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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】金属張積層板及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/088 20060101AFI20240403BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240403BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240403BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B32B15/088
B32B15/08 J
C08G73/10
H05K1/03 610N
H05K1/03 630D
H05K1/03 630H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018161138
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2019104234
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2017191989
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254774
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 和明
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏男
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 慎一郎
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】久保 克彦
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片面に積層された金属層とを備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層を有し、
前記非熱可塑性ポリイミド及び前記熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むとともに、これらの残基がいずれも芳香族基からなり、
前記絶縁樹脂層が下記の条件(i)~(iii);
(i)面内複屈折率(Δn)の値が2×10-3以下であること;
(ii)幅方向(TD方向)の面内複屈折率(Δn)のばらつき[Δ(Δn)]が4×10-4以下であること;
(iii)250℃30分加熱後の面内複屈折率(Δnh)の値と加熱前の面内複屈折率(Δn)の値との差(Δnh-Δn)が±2×10-4以下であること;
を満たすことを特徴とする金属張積層板。
【請求項2】
前記非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が20モル部以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属張積層板。
【化1】
[一般式(1)において、連結基Zは単結合若しくは-COO-を示し、Yは独立にハロゲン若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素又は炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。]
【請求項3】
前記非熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して、前記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が70モル部~95モル部の範囲内であり、下記の一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基の合計量が5~30モル部の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の金属張積層板。
【化2】
[一般式(2)及び一般式(3)において、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、又は炭素数1~4の、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基もしくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、Xは独立に-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示し、X及びXはそれぞれ独立に単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示すが、X及びXの両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に0~4の整数を示す。]
【請求項4】
前記熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、下記の一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基の合計量が50モル部以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の金属張積層板。
【化3】
[一般式(2)及び一般式(3)において、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、又は炭素数1~4の、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基もしくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、Xは独立に-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示し、X及びXはそれぞれ独立に単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示すが、X及びXの両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に0~4の整数を示す。]
【請求項5】
前記一般式(2)で表されるジアミン残基が、1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼンから誘導されるジアミン残基であり、
前記一般式(3)で表されるジアミン残基が、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから誘導されるジアミン残基であることを特徴とする請求項3又は4に記載の金属張積層板。
【請求項6】
前記非熱可塑性ポリイミド層の厚み(A)と前記熱可塑性ポリイミド層の厚み(B)の厚み比(A)/(B)が1~20の範囲内であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項7】
幅方向(TD方向)の長さが490mm以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線に加工してなる回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層板及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
【0003】
FPCは、銅張積層板(CCL)の銅層をエッチングして配線加工することによって製造される。携帯電話やスマートフォンにおいて、連続屈曲や180°折り曲げされるFPCには、銅層の材料として、圧延銅箔が多く用いられている。例えば、特許文献1では、圧延銅箔を用いて作製された銅張積層板の耐屈曲性を耐はぜ折り回数で規定する提案がなされている。また、特許文献2では、光沢度と折り曲げ回数で規定された圧延銅箔を用いた銅張積層板が提案されている。
【0004】
