(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ヒータ部材、加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240404BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20240404BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G03G15/20 505
H05B3/10 A
H05B3/00 310E
(21)【出願番号】P 2020034986
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-033939(JP,A)
【文献】特開2010-276729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/10
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗発熱体で構成されたヒートブロックが基材の長手方向に複数配設されたヒータ部材であって、
前記複数のヒートブロックのうちの一つである第1ヒートブロックは、前記基材の長手方向に延びた複数列の抵抗発熱体を有し、前記複数列の抵抗発熱体は互いに電気的に並列に接続さ
れ、
前記長手方向に直交する方向を短手方向としたときに、
前記第1ヒートブロックの前記基材の長手方向両端側に、前記複数のヒートブロックのうちの一つである第2ヒートブロックが配設され、当該第2ヒートブロックの抵抗発熱体が前記基材の短手方向に複数回折り返された第2抵抗発熱体を有し、当該両端側に配設された第2抵抗発熱体は互いに電気的に並列に接続されていることを特徴とするヒータ部材。
【請求項2】
前記複数列の抵抗発熱体が前記基材の長手方向に連続する直線状に形成されている請求項1記載のヒータ部材。
【請求項3】
前記第2ヒートブロックは、前記第1ヒートブロックの長手方向両側に隣接して設けられることを特徴とする請求項
1記載のヒータ部材。
【請求項4】
前記第1ヒートブロック上に第1温度検知部材が配置され、前記第2ヒートブロック上に第2温度検知部材が配置されている請求項
1から3のいずれか1項記載のヒータ部材。
【請求項5】
前記第1温度検知部材と前記第2温度検知部材は、前記ヒートブロックの温度を検知するサーミスタと、前記ヒートブロックへ流れる電流を遮断するサーモスタットを含むことを特徴とする請求項
4記載のヒータ部材
。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項記載の前記ヒータ部材によって被加熱部材を加熱することを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
請求項
6記載の加熱装置を利用してトナー像を加熱する定着装置。
【請求項8】
可撓性を有するスリーブ状の回転部材と、
前記回転部材の内周に摺接する請求項1から
3のいずれか1項記載のヒータ部材と、
前記回転部材を挟んで前記ヒータ部材と圧接して前記回転部材との間にニップ部を形成する加圧部材とを有し、
小サイズ用紙と、該小サイズ用紙よりも用紙幅が大きい大サイズ用紙とを通紙可能な定着装置において、
前記ヒータ部材の第1ヒートブロックの長手方向長さが前記小サイズ用紙の用紙幅に対応し、前記第1ヒートブロックと前記第2ヒートブロックの合計長手方向長さが前記大サイズ用紙の用紙幅に対応し、
前記ニップ部で用紙を挟持搬送する際に前記ヒータ部材の熱を前記小サイズ用紙又は前記大サイズ用紙に付与することを特徴とする定着装置。
【請求項9】
給紙装置、画像形成部および請求項7記載の加熱装置もしくは請求項
7又は
8記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒータ部材、加熱装置、定着装置および画像形成装置に係り、特に通電によって発熱する抵抗体で構成されたヒートブロックを有するヒータ部材と、当該ヒータ部材を使用した加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られている。その1つに、低熱容量の薄肉定着ベルトをヒータ部材で直接加熱する型式がある。このヒータ部材はヒータ基材と抵抗発熱体(面状ヒータ)で構成される。定着ベルトの外側には加圧部材としての加圧ローラが配設され、この加圧ローラを定着ベルトを挟んでヒータ部材に圧着することで定着ニップを形成する。
【0003】
面状ヒータは導電ペーストを使用してスクリーン印刷によってヒータ基材上に形成される。面状ヒータの抵抗パターンは、ヒータ基材の長手方向に一往復またはワンパスする直列接続のシンプルなものから、蛇行状抵抗パターンを有するヒートブロックをヒータ基材の長手方向に並列接続で複数形成したものがある。後者は複数用紙サイズに対応して所望のヒートブロックのみを通電加熱することで、定着ベルトの端部温度上昇を抑制しつつ生産性(時間当り通紙枚数)を高めることができる。なお「蛇行状」とは、少なくとも一つの折返し部分を有する曲がりくねった形状のことをいう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒータ基材の長手方向に複数のヒートブロックを設けると、これらヒートブロックの温度を検出する温度検知部材やサーモスタットなどの電流遮断部材(安全素子)を基本的にブロック数に対応して配設しなければならない。したがって、その分だけコストアップして温度制御も複雑化する。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、ヒータ部材のヒートブロック数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のヒータ部材は、抵抗発熱体で構成されたヒートブロックが基材の長手方向に複数配設されたヒータ部材であって、前記複数のヒートブロックのうちの一つである第1ヒートブロックは、前記基材の長手方向に延びた複数列の抵抗発熱体を有し、前記複数列の抵抗発熱体は互いに電気的に並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒータ部材のヒートブロック数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係るヒータ部材の基本構造を示す平面図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係るヒータ部材の変形例を示す平面図である。
【
図3C】従来のヒータ部材の基本構造を示す平面図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係るヒータ部材の平面図である。
【
図4B】変形実施形態に係るヒータ部材の平面図である。
【
図4C】変形実施形態に係るヒータ部材の平面図である。
【
図4D】変形実施形態に係るヒータ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るヒータ部材、定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0010】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0011】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0012】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0013】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0014】
(レーザプリンタの構成)
