(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】リチウムの安定を可能にする拡散バリア膜
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20240403BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240403BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20240403BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20240403BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240403BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240403BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01M4/66 A
C23C14/06
C23C14/08
C23C14/34 V
H01M4/134
H01M4/1395
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2020570431
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019037728
(87)【国際公開番号】W WO2019246095
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブレヴノフ, ドミトリー エー.
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-373644(JP,A)
【文献】特開2014-084272(JP,A)
【文献】特開2010-262752(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156638(WO,A1)
【文献】特開2006-059714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
C23C 14/06
C23C 14/08
C23C 14/34
H01M 4/134
H01M 4/1395
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔と、
銅箔の上に形成された第1の拡散バリア層であって、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む第1の拡散バリア層と、
第1の拡散バリア層の上に形成された湿潤層であって、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、これらの酸化物、これらの窒化物、またはこれらの組合せから選択される湿潤層と、
湿潤層の上に形成されたリチウム金属層と
を備え、
第1の拡散バリア層と湿潤層との間に形成された第2の拡散バリア層であって、第1の拡散バリア層とは異なる第2の拡散バリア層
をさらに備える
、アノード電極構造。
【請求項2】
第2の拡散バリア層が、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のアノード電極構造。
【請求項3】
第1の拡散バリア層がタンタル層であり、第2の拡散バリア層がチタン層である、請求項2に記載のアノード電極構造。
【請求項4】
第1の拡散バリア層が窒化タンタル層であり、第2の拡散バリア層がチタン層である、請求項2に記載のアノード電極構造。
【請求項5】
リチウム金属層が、湿潤層と一緒に合金を形成する、請求項1に記載のアノード電極構造。
【請求項6】
第1の拡散バリア層が、約100ナノメートルから約200ナノメートルの厚さを有する、請求項1に記載のアノード電極構造。
【請求項7】
湿潤層が、約5ナノメートルから約20ナノメートルの厚さを有する、請求項6に記載のアノード電極構造。
【請求項8】
請求項1に記載のアノード電極構造を組み込んだ電池。
【請求項9】
銅箔の上に第1の拡散バリア層を形成することであって、第1の拡散バリア層が、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む、第1の拡散バリア層を形成することと、
第1の拡散バリア層の上に湿潤層を形成することであって、湿潤層が、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、これらの酸化物、これらの窒化物、またはこれらの組み合わせから選択される、湿潤層を形成することと、
湿潤層の上にリチウム金属層を形成することと
を含み、湿潤層を形成することに先立ち、第1の拡散バリア層の上に、第1の拡散バリア層とは異なる第2の拡散バリア層を形成すること
をさらに含む、電極構造の形成方法。
【請求項10】
第2の拡散バリア層が、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の拡散バリア層が、タンタルターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたタンタル層である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
第1の拡散バリア層が、窒素含有環境内でタンタルターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたタンタル層である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
第2の拡散バリア層が、チタンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたチタン層である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載される実装態様は、概して金属電極に関し、具体的には、リチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む二次電池などの高性能電気化学デバイス、および同デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能な電気化学的貯蔵システムは、現在、日常生活の多くの分野においてますます重要になってきている。リチウムイオン(Liイオン)電池などの高容量電気化学エネルギー貯蔵デバイスを使用する用途は増加しつつあり、そのような用途には、携帯用電子機器、医療、輸送、グリッド接続された大エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー貯蔵、および無停電電源(UPS)が含まれる。伝統的な鉛/硫酸電池はしばしばキャパシタンスを欠き、これら増加しつつある用途にサイクル可能であるには不十分であることが多い。しかしながら、リチウムイオン電池は、最良の機会を有すると考えられている。