銅張積層板に対するフォトリソグラフィ工程や、FPC実装の過程では、銅張積層板に設けられたアライメントマークを基準に接合、切断、露光、エッチング等のさまざまな加工が行われる。これらの工程での加工精度は、FPCを搭載した電子機器の信頼性を維持する上で重要となる。しかし、銅張積層板は、熱膨張係数が異なる銅層と樹脂層とを積層した構造を有するため、銅層と樹脂層との熱膨張係数の差によって、層間に応力が発生する。この応力は、その一部分又は全部が、銅層をエッチングして配線加工した場合に解放されることによって伸縮を生じさせ、配線パターンの寸法を変化させる要因となる。そのため、最終的にFPCの段階で寸法変化が生じてしまい、配線間もしくは配線と端子との接続不良を引き起こす原因となり、回路基板の信頼性や歩留まりを低下させる。従って、回路基板材料としての銅張積層板において、寸法安定性は非常に重要な特性である。しかし、上記特許文献1、2では、銅張積層板の寸法安定性については何ら考慮されていない。
【0005】
また、特許文献3では、絶縁樹脂層の熱膨張係数を下げ、寸法安定性を高めるため、敢えて熱可塑性ポリイミド層を設けず、銅箔と非熱可塑性ポリイミド層からなるフレキシブル金属張積層板において、非熱可塑性ポリイミド層のジアミン成分として、p-フェニレンジアミン(p-PDA)又は2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)からなるジアミン化合物と、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)等のジアミン化合物とを用いることが提案されている。p-PDAは、熱膨張係数を下げ、寸法安定性に寄与するモノマーであるが、分子量が小さいため、イミド基濃度が増加してポリイミドの吸湿性が高くなってしまうという問題があった。ポリイミドの吸湿性が高くなると、回路加工時の加熱などの環境変化によって寸法変化や反りが発生しやすくなる、という問題がある。
【0006】
一方、特許文献4では、回路加工時のクラックの発生が抑制された多層ポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミドの原料のジアミン化合物として、m-TBとp-PDAを組み合わせて使用することが開示されている。しかしながら、特許文献4のモノマー組成では、ジアミン化合物中のp-PDAのモル比が大きすぎるため、上記と同様に、ポリイミドの吸湿性が高くなって、回路加工時の環境変化によって寸法変化や反りが発生しやすくなる、という問題がある。なお、特許文献4には、ジアミン化合物として、m-TBとp-PDAと2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を組み合わせて使用した場合、クラック耐性が悪化することが記載されている。この場合も、ジアミン化合物中のp-PDAのモル比が大きすぎるため、上記と同様に、ポリイミドの吸湿性が高くなるという問題があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-15674公報(特許請求の範囲など)
【文献】特開2014-11451号公報(特許請求の範囲など)
【文献】特許第5162379号公報(特許請求の範囲など)
【文献】WO2016/159104号(合成例6、合成例9など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、回路加工工程、基板積層工程及び部品実装工程などの工程中の温度、湿度及び圧力の変化並びに工程間の温度・湿度環境変化に対する寸法変化を低減させることができる金属張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、絶縁樹脂層の面内複屈折率(Δn)を制御することによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片面に積層された金属層とを備えた金属張積層板であって、前記絶縁樹脂層が、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層を有している。そして、本発明の金属張積層板は、前記絶縁樹脂層が下記の条件(i)~(iii)を満たすことを特徴とする。
(i)面内複屈折率(Δn)の値が2×10-3以下であること。
(ii)幅方向(TD方向)の面内複屈折率(Δn)のばらつき[Δ(Δn)]が4×10-4以下であること。
(iii)250℃の30分加熱後の面内複屈折率(Δnh)の値と加熱前の面内複屈折率(Δn)の値と加熱前の面内複屈折率(Δn)の値との差(Δnh-Δn)が±2×10-4以下であること。
【0011】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミドはテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、全ジアミン残基の100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が20モル部以上であってもよい。
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)において、連結基Zは単結合若しくは-COO-を示し、Yは独立にハロゲン若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素又は炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。
【0014】
本発明の金属張積層板は、前記非熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して、前記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が70モル部~95モル部の範囲内であってもよく、下記の一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基の合計量が5~30モル部の範囲内であってもよい。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(2)及び一般式(3)において、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、又は炭素数1~4の、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基もしくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、Xは独立に-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示し、X及びXはそれぞれ独立に単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示すが、X及びXの両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に0~4の整数を示す。
【0017】
本発明の金属張積層板において、前記熱可塑性ポリイミドはテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、全ジアミン残基の100モル部に対して、上記の一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基の合計量が50モル部以上であってもよい。
【0018】
本発明の金属張積層板において、前記一般式(2)で表されるジアミン残基が、1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼンから誘導されるジアミン残基であってもよく、
前記一般式(3)で表されるジアミン残基が、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから誘導されるジアミン残基であってもよい。
【0019】
本発明の金属張積層板において、前記非熱可塑性ポリイミド層の厚み(A)と前記熱可塑性ポリイミド層の厚み(B)の厚み比(A)/(B)が1~20の範囲内であってもよい。
【0020】
本発明の金属張積層板において、幅方向(TD方向)の長さが490mm以上であってもよい。
【0021】
