(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】変位測定装置、変位測定装置の信号処理部およびその信号処理方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/241 20060101AFI20240403BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01D5/241 D
G01D5/245 110R
G01D5/245 C
(21)【出願番号】P 2019184856
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】安達 聡
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-133374(JP,A)
【文献】特開平5-45151(JP,A)
【文献】特開平6-207805(JP,A)
【文献】特開平5-45108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインスケール
と検出ヘッドとの相対変位
に応じて前記検出ヘッドから出力される第1周期の周期的信号と第2周期の周期的信号とを含む検出信号から得られる前記第1周期の周期的信号と
前記第2周期の周期的信号と
を用いて前記検出ヘッドの相対変位または位置を測定する変位測定装置の信号処理部であって、
前記第1周期の周期的信号を
エッジに位相情報を持つ矩形波の第1スケール信号
として抽出する第1スケール復調部と
、
前記第2周期の周期的信号を
エッジに位相情報を持つ矩形波の第2スケール信号
として抽出する第2スケール復調部と、
前記第1スケール信号のエッジのタイミングで
、予め決められたk1個の位相情報を取得し、さらに、前記第1スケール信号のエッジが前記k1個に達した場合に、第1スケール検出動作停止指令を出力する第1位相検出部
と、
前記第2スケール信号のエッジのタイミング
で、予め決められたk2個の
位相情報を取得する第2位相検出部
と、を備え、
前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記第1スケール復調部は前記第1スケール信号の復調動作を停止し、かつ、前記第1位相検出部は前記第1スケール信号の位相情報の検出動作を停止する
ことを特徴とする変位測定装置
の信号処理部。
ここで、k1、k2は自然数であり、さらに、k1<k2を満たす
。
【請求項2】
請求項1に記載の変位測定装置の信号処理部において、
さらに、前記検出ヘッドに駆動信号を供給する駆動信号発生回路を有し、
前記駆動信号発生回路は、
前記メインスケールとの相対変位に応じて前記第1周期の周期的信号を生成させるための第1スケール用パルス列信号と、
前記メインスケールとの相対変位に応じて前記第2周期の周期的信号を生成させるための第2スケール用パルス列信号と、を発生させる回路であり、
前記第1
位相検出部から前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記駆動信号発生回路は、第1スケール用パルス列信号を停止する
ことを特徴とする変位測定装置の信号処理部。
【請求項3】
請求項2に記載の変位測定装置の信号処理部において、
前記駆動信号発生回路は、
前記第1スケール用パルス列信号と前記第2スケール用パルス列信号とを重ね合わせたマルチ駆動信号を供給するマルチ駆動信号供給回路と、
前記第2スケール用パルス列信号だけを含むシングル駆動信号を供給するシングル駆動信号供給回路と、を有し、
前記第1
位相検出部から前記第1スケール検出動作停止指令が出力される前は、前記マルチ駆動信号供給回路から前記マルチ駆動信号を供給し、
前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記シングル駆動信号供給回路から前記第2スケール用パルス列信号だけを供給する
ことを特徴とする変位測定装置の信号処理部
。
【請求項4】
メインスケール
と検出ヘッドとの相対変位
に応じて前記検出ヘッドから出力される第1周期の周期的信号と第2周期の周期的信号とを含む検出信号から得られる前記第1周期の周期的信号と
前記第2周期の周期的信号と
を用いて前記検出ヘッドの相対変位または位置を測定する変位測定装置の信号処理方法であって、
前記第1周期の周期的信号を
エッジに位相情報を持つ矩形波の第1スケール信号
として抽出する第1スケール復
調動作と
、
前記第2周期の周期的信号を
エッジに位相情報を持つ矩形波の第2スケール信号
として抽出する第2スケール復
調動作と
、
前記第1スケール信号のエッジのタイミングで
、予め決められたk1個の位相情報を取得し、さらに、前記第1スケール信号のエッジが前記k1個に達した場合に、第1スケール検出動作停止指令を出力する第1位相検出動作と、
前記第2スケール信号のエッジのタイミング
で、予め決められたk2個の
位相情報を取得する第2位相検出動作と、を備え、
前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると
、前記第1スケー
ル復調動作を停止し、かつ、前記第1位相検
出動作を停止する
ことを特徴とする変位測定
装置の信号処理方法。
ここで、k1、k2は自然数であり、さらに、k1<k2を満たす。
【請求項5】
メインスケールと、
前記メインスケールに対して相対変位可能に設けられ、前記メインスケールに対する相対変位に応じて
変化する第1周期の周期的信号と第2周期の周期的信号とを含む検出信号を出力する検出ヘッドと、
前記検出信号から得られる前記第1周期の周期的信号と前記第2周期の周期的信号
とをエッジに位相情報を持つ矩形波のスケール信
号として抽出する復調部と、
前記スケール信号の位相情報をエッジのタイミングで検出する位相検出部と、を備え、
