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特許7465284シリコン系粘着性保護フィルム及びそれを含む光学部材
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  • 特許-シリコン系粘着性保護フィルム及びそれを含む光学部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】シリコン系粘着性保護フィルム及びそれを含む光学部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240403BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240403BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20240403BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J183/04
C09J183/07
C09J11/06
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021563078
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2020005445
(87)【国際公開番号】W WO2020218879
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0048753
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049625
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ナム,イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ドン イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イル ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ボン ソ
(72)【発明者】
【氏名】ス,ヨ ジン
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159611(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/121930(WO,A1)
【文献】特表2021-500417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0208032(US,A1)
【文献】特開2011-102336(JP,A)
【文献】特表2018-513881(JP,A)
【文献】特表2018-522969(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079678(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/139956(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 183/04
C09J 183/07
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、
有機ポリシロキサン樹脂、
架橋剤、および
ヒドロシリル化触媒を含む組成物を硬化してなるシリコン系粘着性保護フィルムであって
前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記成分(i)及び下記成分(ii)の混合物を含み、
成分(i):1分子あたりケイ素結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):1分子あたりケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサン、
前記成分(i)は、下記化学式1の有機ポリシロキサンを含むものであり、
[化学式1]
(R SiO 2/2 )x(R SiO 2/2 )y
(前記化学式1で、
は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R は、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物100重量部のうち、前記成分(i)は10重量部乃至70重量部、前記成分(ii)は30重量部乃至90重量部で含まれるものであり、
前記有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(前記R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基または炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)、及びSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂の一つ以上を含むものであり、
前記架橋剤は、下記化学式5で表される化合物である、シリコン系粘着性保護フィルム
[化学式5]
SiO(R SiO 2/2 )x(HR SiO 2/2 )ySiR
(前記化学式5で、
、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R は、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0≦x<1、0<y≦1、x+y=1)
【請求項2】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、ガラス板またはポリイミドフィルムを被着体としたときの下記数式1の剥離力上昇率が50%以下のものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[数1]
剥離力上昇率=(P2-P1)/P1×100
(前記数式1で、
P1は、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)、
P2は、前記試片を23℃、50%の相対湿度で14日間放置した後の前記試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの前記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch))。
【請求項3】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、ガラス板またはポリイミドフィルムを被着体としたときの下記数式1-1の剥離力上昇率が100%以下のものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[数1-1]
剥離力上昇率=(P3-P1)/P1×100
(前記数式1-1で、
P1は、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)、
P3は、前記試片を50℃で7日間放置した後の前記試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する剥離力(単位:gf/inch))。
【請求項4】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、ガラス板またはポリイミドフィルムを被着体としたときの下記数式2の残留剥離力変化率が20%未満のものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[数2]
残留剥離力変化率=(1-(M2/M1))×100
(前記数式2で、
M1は、粘着テープの被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)、
M2は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ試片を製作し、製作した試片を50℃で14日間放置し、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に前記粘着テープを粘着させ、23℃、50%の相対湿度で24時間経過後、前記被着体から前記粘着テープを剥離する際の剥離力(単位:gf/inch))。
【請求項5】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、ガラス板またはポリイミドフィルムを被着体としたときの下記数式2-1の残留剥離力低下率が-50%以上のものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[数2-1]
残留剥離力低下率=(M3-M4)/M4×100
(前記数式2-1で、
M3は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を、被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ試片を製作し、製作した試片を50℃で7日間放置し、25℃で30分間冷却させ、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に粘着テープを粘着し、25℃で30分経過後、前記被着体から前記粘着テープを剥離する際の剥離力(単位:gf/inch)であり、
M4は、前記粘着テープの前記シリコン系粘着性保護フィルムが粘着しなかった最初の被着体に対する剥離力(単位:gf/inch))。
【請求項6】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、ガラス板またはポリイミドフィルムを被着体としたときの被着体に対する剥離力が3gf/inch以下のものである、請求項1に記載シリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項7】
前記炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基は、ヘキセニル基である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項8】
前記ヘキセニル基は、5-ヘキセニル基である、請求項7に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項9】
前記化学式1で、0.001≦x≦0.4、0.6≦y≦0.999である、請求項に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項10】
前記成分(ii)は下記化学式2、下記化学式3、下記化学式4の1つ以上の有機ポリシロキサンを含むものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[化学式2]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式2で、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、R、R、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、Rの一つ以上はビニル基、
、R、R10は、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、R10の一つ以上はビニル基、
0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1)、
[化学式3]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y(RSiO2/2)z