本発明の回路基板は、上記いずれかに記載の金属張積層板の前記金属層を配線に加工してなるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の金属張積層板は、条件(i)~(iii)を具備することによって、高温・高圧の環境下や湿度変化の環境下においても絶縁樹脂層の寸法安定性に優れているため、回路加工工程、基板積層工程、及び部品実装工程の際の環境変化(例えば、高温や高圧、湿度変化など)によって、反りなどの不具合が発生しにくい。特に、幅広の金属張積層板においても、絶縁樹脂層の全幅において寸法変化率が低く、寸法が安定しているので、該金属張積層板から得られるFPCを高密度実装が可能なものにすることができる。従って、本発明の金属張積層板をFPC材料として利用することによって、回路基板の信頼性と歩留まりの向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
<金属張積層板>
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片面に積層された金属層とを備えている。
【0025】
<絶縁樹脂層>
本実施の形態の金属張積層板において、絶縁樹脂層は、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方に熱可塑性ポリイミド層を有する。すなわち、熱可塑性ポリイミド層は非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に設けられている。例えば本実施の形態の金属張積層板において、金属層は熱可塑性ポリイミド層の面に積層する。
ここで、非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、360℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。また、熱可塑性ポリイミドとは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、360℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。
【0026】
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層が下記の条件(i)~(iii)を満たすものである。
(i)面内複屈折率(Δn)の値が2×10-3以下であること。
(ii)幅方向(TD方向)の面内複屈折率(Δn)のばらつき[Δ(Δn)]が4×10-4以下であること。
(iii)250℃の30分加熱後の面内複屈折率(Δnh)の値と加熱前の面内複屈折率(Δn)の値との差(Δnh-Δn)が±2×10-4以下であること。
上記の条件(i)~(iii)を満たすことによって、絶縁樹脂層を構成するポリイミドの配向性が高まるとともに、加熱による寸法変化を抑制できるので、寸法安定性が向上する。面内複屈折率(Δn)の値が2×10-3を超えると面内配向の異方性が大きくなり寸法安定性悪化の原因となる。Δnの値の下限値は特に限定されないが、面内配向が等方的で寸法安定性が向上する一方で熱膨張係数が過度に低下し、金属箔の熱膨張係数との不整合による反りを抑制する観点から、2×10-4以上とすることが好ましい。以上の観点から、絶縁樹脂層の面内複屈折率(Δn)の値は、好ましくは2×10-4以上8×10-4以下の範囲内、より好ましくは2×10-4以上6×10-4以下の範囲内である。
【0027】
また、TD方向のΔnのばらつき[Δ(Δn)]が4×10-4を超えると、面内配向のばらつきが大きくなり寸法変化率の面内ばらつきの原因となる。TD方向のΔnのばらつき[Δ(Δn)]は、好ましくは2×10-4以下、より好ましくは1.2×10-4以下である。このような範囲内であれば、例えばスケールアップした場合であっても、高い寸法精度を維持できる。
【0028】
また、加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)が±2×10-4以下であることによって、加熱前後で面内配向の等方性が維持されるため、加熱による寸法変化を抑制できる。加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)は、±1.2×10-4以下が好ましく、±0.8×10-4以下がより好ましい。
【0029】
上記の条件(i)~(iii)を満たすことによって、回路加工工程、基板積層工程及び部品実装工程の際の環境変化(例えば高温・高圧環境、湿度変化など)による寸法変化や反りを効果的に抑制できる。上記の条件(i)~(iii)のいずれか1つでも具備しない場合には、回路加工工程、基板積層工程及び部品実装工程時の高温や高圧、湿度変化などによって、寸法変化量が大きくなって寸法精度が低下したり、反りが発生したりする。
【0030】
本実施の形態の金属張積層板は、例えば回路基板材料として適用する場合において、反りの発生や寸法安定性の低下を防止するために、絶縁樹脂層の熱膨張係数(CTE)が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であることが重要であり、好ましくは10ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内がよい。CTEが10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。また、本実施の形態の金属張積層板において、銅箔などからなる金属層のCTEに対して絶縁樹脂層のCTEが、±5ppm/K以下の範囲内がより好ましく、±2ppm/K以下の範囲内が最も好ましい。
【0031】
絶縁樹脂層において、非熱可塑性ポリイミド層は低熱膨張性のポリイミド層を構成し、熱可塑性ポリイミド層は高熱膨張性のポリイミド層を構成する。ここで、低熱膨張性のポリイミド層は、熱膨張係数(CTE)が好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは3ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。また、高熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上70ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。ポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有するポリイミド層とすることができる。
【0032】
絶縁樹脂層の厚みは、使用する目的に応じて、所定の範囲内の厚みに設定することができるが、例えば4~50μmの範囲内にあることが好ましく、11~26μmの範囲内にあることがより好ましい。絶縁樹脂層の厚みが上記下限値に満たないと、電気絶縁性が担保出来ないことや、ハンドリング性の低下により製造工程にて取扱いが困難になるなどの問題が生じることがある。一方、絶縁樹脂層の厚みが上記上限値を超えると、面内複屈折率(Δn)を制御するために、製造条件を高精度に制御する必要があり、生産性低下などの不具合が生じる。
【0033】
また、絶縁樹脂層において、非熱可塑性ポリイミド層の厚み(A)と熱可塑性ポリイミド層の厚み(B)との厚み比((A)/(B))が1~20の範囲内であることが好ましく、2~12の範囲内がより好ましい。なお、非熱可塑性ポリイミド層及び/又は熱可塑性ポリイミド層の層数が複数である場合は、厚み(A)や厚み(B)は、合計の厚みを意味する。この比の値が、1に満たないと絶縁樹脂層全体に対する非熱可塑性ポリイミド層が薄くなるため、面内複屈折率(Δn)のばらつきが大きくなりやすく、20を超えると熱可塑性ポリイミド層が薄くなるため、絶縁樹脂層と金属層との接着信頼性が低下しやすくなる。ここで、面内複屈折率(Δn)の制御は、絶縁樹脂層を構成する各ポリイミド層の樹脂構成とその厚みに相関がある。接着性すなわち高熱膨張性又は軟化を付与した樹脂構成である熱可塑性ポリイミド層は、その厚みが大きくなる程、絶縁樹脂層のΔnの値に大きく影響する。そこで、非熱可塑性ポリイミド層の厚みの比率を大きくし、熱可塑性ポリイミド層の厚みの比率を小さくして、絶縁樹脂層のΔnの値とそのばらつきを小さくすることが好ましい。後述するように、本実施の形態では、熱可塑性ポリイミド層の厚みの比率を小さくする場合でも、熱可塑性ポリイミド層が一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基を所定量含有するように設計することによって、金属層と絶縁樹脂層との接着性を確保できる。
