IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7465277化学機械研磨における研磨パッドテクスチャのモニタリング
<>
  • 特許-化学機械研磨における研磨パッドテクスチャのモニタリング 図1
  • 特許-化学機械研磨における研磨パッドテクスチャのモニタリング 図2
  • 特許-化学機械研磨における研磨パッドテクスチャのモニタリング 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】化学機械研磨における研磨パッドテクスチャのモニタリング
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20240403BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20240403BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20240403BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240403BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B37/005 Z
B24B53/017 A
B24B53/00 A
H01L21/304 621D
H01L21/304 622M
H01L21/304 622R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021555614
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020022977
(87)【国際公開番号】W WO2020190869
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】62/821,935
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,907
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オスターヘルド, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シェリアン, ベンジャミン
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193970(JP,A)
【文献】特開2018-118372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0150052(US,A1)
【文献】国際公開第2016/111335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/12
B24B 37/005
B24B 53/017
B24B 53/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨のための装置であって、
研磨パッドを支持する表面を有するプラテンと、
前記研磨パッドの研磨面に当接して基板を保持するためのキャリアヘッドと、
前記研磨面に当接して砥粒体を押圧するためのパッドコンディショナと、
前記研磨パッドの画像を捕捉するために前記プラテンの上方に配置された撮像装置を含むインシトゥ研磨パッドモニタリングシステムと、
前記モニタリングシステムから前記画像を受け取り、前記画像に基づいて研磨パッド表面粗さの基準を生成するように構成されたコントローラと、
を含
前記コントローラは、機械学習ベースの画像処理システムとして動作するように構成される、装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記画像を前記画像処理システムに入力するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記機械学習ベースの画像処理システムは、教師あり学習モジュールを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記機械学習ベースの画像処理システムは、前記画像を受け取り且つ成分値を出力する次元削減モジュールを備え、前記コントローラは、前記画像に対する前記成分値を前記教師あり学習モジュールに入力するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記画像を前記教師あり学習モジュールに直接入力するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記教師あり学習モジュールを人工ニューラルネットワークとして動作させるように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラは、パラメータの値を含む他のデータを受け取るように構成され、前記画像上の前記研磨パッド表面粗さの基準および前記パラメータの値を生成するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記パラメータは、研磨制御パラメータ、状態パラメータ、研磨システム内のセンサからの測定値、または前記研磨システの外側のセンサによる前記研磨パッドの測定値を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記パラメータは、プラテン回転速度、スラリ分注速度、スラリ組成、前記研磨パッドを変更した以降の基板の数、または前記研磨パッドが前記プラテン上に装着される前のスタンドアロン計測ステーションによる前記研磨パッドの表面粗さの測定値を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは、研磨パッド表面粗さの前記基準に基づいて、コンディショニング処理を停止するか、またはコンディショニングパラメータを調整するかのうちの少なくとも1つを行うように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