位相情報から前記検出ヘッドの相対変位または位置を測定する変位測定装置であって、
前記復調部は、
前記第1周期の周期的信号を第1スケール信号
として抽出する第1スケール復調部と、
前記第2周期の周期的信号を第2スケール信号
として抽出する第2スケール復調部と、を有し、
前記位相検出部は、
前記第1スケール信号の位相情報を検出する第1位相検出部と、
前記第2スケール信号の位相情報を検出する第2位相検出部と、を有し、
前記第1位相検出部は、
前記第1スケール信号のエッジのタイミングで第1サンプリング信号を出す第1サンプリング信号生成部と、
クロックパルスに基づいて一定時間毎にカウント値をカウントアップするとともに前記第1サンプリング信号で指示されるタイミングでカウント値を出力する第1カウンタと、
予め決められたk1個のサンプリング値の平均を算出する第1平均演算実行部と、
前記第1スケール信号のエッジが前記k1個に達したことを検出した場合に、第1スケール検出動作停止指令を出力する第1スケール停止指令部と、を有し、
前記第2位相検出部は、
前記第2スケール信号のエッジのタイミングで第2サンプリング信号を出す第2サンプリング信号生成部と、
クロックパルスに基づいて一定時間毎にカウント値をカウントアップするとともに前記第2サンプリング信号で指示されるタイミングでカウント値を出力する第2カウンタと、
予め決められたk2個のサンプリング値の平均を算出する第2平均演算実行部と、を有し、
前記第1スケール停止指令部から前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記第1スケール復調部は前記第1スケール信号の復調動作を停止し、かつ、前記第1位相検出部は前記第1スケール信号の位相情報の検出動作を停止する
ことを特徴とする変位測定装置。
ここで、k1、k2は自然数であり、さらに、k1<k2を満たす
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変位測定装置および変位測定方法に関する。具体的には、相対変位に応じて変化する検出信号に基づいて固定要素に対する可動要素の相対変位を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固定要素に対する可動要素の変位あるいは位置を検出する変位測定装置、いわゆるエンコーダ、が知られている(例えば特許文献1-4)。エンコーダは、デジタルノギス、デジタルマイクロメータ、デジタルインジケータ等のいわゆる小型測定器の変位検出部に使われるのはもちろん、移動テーブル等の各種位置決めに幅広く利用されている。
【0003】
エンコーダとしては、光学式、静電容量式、磁気式などがある。一例として静電容量式を例に挙げる。なお、検出原理という点では光学式や磁気式でも本質的には同じである。
静電容量式エンコーダは、メインスケールと、メインスケールに対して相対移動可能であるとともにメインスケールに対する相対変位を検出する検出ヘッドと、を有する。
メインスケールを固定要素とし検出ヘッドを可動要素とすることが一般的であるが、逆にしてもよい。メインスケールと検出ヘッドとにはそれぞれ多数の電極が配設される。メインスケールと検出ヘッドとの相対変位に伴って電極パターン間に周期的な容量変化が生じる。この周期的な容量変化の信号を取り出すことによって変位の検出を行う。
【0004】
電極に生じる周期的な信号、すなわち位相信号を取り出すのであるが、サンプリング、ミキシング、低域濾過、二値化等の処理により位相信号は周期的方形波信号CMPとして取り出される。周期的方形波信号CMPは、そのエッジに位相情報を担っている。位相検出回路は、方形波信号CMPの位相情報をデジタル値で出力する。例えば、ループカウンタをクロックに合わせてカウントアップしておき、方形波信号CMPのエッジのタイミングでカウント値をサンプリングすれば、位相情報をデジタル値として取り出せる。位相情報が得られれば、位相情報と電極配列のピッチ寸法との対比から、検出ヘッドの相対変位が換算で求められる。
【0005】
そして、絶対位置検出型(アブソリュート型)の変位測定装置においては、周期が異なる二つ以上の周期的信号を取り出し、これら複数の周期的信号の位相情報を合成することによって絶対位置検出を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平06-064100号
【文献】特許2909338号
【文献】特許2878913号
【文献】特許2738996号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶対位置検出型(アブソリュート型)の変位測定装置においては、周期が異なる二つ以上の周期的信号を取り出すことになるので、駆動信号、復調回路、位相検出回路が複数セット必要ということになる。
変位測定装置の電源がオンになっている間、すべての回路が動作するとなると、消費電力が極めて大きい。あるいは、省電力化するとしても、粗・中・密等の全スケールの位相情報の取得を終えるまではすべての回路を動作させなければならない。このような事情から、絶対位置検出型(アブソリュート型)の変位測定装置は、どうしても消費電力が増大してしまうという傾向がある。
【0008】
本発明の目的は、不要な電力消費を極力排除して電力効率を改善する変位測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の変位測定装置の信号処理部は、
メインスケールと検出ヘッドとの相対変位に応じて前記検出ヘッドから出力される第1周期の周期的信号と第2周期の周期的信号とを含む検出信号から得られる前記第1周期の周期的信号と前記第2周期の周期的信号とを用いて前記検出ヘッドの相対変位または位置を測定する変位測定装置の信号処理部であって、
前記第1周期の周期的信号をエッジに位相情報を持つ矩形波の第1スケール信号として抽出する第1スケール復調部と、
