(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】化合物、該化合物を含む組成物、自己修復材料、表面コート剤、塗料、接着剤、電池用材料及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C07D 211/96 20060101AFI20240403BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240403BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240403BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240403BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240403BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240403BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240403BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07D211/96 CSP
C09D4/00
C09D7/63
C09D201/00
C09J4/00
C09J11/06
C09J201/00
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2021502144
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006838
(87)【国際公開番号】W WO2020175321
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019036118
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】大塚 英幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】沢本 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(72)【発明者】
【氏名】近岡 里行
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202980(JP,A)
【文献】国際公開第16/006413(WO,A1)
【文献】国際公開第07/069765(WO,A1)
【文献】TAKAHASHI,A. et al.,Thermally Healable and Reprocessable Bis(hindered amino)disulfide-Cross-Linked Polymethacrylate Netw,ACS Macro Letters,2017年,Vol.6, No.11,pp.1280-1284,DOI 10.1021/acsmacrolett.7b00762
【文献】TSURUOKA,A. et al.,Fusion of Different Crosslinked Polymers Based on Dynamic Disulfide Exchange,Angewandte Chemie, International Edition,2019年12月30日,Vol.59, No.11,pp.4294-4298,DOI 10.1002/anie.201913430
【文献】TSURUMI,N. et al.,A Strategy toward Cyclic Topologies Based on the Dynamic Behavior of a Bis(hindered amino)disulfide,Angewandte Chemie, International Edition,2020年01月09日,Vol.59, No.11,pp.4269-4273,DOI 10.1002/anie.201910722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09D
C09J
H01M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、アクリル基又はメタクリル基であり、R
1~R
8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基であり、nは1~10の整数である)
【請求項2】
一般式(1)におけるR
1~R
8がメチル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を含む組成物。
【請求項4】
不飽和炭化水素基を有する化合物、チオール基を有する化合物及び高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の組成物
からなる自己修復材料。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の組成物を含む表面コート剤。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の組成物を含む塗料。
【請求項8】
請求項3又は4に記載の組成物を含む接着剤。
【請求項9】
請求項3又は4に記載の組成物を含む電池用材料。
【請求項10】
請求項3又は4に記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する新規化合物、該化合物を含む組成物及び該組成物を硬化させた硬化物に関する。該組成物は、表面コート剤、塗料、接着剤、自己修復材料の用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は、強固な共有結合に基づいて高い機械的強度や高い耐久性を示す一方、再加工性や、再利用性に乏しく、擦傷や破断を修復すること、特に自己修復することは困難である。
耐久性や再加工性に優れた、修復が容易な、自己修復可能な材料としては、ホスト-ゲスト相互作用の様な分子間相互作用に基づくアプローチ(例えば、特許文献1及び2を参照)や、高分子架橋構造に結合したダングリング鎖を活用した自己修復材料(例えば、特許文献3を参照)、樹脂材料などのマトリックス中に重合可能なモノマーや触媒を封入したマイクロカプセル等を配合し、マイクロカプセル等の損壊を伴うマトリックスの損傷の際には新たなモノマー成分が補填されて重合し、マトリックスの機能を回復させる技術(例えば、特許文献4及び5を参照)が知られている。しかし、特許文献1~3の方法では、材料の製造に複雑な工程が必要であること、特許文献4及び5の方法では、マイクロカプセルの配合量等により、自己修復回数に制約があることなどの問題があった。また、近年では、これらを解決するため、動的共有結合を用いた材料に外部刺激を与え、可逆的な結合解離-再結合を用いた自己修復材料が知られている(例えば、特許文献6及び非特許文献1を参照)。しかし、これらの自己修復材料は、分子骨格が複雑であるため、合成工程が複雑であり、生産性が著しく悪いものであった。さらに、その自己修復力も十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/162019号
【文献】国際公開第2016/006413号
【文献】国際公開第2007/069765号
【文献】国際公開第2014/201290号
【文献】特開2017-218519号公報
【文献】特開2017-202980号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】A. Takahashi, R. Goseki, K. Ito, H. Otsuka, ACS Macro Letters, 6, 1280(2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたもので、生産性が良好であり、優れた自己修復力を有する材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物が、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
即ち、本発明は、下記[1]~[10]で示される。
【0007】
[1]下記一般式(1)で表される化合物。
【0008】
【0009】
(式中、X1及びX2は、それぞれ独立に、アクリル基又はメタクリル基であり、R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基であり、nは1~10の整数である)
【0010】
[2]一般式(1)におけるR1~R8がメチル基である[1]に記載の化合物。
【0011】
[3][1]又は[2]に記載の化合物を含む組成物。
【0012】
[4]不飽和炭化水素基を有する化合物、チオール基を有する化合物及び高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含む[3]に記載の組成物。
【0013】