(前記化学式3で、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、Rの一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)、
[化学式4]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式4で、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、Rの一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1である)。
【請求項11】
前記化学式2の有機ポリシロキサンは、Vi(CHSiO-((CHSiO2/2)n-Si(CHVi[Viはビニル基、nは0超過5000の整数]のものである、請求項10に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項12】
前記化学式3で、R、Rは共に炭素数6乃至炭素数10のアリール基、R、Rは共に炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1のものである、請求項10に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項13】
前記化学式4で、R、Rは共に炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、0<x<1、0<y<1、x+y=1のものである、請求項10に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項14】
前記有機ポリシロキサン樹脂のうち、前記R、R、Rの一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項15】
前記有機ポリシロキサン樹脂の前記RSiO1/2単位とSiO4/2単位のうち、RSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.25:1乃至2.5:1のものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項16】
前記有機ポリシロキサン樹脂は、下記成分(iii)及び下記成分(iv)の混合物を含むものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
成分(iii):RSiO1/2単位(R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基または炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基で、R、R、Rの一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂、
成分(iv):RSiO1/2単位(R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【請求項17】
前記有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物100重量部に対して、0.01重量部乃至20重量部で含まれるものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項18】
前記組成物は、アンカー剤をさらに含むものである、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項19】
請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルムの一方の面に離型フィルムを含む、積層体。
【請求項20】
光学フィルム;及び前記光学フィルムの少なくとも一面に形成された請求項1乃至18のいずれか一項に記載のシリコン系粘着性保護フィルムを含むものである、光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン系粘着性保護フィルム及びそれを含む光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学表示装置の使用、保管および製造環境が過酷になってきている。また、ウェアラブル装置、ポータブル装置等の新たな光学表示装置に対する関心が高くなりつつある。これにより、光学表示装置のパネルを保護する粘着性保護フィルムについても様々な物性が要求されている。特に、光学表示装置のパネルが薄膜化および柔軟化されると共に、粘着性保護フィルムの除去時にパネルの損傷が少なく、過酷な条件でも物性の変化が少ない粘着性保護フィルムの開発が要求されている。
【0003】
これにより、アクリレート系またはウレタンアクリレート系粘着性保護フィルムが開発されている。しかし、アクリレート系またはウレタンアクリレート系粘着性保護フィルムは、粘着性保護フィルムを被着体に付着し長期間放置すると、被着体に対する剥離力が過剰に上昇することによって、被着体から剥離する際に被着体が損傷および/または変形する場合が多く、粘着性保護フィルムを被着体から容易に除去し難く工程性が劣り得るという限界がある。
【0004】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第2012-0050136号等に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被着体に対する優れた保護効果、低い剥離力上昇率、優れたウェッティング性および優れた段差埋め性を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、被着体に粘着し剥離させる際に被着体の汚染および損傷がないようにするシリコン系粘着性保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点は、シリコン系粘着性保護フィルムである。
【0008】
1.シリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、有機ポリシロキサン樹脂、架橋剤およびヒドロシリル化触媒を含む組成物で形成され、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記成分(i)及び下記成分(ii)の混合物を含み、成分(i):1分子あたりケイ素結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサン、成分(ii):1分子あたりケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサン、前記有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(前記R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基または炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)、及びSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂の一つ以上を含む。
【0009】
2.1において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記数式1の剥離力上昇率が50%以下になり得る:
[数1]
剥離力上昇率=(P2-P1)/P1×100
(前記数式1で、P1はシリコン系粘着性保護フィルムと被着体の試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)、P2は前記試片を23℃、50%の相対湿度で14日間放置した後の前記試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの前記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である)。
【0010】
3.1から2において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記数式1-1の剥離力上昇率が100%以下になり得る:
[数1-1]
剥離力上昇率=(P3-P1)/P1×100
(前記数式1-1で、P1はシリコン系粘着性保護フィルムと被着体の試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの前記被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)であり、P3は前記試片を50℃で7日間放置した後の前記試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの前記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である)。
【0011】
4.1から3において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記数式2の残留剥離力変化率が20%未満になり得る:
[数2]
残留剥離力変化率=(1-(M2/M1))×100
(前記数式2において、M1は粘着テープの被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)、M2は前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ試片を製作し、製作した試片を50℃で14日間放置し、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に前記粘着テープを粘着させ、23℃、50%の相対湿度で24時間経過後、前記被着体から前記粘着テープを剥離する際の剥離力(単位:gf/inch)である)。
【0012】
5.1から4において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、下記数式2-1の残留剥離力低下率が-50%以上になり得る:
[数2-1]
残留剥離力低下率=(M3-M4)/M4×100
(前記数式2-1において、M3は前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を、被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ試片を製作し、製作した前記試片を50℃で7日間放置し、25℃で30分間冷却させ、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に粘着テープを粘着し、25℃で30分経過後、前記被着体から前記粘着テープを剥離する際の剥離力(単位:gf/inch)であり、M4は前記粘着テープの前記シリコン系粘着性保護フィルムが粘着しなかった最初の被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である)。
【0013】
6.1から5において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力が3gf/inch以下になり得る。
【0014】
7.1から6において、前記成分(i)のうち前記炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基はヘキセニル基になり得る。
【0015】
8.7において、前記ヘキセニル基は5-ヘキセニル基になり得る。
【0016】
9.1から8において、前記成分(i)は、下記化学式1の有機ポリシロキサンを含み得る:
[化学式1]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式1で、Rは炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、Rは炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基であり、0<x≦1、0≦y<1、x+y=1である)。
