(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
G01B 3/22 20060101AFI20240403BHJP
G01B 3/18 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01B3/22 Z
G01B3/18
(21)【出願番号】P 2019218396
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘行
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-310601(JP,A)
【文献】実開昭50-141659(JP,U)
【文献】特開2000-346601(JP,A)
【文献】特開平10-206102(JP,A)
【文献】特開2007-093331(JP,A)
【文献】特開2008-086574(JP,A)
【文献】実開昭59-023616(JP,U)
【文献】実開平07-002902(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の寸法を測定する測定器であって、
固定体部と、
前記固定体部に対して相対移動可能に設けられ、前記測定対象物に直接的または間接的に当接する可動体部と、を具備し、
前記固定体部が筒状であって、前記固定体部の外表面から筒孔に貫通したのぞき孔が設けられており、
前記可動体部が前記固定体部の筒孔を進退するようになっており、
前記可動体部の表面には前記のぞき孔から見えるように、温度に応じて色が変化する示温材が設けられている
ことを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、
前記固定体部としての長手の外筒部と、
前記可動体部として、前記外筒部の内部を進退するロッドと、
前記ロッドに連動して進退する測定子を有する測定ヘッド部と、を有し、
前記外筒部の一端寄りには、ユーザが手で把持するため
に手の熱が当該外筒部に伝わらないように断熱性を有するグリップ部が設けられているとともに、前記測定ヘッド部は前記外筒部の他端に接続されていて、
前記外筒部の他端寄りの領域に、温度に応じて色が変化する示温材が設けられている
ことを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の測定器において、
前記外筒部の外表面において前記グリップ部以外の箇所に、温度に応じて色が変化する示温材が設けられている
ことを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の測定器において、
当該測定器が内径測定器であって、
前記測定子は、前記ロッドとは直交する方向に進退する
ことを特徴とする測定器。
【請求項5】
請求項1に記載の測定器において、
前記固定体部の外表面の一部には、ユーザが手で把持するため
に手の熱が当該固定体部に伝わらないように断熱性を有するグリップ部が設けられているとともに、前記固定体部の外表面において前記グリップ部以外の箇所に温度に応じて色が変化する示温材が設けられている
ことを特徴とする測定器。
【請求項6】
請求項5に記載の測定器であって、
前記可動体部に、温度に応じて色が変化する示温材が設けられている
ことを特徴とする測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定器に関し、例えば、手に持って使用するような小型測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
内径測定器(シリンダゲージ)やマイクロメータのように手に持って使用する小型測定器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭50-141659
【文献】実公昭62-44327
【文献】実開昭52-009457
【文献】実開昭58-036302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定器を使用する前には温度ならしが必要となる。このとき、温度ならしが十分にできているか判断するのが難しいため、安全をみて、少し長めの温度ならし時間をとっている。余計な温度ならし時間は本来は不要なものなのであり、このことが測定効率が上がらない一因ともなっている。
【0005】
また、長時間にわたってシリンダゲージやマイクロメータを使用していると、手の熱が測定器に伝熱してしまうことがある。測定器の温度が変化してしまうと熱膨張による差が生じるので、ユーザがこのことに気付かずに測定作業を継続すると測定誤差に繋がる恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、温度状態が目視できることにより、測定効率の向上および測定誤差の低減を図ることができる測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の測定器は、
測定対象物の寸法を測定する測定器であって、
固定体部と、
