い。
【0013】
DC/DCコンバータ120は、変圧器Trの1次側にインダクタLを有する。このインダクタLは、例えば、変圧器Trの漏れインダクタである。
【0014】
また、DC/DCコンバータ120の第3の端子123と第4の端子124との間には、直流コンデンサCdcが接続されている。DC/DCコンバータ120の第3の端子123とバッテリ300の正極との間に、インダクタLdcを接続するようにしても良い。
【0015】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第1のスイッチS31と、第2のスイッチS32と、を有する。
【0016】
電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の一方との間に接続され、電力脈動吸収回路130の第2のダイオードD32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の他方との間に接続されている。このとき、電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31、第2のダイオードD32の各々は、整流器110の入力端子113からインダクタLbへの方向が順方向となるように、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の入力端子113の間に接続されている。このため、整流器110の入力端子113に交流電源200が接続されたとしても、電力脈動吸収回路130のインダクタLbには、直流電流が入力される。
【0017】
電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31は、整流器110のカソード端子111とDC/DCコンバータ120の第1の端子121とを接続する第1のラインLHと、整流器110のアノード端子112とDC/DCコンバータ120の第2の端子122とを接続する第2のラインLLと、の間に、直列に接続されている。バッファコンデンサCbufは、第2のラインLL側に配置され、第1のスイッチ31は、第1のラインLH側に配置されている。第1のスイッチS31は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが、第1のラインLHに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインがバッファコンデンサに接続するようにすると良い。
【0018】
電力脈動吸収回路130の第3のダイオードD33は、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31とを接続するラインと電力脈動吸収回路130のインダクタLbとの間に、インダクタLbからこのラインへの方向が順方向になるように接続されている。
【0019】
電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインと、第2のラインLLと、の間に接続されている。第2のスイッチS32は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインが電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが第2のラインLLに接続するようにすると良い。
【0020】
制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、32のスイッチングを制御する。
【0021】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第2のスイッチS32と、を有しているため、力率改善回路(PFC)として機能することが可能である。このため、本実施形態では、下記のような正弦波電圧v
S、正弦波電流i
Sが、交流電源200から充電器100に、入力されるように制御することが可能である。
【数1】
ここで、V
Sは、電源電圧の実効値であり、I
Sは、電源電流の実効値である。
【0022】
このとき、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sは、下記のように、平均電力P(=V
SI
S)と脈動部分p
rip(t)(=-V
SI
Scos2ω
St)の和となり、
図2の実線に示すように、平均電力P(
図2の破線)を挟んで、交流の角周波数ω
Sの2倍の角周波数で脈動する。
【数2】
【0023】
そこで、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、32のスイッチングを制御することで、電力脈動吸収回路130で交流電源による電力の脈動を吸収し、DC/DCコンバータ120に入力される電力を一定にする。
【0024】
このとき、本実施形態に係る充電器100では、交流電源200から出力される瞬時電力pSが平均電力Pよりも高いとき(pS>P)と、交流電源200から出力される瞬時電力pSが平均電力Pよりも低いとき(pS<P)と、で制御を変える。
【0025】
交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも高いとき(p
S>P)は、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~28と電力脈動吸収回路130の2つのスイッチS31、32のスイッチングを制御することにより、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sのうちの脈動部分p
ripを電力脈動吸収回路130のインダクタLbを介してバッファコンデンサCbufに充電することで、交流電源から出力された電力のうちの平均電力PのみがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも高い期間は、バッファコンデンサCbufが充電される期間(充電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cは、
図2の一点鎖線に示すように、マイナスになる。