基板をプラテン上の研磨パッドと接触させることと、
前記基板と前記研磨パッドとの間の相対運動を発生させることと、
光学センサを用いて前記研磨パッドの画像を捕捉することと、
機械学習ベースの画像処理システムに前記画像を入力することにより、前記研磨パッドの表面粗さの測定値を生成することと、
を含む、研磨の方法。
【請求項12】
トレーニング画像とトレーニング値との複数のペアを含むトレーニングデータを受け取ることと、前記トレーニングデータを使用して、前記機械学習ベースの画像処理システムにおいて教師あり学習アルゴリズムをトレーニングすることとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記トレーニング値は、表面粗さ値を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
研磨パッド表面粗さ測定値に基づいて、コンディショニング処理を停止すること、またはコンディショニングパラメータを調整することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記光学センサを前記研磨パッドにわたって半径方向に移動させることを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学機械研磨に使用される研磨パッドの光学式モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、シリコンウェハに導電層、半導電層、または絶縁層を連続して堆積させることによって、基板上に形成される。多種多様な製造処理において、基板上の層の平坦化が必要とされる。例えば、1つの製造ステップは、パターニングされた絶縁層上に導電性充填層を堆積させて、絶縁層のトレンチまたは穴を充填することを伴う。充填層は次いで、絶縁層の凸状パターンが露出するまで研磨される。平坦化の後、導電性充填層のうち絶縁層の凸状パターンの間に残っている部分が、基板上の薄膜回路間の導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインを形成する。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、一般に認められた1つの平坦化方法である。この平坦化方法では、典型的には、基板がキャリアヘッドに装着されることが必要になる。基板の露出面は、回転する研磨パッドに当接するように配置される。キャリアヘッドは、研磨パッドに当接して基板を押圧するために、基板に制御可能な負荷をかける。研磨液(砥粒を有するスラリなど)が、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
CMP処理がある一定の時間にわたって実施された後、基板および/または研磨パッドから除去された材料および/またはスラリ副生成物が蓄積することにより、研磨パッドの表面は、グレージング(目つぶれ)を起こすことがある。グレージングにより、研磨速度が鈍化すること、または、基板上の不均一性が増大することがありうる。
【0005】
典型的には、研磨パッドは、パッドコンディショナを用いたコンディショニング処理によって、望ましい表面粗さで維持される(かつ、グレージングが回避される)。パッドコンディショナは、研磨パッド上の不要な蓄積物を除去し、研磨パッドの表面を望ましい粗さ(asperity)に再生させるために、使用される。典型的なパッドコンディショナは、一般的にダイヤモンド砥粒が埋め込まれた砥粒ヘッドを含み、これを研磨パッド表面に当接して擦りつけて、パッドの質感を元に戻すことができる。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、化学機械研磨のための装置は、研磨パッドを支持する表面を有するプラテンと、研磨パッドの研磨面に当接して基板を保持するためのキャリアヘッドと、研磨面に当接して砥粒体を押圧するためのパッドコンディショナと、研磨パッドの画像を捕捉するためにプラテンの上方に配置された撮像装置を含むインシトゥ(その場の)研磨パッドモニタリングシステムと、モニタリングシステムから画像を受け取り、画像に基づいて研磨パッド表面粗さの基準(measure)を生成するように構成されたコントローラとを含む。
【0007】
実装は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含みうる。
【0008】