【0017】
10.9において、前記化学式1で、0.001≦x≦0.4、0.6≦y≦0.999になり得る。
【0018】
11.1から10において、前記成分(ii)は下記化学式2、下記化学式3、下記化学式4の1種以上の有機ポリシロキサンを含み得る:
[化学式2]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式2で、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、R、R、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、R、R、Rの一つ以上はビニル基、R、R、R10は、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、R、R、R10の一つ以上はビニル基であり、0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1である)、
[化学式3]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y(RSiO2/2)z
(前記化学式3で、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、R、Rの一つ以上はビニル基で、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1である)、
[化学式4]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式4で、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、R、Rの一つ以上はビニル基で、0<x≦1、0≦y<1、x+y=1である)。
【0019】
12.11において、前記化学式2の有機ポリシロキサンは、Vi(CHSiO-((CHSiO2/2)n-Si(CHVi[Viはビニル基、nは0超過5000の整数]になり得る。
【0020】
13.11において、前記化学式3で、R、Rは共に炭素数6乃至炭素数10のアリール基、R、Rは共に炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1になり得る。
【0021】
14.11において、前記化学式4で、R、Rは共に炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、0<x<1、0<y<1、x+y=1になり得る。
【0022】
15.1から14において、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物100重量部のうち、前記成分(i)は10重量部乃至70重量部、前記成分(ii)は30重量部乃至90重量部で含まれ得る。
【0023】
16.1から15において、前記有機ポリシロキサン樹脂のうち、前記R、R、Rの一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基になり得る。
【0024】
17.1から16において、前記有機ポリシロキサン樹脂の前記RSiO1/2単位とSiO4/2単位のうち、RSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.25:1乃至2.5:1になり得る。
【0025】
18.1から17において、前記有機ポリシロキサン樹脂は、下記成分(iii)及び下記成分(iv)の混合物を含み得る:成分(iii):RSiO1/2単位(R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基または炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基で、R、R、Rの一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂、成分(iv):RSiO1/2単位(R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0026】
19.1から18において、前記有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物100重量部に対して、0.01重量部乃至20重量部で含まれ得る。
【0027】
20.1から19において、前記組成物は、アンカー剤をさらに含み得る。
【0028】
21.本発明の光学部材は、光学フィルム及び前記光学フィルムの少なくとも一面に形成された本発明のシリコン系粘着性保護フィルムを含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、被着体に対する優れた保護効果、低い剥離力上昇率、優れたウェッティング性および優れた段差埋め性を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供する。
【0030】
本発明は、被着体に粘着し、剥離させた際の被着体の汚染および損傷がないようにするシリコン系粘着性保護フィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実験例においてシリコン系粘着性保護フィルムの引張強度を測定するための試片の平面図である。
図2図2は、実験例においてシリコン系粘着性保護フィルムの段差埋め性を測定するための試片の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明を実施するための最善の形態]
本発明を実施例によって詳しく説明する。しかし、本出願に開示した技術は、ここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具現化することもできる。但し、ここで紹介する実施例は、開示した内容が徹底かつ完全になるように、また、当業者に本出願の思想が十分に伝わるようにするために提供するものである。
【0033】
本明細書において「炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基」は、炭素数3乃至炭素数10のモノアルケニル基として、プロペニル基、ブテニル基、フェンタニル基、ヘキセニル基、ヘプタニル基、オクタニル基、ノネニル基、またはデカニル基になり得る。
【0034】
本明細書で「炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基」のうちアルケニル基は、有機ポリシロキサンのうちシリコンに結合され、シリコンから最末端に配置され得る。
【0035】
本明細書において「ヘキセニル基」(Hex)は、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基または5-ヘキセニル基になり得る。好ましくは、ヘキセニル基は5-ヘキセニル基(*-(CH-CH=CH、*はシリコンに対する連結部位)になり得る。
【0036】
本明細書において「ビニル基」(Vi)は、*-CH=CH(*は連結部位)を意味する。
【0037】
本明細書において、「Me」はメチル基、「Ph」はフェニル基である。
【0038】
本明細書において、「被着体」はガラス板またはポリイミドフィルム、アクリルフィルム、ポリアクリルアミドフィルム等のプラスチック等を含み得る。好ましくは、被着体はガラス板またはポリイミドフィルムになり得る。
【0039】
本明細書において、「剥離力」はJISZ2037に準じて引張試験測定器を使用して、剥離速度2400mm/min、剥離角度180°、剥離温度25℃で測定した値である。
【0040】
本明細書において、数値範囲記載時「X乃至Y」は、X以上Y以下(X≦そして≦Y)を意味する。
【0041】
本発明の発明者は、下記で詳述するアルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、下記で詳述する有機ポリシロキサン樹脂の混合物、架橋剤およびヒドロシリル化触媒を含む組成物でシリコン系粘着性保護フィルムを形成した。
【0042】
これにより、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力に優れるため被着体保護効果に優れ、被着体にシリコン系粘着性保護フィルムを粘着した後、保管時に剥離力上昇が低いため、被着体からシリコン系粘着性保護フィルムを剥離した際に被着体の変形および/または損傷がなく、保管安定性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する段差埋め性および/または濡れ性に優れ、被着体にシリコン系粘着性保護フィルムを粘着させた時に気泡等が発生しないため、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の切断時の工程性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは被着体に粘着し剥離させた際の残留剥離力低下率が低いため、被着体の汚染および損傷がなく工程性に優れる。
【0043】
以下、本発明の一実施例にかかるシリコン系粘着性保護フィルムを説明する。
【0044】
シリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、有機ポリシロキサン樹脂、架橋剤およびヒドロシリル化触媒を含む組成物で形成され、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記成分(i)及び下記成分(ii)の混合物を含み、前記有機ポリシロキサン樹脂はRSiO1/2単位(R、R、Rは下記で詳しく説明する)およびSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂の一つ以上を含む:
成分(i):1分子あたりケイ素結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):1分子あたりケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサン。
【0045】
成分(i)と成分(ii)は、ケイ素結合されたアルケニル基の炭素個数によって区別される。
【0046】
前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(ii)は用いず成分(i)だけを含む場合、シリコン系粘着性保護フィルムは脆い(brittle)物性が表れ、剥離強度、ウェッティング性、切断性および段差埋め性が良くなくなり得る。アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(i)は用いず成分(ii)だけを含む場合は、剥離力上昇率が過度に高くなり、被着体からシリコン系粘着性保護フィルムを剥離する際に被着体の変形および/または損傷を誘発して、シリコン系粘着性保護フィルムの保管安定性が劣り得る。アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物だけを含み、有機ポリシロキサン樹脂を含まない場合は、脆い物性が表れ、剥離強度、ウェッティング性および切断性が良くなくなり得、剥離力上昇率が過度に高くなって、被着体からシリコン系粘着性保護フィルム剥離時に被着体の変形および/または損傷を誘発してシリコン系粘着性保護フィルムの保管安定性が劣り得る。
【0047】
<アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物>
アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、シリコン系粘着性保護フィルムのマトリックスを形成する。
【0048】