[5][3]又は[4]に記載の組成物を用いてなる自己修復材料。
【0014】
[6][3]又は[4]に記載の組成物を含む表面コート剤。
【0015】
[7][3]又は[4]に記載の組成物を含む塗料。
【0016】
[8][3]又は[4]に記載の組成物を含む接着剤。
【0017】
[9][3]又は[4]に記載の組成物を含む電池用材料。
【0018】
[10][3]又は[4]に記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生産性が良好であり、優れた自己修復力を有する材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例2及び比較例1において、切断後の試料の写真及び切断後に切断面を接触させながら加熱処理した試料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
なお、本明細書中「n-」はノルマル、「i-」はイソ、「s-」はセカンダリー、「t-」はターシャリーを意味する。
本明細書中、アクリル基を有する化合物をアクリル化合物又はアクリレート化合物と表す場合があり、メタクリル基を有する化合物をメタクリル化合物又はメタクリレート化合物と表す場合がある。
【0023】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0024】
【0025】
一般式(1)において、X1及びX2は、それぞれ独立に、アクリル基又はメタクリル基であり、R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基であり、nは1~10の整数である。
【0026】
一般式(1)で表される化合物は、ポリスルフィド骨格を有することを特徴とする。ポリスルフィド骨格は、硫黄原子間の化学結合が加熱や光照射等により容易に切断-再結合することから、例えば特許文献6及び非特許文献1に示されるように、自己修復性の材料の骨格として活用が検討されている。しかしながら、特許文献6及び非特許文献1に記載の化合物の分子構造が複雑であることから生産性が低く、自己修復力も十分ではない等の課題があった。一方、本発明の化合物であれば、優れた自己修復力を有する化合物を簡便に合成することができる。
優れた自己修復力とは、例えば、破損が大きくても修復することができる、修復し得る回数が多い、破損した状態から修復しても、十分な力学強度を回復できる、等の性能をいう。特に、本発明の化合物は、破損前の材料の強度にまで修復し得るという優れた自己修復力を有する。
【0027】
一般式(1)におけるR1~R8を表す炭素原子数1~6の炭化水素基としては、例えば炭素原子数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、i-ペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和脂肪族炭化水素基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状構造であっても、分岐状構造であっても、環状構造であってもよい。
【0028】
一般式(1)におけるR1~R8は、より優れた自己修復力を発現させる観点から、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
【0029】
一般式(1)におけるnは、より優れた自己修復力を発現させる観点から、1~8の整数であることが好ましく、1~5の整数であることがより好ましく、1~3の整数であることが最も好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される化合物の中でも、X1及びX2がメタクリル基であり、nが1~5である下記化合物No.1~No.20が好ましく、X1及びX2がメタクリル基であり、nが1である下記化合物No.1~No.16がより好ましい。さらに、化合物No.1~No.20におけるメタクリル基を、アクリル基に置き換えた化合物も好ましい。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
一般式(1)で表される化合物は、従来の自己修復材料と比べ簡便な方法で製造することができる。例えば化合物No.1の場合、反応容器にメタクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、酢酸ナトリウム及び脱水ジメチルホルムアミドを加え、窒素雰囲気下で0℃に維持して二塩化二硫黄を等圧滴下ロートにより滴下する。滴下後、0℃を維持したまま10分間攪拌した後、反応溶液に氷水を注ぎこみ、生じた沈殿を濾別して回収する。沈殿をヘキサンに溶解して硫酸ナトリウムにより乾燥、減圧下で濃縮した後、メタノールを用いて再結晶することにより得ることができる。他の化合物についても、対応する置換基を持つピペリジル誘導体を用いて合成することができる。
【0036】
本発明の組成物は、一般式(1)で表される化合物を含むものであればよく、一般式(1)で表される化合物と組み合わせて用いられる成分は特に限定されるものではないが、例えば、モノマー化合物、高分子化合物、触媒、重合開始剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0037】
モノマー化合物としては、特に限定されないが、重合反応することでそれ自身との高分子化合物を得ることができる化合物、一般式(1)で表される化合物と共重合することができる化合物が好ましく、不飽和炭化水素基を有する化合物及びチオール基を有する化合物がより好ましい。
【0038】
不飽和炭化水素基を有する化合物とは、例えば、ビニル基を有する化合物、アリル基を有する化合物、アクリレート化合物、メタクリレート化合物等をいう。
【0039】
本発明の組成物に用いることができる、ビニル基を有する化合物又はアリル基を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、i-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンなどのアルケン化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルなどのシアノ基含有不飽和炭化水素化合物;ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2-クロロエチルエーテル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、2,3-ジヒドロフラン、1,4-ジオキセン、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、イソプロペニルメチルエーテルなどのビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、酢酸イソプロペニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル化合物;アリルアルコール、けい皮アルコールなどの不飽和アルコール;1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン及びクロロプレンなどの共役ジエン化合物;スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-フルオロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、4-ヨードスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-アミノスチレン、4-カルボキシスチレン、4-アセトキシスチレン、4-シアノメチルスチレン、4-クロロメチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ニトロスチレン、4-スチレンスルホン酸ナトリウム、4-スチレンスルホン酸クロリド、4-ビニルフェニルボロン酸、α-メチルスチレン、トランス-β-メチルスチレン、2-メチル-1-フェニルプロペン、1-フェニル-1-シクロヘキセン、β-ブロモスチレン、β-スチレンスルホン酸ナトリウム、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-i-プロペニルナフタレン、1-ビニルイミダゾールなどの芳香族ビニル化合物;アリルベンゼン、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物に用いることができるアクリレート化合物としては、例えば、単官能アクリレート化合物、二官能アクリレート化合物、三官能以上の多官能アクリレート化合物が挙げられる。
【0041】