コントローラは、機械学習ベースの画像処理システムとして動作し、画像を画像処理システムに入力するように構成されてもよい。機械学習ベースの画像処理システムは、教師あり学習モジュールを含むことができる。機械学習ベースの画像処理システムは、画像および出力成分値を受け取るための次元削減(dimensional reduction)モジュールを含むことができ、コントローラは、画像に対する成分値を教師あり学習モジュールに入力するように構成することができる。コントローラは、画像を教師あり学習モジュールに直接入力するように構成されてもよい。コントローラは、教師あり学習モジュールを人工ニューラルネットワークとして動作させるように構成することができる。
【0009】
コントローラは、パラメータ用の値を含む他のデータを受け取るように構成されてもよく、画像およびパラメータの値に基づいて研磨パッド表面粗さの基準を生成するように構成されてもよい。パラメータは、研磨制御パラメータ、状態パラメータ、研磨システム内のセンサからの測定値、または研磨システム外のセンサによる研磨パッドの測定値であってもよい。パラメータは、プラテン回転速度、スラリ分注速度、スラリ組成、研磨パッドを変更した以降の基板の数、または研磨パッドがプラテン上に装着される前のスタンドアロン計測ステーションによる研磨パッドの表面粗さの測定値であってもよい。
【0010】
コントローラは、コンディショニング処理を停止するか、または研磨パッド表面粗さの基準に基づいてコンディショニングパラメータを調整するか、少なくとも一方を行うように構成されてもよい。
【0011】
撮像装置は、プラテン上を放射状に移動可能であってもよい。撮像装置は、プラテン上を横方向にスイングすることができるアーム上に取り付けることができる。
【0012】
別の態様では、研磨方法は、基板をプラテン上の研磨パッドに接触させることと、基板と研磨パッドとの間の相対運動を生成することと、光学センサで研磨パッドの画像を捕捉することと、機械学習ベースの画像処理システムに画像を入力することによって研磨パッドの表面粗さの測定値を生成することと、を含む。
【0013】
実施態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含みうる。
【0014】
複数のトレーニング画像のペアおよびトレーニング値を含むトレーニングデータを受け取ることができる。学習ベースの画像処理システムにおける教師あり学習アルゴリズムは、トレーニングデータを使用してトレーニングされてもよい。コンディショニング処理は、停止されてもよく、または、コンディショニングパラメータは、研磨パッド表面粗さの基準に基づいて調整されてもよい。
【0015】
特定の実装は、以下の利点のうちの1つまたは複数を含むが、これらに限定されない。研磨パッドの粗さは、非接触技術を用いて決定することができるので、研磨パッドへの汚染および損傷を回避することができる。研磨パッドの粗さは、正確かつ迅速に決定することができ、コンディショニング処理は適切に調整することができる。ウエハ間不均一性(WTWNU)を低減できる。粗さは、非接触技術を使用して決定することができるので、研磨パッドの汚染を回避することができる。
【0016】
1つまたは複数の実装の詳細を、添付の図面および以下の説明に明記する。その他の態様、特徴、および利点は、この説明および図面、ならびに特許請求の範囲から、自明となろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】研磨パッドの表面粗さを検出するように構成された光学式モニタリングシステムを含む化学機械研磨システムの、側面部分断面図である。
図2】化学機械研磨システムの概略上面図である。
図3】機械学習ベースの画像処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な図面における類似の参照記号は、類似の要素を示している。
【0019】
化学機械研磨処理は、例えば、上述のグレージング効果により、研磨パッドの表面粗さを低下させる傾向がある。コンディショニングは、表面粗さを回復させるために使用することができる。しかしながら、パッドがグレージングされる程度、ならびに
コンディショニングが表面粗さを回復させる程度は、研磨パッド全体にわたって不均一になることがありうる。その結果、コンディショニング後であっても、研磨パッドの表面粗さに不均一が生じることがある。さらに、コンディショニング技術は、パッド全体にわたって異なる速度でパッドを摩耗させることがあり、パッドの厚さに不均一性を生じさせ、研磨パッド表面に周期的なスクラッチングまたはスコーリングが残ることがある。表面粗さを測定するために、接触技術、例えば、プロフィロメータを使用することができるが、これは汚染のリスクを引き起こす可能性があり、既に必要とされている機器(コンディショナ、キャリアなど)が与えられているパッドに適用するには、全く実用的でないことがある。しかしながら、研磨パッドを画像化することができ、画像は表面テクスチャの測定値を出力するトレーニング済みの機械学習モデルに送ることができる。次いで、コントローラは、この測定値を使用して、目標の表面テクスチャを達成するために、または研磨パッド全体にわたる表面テクスチャの均一性を改善するために、コンディショニング処理を調整することができる。
【0020】
