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特許7465283シリコン系粘着性保護フィルム及びこれを含む光学部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】シリコン系粘着性保護フィルム及びこれを含む光学部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240403BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240403BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20240403BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J183/04
C09J183/07
C09J11/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021562822
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2020005285
(87)【国際公開番号】W WO2020218806
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0046923
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ス,ヨ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ ジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イル ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ボン ソ
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096858(WO,A1)
【文献】特開平05-098239(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056167(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/009175(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/163040(WO,A1)
【文献】特開2013-107884(JP,A)
【文献】特表2018-522969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 183/04
C09J 183/07
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン、有機ポリシロキサン樹脂、シロキサン系イオン性化合物、架橋剤及びヒドロシリル化触媒を含む組成物で形成されるシリコン系粘着性保護フィルムであって、
アルケニル基含有有機ポリシロキサンは、下記の成分(i)及び下記の成分(ii)の混合物を含み、
成分(i):一分子当たりケイ素が結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン
成分(ii):一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン
前記有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(前記R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)及びSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂を含む、シリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項2】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力が約3gf/25mm以下である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項3】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記の式1の剥離力上昇率が約50%以下である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[式1]
剥離力上昇率=(P2-P1)/P1x100
(前記式1において、P1は、シリコン系粘着性保護フィルム及び被着体の試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/25mm)、
P2は、前記試片を50℃で3日間放置した後の、前記試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する剥離力(単位:gf/25mm)。
【請求項4】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記の式2の残留剥離力低下率が約25%以下である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[式2]
残留剥離力低下率=(M2-M1)/M2x100
(前記式2において、
M1は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを媒介して合わせることによって試片を製造し、製造した試片を50℃で3日間放置し、25℃で30分間冷却させ、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に粘着テープを粘着し、25℃で30分経過した後、前記被着体から前記粘着テープを剥離したときの剥離力(単位:gf/25mm)、
M2は、前記粘着テープの前記シリコン系粘着性保護フィルムが粘着されていない最初の被着体に対する剥離力(単位:gf/25mm)。
【請求項5】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、面抵抗が約1.0X1010Ω/□乃至約1.0X1013Ω/□である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項6】
前記シロキサン系イオン性化合物は、シロキサン基が結合された、陽イオンと陰イオンの結合体を含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項7】
前記シロキサン基は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を含有しないシロキサン基を含む、請求項6に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項8】
前記陽イオンは、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム又はトリアゾリウム陽イオンを含み、
前記陰イオンは、ペルフルオロアルキルスルホネート、シアノペルフルオロアルキルスルホニルイミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルキルスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチドのうち1種以上を含む、請求項6に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項9】
前記シロキサン系イオン性化合物は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.001重量部乃至約3重量部で含まれる、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項10】
前記有機ポリシロキサン樹脂は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を有しない、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項11】
前記有機ポリシロキサン樹脂のうちRSiO1/2単位(このとき、前記R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)とSiO4/2単位のRSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、約0.5:1乃至約1.5:1である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項12】
前記有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.01重量部乃至約20重量部で含まれる、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項13】