単官能アクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、i-ペンチルアクリレート、t-ペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアルキルアクリレート、ベンジルアクリレート、アルキルフェノール(ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール又はドデシルフェノール等)、エチレンオキサイド付加物のアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリシクロデカンモノメチロールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシペンチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノアクリレート、アクリオロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0042】
二官能アクリレート化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,2-ヘキサンジオールジアクリレート、1,5-ヘキサンジオールジアクリレート、2,5-ヘキサンジオールジアクリレート、1,7-ヘプタンジオールジアクリレート、1,8-オクタンジオールジアクリレート、1,2-オクタンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,2-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,2-デカンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジアクリレート、1,2-ドデカンジオールジアクリレート、1,14-テトラデカンジオールジアクリレート、1,2-テトラデカンジオールジアクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジアクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジアクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジアクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジアクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジアクリレート、ジメチロールオクタンジアクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジアクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジアクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,2-ヘキサンジオールジアクリレート、1,5-ヘキサンジオールジアクリレート、2,5-ヘキサンジオールジアクリレート、1,7-ヘプタンジオールジアクリレート、1,8-オクタンジオールジアクリレート、1,2-オクタンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,2-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,2-デカンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジアクリレート、1,2-ドデカンジオールジアクリレート、1,14-テトラデカンジオールジアクリレート、1,2-テトラデカンジオールジアクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジアクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジアクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジアクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジアクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジアクリレート、ジメチロールオクタンジアクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジアクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレートトリシクロデカンジメチロールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジアクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジアクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジアクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジアクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジアクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジアクリレート、水添加ビスフェノールAジアクリレート、水添加ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジアクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジアクリレート等が挙げられる。
【0043】
三官能アクリレート化合物としては、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールヘキサントリアクリレート、トリメチロールオクタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が例示される。
【0044】
四官能以上のアクリレート化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラアクリレート、ジトリメチロールエタンテトラアクリレート、ジトリメチロールブタンテトラアクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラアクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタアクリレート等が挙げられる。
その他、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどの多官能アクリレートも挙げられる。
【0045】
これらのアクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明の組成物に用いることができるアクリレート化合物は、その硬化物が優れた自己修復力を示すという観点から、単官能アクリレート化合物及び二官能アクリレート化合物が好ましく、単官能アクリレート化合物がより好ましい。
【0047】
本発明の組成物に用いることができるメタクリレート化合物としては、例えば、単官能メタクリレート化合物、二官能メタクリレート化合物、三官能以上の多官能メタクリレート化合物が挙げられる。
【0048】
単官能メタクリレート化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、i-ペンチルメタクリレート、t-ペンチルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アルキルフェノール(ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール又はドデシルフェノール等)、エチレンオキサイド付加物のメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカンモノメチロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、アクリオロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、β-カルボキシエチルメタクリレート、アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0049】