「表面テクスチャ」という用語は、本明細書では、Ra、Rms、RSk、またはRpなどの表面粗さ、および、研磨パッド上の通常の溝または穿孔パターンよりも小さいうねり(waviness)などの研磨パッド表面の他の不規則性を包含するために使用される。例えば、20ミルの深さの溝を仮定すると、表面テクスチャは、約40~50ミクロンまでの不規則性を含みうる。
【0021】
図1および図2は、化学機械研磨装置の研磨システム20の一例を示す。研磨システム20は、回転可能なディスク形状のプラテン24であって、その上に研磨パッド30が置かれている、プラテン24を含む。プラテン24は、軸25の周りで回転するよう動作可能である。プラテン24を回転させるために、例えば、モータ22が駆動シャフト28を回すことができる。研磨パッド30は、外層34と、より軟性のバッキング層32とを有する、二層研磨パッドであってもよい。研磨パッド30の上面は、研磨面36を提供する。
【0022】
研磨システム20は、研磨液38(スラリなど)を研磨パッド30上に分注するために、供給ポートまたは一体型の供給-洗浄アーム39を含みうる。
【0023】
研磨システム20はまた、研磨パッド30を砥いで、研磨面36を一定の砥粒状態に維持するための、研磨パッドコンディショナ60も含みうる。研磨パッドコンディショナ60は、ベースと、研磨パッド30上で横方向にスイープしうるアーム62と、アーム62によってベースに接続されたコンディショナヘッド64とを含む。コンディショナヘッド64は、砥粒面(例えば、コンディショナヘッド64によって保持されたディスク66の下面)を研磨パッド30に接触させて、研磨パッド30をコンディショニングする。砥粒面は回転可能であってよく、研磨パッドに当接する砥粒面の圧力は制御可能でありうる。
【0024】
いくつかの実装では、アーム62は、ベースに枢動可能に取り付けられ、往復するようにスイープして、コンディショナヘッド64を、研磨パッド30にわたって揺動(oscillatory)スイープ運動を行うように動かす。コンディショナヘッド64の運動は、衝突を防止するために、キャリアヘッド70の運動と同期されうる。
【0025】
コンディショナヘッド64の垂直運動と、研磨パッド30に対するコンディショニング面の圧力の制御とは、コンディショナヘッド64の上方又はコンディショナヘッド64内の垂直アクチュエータ68(例えば、コンディショナヘッド64に下向きの圧力を印加するよう配置された加圧可能チャンバ)によって提供されうる。あるいは、垂直運動および圧力制御は、アーム62とコンディショナヘッド64の全体を上昇させるベース内の垂直アクチュエータによって、または、アーム62の傾斜角度、ひいては研磨パッド30の上方のコンディショナヘッド64の高さを制御可能にしうる、アーム62とベースとの間の枢動接続によって、提供されうる。
【0026】
キャリアヘッド70は、基板10を研磨パッド30に当接して保持するよう、動作可能である。キャリアヘッド70は、支持構造物72(カルーセルまたは軌道など)から懸架され、キャリアヘッドが軸71の周りで回転しうるように、駆動シャフト74によってキャリアヘッド回転モータ76に接続される。オプションで、キャリアヘッド70は、(例えば、カルーセルまたは軌道72のスライダに沿って)横方向に、またはカルーセル自体の回転揺動によって、揺動しうる。稼働中、プラテンはその中心軸25の周りで回転し、キャリアヘッドは、その中心軸71の周りで回転し、かつ研磨パッド30の上面にわたって横方向に平行移動する。キャリアヘッド70は、基板10の裏面と接触する基板装着面を有する可撓膜80と、基板10上の種々のゾーン(例えば、種々の径方向ゾーン)に異なる圧力を印加するための、複数の加圧可能チャンバ82とを含みうる。キャリアヘッドは、基板を保持するための保持リング84も含みうる。
【0027】
研磨システム20は、研磨パッド30の表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)を表わす信号を生成する、インシトゥ光学式パッドモニタリングシステム40を含む。インシトゥ光学式パッドモニタリングシステム40は、撮像装置42(研磨パッドの上方、例えば、支持アーム44上に配置されたカメラなど)を含む。例えば、撮像装置42はラインスキャンカメラとであってよく、パッドモニタリングシステム40は、研磨パッド30がプラテン24の回転によりカメラ40の下をスイープするときに、ラインスキャンカメラによる複数の測定値から2D画像を生成するように構成することができる。代替的に、撮像装置42は2Dカメラであってもよい。撮像装置42は、研磨パッド30の表面36の一部の視野43を有することができる。カメラは、CCDアレイと、研磨パッド30の表面36上に撮像面を合焦させるための光学部品(例えば、レンズ)とを含むことができる。
【0028】
いくつかの実装では、撮像装置42は、固定された半径方向位置に配置され、研磨パッド30の固定された半径方向ゾーンを撮像する。この状況において、インシトゥパッドモニタリングシステム40は、研磨パッド30上の固定された半径方向位置において、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)についての測定値を生成することができる。
【0029】