前記第2周期の周期的信号をエッジに位相情報を持つ矩形波の第2スケール信号として抽出する第2スケール復調部と、
前記第1スケール信号のエッジのタイミングで、予め決められたk1個の位相情報を取得し、さらに、前記第1スケール信号のエッジが前記k1個に達した場合に、第1スケール検出動作停止指令を出力する第1位相検出部と、
前記第2スケール信号のエッジのタイミングで、予め決められたk2個の位相情報を取得する第2位相検出部と、を備え、
前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記第1スケール復調部は前記第1スケール信号の復調動作を停止し、かつ、前記第1位相検出部は前記第1スケール信号の位相情報の検出動作を停止する
ことを特徴とする。
ここで、k1、k2は自然数であり、さらに、k1<k2を満たす。
本発明では、
さらに、前記検出ヘッドに駆動信号を供給する駆動信号発生回路を有し、
前記駆動信号発生回路は、
前記メインスケールとの相対変位に応じて前記第1周期の周期的信号を生成させるための第1スケール用パルス列信号と、
前記メインスケールとの相対変位に応じて前記第2周期の周期的信号を生成させるための第2スケール用パルス列信号と、を発生させる回路であり、
前記第1位相検出部から前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記駆動信号発生回路は、第1スケール用パルス列信号を停止する
ことが好ましい。
本発明では、
前記駆動信号発生回路は、
前記第1スケール用パルス列信号と前記第2スケール用パルス列信号とを重ね合わせたマルチ駆動信号を供給するマルチ駆動信号供給回路と、
前記第2スケール用パルス列信号だけを含むシングル駆動信号を供給するシングル駆動信号供給回路と、を有し、
前記第1位相検出部から前記第1スケール検出動作停止指令が出力される前は、前記マルチ駆動信号供給回路から前記マルチ駆動信号を供給し、
前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記シングル駆動信号供給回路から前記第2スケール用パルス列信号だけを供給する
ことが好ましい。
【0010】
本発明の変位測定装置の信号処理方法は、
メインスケールと検出ヘッドとの相対変位に応じて前記検出ヘッドから出力される第1周期の周期的信号と第2周期の周期的信号とを含む検出信号から得られる前記第1周期の周期的信号と前記第2周期の周期的信号とを用いて前記検出ヘッドの相対変位または位置を測定する変位測定装置の信号処理方法であって、
前記第1周期の周期的信号をエッジに位相情報を持つ矩形波の第1スケール信号として抽出する第1スケール復調動作と、
前記第2周期の周期的信号をエッジに位相情報を持つ矩形波の第2スケール信号として抽出する第2スケール復調動作と、
前記第1スケール信号のエッジのタイミングで、予め決められたk1個の位相情報を取得し、さらに、前記第1スケール信号のエッジが前記k1個に達した場合に、第1スケール検出動作停止指令を出力する第1位相検出動作と、
前記第2スケール信号のエッジのタイミングで、予め決められたk2個の位相情報を取得する第2位相検出動作と、を備え、
前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記第1スケール復調動作を停止し、かつ、前記第1位相検出動作を停止する
ことを特徴とする。
ここで、k1、k2は自然数であり、さらに、k1<k2を満たす。
【0011】
本発明の変位測定装置は、
メインスケールと、
前記メインスケールに対して相対変位可能に設けられ、前記メインスケールに対する相対変位に応じて変化する第1周期の周期的信号と第2周期の周期的信号とを含む検出信号を出力する検出ヘッドと、
前記検出信号から得られる前記第1周期の周期的信号と前記第2周期の周期的信号とをエッジに位相情報を持つ矩形波のスケール信号として抽出する復調部と、
前記スケール信号の位相情報をエッジのタイミングで検出する位相検出部と、を備え、位相情報から前記検出ヘッドの相対変位または位置を測定する変位測定装置であって、
前記復調部は、
前記第1周期の周期的信号を第1スケール信号として抽出する第1スケール復調部と、
前記第2周期の周期的信号を第2スケール信号として抽出する第2スケール復調部と、を有し、
前記位相検出部は、
前記第1スケール信号の位相情報を検出する第1位相検出部と、
前記第2スケール信号の位相情報を検出する第2位相検出部と、を有し、
前記第1位相検出部は、
前記第1スケール信号のエッジのタイミングで第1サンプリング信号を出す第1サンプリング信号生成部と、
クロックパルスに基づいて一定時間毎にカウント値をカウントアップするとともに前記第1サンプリング信号で指示されるタイミングでカウント値を出力する第1カウンタと、
予め決められたk1個のサンプリング値の平均を算出する第1平均演算実行部と、
前記第1スケール信号のエッジが前記k1個に達したことを検出した場合に、第1スケール検出動作停止指令を出力する第1スケール停止指令部と、を有し、
前記第2位相検出部は、
前記第2スケール信号のエッジのタイミングで第2サンプリング信号を出す第2サンプリング信号生成部と、
クロックパルスに基づいて一定時間毎にカウント値をカウントアップするとともに前記第2サンプリング信号で指示されるタイミングでカウント値を出力する第2カウンタと、
予め決められたk2個のサンプリング値の平均を算出する第2平均演算実行部と、を有し、
前記第1スケール停止指令部から前記第1スケール検出動作停止指令が出力されると、前記第1スケール復調部は前記第1スケール信号の復調動作を停止し、かつ、前記第1位相検出部は前記第1スケール信号の位相情報の検出動作を停止する
ことを特徴とする。
ここで、k1、k2は自然数であり、さらに、k1<k2を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】メインスケールに設けられた電極パターンを示す図である。