【0003】
典型的には、リチウムイオン電池は、安全上の理由から金属リチウムを一切含有せず、その代わりに、アノードとしてグラファイト材料を使用する。しかしながら、充電状態で限界組成LiC6まで充電することができるグラファイトの使用は、金属リチウムの使用と比較して、はるかに低いキャパシタンスをもたらす。現在、この業界はエネルギーセル密度を高めるために、グラファイト系アノードからシリコンブレンドグラファイトへと移行しつつある。しかしながら、シリコンブレンドグラファイトアノードは、初回サイクルの容量損失を被る。したがって、シリコンブレンドグラファイトアノードの初回サイクルの容量損失を補充するためのリチウム金属堆積が必要とされている。しかしながら、リチウム金属はいくつかのデバイス集積化の課題に直面している。例えば、銅基板上へのリチウムの堆積は、銅基板のリチウム誘起性の脆化をもたらす可能性がある。
【0004】
したがって、エネルギー貯蔵システムにおけるリチウム金属の堆積および処理のための方法およびシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
ここに記載される実装態様は、概して金属電極に関し、具体的には、リチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む二次電池などの高性能電気化学デバイス、および同デバイスを製造するための方法に関する。一実装態様では、アノード電極が提供される。アノード電極は銅箔を備える。アノード電極は、銅箔上に形成された第1の拡散バリア層をさらに備える。第1の拡散バリア層は、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む。アノード電極は、第1の拡散バリア層上に形成された湿潤層をさらに備える。湿潤層は、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、これらの酸化物、これらの窒化物、またはこれらの組み合わせから選択される。アノード電極は、湿潤層上に形成されたリチウム金属層をさらに備える。
【0006】
別の実装態様では、電極構造を形成する方法が提供される。この方法は、銅箔上に第1の拡散バリア層を形成することを含む。第1の拡散バリア層は、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む。この方法は、第1の拡散バリア層上に湿潤層を形成することをさらに含む。湿潤層は、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、これらの酸化物、これらの窒化物、またはこれらの組み合わせから選択される。方法は、湿潤層の上にリチウム金属層を形成することをさらに含む。
【0007】
さらに別の実装態様では、リチウムでコーティングされた負極を形成するように動作可能な一体型処理ツールが提供される。一体型処理ツールは、一連の処理チャンバを通して材料の連続シートを輸送するように動作可能なロールツーロールシステムを備える。一連の処理チャンバは、材料の連続シート上に第1の拡散バリア層を堆積させるように動作可能な第1の処理チャンバをさらに含む。一連の処理チャンバは、第1の拡散バリア層上に第2の拡散バリア層を堆積させるように動作可能な第2の処理チャンバをさらに含む。一連の処理チャンバは、第2の拡散バリア層上に湿潤層を堆積させるように動作可能な第3の処理チャンバをさらに含む。一連の処理チャンバは、第2の拡散バリア層上にリチウム金属の薄膜を堆積させるように動作可能な第4の処理チャンバをさらに含む。
【0008】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約した実装態様のより詳細な説明が、実装態様を参照することによって得られる。それら実装態様のいくつかが、添付図面に示されている。しかしながら、添付図面は典型的な実装態様を示しているに過ぎず、したがって、本開示は他の等しく有効な実装態様も許容しうるため、添付図面が本発明の範囲を限定すると考えるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ここに記載される実装態様によるアノード電極構造を形成する方法の一実装態様を要約したプロセスのフロー図である。
【
図3A-C】ここに記載される実装態様による、製造の様々な段階における電極構造の断面図である。
【
図3D】ここに記載される実装態様による、製造のある段階における電極構造の断面図である。
【
図4】ここに記載される実装態様に従って形成された電極構造を有する電池構造の一実装態様の断面図である。
【
図5】ここに記載される実装態様による、電極構造を形成するように動作可能な一体式処理ツールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。一実装態様の要素および特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実装態様に有益に組み込むことが可能であることが企図される。
【0011】
以下の開示は、アノード電極、前述のアノード電極を含む高性能電気化学セル、およびそれを製造するための方法について記載する。本開示の様々な実装態様の完全な理解を提供するため、特定の詳細が以下の記載および
図1~5に提示される。多くの場合電気化学セルおよび電池に関連付けられる周知の構造およびシステムを記載する他の詳細は、様々な実装の記載を不要に曖昧にすることを避けるように、以下の開示に提示される。
【0012】
図面に示される詳細、寸法、角度、および他の特徴の多くは、具体的な実装態様の例示に過ぎない。したがって、他の実装態様が、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、寸法、角度、および特徴を有しうる。加えて、以下に記載の詳細のうちのいくつを含まずに、本開示のさらなる実装態様を実施することが可能である。
【0013】
ここに記載される実装態様は、TopMetTM、SMARTWEB(登録商標)、TopBeamTMなどのロールツーロールコーティングシステムを参照して以下に記載される。これらすべては、カリフォルニア州サンタクララの本出願人から入手可能である。物理的気相堆積プロセスを実施することのできる他のツール(高速蒸発プロセスおよびマグネトロンスパッタリングプロセス)も、ここに記載される実装態様から恩恵を受けうる。加えて、ここに記載される物理的気相堆積プロセスを可能にする任意のシステムを有利に使用することができる。ここに記載された装置の説明は、例示的なものであって、ここに記載される実装態様の範囲を制限するものと理解または解釈するべきではない。ロールツーロールプロセスとして記載されているが、ここに記載される実装態様は個別の基板上で実施可能であることも理解されたい。