一具体例において、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記成分(i)および下記成分(ii)を含むことにより、被着体に対する剥離力が3gf/inch以下になるようにして被着体に対する剥離力に優れ、被着体保護効果に優れると共に、下記数式1の剥離力上昇率が50%以下になることにより、被着体に粘着した後に被着体から容易に除去されて被着体の損傷および/または変形を防ぐことができる:
[数1]
剥離力上昇率=(P2-P1)/P1×100
(前記数式1で、
P1は、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの前記被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)、
P2は、前記試片を23℃、50%の相対湿度で14日間放置した後の前記試片における前記シリコン系粘着性保護フィルムの前記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch))。
【0049】
前記「初期剥離力」は、前記試片を23℃、50%の相対湿度で14日間放置する前の被着体に対する前記シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力である。
【0050】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力が0gf/inch超過3gf/inch以下、例えば、1gf/inch乃至3gf/inchになり得る。剥離力が1gf/inch乃至3gf/inchの場合、被着体に対する保護効果がより優れたものになり得る。
【0051】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは前記数式1の剥離力上昇率が0%乃至40%になり得る。例えば、前記数式1による剥離力上昇率は、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%になり得る。
【0052】
前記数式1で、P1、P2は、それぞれ3gf/inch以下、好ましくは0gf/inch超過3gf/inch以下、例えば、1gf/inch乃至3gf/inchになり得る。
【0053】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは下記数式1-1の剥離力上昇率が100%以下、例えば0%乃至100%、例えば5%乃至100%になり得る:
[数1-1]
剥離力上昇率=(P3-P1)/P1×100
(前記数式1-1で、
P1は、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)、
P3は、前記試片を50℃で7日間放置した後の前記試片におけるシリコン系粘着性保護フィルムの被着体に対する剥離力(単位:gf/inch))。
【0054】
例えば、前記数式1-1による剥離力上昇率は、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%になり得る。
【0055】
前記数式1-1で、P1、P3は、それぞれ0gf/inch超過3gf/inch以下、例えば1gf/inch乃至3gf/inchになり得る。
【0056】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは、下記数式2の残留剥離力変化率が20%未満、例えば0%乃至15%になり得る。前記範囲で、被着体に粘着し剥離させた際に被着体の汚染および損傷がないようにすることができる:
[数2]
残留剥離力変化率=(1-(M2/M1))×100
(前記数式2において、
M1は、粘着テープの被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)、
M2は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を、被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせて試片を製作し、製作した試片を50℃で14日間放置し、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に前記粘着テープを粘着し、23℃、50%の相対湿度で24時間経過後、前記被着体から前記粘着テープを剥離する際の剥離力(単位:gf/inch))。
【0057】
例えば、前記数式2による残留剥離力変化率は、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%になり得る。
【0058】
前記粘着テープは、粘着力のある通常の粘着テープを使用することができ、例えば、Nitto 31B粘着テープを使用できる。一具体例において、前記M1は、800gf/inch乃至1000gf/inchになり得る。
【0059】
一具体例において、シリコン系粘着性保護フィルムは、下記数式2-1の残留剥離力低下率が-50%以上、好ましくは-45%乃至0%になり得る。前記範囲で、被着体に粘着し剥離させた際に被着体の汚染および損傷がないようにできる:
[数2-1]
残留剥離力低下率=(M3-M4)/M4×100
(前記数式2-1において、M3は、前記シリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を、被着体に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせて試片を製作し、製作した試片を50℃で7日間放置し、25℃で30分間冷却させ、前記被着体から前記シリコン系粘着性保護フィルムを除去した後、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去された面に粘着テープを粘着し、25℃で30分経過後、前記被着体から前記粘着テープを剥離する際の剥離力(単位:gf/inch)であり、M4は、前記粘着テープの前記シリコン系粘着性保護フィルムが粘着しなかった最初の被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である)。
【0060】
一具体例において、M4は650gf/inch乃至1100gf/inchになり得る。
【0061】
例えば、前記2-1による残留剥離力低下率は、-45%、-44%、-43%、-42%、-41%、-40%、-39%、-38%、-37%、-36%、-35%、-34%、-33%、-32%、-31%、-30%、-29%、-28%、-27%、-26%、-25%、-24%、-23%、-22%、-21%、-20%、-19%、-18%、-17%、-16%、-15%、-14%、-13%、-12%、-11%、-10%、-9%、-8%、-7%、-6%、-5%、-4%、-3%、-2%、-1%または0%になり得る。
【0062】
本発明の組成において、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち、成分(ii)を用いず成分(i)だけを含む組成物で形成されたシリコン系粘着性保護フィルムは、濡れ性が悪く工程性が良くないという問題点があり得る。本発明の組成において、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(i)を用いず成分(ii)だけを含む組成物で形成されたシリコン系粘着性保護フィルムは、剥離力上昇率が高く、残留剥離力変化率が高くなるという問題点があり得る。
【0063】
成分(i)は、成分(ii)と一緒にシリコン系粘着性保護フィルムに含まれてシリコン系粘着性保護フィルムの剥離力が過度に高くなる問題点を防ぎ、本発明の剥離力、剥離力上昇率、及び残留剥離力変化率を確保することができる。
【0064】
成分(i)において、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基は、好ましくはヘキセニル基、より好ましくは5-ヘキセニル基になり得る。5-ヘキセニル基は、有機ポリシロキサン中のシリコンに結合し、シリコンから最末端にアルケニル基が備えられることにより、早い反応速度によって硬化密度を高め、経時剥離力を制御する効果を表すことができる。
【0065】
成分(i)は、1分子あたりケイ素結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1つ以上有する線型の有機ポリシロキサンとして、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン単位を少なくとも1つ含み得る。
【0066】
例えば、成分(i)は、RSiO2/2単位を含み得、前記Rは炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基になり得、前記Rは炭素数1乃至炭素数10のアルキル基になり得、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等になり得る。
【0067】
成分(i)のうちRSiO2/2単位は、前記有機ポリシロキサン中に0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.1mmol/g乃至0.3mmol/gで含まれ得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適切な硬化密度を有するという効果を奏し得る。
【0068】
一具体例において、成分(i)は、下記化学式1の有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式1]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式1で、
は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基であり、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1である)。
【0069】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)は、一成分系の有機ポリシロキサンになり得る。
【0070】
一具体例において、成分(i)は、(Hex(CH)SiO2/2)及び((CHSiO2/2)を含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0071】
一具体例において、成分(i)は、(Hex(CH)SiO2/2)単位および((CHSiO2/2)単位からなる有機ポリシロキサンを含み得る。
【0072】
一具体例において、成分(i)は、ビニル基結合されたシロキサン[例えば、ビニル基結合されたジアルコキシシラン、ビニル基結合されたトリアルコキシシラン、またはビニル基結合されたモノアルコキシシラン]を含まないこともある。
【0073】
一具体例において、成分(i)は、SiO4/2単位(Q単位)を含まないこともある。
【0074】
一具体例において、成分(i)は、下記化学式1-1の末端キャッピングされた有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式1-1]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式1-1で、
は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、R、R、R、R10は、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)。
【0075】
前記化学式1または化学式1-1の有機ポリシロキサンにおいて、(RSiO2/2)単位は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.1mmol/g乃至0.3mmol/gで含まれ得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適切な硬化密度を有するという効果を奏し得る。