二官能メタクリレート化合物としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジメタクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、1,2-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,5-ヘキサンジオールジメタクリレート、2,5-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,7-ヘプタンジオールジメタクリレート、1,8-オクタンジオールジメタクリレート、1,2-オクタンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,2-デカンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,2-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、1,2-ドデカンジオールジメタクリレート、1,14-テトラデカンジオールジメタクリレート、1,2-テトラデカンジオールジメタクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジメタクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジメタクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジメタクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジメタクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジメタクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジメタクリレート、ジメチロールオクタンジメタクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジメタクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジメタクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジメタクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジメタクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,2-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,5-ヘキサンジオールジメタクリレート、2,5-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,7-ヘプタンジオールジメタクリレート、1,8-オクタンジオールジメタクリレート、1,2-オクタンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,2-デカンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,2-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、1,2-ドデカンジオールジメタクリレート、1,14-テトラデカンジオールジメタクリレート、1,2-テトラデカンジオールジメタクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジメタクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジメタクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジメタクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジメタクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジメタクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジメタクリレート、ジメチロールオクタンジメタクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジメタクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジメタクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジメタクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジメタクリレートトリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジメタクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジメタクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジメタクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジメタクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジメタクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジメタクリレート、水添加ビスフェノールAジメタクリレート、水添加ビスフェノールFジメタクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジメタクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジメタクリレート等が挙げられる。
【0050】
三官能メタクリレート化合物としては、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールヘキサントリメタクリレート、トリメチロールオクタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等が例示される。
【0051】
四官能以上のメタクリレート化合物としては、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラメタクリレート、ジグリセリンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラメタクリレート、ジトリメチロールエタンテトラメタクリレート、ジトリメチロールブタンテトラメタクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラメタクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタメタクリレート等が挙げられる。
その他、ウレタンメタアクリレート、ポリエステルメタアクリレートなどの多官能アクリレートも挙げられる。
【0052】
これらのメタクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の組成物に用いることができるメタクリレート化合物は、その硬化物が優れた自己修復力を示すという観点から、単官能メタクリレート化合物及び二官能メタクリレート化合物が好ましく、単官能メタクリレート化合物がより好ましい。
【0054】
本発明の組成物に用いることができるチオール基を有する化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、芳香族チオール化合物、脂肪族ポリチオール化合物、メルカプトカルボン酸エステル化合物、メルカプトカルボン酸、メルカプトエーテル等が挙げられる。
【0055】
これらのチオール基を有する化合物の中でも、その硬化物が優れた自己修復力を示すという観点から、二官能チオール化合物が好ましい。二官能チオール化合物の具体例としては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,3-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、3,6-ジクロロ-1,2-ベンゼンジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジメルカプトジエチルスルフィド、1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、テトラキス(7-メルカプト-2,5-ジチアヘプチル)メタン、トリチオシアヌル酸、1,2-ベンゼンジメタン、チオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)ブタン、1,1-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)イソブタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-5-メチルフェニル)プロパン、ビス(2-(2-メルカプトプロポキシ)-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトプロポキシ)-3-t-ブチルフェニル)プロパン、トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、ビス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、2,2-ビス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)プロパン、トリス(4-(2-メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、のアルキルビニールエーテル付加物等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。これらの二官能チオール化合物は、例えば、市販品を用いてもよい。
