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特許7465134クレーンの振れ測定方法及び装置並びに振れ止め方法及び装置
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  • 特許-クレーンの振れ測定方法及び装置並びに振れ止め方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】クレーンの振れ測定方法及び装置並びに振れ止め方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B66C13/22 R
B66C13/22 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020062035
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160853
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】田川 泰敬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岩間 祐一
(72)【発明者】
【氏名】岩田 光司
(72)【発明者】
【氏名】川崎 伯晃
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-189393(JP,A)
【文献】特開平07-144883(JP,A)
【文献】特開2020-200179(JP,A)
【文献】特表2017-522248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンにおける吊り荷を支持する吊りワイヤの当該吊り荷の支持点から鉛直線上にレンズ及び撮像素子が配置された撮像装置により鉛直下方を連続的に撮影し、
運搬中の前記吊りワイヤに支持された吊り荷上の円マーカーの前記撮像装置による画像から円マーカーの直径を検出し、この直径に基づいて演算手段により吊りワイヤの繰り出し長さ及び振れ角を連続的に算出するクレーンの振れ測定方法において、
予め記憶された前記円マーカーの実際の直径及び前記撮像装置のレンズの焦点距離を基に、前記吊り荷の運搬開始の静止状態における円マーカーの初期の直径S1を取得し、撮像装置のレンズから円マーカーまでの距離L1を演算し、吊り荷の運搬開始位置から到達位置までの間に撮像装置により連続的に取得される画像の円マーカーの直径S2から、
【数1】
により、吊り荷の揺れ時の当該距離L2を算出し、
これにより取得した前記撮像装置から前記円マーカーの中心点の距離l 1 、検出した撮像装置から円マーカーの中心点の水平方向変位l 2 、予め記憶された円マーカーから吊り荷までの距離l 3 及び吊りワイヤの支持点から撮像装置までの距離l 4 から、前記吊り荷が振れた状態における実際の前記吊りワイヤ長L及び振れ角θを、
【数2】
【数3】
によりそれぞれ算出することを特徴とするクレーンの振れ測定方法。
【請求項2】
クレーンにおける吊り荷を支持する吊りワイヤの当該吊り荷の支持点から鉛直線上にレンズ及び撮像素子が配置されて下向きに固定され、鉛直下方を連続的に撮影する撮像装置と、
前記吊りワイヤに吊り荷を支持させる吊支部材に、直径を特定可能な輪郭を備えた水平に固定される円マーカーと、
前記撮像装置で撮影した前記マーカーの画像に基づいて前記円マーカーの直径を検出し、前記吊りワイヤの繰り出し長さ及び振れ角を連続的に算出する演算手段とを具備するクレーンの振れ測定装置において、
前記演算手段は、請求項1に記載のクレーンの振れ測定方法を実行処理することを特徴とするクレーンの振れ測定装置
【請求項3】
前記クレーンによる吊り荷の運搬中に、請求項1に記載の振れ測定方法により前記吊りワイヤの繰り出し長さ及び振れ角を測定し、吊り荷を静止状態に維持すべく制御手段によりクレーンの移動速度を制御することを特徴とするクレーンの振れ止め方法
【請求項4】
前記クレーンによる吊り荷の運搬中に、請求項2に記載の振れ測定装置により前記吊りワイヤの繰り出し長さ及び振れ角を測定し、吊り荷を静止状態に維持すべく吊りワイヤのクレーンの移動速度を制御する制御手段を具備することを特徴とするクレーンの振れ止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の運搬に使用される天井クレーンの吊り荷の揺れ状態を測定する振れ測定装置及びこれを用いて振れを抑制する振れ止め装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のように、クレーンの吊り荷の振れをフィードバック制御によって抑制するために、吊り荷の揺れ量を二つ以上のセンサーを用いて推定している。例えば、ポテンショメータなどの振れ角度センサーを用いて吊りワイヤの振れ角を計測し、次にエンコーダなどを用いて吊りワイヤ巻上げ用モータの回転数を計測し、吊りワイヤ長や振れ角を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-143397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のクレーンの制御方法は、基準位置から吊りワイヤの巻上げモータの回転数(回転角)をカウントしてワイヤ長を推定するので、長時間使用すると誤差が大きく蓄積してしまう。また、二つのセンサーを必要とするので、制御が複雑化すると共に高価にならざるを得ない。さらに、吊りワイヤの振れ角から荷揺れ量を推定すると、振れ角が非常に小さい場合、振れ角センサーの分解能に制限される関係上、荷揺れ量の推定精度が劣化する。