【0014】
図1は、第1の加熱サイクルから第2の加熱サイクルへのリチウムの融点の低下を示すグラフ100である。現行の技術水準のプロセスで作製されたリチウム金属/銅箔サンプルの熱安定性を、
図1に示される示差走査熱量測定(DSC)を用いて試験した。厚さ200μmのFMCリチウム箔を、厚さ12μmのOak-Mitsui
TM銅箔2片の上に積層し、それら銅箔で封入した。第1の加熱サイクルは、リチウムの、179.77℃の開始融点および181.88℃のピーク融点を示している。対照的に、第2の加熱サイクルは、それぞれ177.58℃および179.26℃のリチウム融点を示している。リチウム融点の低下は、不純物(例えば銅)がリチウム加熱/溶融中にリチウム中に取り込まれることを示す。したがって、リチウム金属/銅箔のインターフェースは、リチウム溶融時に安定でない。加えて、文献は、銅箔集電体中のリチウム蓄積が測定可能であることを示している。このように、実験データは、特に昇温での製造/貯蔵中における、リチウム膜と銅箔集電体との間のバリア膜の必要性を立証した。
【0015】
リチウム金属/銅箔集電体インターフェースの時間的/熱的安定性は、リチウム金属電池の動作にとって重要である。現行の技術水準の技法には、銅箔上へのリチウム箔の直接積層またはリチウムのPVD(例えば、蒸発)が含まれる。現行の技術水準の銅箔は、パッシベーションベースのクロメート/ジンケート膜を製造するために処理される。これらのパッシベーションベースの膜は、未処理の銅箔と比較して、耐食性を改善して貯蔵寿命を延ばすことを意図している。しかしながら、リチウム金属/銅箔は経験的に、これらのパッシベーションベースの膜のバリア性能が、リチウム金属/銅箔インターフェースの安定性を保証するためには不十分であることを実証している。その結果、リチウムが銅の粒界中に拡散し、これが銅集電体のリチウム誘起性の脆化をもたらす。加えて、リチウム中に銅が取り込まれることで、リチウム相の純度および結晶化の制御が妨げられる(
図1参照)。その結果、リチウム金属アノードのサイクル寿命は短縮する。本開示のいくつかの実装態様では、リチウム膜/銅箔間のここに記載されるバリア膜の堆積は、前述の問題に対処する。
【0016】
本開示のいくつかの実装態様では、望ましくない相互拡散プロセスを防止/最小化するために、高融点金属拡散バリア膜が銅箔上に堆積され、その結果、リチウム金属アノード製造および電池動作/蓄電中にインターフェースの劣化が生じる。ここに記載される高融点金属/金属窒化物バリア膜の堆積は、リチウム金属/銅箔集電体インターフェースの時間的/熱的安定性を保証する。その結果、リチウム膜/銅箔は、リチウム金属電池のアノードとして動作中に劣化を被らない。加えて、ここに記載されるバリア膜は、銅箔のリチウム誘起脆化を防止し、機械的特性を保存し、箔の断裂を最小化する。したがって、ここに記載されるバリア膜は、銅箔のロールツーロールの取扱いを容易にする。
【0017】
図2は、ここに記載される実装態様によるアノード電極構造を形成する処理シーケンス200の一実装態様を要約したプロセスのフロー図を示す。
図2に記載された処理シーケンス200は、
図3A~3Dに描写された製造段階に対応しており、これを後述する。
図3A‐3Dは、ここに記載される実装態様による、製造の様々な段階における電極構造300の断面図である。アノード電極構造300は両面電極構造であるが、ここに記載される実装態様は、片面電極構造にも適用可能である。
【0018】
処理シーケンス200は、銅基板310を提供することにより工程210で開始される。一実装態様では、銅基板310は、銅のスラブ、箔、またはシートを含む。銅基板310は、約0.5μmから約20μm(例えば、約1μmから約10μm;または約5μmから約10μm)の厚さを有しうる。銅基板310は、正方形、円形、楕円形、長円形などの任意の形状を有してよい。いくつかの実装態様では、銅基板310は、正方形もしくは長方形、またはx×yの正方形もしくは長方形ユニットのシート、またはxユニット幅のロールであり、各ユニットは、単一の電極構造のための個別の分離可能な基板を表す。一実装態様では、銅基板310は、ロール上に格納され、ロールツーロールツール、例えば、
図5に示されるロールツーロールトールで使用される銅のシートを含む。
【0019】
随意で、工程210において、銅基板は前処理プロセスに供される。前処理プロセスは、一般に、工程210での第1の拡散バリア層の堆積に先立って実施される前洗浄プロセスである。前洗浄プロセスは、例えば、銅基板310を準備するストックの処理から生じる残留物、残留有機材料、粒子、および/または銅基板310の表面への第1の拡散バリア層320a、320b(まとめて320)の接着に悪影響を及ぼす可能性のあるその他の汚染物質を除去することができる。銅基板310の前洗浄は、湿式洗浄および/または乾式洗浄を含むことができる。
【0020】
前洗浄プロセスのための適切なエッチング技術は、湿式エッチングプロセス(例えば、湿式化学エッチング)、または乾式エッチング(例えば、反応性イオンエッチングまたはスパッタエッチング)を含みうる。一実装態様では、銅基板310は、基板を液相クリーナ(例えば、有機残留物を除去するもの)に浸漬することおよび/または基板を液相クリーナですすぐこと、ならびにその後、希釈水性酸(例えば、アンモニアおよび/またはフッ化アンモニウムで緩衝されうる希釈水性HF)を使用して湿式エッチングすることによって洗浄される。銅基板310の湿式エッチングにおける使用のための代替的酸には、使用される銅のグレードおよび銅基板310が処理される温度に応じて、硝酸、硫酸、塩酸などが含まれる。別の実装態様では、銅基板310は、スパッタエッチングによって洗浄される。銅基板310を洗浄するための乾式エッチングプロセスにおける使用のためのガスの選択は、特に限定されない。銅基板310の表面から実質的にすべての望ましくない汚染物質を除去するが、永久的な残留物を残さない任意のガスまたはガスの組み合わせを用いることができる。例えば、アルゴンのような不活性ガスを銅基板310のスパッタ洗浄に用いることができる。
【0021】
一実装態様では、工程220の前洗浄プロセスは、フォーミングガス(H2/N2)環境で銅基板310をアニーリングすることを含む。別の実装態様では、工程220の前洗浄プロセスは、水素およびアルゴン含有(H2/Ar)環境中で銅基板310をアニーリングすることを含む。一実装態様では、工程220の前洗浄プロセスの間の処理温度は、約50℃と約150℃の間(例えば、約80℃と約150℃の間;または約100℃と約150℃の間)である。一実装態様では、工程220の前洗浄プロセスは、銅基板310の粗さを低減するために、ローラ間に銅基板310を通してプレスすることを含む。