【
図3】検出ヘッドに設けられた電極パターンを示す図である。
【
図9】粗スケール信号のエッジのタイミングでサンプリング信号が立ち上がる様子を例示した図である。
【
図12】粗・中・密位相検出部で位相検出する際のタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施形態では変位測定装置100としてアブソリュート型の静電容量式エンコーダを例に説明する。
図1は、エンコーダ100の全体構成を示す図である。
エンコーダ100は、メインスケール22と、検出ヘッド21と、信号処理部200と、表示器17と、を備える。
【0014】
検出ヘッド21は、メインスケール22に対し僅かの間隙を介して対向配置され、メインスケール22の長手方向に移動可能に設けられている。メインスケール22の長手方向を測定軸X方向、すなわち測長方向とする。
【0015】
メインスケール22および検出ヘッド21は、位置検出用の電極パターンを互いの対向面にそれぞれ有する。
図2は、メインスケール22に設けられた電極パターンを示す図である。
図3は、検出ヘッド21に設けられた電極パターンを示す図である。
【0016】
メインスケール22には、第1受信電極24aと、第2受信電極24bと、第1伝達電極25aと、第2伝達電極25bと、が設けられている。
図2において各第1受信電極24aは下向きの略三角形状であり、メインスケール22の測長方向(測定軸X方向)に沿って一定ピッチ(Pr)で多数配列されている。一方、第2受信電極24bは上向きの略三角形状であり、同じく、メインスケール22の測長方向(測定軸X方向)に沿って一定ピッチ(Pr)で多数配列されている。第1受信電極24aと第2受信電極24bとは櫛歯が噛み合うように配設されている。
【0017】
第1伝達電極25aは、第1受信電極24aに並列するように配列されており、第1伝達電極25aと第1受信電極24aとは一対一で接続されている。第1伝達電極25aは、メインスケール22の測長方向(測定軸X方向)に沿って一定ピッチ(Pt1)で配設されている。
一方、第2伝達電極25bは、第2受信電極24bに並列するように配列されており、第2伝達電極25bと第2受信電極24bとは一対一で接続されている。第2伝達電極25bは、メインスケール22の測長方向(測定軸X方向)に沿って一定ピッチ(Pt2)で配設されている。
第1伝達電極25aの配列ピッチPt1および第2伝達電極25bの配列ピッチPt2は、受信電極24a、24bの配列ピッチPrとは異なるようにしてあるが、これについては後述する。
なお、Pr>Pt2>Pt1としておく。
【0018】
次に、
図3を参照しながら検出ヘッド21側の電極パターンについて説明する。
検出ヘッド21には、送信電極23と、第1検出電極26a、26bと、第2検出電極27a、27bと、が設けられている。
【0019】
送信電極23は、所定ピッチPt0で測長方向(測定軸X方向)に沿って多数配列されている。送信電極23は、メインスケール22側の第1受信電極24aおよび第2受信電極24bと容量結合する。
ここで、送信電極23は、8つの電極で一つの単位(一群)を構成する。すなわち、送信電極23は、7つおきに共通接続されている。
例えば、1番目の送信電極23は、2番から8番を飛ばして、9番目の送信電極と共通接続され、さらに、10番から16番を飛ばして、17番目の送信電極と共通接続されている。(以下同様なので省略。)
図3中、送信電極の数を数えやすいように番号を付した。
【0020】
送信電極には駆動信号Sdが供給される。
駆動信号Sdとしては、45°ずつ位相がずれた8相の周期信号a,b,…,hが用意される。(8相の周期信号a-hに対し、位相の順に相番号0から7と番号付けする。)そして、一群を構成する8つの送信電極には、45°ずつ位相がずれた8相の周期信号a,b,…,hがそれぞれ供給される。これらの駆動信号Sdは、より具体的には、高周波パルスでチョップされた信号となっており、駆動信号発生回路220で生成される(
図4)。
駆動信号Sdの電位の時間変化を式で表わすと次式のようになる。
【0021】
Vn=Asin2π{(t/T)-(n/8)}
ここで、Aは送信信号Sdの振幅、Tは送信信号Sdの周期、nは相番号(0、1、2、・・・・7)である。
【0022】
駆動信号Sdが送信電極23に供給されると、送信電極23の配列方向(測定軸X方向)に周期的に振動する電場パターンが発生する。この周期的電場パターンのピッチWtは、送信電極23のピッチPt0の8倍である。このピッチWtは、受信電極24a,24bのピッチPrのN倍になるように設定されている。(Nは正の整数。)Nとしては、1,3,5等の奇数であることが好ましく、本実施形態ではN=3としている。したがって、8つの連続する送信電極23に対し、常に3つ乃至4つの受信電極24a,24bが容量結合することになる。そして、各受信電極24a,24bが受信する信号(の位相)は、容量結合する送信電極23と受信電極24a,24bとの組み合わせによって決定されるところ、メインスケール22に対する検出ヘッド21の相対位置に応じて変化する。
【0023】
第1検出電極26a,26bは、周期Wr1を有する一続きの正弦波形状の電極であり、メインスケール22側の第1伝達電極25aと容量結合するように配置されている。互いに半周期ずれた二つの正弦波状の電極26a,26bが噛み合うように配置されることで一組の第1検出電極26a,26bとなっている。第1検出電極26a,26bの周期Wr1と第1伝達電極25aの配列ピッチPt1との関係については後述する。
【0024】
第2検出電極27a,27bは、周期Wr2を有する一続きの正弦波形状の電極であり、メインスケール22側の第2伝達電極25bと容量結合するように配置されている。互いに半周期ずれた二つの正弦波状の電極27a,27bが噛み合うように配置されることで一組の第2検出電極27a,27bとなっている。第2検出電極27a,27bの周期Wr2と第2伝達電極25bの配列ピッチPt2との関係については後述する。