【0056】
一般式(1)で表される化合物と組み合わせて用いられる他のモノマー化合物としては、エポキシ化合物、ポリオール化合物等も挙げることができる。エポキシ化合物を組成物に配合する場合、エポキシ化合物を硬化させるための硬化剤及び重合開始剤を組成物に更に配合してもよい。ポリオール化合物を組成物に配合する場合、ポリオール化合物を硬化させるためのイソシアナート化合物を組成物に更に配合してもよい。
【0057】
本発明の組成物に用いることができるエポキシ化合物としては、例えば、グリシジル基を有する化合物、脂環式エポキシ基を有する化合物、フェノール類を前駆体とするエポキシ化合物、アミン類を前駆体とするエポキシ化合物、カルボン酸を前駆体とするエポキシ化合物等が挙げられる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールA等から得られる脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物であるエポキシ化物、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂;及びフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、アルキル基やハロゲン原子による置換体も用いることができる。また、これらをウレタン化合物やイソシアネート化合物を用いて変性エポキシ樹脂にすることができる。
【0058】
上記エポキシ化合物を硬化させるための硬化剤及び重合開始剤としては、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、アミド化合物、酸無水物化合物、フェノール化合物、チオール化合物、潜在性熱硬化剤及びカチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0059】
上記イミダゾール化合物としては、例えば、2-ウンデシルイミダゾール、特開2015-017059号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
【0060】
上記アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物;N-メチルアニリン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、ジフェニルアミン、ヒドロキシフェニルグリシン等のアリール脂肪族アミン化合物;1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、N-メチルピペラジン、モルホリン、ピペリジン、イソホロンジアミン、4,4-メチレンビスシクロヘキサンアミン等の環状脂肪族アミン化合物等が挙げられる。
【0061】
上記アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。
【0062】
上記酸無水物化合物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、クロレンド酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。
【0063】
上記フェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0064】
上記チオール化合物としては、従来公知のものを用いることができるが、特に、下記一般式(2)で表される化合物が、耐熱性の点から好ましい。
【0065】
【0066】
(式中、Aは、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、mは、1~6の整数を表し、X3は、mと同数の価数を有する炭素原子数1~20の飽和炭化水素基を表す。)
【0067】
上記潜在性熱硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物とエポキシ化合物とを反応させてなる分子内に活性水素を持つアミノ基を少なくとも1個有する変性アミン潜在性硬化剤、フェノール系樹脂を含有する潜在性硬化剤、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド類、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩、ウレア類、メラミン、国際公開第2012/020572号及び特開2014-177525号公報に記載されているもの等が挙げられる。
【0068】
カチオン重合開始剤としては、光照射又は加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であればよく、好ましくは、オニウム塩が挙げられる。
【0069】
上記オニウム塩としては、例えば、[M]r+[G]r-で表される陽イオンと陰イオンとの塩が挙げられる。
ここで陽イオン[M]r+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、式[(R13)fQ]r+で表すことができる。
【0070】
上記R13は、炭素原子数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいてもよい有機基である。fは1~5の整数である。f個のR13は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、f個のR13の少なくとも1つは、芳香環を有する有機基であることが好ましい。Qは、S、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F及びN=Nからなる群から選ばれる原子或いは原子団である。また、陽イオン[M]r+中のQの原子価をqとしたとき、r=f-qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0071】
また、陰イオン[G]r-の具体例としては、一価のものとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の無機系陰イオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(3,5-ジフルオロ-4-メトキシフェニル)ボレート、テトラフルオロボレート、テトラアリールボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のボレート系陰イオン;メタンスルホン酸イオン、ドデシルスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ジフェニルアミン-4-スルホン酸イオン、2-アミノ-4-メチル-5-クロロベンゼンスルホン酸イオン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸イオン、フタロシアニンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルホン酸イオン、ノナフロロブタンスルホン酸イオン、ヘキサデカフロロオクタンスルホン酸イオン、重合性置換基を有するスルホン酸イオン、特開平10-235999号公報、特開平10-337959号公報、特開平11-102088号公報、特開2000-108510号公報、特開2000-168223号公報、特開2001-209969号公報、特開2001-322354号公報、特開2006-248180号公報、特開2006-297907号公報、特開平8-253705号公報、特表2004-503379号公報、特開2005-336150号公報、国際公開第2006/28006号等に記載されたスルホン酸イオン等の有機スルホン酸系陰イオン;オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスホン酸イオン等の有機リン酸系陰イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン、パーフルオロ-4-エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0072】
このようなオニウム塩の中で、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等の芳香族スルホニウム塩が本発明の組成物において好ましく用いることができる。
【0073】
芳香族スルホニウム塩は、市販のものを用いることができ、例えば、WPAG-336、WPAG-367、WPAG-370、WPAG-469、WPAG-638(和光純薬工業株式会社製)、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S(サンアプロ株式会社製)、アデカアークルズSP-056、アデカアークルズSP-066、アデカアークルズSP-130、アデカアークルズSP-140、アデカアークルズSP-082、アデカアークルズSP-103、アデカアークルズSP-601、アデカアークルズSP-606、アデカアークルズSP-701、アデカアークルズSP-150、アデカアークルズSP-170(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0074】