そこで本発明は、吊り荷上のマーカーを上方から撮像装置で撮影した画像を用いてマーカーの特定の標準部を検出することにより、センサーである撮像装置のみで、吊りワイヤの繰り出し長さ及び吊り荷の振れ角を精度高く検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のクレーンの振れ測定装置においては、クレーン1における吊り荷Wを支持する吊りワイヤ5の当該吊り荷Wの支持点から鉛直線上に下向きに固定され、鉛直下方を連続的に撮影するCMOSカメラのような撮像装置10と、吊りワイヤ5に吊り荷Wを支持させる動滑車6やフック7などの吊支部材に、長さを特定する標準部を備えた平面を上向きに水平に固定されるマーカー9と、撮像装置10で撮影したマーカー9の画像に基づいて標準部の長さを測定し、吊りワイヤ5の繰り出し長さ及び振れ角を連続的に算出する演算手段11とを具備させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、撮像装置のみで、吊りワイヤの繰り出し長さおよび振れ角を測定して、吊り荷の揺れ量をフィードバックすることができるため、構造を単純化して制御を簡易化し信頼性を高めると共に低コストを実現できる。吊りワイヤの繰り出し長や振れ角を、誤差の蓄積なく、また吊りワイヤの長短や振れ角の大小に制限されることなく、高い精度で測定することができ、吊り荷の揺れ量を正確に把握してクレーンの揺れを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】天井クレーンの概略図である。
図2】本発明に係る天井クレーンの振れ測定装置の概略図である。
図3図2の天井クレーンの振れ測定装置の概略図であり、(A)は静止状態を、(B)は振れ状態を示す。
図4】CMOSカメラにより取得された画像であり、(A)は静止状態を、(B)は振れ状態を示す。
図5】演算装置による測ワイヤロープの支持点から吊り荷の支持点まで測定の原理説明図である。
図6】CMOSカメラにより取得された画像によるカメラレンズから円マーカーまでの距離の測定の原理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
図1において、天井クレーン1は、水平面上一方向に移動可能な可動レール2と、可動レール2上を水平面上直交方向に走行可能な台車3と、台車3上に搭載され、その回転軸にこれを正逆回転させる図示しないサーボモータの出力軸が連結される巻上げ機4と、巻上げ機4に両端が係止され、一端側から繰り出されて他端側を巻き取ることにより荷物Wを昇降させるワイヤロープ5と、ワイヤロープ5の下部に掛け回される動滑車6と、動滑車6の下方に結合される吊りフック7とを具備する。
【0009】
図2に示すように、天井クレーン1には、振れ測定装置8を設ける。振れ測定装置8は、動滑車6上に固定される円マーカー9と、円マーカー9の垂直上方の台車3上に固定される撮像装置であるCMOSカメラ10と、CMOSカメラ10で取得した円マーカー9の画像に基づいてワイヤロープ5の長さL及び振れ角θを算出する遠隔の演算装置11とを具備する。
【0010】
円マーカー9は、図4に示すように、CMOSカメラ10により長さを特定する標準部である直径を検出可能な明確な輪郭を現す識別色と中心点9aを有する円盤状板材からなり、動滑車6の上部に水平に固定される。
【0011】
CMOSカメラ10は、吊り荷Wの支持位置から鉛直線上にカメラレンズ及びCMOSセンサの中心が配置され台車3に下向きに固定される。CMOSカメラ10は、円マーカー9と共に格子状の目盛り9aを示す画像データを出力する。
【0012】
演算装置11は、図3に示すように、CMOSカメラ10のレンズを通してCMOSセンサが得た画像データを受けて、ワイヤロープ5の支持点から吊り荷Wまでの距離L+ΔL及び振れ角θを算出する(同図(B))。演算装置11は、一体または別体の制御装置と連携して吊り荷を振れ止めするために、吊り荷Wの揺れ状態の変位した距離L+ΔL及び振れ角θを測定して揺れ量をフィードバックし、静止状態を維持するように(同図(A))、台車を走行させるインバータモータで走行速度を制御する。
演算装置11は、図4に示すように、吊り荷Wの運搬中の円マーカー9の画像から直径を測定することによりCMOSカメラ10のレンズから円マーカー9までの距離を算出する。図6に示すように、レンズの光学的特性を利用して、円マーカー9の実際の直径D及びCMOSカメラ10のレンズの焦点距離fを予め記憶しておけば、吊り荷Wの運搬開始の静止状態の円マーカー9の直径Sに基づいてCMOSカメラ10のレンズから円マーカー9までの距離Lを演算できる。従って吊り荷Wの運搬開始位置から到達位置までの間にCMOSカメラ10により連続的に取得される画像の円マーカー9の直径Sから、吊り荷Wの揺れ時の当該距離Lが数1により算出できる。
【数1】
図5に示すように、吊り荷Wが振れた状態において、L:実際のワイヤロープ長、θ:振れ角、l1:カメラレンズから円マーカー9の中心点9aの距離、l2:カメラレンズから円マーカー9の中心点9aの変位、l3:円マーカー9から吊り荷Wまでの距離、l4:ワイヤロープ5の支持点からカメラレンズまでの距離とすると、数2により実際のワイヤロープ長Lを、また数3により振れ角θを算出できる。
【数2】
【数3】
【0013】
この天井クレーン1においては、初期位置から吊り荷Wを吊り上げて所定の到達位置まで運搬する間、振れ測定装置8により運搬中の吊り荷Wの振れを測定し、振れ量をフィードバックすることにより振れを抑制制御する。振れ測定装置8においては、CMOSカメラ10が撮影した円マーカー9の画像から直径を連続的に測定して、吊り荷Wの運搬中のワイヤロープ5の支持点から吊り荷Wまでの距離L及び振れ角θを測定し、静止状態を維持すべく台車を走行させるインバータモータで走行速度を随時制御する。ワイヤロープ長L及び振れ角θは、CMOSカメラ10による画像に基づいて算出するので、誤差の蓄積がなく、精度高い測定により適正に振れを抑制する。
【0014】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、振れ測定装置8を天井クレーン1に代えて、クライミングクレーンやジブクレーンなど他のクレーンにも適用できる。
また、マーカーを円形に構成して動滑車6に固定したが、CMOSカメラ10の画像から長さが特定できる測定対象としての標準部であれば、他の形状でもよく、また吊り荷Wと共に振れる部位であってCMOSカメラ10の撮影範囲であれば吊りフック7を含めた他の部位に固定してもよい。
さらに、撮像装置は、画像データを出力するものであれば、CMOSカメラ10の他CCDカメラなどの周知のものを適用できる。
【符号の説明】
【0015】
1 天井クレーン
2 可動レール
3 台車
4 巻上げ機
5 吊りワイヤ
6 動滑車
7 吊りフック
8 振れ測定装置
9 円マーカー
10 CMOSカメラ
11 演算手段
W 吊り荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6