しかしながら、いくつかの実装では、撮像装置42は、例えば研磨パッド30の半径に沿って横方向に移動可能である。例えば、図2を参照すると、支持アーム42を保持するベース46が枢動するように構成され、それによって、研磨パッド30を横切ってアーム42(矢印A参照)を揺動させ、撮像装置42を弧状の経路で運ぶことができる。別の例として、支持アーム44は、リニアレールであってもよく、または、リニアレールを含んでもよく、撮像装置42は、レールに沿って、リニアスクリューを有するステッパモータなどのリニアアクチュエータ46によって移動可能であってもよい。異なる半径方向ゾーンに対して研磨パッド30の画像を撮ることによって、インシトゥパッドモニタリングシステム40は、研磨パッド30上の異なる半径方向位置において、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)についての測定値を生成することができる。
【0030】
コントローラ90(例えば、汎用のプログラマブルデジタルコンピュータ)は、インシトゥ研磨パッドモニタリングシステム40からの画像を受け取り、この画像から研磨パッド30の表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の基準を生成するよう構成されうる。これに関連して、コントローラ90(または表面テクスチャの測定値を提供するソフトウェアの部分)は、パッドモニタリングシステム40の一部と見なすことができる。上述のように、研磨パッド30の表面粗さは、研磨およびコンディショニング処理により、経時的に(例えば、複数の基板を研磨する過程で)変化する。
【0031】
また、コントローラ90は、インシトゥパッドモニタリングシステム40から受け取った表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の値に基づいて、パッドコンディショナ60システムを制御するように構成することができる。例えば、研磨パッド30の表面テクスチャの基準が閾値を満たすと、コントローラ90はコンディショニング処理を停止することができる。別の例として、研磨パッドの表面テクスチャが別の閾値を満たす場合、コントローラ90は、研磨システム20のオペレータに、例えば、研磨またはコンディショニング動作が期待通りに進行していないという警告を発することができる。
【0032】
別の例として、インシトゥパッドモニタリングシステム40が、研磨パッド30上の異なる半径方向位置(回転軸25に対する)で、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)に関する測定値を生成する場合には、コントローラ90は、その測定値を使用してパッドコンディショナ60を制御し、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の均一性を改善することができる。例えば、コントローラ90は、コンディショナアーム62のスイープを制御して、研磨パッド上の異なる半径方向ゾーンにおけるコンディショナディスク64の滞留時間を制御することができる。例えば、半径方向ゾーン内の表面粗さを高めることが必要な場合には、滞留時間を長くすることができ、一方、半径方向ゾーン内の表面粗さを減少させる必要がある場合には、滞留時間を短くすることができる。
【0033】
図3を参照すると、インシトゥパッドモニタリングシステム40からの画像は、トレーニングされたマシンビジョン画像処理システム100に供給される。マシンビジョン画像処理システム100は、撮像装置42の視野43内の研磨面36の部分のテクスチャ(例えば、表面粗さ)を表す値を出力するように構成される。マシンビジョン画像処理システム100は、コントローラ90の一部として実装することができる。マシンビジョン画像処理システム100は、様々な機械学習技術を組み込むことができる。例えば、マシンビジョン画像処理システム100は、ニューラルネットワークを含むことができるが、他のアプローチ、例えば、ナイーブベイズ分類器またはサポートベクトルマシンも可能である。
【0034】
図3は、機械学習ベースの画像処理システム100用に実装可能な機能ブロックを示す。これらの機能ブロックは、画像の次元削減を実行するためのオプションの次元削減モジュール110と、(ニュートラルネットワークとして実装されていることを示す)教師あり学習モジュール120とを含むことができる。教師あり学習モジュール120は、教師あり学習アルゴリズムを実装して、画像(または、画像から次元削減したデータ)に基づいて、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の測定値を出力する関数を生成する。上述のように、これらの機能ブロックは、複数のコンピュータに分散されうる。
【0035】
教師あり学習モジュール120の出力は、表面テクスチャの測定値に基づいて研磨処理を調整するために、コントローラ90の一部として実装することができる処理制御システム130に供給することができる。例えば、処理制御システム130は、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の測定値に基づいて、研磨表面36の表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の不均一性を低減するために、研磨処理の間に、コンディショニング終点を検出してコンディショニングを停止すること、および/またはコンディショニングパラメータ(例えば、スイーププロファイル、コンディショナヘッド圧力など)を調整することができる。
【0036】