【0076】
前記化学式1または化学式1-1の有機ポリシロキサン、或いは成分(i)は、重量平均分子量が5万乃至20万、好ましくは7万乃至15万になり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適切な硬化密度と濡れ性を有するという効果を奏し得る。
【0077】
好ましくは、前記化学式1または化学式1-1は、0.001≦x≦0.4、0.6≦y≦0.999、x+y=1、より好ましくは0.005≦x≦0.2、0.8≦y≦0.995、x+y=1になり得る。前記範囲で、剥離力上昇率が低くなり、且つ被着体に粘着した後の汚染が少なくなるという効果を奏し得る。
【0078】
前記化学式1または化学式1-1の有機ポリシロキサンは、重量平均分子量が10万乃至80万、好ましくは20万乃至70万になり得る。前記範囲で、剥離力上昇率および被着体の汚染の程度が低くなるという効果を奏し得る。
【0079】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)は、一成分系の有機ポリシロキサンになり得る。
【0080】
好ましくは、成分(i)は、(Hex(CH)SiO2/2)および((CHSiO2/2)を含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0081】
好ましくは、成分(i)は、(Hex(CH)SiO2/2)単位および((CHSiO2/2)単位からなる有機ポリシロキサンを含み得る。
【0082】
好ましくは、成分(i)は、(CHSiO-(Hex(CH)SiO2/2)x((CHSiO2/2)y-Si(CH(0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)になり得る。
【0083】
一具体例において、成分(i)は、SiO4/2単位(Q単位)を含まないこともある。
【0084】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物または成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち、成分(i)は、10重量部乃至70重量部、好ましくは20重量部乃至60重量部で含まれ得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムのウェッティング性を良くさせ、経時剥離力を下げる効果を奏し得る。
【0085】
成分(i)は、(RSiO2/2)、(RSiO2/2)を提供するアルコキシシランの加水分解および縮合によって製作することができ、当業者に知られている通常の方法に従う。
【0086】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物または成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち、成分(i)は、10重量部乃至70重量部、好ましくは30重量部乃至70重量部、より好ましくは40重量部乃至60重量部で含まれ得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適切な濡れ性と経時剥離力を有するという効果があり、段差埋め性を良くさせ得る。例えば、前記成分(i)は、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部、24重量部、25重量部、26重量部、27重量部、28重量部、29重量部、30重量部、31重量部、32重量部、33重量部、34重量部、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部、59重量部、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、66重量部、67重量部、68重量部、69重量部、70重量部含まれ得る。
【0087】
成分(ii)は、成分(i)と一緒にシリコン系粘着性保護フィルムに含まれてシリコン系粘着性保護フィルムの剥離力を高めて本発明の剥離力を確保でき、濡れ性を改善できる。
【0088】
成分(ii)は、1分子あたりケイ素結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する線型の有機ポリシロキサンとして、ビニル基を有するジオルガノシロキサン単位を少なくとも1つ含み得る。
【0089】
一具体例において、成分(ii)は、側鎖または両側末端に、ケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサンになり得る。
【0090】
例えば、成分(ii)は、有機ポリシロキサンの末端にRSiO-を含み、前記R、R、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、R、R、Rの一つ以上は、ビニル基になり得る。
【0091】
成分(ii)は、線型の有機ポリシロキサンとして、ジオルガノシロキサン単位を含み得る。
【0092】
一具体例において、成分(ii)はSiO4/2単位(Q単位)を含まないこともある。
【0093】
一具体例において、成分(ii)は両側末端に、ケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサンになり得る。例えば、成分(ii)は下記化学式2の有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式2]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式2で、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、Rは、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、Rの一つ以上はビニル基、
、R、R10は、それぞれ独立して、ビニル基または炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
、R、R10の一つ以上はビニル基、
0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1である)。
【0094】
前記成分(ii)または前記化学式2において、ビニル基当量は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.1mmol/g乃至0.3mmol/gになり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適した反応速度と反応性を有する効果を奏し得る。
【0095】
前記成分(ii)または前記化学式2の有機ポリシロキサンは、重量平均分子量が1万乃至30万、好ましくは分子量が2万乃至30万、好ましくは分子量が2万乃至30万、より好ましくは3万乃至5万になり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適切な反応性を有する効果を奏し得る。
【0096】
好ましくは、前記化学式2の有機ポリシロキサンは、Vi(CHSiO-((CHSiO2/2)n-Si(CHVi(nは0超過5000の整数)を含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0097】
別の具体例において、前記成分(ii)は、側鎖にケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサンになり得る。例えば、成分(ii)は下記化学式3の有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式3]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y(RSiO2/2)z
(前記化学式3で、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、Rの一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)。
【0098】
一具体例において、R、Rの一つ以上、好ましくはR、Rは共に炭素数6乃至炭素数10のアリール基になり得る。
【0099】
一具体例において、R、Rの一つ以上、好ましくはR、Rは共に炭素数1乃至炭素数10のアルキル基になり得る。
【0100】
好ましくは、前記化学式3の有機ポリシロキサンは、(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)y-(PhSiO2/2)zを含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0101】
一具体例において、前記化学式3の有機ポリシロキサンは、末端キャッピングされて、下記化学式3-1の有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式3-1]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y(RSiO2/2)zSiR101112
(前記化学式3-1で、
、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、Rの一つ以上はビニル基、
、R、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
前記成分(ii)または化学式3、或いは化学式3-1において、ビニル基当量は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.1mmol/g乃至0.3mmol/gになり得る。前記範囲でシリコン系粘着性保護フィルムは、適した反応速度と反応性を有する効果を奏し得る。
【0102】
好ましくは、前記化学式3-1の有機ポリシロキサンは、(CHSiO-(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)y-(PhSiO2/2)z-Si(CHを含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0103】
前記成分(ii)または前記化学式3、或いは化学式3-1の有機ポリシロキサンは、重量平均分子量が5万乃至80万、好ましくは10万乃至70万、好ましくは20万乃至70万、より好ましくは10万乃至15万になり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適切な反応性を有する効果があり、剥離力上昇率が低くなり、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。
【0104】
好ましくは、化学式3、化学式3-1の有機ポリシロキサンは、0.005≦x≦0.1、0.001≦y≦0.2、0.7≦z≦0.994、x+y+z=1になり得る。前記範囲で、剥離力上昇率を下げ、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。
【0105】
また別の具体例において、成分(ii)は側鎖にケイ素結合されたビニル基を少なくとも1つ以上有する有機ポリシロキサンになり得る。例えば、成分(ii)は下記化学式4の有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式4]
(RSiO2/2)x(RSiO2/2)y
(前記化学式4で、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、Rの一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)。
【0106】