本発明の組成物に用いることができるポリオール化合物としては、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物を表し、水酸基はアルコール性水酸基であってもよく、フェノール性水酸基であってもよい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,3,5-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、2,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-ジメチロールシクロヘキサン、1,3-ジメチロールシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,12-ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3-ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリオールとポリカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸との縮合重合により得られるポリエステルポリオール、アルコール類やフェノール類にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールや、ラクトン類等の開環重合により得られるポリエステルポリオール、分子内にカーボネート骨格を有するポリカーボネートポリオール、フェノキシ樹脂、水酸基を有するポリブタジエン類、アクリルポリオール等が挙げられる。
【0075】
上記ポリオール化合物を硬化させるためのイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物、多官能イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物等が挙げられる。
【0076】
本発明の組成物に用いることができる高分子化合物としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクトン、ポリスチレン、ポリアルキレンオキシド、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリラクチド、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェノール、ポリウレア、ポリウレタンウレア、ポリグルコシド、ポリブタジエン、エポキシ樹脂、ポリアセチレン、ポリビニル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール及びこれらの共重合化合物や、これらの誘導体化合物、エポキシ硬化物、ウレタン硬化物、シリコーン樹脂、ゴム成分等を挙げることができる。
【0077】
エポキシ硬化物としては、先に例示したエポキシ化合物を、先に例示したエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤及び重合開始剤で硬化させたものが挙げられる。
ウレタン硬化物としては、先に例示したポリオール化合物と先に例示したイソシアナート化合物とを反応させたものが挙げられる。
【0078】
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(1-ヘキセン)共重合体、エチレン-(1-オクテン)共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物が、不飽和炭化水素基を有する化合物、チオール基を有する化合物及び高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む場合、組成物の反応性及び反応後の硬化物の物性の観点から、一般式(1)で表される化合物の配合量は、組成物に対し、0.01質量%~97質量%であることが好ましく、0.05質量%~95質量%であることがより好ましく、0.1質量%~90質量%であることが最も好ましい。
また、その硬化物が優れた自己修復力を示すという観点から、不飽和炭化水素基を有する化合物、チオール基を有する化合物及び高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の配合量は、組成物に対し、3質量%~99.99質量%であることが好ましく、5質量%~99.9質量%であることがより好ましく、10質量%~99.0質量%であることが最も好ましい。
【0080】
本発明の組成物に用いることができる触媒及び重合開始剤は、一般式(1)で表される化合物、不飽和炭化水素基を有する化合物等の他の化合物の種類、組成比率等に応じて、公知なものを適宜選択し、公知の使用量及び公知の使用方法で使用すればよい。
【0081】
本発明の組成物に用いることができる触媒としては、一般式(1)で表される化合物、組成物に含まれる他の化合物等の反応を促進するものを公知の触媒から適宜用いることができる。例えば、典型金属触媒、金属化合物触媒、遷移金属触媒等から適宜用いることができる。
【0082】
本発明の組成物に用いることができる重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物に用いることができるラジカル発生剤としては、紫外線等の光照射によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤、加熱することでラジカルを発生する熱ラジカル発生剤等が挙げられる。光ラジカル発生剤の具体例としては、例えば、アセトフェノン、p-アニシル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン-i-プロピルエーテル、ベンゾイン-i-ブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、メチル2-ベンゾイルベンゾエート、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-i-ニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド等を用いることができる。これらの光ラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本発明の組成物に用いることができる熱ラジカル発生剤としては、過酸化物、アゾ系化合物等が挙げられる。熱ラジカル発生剤の具体例としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2-アゾビス(i-酪酸)ジメチル、ジエチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジブチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;t-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノアート、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノアート、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサノン、ジ-t―ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノアート、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(t-ブチル)ペルオキシド、過酸化ベンゾイル1,1’-ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ベンゾイル、1,1’-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、t-ブチルペルオキシネオデカノアート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノアート、ジクミルペルオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素などが挙げられる。過酸化物をラジカル発生剤として使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の重合開始剤としてもよい。これらの熱ラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、熱ラジカル発生剤と光ラジカル発生剤とを併用してもよい。
【0085】