【0025】
本実施形態のエンコーダにおいては、アブソリュート型とするため、粗い周期(粗スケール)、中間の周期(中スケール)、および、細かい周期(密スケール)、の3つのレベルで位相変化を検出するようにしている。
【0026】
すなわち、第1伝達電極25aのピッチPt1および第2伝達電極25bのピッチPt2を受信電極24a,24bのピッチPrからわずかに異ならせ、第1伝達電極25aおよび第2伝達電極25bが受信電極24a,24bに対してそれぞれ偏位D1、偏位D2を持つようにしている。
偏位量D1、D2は、基準位置x0からの測定軸X方向の距離xの関数で、それぞれ下記式のように表わされる。
【0027】
D1(x)=(Pr-Pt1)x/Pr
D2(x)=(Pr-Pt2)x/Pr
【0028】
この偏位D1、D2により、第1、第2受信電極24a、24bに生じた電場パターンが第1、第2伝達電極25a、25bに伝達されるときに、大きな周期λ1、λ2に応じた変動がそれぞれ加わる。
(偏位D1による大きな周期をλ1とし、偏位D2による大きな周期をλ2とした。)
【0029】
そして、第1検出電極26a,26bおよび第2検出電極27a,27bの周期を、例えば、それぞれWr1(=3Pt1),Wr2(=3Pt2)とする。第1検出電極26a,26bおよび第2検出電極27a,27bは、第1伝達電極25aの(3つ分)および第2伝達電極25bの(3つ分)と容量結合しているのであるから、第1伝達電極25aおよび第2伝達電極25bに生じた容量変化を検出電流として取り出せる。
【0030】
送信電極23と検出電極26a,26b、27a,27bとは、間に受信電極24a、24bおよび伝達電極25a、25bを介して容量結合していると見なせる。
例えば、送信電極23のうちのどれか一つと第1検出電極の一方(26a)との間の容量が位置xによってどのように変化するかを考えてみる。この容量をCn(B1)で表わすことにする。容量Cn(B1)は次の式で表わされる。
【0031】
Cn(B1)=Bsin2π{(x/λ1)-(n/8)}+Csin2π{(x/Pr)-(3n/8)}+D
Bは大きな周期の振幅、Cは小さな周期(pr)の振幅、Dはオフセット値である。
【0032】
同じく、送信電極23のうちのどれか一つと第1検出電極の他方(26b)との間の容量が位置xによってどのように変化するかを考えてみる。
第1検出電極の一方(26a)と他方(26b)とは半周期ずれているので、大きな周期(λ1)は逆相になる。
この容量をCn(B2)で表わすことにする。
容量Cn(B2)は次の式で表わされる。
【0033】
Cn(B2)=-Bsin2π{(x/λ1)-(n/8)}+Csin2π{(x/Pr)-(3n/8)}+D
【0034】
容量は、位置xの関数であり、送信電極23のうちのどの相が検出電極26a、26bと大きく結合しているかはxによって変わってくる。
【0035】
第1検出電極26a、26bは送信電極23と容量結合しているので、第1検出電極26a、26bに電圧が誘起される。
この誘起電圧の変化を検出信号B1、B2として取り出すと次のようになる。
【0036】
B1=Σn=0
7Cn(B1)・Vn
B2=Σn=0
7Cn(B2)・Vn
【0037】
第2検出電極27a、27bで検出される検出信号C1、C2も同様に表わされる。
【0038】
ここで、検出信号B1、B2の大きな周期(λ1)が小さな周期(Pr)の数十倍になるようにする。また、検出信号C1,C2の大きな周期(λ2)が検出信号B1,B2の大きな周期(λ1)の数十倍になるようにする。すると、下記式の演算により、各レベル、すなわち、粗い周期(粗スケール)、中間の周期(中スケール)、および、細かい周期(密スケール)、で位相変位を得ることができる。
【0039】
(粗スケール):C1-C2
(中スケール):B1-B2
(密スケール):(B1+B2)-(C1+C2)
【0040】
粗スケール信号、中スケール信号、密スケール信号を整理すると例えば次のようになる。
【0041】
(粗スケール信号)
C1-C2=K1cos2π(x/λ2-t/T)
【0042】
(中スケール信号)
B1-B2=K2cos2π(x/λ1-t/T)
【0043】
(密スケール信号)
(B1+B2)-(C1+C2)=K3cos2π(x/Pr-t/T)
【0044】
ここで、例えば、密スケール信号のゼロクロス点の時間をt0とすると次のようになる。
【0045】
2π(x/Pr-t0/T)=π/2
x=(1/4+t0/T)・Pr
【0046】
したがって、基準信号の位相(が0になる基準時)からゼロクロス点t0までの時間をカウンタ等によってカウントすることにより、検出ヘッド21の位置xが求められることになる。
【0047】
信号処理部200について説明する。
図4は、信号処理部200の機能ブロック図である。
信号処理部200は、制御回路210と、駆動信号発生回路220と、復調部230と、位相検出部300と、合成回路270と、実寸換算部280と、を備える。
【0048】
制御回路210は、各回路に、制御信号、クロック信号、リセット信号等を供給してシステム全体の動作タイミングを制御している。
【0049】
駆動信号発生回路220は、45°ずつ位相がずれた8相の周期信号a,b,…,hを生成し、駆動信号Sdとして各送信電極23に供給する。
駆動信号発生回路220は、マルチ駆動信号供給回路221と、シングル駆動信号供給回路222と、駆動信号切替回路223と、を有する。
上記において、位置xによる送信電極23と検出電極(26a,26b、27a,27b)との容量結合の変化と、粗スケール信号、中スケール信号および密スケール信号の取り出し方と、を概略説明した。