前記混合物100重量部のうち前記成分(i)は約30重量部乃至約70重量部で、前記成分(ii)は約30重量部乃至約70重量部で含まれる、請求項に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項14】
前記組成物はアンカー剤をさらに含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項15】
光学フィルム;及び前記光学フィルムの一面に形成された請求項1乃至請求項14のうちいずれか1項のシリコン系粘着性保護フィルムを含む、光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン系粘着性保護フィルム及びこれを含む光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学表示装置の使用、保管及び製造環境が苛酷になっている。また、ウェアラブル装置、ポータブル装置などの新しい光学表示装置に対する関心が高まっている。これによって、光学表示装置のパネルを保護する粘着性保護フィルムに対しても多くの物性が要求されている。特に、光学表示装置のパネルが薄膜化及び柔軟化されながら、粘着性保護フィルムの除去時に、パネルの損傷が少なく、苛酷な条件でも物性の変化が少ない粘着性保護フィルムの開発が要求されている。
【0003】
これによって、アクリレート系又はウレタンアクリレート系粘着性保護フィルムが開発されている。しかし、アクリレート系又はウレタンアクリレート系粘着性保護フィルムは、粘着性保護フィルムを被着体に付着し、長期間放置したとき、被着体に対する剥離力が過度に上昇することによって、被着体から剥離したときに被着体の損傷及び/又は変形が多く生じる可能性があり、粘着性保護フィルムを被着体から容易に除去しにくいので、工程性が低下し得るという限界を有する。
【0004】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第2012-0050136号などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被着体に対する優れた保護効果、優れたウェッティング性及び優れた段差埋め性を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、低い剥離力上昇率を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、残留剥離力低下率が大きくなく、残渣特性に優れ、被着体に粘着した後で剥離させたとき、被着体の汚染及び損傷が生じないようにするシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、帯電防止効果に優れたシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点は、シリコン系粘着性保護フィルムである。
【0010】
1.シリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサン、有機ポリシロキサン樹脂、シロキサン系イオン性化合物、架橋剤及びヒドロシリル化触媒を含む組成物で形成され、前記有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(前記R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)及びSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂を含む。
【0011】
2.1において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力が約3gf/25mm以下であってもよい。
【0012】
3.1から2において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記の式1の剥離力上昇率が約50%以下であってもよい:
[式1]
剥離力上昇率=(P2-P1)/P1x100
(前記式1において、P1は、シリコン系粘着性保護フィルム及び被着体の試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/25mm)
P2は、前記試片を50℃で3日間放置した後の、前記試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する剥離力(単位:gf/25mm)。
【0013】
4.1から3において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記の式2の残留剥離力低下率が約25%以下であってもよい:
[式2]
残留剥離力低下率=(M2-M1)/M2x100
(前記式2において、M1は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを媒介して合わせることによって試片を製造し、製造した試片を50℃で3日間放置し、25℃で30分間冷却させ、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に粘着テープを粘着し、25℃で30分経過した後、前記被着体から前記粘着テープを剥離したときの剥離力(単位:gf/25mm)
M2は、前記粘着テープの前記シリコン系粘着性保護フィルムが粘着されていない最初の被着体に対する剥離力(単位:gf/25mm)。
【0014】
5.1から4において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、面抵抗が約1.0X1010Ω/□乃至約1.0X1013Ω/□であってもよい。
【0015】
6.1から5において、前記シロキサン系イオン性化合物は、シロキサン基が結合された、陽イオンと陰イオンの結合体を含んでもよい。
【0016】
7.6において、前記シロキサン基は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を含有しないシロキサン基を含んでもよい。
【0017】
8.6において、前記陽イオンは、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム又はトリアゾリウム陽イオンを含み、前記陰イオンは、ペルフルオロアルキルスルホネート、シアノペルフルオロアルキルスルホニルイミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルキルスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチドのうち1種以上を含んでもよい。
【0018】
9.1から8において、前記シロキサン系イオン性化合物は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.001重量部乃至約3重量部で含まれてもよい。
【0019】
10.1から9において、前記有機ポリシロキサン樹脂は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を有しなくてもよい。
【0020】
11.1から10において、前記有機ポリシロキサン樹脂のうちRSiO1/2単位(このとき、前記R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)とSiO4/2単位のRSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、約0.5:1乃至約1.5:1であってもよい。
【0021】
12.1から11において、前記有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.01重量部乃至約20重量部で含まれてもよい。
【0022】
13.1から12において、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンは、下記の成分(i)及び下記の成分(ii)の混合物を含んでもよい:
成分(i):一分子当たりケイ素が結合された炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン。
【0023】
14.13において、前記混合物100重量部のうち、前記成分(i)は約30重量部乃至約70重量部で含まれ、前記成分(ii)は約30重量部乃至約70重量部で含まれてもよい。
【0024】
15.14において、前記組成物は、アンカー剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の光学部材は、光学フィルム、及び前記光学フィルムの一面に形成された本発明のシリコン系粘着性保護フィルムを含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、被着体に対する優れた保護効果、優れたウェッティング性及び優れた段差埋め性を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【0027】