【0022】
次に
図3Aを参照すると、工程230において、第1の拡散バリア層堆積プロセスが実施され、第1の拡散バリア層320a、320b(まとめて320)が銅基板310上に堆積される。第1の拡散バリア層320は、銅拡散バリアとして機能する。第1の拡散バリア層320は、一般に、高融点金属および/または高融点金属窒化物を含む。一実装態様では、高融点金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、またはこれらの組み合わせから選択される。一実装態様では、高融点金属窒化物は、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル、またはこれらの組合せから選択される。一実装態様では、第1の拡散バリア層320はタンタル層である。別の実施態様において、第1の拡散バリア層320は窒化タンタル層である。第1の拡散バリア層320は、約2Åから約500Åの範囲内、より狭くは約5Åから約100Åの範囲内、より狭くは約3Åから約80Åの範囲内、より狭くは約4Åから約50Åの範囲内、より狭くは約5Åから約25Åの範囲内、より狭くは約5Åから約20Åの範囲内、より狭くは約5Åから約15Åの範囲内、より狭くは約5Åから約10Åの範囲内の厚さを有しうる。第1の拡散バリア層320は、一般に、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PE-ALD)、化学気相堆積(CVD)、または物理的気相堆積(PVD)プロセスによって堆積される。一実装態様では、工程230は、DCマグネトロンスパッタリングプロセスによって実施されるPVDプロセスである。一実装態様では、DCマグネトロンスパッタリングプロセスは、室温で実施される。PVDプロセスの一実装態様では、基底圧は10
-7mbarであり、プロセス温度は室温と100℃の間の範囲であり、ターゲットDC電力は約2から約10kWの範囲である。
【0023】
一実装態様では、第1の拡散バリア層320は、タンタルターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたタンタル層である。別の実装態様では、第1の拡散バリア層320は、窒素含有環境内のタンタルターゲットを使用して、または窒化タンタルターゲットを使用して、PVDスパッタリングプロセスによって堆積された窒化タンタル層である。
【0024】
次に、
図3Bに示すように、随意で、工程240において、第2の拡散バリア層330堆積プロセスを実施し、第1の拡散バリア層320上に第2の拡散バリア層330を堆積させて、二重バリア層を形成する。第2の拡散バリア層330は、リチウム拡散バリアとして機能する。第2の拡散バリア層330は、一般に、高融点金属および/または高融点金属窒化物を含む。第2の拡散バリア層330の高融点金属および/または高融点金属窒化物は、第1の拡散バリア層320の高融点金属および/または高融点金属窒化物とは異なる。一実装態様では、高融点金属は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、またはこれらの組み合わせから選択される。一実装態様では、高融点金属窒化物は、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル、またはこれらの組合せから選択される。一実装態様では、第2の拡散バリア層330はチタン層である。別の実装態様では、第2の拡散バリア層330は窒化チタン層である。第2の拡散バリア層330は、約2Åから約100Åの範囲内、より狭くは約3Åから約80Åの範囲内、より狭くは約4Åから約50Åの範囲内、より狭くは約5Åから約25Åの範囲内、より狭くは約5Åから約20Åの範囲内、より狭くは約5Åから約15Åの範囲内、より狭くは約5Åから約10Åの範囲内の厚さを有しうる。第2の拡散バリア層330は、一般に、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PE-ALD)、化学気相堆積(CVD)、または物理的気相堆積(PVD)プロセスによって堆積される。一実装態様では、工程240は、室温で実施されるDCマグネトロンスパッタリングプロセスによって実行されるPVDプロセスである。PVDプロセスの一実装態様では、基底圧は10
-7mbarであり、プロセス温度は室温と100℃の間の範囲であり、ターゲットDC電力は約2から約10kWの範囲である。
【0025】
一実装態様では、第2の拡散バリア層330は、チタンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたチタン層である。別の実装態様では、第2の拡散バリア層330は、窒素含有環境内のチタンターゲットを使用して、または窒化チタンターゲットを使用して、PVDスパッタリングプロセスによって堆積された窒化チタン層である。
【0026】
次に
図3Cに示すように、随意で、工程250において、湿式層堆積プロセスを実施して、下に位置する第1の拡散バリア層320または下に位置する第2の拡散バリア層330(存在する場合)上に湿潤層340a、340b(まとめて340)を堆積させる。湿潤層340は、一般に、リチウム金属層350a、350b(まとめて350)の、下に位置するバリア材料への接着を強化する。湿潤層340は、一般に、リチウム合金元素または化合物を含む。一実装態様では、湿潤層340は、リチウムと直接結合することができるか、または高い接触角を有することのできる材料で作製することができる。例えば、Si、Sn、Alはすべて、リチウムおよび酸化物と合金を形成する(例えば、SiOx、SnOxおよびAlOx(xは、電荷平衡のための最高の酸化状態に適合するように0から数まで変化する))。一実装態様では、湿潤層340は、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、炭素(C)、それらの酸化物、それらの窒化物、またはこれらの組み合せの群から選択される材料から構成される。一実装態様では、湿潤層340は、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、酸化シリコン、酸化スズ、またはこれらの組み合わせの群から選択される材料から構成される。一実装態様では、湿潤層340は、約1nmから約200nm(例えば、約5nmから約50nm;約5nmから約20nm;または約5nmから約10nm)の厚さを有する。一実装態様では、湿潤層340は、シリコンまたはシリコン含有膜である。
【0027】
次に