【0034】
絶縁樹脂層の寸法精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、本実施の形態の金属張積層板は、幅方向(TD方向)の長さ(フィルム幅)が好ましくは490mm以上1200mm以下の範囲内、より好ましくは520mm以上1100mm以下の範囲内がよく、長尺状の長さが20m以上のものが好ましい。本実施の形態の金属張積層板が連続的に製造される場合、幅方向(TD方向)が広いほど発明の効果が特に顕著となる。なお、本実施の形態の金属張積層板が連続的に製造された後、長尺な金属張積層板の長手方向(MD方向)及びTD方向にある一定の値でスリットされた金属張積層板も含まれる。
【0035】
また、絶縁樹脂層は、ポリイミドフィルムとしたときの引張弾性率が3.0~10.0GPaの範囲内であることが好ましく、4.5~8.0GPaの範囲内であるのがより好ましい。ポリイミドフィルムとしたときの引張弾性率が3.0GPaに満たないとポリイミド自体の強度が低下することによって、金属張積層板を回路基板へ加工する際に絶縁樹脂層の裂けなどのハンドリング上の問題が生じることがある。反対に、ポリイミドフィルムとしたときの引張弾性率が10.0GPaを超えると、金属張積層板の折り曲げに対する剛性が上昇する結果、金属張積層板を折り曲げた際に金属配線に加わる曲げ応力が上昇し、折り曲げ耐性が低下してしまう。ポリイミドフィルムとしたときの引張弾性率を上記範囲内とすることで、絶縁樹脂層の強度と柔軟性を担保することができる。
【0036】
(非熱可塑性ポリイミド)
本実施の形態において、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、これらはいずれも芳香族基を含むことが好ましい。非熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基が、いずれも芳香族基を含むことで、非熱可塑性ポリイミドの秩序構造を形成しやすくし、絶縁樹脂層の高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を抑制して加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)を小さくするとともに、面内複屈折率(Δn)のばらつきを抑制することができる。
【0037】
なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。また、「ジアミン化合物」は、末端の二つのアミノ基における水素原子が置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立にアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0038】
非熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、PMDA残基ともいう。)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、BPDA残基ともいう。)が好ましく挙げられる。これらのテトラカルボン酸残基は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を抑制して加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)を小さくすることができる。また、PMDA残基は、熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。更に、BPDA残基は、テトラカルボン酸残基の中でも極性基がなく比較的分子量が大きいため、非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度を下げ、絶縁樹脂層の吸湿を抑制する効果も期待できる。このような観点から、PMDA残基及び/又はBPDA残基の合計量が、非熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは50モル部以上、より好ましくは50~100モル部の範囲内、最も好ましくは70~100モル部の範囲内であることがよい。
【0039】
非熱可塑性ポリイミドに含まれる他のテトラカルボン酸残基としては、例えば、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0040】
非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましく挙げられる。
【0041】
【化3】
【0042】
一般式(1)において、連結基Zは単結合若しくは-COO-を示し、Yは独立にハロゲン若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素又は炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(1)において、複数の置換基Y、整数p、qが同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0043】
一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基(以下、「ジアミン残基(1)」と記すことがある)は、秩序構造を形成しやすく、寸法安定性を高め、特に高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を効果的に抑制できるとともに、加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)を小さく抑えることができる。このような観点から、ジアミン残基(1)は、非熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して、20モル部以上、好ましくは70~95モル部の範囲内、より好ましくは80~90モル部の範囲内で含有することがよい。
【0044】
ジアミン残基(1)の好ましい具体例としては、p-フェニレンジアミン(p-PDA)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2’-ジプロポキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。これらの中でも特に、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を抑制して加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)を小さくすることができるので特に好ましい。
【0045】
また、絶縁樹脂層の弾性率を下げ、伸度及び折り曲げ耐性等を向上させるため、非熱可塑性ポリイミドが、下記の一般式(2)及び(3)で表されるジアミン残基からなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミン残基を含むことが好ましい。
【0046】
【化4】
【0047】
上記式(2)及び式(3)において、R、R、R及びRはそれぞれ独立にハロゲン原子、又は炭素数1~4の、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基もしくはアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、Xは独立に-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示し、X及びXはそれぞれ独立に単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH)-、-CO-、-COO-、-SO-、-NH-又は-NHCO-から選ばれる2価の基を示すが、X及びXの両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に0~4の整数を示す。