本発明は、低い剥離力上昇率を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【0028】
本発明は、残留接着力低下率が大きくなく、残渣特性に優れ、被着体に粘着した後で剥離させたとき、被着体の汚染及び損傷が生じないようにするシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【0029】
本発明は、帯電防止効果に優れたシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[発明を実施するための最善の形態]
以下、本発明の各実施例をより詳細に説明する。しかし、本出願に開示された技術は、ここで説明する各実施例に限定されなく、他の形態に具体化することも可能である。但し、ここで紹介する各実施例は、開示された内容を徹底的且つ完全にするために、そして、当業者に本出願の思想を十分に伝達するために提供されるものである。
【0031】
本明細書において、「ビニル基」(Vi)は、*-CH=CH(*は連結部位)を意味する。
【0032】
本明細書において、「ヘキセニル基」(Hex)は、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基又は5-ヘキセニル基、好ましくは5-ヘキセニル基になってもよい。
【0033】
本明細書において、「Me」はメチル基、「Ph」はフェニル基になってもよい。
【0034】
本明細書において、「被着体」は、ガラス板(好ましくは、無アルカリガラス板)、又は、ポリイミドフィルム、アクリルフィルム、ポリアクリルアミドフィルムなどのプラスチックフィルムを含んでもよい。好ましくは、被着体はガラス板になってもよい。
【0035】
本明細書において、剥離力の測定時、剥離温度は23℃乃至28℃、好ましくは23℃乃至26℃になってもよい。
【0036】
本明細書において、数値範囲の記載時、「X乃至Y」は、X以上Y以下(X≦、そして、≦Y)を意味する。
【0037】
本発明の発明者は、下記の詳述するアルケニル基含有有機ポリシロキサン、架橋剤及びヒドロシリル化触媒を含み、下記の詳述する有機ポリシロキサン樹脂及びシリコン系イオン性化合物をさらに含む組成物でシリコン系粘着性保護フィルムを形成した。
【0038】
シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力に優れ、被着体保護効果に優れており、被着体にシリコン系粘着性保護フィルムを粘着した後、保管するときの剥離力上昇が低いので、被着体からシリコン系粘着性保護フィルムを剥離したとき、被着体の変形及び/又は損傷が生じないので保管安定性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する段差埋め性及び/又はウェッティング性に優れ、被着体にシリコン系粘着性保護フィルムを粘着させたときに気泡などが発生しないので、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の切断時の工程性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に粘着した後で剥離させたとき、残留剥離力低下率が改善され、被着体の汚染及び損傷が生じないので工程性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは、面抵抗が下記の詳述する範囲を満足することによって帯電防止性に優れる。
【0039】
以下、本発明の一実施例のシリコン系粘着性保護フィルムを説明する。
【0040】
シリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサン、有機ポリシロキサン樹脂、シロキサン系イオン性化合物、架橋剤及びヒドロシリル化触媒を含む組成物で形成され、前記有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(前記R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)及びSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂を含む。
【0041】
本発明の前記組成物において、有機ポリシロキサン樹脂を含まない場合、剥離力上昇率が高くなるという問題があり得る。本発明の前記組成物において、シロキサン系イオン性化合物を含まない場合、剥離力上昇率が高く、残留剥離力低下率が高くなるという問題があり得る。
【0042】
<アルケニル基含有有機ポリシロキサン>
アルケニル基含有有機ポリシロキサンは、シリコン系粘着性保護フィルムのマトリックスを形成する。
【0043】
アルケニル基含有有機ポリシロキサンは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンを単独で含んでもよいが、好ましくは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物になってもよい。具体的に、アルケニル基含有有機ポリシロキサンは、下記の成分(i)及び下記の成分(ii)の混合物を含むことによって、被着体に対する剥離力が約3gf/25mm以下になるようにし、その結果、被着体に対する剥離力に優れ、被着体保護効果に優れながらも、被着体に粘着した後で被着体から容易に除去され得る。一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力が約0gf/25mm超過約3gf/25mm以下、例えば、約1gf/25mm乃至約3gf/25mmになってもよい。
【0044】
成分(i):一分子当たりケイ素が結合された炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン。
【0045】
アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(i)のみを含む場合は、段差埋め性及び/又はウェッティング性が低下するという問題がある。一方、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(ii)のみを含む場合は、剥離力が上昇し、残留粘着力が低下するという問題がある。
【0046】
成分(i)は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力が過度に高くなるという問題を防止し、本発明の剥離力を確保することができる。
【0047】
成分(i)において、前記炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基は、例えば、ビニル基、又は炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基であって、プロフェニル基、ブテニル基、ペンテニル基又はヘキセニル基になってもよく、好ましくはビニル基又はヘキセニル基、さらに好ましくはヘキセニル基になってもよい。アルケニル基、さらに好ましくはヘキセニル基は、速い反応速度によって架橋密度を高め、経時剥離力を制御するという効果を有する。
【0048】
成分(i)は、線形のアルケニル基側鎖含有有機ポリシロキサンであって、側鎖に炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン単位を含んでもよい。成分(i)は、両末端にビニル基を含まなくてもよい。
【0049】
例えば、成分(i)は、RSiO2/2単位を含み、前記Rは、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、好ましくはビニル基又はヘキセニル基、さらに好ましくはヘキセニル基になってもよい。また、前記Rは、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基になってもよく、例えば、メチル基、エチル基又はプロピル基などになってもよい。
【0050】
成分(i)のうちRSiO2/2単位は、前記有機ポリシロキサンのうち約0.01mmol/g乃至約0.5mmol/g、好ましくは約0.1mmol/g乃至約0.3mmol/gで含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な架橋密度を有することができる。
【0051】
一具体例において、成分(i)は、下記の化学式1の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化1]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式1において、
は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、