機械学習モジュール120がニューラルネットワークであると仮定すると、ニューラルネットワークは、主成分の各々のための複数の入力ノード122と、複数の隠れノード124(以下では「中間ノード」とも称される)と、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の測定値を生成する1つの出力ノード126とを含む。一般的に、隠れノード124は、隠れノードが接続されている入力ノード122からの値の加重和の非線形関数である値を出力する。
【0037】
例えば、(ノードkで指定された)ある隠れノード124の出力は、次のように表わされうる。
tanh(0.5*ak1(I)+ak2(I)+…+akM(I)+b) 式1
ここで、tanhは双曲線正接であり、akxはk番目の中間ノードと(M個の入力ノードのうちの)x番目の入力ノードとの間の接続の重みであり、かつ、IはM番目の入力ノードの値である。しかしながら、tanhの代わりに他の非線形関数(例えば、正規化線形ユニット(ReLU)関数およびその変種)も使用されうる。
【0038】
オプションの次元削減モジュール110は、成分値112(例えばL個の成分値)がより限られた数になるよう、画像を削減する。ニューラルネットワーク120は、画像が削減される各成分に対する入力ノード122を含む。例えば、次元削減モジュール110がL個の成分値を生成する場合には、ニューラルネットワーク120は少なくとも入力ノードN、N…Nを含む。
【0039】
しかしながら、教師あり学習モジュール120は、オプションにより、画像または成分値以外の1つまたは複数の入力114を受け取ることができる。他の入力114は、研磨システム内の他のセンサからの測定値、例えば、温度センサによるパッドの温度の測定値、またはフローセンサからのスラリ流量の測定値を含むことができる。他の入力は、研磨制御パラメータの値、例えばプラテン回転速度、スラリ流量、またはスラリ組成を含むことができる。研磨制御パラメータ値は、コントローラ90によって記憶された研磨レシピから得ることができる。他の入力は、コントローラによって追跡される状態パラメータ、例えば、使用されている様々なパッドの(製造業者、ブランド名、パッド組成、溝パターンなどの)識別、またはパッドが変更されてから研磨された基板の数を含みうる。他の入力は、パッドがプラテン上に装着される前に、スタンドアロン計測ステーションによる研磨パッドの表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の測定値など、研磨システムの一部ではないセンサからの測定値を含みうる。これにより、教師あり学習モジュール120は、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の計算において、これらの他の処理または環境変数を考慮することができる。教師あり学習モジュール120がニューラルネットワークであると仮定すると、ニューラルネットワークは、他のデータを受け取るための1つまたは複数の他の入力ノード(たとえば、ノード122a)を含むことができる。
【0040】
ニューラルネットワーク120のアーキテクチャは、深度と幅が変動しうる。例えば、ニューラルネットワーク120は、単一列の隠れノード124伴って図示されているが、複数の列を含むこともある。中間ノード124の数は、入力ノード122の数と等しく、またはそれよりも多くなりうる。ニューラルネットワークは、完全に接続されていても、畳み込みネットワークであってもよい。
【0041】
例えば、デバイスウエハの処理に使用される前に、教師あり学習モジュール120を構成する必要がある。
【0042】
構成手順の一部として、教師あり学習モジュール120は、複数のトレーニング画像と、複数のトレーニング値、例えば、表面テクスチャ値(表面粗さ値など)とを含みうるトレーニングデータを受け取る。各基準画像は、トレーニング値を有する。すなわち、トレーニングデータは画像とトレーニング値とのペアを含む。
【0043】
例えば、画像は、様々なパッドサンプルから得ることができる。加えて、サンプルの表面粗さの測定は、計測装置、例えば、接触プロフィロメータ、干渉計または共焦点顕微鏡で行うことができる。したがって、各トレーニング画像は、画像が撮影されたサンプルの表面粗さであるトレーニング値に関連付けることができる。
【0044】
いくつかの実装では、データ記憶装置は、トレーニングデータの複数の組を記憶することができる。トレーニングデータの異なる組は、異なるタイプの研磨パッド、例えば、異なる組成および/または溝パターンに対応することができる。教師あり学習モジュール120は、半導体製造プラントのオペレータから、例えば、ユーザインターフェースを介して、様々なトレーニングデータの組を受け取ることができる。
【0045】
教師あり学習モジュール120のトレーニングは、従来の技法を使用して実行することができる。例えば、ニューラルネットワークの場合、トレーニングは、トレーニング画像およびトレーニング値を使用してバックプロパゲーションによって実行することができる。例えば、ニューラルネットワークがトレーニングモードで動作している間、トレーニング画像の低減された次元数値は、それぞれの入力ノードN、N…Nに供給され、トレーニング値Vは、出力ノード126に供給される。これは、画像およびトレーニング値の各ペアについて繰り返すことができる。教師あり学習モジュール120が、画像または成分値以外の入力を受け取る場合、これらのパラメータの値を、トレーニングデータとして機械学習モジュールに供給することもできる。