なお、「独立に」とは、上記式(2)、(3)の内の一つにおいて、または両方において、複数の連結基X、連結基XとX、複数の置換基R、R、R、R、さらに、整数m、n、o、pが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0048】
一般式(2)及び(3)で表されるジアミン残基は、屈曲性の部位を有するので、絶縁樹脂層に柔軟性を付与することができる。ここで、一般式(3)で表されるジアミン残基は、ベンゼン環が4個であるので、熱膨張係数(CTE)の増加を抑制するために、ベンゼン環に結合する末端基はパラ位とすることが好ましい。また、絶縁樹脂層に柔軟性を付与しながら熱膨張係数(CTE)の増加を抑制する観点から、一般式(2)及び(3)で表されるジアミン残基は、非熱可塑性ポリイミドに含まれる全ジアミン残基の100モル部に対して、好ましくは5~30モル部の範囲内、より好ましくは10~20モル部の範囲内で含有することがよい。一般式(2)及び(3)で表されるジアミン残基が5モル部未満であると、絶縁樹脂層の弾性率が増加して伸度が低下し、折り曲げ耐性等の低下が生じることがあり、30モル部を超えると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となることがある。
【0049】
一般式(2)で表されるジアミン残基は、m、n及びoの一つ以上が0であるものが好ましく、また、基R、R及びRの好ましい例としては、炭素数1~4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数2~3のアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(2)において、連結基Xの好ましい例としては、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-SO-又は-CO-を挙げることができる。一般式(2)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、ビス(4‐アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン(DTBAB)、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BAPK)、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0050】
一般式(3)で表されるジアミン残基は、m、n、o及びpの一つ以上が0であるものが好ましく、また、基R、R、R及びRの好ましい例としては、炭素数1~4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数2~3のアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(3)において、連結基X及びXの好ましい例としては、単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH(CH)-、-SO-又は-CO-を挙げることができる。但し、屈曲部位を付与する観点から、連結基X及びXの両方が単結合である場合を除くものとする。一般式(3)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0051】
一般式(2)で表されるジアミン残基の中でも、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)から誘導されるジアミン残基(「TPE-R残基」と記すことがある)が特に好ましく、一般式(3)で表されるジアミン残基の中でも、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)から誘導されるジアミン残基(「BAPP残基」と記すことがある)が特に好ましい。TPE-R残基及びBAPP残基は、屈曲性の部位を有するので、絶縁樹脂層の弾性率を低下させ、柔軟性を付与することができる。また、BAPP残基は分子量が大きいため、非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度を下げ、絶縁樹脂層の吸湿を抑制する効果も期待できる。
【0052】
非熱可塑性ポリイミドに含まれる他のジアミン残基としては、例えば、m‐フェニレンジアミン(m-PDA)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(4,4'-DAPE)、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、3,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0053】
非熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、面内複屈折率(Δn)のばらつきを抑制する観点から、ランダムに存在することが好ましい。
【0054】
非熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、35重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が35重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。上記酸無水物とジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、非熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御することで、イミド基濃度低下に伴うCTEの増加を抑制し、低吸湿性を担保している。
【0055】
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、絶縁樹脂層の強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0056】
(熱可塑性ポリイミド)
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含み、これらがいずれも芳香族基を含むことが好ましい。熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基が、いずれも芳香族基を含むことによって、絶縁樹脂層の高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を抑制して加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)を小さくすることができる。
【0057】
熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、PMDA残基ともいう。)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、BPDA残基ともいう。)が好ましく挙げられる。これらのテトラカルボン酸残基は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内複屈折率(Δn)の変化量を抑制して加熱前後の面内複屈折率(Δn)の値の差(Δnh-Δn)を小さくすることができる。また、PMDA残基は、熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。更に、BPDA残基は、テトラカルボン酸残基の中でも極性基がなく比較的分子量が大きいため、熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度を下げ、絶縁樹脂層の吸湿を抑制する効果も期待できる。このような観点から、PMDA残基及び/又はBPDA残基の合計量が、熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは50モル部以上、より好ましくは50~100モル部の範囲内、最も好ましくは70~100モル部の範囲内であることがよい。
【0058】
熱可塑性ポリイミドに含まれる他のテトラカルボン酸残基としては、上記非熱可塑性ポリイミドで例示したものと同様の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0059】