図3Dに示すように、工程260では、リチウム金属層堆積プロセスを実施して、下に位置するバリア層または湿潤層340(存在する場合)上にリチウム金属層350を堆積させ、アノード電極構造300を形成する。任意の湿潤層340が存在するいくつかの実装態様では、リチウム金属層350は湿潤層340上に形成される。いくつかの実装態様では、リチウム金属層350は、下に位置する第1の拡散バリア層320または下に位置する第2の拡散バリア層330(存在する場合)上に直接形成される。リチウム金属層350は、リチウム金属、リチウム金属箔もしくはリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、あるいはリチウム金属および/またはリチウム合金と、カーボン(例えば、コークス、グラファイト)、ニッケル、銅、スズ、インジウム、シリコン、これらの酸化物、またはこれらの組み合わせとの混合物から構成されうる。一実装態様では、リチウム金属層350は、下に位置する湿潤層340(存在する場合)と合金を形成するリチウム金属合金層である。一実装態様では、リチウム金属層350は、一般的に、リチウムを含有する層間化合物またはリチウムを含有する挿入化合物を含む。一実装態様では、リチウム金属層350は、印刷方法を使用して堆積させてもよい。一実装態様では、リチウム金属層350は、下に位置する構造に積層されて、アノード電極構造300を形成する。一実装態様では、リチウム金属層350は、下に位置する構造に積層されるリチウム箔であり、これは、リチウム箔および下に位置する構造を2つのローラの間に通すことによって銅箔上に形成されるバリア膜(複数可)を含む。いくつかの実装態様では、リチウム金属層350は、物理的または化学的薄膜技術、例えば、スパッタリング、電子ビーム蒸発、熱蒸発、化学気相堆積(CVD)、三次元印刷などによって形成されてもよい。一実装態様では、リチウム金属層350は、約1μmから約50μm(例えば、約3μmから約40μm;約3μmから約20μm;または約20μmから約40μm)の厚さを有する。
【0028】
いくつかの実装態様では、形成されたアノード電極構造300は、アノード電極構造上への保護膜の堆積といった追加的処理に供される。
【0029】
図4は、ここに記載される実装態様に従って形成されたアノード電極構造300を有する電池構造400の一実装態様の断面図である。いくつかの実装態様では、電池構造400は、再充電可能な電池セルである。いくつかの実装態様では、電池構造400は、コンデンサ(例えば、超コンデンサまたはウルトラコンデンサ)である。いくつかの実装態様では、電池構造400は、ソリッドステート電池構造である。いくつかの実装態様では、電池構造400は、他のセルと組み合わされて、再充電可能な電池またはコンデンサを形成する。電池構造400は、セパレータ膜420によって分離された、カソード電極構造410とアノード電極構造300とを含む。カソード電極構造410は、カソード集電体440と、その上に形成されたカソード膜430とを含む。
図4では、集電体およびセパレータ膜はスタックを越えて延びているように示されているが、集電体および/またはセパレータ膜がスタックを越えて延びることは必要ではなく、スタックを越えて延びる部分をタブとして使用することができることに留意されたい。
【0030】
カソード集電体440は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、クラッド材料、これらの合金、またはこれらの組み合わせから構成することができる。一実装態様では、カソード集電体440は、アルミニウムである。一実装態様では、カソード集電体440は穿孔されている。さらに、集電体は、任意の形状因子(例えば、金属の箔、シート、またはプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものでありうる。概して、角柱状セルでは、タブは、集電体と同一の材料で形成されており、スタックの製造中に形成するか、または後で追加することができる。いくつかの実装態様では、銅基板310およびカソード集電体440を除くすべての構成要素は、リチウムイオン電解質を含む。一実装態様では、カソード集電体440はアルミニウムである。一実装態様では、カソード集電体440は、約2μmから約20μmの厚さを有する。
【0031】
カソード膜430またはカソードは、アノードと適合性の任意の材料とすることができ、層間化合物、挿入化合物、または電気化学的に活性なポリマーを含むことができる。適切な層間材料の例には、例えば、リチウム含有金属酸化物、MoS2、FeS2、MnO2、TiS2、NbSe3、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、V6O13およびV2O5が含まれる。適切なポリマーには、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリチオフェンが含まれる。カソード膜430またはカソードは、リチウムコバルト酸化物などの層状酸化物、リン酸鉄リチウムなどのカンラン石、またはリチウムマンガン酸化物などの尖晶石から作製することができる。例示的なリチウム含有酸化物は層状であってよく、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、または混合金属酸化物、例えば、LiNixCo1-2xMnO2、LiNiMnCoO2(「NMC」)、LiNi0.5Mn1.5O4、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、LiMn2O4、およびドープされたリチウムリッチ層状層状材料(xは、ゼロまたは非ゼロの数である)であってよい。例示的なホスフェートは、鉄カンラン石(LiFePO4)、およびその変種(LiFe(1-x)MgxPO4など)、LiMoPO4、LiCoPO4、LiNiPO4、Li3V2(PO4)3、LiVOPO4、LiMP2O7、またはLiFe1.5P2O7(式中、xはゼロまたは非ゼロの数である)である。例示的なフルオロホスフェートは、LiVPO4F、LiAlPO4F、Li5V(PO4)2F2、Li5Cr(PO4)2F2、Li2CoPO4F、またはLi2NiPO4Fである。例示的なケイ酸塩は、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、またはLi2VOSiO4である。例示的な非リチウム化合物は、Na5V2(PO4)2F3である。カソード膜430は、スパッタリング、電子ビーム蒸発、化学気相堆積(CVD)などの物理的または化学的薄膜技術によって形成することができる。一実装態様では、カソード膜430は、約10μmから約100μm(例えば、約30μmから約80μm;または約40μmから約60μm)の厚さを有する。一実装態様では、カソード膜430は、LiCoO2膜である。エネルギー蓄積デバイスが電気化学コンデンサであるいくつかの実装態様では、高表面積炭素が電極として使用される。
【0032】