【0026】
一方、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも低いとき(p
S<P)は、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、オフの状態に保ちつつ、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御することにより、バッファコンデンサCbufを第1のスイッチS31を介して積極的に放電し、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sと平均電力Pの差である脈動部分p
ripを補償することで、平均電力PがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも低い期間は、バッファコンデンサCbufが放電する期間(放電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cは、
図2の一点鎖線に示すように、プラスになる。
【0027】
つまり、本実施形態では、制御部140は、交流電源200から出力される瞬時電力pSとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pCとの和が一定になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31~32のスイッチングを制御する。
【0028】
このように、本実施形態では、放電期間において、積極的に、バッファコンデンサCbufを放電している。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに蓄えられる電力量(つまり、バッファコンデンサCbufの容量)を抑えることが可能であり、バッファコンデンサCbufの小型化が可能である。
【0029】
また、本実施形態では、第2のスイッチS32は、充電期間だけ作動する。このため、本実施形態では、インダクタLbに蓄えられる電力量(つまり、インダクタLbのインダクタンス)を抑えることが可能であり、インダクタLbの小型化が可能である。
【0030】
また、本実施形態では、DC/DCコンバータ120に入力される電力には脈動がない。このため、本実施形態では、DC/DCコンバータ120の変圧器Tr、直流コンデンサCdcの小型化が可能である。
【0031】
以上のように、本実施形態では、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化することが可能である。このため、本実施形態では、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能である。
【0032】
<スイッチングモードと動作波形>
制御部140は、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lが方形波形により近似可能な動作波形になるように、7つのモードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する。
図3は、7つのモードの各々における各スイッチの状態を示す図である。7つのモードには、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のすべてのスイッチがオフになるモード(モード5)が含まれている。
【0033】
図4は、本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である。この動作波形i
Lは、
図3に示す7つのモードを、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる。このとき、7つのモードの各々における電流i
Lは、下記のようになる(非特許文献1参照)。
【数3】
ここで、t
cn(n=1~7)は、モードnに切り替えられた時間である。
【0034】
本実施形態では、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンであるときにバッファコンデンサCbufをより積極的に放電するために、制御部140は、バッファコンデンサCbufに係る電圧v
Cが整流器110から出力される瞬時電圧v
recよりも常に大きくなるように制御する。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに係る電圧v
Cが整流器110の瞬時電圧v
recと異なる値を持っており、モード2とモード3での動作波形i
Lの傾きが異なる。同様に、モード6とモード7での動作波形i
Lの傾きが異なる。このため、本実施形態では、
図4に示されているように、正での波形と負での波形がi
L=0に対して非対称である動作波形を生成することができる。
【0035】
図4に示した動作波形i
Lにおいて、|t
0-t
1|=|t
5-t
6|、|t
1-t
2|=|t
7-t
8|、|t
2-t
3|=|t
6-t
7|、|t
3-t
4|=|t
8-t
9|となるようにt
0~t
10を設定し、|t
0-t
1|=|t
S1-t
4|=|t
S2-t
9|となるように、t
3とt
4の間にt
S1を、t
8とt
9の間にt
S2を設定すると、動作波形i
Lは、等価方形波形i
L′により近似することができる。
【数4】
【0036】
等価方形波形i
L′のt
0~t
1、t
S1~t
4、t
5~t
6、t
S2~t
9の期間を無効電流期間T
qと定義し、t
1~t
2、t
7~t
8の期間をバッファコンデンサ放電電流期間T
Cと定義し、t
2~t
3、t
6~t
7の期間を電源電流期間T
recと定義し、t
3~t
S1、t
8~t
S2の期間を電流バランス期間T
bと定義し、t
4~t
5、t
9~t
10の期間を零電流期間T
0と定義すると、スイッチング周期T
SWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数5】
指令値として、i
rec、i
C、v
C、V
dc、I