この容量結合の変化と各スケール信号の取り出しとを考えると、8つの送信電極に8相の周期信号a,b,…,hを供給するにあたって、粗スケール信号および中スケール信号を取り出すための駆動信号の位相と、密スケール信号を取り出すための駆動信号の位相と、は異なる。例えば、
図5に例示するように、粗スケール信号および中スケール信号を取り出すための駆動信号は、隣の信号の位相と45°ずつずれた信号とする。密スケール信号を取り出すための駆動信号は、隣の信号の位相と135°ずつずれた信号とする。
【0050】
粗スケール信号を取り出すための駆動信号と、中スケール信号を取り出すための駆動信号と、は共通化できるので、以後の説明では、まとめて、粗スケール用パルス列信号と称することにする。また、密スケール信号を取り出すための駆動信号を密スケール用パルス列信号と称することにする。
【0051】
マルチ駆動信号供給回路221は、粗スケール用パルス列信号と密スケール用パルス列信号とを重ね合わせたマルチ駆動信号を生成する。
図6は、マルチ駆動信号の一例である。
粗スケール用パルス列信号としても、密スケール用パルス列信号としても、大事なのはエッジの位置(位相)である。マルチ駆動信号は、粗スケール用パルス列信号のエッジと、密スケール用パルス列信号のエッジと、の両方を含むパルス列信号となっている。なお、
図6中において、CSは粗スケール用パルス列信号のエッジの位置を表わし、Fは密スケール用パルス列信号のエッジの位置を表わしている。
【0052】
シングル駆動信号供給回路222は、密スケール用パルス列信号だけを含むシングル駆動信号を生成する。
図7は、シングル駆動信号の一例である。すなわち、シングル駆動信号は、密スケール用パルス列信号のエッジだけを含むパルス列信号である。
【0053】
駆動信号切替回路223は、マルチ駆動信号供給回路221からのマルチ駆動信号とシングル駆動信号供給回路222からのシングル駆動信号とを切り替えて出力する。
制御回路210からの起動信号を受けて駆動信号発生回路220が起動したとき、最初、駆動信号切替回路223は、マルチ駆動信号供給回路221からのマルチ駆動信号を選択して出力する。その後、粗スケール検出動作停止信号および中スケール検出動作停止信号(これらスケール検出動作停止信号については後述する)の両方を受け取ったとき、駆動信号切替回路223は、シングル駆動信号供給回路222からのシングル駆動信号に切り替えて出力する。さらに、密スケール検出動作停止信号(スケール検出動作停止信号については後述する)を受け取ったとき、駆動信号発生回路220は動作を停止し、すなわち、マルチ駆動信号供給回路221およびシングル駆動信号供給回路222の動作を停止する。
【0054】
なお、粗スケール検出動作停止信号、中スケール検出動作停止信号、密スケール検出動作停止信号については後述する。
【0055】
ここで、起動信号を受けて駆動信号発生回路220が起動したとき、駆動信号発生回路220は、最初はマルチ駆動信号を出力して、シングル駆動信号は出力しなくてよいわけだから、最初はマルチ駆動信号供給回路221だけを起動し、シングル駆動信号供給回路222は停止しておいてもよいかもしれない。そして、シングル駆動信号に切り替える瞬間にシングル駆動信号供給回路222を起動するようにしてもよいかもしれない。
ただし、駆動信号供給回路(マルチ駆動信号供給回路221、シングル駆動信号供給回路222)の起動にはやや時間を要する場合もあるし、駆動信号供給回路自体をオンオフするのは却って消費電力が増える場合があるかもしれない。そこで、駆動信号供給回路(マルチ駆動信号供給回路221、シングル駆動信号供給回路222)をオンオフするのではなくて、切替回路223で駆動信号発生回路220からの出力信号をマルチ駆動信号とシングル駆動信号とで切り替えるようにする。この構成でも、シングル駆動信号に切り替えたときには信号のアップダウンが少なくなる(エッジの数が減る)ので、その分省電力化が図られる。
【0056】
復調部230は、粗スケール復調部231と、中スケール復調部232と、密スケール復調部233と、を有する。
【0057】
粗スケール復調部231には、第2検出電極27a、27bからの検出信号C1、C2が入力される。これにより、粗スケール復調部231は、"C1-C2"で得られる粗スケール信号の復調を行う。
中スケール復調部232には、第1検出電極26a、26bからの検出信号B1、B2が入力される。これにより、中スケール復調部232は、"B1-B2"で得られる中スケール信号の復調を行う。
密スケール復調部233には、第1検出電極26a、26bおよび第2検出電極27a、27bからの検出信号B1、B2、C1、C2が入力される。これにより、密スケール復調部233は、"(B1+B2)-(C1+C2)"で得られる密スケール信号の復調を行う。
【0058】
復調にあたっては、具体的には、送信波形のチョップ周波数でのサンプリング、ミキシング、低域ろ波、および、2値化処理等を行う。これにより、エッジに位相情報を担った矩形の周期信号CMPが生成される。
すなわち、
粗スケール信号(CMP-COA)、
中スケール信号(CMP-MED)、および、
密スケール信号(CMP-FIN)が得られる。
【0059】
位相検出部300は、粗位相検出部310と、中位相検出部320と、密位相検出部330と、を有する。
粗位相検出部310には、粗スケール信号(CMP-COA)が入力される。
中位相検出部320には、中スケール信号(CMP-MED)が入力される。
密位相検出部330には、密スケール信号(CMP-FIN)が入力される。
【0060】
位相検出部300について説明する。粗位相検出部310、中位相検出部320、および、密位相検出部330は、基本的には同じ構成であるので、まず、粗位相検出部310を例にして説明する。
【0061】
図8は、粗位相検出部310の機能ブロック図である。
粗位相検出部310は、カウンタ311と、サンプリングタイミング制御部312と、位相演算部314と、