は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、又は炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
一具体例において、成分(i)は、末端キャッピングされ、下記の化学式1-1の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化1-1]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式1-1において、
は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、
は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、又は炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、
、R、R、R、R、R10は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
前記化学式1又は化学式1-1の有機ポリシロキサンは、分子量が約5万乃至約20万、好ましくは約7万乃至約15万になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な架橋密度を有することができる。
【0052】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)は、一成分系有機ポリシロキサンになってもよい。
【0053】
好ましくは、成分(i)は、(Vi(CH)SiO2/2)及び((CHSiO2/2)を有する有機ポリシロキサン、(Vi(CH)SiO2/2)を有する有機ポリシロキサン、(Hex(CH)SiO2/2)及び((CHSiO2/2)を有する有機ポリシロキサン、及び(Hex(CH)SiO2/2)を有する有機ポリシロキサンのうち1種以上を含んでもよい。
【0054】
好ましくは、成分(i)は、シロキサン単位として(Vi(CH)SiO2/2)及び((CHSiO2/2)のみからなる有機ポリシロキサン、シロキサン単位として(Vi(CH)SiO2/2)のみからなる有機ポリシロキサン、シロキサン単位として(Hex(CH)SiO2/2)及び((CHSiO2/2)のみからなる有機ポリシロキサン、及びシロキサン単位として(Hex(CH)SiO2/2)のみからなる有機ポリシロキサンのうち1種以上を含んでもよい。
【0055】
好ましくは、成分(i)は、(CHSiO-(Hex(CH)SiO2/2)x((CHSiO2/2)y-Si(CH(0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)になってもよい。
【0056】
一具体例において、成分(i)は、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0057】
有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)と成分(ii)の総合100重量部のうち成分(i)は、約30重量部乃至約70重量部、好ましくは約40重量部乃至約60重量部で含まれてもよい。前記範囲で、剥離力上昇を制御しながらも優れたウェッティング性を有することができる。例えば、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)と成分(ii)の総合100重量部のうち成分(i)は、約30重量部、31重量部、32重量部、33重量部、34重量部、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部、59重量部、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、66重量部、67重量部、68重量部、69重量部又は70重量部で含まれてもよい。
【0058】
成分(ii)は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力を高め、本発明の剥離力を確保することができる。
【0059】
成分(ii)は、側鎖又は両末端に、ケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンになってもよい。
【0060】
一具体例において、成分(ii)は、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0061】
一具体例において、成分(ii)は、両末端に、ケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンであって、ジオルガノシロキサン単位を含んでもよい。例えば、成分(ii)は、下記の化学式2の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化2]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式2において、
、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、Rは、それぞれ独立してビニル基又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、及びRのうち一つ以上はビニル基、
、R、R10は、それぞれ独立してビニル基、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、及びR10のうち一つ以上はビニル基、
0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1)
前記化学式2の有機ポリシロキサンは、分子量が約1万乃至約15万、好ましくは約5万乃至約10万になってもよい。前記範囲で、適切な反応性を有することができる。
【0062】
好ましくは、前記化学式2の有機ポリシロキサンは、Vi(CHSiO-((CHSiO2/2)n-SiO(CHVi(nは、100超過2000の整数)になってもよい。
【0063】
他の具体例において、成分(ii)は、側鎖にケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンになってもよい。例えば、成分(ii)は、下記の化学式3の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化3]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y(RSiO2/2)z
(前記化学式3において、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基又は炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、及びRのうち一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
一具体例において、R、及びRのうち一つ以上、好ましくは、R、Rの全ては、炭素数6乃至炭素数10のアリール基になってもよい。
【0064】
一具体例において、R、及びRのうち一つ以上、好ましくは、R、Rの全ては、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基になってもよい。
【0065】
好ましくは、前記化学式3の有機ポリシロキサンは、(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)y-(PhSiO2/2)zを含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0066】
一具体例において、成分(ii)は、末端キャッピングされ、下記の化学式3-1の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化3-1]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y(RSiO2/2)zSiR101112
(前記化学式3-1において、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、及びRのうち一つ以上はビニル基、
、R、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
好ましくは、前記化学式3-1の有機ポリシロキサンは、(CHSiO-(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)y-(PhSiO2/2)z-Si(CHを含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0067】
前記化学式3又は化学式3-1の有機ポリシロキサンは、分子量が約5万乃至約20万、好ましくは約10万乃至約15万になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な架橋密度を有することができる。