本発明の組成物における熱ラジカル発生剤又は光ラジカル発生剤の配合量の下限値は、組成物の反応性及び反応後の硬化物の物性の観点から、組成物に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることが最も好ましい。また、熱ラジカル発生剤又は光ラジカル発生剤の配合量の上限値は、組成物の保存安定性の観点から、組成物に対し、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが最も好ましい。
【0086】
本発明の組成物は、材料を均一に混合するため、あるいは組成物の良好な成形性、良好な製膜性のため、有機溶媒を含有してもよい。
【0087】
本発明の組成物に用いることができる有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0088】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、s-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、s-ヘキサノール、2-エチルブタノール、s-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、s-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、s-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、s-テトラデシルアルコール、s-ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒;等を挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2-ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等を挙げることができる。これらのケトン系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。これらのアミド系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
エーテル溶媒系としては、例えば、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール等を挙げることができる。これらのエーテル系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等を挙げることができる。これらのエステル系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を挙げることができる。これらの脂肪族炭化水素系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン、テトラリン、アニソール等を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素系溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
含ハロゲン溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができる。これらの含ハロゲン溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上記した有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの有機溶媒の種類や配合量は、溶液の粘度、成形する形状等に応じて適宜選定することができる。組成物が取り扱いやすいという観点から、有機溶媒の配合量は、組成物100質量部に対し、1質量部~999質量部であることが好ましく、5質量部~499質量部であることがより好ましく、10質量部~399質量部であることが最も好ましい。
【0097】
また、本発明の組成物には、紫外線吸収剤、光安定剤、接着助剤、重合禁止剤、増感剤、酸化防止剤、平滑性付与剤、配向制御剤、赤外線吸収剤、チキソ剤、帯電防止剤、消泡剤、着色剤、乳化剤、界面活性剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、硬化剤、導電性付与剤、加水分解抑制剤、セルロースナノファイバー、フィラー等の充填剤等の公知の添加剤を、公知の含有量にて、公知の使用方法で配合していてもよい。
【0098】
本発明の組成物の用途としては、特に限定されないが、自己修復材料として好適に使用することができる。自己修復材料とは、材料の使用環境下において、擦過、打撃などを受けて擦傷や破損が生じた際、外部の刺激なしに、あるいは特定の操作や処理、外部刺激により修復可能な材料をいう。外部からの刺激とは、接触、光照射、加熱、加圧等であり、これらは単独で付与してもよいし、2種以上の外部刺激を順次、あるいは同時に付与してもよい。
【0099】
本発明の組成物は、表面コート剤、塗料、接着剤又は電池用材料としても使用することができる。表面コート剤は、基材の表面を保護したり、基材に意匠性や光学的特性を付与したり、表面の物性を制御したり、基材に防汚染性、耐薬品性、耐候性等を付与する目的で使用される。本発明の組成物を基材の表面に塗布する方法としては、公知の方法で実施すればよく、例えば、ダイコーター法、コンマコーター法、カーテンコーター法、スプレーコーター法、グラビアコーター法、フレキソコーター法、ナイフコーター法、ドクターブレード法、リバースロール法、ハケ塗り法、ディップ法、インクジェット法、ワイヤーバーコーター法等が挙げられる。本発明の組成物を表面コート剤として使用する場合、硬化させる前の組成物を基材の表面に塗布し、その後、後述する方法で硬化させればよい。本発明の組成物を表面コート剤、塗料、接着剤又は電池用材料として使用する場合には、表面コート剤、塗料、接着剤、電池用材料等に使用される公知の添加剤を配合してもよい。
【0100】
本発明の硬化物は、本発明の組成物を特定条件下で硬化させたものであり、製造方法は特に限定されるものではない。
【0101】
本発明の硬化物の製造は、公知の条件及び公知の方法で行うことができ、一般式(1)で表される化合物の配合量、不飽和炭化水素基を有する化合物、チオール基を有する化合物及び高分子化合物からなる群から選ばれる化合物の種類や配合量、ラジカル発生剤の種類や配合量等に応じ、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、組成物を基材に塗布したり、あるいは組成物を成形した後、紫外光などを照射したり、室温以上の温度に加熱する等により実施することができる。光照射及び加熱は、何れか一方を施してもよいし、それぞれを交互に施してもよいし、同時に施してもよいし、経時的に変化させながら施してもよい。
【0102】
光照射の方法としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、レーザー光源、LED光源等を使用することができ、光源としては、操作性の点で、UV-LED(波長:350~450nm)が好ましいが、光ラジカル発生剤に応じて適宜選択すればよい。積算照射量は、対象物の厚み等により適宜選択すればよいが、例えば、1mJ/cm2~100,000mJ/cm2となる範囲で照射することが好ましい。積算照射量が小さい場合には反応が十分に進行しないためである。一方、積算照射量が大き過ぎる場合には対象物が着色する場合があるためである。光照射の後、例えば、50℃~200℃の範囲で、1秒~24時間程度加熱処理してもよい。
【0103】
加熱温度は、200℃以下とすることが好ましく、140℃以下とすることがより好ましい。また、加熱温度は、40℃以上とすることが好ましく、50℃以上とすることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜選択すればよいが、1秒~20時間が好ましく、10秒~10時間がより好ましい。
【0104】
硬化物を製造する際の圧力は、通常、大気圧で行うことができるが、1000気圧以下の条件で圧力を印加して行うこともできる。硬化物を製造する際の雰囲気は、組成物の組成等に応じて適切な環境を選択すればよく、大気雰囲気下であってもよいし、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下であってもよい。
【0105】
本発明の硬化物は、有機溶媒を使用せずに組成物を成形、硬化させて製造することもできるし、有機溶媒を使用して、組成物の粘度等を調整した後に成形、硬化させて製造することもできる。また、製造された硬化物を溶媒で溶解又は膨潤させ、成形、製膜してもよい。また、水系における乳化重合、又は懸濁重合により、水に乳化、又は分散した状態で硬化物を製造することができる。
【0106】
本発明の硬化物は、一般式(1)で表される化合物と、不飽和炭化水素基を有する化合物及びチオール基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とが重合反応により硬化していればよい。また、重合反応の形態は、単独重合であってもよいし、共重合であってもよい。硬化物の硬度、強度等も特に限定されるものではない。
【0107】