粗スケール停止指令部315と、を備える。
【0062】
カウンタ311は、ループカウンタであり、クロックパルスに合わせてカウントアップを行う。例えば、制御回路210から所定時間間隔(例えば100msec間隔)で起動信号が発せられるとすると、この起動信号を受けて、駆動信号発生回路220、復調部230、位相検出部300が動作を開始する。すなわち、起動信号を受けて、駆動信号発生回路220は駆動信号Sdを生成し、カウンタ311は0からカウントアップをスタートする。これにより、相番号0番(周期信号a)の基準信号Sd0とカウンタ331とが同期する。カウント値は、位相演算部314に向けて出力される。
【0063】
サンプリングタイミング制御部312には、粗スケール復調部231から粗スケール信号(CMP-COA)が入力され、制御回路210からは100msec間隔のイネーブル信号ENBが入力される。サンプリングタイミング制御部312は、粗スケール信号(CMP-COA)およびイネーブル信号ENBに基づいて、カウンタ311にカウント値の出力を指示する。
【0064】
サンプリングタイミング制御部312は、サンプリング信号生成部313を備える。
図9は、粗スケール信号(CMP-COA)のエッジのタイミングでサンプリング信号が立ち上がる様子を例示した図である。
【0065】
サンプリング信号生成部313には制御回路210からのイネーブル信号ENBと粗スケール復調部231からの粗スケール信号(CMP-COA)とが入力される。サンプリング信号生成部313は、イネーブル信号ENBの立ち上がりの後、粗スケール信号(CMP-COA)のエッジのタイミングで2回立ち上がるサンプリング信号を生成する。
【0066】
ここでは、イネーブル信号ENBの立ち上がりの後、粗スケール信号(CMP-COA)の最初の立ち上がりエッジからサンプリング信号の生成を開始するとする。ただし、位相調整を行なうことができるなら、エッジが立ち上がりか立ち下がりかを区別した上で、イネーブル信号ENBの立ち上がりの後、粗スケール信号(CMP-COA)の最初の立ち下がりエッジからサンプリング信号の生成を開始してもよい。これは、特願2015-007660で詳しく説明している。
【0067】
粗スケール信号の位相検出にあたっては2回分(k1個)のサンプリング値を平均した平均値を位相情報とするため、サンプリング信号が2回立ち上がるように設定してある。例えば、密スケール信号(CMP-FIN)の位相検出にあたっては4回分(k2個)のサンプリング値から平均値を求めるとすれば、サンプリング信号が立ち上がる回数は4回ということになる。
【0068】
このように生成されるサンプリング信号は、カウンタ311に供給される。カウンタ311は、サンプリング信号のタイミングでカウント値を出力する。
【0069】
位相演算部314は、カウンタ311から得られた複数個(ここでは2個)のカウント値に基づいて、粗スケール信号(CMP-COA)の位相(平均位相)を求める。
【0070】
粗スケール停止指令部315は、サンプリング信号生成部313からのサンプリング信号が所定回数(例えば2回)立ち上がり、かつ、位相演算部314が2個のカウント値から平均位相を得たことを確認次第、粗スケール検出動作停止指令を出力する。粗スケール検出動作停止指令が出力されると、粗位相検出部310、および、粗スケール復調部231が動作を停止する。
【0071】
次に、
図10は、中位相検出部320の機能ブロック図である。
中位相検出部320の構成は、粗位相検出部310とほぼ同じである。中位相検出部320は、中スケール停止指令部325を有する。中スケール停止指令部325は、サンプリング信号生成部323からのサンプリング信号が所定回数(例えば2回)立ち上がり、かつ、位相演算部324が二個のカウント値から平均位相を得たことを確認次第、中スケール検出動作停止指令を出力する。中スケール検出動作停止指令が出力されると、中位相検出部320、および、中スケール復調部232が動作を停止する。
【0072】
さらに、前述のように、粗スケール検出動作停止信号および中スケール検出動作停止信号は駆動信号発生回路220にも供給される。駆動信号発生回路220が粗スケール検出動作停止信号および中スケール検出動作停止信号の両方を受け取ったとき、駆動信号切替回路223は、シングル駆動信号供給回路222からのシングル駆動信号に切り替えて出力する。
【0073】
次に、
図11は、密位相検出部330の機能ブロック図である。
密位相検出部330の構成は、粗位相検出部310の構成とほぼ同じである。ただし、密位相検出部330において、サンプリング信号生成部333は、イネーブル信号ENBの立ち上がりの後、密スケール信号(CMP-FIN)のエッジのタイミングで4回(k2回)立ち上がるサンプリング信号を生成する。すなわち、密位相検出部330においては、4つのカウント値(位相情報)から密スケール信号(CMP-FIN)の位相(平均位相)を求める。
【0074】
密スケール停止指令部335は、サンプリング信号生成部333からのサンプリング信号が所定回数(例えば4回)立ち上がり、かつ、位相演算部334が4個のカウント値から平均位相を得たことを確認次第、密スケール検出動作停止指令を出力する。密スケール検出動作停止指令が出力されると、位相検出部300の全体、復調部230の全体、および、駆動信号発生回路220の全体が動作を停止し、次の起動信号までスリープ状態になる。
【0075】
図12は、粗・中・密位相検出部310、320、330で位相検出する際のタイミングチャートの一例である。
イネーブル信号ENBの立ち上がりの後、各位相検出部310、320、330は、各スケール信号CMPのエッジのタイミングで所定個の位相情報(カウンタのカウント値)を取得する。粗・中位相検出部310、320は二つ、密位相検出部330は4つの位相情報(カウンタのカウント値)を取得する。
【0076】