【0068】
更に他の具体例において、成分(ii)は、側鎖にケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンになってもよい。例えば、成分(ii)は、下記の化学式4の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化4]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式4において、
、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基又は炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、及びRのうち一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
好ましくは、前記化学式4の有機ポリシロキサンは、(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)yを含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0069】
一具体例において、成分(ii)は、末端キャッピングされ、下記の化学式4-1の有機ポリシロキサンになってもよい:
[化4-1]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式4-1において、
、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、及びRのうち一つ以上はビニル基、
、R、R、R、R、R10は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
好ましくは、前記化学式4-1の有機ポリシロキサンは、(CHSiO-(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)y-Si(CHを含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0070】
前記化学式4又は化学式4-1の有機ポリシロキサンは、分子量が約5万乃至約20万、好ましくは約10万乃至約15万になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な架橋密度を有することができる。
【0071】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、一成分系有機ポリシロキサンになってもよい。
【0072】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式2の有機ポリシロキサンのみになってもよい。
【0073】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式3の有機ポリシロキサンのみになってもよい。
【0074】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式2の有機ポリシロキサンと前記化学式4の有機ポリシロキサンの混合物になってもよい。
【0075】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式3の有機ポリシロキサンと前記化学式4の有機ポリシロキサンの混合物になってもよい。
【0076】
有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)と成分(ii)の総合100重量部のうち成分(ii)は、約30重量部乃至約70重量部、好ましくは約40重量部乃至約60重量部で含まれてもよい。前記範囲で、適切な初期剥離力を示し、優れたウェッティング性を有する。例えば、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)と成分(ii)の総合100重量部のうち成分(ii)は、約30重量部、31重量部、32重量部、33重量部、34重量部、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部、59重量部、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、66重量部、67重量部、68重量部、69重量部又は70重量部で含まれてもよい。
【0077】
<有機ポリシロキサン樹脂>
有機ポリシロキサン樹脂は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、粘着性保護フィルムの初期剥離力を高め、経時剥離力の上昇を防止し、剥離力上昇率を制御することができる。
【0078】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは、下記の式1の剥離力上昇率が約50%以下、例えば、約0%乃至約30%になってもよい:
[式1]
剥離力上昇率=(P2-P1)/P1x100
(前記式1において、
P1は、シリコン系粘着性保護フィルム及び被着体の試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/25mm)
P2は、前記試片を50℃で3日間放置した後の、前記試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する剥離力(単位:gf/25mm)。
【0079】
前記式1において、P1、P2は、それぞれ約0gf/25mm超過約3gf/25mm以下、例えば、約1gf/25mm乃至約3gf/25mmになってもよい。
【0080】
有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(M単位とも言う)及びSiO4/2単位(Q単位とも言う)を含む。前記式において、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はN-プロピル基などのプロピル基になってもよい。
【0081】
一具体例において、有機ポリシロキサン樹脂は、アルケニル基含有有機ポリシロキサンに対して非反応性になってもよい。
【0082】
一具体例において、有機ポリシロキサン樹脂は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、好ましくはビニル基を含まない。
【0083】
有機ポリシロキサン樹脂のうちRSiO1/2単位及びSiO4/2単位のうちRSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、約0.5:1乃至約1.5:1、好ましくは約0.8:1乃至約1.2:1になってもよい。前記「モル比率」は、シリコン系粘着保護フィルムに対してシリコンNMRを測定し、SiO1/2単位とSiO4/2単位との間の面積比を通じて得ることができるが、これに制限されない。
【0084】
有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.01重量部乃至約20重量部、好ましくは約0.1重量部乃至約10重量部、さらに好ましくは約0.5重量部乃至約5重量部で含まれてもよい。前記範囲で、適切な初期剥離力を示しながら経時剥離力上昇の制御効果を奏し得る。例えば、前記有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.01重量部、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.05重量部、0.06重量部、0.07重量部、0.08重量部、0.09重量部、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部又は20重量部で含まれてもよい。
【0085】
<シロキサン系イオン性化合物>
シロキサン系イオン性化合物は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、初期剥離力を低下させ、経時剥離力を低下させることによって前記式1の剥離力上昇率をさらに低下させ、残留剥離力低下率を低下させることができる。また、シロキサン系イオン性化合物は、面抵抗を低下させることによって、シリコン系粘着性保護フィルムが帯電防止性を確保するようにし、その結果、被着体からのシリコン系粘着性保護フィルムの除去を容易にする。例えば、シリコン系粘着性保護フィルムは、面抵抗が約1.0X1010Ω/□乃至約1.0X1013Ω/□、好ましくは、約1.0X1011Ω/□乃至約1.0X1013Ω/□になってもよい。
【0086】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは、下記の式2の残留剥離力低下率が約25%以下、好ましくは約0%乃至約25%になってもよく、前記範囲で、被着体に粘着した後で剥離させたとき、被着体の汚染及び損傷が生じることを防止することができる:
[式2]
残留剥離力低下率=(M2-M1)/M2x100
(前記式2において、