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。なお、画像形成装置としては、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機などであってもよい。
【0015】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部である4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体103に対して着脱可能に構成され、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0016】
具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5と、を備える。
【0017】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置300と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10と、を備える。
【0018】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13と、を有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。
【0019】
これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0020】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0021】
次に、
図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0022】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0023】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0024】
この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0025】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置300へと搬送され、定着装置300によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0026】
(レーザプリンタの原理)
図2Aは、本発明の定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのレーザプリンタの原理図である。画像形成装置100は像担持体2(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置5を有している。また像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置3と、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置4と、像担持体2の下方に配設された転写手段TMと、除電装置等を有する。
【0027】
露光装置6は像担持体2の上方に配設されている。この露光装置6は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからのレーザ光Lbをミラー7aで反射して像担持体2に照射する。
【0028】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置50は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置50は記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60と共にユニット化される。
【0029】
給紙ローラ60の下流側に、分離搬送手段としてのレジストローラ対250が配設されている。用紙給送装置50から給紙された用紙Pをレジストローラ対250で一旦停止させる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0030】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、像担持体2上のトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて転写手段TMの転写ニップNに送り出される。そして、送り出された用紙Pは、転写ニップNにおいて印加されたバイアスによって像担持体2上のトナー像が所望の転写位置に静電的に転写されるようになっている。
【0031】
転写ニップNの下流側に定着装置300が配設されている。定着装置300は後述するヒートブロック331、332で加熱される定着部材としての定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。
【0032】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作を説明する。画像形成装置100の制御部からの給紙信号に対応して給紙ローラ60が回転する。この給紙ローラ60の回転により用紙給送装置50に積載された束状用紙Pの最上位の用紙が分離されて給紙路に送り出される。
【0033】
送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、像担持体2上のトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0034】
帯電装置3は、像担持体2の表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光装置6は、画像データに基づいたレーザ光Lbをミラー6aで反射して像担持体2の表面に照射する。
【0035】
レーザ光Lbが照射された像担持体2の表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置4は、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体4aを有し、トナーボトルから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体4aを介して、静電潜像が形成された像担持体2の表面部分に転移させる。
【0036】
トナーが転移した像担持体2は、その表面にトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2上に形成されたトナー画像を転写手段TMで用紙Pに転写する。
【0037】
ドラムクリーニング装置5は、転写行程を経た後の像担持体2の表面に付着している残留トナーをクリーニングブレード5aで除去する。除去された残留トナーは廃トナー収容部に回収される。
【0038】
トナー画像が転写された用紙Pは定着装置300へと搬送される。定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは定着装置300から送り出される。
【0039】
(定着装置)
続いて、定着装置300の構成について説明する。
【0040】
図2Bに示すように、本実施形態に係る定着装置300は、定着部材としての無端状のベルト部材から成る定着ベルト310と、定着ベルト310の外周面に接触してニップ部Nを形成する対向部材としての加圧ローラ320と、定着ベルト310を加熱するヒータ部材330を有する。ヒータ部材330はヒータホルダ344で保持され、ヒータホルダ344は補強部材としてのステー350で長手方向に渡って補強されている。
【0041】
定着ベルト310は可撓性を有するスリーブ状の回転部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。