好ましくは、前記化学式4の有機ポリシロキサンは、(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)yを含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0107】
例えば、成分(ii)は末端キャッピングされて、下記化学式4-1の有機ポリシロキサンになり得る:
[化学式4-1]
SiO(RSiO2/2)x(RSiO2/2)ySiR10
(前記化学式4-1で、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基または炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
、Rの一つ以上はビニル基、
、R、R、R、R、R10は、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)。
【0108】
好ましくは、前記化学式4または化学式4-1の有機ポリシロキサンは、0.005≦x≦0.1、0.9≦y≦0.995、x+y=1になり得る。前記範囲で、剥離力上昇率が低くなり、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。
【0109】
好ましくは、前記化学式4-1の有機ポリシロキサンは、(CHSiO-(Vi(CH)SiO2/2)x-((CHSiO2/2)y-Si(CHを含む有機ポリシロキサンを含み得る。
【0110】
前記成分(ii)または前記化学式4、或いは前記化学式4-1においてビニル基当量は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.1mmol/g乃至0.3mmol/gになり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは適した反応速度と反応性を有する効果を奏し得る。
【0111】
前記成分(ii)または前記化学式4、或いは化学式4-1の有機ポリシロキサンは、重量平均分子量が5万乃至80万、好ましくは10万乃至70万、より好ましくは15万乃至70万、さらに好ましくは20万乃至70万になり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適した硬化密度と濡れ性を有し、剥離力上昇率が低くなり、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。
【0112】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、一成分系の有機ポリシロキサンになり得る。
【0113】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式2の有機ポリシロキサンだけになり得る。
【0114】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式3の有機ポリシロキサンだけになり得る。
【0115】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(ii)は、前記化学式2の有機ポリシロキサンと前記化学式4の有機ポリシロキサンの混合物になり得る。
【0116】
一具体例において、成分(ii)はSiO4/2単位(Q単位)を含まないこともある。
【0117】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物または成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち成分(ii)は、30重量部乃至90重量部、好ましくは40重量部乃至80重量部、より好ましくは40重量部乃至60重量部で含まれ得る。前記範囲で適した初期剥離力を有し、優れた濡れ性を有し、且つ剥離力上昇率が低くなり、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。
【0118】
例えば、前記成分(ii)は、30重量部、31重量部、32重量部、33重量部、34重量部、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部、59重量部、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、66重量部、67重量部、68重量部、69重量部、70重量部、71重量部、72重量部、73重量部、74重量部、75重量部、76重量部、77重量部、78重量部、79重量部、80重量部、81重量部、82重量部、83重量部、84重量部、85重量部、86重量部、87重量部、88重量部、89重量部または90重量部含まれ得る。
【0119】
<有機ポリシロキサン樹脂>
有機ポリシロキサン樹脂は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれて粘着性保護フィルムの経時剥離力上昇率を下げ、信頼性を高めることができ、残留剥離力低下率を改善する効果を奏し得る。有機ポリシロキサン樹脂は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれて段差埋め性を改善することができる。
【0120】
前記有機ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(前記R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基または炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)およびSiO4/2単位を含む有機ポリシロキサン樹脂の一つ以上を含む。
【0121】
一具体例において、有機ポリシロキサン樹脂は、M単位とQ単位を有するMQ樹脂を含み得る。当業者に知られているように、前記M単位はトリ置換されたSiO1/2単位を意味し、前記Q単位はSiO4/2単位を意味する。
【0122】
一具体例において、前記有機ポリシロキサン樹脂は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を有するM単位とQ単位を有する第1のMQ樹脂と、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基を有さないM単位とQ単位を有する第2のMQ樹脂の混合物を含み得る。第1のMQ樹脂と第2のMQ樹脂を一緒に含むことにより、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力上昇率がより低くなり得る。
【0123】
一具体例において、有機ポリシロキサン樹脂は、前記の第1のMQ樹脂として下記成分(iii)、および前記の第2のMQ樹脂として下記成分(iv)の混合物を含み得る:
成分(iii):RSiO1/2単位(R、R、Rは下記で詳しく説明する)(M単位)と、SiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0124】
成分(iv):RSiO1/2単位(R、R、Rは下記で詳しく説明する)(M単位)と、SiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0125】
前記RSiO1/2単位において、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基または炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基で、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはN-プロピル基等のプロピル基またはビニル基、或いはアリル基になり得、R、R、Rの一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基になり得る。
【0126】
前記RSiO1/2単位においてR、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基またはN-プロピル基等のプロピル基になり得る。
【0127】
一具体例において、前記RSiO1/2単位でR、R、Rの一つ以上は、ビニル基になり得る。
【0128】
一具体例において、前記RSiO1/2単位でR、R、Rの2つ以上または3つ以上は、メチル基になり得る。
【0129】
例えば、成分(iii)において、有機ポリシロキサン樹脂のうちRSiO1/2単位と、SiO4/2単位のうちRSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.5:1乃至1.5:1、好ましくは0.8:1乃至1.2:1になり得る。前記範囲で、適したモジュラスを有すると共に、硬化密度を上昇させる効果を奏し得る。前記「モル比率」は、シリコン系粘着保護フィルムに対してシリコンNMRを測定し、SiO1/2単位とSiO4/2単位間の面積比により得られるが、これに制限されるのではない。
【0130】
別の例を挙げると、成分(iii)において、有機ポリシロキサン樹脂のうちRSiO1/2単位と、SiO4/2単位のうちRSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.25:1乃至2.5:1、好ましくは0.45:1乃至2:1になり得る。前記範囲で、剥離力上昇率が低くなり、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。前記「モル比率」は、シリコン系粘着保護フィルムに対してシリコンNMRを測定し、SiO1/2単位とSiO4/2単位間の面積比により得られるが、これに制限されるのではない。
【0131】
成分(iii)において、有機ポリシロキサン樹脂のR、R、R全体のうち、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基、好ましくは、ビニル基は、0.1モル%乃至30モル%、好ましくは0.5モル%乃至20モル%になり得る。前記範囲で経時剥離力の上昇を著しく防ぐことができる。
【0132】
成分(iii)において、R、R、R全体のうち炭素数2乃至炭素数の10アルケニル基は、0.1mmol/g乃至1.5mmol/g、好ましくは0.5mmol/g乃至1.0mmol/gになり得る。前記範囲で経時剥離力の上昇を著しく防ぐことができる。
【0133】
成分(iv)において、有機ポリシロキサン樹脂のうちRSiO1/2単位と、SiO4/2単位のうちRSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.5:1乃至1.5:1、好ましくは0.8:1乃至1.2:1になり得る。前記範囲で、初期剥離力を高める効果を奏し得る。
【0134】
成分(iii)は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して、0.1重量部乃至10重量部、好ましくは0.5重量部乃至10重量部、さらに好ましくは1重量部乃至5重量部で含まれ得る。前記範囲で、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物中の未反応基を減らして剥離力上昇率を改善する効果を奏し得る。
【0135】
成分(iv)は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して0.01重量部乃至2重量部、好ましくは0.05重量部乃至2重量部、さらに好ましくは0.1重量部乃至1重量部で含まれ得る。前記範囲で、初期剥離力を適切に上昇させる効果を奏し得る。
【0136】
有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して、0.01重量部乃至20重量部、好ましくは0.5重量部乃至15重量部、より好ましくは0.5重量部乃至10重量部で含まれ得る。前記範囲で、適切な初期剥離力を有し、経時剥離力を制御する効果を奏し得る。
【0137】