前記固定体部に対して相対移動可能に設けられ、前記測定対象物に直接的または間接的に当接する可動体部と、を具備し、
前記固定体部および前記可動体部の少なくとも一方の所定領域に温度に応じて色が変化する示温材が設けられている
ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、
前記固定体部の外表面の一部には、ユーザが手で把持するためのグリップ部が設けられているとともに、前記固定体部の外表面において前記グリップ部以外の一部に前記示温材が設けられている
ことが好ましい。
【0009】
本発明では、
前記固定体部が筒状であって、前記固定体部の外表面から筒孔に貫通したのぞき孔が設けられており、
前記可動体部が前記固定体部の筒孔を進退するようになっており、
前記可動体部の表面には前記のぞき孔から見えるように示温材が設けられている
ことが好ましい。
【0010】
本発明では、
当該測定器が内径測定器であって、
前記固定体部としての長手の外筒部と、
前記可動体部として、前記外筒部の内部を進退するロッドと、
前記ロッドに連動して前記ロッドとは直交する方向に進退する測定子を有する測定ヘッド部と、を有し、
前記外筒部の一端寄りには前記グリップが設けられているとともに、前記測定ヘッド部は前記外筒部の他端に接続されていて、
前記外筒部の他端寄りの領域に前記示温材が設けられている
ことが好ましい。
【0011】
本発明では、
当該測定器がマイクロメータであって、
前記固定体部がマイクロメータのU字形フレームであって、
前記示温材は、前記U字形フレームの全体または一部に設けられている
ことが好ましい。
【0012】
本発明では、
前記示温材は、前記U字形フレームのうちのアンビル取付部の近傍に設けられている
ことが好ましい。
【0013】
本発明では、
さらに、前記示温材は、アンビルの全体または一部に設けられている
ことが好ましい。
【0014】
本発明では、
前記測定器がマイクロメータまたはダイヤルゲージであって、
前記可動体部としてのスピンドルに示温材が設けられている
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態はシリンダゲージ(内径測定器)100である。
図1は、シリンダゲージ100の外観斜視図である。
図2は、測定ヘッド部120付近の断面図である。
シリンダゲージ100は、長手状の外筒部110(固定体部)と、測定ヘッド部120と、を備える。
【0017】
外筒部110の一端にはクランプホルダ111が取り付けられ、クランプホルダ111に例えばダイヤルゲージ(不図示)のステム(不図示)が保持される。
また、外筒部110の一端寄りの領域にグリップ部112が設けられている。グリップ部112は合成樹脂であって断熱性を有する。これはもちろん、手の熱が金属である外筒部110や測定ヘッド部120に伝わらないために設けられている。
外筒部110内には、軸方向移動自在に内装されたドライバーロッド(可動体部)113が挿入されている。
【0018】
測定ヘッド部120は外筒部110の下端に取り付けられている。
測定ヘッド部120は、測定ヘッド本体部121と、ドライバーピン123と、測定子125と、アンビル126と、ガイド部材127と、を備える。
【0019】
測定ヘッド本体部121の上端に外径ネジ部122が形成されている。この外径ネジ部122には外筒部110の他端がねじ込み固定される。
【0020】
ドライバーピン123が外筒部110の他端から外筒部110内に侵入し、ドライバーロッド113とドライバーピン123とは突き当たっている。そして、ドライバーピン123と測定子125との間において直角三角形状のカム124が回動可能に軸支されており、ドライバーピン123の進退方向を直角に変換するようになっている。このカム124を間にして測定子125がドライバーロッド113およびドライバーピン123の移動方向に直交する方向に進退するように配設されている。
【0021】
さて、外筒部110の外表面において、他端側の領域に示温材600が配設されている。
示温材600は、温度に応じて色が変わるものである。ここでは、例えば、20℃~25℃のときの色(例えば緑)と、それ以外の温度のときの色(例えば赤)と、が異なる。色の変化を利用して、20℃~25℃のときには色文字(例えば"OK"等)がでるようにしてもよい。
【0022】
可逆性の示温材600であることが好ましい。
示温材600は塗料でもよいし、シールのように貼るタイプでもよい。
図1、
図2では、示温材600は塗料を想定しているが、もっと小さなシール状の示温材を貼るようにしてもよい。
示温材600は一種だけでなく、感応温度が異なる複数種を並べて貼っておいてもよい。
例えば、15℃~20℃(第1の温度範囲)、20℃~25℃(第2の温度範囲)、25℃~30℃(第3の温度範囲)、30℃~35℃(第4の温度範囲)、35℃~40℃(第5の温度範囲)といったそれぞれの温度範囲を示す示温材を並べて貼っておいてもよい。
【0023】