M1は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを媒介して合わせることによって試片を製造し、製造した試片を50℃で3日間放置し、25℃で30分間冷却させ、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に粘着テープを粘着し、25℃で30分経過した後、前記被着体から前記粘着テープを剥離するときの剥離力(単位:gf/25mm)、
M2は、前記粘着テープの前記シリコン系粘着性保護フィルムが粘着されていない最初の被着体に対する剥離力(単位:gf/25mm)。
【0087】
一具体例において、M2は、約800gf/25mm乃至約1000gf/25mmになってもよい。
【0088】
シロキサン系イオン性化合物は、シロキサン基が結合された、陽イオンと陰イオンの結合体又は複合体で構成されてもよい。シロキサン基は、陽イオンに結合されてもよく、又は陰イオンに結合されてもよい。
【0089】
シロキサン基は、アルケニル基含有有機ポリシロキサン及び/又は架橋剤に対して非反応性になってもよい。シロキサン基は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を含有しないシロキサン基になってもよい。シロキサン基が炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を含有する場合、シリコン系粘着フィルムの剥離力が上昇し、本発明の効果を得ることができない。
【0090】
本発明の組成物のうちシロキサン基を含まず陽イオンと陰イオンの結合体又は複合体を含む場合、シリコン系粘着性保護フィルムは、帯電防止効果が確実に出ないか、剥離力が劣り得る。
【0091】
一具体例において、シロキサン基は、RSiO1/2単位(M単位、R、R、Rは、それぞれ炭素数1乃至炭素数10のアルキル基)、RSiO2/2単位(D単位、R、Rは、それぞれ炭素数1乃至炭素数10のアルキル基)、RSiO3/2単位(T単位、Rは、それぞれ炭素数1乃至炭素数10のアルキル基)、及びSiO4/2単位(Q単位)のうち1種以上を含んでもよい。
【0092】
前記陽イオンは、非重合体性窒素オニウム陽イオンを含む。非重合体性窒素オニウム陽イオンは、環状であってもよく、又は非環状であってもよい。環状陽イオンは、芳香族の不飽和陽イオンであって、非芳香族陽イオン又は飽和陽イオンであることは不可能であり、非環状陽イオンは、飽和陽イオン又は不飽和陽イオンであってもよい。非環状陽イオンは、モノ置換されたアンモニウム陽イオン、ジ置換されたアンモニウム陽イオン、トリ置換されたアンモニウム陽イオン又はテトラ置換されたアンモニウム陽イオンになってもよい。
【0093】
環状陽イオンは、窒素以外の1種以上のヘテロ原子(例:酸素又は硫黄)を含有してもよく、環状陽イオンのうち炭素、窒素又は前記ヘテロ原子は、置換基(例:ハロゲン、脂肪族線形アルキル基、脂肪族環状アルキル基、芳香族基など)に置換されてもよい。
【0094】
環状陽イオンは、下記の群から選択可能であるが、これに制限されない:
【0095】
【化1】
【0096】
(前記において、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、ハロゲン又は炭素数1乃至炭素数4のアルキル基であったり、又は、R、R、R、R、R、Rは、互いに窒素又は硫黄上で環を形成することもでき、前記炭素数1乃至炭素数4のアルキル基又は前記環は、ハロゲン、フルオロアルキル基、フルオロアルキルチオ基などに置換されてもよい。)
好ましくは、前記陽イオンはイミダゾリウムになってもよい。イミダゾリウムを使用する場合、本発明の効果がさらによく具現され得る。
【0097】
前記陰イオンは、フッ化有機陰イオンであって、フッ化有機陰イオンの共役酸は過酸になってもよい。前記フッ化有機陰イオンは、1種以上の高度にフッ化されたアルカンスルホニル基、すなわち、ペルフルオロアルカンスルホニル基、又は部分的にフッ化されたアルカンスルホニル基含有陰イオンになってもよい。
【0098】
例えば、前記陰イオンは、ペルフルオロアルカンスルホネート、シアノペルフルオロアルカンスルホニルイミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルカンスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチドのうち1種以上を含んでもよい。好ましくは、陰イオンは、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、トリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチドになってもよく、さらに好ましくは、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、トリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、最も好ましくは、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドになってもよい。
【0099】
前記陽イオンと陰イオンの結合体又は複合体は、下記のうち1種以上を含んでもよいが、これに制限されない:
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド:
[C17(CHCHCHOH][N(SOCF]、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムペルフルオロブタンスルホネート:
[C17(CHCHCHOH][OSO]、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート:
[C17(CHCHCHOH][OSOCF]、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド:
[C17(CHCHCHOH][C(SOCF]、
トリメチル-2-アセトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド:
[(CHCHCHOC(O)CH][N(SOCF]、
トリメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムビス(ペルフルオロブタンスルホニル)イミド:
[(CHCHCHOH][N(SO]、
トリエチルアンモニウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミド:[EtH][N(SO]、
テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート:[N(CHCH][CFSO ]、
テトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:[N(CHCH][(CFSO]、
テトラメチルアンモニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド:[(CH][C(SOCF]、
テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:[(C][N(SOCF]、
トリメチル-3-ペルフルオロオクチルスルホンアミドプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:[C17SONH(CH(CH][N(SOCF]、
1-ヘキサデシルピリジニウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミド:[n-C1633-cyc-N][N(SO]、
1-ヘキサデシルピリジニウムペルフルオロブタンスルホネート:[n-C1633-cyc-N][OSO]、
1-ヘキサデシルピリジニウムペルフルオロオクタンスルホネート:[n-C1633-cyc-N][OSO17]、
n-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:[n-C-cyc-N][N(SOCF]、
n-ブチルピリジニウムペルフルオロブタンスルホネート:[n-C-cyc-N][OSO]、
1,3-エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:[CH-cyc-(NNCH)CHCH][N(SOCF]、
1,3-エチルメチルイミダゾリウムノナフルオロブタンスルホネート:[CH-cyc-(NNCH)CHCH][OSO]、
1,3-エチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート:[CH-cyc-(NNCH)CHCH][OSOCF]、
ドデシルメチル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド:[C1225(CH)(CHCHOH)][N(SOCF]、