本発明の組成物及び硬化物のその他の用途としては、例えば、シール材、断熱材、防音材、コーティング剤、衛生材料、ホースークリップ、流体輸送用パイプ、フレキシブルホース、ホットメルト接着剤、接着剤用添加剤、光学材料、電気機器、電池材料、車両、船舶、航空機、建物、住宅及び建築用材料、土木材料、衣料、カーテン、シーツ、容器、眼鏡、カバンケース、スポーツ用品等、一般に良好な耐破断性、耐疲労性が必要な用途に好適に用いることができる。
【0108】
さらに具体的な用途としては、光学フィルム、光学シート、光学フィルタ、高輝度プリズムシート、光学的集光体、防眩フィルムなどの反射防止材料、照明器具、透明採光材、保護フィルム、ペン入力装置用表面材、電気ケーブル、シース、電線被覆材、電気絶縁用部材、電子機器筐体、機械パーツ、耐振動疲労部材、キャパシタ、二次電池用セパレータ、二次電池用バインダー、固体電解質、繊維強化材料、防錆剤、腐食防止材、吹き付け顔料、バリヤー材(有機物、気体、湿度)などの塗料、ペット用建材、床、壁、ドアなどの建材、遮水シート、防水シート、アクチュエーター、クリーニングパッド、バスタブ、たらい、桶、入浴介助品、自動車材、人工皮革、合成皮革、人工皮膚、血管内治療用ステント、歯科用複合修復材料、スリーブ材、積層ガラス、転写箔、難燃性フィルム、筆記具用軸筒、クッション材、緩衝剤、農業用フィルム、加飾フィルム、化粧シート、ビニールハウス用シート、防虫ネット、家具、衣服、鞄、靴、ゴーグル、スキー板、スノーボード、ラケット、テント、容器、まな板、カッティングボード、抗菌フィルム、抗菌成形体、バリアフィルム、パッキンなどが挙げられる。
【0109】
本発明の表面コート剤は、コーティングによって生じる加工不良を改善する効果があり、例えばインモールド成型用ハードコート材料として用いることで、成型加工時の加工性を向上させることができる。
【0110】
本発明の塗料は、塗布された塗膜の傷が自己修復する効果があり、例えば自動車用塗料として用いることで、その塗装の傷を塗り直すことなく加熱するだけで修復することが可能となる。
【0111】
本発明の接着剤は、接着後の硬化物が切断後に自発的に接合する効果があり、接着不良を改善することや、劣化による剥がれを防止することができる。また、この効果により応力緩和の硬化を付与することができ、接着強度を向上することもできる。
【0112】
本発明の電池用材料は、樹脂中の自己修復材料が切断後自発的に接合する効果があり、例えばリチウムイオン二次電池のバインダーとして用いることで、電池を繰り返し使用する際に電極が膨張して分解し、電池性能が劣化するのを防ぐことができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0114】
[実施例1]化合物No.1の製造
1Lガラス製四つ口フラスコにアデカスタブLA-87(100g、443mmol、株式会社ADEKA製)をジメチルホルムアミド(364mL、脱水グレード、東京化成工業株式会社製)に溶解させた後、酢酸ナトリウム(39.7g、484mmol、東京化成工業株式会社製)を加えて、氷浴で攪拌した。液温を10℃以下に冷却した後、液温が10℃以上にならないように二塩化二硫黄(23.4g、173mmol、東京化成工業株式会社製)を30分かけて滴下した。滴下後、フラスコを氷浴中に浸した状態で30分攪拌し反応した。その後、反応液を氷浴で冷やした水(500mL)に投入し、析出した白色固体をろ過して回収した。メタノールを用いて白色固体を2回再結晶し、減圧乾燥することで下記ビス(4-(メタクリロイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-イル)ジスルフィド(BiTEMPS-MAc)を得た(16.9g、収率19%)。
【0115】
得られた化合物の1H-NMRは以下の通りである。1H NMR)(600MHz、in CDCl3):δ/ppm、6.07 (s、2H)、5.54 (s、2H)、5.14(tt、2H)、1.98(dd、J=4.0Hz、12.4Hz、4H)、1.91 (s, 6H)、1.56(t、J=4.0、12.4Hz、4H)、1.45(s、12H)、1.24(s、12H)
得られた化合物の高分解能マススペクトルを測定したところ、M=512.274のシグナルが、また低分解能マススペクトルを測定したところ、M=512、256のシグナルが得られた。
【0116】
【0117】
[実施例2]
実施例1で得られたBiTEMPS-MAc 10質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(ライトエステルHOA(N)、共栄社化学株式会社製)90質量部及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins社製)1.0質量部をフラスコに入れ、80℃で5分間攪拌しながら混合して組成物を調製した。この組成物を、引張試験6号型ダンベル形(JIS K 6251 ダンベル状6号形)で厚さ5mmのシリコーンシートを打ち抜いた型枠に流し込み、室温まで冷却した後、大気中、離型PETフィルム越しに5mW/cm2の高圧水銀灯を600秒照射して硬化させた。5分間静置し冷却した後、型枠から硬化物を取り出し、実施例2のダンベル試料とした。得られた実施例2のダンベル試料の中央をカッターで切断した。その後、切断面を接合して上下からガラス板で重ね合わせ、クリップで上下から挟み込んで固定して120℃のオーブン中に10時間静置した。静置後、取り出した試料は重ね合わせた部分で一体化しており、均一なダンベルとなった。
【0118】
[比較例1]
BiTEMPS-MAcの代わりに2,2ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして比較例1のダンベル試料を作製した。得られた比較例1のダンベル試料を、実施例2のダンベル試料と同様に切断し、ガラス板で重ね合わせ、クリップで挟み込んで120℃のオーブン中に10時間静置した。静置後取り出した試料は接合しておらず、全く修復していなかった。
【0119】
実施例2の切断した後に修復した試料の引張試験は、切断せずに同じ熱履歴(120℃オーブン中に12時間静置)を施した試料の97%の破断強度を示し、優れた自己修復性を持つことが分かった。
【0120】
[実施例3]
実施例1で得られたBiTEMPS-MAc 10質量部及びスチレン・ブタジエンゴム水系エマルション(日本ゼオン株式会社製BM-400B)90質量部(固形分換算)をスクリュー管に入れ、ペンシルミキサで5分間攪拌しながら混合して組成物を調製した。この組成物を、引張試験6号型ダンベル形(JIS K 6251 ダンベル状6号形)で厚さ1mmのシリコーンシートを打ち抜いた型枠に流し込み、50℃で3時間乾燥し、更に130℃で1時間乾燥した。型枠から樹脂成形物を取り出し、実施例3のダンベル試料とした。得られた実施例3のダンベル試料の中央をカッターで切断した。その後、切断面を接合して上下からガラス板で重ね合わせ、クリップで上下から挟み込んで固定して30℃のオーブン中に1週間静置した。静置後、取り出した試料は重ね合わせた部分で一体化しており、均一なダンベルとなった。
【0121】
[比較例2]
BiTEMPS-MAcの代わりに2,2ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして比較例2のダンベル試料を作製した。得られた比較例2のダンベル試料を、実施例3のダンベル試料と同様に切断し、ガラス板で重ね合わせ、クリップで挟み込んで30℃のオーブン中に1週間静置した。静置後取り出した試料は接合しておらず、全く修復していなかった。
【0122】
実施例3の切断した後に修復した試料の引張試験は、切断していない試料の50%の破断強度を示し、自己修復性を持つことが分かった。
【0123】
[実施例4]
実施例1で得られたBiTEMPS-MAc 10質量部、ヘキシルメタクリレート90質量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins社製)5.0質量部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.0質量部をフラスコに入れ、混合して組成物を調製した。この組成物をガラス板上に塗布し、カバーフィルムを掛けて3mW/cm2の高圧水銀灯を660秒照射して硬化させた。次いで50℃のオーブンで12時間加熱し完全に硬化させ、実施例4の塗膜試料とした。得られた実施例4の塗膜試料を4Bの鉛筆で傷を付け、120℃又は90℃のオーブンで加熱し、経時変化を観察した。実施例4の塗膜試料は、120℃では3時間で傷が修復している様子が確認できた。また、実施例4の塗膜試料は、90℃では24時間で傷が修復している様子が確認できた。
【0124】
[比較例3]
BiTEMPS-MAcの代わりに2,2ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして比較例3の塗膜試料を作製した。得られた比較例3の塗膜試料を、実施例4の塗膜試料と同様に4Bの鉛筆で傷を付け、120℃又は90℃のオーブンで加熱し、経時変化を観察した。しかし、120℃及び90℃のどちらの温度で24時間を経過しても傷が全く修復していなかった。
【0125】
以上の結果から、本発明によれば、工程の少ない簡便な方法で、優れた自己修復力を有する材料を得ることができた。