さらに、外筒部110にのぞき孔114としての貫通孔が穿設され、この孔を通して内部のドライバーロッド113を覗けるようになっている。そして、ドライバーロッド113の表面に示温材600が設けられており、のぞき孔114を通してドライバーロッド113表面の示温材600を確認できるようになっている。のぞき孔114は、光が透過できればよいので、透明な樹脂でふさがれていてもよい。
【0024】
なお、示温材600を設ける位置としては、さらに、外筒部110の外表面においてグリップ部112の直上や直下などが例として挙げられる。
【0025】
このような構成を有する第1実施形態のシリンダゲージ100を使用するにあたっては、まず、示温材600の色を見て、シリンダゲージ100が意図した温度に温度ならしができているかどうかを確認する。
シリンダゲージ100の温度が適切であることを確認後、通常通り、シリンダゲージ100で測定対象物を測定していく。
また、長時間シリンダゲージ100を使用していると、グリップ部112を掴んでいるとはいっても、手の熱がシリンダゲージ100に伝わってしまって測定器の温度が変化してしまうことがある。このとき、ユーザは示温材600の色の変化によってシリンダゲージ100が熱くなりすぎていることが分かるので、シリンダゲージ100を休ませて温度ならしを行なうようにする。
【0026】
この第1実施形態のシリンダゲージ100にはさらなる利点が期待できる。
シリンダゲージ100で測定対象物の内径を測定するにあたってはグリップ部112を握るのであるが、初心者はつい外筒部110のグリップ部112以外のところも持ってしまったりする。あるいは、測定対象物の孔に測定ヘッド部120を差し入れるときに、測定ヘッド部120の近くを掴んでしまうこともある。すると、シリンダゲージ100がすぐに熱を持ってしまって、熱膨張が測定誤差に繋がってしまう。
この点、触ってはいけないところに示温材600を設けてあれば、ユーザとしては温度が大切であるという認識を持ちやすく、グリップ部112以外を触ってはいけないということがわかる。
【0027】
また、のぞき孔114を通してドライバーロッド113の温度も確認できるようになっている。これにより、内部までしっかり温度ならしができているかどうかを目視で判定できる。したがって、使用前にシリンダゲージ100を温度ならしするにあたって、余計に長めの温度ならし時間を取る必要がなく、測定効率が向上することが期待できる。
【0028】
(第2実施形態)
手にもって使用する小型測定器にあっては、シリンダゲージ100に限らず、手からの伝熱の問題がある。
また、測定器の種類によって、初心者ユーザが触りがちであって、手の熱が測定誤差に影響しやすい箇所がある。
図3は、マイクロメータ200を例示する図である。
マイクロメータ200は、U字形フレーム(固定体部)210と、スピンドル(可動体部)220と、シンブル230と、アンビル240と、を備える。
U字形フレーム210の一端側にスピンドル220が螺合され、シンブル230を回転させることでスピンドル220を進退させる。U字形フレーム210の他端にアンビル240が取り付けられている。(アンビルを固定体部の一部とみてもよい。)
【0029】
マイクロメータ200にあっては、U字形フレーム210のアンビル240に近いところに示温材600を設けておくとよい。U字形フレーム210には防熱カバー211が設けられてはいるが、ついアンビル240付近を持ってしまうことがある。そして、アンビル240の近傍の熱膨張は測定誤差に影響しやすい。
この点、U字形フレーム210のアンビル240の付近に示温材600を設けておけば、ユーザが不必要にアンビル240付近に触れてしまわないように意識付けできると期待できる。また、意図せずにアンビル240付近に触れてしまっていたような場合には、示温材600の表示をみて温度ならしを適切に行うことができる。
【0030】
もちろん、スピンドル220に示温材600を設けておいてもよい。さらに、アンビル240に示温材600を設けてもよい
【0031】
(第3実施形態)
図4はデジタル式ダイヤルゲージ300を例示する図である。
(デジタル式ダイヤルゲージはデジタルインジケータとも呼ばれる。)
図4では、デジタル式ダイヤルゲージを例示しているが、メカ式のダイヤルゲージでもよい。
ダイヤルゲージ300の場合、ダイヤルゲージ300のケース体(固定体部)をスタンドにセットして使用することが多いので、測定作業時にユーザがダイヤルゲージ300を把持するということはないが、初心者ユーザはスピンドル(可動体部)310を直接手でつまんで持ち上げてしまうことがある。そこで、スピンドル310の表面に示温材600を設けておくとよい。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
100…シリンダゲージ、
110…外筒部、111…クランプホルダ、112…グリップ部、113…ドライバーロッド、114…のぞき孔、
120…測定ヘッド部、121…測定ヘッド本体部、122…外径ネジ部、123…ドライバーピン、124…カム、125…測定子、126…アンビル、127…ガイド部材、
200…マイクロメータ、
210…U字形フレーム、211…防熱カバー、220…スピンドル、230…シンブル、240…アンビル、
300…ダイヤルゲージ、
310…スピンドル、
600…示温材。