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、上記一般式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも一種のジアミン残基が好ましい。一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基は、全ジアミン残基の100モル部に対して、合計で50モル部以上であることが好ましく、50~100モル部であることがより好ましく、70~100モル部の範囲内が最も好ましい。一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基を、全ジアミン残基の100モル部に対して合計で50モル部以上含むことによって、熱可塑性ポリイミド層に柔軟性と接着性を付与し、金属層に対する接着層として機能させることができる。また、一般式(2)で表されるジアミン残基の中でも、TPE-R残基が特に好ましく、一般式(3)で表されるジアミン残基の中でもBAPP残基が特に好ましい。TPE-R残基及びBAPP残基は、屈曲性の部位を有するので、絶縁樹脂層の弾性率を低下させ、柔軟性を付与することができる。また、BAPP残基は分子量が大きいため、熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度を下げ、絶縁樹脂層の吸湿を抑制する効果も期待できる。
【0060】
また、上述のように、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドが、一般式(2)及び(3)から選ばれるジアミン残基を含有する場合には、熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドも、ジアミン残基として、類似した構造、好ましくは一般式(2)及び(3)から選ばれる同種のジアミン残基を含有することがよい。この場合、熱可塑性ポリイミドと非熱可塑性ポリイミドでは、ジアミン残基の含有比率は異なるものとなるが、類似若しくは同種のジアミン残基を含有することで、特にキャスト法によってポリイミドフィルムを形成する際に、熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層の配向制御が容易になり、寸法精度を管理しやすくなる。このような観点から、本実施の形態では、非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドと、熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドがいずれも上記一般式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも一種のジアミン残基を含有することが好ましく、該ジアミン残基が、TPE-R残基及び/又はBAPP残基を含有することが最も好ましい。
【0061】
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミドに含まれる、上記一般式(2)及び(3)以外のジアミン残基としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2’-ジプロポキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、p‐フェニレンジアミン(p-PDA)、m‐フェニレンジアミン(m-PDA)、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を挙げることができる。
【0062】
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0063】
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、金属層との密着性を向上させることができる。このような熱可塑性ポリイミドは、ガラス転移温度が200℃以上350℃以下の範囲内、好ましくは200℃以上320℃以下の範囲内である。
【0064】
熱可塑性ポリイミドのイミド基濃度は、35重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が35重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。上記酸無水物とジアミン化合物の組み合わせを選択することによって、熱可塑性ポリイミド中の分子の配向性を制御することで、イミド基濃度低下に伴うCTEの増加を抑制し、低吸湿性を担保している。
【0065】
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、絶縁樹脂層の強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0066】
(非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドの合成)
一般にポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0067】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0068】
<金属層>
金属層を構成する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、金、コバルト、チタン、タンタル、亜鉛、鉛、錫、シリコン、ビスマス、インジウム又はこれらの合金などから選択される金属を挙げることができる。金属層は、スパッタ、蒸着、めっき等の方法で形成することもできるが、接着性の観点から金属箔を用いることが好ましい。導電性の点で特に好ましいものは銅箔である。銅箔は、電解銅箔、圧延銅箔のいずれでもよい。なお、本実施の形態の金属張積層板を連続的に生産する場合には、金属箔として、所定の厚さのものがロール状に巻き取られた長尺状の金属箔が用いられる。
【0069】
以下、金属張積層板の好ましい実施の形態として、銅層を有する銅張積層板を挙げて、説明する。
【0070】
<銅張積層板>
本実施の形態の銅張積層板は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に銅箔等の銅層を備えていればよい。また、絶縁層と銅層の接着性を高めるために、絶縁層における銅層に接する層が、熱可塑性ポリイミド層である。銅層は、絶縁層の片面又は両面に設けられている。つまり、本実施の形態の銅張積層板は、片面銅張積層板(片面CCL)でもよいし、両面銅張積層板(両面CCL)でもよい。片面CCLの場合、絶縁層の片面に積層された銅層を、本発明における「第1の銅層」とする。両面CCLの場合、絶縁層の片面に積層された銅層を、本発明における「第1の銅層」とし、絶縁層において、第1の銅層が積層された面とは反対側の面に積層された銅層を、本発明における「第2の銅層」とする。本実施の形態の銅張積層板は、銅層をエッチングするなどして配線回路加工して銅配線を形成し、FPCとして使用される。
【0071】
銅張積層板は、例えば樹脂フィルムを用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えば銅メッキによって銅層を形成することによって調製してもよい。
【0072】
また、銅張積層板は、樹脂フィルムを用意し、これに銅箔を熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。
【0073】
さらに、銅張積層板は、銅箔の上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含有する塗布液をキャストし、乾燥して塗布膜とした後、熱処理してイミド化し、ポリイミド層を形成することによって調製してもよい。
【0074】
(第1の銅層)
本実施の形態の銅張積層板において、第1の銅層に使用される銅箔(以下、「第1の銅箔」と記すことがある)は、特に限定されるものではなく、例えば、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。
【0075】