L′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、
図4の動作波形i
Lに対する制御則を求めることができる。この指令値のうち、i
recおよびi
Cの指令値i
rec
*、i
C
*は、次のように、放電期間と充電期間で切り替え、電力脈動吸収回路130を、PFC回路として機能させ、かつ、電力の脈動を吸収する回路として機能させる。
【数6】
【0037】
<昇圧動作時のスイッチング制御>
上述した制御により充電器100を動作させるためには、上記式(1)のすべてのデューティー比が正である必要がある。降圧動作時(つまり、V
S≧V
dcであるとき)、上記式(1)のすべてのデューティー比が正であるが、昇圧動作時(つまり、V
S<V
dcであるとき)、
図5に示すように、電流バランス期間T
bのデューティー比D
b、バッファコンデンサ放電電流期間T
Cのデューティー比D
Cが負になることがある。
図5に示した例では、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが0度であるときは、電流バランス期間T
bのデューティー比D
b、バッファコンデンサ放電電流期間T
Cのデューティー比D
Cともに、正であるが、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが15度になるあたりで、電流バランス期間T
bのデューティー比D
bが負になり、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度になるあたりで、バッファコンデンサ放電電流期間T
Cのデューティー比D
Cが負になっている。電流バランス期間T
bのデューティー比D
bが負であるとき、上記式(1)より、
【数7】
であり、バッファコンデンサ放電電流期間T
Cのデューティー比D
Cが負であるとき、
【数8】
である。
【0038】
そこで、本実施形態では、電流バランス期間Tbのデューティー比Dbが負になったときに(つまり、上記式(2)が成り立つようになったときに)、スイッチング制御を変更し、バッファコンデンサ放電電流期間TCのデューティー比DCが負になったときに(つまり、上記式(3)が成り立つようになったときに)、さらに、スイッチング制御を変更する。以降、上記式(2)、(3)がいずれも成り立たないときの制御を、つまり、上述した制御を、降圧シーケンスと呼び、上記式(2)が成り立ち、上記式(3)が成り立たないときの制御を、昇圧シーケンスIと呼び、上記式(2)、(3)がいずれもが成り立つときの制御を、昇圧シーケンスIIと呼ぶ。
【0039】
(昇圧シーケンスI)
図4の示した動作波形i
Lでは、i
L(t
1)≦i
L(t
3)である。しかしながら、電流バランス期間T
bのデューティー比D
bが負になると(つまり、上記式(2)が成り立つようになると)、動作波形i
Lは、
図6に示すように、i
L(t
1)>i
L(t
3)となる。そこで、本実施形態では、上記式(1)が成り立ち、上記式(2)が成り立たないとき、|t
0-t
1|=|t
5-t
6|、|t
1-t
2|=|t
7-t
8|、|t
2-t
3|=|t
6-t
7|、|t
3-t
4|=|t
8-t
9|となるようにt
0~t
10、を設定し、|t
0-t
S1|=|t
3-t
4|=|t
5-t
S2|となるように、t
0とt
1の間にt
S1、t
5とt
6の間にt
S2を設定し、動作波形i
Lを、次の等価方形波形i
L′により近似する。
【数9】
【0040】
等価方形波形i
L′のt
0~t
S1、t
3~t
4、t
5~t
S2、t
8~t
9の期間を無効電流期間T
qと定義し、t
1~t
2、t
7~t
8の期間をバッファコンデンサ放電電流期間T
Cと定義し、t
2~t
3、t
6~t
7の期間を電源電流期間T
recと定義し、t
S1~t
1、t
S2~t
6の期間を電流バランス期間T
bと定義し、t
4~t
5、t
9~t
10の期間を零電流期間T
0と定義すると、スイッチング周期T
SWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数10】
昇圧シーケンスIにおいても、指令値として、i
rec、i
C、v
C、V
dc、I
L′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、
図6の動作波形i
Lに対する制御則を求めることができる。
【0041】
(昇圧シーケンスII)
また、本実施形態では、上記式(2)、(3)がいずれもが成り立つとき、
図3に示した7つのモードに加えた2つのモードを加えた、
図7の示した9つのモードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する。このように制御することで、
図8に示すような動作波形i
Lを得る。
図8に示した動作波形i
Lは、
図7に示した9つのモードを、モード1、モード8、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード9、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる。
【0042】
そして、
図8に示した動作波形i
Lにおいて、|t
0-t
1|=|t
6-t
7|、|t
1-t
2|=|t
7-t
8|、|t
2-t
3|=|t
9-t
10|、|t
3-t
4|=|t
8-t
9|、|t
4-t
5|=|t
10-t
11|、|t
5-t
6|=|t
11-t
12|となるようにt
0~t
12を設定すると、動作波形i
Lは、等価方形波形i
L′により近似することができる。
【数11】
【0043】
等価方形波形i
L′のt
0~t
1、t
4~t
5、t
6~t
7、t
10~t
11の期間を無効電流期間T
qと定義し、t
2~t
3、t
9~t
10の期間をバッファコンデンサ放電電流期間T
Cと定義し、t
3~t
4、t
8~t
9の期間を電源電流期間T
recと定義し、t
1~t
2、t
7~t
8の期間を電流バランス期間T
bと定義し、t
5~t
6、t
11~t
12の期間を零電流期間T
0と定義すると、スイッチング周期T
SWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数12】
昇圧シーケンスIIにおいても、指令値として、i
rec、i
C、v
C、V
dc、I
L′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、
図8の動作波形i
Lに対する制御則を求めることができる。
【0044】
(充電器100の動作)
図9は、降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスIIの3つの制御を用いて充電器100を動作させたときのデューティー比を示す図である。
図9に示すように、降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスII、降圧シーケンス、昇圧シーケンスII、昇圧シーケンスIの順で、スイッチング制御を変更していくことで、昇圧動作時においても、充電器100を動作することが可能になる。
【0045】
<スイッチング周波数fSWの制御>
零電流期間T0は、モード5であり、DC/DCコンバータ120のすべてのスイッチS21~28がオフになる期間である。しかしながら、実際にはスイッチがオフになるタイミングにずれが生じ、このずれにより電流が残存し、DC/DCコンバータ120のインダクタLとスイッチS21~28の寄生容量との間の共振が生じる。このため、零電流期間T0後のスイッチング(モード5からモード4に切り替わる際のスイッチング、モード5からモード1に切り替わる際のスイッチング)がハードスイッチングとなり、スイッチング損失が生じる。
【0046】
そこで、零電流期間T0がゼロになるように、交流電源200から入力される交流電圧vSの一周期の間に、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31のスイッチングのスイッチング周波数fSWを変化させることにより、インダクタLの電流iLと電圧VLの振動を除去し、零電流期間T0後のハードスイッチングを避け、充電器100を高効率に制御する方法が提案されている(米田昇平, 宅間春介. 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの可変周波数制御の検討」, 2021年電気学会産業応用部門大会講演論文集, Vol. 1, No. 30, pp. 13-18(2021))。
【0047】
本実施形態においても、制御部140は、例えば、零電流期間T
0がゼロになるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31のスイッチングのスイッチング周波数f
SWの値を制御するようにしても良い。-上記の式(1)、(4)、(5)をD
0=0として解くことにより、零電流期間T
0をゼロにするスイッチング周波数f
SWは次のように求まる。
【数13】
上記式(6)は、降圧シーケンス、昇圧シーケンスIに対するスイッチング周波数f
SWに対応し、上記式(7)は、昇圧シーケンスIIに対するスイッチング周波数f
SWに対応する。
【0048】
<等価方形波iL′の波高値IL′の指令値>
また、上記文献(米田昇平, 宅間春介. 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの可変周波数制御の検討」, 2021年電気学会産業応用部門大会講演論文集, Vol. 1, No. 30, pp. 13-18(2021)参照)には、充電器100がより高効率で動作するように、従来の降圧シーケンスにおける等価方形波iL′の波高値IL′の指令値を最適化する方法も提案されている。この方法では、交流電源電圧vSの位相ωStが45度であるときのスイッチング周波数fSW(上記式(6))が所定の値fminになるように等価方形波形iL′の波高値IL′の指令値を制御することで、充電器100をより高効率で動作させている。
【0049】
しかしながら、昇圧動作時は、
図9に示したように、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度であるときに、従来の降圧シーケンスではなく、昇圧シーケンスIIにより充電器100が動作する場合がある。この場合、上記文献で提案された方法をそのまま用いることができない。そこで、このような場合、例えば、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度であるときに、昇圧シーケンスIIにおけるスイッチング周波数f
SW(上記式(7))が所定の値f
minになるように等価方形波形i
L′の波高値I
L′の指令値を制御すると良い。このとき、等価方形波形i
L′の波高値I
L′の指令値I
L′
*は、下記のようになる。
【数14】
【0050】
上記式(8)は、交流電源電圧vSの位相ωStが45度であるときに昇圧シーケンスIIにおけるスイッチング周波数fSW(上記式(7))が最小値を取る場合に有効な式である。バッファコンデンサCbufに係る電圧vCの最大値を十分に高く設定した場合、昇圧シーケンスIIにおけるスイッチング周波数fSW(上記式(7))は、交流電源電圧vSの位相ωStが45度であるときに最小値になる。一方で、バッファコンデンサCbufに係る電圧vCの最大値を下げた場合には、交流電源電圧vSの位相ωStが45度以外であるときに昇圧シーケンスIIにおけるスイッチング周波数fSW(上記式(7))が最小値を取ることがある。このような場合は、昇圧シーケンスIIにおけるスイッチング周波数fSW(上記式(7))の最小値が所定の値fminになるような等価方形波形iL′の波高値IL′の指令値を数値的に求めるようにすると良い。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 充電器
110 整流器
120 DC/DCコンバータ
S21~S28 DC/DCコンバータのスイッチ
130 電力脈動吸収回路
D31 第1のダイオード
D32 第2のダイオード
D33 第3のダイオード
Lb インダクタ
Cbuf バッファコンデンサ
S31 第1のスイッチ
S32 第2のスイッチ
200 交流電源
300 バッテリ