1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、
1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルペルフルオロブタンスルホニルイミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムシアノトリフルオロメタンスルホニルアミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(シアノ)トリフルオロメタンスルホニルメチド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルペルフルオロブタンスルホニルイミド、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニルペルフルオロブタンスルホニルイミド、
2-ヒドロキシエチルトリメチルトリフルオロメチルスルホニルペルフルオロブタンスルホニルイミド、
2-メトキシエチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムビス(シアノ)トリフルオロメタンスルホニルメチド、
トリメチル-2-アセトキシエチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニルペルフルオロブタンスルホニルイミド、
1-ブチルピリジニウムトリフルオロメチルスルホニルペルフルオロブタンスルホニルイミド、
2-エトキシエチルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、
ペルフルオロ-1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-エチル-2-メチルピラゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、
1-ブチル-2-エチルピラゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、
N-エチルチアゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-エチルオキサゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-ブチルピリミジニウムペルフルオロブタンスルホニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート:
[C17(CHCHCHOH][OSOCF]、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド:
[C17(CHCHCHOH][N(SOCF]、
ドデシルメチル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド:[C1225(CH)(CHCHOH)][N(SOCF]、
オクチルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメタンスルホネート、
トリエチルアンモニウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド、
[(n-C(CH)N]-[N(SOCF、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
シロキサン系イオン性化合物は、室温(例えば、25℃)で液相又は固相、好ましくは液相になってもよく、前記液相になることによって、樹脂との良い相溶性を示すことができる。
【0100】
シロキサン系イオン性化合物は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.001重量部乃至約3重量部、好ましくは約0.005重量部乃至約2重量部、さらに好ましくは約0.01重量部乃至約1重量部、最も好ましくは約0.01重量部乃至約0.5重量部で含まれてもよい。前記範囲で、樹脂との相溶性に優れ、適切な帯電防止効果を得ることができ、剥離力上昇率を低下させ、残留剥離力低下率を低下させることができる。例えば、前記シロキサン系イオン性化合物は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.001重量部、0.002重量部、0.003重量部、0.004重量部、0.005重量部、0.006重量部、0.007重量部、0.008重量部、0.009重量部、0.01重量部、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.05重量部、0.06重量部、0.07重量部、0.08重量部、0.09重量部、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部又は3重量部で含まれてもよい。
【0101】
<架橋剤>
分子内にシリコンが結合された水素(Si-H)を2個以上有する水素オルガノポリシロキサンを含んでもよい。一具体例において、架橋剤は、下記の化学式5で表され得る:
[化5]
SiO(RSiO2/2)x(HRSiO2/2)ySiR
(前記化学式5において、
、R、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0≦x<1、0<y≦1、x+y=1)
架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.1重量部乃至約5重量部、好ましくは、約0.1重量部乃至約3重量部で含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な架橋密度を有することができる。例えば、前記架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部又は5重量部で含まれてもよい。
【0102】
<ヒドロシリル化触媒>
ヒドロシリル化触媒は、有機ポリシロキサンと架橋剤との間の反応を触媒する。ヒドロシリル化触媒は、白金系、ルテニウム系、又はオスミウム系触媒を含んでもよく、具体的な種類は、当業者に知られている通常の白金触媒を含んでもよい。例えば、ヒドロシリル化触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体などを含んでもよい。
【0103】
ヒドロシリル化触媒は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.1重量部乃至約3重量部、好ましくは、約0.5重量部乃至約2重量部で含まれてもよく、前記範囲で、適切な反応性を示す。例えば、ヒドロシリル化触媒は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部又は3重量部で含まれてもよい。
【0104】
<アンカー剤>
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、アンカー剤をさらに含んでもよい。
【0105】
アンカー剤は、シリコン系粘着性保護フィルムの基材フィルムに対する密着性をさらに高めることができる。アンカー剤は、シロキサン系化合物として当業者に知られている通常の化合物を含んでもよい。アンカー剤は、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-(メト)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランのうち1種以上を含んでもよい。
【0106】
アンカー剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約5重量部以下、具体的に、約0.05重量部以上約5重量部以下、好ましくは、約0.1重量部乃至約3重量部で含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムの基材フィルムに対する密着性が高くなるという効果を奏し得る。例えば、前記アンカー剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン100重量部に対して約0.05重量部、0.06重量部、0.07重量部、0.08重量部、0.09重量部、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部又は5重量部で含まれてもよい。
【0107】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、有機溶剤をさらに含むことによって、前記組成物の塗布性を高め、薄膜の塗布膜を得ることができる。有機溶剤は、特に制限されなく、トルエン、キシレン、ヘキセン、ヘプタン、メチルエチルケトンなどを含んでもよいが、これに制限されない。