【0046】
トレーニングが実行されると、次に、例えば上述のように、教師あり学習モジュールのトレーニングされたインスタンス化を使用することができる。すなわち、基板の処理中に、研磨パッドの画像ならびに他のパラメータ値をトレーニングされた教師あり学習モジュール120に送ることができ、この学習モジュールは、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)に対する値を出力する。次いで、表面テクスチャ(例えば、表面粗さ)の値は、例えば、上述のように、コンディショニング動作を制御するために使用することができる。
インシトゥ研磨パッドモニタリングシステムは、様々な研磨システムにおいて使用されうる。研磨面と基板との間の相対運動を提供するために、研磨パッドとキャリアヘッドのいずれか、または両方が移動しうる。研磨パッドは、プラテンに固定された円形(または他の何らかの形状)のパッド、供給ローラと巻き取りローラとの間に延在するテープ、または連続したベルトでありうる。研磨パッドは、プラテン上に固定されていることも、研磨の動作と動作の間にプラテンの上で漸進することも、研磨中にプラテンの上で連続的に駆動されることもある。パッドが研磨中にプラテンに固定されていることも、研磨中にプラテンと研磨パッドとの間に流体ベアリングが存在することもある。研磨パッドは、標準的な(例えば充填物を含むか若しくは含まないポリウレタン)粗いパッドでも、軟性パッドでも、又は固定砥粒パッドでもありうる。
【0047】
加えて、前述の説明は研磨中のモニタリングに焦点を当てているが、研磨パッドの測定値は、基板が研磨される前または研磨された後(例えば、基板が研磨システムに移送されている間)に得ることも可能である。
【0048】
コントローラおよびその機能的動作は、デジタル電子回路において、またはコンピュータのソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて、またはこれらの組み合わせにおいて、実装されうる。動作を実行するように「構成」されたコントローラは、実際に動作を実行するのに十分なソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアを有し、単に動作を実行するようにプログラムまたは修正することができるだけではない。
【0049】
実施形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品として、すなわち、データ処理装置(プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータなど)による実行のため、またはかかるデータ処理装置の動作を制御するために、情報キャリア(例えば、非一過性のマシン可読記憶媒体、または伝播信号など)において実際に具現化される、1つまたは複数のコンピュータプログラムとして、実装可能である。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーションまたはコードとしても知られている)は、コンパイラ型言語またはインタプリタ型言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書くことができ、またスタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくは計算環境で使用するのに適している他のユニットとして配置することを含め、任意の形で配置することができる。1つのコンピュータプログラムは、必ずしも1つのファイルに対応しない。プログラムは、他のプログラムもしくはデータを保持するファイルの一部分、対象のプログラム専用の単一のファイル、または複数の連携しているファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部分を収納するファイル)に保存することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように配置すること、あるいは1つの場所にある、または複数の場所にわたって分散された、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように配置することができる。
【0050】
本明細書に記載のプロセスおよび論理フローは、入力データで動作しかつ出力を生成することによって機能を実施するために1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する、1つまたは複数のプログラマブルプロセッサによって実施されうる。プロセスおよび論理フローは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)といった特殊用途の論理回路によって実施されてもよく、かつ、装置が、かかる特殊用途の論理回路として実装されることも可能である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態について説明してきた。それでもなお、本発明の本質および範囲から逸脱することなく様々な改変が行われうることが、理解されよう。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3