セル構成要素320,330、350、420、および430に注入される電解質は、液状/ゲル状又は固体のポリマーで構成されてよく、それぞれ異なっていてよい。いくつかの実装態様では、電解質は主として塩と媒質を含む(例えば、液体電解質では、媒質は溶媒と呼ぶことができ、ゲル電解質では、媒質はポリマーマトリクスであってよい)。塩は、リチウム塩であってよい。リチウム塩には、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO3)3、LiBF6、およびLiClO4、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミデート(例えば、LiTFSI)、BETTE電解質(ミネソタ州ミネアポリスの3M社から市販されている)、またはこれらの組み合わせが含まれうる。溶媒には、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、EC/PC、2-MeTHF(2-メチルテトラヒドロフラン)/EC/PC、EC/DMC(ジメチルカーボネート)、EC/DME(ジメチルエタン)、EC/DEC(ジメチルカーボネート)、EC/EMC(エチルメチルカーボネート)、EC/EMC/DMC/DEC、EC/EMC/DMC/DEC/PE、PC/DME、およびDME/PCが含まれうる。ポリマーマトリクスには、例えば、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVDF:THF(PVDF:テトラヒドロフラン)、PVDF:CTFE(PVDF:クロロトリフルオロエチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、およびPEO(ポリエチレン酸化物)が含まれうる。
【0033】
図5は、ここに記載される実装態様による、アノード電極構造を形成するためのフレキシブル基板コーティング装置500の概略図である。典型的な実装態様によれば、フレキシブル基板コーティング装置500は、アノード電極構造を製造するため、特に銅基板上に拡散バリア層構造を形成するために使用することができる。フレキシブル基板コーティング装置500は、巻き出しモジュール502、処理モジュール504、および巻き取りモジュール506を含むロールツーロールシステムとして構成される。特定の実装態様では、処理モジュール504は、一列に配置された複数の処理モジュールまたはチャンバ510、520、530、および540を含み、モジュールまたはチャンバの各々は、材料の連続シート550または材料のウェブに対して1つの処理工程を実施するように構成される。一実装態様では、
図5に示されるように、処理チャンバ510~540は、コーティングドラム555の周囲に放射状に配置される。放射状以外の他の配置も考えられる。例えば、別の実装態様では、処理チャンバは、線形構成に位置決めされてもよい。
【0034】
一実装態様では、処理チャンバ510~540は、各モジュラ処理チャンバが、他のモジュラ処理チャンバから構造的に分離されるスタンドアロンモジュラ処理チャンバである。したがって、スタンドアロンモジュラ処理チャンバの各々は、互いに影響を及ぼすことなく、配置、再配置、交換、または維持することができる。4つの処理チャンバ510~540が示されているが、任意の数の処理チャンバがフレキシブル基板コーティング装置500に含まれてよいことを理解されたい。
【0035】
処理チャンバ510~540には、フレキシブル基板コーティング装置500が本開示の実装態様に従ってリチウムアノードデバイスを堆積することを可能にする任意の適切な構造、構成、配置、および/または構成要素が含まれてよい。例えば、限定されないが、処理チャンバは、コーティング供給源、電源、個々の圧力制御装置、堆積制御システム、および温度制御装置を含む適切な堆積システムを含むことができる。いくつかの実装態様では、チャンバには、個々のガス供給源が設けられる。チャンバは、典型的には、良好なガス分離を提供するために互いから分離される。ここに記載される実装態様によるフレキシブル基板コーティング装置500は、堆積チャンバの数に限定されない。例えば、限定されないが、フレキシブル基板コーティング装置500は、3、6、または12個の処理チャンバを含むことができる。
【0036】
処理チャンバ510~540は、典型的には、1つまたは複数の堆積ユニット512、522、532、および542を含む。一般的に、ここに記載される1つまたは複数の堆積ユニットは、CVD源、PECVD源、およびPVD源からなる群から選択することができる。1つまたは複数の堆積ユニットは、蒸発源、スパッタ源、例えばマグネトロンスパッタ源、DCスパッタ源、ACスパッタ源、パルススパッタ源を含むことができるか、または高周波(RF)スパッタリングもしくは中波(MF)スパッタリングが提供されうる。例えば、5kHzから100kHz、例えば30kHzから50kHzの範囲の周波数のMFスパッタリングが提供されうる。1つまたは複数の堆積ユニットは、蒸発源を含むことができる。一実装態様では、蒸発源は、熱蒸発源または電子ビーム蒸発である。一実装態様では、蒸発源はリチウム(Li)源である。さらに、蒸発源は、2つ以上の金属の合金であってもよい。堆積される材料(例えば、リチウム)は、るつぼ内に提供することができる。リチウムは、例えば、熱蒸発技術、電子ビーム蒸発技術、または積層技術によって蒸発させることができる。
【0037】
いくつかの実装態様では、フレキシブル基板コーティング装置500の処理チャンバ510~540のいずれかは、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングによって堆積を実施するように構成されてもよい。ここで使用される「マグネトロンスパッタリング」は、磁石アセンブリ、すなわち、磁場を発生させることのできるユニットを使用して実施されるスパッタリングを指す。典型的には、このような磁石アセンブリは、永久磁石を含む。この永久磁石は、典型的には、回転ターゲット表面の下に発生する発生磁場の内部に自由電子が捕捉されるように、回転ターゲットの内部に配置されるかまたは平面ターゲットに連結される。このような磁石アセンブリは、平面カソードに連結して配置してもよい。
【0038】
マグネトロンスパッタリングは、限定されないが、TwinMagTMカソードアセンブリなどの二重マグネトロンカソードによって実現することもできる。いくつかの実装態様では、処理チャンバ内のカソードは交換可能である。それにより、特定の製造要件のために装置を最適化することを容易にする装置のモジュラ設計が提供される。いくつかの実装態様では、スパッタリング堆積のためのチャンバ内のカソードの数は、フレキシブル基板コーティング装置500の最適な生産性を最適化するために選択される。
【0039】