有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して、0.01重量部乃至20重量部、好ましくは0.1重量部乃至15重量部、より好ましくは0.1重量部乃至10重量部、より好ましくは0.1重量部乃至7重量部、より好ましくは1重量部乃至7重量部、2重量部乃至7重量部で含まれ得る。前記範囲で、剥離力上昇率が低くなり、被着体の汚染の程度が低くなる効果を奏し得る。例えば、0.01重量部、0.05重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部または20重量部含まれ得る。
【0138】
<架橋剤>
分子内にシリコン結合された水素(Si-H)を2つ以上有する水素オルガノポリシロキサンを含み得る。一具体例において、架橋剤は下記化学式5で表すことができる:
[化学式5]
SiO(RSiO2/2)x(HRSiO2/2)ySiR
(前記化学式5で、
、R、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0≦x<1、0<y≦1、x+y=1)。
【0139】
架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して、1重量部乃至5重量部、好ましくは1重量部乃至3重量部で含まれ得る。前記範囲で、剥離力経時変形率が低くなる効果を奏し得る。
【0140】
架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して、0.1重量部乃至5重量部、好ましくは1重量部乃至3重量部で含まれ得る。前記範囲で、剥離力経時変化率が低くなる効果を奏し得る。例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部または5重量部含まれ得る。
【0141】
<ヒドロシリル化触媒>
ヒドロシリル化触媒は、有機ポリシロキサンおよび架橋剤間の反応を触媒する。ヒドロシリル化触媒は、白金系、ルテニウム系、またはオスミウム系触媒を含むことができ、具体的な種類は当業者に知られている通常の白金触媒を含み得る。例えば、ヒドロシリル化触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯体(complex)、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体等を含み得る。
【0142】
ヒドロシリル化触媒は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して、0.1重量部乃至3重量部、好ましくは0.5重量部乃至2重量部で含まれ得る。前記範囲で、剥離力経時変化率が低くなる効果を奏し得る。例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部または3重量部含まれ得る。
【0143】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、アンカー剤をさらに含むことができる。
【0144】
アンカー剤は、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力をより高めることができる。アンカー剤は、シロキサン系化合物として当業者に知られている通常の化合物を含むことができる。アンカー剤は、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランの1種以上を含むことができる。
【0145】
アンカー剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物または成分(i)と成分(ii)の混合物100重量部に対して1重量部未満、具体的には0.05重量部以上1重量部未満、好ましくは0.1重量部乃至0.5重量部で含まれ得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムの基材フィルムに対する密着性が高くなる効果を奏し得る。
【0146】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、有機溶剤をさらに含むことにより、前記組成物の塗布性を高めて薄膜の塗布膜を得ることができる。有機溶剤は、特に制限されなく、トルエン、キシレン、ヘキセン、ヘプタン、メチルエチルケトン等を含むことができるが、これに制限されない。
【0147】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含むことができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物と架橋剤間の反応および/または有機ポリシロキサン樹脂の混合物と架橋剤間の反応を抑制することにより、目的とする粘度の組成物が得られるようにし、保管安定性を高めることができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、当業者に知られている通常の種類を含むことができる。例えば、ヒドロシリル化反応抑制剤は、3-メチル-1-ブチン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ブチン-1-オール等になり得るが、これに制限されるのではない。
【0148】
シリコン系粘着性保護フィルムは、当業者に知られている通常の添加剤をさらに含むことができる。
【0149】
シリコン系粘着性保護フィルムは、引張強度(tensile strength)が0.5MPa乃至10MPa、好ましくは0.7MPa乃至7MPa、より好ましくは1.5MPa乃至7MPaになり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムのウェッティング性、段差埋め性が良くなる効果を奏し得る。
【0150】
シリコン系粘着性保護フィルムは、ヘーズが5%以下、例えば0%乃至1%になり得る。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムを光学表示装置の用途として使用できる。
【0151】
シリコン系粘着性保護フィルムは、厚さが100μm以下、例えば75μm以下、0μm超過75μmになり得る。前記範囲で、被着体に粘着する際に被着体を保護し、被着体から容易に剥離させることができる。
【0152】
シリコン系粘着性保護フィルムは、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物で形成することができる。本発明の組成物において、各成分は当業者に知られている通常の方法で合成して使用されたり、または商業的に販売されている製品を購入して使用することができる。
【0153】
本発明の一実施例にかかる光学部材は、光学フィルム、及び前記光学フィルムの少なくとも一面に形成された粘着性保護フィルムを含み、粘着性保護フィルムは本発明の実施例によるシリコン系粘着性保護フィルムを含むことができる。
【0154】
光学フィルムは、ディスプレイパネルとしてポリイミドフィルムを含み得る。一具体例において、光学フィルムは、発光素子層および発光素子層の少なくとも一面に形成されたポリイミドフィルムで構成できる。光学フィルムとシリコン系粘着性保護フィルム間には、有機絶縁膜または無機絶縁膜をさらに形成することもできる。光学部材は、シリコン系粘着性保護フィルムの別の一面に離型フィルム(ライナー)をさらに含むことができる。離型フィルムは、粘着性保護フィルムが外部の異物等によって汚染されることを防ぐことができる。離型フィルムは、上述の光学フィルムと同種または異種の物質で形成された光学フィルムを使用することができる。例えば、離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アクリル樹脂の一つ以上の樹脂で形成されたフィルムになり得る。離型フィルムは、厚さが10μm乃至100μm、好ましくは10μm乃至50μmになり得る。前記範囲で、粘着性保護フィルムを支持することができる。
【0155】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の好ましい実施例によって、本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されるのではない。
【0156】
実施例1
固形分基準で下記表1の成分を下記表1の含量(単位:重量部)で混合し、溶媒トルエン10重量部をさらに混合してシリコン系粘着性保護フィルム用組成物を製造した。
【0157】
製造した組成物を離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ:75μm)に所定の厚さに塗布し、80℃で2分間、130℃で3分間乾燥させ、室温で3日間熟成させて、シリコン系粘着性保護フィルム(厚さ:25μm)と離型フィルムの積層体を製造した。
【0158】
実施例2乃至実施例13
前記実施例1において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物中の各成分の種類および含量を下記表1および表2のように変更したことを除いては、実施例1と同じ方法によりシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0159】
比較例1乃至比較例6
前記実施例1において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物中の各成分の種類および含量を下記表2(単位:重量部)のように変更したことを除いては、実施例8と同じ方法によりシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0160】
実施例14
固形分基準で下記表3の成分を下記表3の含量(単位:重量部)を混合し、溶媒トルエン10重量部をさらに混合してシリコン系粘着性保護フィルム用組成物を製造した。
【0161】
製造した組成物を離型フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ:75μm)に所定の厚さに塗布し、80℃で2分間、130℃で3分間乾燥させ、室温で3日間熟成させて、シリコン系粘着性保護フィルム(厚さ:25μm)と離型フィルムの積層体を製造した。
【0162】
実施例15乃至実施例20
前記実施例14において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物中の各成分の種類および含量を下記表3のように変更したことを除いては、実施例1と同じ方法によりシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0163】
比較例7乃至比較例9
前記実施例14において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物中の各成分の種類および含量を下記表3のように変更したことを除いては、実施例1と同じ方法によりシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0164】
物性評価(1)
実施例1乃至13および比較例1乃至6で製造したシリコン系粘着性保護フィルム用組成物および/またはシリコン系粘着性保護フィルムに対して下記物性を評価し、その結果を下記表1乃至表3に示した。
【0165】
(1)初期剥離力(A)(単位:gf/inch):実施例および比較例のシリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルム(PETフィルム)の積層体を幅×長さ(25mm×200mm)に切断し、得た積層体を被着体であるポリイミド(PI)フィルム(GF200,SKCKOLON社)に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ、2kgローラーで加圧して試片を製作した。次に、テクスチャーアナライザー(TA)を使用して前記ポリイミドフィルムから前記シリコン系粘着性保護フィルムを、剥離速度2400mm/min、剥離角度180°、剥離温度25℃で剥離した際の剥離力を測定した。前記試片を3つ製作し、剥離力を測定した後、平均値を求めた。これを初期剥離力とした。前記ポリイミドフィルムの代わりにガラス板を使用して、同じ方法で初期剥離力を評価した。