第1の銅箔の厚みは、好ましくは13μm以下であり、より好ましくは6~12μmの範囲内がよい。第1の銅箔の厚みが13μmを超えると、銅張積層板(又はFPC)を折り曲げた際の銅層(又は銅配線)に加わる曲げ応力が大きくなることにより耐折り曲げ性が低下することとなる。また、生産安定性及びハンドリング性の観点から、第1の銅箔の厚みの下限値は6μmとすることが好ましい。
【0076】
また、第1の銅箔の引張弾性率は、例えば、10~35GPaの範囲内であることが好ましく、15~25GPaの範囲内がより好ましい。本実施の形態で第1の銅箔として圧延銅箔を使用する場合は、熱処理によってアニールされると、柔軟性が高くなりやすい。従って、銅箔の引張弾性率が上記下限値に満たないと、長尺な第1の銅箔上に絶縁層を形成する工程において、加熱によって第1の銅箔自体の剛性が低下してしまう。一方、引張弾性率が上記上限値を超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により大きな曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性が低下する。なお、圧延銅箔は、銅箔上に絶縁層を形成する際の熱処理条件や、絶縁層を形成した後の銅箔のアニール処理などにより、その引張弾性率が変化する傾向がある。従って、本実施の形態では、最終的に得られた銅張積層板において、第1の銅箔の引張弾性率が上記範囲内にあればよい。
【0077】
第1の銅箔は、特に限定されるものではなく、市販されている圧延銅箔を用いることができる。
【0078】
(第2の銅層)
第2の銅層は、絶縁層における第1の銅層とは反対側の面に積層されている。第2の銅層に使用される銅箔(第2の銅箔)としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、第2の銅箔として、市販されている銅箔を用いることもできる。なお、第2の銅箔として、第1の銅箔と同じものを使用してもよい。
【0079】
<回路基板>
本実施の形態の金属張積層板は、主にFPC等の回路基板の材料として有用である。例えば、上記に例示の銅張積層板の銅層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の一実施の形態であるFPC等の回路基板を製造できる。
【実施例
【0080】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0081】
[粘度の測定]
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0082】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、360℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、360℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
【0083】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0084】
[面内リタデーション(RO)の測定]
複屈折率計(フォトニックラティス社製、商品名;ワイドレンジ複屈折評価システムWPA-100、測定エリア;MD:140mm×TD:100mm)を用いて、所定のサンプルの面内方向のリタデーションを求めた。なお、入射角は、0°、測定波長は、543nmである。
【0085】
[面内リタデーション(RO)の評価用サンプルの調製]
長尺状の金属張積層板の金属層をエッチングして得られたポリイミドフィルムにおけるTD方向の左右2つの端部(Left及びRight)並びに中央部(Center)のそれぞれにおいて、A4サイズ(TD:210mm×MD:297mm)に切断し、サンプルL(Left)、サンプルR(Right)及びサンプルC(Center)を調製した。
【0086】
[面内複屈折率(Δn)の評価]
サンプルL、サンプルR及びサンプルCのそれぞれについて面内リタデーション(RO)をそれぞれ測定した。各サンプルの測定値の最大値を評価用サンプルの厚さで除した値を「面内複屈折率(Δn)」とし、面内リタデーション(RO)の測定値における最大値と最小値の差を「幅方向(TD方向)の面内リタデーション(RO)のばらつき(ΔRO)」とし、このΔROを評価用サンプルの厚さで除した値を「幅方向(TD方向)の面内複屈折率(Δn)のばらつき[Δ(Δn)]」とした。
【0087】
[加熱後の面内リタデーション(ROh)及び面内複屈折率(Δnh)の評価]
金属張積層板の金属層をエッチングして得られたポリイミドフィルムを調製し、23℃50%RHの環境下で24時間調湿後のサンプルの面内リタデーション(RO)を測定した。その後、本サンプルを250℃の高温環境下で30分加熱処理し、加熱後の面内リタデーション(ROh)を測定した。250℃の30分加熱後の面内リタデーション(ROh)の値と加熱前の面内リタデーション(RO)の値との差(|ROh-RO|)を算出した。23℃50%RHの環境下で24時間調湿後のサンプルの面内リタデーション(RO)の値を本サンプルの厚さで除した値を「加熱前の面内複屈折率(Δn)」とし、加熱後の面内リタデーション(ROh)の値を本サンプルの厚さで除した値を「250℃の30分加熱後の面内複屈折率(Δnh)」とし、加熱前後の面内リタデーション(RO)の差(|ROh-RO|)を本サンプルの厚さで除した値を「250℃の30分加熱後の面内複屈折率(Δnh)」及び「250℃の30分加熱後の面内複屈折率(Δnh)の値と加熱前の面内複屈折率(Δn)の値との差(|Δnh-Δn|)」とした。
【0088】
[反りの測定]
50mm×50mmのサイズのポリイミドフィルムを、23℃、50%RH下で24時間調湿後、カールしている方向を上面とし、平滑な台上に設置した。その際のカール量についてノギスを用いて測定を行った。この際、フィルムが基材エッチング面側にカールした場合をプラス表記、反対面にカールした場合をマイナス表記とし、フィルムの4角の測定値の平均をカール量とした。
【0089】
[ピール強度の測定]
片面銅張積層板(銅箔/樹脂層)の銅箔を幅1.0mmに回路加工した後、幅;8cm×長さ;4cmに切断し、測定サンプルを調製した。テンシロンテスター(東洋精機製作所製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、測定サンプルの樹脂層側を両面テープによりアルミ板に固定し、銅箔を90°方向に50mm/分の速度で、銅箔を樹脂層から10mm剥離したときの中央強度を求めた。
【0090】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
DAPE:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
p‐PDA:p-フェニレンジアミン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0091】
(合成例1)
窒素気流下で、反応槽に、23.0重量部のm-TB(0.108モル部)及び3.5重量部のTPE-R(0.012モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、26.0重量部のPMDA(0.119モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。ポリアミド酸溶液aの溶液粘度は41,100cpsであった。このポリアミド酸溶液aから得られたポリイミドのガラス転移温度は421℃で、非熱可塑性、熱膨張係数は10(ppm/K)であった。
【0092】
(合成例2)
窒素気流下で、反応槽に、17.3重量部のm-TB(0.081モル部)及び10.2重量部のTPE-R(0.035モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、25.1重量部のPMDA(0.115モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを得た。ポリアミド酸溶液bの溶液粘度は38,200cpsであった。このポリアミド酸溶液bから得られたポリイミドのガラス転移温度は427℃で、非熱可塑性、熱膨張係数は22(ppm/K)であった。
【0093】
(合成例3)