いくつかの実装態様では、処理チャンバ510~540のうちの1つまたはいくつかは、マグネトロンアセンブリなしでスパッタリングを実施するように構成される。いくつかの実装態様では、チャンバのうちの1つまたはいくつかは、限定されないが、化学気相堆積、原子レーザ堆積、またはパルスレーザ堆積などの他の方法により堆積を実施するように構成される。いくつかの実装態様では、チャンバのうちの1つまたはいくつかは、プラズマ酸化またはプラズマ窒化プロセスなどのプラズマ処理プロセスを実施するように構成される。
【0040】
特定の実装態様では、処理チャンバ510-540は、材料の連続シート550の両側を処理するように構成される。フレキシブル基板コーティング装置500は、水平に配向された材料の連続シート550を処理するように構成されるが、フレキシブル基板コーティング装置500は、異なる配向に位置決めされた基板、例えば、垂直に配向された材料の連続シート550を処理するように構成されてもよい。特定の実装態様では、材料の連続シート550はフレキシブル導電性基板である。特定の実装態様では、材料の連続シート550は、その上に1つまたは複数の層が形成されている導電性基板を含む。特定の実装態様では、導電性基板は、
図3A~3Dに示される銅基板310のような銅基板である。
【0041】
特定の実装態様では、フレキシブル基板コーティング装置500は、移送機構552を備える。移送機構552は、処理チャンバ510-540の処理領域を通して、材料の連続シート550を移動させることのできる任意の移送機構を含みうる。移送機構552は、共通の輸送アーキテクチャを含みうる。共通の輸送アーキテクチャは、巻き取りモジュール506内に位置決めされた共通巻き取りリール554と、処理モジュール504内に位置決めされたコーティングドラム555と、巻き出しモジュール502内に位置決めされた送りリール556とを含むロールツーロールシステムを含みうる。巻き取りリール554、コーティングドラム555、および送りリール556は、個別に加熱することができる。巻き取りリール554、コーティングドラムに555および送りリール556は、各リールまたは外部熱源の中に位置決めされた内部熱源を使用して個別に加熱することができる。共通の輸送アーキテクチャは、巻き取りリール554、コーティングドラム555、および送りリール556の間に位置決めされた1つまたは複数の補助移送リール553a、553bをさらに含むことができる。図示のフレキシブル基板コーティング装置500は、単一の処理領域を有しているが、特定の実装態様では、各個別処理チャンバ510~540に対して分離されたまたは別個の処理領域を有することが有利でありうる。別個の処理領域、モジュール、またはチャンバを有する実装態様の場合、共通輸送アーキテクチャは、各チャンバまたは処理領域が、個別の巻き取りリールおよび送りリールと、巻き取りリールと送りリールとの間に位置決めされた1つ又は複数の任意の中間移送リールとを有するリールツーリールシステムであってもよい。
【0042】
フレキシブル基板コーティング装置500は、異なる処理チャンバ510~540を通して材料の連続シート550を移動させるための送りリール556および巻き取りリール554を備えることができる。一実装態様では、第1の処理チャンバ510は、第1の拡散バリア膜を堆積させるように構成される。第2の処理チャンバ520は、第2の拡散バリア膜を堆積させるように構成される。第3の処理チャンバ530は、湿潤膜を堆積させるように構成される。第4の処理チャンバ540は、リチウム金属膜を堆積させるように構成される。材料の連続シート550がポリマー材料である別の実装態様では、第1の処理チャンバ510は、ポリマー材料上に銅膜を堆積させるように構成される。第2の処理チャンバ520および第3の処理チャンバ530は、各々が拡散バリア膜または湿潤膜を堆積させるように構成される。第4の処理チャンバ540は、リチウム金属膜を堆積させるように構成される。いくつかの実装態様では、完成したアノード電極は、図に示したように巻き取りリール554上に集められのではなく、セパレータおよびカソード電極などと直接一体化されて、電池セルを形成しうる。
【0043】
一実装態様では、第1の処理チャンバ510は、第1の拡散バリア層を堆積させるように構成される。一実装態様では、第1の拡散バリア層は、タンタルターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたタンタル層である。別の実装態様では、第1の拡散バリア層は、窒素含有環境内のタンタルターゲットを使用して、または窒化タンタルターゲットを使用して、PVDスパッタリングプロセスによって堆積された窒化タンタル層である。
【0044】
一実装態様では、第2の処理チャンバ520は、第2の拡散バリア層を堆積させるように構成される。一実装態様では、第2の拡散バリア層は、チタンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたチタン層である。別の実装態様では、第2の拡散バリア層は、窒素含有環境内のチタンターゲットを使用して、または窒化チタンターゲットを使用して、PVDスパッタリングプロセスによって堆積された窒化チタン層である。
【0045】
一実装態様では、第3の処理チャンバ530は、下に位置するバリア層上に湿潤層を堆積させるように構成される。一実装態様では、湿潤層は、シリコンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたシリコン層である。
【0046】
一実装態様では、第4の処理チャンバ540は、下に位置する層上にリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。リチウム金属の薄膜を堆積させるための任意の適切なリチウム堆積プロセスが、リチウム金属の薄膜を堆積させるために使用されうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、積層プロセスまたは三次元リチウムプリンティングプロセスによって行うことができる。リチウム金属の薄膜を堆積させるためのチャンバは、電子ビーム蒸発器などのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビアプリンティングシステムなどの大面積パターンプリンティングシステムを含む)、積層システム、またはスロット-ダイ堆積システムを含んでもよい。
【0047】
動作中、材料の連続シート550は、矢印508によって示される基板移動方向によって示されるように、送りリール556から巻き出される。材料の連続シート550は、1つまたは複数の補助転写リール553a、553bを介してガイドされてもよい。材料の連続シート550を、例えば、フレキシブル基板の配向を精密に調整することによって、フレキシブル基板の適正な走行を制御する1つまたは複数の基板ガイド制御ユニット10によって案内することも可能である。