図12のケースでは、まず時刻t1において、中位相検出部320が2つの位相情報を取り終えてしまう。すると、中スケール停止指令部325から中スケール検出動作停止指令が出力される。中スケール検出動作停止指令により、中位相検出部320および中スケール復調部232の動作が停止する。
【0077】
次に、時刻t2において、粗位相検出部310が2つの位相情報を取り終えてしまう。すると、粗スケール停止指令部315から粗スケール検出動作停止指令が出力される。粗スケール検出動作停止指令により、粗位相検出部310および粗スケール復調部231の動作が停止する。さらに、粗スケール検出動作停止指令と中スケール検出動作停止指令との二つが揃ったので、駆動信号発生回路220は、マルチ駆動信号からシングル駆動信号に切り替える。
【0078】
そして、時刻t3で密位相検出部330が4つの位相情報を取り終えてしまう。すると、密スケール停止指令部335から密スケール検出動作停止指令が出力される。密スケール検出動作停止指令により、密位相検出部330および密スケール復調部233の動作が停止し、すなわち、位相検出部300および復調部230の動作が停止する。さらに、密スケール検出動作停止指令により、駆動信号発生回路220はシングル駆動信号の出力も停止してしまい、すなわち、駆動信号発生回路220の動作が停止する。
【0079】
各位相検出部310-330で求められた各位相情報は合成回路270で重み付けられて合成される。合成回路270からの出力は、実寸換算部280により実寸法値に変換される。実寸換算部280で得られた実寸法値は、表示器17に表示される。
【0080】
このような構成を備える本実施形態によれば次の効果を奏する。
従前は、変位測定装置の電源がオンになっている間はすべての回路が動作していたので消費電力が大きかった。あるいは、省電力化するとしても、粗・中・密の全スケールの位相情報の取得を終えるまではすべての回路を動作させていた。
これに対し、本実施形態では、位相情報の取得が終わったトラック(スケール)に関連する回路動作を停止できるようにした。さらに、駆動信号発生回路220は、マルチ駆動信号供給回路221だけでなくシングル駆動信号供給回路222を併せ持つようにし、マルチ駆動信号が不要になったらシングル駆動信号に切り替えられるようにした。これにより、不要な電力消費を極力排除し、電力効率を改善することができる。
【0081】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
本発明の適用範囲は、静電容量式のエンコーダに限らないし、直線移動型に限られるものでもない。位相情報に基づいて絶対位置を求めるエンコーダであれば光電式や磁気式のエンコーダでもよい。ロータリーエンコーダでもよいことはもちろんである。
【0082】
上記実施例では、密位相検出部330は4つ(k2個)のカウント値(位相情報)の平均値を求め、粗・中位相検出部310、320は2つ(k1個)のカウント値(位相情報)の平均値を求めるように設定している。(つまり、k2≧k1+2)。
この場合、必ず密位相検出部330より前に粗・中位相検出部310、320が必要な位相情報を取り終えてしまう。つまり、密スケール検出動作停止指令が出力されるときには、粗・中位相検出部310、320が必要な位相情報を取り終えてしまっている。したがって、密スケール検出動作停止指令が出力されたときには、位相検出部300の全体、復調部230の全体、および、駆動信号発生回路220の全体が動作を停止してしまってもよい。
【0083】
ただし、密位相検出部330、粗位相検出部310、および、中位相検出部320がそれぞれいくつのカウント値(位相情報)から平均位相を求めるかは適宜設定されるものであり、どの位相検出部(310、320、330)が必ず最後になるかは確定しないケースも有り得る。この場合、位相検出が終わったものから関連する動作(復調、位相検出)を停止するようにすればよい。そして、密スケール検出動作停止指令よりも先に粗・中スケール検出動作停止指令が二つ揃った場合には、駆動信号の切替動作を行なう。3つの停止指令(粗・中・密スケール検出動作停止指令)が揃ったら、駆動信号発生回路220の動作を止めるようにすればよい。
【0084】
上記実施形態では、粗位相検出の方が密位相検出よりも平均位相算出に用いる位相情報(カウンタのカウント値)の数が少ないとした。つまり、密位相検出部では4個(k2個)、粗位相検出部では2個(k1個)の位相情報を用いるとした。
もちろん、これは逆になってもよい。すなわち、密位相検出の方が粗位相検出よりも平均位相算出に用いる位相情報(カウンタのカウント値)の数が少なくてもよい。つまり、粗位相検出部では4個(k2個)、密位相検出部では2個(k1個)の位相情報を用いるとしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
17…表示器、
21…検出ヘッド、
22…メインスケール、
23…送信電極、
24a…第1受信電極、24b…第2受信電極、
25a…第1伝達電極、25b…第2伝達電極、
26a、26b…第1検出電極、27a、27b…第2検出電極、
100…変位測定装置(エンコーダ)、
200…信号処理部、
210…制御回路、
220…駆動信号発生回路、
221…マルチ駆動信号供給回路、222…シングル駆動信号供給回路、223…駆動信号切替回路、
230…復調部、
231…粗スケール復調部、232…中スケール復調部、233…密スケール復調部、
270…合成回路、
280…実寸換算部、
300…位相検出部、
310…粗位相検出部、
311…カウンタ、312…サンプリングタイミング制御部、313…サンプリング信号生成部、314…位相演算部、315…粗スケール停止指令部、
320…中位相検出部、
323…サンプリング信号生成部、324…位相演算部、325…中スケール停止指令部、
330…密位相検出部、
331…カウンタ、333…サンプリング信号生成部、334…位相演算部、335…密スケール停止指令部。