【0166】
(2)経時剥離力(A)(単位:gf/inch):(1)と同じ方法により試片を製作し、製作した試片を50℃のオーブンに7日間放置し、試片をオーブンから取り出した後、室温で30分間冷却させ、(1)と同じ方法により剥離力を測定した。前記ポリイミドフィルムの代わりにガラス板を使用して、同じ方法により剥離力を評価した。
【0167】
(3)剥離力上昇率(A)(単位:%):(1)と(2)で得た剥離力(A)を用いて前記数式1-1に従って剥離力上昇率を計算した。
【0168】
(4)残留剥離力(単位:gf/inch):実施例と比較例で製造したシリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルム(PETフィルム)の積層体を幅×長さ(35mm×120mm)に切断し、得た積層体をポリイミドフィルム(GF200,SKCKOLON社)に前記シリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ、2kgローラーで加圧して試片を製作した。製作した試片を50℃のオーブンに7日間放置し、試片をオーブンから取り出した後、室温で30分間冷却させ、前記ポリイミドフィルムからシリコン系粘着性保護フィルムを除去した。シリコン系粘着性保護フィルムが除去された前記ポリイミドフィルムのうち、前記シリコン系粘着性保護フィルムが除去されたものと同じ面積で粘着テープ(日東電工社,31B-75PLC)を粘着した。室温で30分経過した後、前記ポリイミドフィルムから前記粘着テープを、剥離速度300mm/min、剥離角度180°、剥離温度25℃で剥離した際の残留剥離力(M3)を測定した。剥離力は、テクスチャーアナライザー(TA)を使用して測定した。ポリイミドフィルムの代わりに無アルカリガラス板を使用して、同じ方法により残留剥離力を測定した。
【0169】
(5)残留剥離力低下率(単位:%):(4)で前記の使用した粘着テープ(日東電工社,31B-75PLC)を前記ポリイミドフィルム[シリコン系粘着性保護フィルムが粘着しなかった最初のポリイミドフィルム]に同じ面積で粘着し、室温で30分経過した後、M3測定と同じ方法により標準剥離力(M4)を測定した。標準剥離力(M4)は970gf/inchである。下記数式2-1に従い残留剥離力低下率を計算した:
[数2-1]
残留剥離力低下率=(M3-M4)/M4×100
(4)で使用した粘着テープ(日東電工社,31B-75PLC)に対して前記ガラス板[シリコン系粘着性保護フィルムが粘着しなかった最初の無アルカリガラス板]に同じ面積で粘着し、室温で30分経過した後、M3の測定と同じ方法により標準剥離力(M4)を測定した。標準剥離力(M4)は、652gf/inchである。前記数式2-1を用いて同じ方法により残留剥離力低下率を計算した。
【0170】
(6)引張強度(単位:MPa):フッ素処理されたフィルム(ドンウォンインテック,FL-75BML)の一面に実施例と比較例の粘着剤組成物を所定の厚さでコーティングし、前記コーティング層にPETフィルムを合わせた後、130℃で5分間硬化させ、フッ素処理されたフィルムとPETフィルム間に厚さ75μmのシリコン系粘着性保護フィルムが積層された積層体を製造した。前記積層体を図1のドッグボーン(dog bone)形状に切断し、前記フッ素処理されたフィルムとPETフィルムを除去して引張強度測定のための試片を製作した。
【0171】
図1を参照すると、試片はドッグボーン(dog bone)の形状を有し、ドッグボーンの全体の長さは40mm、ドッグボーンの全体の幅は15mmで、厚さは75μmである。製作したモジュラス測定用試片に対して引張強度測定装置(Instron社)を使用して測定した。具体的に、図1のドッグボーン中の左側末端を前記引張強度測定装置の第1ジグに連結し、右側末端を前記引張強度測定装置の第2ジグに連結した。このとき、左側末端中の第1ジグに連結される部分と右側末端中の第2ジグに連結される部分は、同じ面積にした。次に、第1ジグは固定させた状態で第2ジグをload cell:1kN、引張速度:50mm/min、25℃で引張させて図1のドッグボーン中の幅15mm厚さ5mmに表した部分が切れた時の値を引張強度として求めた。
【0172】
(7)段差埋め性:段差埋め性は、図2の断面を有する試片を製作して測定した。実施例と比較例で製造したシリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を、幅×長さ(50mm×50mm)に切断し、得た積層体から離型フィルムを除去して、段差埋め性を測定するためのシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。図2を参照すると、パターン化されたフィルム[材質:ポリイミド](1)上に製造したシリコン系粘着性保護フィルム(2)を積層させた。このとき、図2において、パターン化されたフィルム(1)とシリコン系粘着性保護フィルム(2)間の空間(3)は、空気層(air gap)である。図2において、Hは2μm、Aは1mm、Bは3mm、Cは1mmである。光学顕微鏡を使用してair gap(図2でAとCそれぞれにおいて粘着性保護フィルムが付着していない部分の長さ)の長さを測定した。air gap≦20μmの場合は「〇」、air gap>20μmの場合は「×」で評価した。
【0173】
物性評価(2)
実施例14乃至20および比較例7乃至9で製造したシリコン系粘着性保護フィルムに対して下記物性を評価し、その結果を下記表3に示した。
【0174】
(1)初期剥離力(B)(単位:gf/inch):実施例と比較例のシリコン系粘着性保護フィルムと離型フィルムの積層体を幅×長さ(25mm×100mm)に切断し、得た積層体を被着体としてガラス板にシリコン系粘着性保護フィルムを介して合わせ、2kgローラーで加圧し、23℃および50%の相対湿度で30分間放置して試片を製作した。次に、テクスチャーアナライザー(Texture analyzer)(TA)を使用してJISZ2037に基づいてガラス板から前記シリコン系粘着性保護フィルムを剥離速度2400mm/min、剥離角度180°、剥離温度25℃で剥離する際の剥離力を測定した。3つの前記試片を製作し剥離力を測定した後、平均値を求めた。これを初期剥離力とした。
【0175】
(2)経時剥離力(B)(単位:gf/inch):(1)と同じ方法で試片を製作し、製作した試片を23℃、50%の相対湿度で14日間放置し、(1)と同じ方法により剥離力を測定した。
【0176】
(3)剥離力上昇率(B)(単位:%):(1)と(2)で得た剥離力を用いて前記数式1に従って剥離力上昇率を計算した。
【0177】
(4)初期剥離力(A)(単位:gf/inch)、経時剥離力(A)(単位:gf/inch)および剥離力上昇率(A)(単位:%):前記実施例14乃至20および比較例7乃至9で製造したシリコン系粘着性保護フィルムに対して、前記実施例13と同じ方法により初期剥離力(A)、経時剥離力(A)を測定して数式1-1に従って剥離力上昇率(A)を測定した。
【0178】
(5)残渣特性:Nitto 31B粘着テープを、幅×長さ 25mm×100mmの大きさで準備して、被着体としてポリイミドフィルム(SKCコーロンPI,GF700)に粘着し、2kgロールで圧着した後、23℃および50%の相対湿度の雰囲気で24時間放置し、JISZ0237に準じて引張試験機テクスチャーアナライザー(TA)を用いて剥離速度2400mm/min、剥離角度180°、25℃の条件で剥離力(M1とする)を測定した。
【0179】
実施例と比較例で得た粘着フィルムを、幅×長さ 25mm×100mmの大きさで測定試料を準備した。23℃及び50%の相対湿度の雰囲気下で前記試料を前記ポリイミドフィルム(SKCコーロンPI,GF700)に粘着し、2kgロールで圧着した後、50℃で14日間放置し、粘着フィルムを除去した。粘着フィルムが除去された表面に前記M1測定時に使用したNitto 31B粘着テープを付着して23℃及び50%の相対湿度の雰囲気で24時間放置した後、JISZ0237に準じて引張試験機テクスチャーアナライザー(TA)を用いて剥離速度2400mm/min、剥離角度180°、25℃の条件で剥離力(M2とする)を測定した。下記数式2に従って残留剥離力変化率を計算した。
【0180】
[数2]
残留剥離力変化率=(1-(M2/M1))×100
○:剥離力変化率20%未満、優秀。
【0181】
△:剥離力変化率20%以上50%未満、使用可能な程度。
【0182】
×:剥離力変化率50%以上、実用不可。
(5)濡れ性:実施例と比較例の積層体を、幅×長さ 50mm×100mmの大きさに切断して試片を製作した。23℃及び50%の相対湿度で30分間放置した後、前記離型フィルムを剥がして粘着フィルムを露出させた。前記PETフィルム上に粘着フィルムが粘着した状態を粘着テープとする。前記粘着テープの両側末端をそれぞれ手でつかんで露出させた粘着フィルムの中心部をガラス板に接触させた後、手を離した。前記粘着テープの中心部とガラス板の接触により前記粘着テープ全体がガラス板に密着するまでの時間を測定して、ガラス板に対する濡れ性を評価した。密着するまでの時間が短いほどガラス板に対する親和性が良好なため、ガラス板を使用するディスプレイ及びディスプレイ製造工程でガラス板を保護しやすいことを意味する。
【0183】
○:密着するまでの時間が3秒未満(濡れ性が優秀)
△:密着するまでの時間が3秒以上5秒未満(濡れ性が良い)
×:密着するまでの時間が5秒以上(使用不可能)
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
*前記表1乃至表3で使用した各成分を下記表4に示した。
【0188】
【表4】
【0189】
前記表1及び表2で表した通り、本発明のシリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する優れた保護効果、低い剥離力上昇率、優れたウェッティング性および優れた段差埋め性を提供する。本発明のシリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に粘着し剥離させた際の被着体の汚染および損傷がないようにした。その反面、前記表2に表した通り、本発明中の有機ポリシロキサン樹脂を含まない比較例1乃至比較例3は、本発明の剥離力上昇率を満たせなかったり、段差埋め性が良くなかった。また、本発明中の成分(i)のみを含んだり、成分(ii)のみを含む比較例4、比較例5は、それぞれ段差埋め性が良くなかったり、本発明の剥離力上昇率を満たすことができなかった。また、本発明の成分(ii)の代わりにビニル基を有さないポリジメチルシロキサンを含む比較例6は、本発明の剥離力上昇率を満たさなかったり、残留剥離力低下率が改善されなかった。
【0190】
また、前記表3で表した通り、本発明のシリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する優れた保護効果、低い剥離力上昇率、優れた濡れ性を提供し、残渣剥離率低下率が低く被着体に粘着し剥離させた際に被着体の汚染および損傷がないようにした。
【0191】
その反面、本発明中の有機ポリシロキサン樹脂を含まない比較例7は、剥離力上昇率が高かった。本発明の成分(ii)を含まない比較例8は、濡れ性が非常に良くなくシリコン系粘着性保護フィルムとして使用できなかった。本発明中の成分(i)を含まない比較例9は、剥離力上昇率が高く、残渣剥離力低下率が高いため被着体に粘着し剥離させた際の被着体に汚染および損傷が生じ得る。
【0192】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。
図1
図2