窒素気流下で、反応槽に、16.4重量部のm-TB(0.077モル部)及び9.7重量部のTPE-R(0.033モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、16.7重量部のPMDA(0.077モル部)及び9.7重量部のBPDA(0.033モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを得た。ポリアミド酸溶液cの溶液粘度は46,700cpsであった。このポリアミド酸溶液cから得られたポリイミドのガラス転移温度は366℃で、非熱可塑性、熱膨張係数は23(ppm/K)であった。
【0094】
(合成例4)
窒素気流下で、反応槽に、22.4重量部のm-TB(0.105モル部)及び4.8重量部のBAPP(0.012モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、25.3重量部のPMDA(0.116モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液dを得た。ポリアミド酸溶液dの溶液粘度は36,800cpsであった。このポリアミド酸溶液dから得られたポリイミドのガラス転移温度は408℃で、非熱可塑性、熱膨張係数は9(ppm/K)であった。
【0095】
(合成例5)
窒素気流下で、反応槽に、12.3重量部のm-TB(0.058モル部)、10.1重量部のTPE-R(0.035モル部)及び2.5重量部のp-PDA(0.023モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、17.5重量部のPMDA(0.080モル部)及び10.1重量部のBPDA(0.034モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液eを得た。ポリアミド酸溶液eの溶液粘度は42,700cpsであった。このポリアミド酸溶液eから得られたポリイミドのガラス転移温度は360℃で、非熱可塑性、熱膨張係数は18(ppm/K)であった。
【0096】
(合成例6)
窒素気流下で、反応槽に、2.2重量部のm-TB(0.010モル部)及び27.6重量部のTPE-R(0.094モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、22.7重量部のPMDA(0.104モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液fを得た。ポリアミド酸溶液fの溶液粘度は33,900cpsであった。このポリアミド酸溶液fから得られたポリイミドのガラス転移温度は446℃で、熱可塑性、熱膨張係数は55(ppm/K)であった。
【0097】
(合成例7)
窒素気流下で、反応槽に、30.2重量部のBAPP(0.074モル部)及び重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、22.3重量部のBPDA(0.076モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液gを得た。ポリアミド酸溶液gの溶液粘度は9,800cpsであった。このポリアミド酸溶液gから得られたポリイミドのガラス転移温度は252℃で、熱可塑性、熱膨張係数は46(ppm/K)であった。
【0098】
(合成例8)
窒素気流下で、反応槽に、25.8重量部のTPE-R(0.088モル部)及び重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、26.7重量部のBPDA(0.091モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液hを得た。ポリアミド酸溶液hの溶液粘度は8,800cpsであった。このポリアミド酸溶液hから得られたポリイミドのガラス転移温度は243℃で、熱可塑性、熱膨張係数は65(ppm/K)であった。
【0099】
(合成例9)
窒素気流下で、反応槽に、17.6重量部のTPE-R(0.060モル部)及び1.6重量部のp-PDA(0.015モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、22.8重量部のBPDA(0.077モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液iを得た。ポリアミド酸溶液iの溶液粘度は7,800cpsであった。このポリアミド酸溶液iから得られたポリイミドのガラス転移温度は239℃で、熱可塑性、熱膨張係数は65(ppm/K)であった。
【0100】
(合成例10)
窒素気流下で、反応槽に、11.7重量部のDAPE(0.058モル部)及び11.4重量部のTPE-R(0.039モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、29.5重量部のBPDA(0.100モル部)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液jを得た。ポリアミド酸溶液jの溶液粘度は11,200cpsであった。このポリアミド酸溶液jから得られたポリイミドのガラス転移温度は265℃で、熱可塑性、熱膨張係数は58(ppm/K)であった。
【0101】
[実施例1]
厚さ12μmで幅1,080mmの長尺状の電解銅箔の片面に合成例7で調製したポリアミド酸溶液gを硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後(第1層目)、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。その上に合成例1で調製したポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが20μmとなるように均一に塗布した後(第2層目)、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上に合成例7で調製したポリアミド酸溶液gを硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後(第3層目)、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、片面銅張積層板を調製した。
【0102】
[実施例2~8および比較例1~3]
電解銅箔の片面にポリアミド酸の樹脂溶液を塗布後、加熱乾燥および段階的な熱処理を行い片面銅張積層板を調製するにあたり、第1層~第3層目に使用した樹脂ならびに厚みを、下記表1に記載した構成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして片面銅張積層板を得た。
【0103】
表1に、実施例1~8及び比較例1~3で得た片面銅張積層板の絶縁樹脂層における非熱可塑性ポリイミド層(A)と熱可塑性ポリイミド層(B)との厚み比(非熱可塑性ポリイミド層(A)/熱可塑性ポリイミド層(B))、面内リタデーション(RO)、面内リタデーション(RO)のばらつき(ΔRO)及び加熱後の面内リタデーション(ROh)の値と加熱前の面内リタデーション(RO)の値との差(|ROh-RO|)、反り量およびピール強度を示す。また、表2に、実施例1~8及び比較例1~3で得た片面銅張積層板の絶縁樹脂層における面内複屈折率(Δn)、幅方向(TD方向)の面内複屈折率(Δn)のばらつき[Δ(Δn)]、加熱後の面内複屈折率(Δnh)の値と加熱前の面内複屈折率(Δn)の値との差(|Δnh-Δn|)を示す。
【0104】
<ICチップ実装性>
実施例1~8および比較例1~3にて作製した片面銅張積層板の銅箔表面にドライフィルムをラミネートし、ドライフィルムレジストをパターニング後、そのパターンに沿って銅箔をエッチングして回路を形成し、回路基板を調製した。得られた回路基板の銅配線側に400℃、0.5秒間のボンディング処理にてICチップを実装したところ、実施例1~8については、銅配線とICチップとの位置ずれはなく、不具合は発生しなかった。一方で、比較例1については、銅配線とICチップとの位置ずれが発生し、比較例2および3については、銅配線とICチップの位置ずれと回路基板の反りが発生し、実装に不具合が生じた。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。