【0108】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含んでもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は、アルケニル基含有有機ポリシロキサンと架橋剤との間の反応を抑制することによって、目的とする粘度の組成物を得られるようにし、保管安定性を高めることができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、当業者に知られている通常の種類を含んでもよい。例えば、ヒドロシリル化反応抑制剤は、3-メチル-1-ブチン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ブチン-1-オールなどになってもよいが、これに制限されない。
【0109】
シリコン系粘着性保護フィルムは、ヘイズが約5%以下、例えば、約0%乃至約1.5%になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムを光学表示装置の用途で使用することができる。
【0110】
シリコン系粘着性保護フィルムは、厚さが約100μm以下、例えば、約75μm以下、約0μm超過約75μm以下になってもよく、前記範囲で、被着体に粘着したとき、被着体を保護し、被着体から容易に剥離させることができる。
【0111】
シリコン系粘着性保護フィルムは、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物で形成されてもよい。
【0112】
本発明の一実施例に係る光学部材は、光学フィルム、及び前記光学フィルムの少なくとも一面に形成された粘着性保護フィルムを含み、粘着性保護フィルムは、本発明の各実施例に係るシリコン系粘着性保護フィルムを含んでもよい。
【0113】
光学フィルムは、プラスチック基材フィルムになってもよく、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂で形成されたフィルムを含んでもよい。光学フィルムとシリコン系粘着性保護フィルムとの間には、有機絶縁膜又は無機絶縁膜がさらに形成されてもよい。また、粘着性保護フィルムとの密着力を向上させるために、光学フィルムに表面処理又はプライマー処理をすることもできる。光学部材は、シリコン系粘着性保護フィルムの他の一面に離型フィルム(ライナー)をさらに含んでもよい。離型フィルムは、粘着性保護フィルムが外部の異物などによって汚染することを防止することができる。離型フィルムとしては、上述した光学フィルムと同種又は異種の物質で形成された光学フィルムを使用することができる。例えば、離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メト)アクリレート樹脂、サイクリックオレフィンポリマー樹脂、及びアクリル樹脂のうち一つ以上の樹脂で形成されたフィルムであってもよい。離型フィルムは、厚さが約10μm乃至約100μm、好ましくは、約10μm乃至約50μmになってもよく、前記範囲で、粘着性保護フィルムを支持することができる。
【0114】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の好適な実施例を通じて、本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の理解を促進するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。
【0115】
実施例1
固形分を基準にして、下記の表1の成分のうちSY-ICL_N222Bを除いた残りの成分を下記の表1の含量でトルエン20重量部で混合し、SY-ICL_N222Bを下記の表1の含量でメチルエチルケトン20重量部で混合し、得た混合物を互いに混合し、メチルエチルケトンをさらに添加して希釈させることによってシリコン系粘着性保護フィルム用組成物を製造した。
【0116】
製造した組成物を離型フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ:75μm)に所定の厚さで塗布し、80℃のオーブンで2分間、130℃のオーブンで3分間乾燥させ、室温で3日間熟成させ、シリコン系粘着性保護フィルム(厚さ:25μm)と離型フィルムの積層体を製造した。
【0117】
実施例2乃至実施例4
実施例1において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物のうち各成分の種類及び含量を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0118】
比較例1乃至比較例4
実施例1において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物のうち各成分の種類及び含量を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0119】
実施例と比較例で製造したシリコン系粘着性保護フィルム用組成物及び/又はシリコン系粘着性保護フィルムに対して下記の物性を評価し、その結果を下記の表2に示した。
【0120】
(1)初期剥離力(単位:gf/25mm):実施例と比較例のシリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を幅x長さ(25mmx100mm)で切断し、得た積層体を無アルカリガラス板にシリコン系粘着性保護フィルムを媒介して合わせ、2kgのローラーで加圧することによって試片を製造した。これを室温で1時間放置した後、JISZ2037に基づいて引張試験機であるテクスチャーアナライザー(Texture analyzer)(TA Iudustry)を用いて、前記無アルカリガラス板から前記シリコン系粘着性保護フィルムを剥離速度2400mm/min、剥離角度180゜で剥離したときの剥離力を測定した。3個の前記試片を製造し、剥離力を測定した後でその平均値を求め、これを初期剥離力とした。
【0121】
(2)50℃で3日経過した後の剥離力(単位:gf/25mm):(1)と同一の方法で試片を製造し、製造した試片を50℃のオーブンで3日間放置し、試片をオーブンから取り出した後で室温で30分間冷却させ、(1)と同一の方法で剥離力を測定した。
【0122】
(3)剥離力上昇率(単位:%):(1)と(2)で得た剥離力を用いて前記式1によって剥離力上昇率を計算した。
【0123】
(4)残留剥離力(M1、単位:gf/25mm):(2)で剥離力を測定した後、シリコン系粘着保護フィルムが除去された前記無アルカリガラス板表面のシリコン系粘着性保護フィルムが除去されたのと同一の面積で粘着テープ31B(日東電工株式会社)を粘着した。室温で30分経過した後、前記無アルカリガラス板から粘着テープ31Bを剥離速度300mm/min、剥離角度180゜で剥離したときの残留剥離力(M1)を測定した。剥離力は、テクスチャーアナライザー(TA)を用いて測定した。
【0124】
(5)残留剥離力低下率(単位:%):(4)で使用した同一の粘着テープ31B(日東電工株式会社)を無アルカリガラス板[シリコン系粘着性保護フィルムが粘着されていない最初の無アルカリガラス板]に同一の面積で粘着し、室温で30分経過した後、前記無アルカリガラス板から粘着テープ31Bを剥離速度300mm/min、剥離角度180゜で剥離したときの標準剥離力(M2)を測定した。標準剥離力(M2)は800gf/25mmであった。下記の式2によって残留剥離力低下率を計算した:
[式2]
残留剥離力低下率=(M2-M1)/M2x100
(5)ラビングオフ(rubbing off)評価:実施例と比較例のシリコン系粘着性保護フィルムの表面を指で強く押し、離型フィルムからシリコン系粘着性保護フィルムが剥がれたり脱落する程度を評価し、シリコン系粘着性保護フィルムの離型フィルム間の密着特性を評価した。
【0125】
剥がれ現象がない:○
剥がれ現象が多少ある:△
剥がれ現象がある:×
(6)面抵抗(単位:Ω/□):表面抵抗測定機(SIMCO-ION社、ST-4)を用いて25℃でシリコン系粘着性保護フィルム面に100Vを10秒間印加し、シリコン系粘着性保護フィルム面の面抵抗を測定した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
*前記表1で使用した各成分を下記の表3に示した。
【0129】
【表3】
【0130】
前記表2で示したように、本発明のシリコン系粘着性保護フィルムは、剥離力上昇率が低く、残留剥離力低下率も改善され、帯電防止効果にも優れていた。
【0131】
その一方で、前記表2で示したように、本発明の有機ポリシロキサン樹脂とシロキサン系イオン性化合物を含まない比較例1の場合は、剥離力上昇率、残留剥離力低下率がいずれも良くなかった。本発明のシロキサン系イオン性化合物を含まない比較例2の場合は、残留剥離力低下率が改善されなかった。本発明の有機ポリシロキサン樹脂を含まず、シロキサン系イオン性化合物のみを含む比較例3及び比較例4の場合は、剥離力上昇率が改善されておらず、ラビング評価のように密着力が低下した。
【0132】
本発明の単純な変形及び変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。