【0048】
次いで、送りリール556からほどかれて、補助転写リール553a上を走行した後、材料の連続シート550は、コーティングドラム555に設けられた、堆積ユニット512、522、532および542の位置に対応する堆積エリアを通って移動する。動作中、コーティングドラム555は、フレキシブル基板が矢印508の方向に移動するように、軸551の周りで回転する。
【0049】
実装態様:
条項1.銅箔と、銅箔上に形成された第1の拡散バリア層であって、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む第1の拡散バリア層と、第1の拡散バリア層上に形成された湿潤層であって、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、これらの酸化物、これらの窒化物、またはこれらの組み合わせから選択される湿潤層と、湿潤層上に形成されたリチウム金属層とを備えるアノード電極構造。
【0050】
条項2.第1の拡散バリア層と湿潤層との間に形成された第2の拡散バリア層をさらに備え、第2の拡散バリア層は第1の拡散バリア層とは異なる、条項1のアノード電極構造。
【0051】
条項3.第2の拡散バリア層が、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む、条項2項のアノード電極構造。
【0052】
条項4.第1の拡散バリア層がタンタル層であり、第2の拡散バリア層がチタン層である、条項2または3のアノード電極構造。
【0053】
条項5.第1の拡散バリア層が窒化タンタル層であり、第2の拡散バリア層がチタン層である、条項2または3に記載のアノード電極構造。
【0054】
条項6.リチウム金属層が、湿潤層と一緒に合金を形成する、条項1から5のいずれかのアノード電極構造。
【0055】
条項7.第1の拡散バリア層が、約100ナノメートルから約200ナノメートルの厚さを有する、条項1から6のいずれかのアノード電極構造。
【0056】
条項8.湿潤層が、約5ナノメートルから約20ナノメートルの厚さを有する、条項1から7のいずれかのアノード電極構造。
【0057】
条項9.条項1から8のいずれかのアノード電極構造を組み込んだ電池。
【0058】
条項10.電極構造の形成方法であって、銅箔上に第1の拡散バリア層を形成することであって、第1の拡散バリア層が、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む、第1の拡散バリア層を形成することと、第1の拡散バリア層の上に湿潤層を形成することであって、湿潤層が、シリコン(Si)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、これらの酸化物、これらの窒化物、またはこれらの組み合わせから選択される、湿潤層形成することと、湿潤層の上にリチウム金属層を形成することとを含む方法。
【0059】
条項11.湿潤層を形成することに先立ち、第1の拡散バリア層の上に第2の拡散バリア層を形成することをさらに含み、第2の拡散バリア層は第1の拡散バリア層とは異なる、条項10の方法。
【0060】
条項12.第2の拡散バリア層が、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはこれらの組み合わせを含む、条項11の方法。
【0061】
条項13.第1の拡散バリア層が、タンタルターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたタンタル層である、条項10から12のいずれかの方法。
【0062】
条項14.第1の拡散バリア層が、窒素含有環境内でタンタルターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積された窒化タンタル層である、条項10から13のいずれかの方法。
【0063】
条項15.第2の拡散バリア層が、チタンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたチタン層である、条項11から14のいずれかの方法。
【0064】
条項16.第2の拡散バリア層が、窒素含有環境内でチタンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積された窒化チタン層である、条項11から14のいずれかの方法。
【0065】
条項17.湿潤層が、シリコンターゲットを使用するPVDスパッタリングプロセスによって堆積されたシリコン層である、条項10から16のいずれかの方法。
【0066】
条項18.ローラ構成を使用して銅箔を真空チャンバ内にガイドすることをさらに含む、条項10から17のいずれかの方法。
【0067】
条項19.リチウムコーティング電極を形成するように動作可能な一体式処理ツールであって、以下の処理チャンバを通して材料の連続シートを輸送するように動作可能なリールツーリールシステムと、第1の拡散バリア層を材料の連続シートの上に堆積させるように動作可能な第1の処理チャンバと、第1の拡散バリア層の上に第2の拡散バリア層を堆積させるように動作可能な第2の処理チャンバと、第2の拡散バリア層の上に湿潤層を堆積させるように動作可能な第3の処理チャンバと、第2の拡散バリア層の上にリチウム金属の薄膜を堆積させるように動作可能な第4の処理チャンバとを備える一体式処理ツール。
【0068】
条項20.材料の連続シートが銅箔である、条項19の一体式処理ツール。
【0069】
要約すると、本開示の利点のいくつかは、リチウム金属/銅箔インターフェースの時間的/熱的安定性を確保するための、高融点金属/金属窒化物バリア膜の使用を含む。その結果、リチウム金属/銅箔インターフェースは、リチウム金属電池のアノードとして動作中に劣化を被らない。加えて、ここに記載されるバリア膜は、銅箔のリチウム誘起脆化を防止し、銅箔の機械的特性を保存し、さらには銅箔の断裂を最小化することを助ける。したがって、ここに記載されるバリア膜は、銅箔のロールツーロールの取扱いを容易にする。
【0070】
本開示の要素、またはそれらの例示的な態様または実装態様(複数可)を紹介するとき、冠詞「1つの(a、an)」および「本、この、前記(the、said)」は、要素のうちの1つまたは複数が存在することを意味する。
【0071】
用語「備える」、「含む」、および「有する」は、包括的であることが意図されており、列挙された要素以外にも追加の要素が存在しうることを意味する。
【0072】
以上の記述は本開示の実装態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱せずに、本開示の他の実装態様およびさらなる実装態様が考案されてよく、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって決定される。