【0042】
基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0043】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。
【0044】
ヒータ部材330は、定着ベルト310の幅方向に渡って長手状に設けられ、定着ベルト310の内周面に接触するように配置されている。ヒータ部材330は、定着ベルト310に対して非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、ヒータ部材330を定着ベルト310に対して直接接触させる方が定着ベルト310への熱伝達効率がよくなる。
【0045】
また、ヒータ部材330を定着ベルト310の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト310の外周面がヒータ部材330との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ部材330は定着ベルト310の内周面に接触している方がよい。
【0046】
ヒータ部材330は、基材層330aと、基材層330aのニップ部N側に順次積層される、第1絶縁層330b、発熱部330cを有する導体層330d、第2絶縁層330eと、基材層330aの反対側に積層された第3絶縁層330fと、で構成されている。
【0047】
前記基材層330aはセラミックで構成することができる。セラミックは線膨張係数がガラスに近いため、絶縁層330b、330e、330fにガラスを使う場合に熱膨張時の基材層330aと絶縁層330b、330e、330fとの間のズレによって導体層330dに剪断力が加わり難いメリットがある。また、セラミックの熱伝導率はステンレス等の金属よりも高いので基材層330aを介して定着ベルト310に熱伝導させるのに有利である。
【0048】
ヒータホルダ344及びステー350は、定着ベルト310の内周側に配置されている。ステー350は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置300の両側壁部に支持されている。ステー350によってヒータホルダ344のヒータ部材330側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ部材330及びヒータホルダ344は加圧ローラ320の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト310と加圧ローラ320との間にニップ部Nが形成される。
【0049】
ヒータホルダ344は、ヒータ部材330の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ344をLCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ部材330からヒータホルダ344への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト310を加熱することが可能である。
【0050】
加圧ローラ320と定着ベルト310は、付勢部材としてのバネによって互いに圧接されている。これにより、定着ベルト310と加圧ローラ320との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ320は、画像形成装置本体103に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。
【0051】
一方、定着ベルト310は、加圧ローラ320の回転に伴って従動回転するように構成されている。回転時、定着ベルト310はヒータ部材330に対して摺動する。定着ベルト310の摺動性を高めるために、ヒータ部材330と定着ベルト310との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
【0052】
印刷動作が開始されると、加圧ローラ320が回転駆動され、定着ベルト310が従動回転を開始する。また、ヒータ部材330に電力が供給されることで、定着ベルト310が加熱される。そして、定着ベルト310の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2Bに示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト310と加圧ローラ320との間(ニップ部N)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0053】
(ヒータ部材の基本構造)
図3Aは、本実施形態に係るヒータ部材330の基本構造を示したものである。
図3Aに示すように、ヒータ部材330は長手方向中央部に配設された第1ヒートブロック331と、長手方向両端部にあって第1ヒートブロック331に隣接して配設された第2ヒートブロック332を有する。
【0054】
第1ヒートブロック331は、ヒータ基材360の長手方向に連続する直線状に延びた複列(5列)の第1抵抗発熱体331aを有する。これら5列の第1抵抗発熱体331aは、第1抵抗発熱体331aの両端に配設された導電ヘッダ337、338によって並列接続されている。そして電源PWに接続される電極333、335が、導電線336、341を介して導電ヘッダ337、338に接続されている。5列の前記第1抵抗発熱体331aは、
図3Bのように波形が連続する第1抵抗発熱体331bの形状にしてもよい。これにより第1抵抗発熱体331bの長さをかせぐことができ、抵抗材料ペーストの比抵抗を下げることができる。
【0055】
5列の第1抵抗発熱体331aは、それぞれ同じ幅、厚さ、長さで、かつ、互いに等間隔平行に形成されている。そして第1ヒートブロック331の領域内における発熱密度が一定に維持されるように構成されている。
【0056】
一方、長手方向両端部に配設された第2ヒートブロック332は、ヒータ部材330の短手方向に蛇行状に延びた第2抵抗発熱体332aを有する。そして電源PWが接続される電極333、335が、導電線339、341を介して、第2抵抗発熱体332aの両端に接続されている。ここで「短手方向」とは、ヒータ部材330の長手方向と直交する方向であって、定着装置300にあっては用紙Pの通紙方向と平行な方向をいう。また「蛇行状」とは、少なくとも一つの折返し部分を有する曲がりくねった形状である。本実施形態はヒータ部材330の長手方向に所定長さで延びた後に逆方向に折り返して所定長さで延びる形を、ヒータ部材330の短手方向に複数回繰り返した形状であるので、蛇行状である。
【0057】
第2抵抗発熱体332aは蛇行状の折返し回数が本実施形態では4回であって、長手方向に延びた5本の抵抗発熱体で構成される。当該抵抗発熱体の相互間隔は一定であって、第2ヒートブロック332の領域内における発熱密度は一定に維持されるように構成されている。
【0058】
第2抵抗発熱体332aの長さを蛇行状パターンでかせぐことで、抵抗材料ペーストの比抵抗を下げられるとともに、短手方向における温度分布のムラを抑制することができる。第2抵抗発熱体332aを蛇行状とせず短手方向の1本パターンにすると、局所的な高温部ができてしまうので好ましくない。
【0059】
ヒートブロック331、332の抵抗発熱体331a、332aは、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等によりヒータ基材に塗工し、その後、当該ヒータ基材を焼成することによって形成することができる。抵抗発熱体の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。
【0060】
本実施形態では、第2ヒートブロック332の発熱領域よりも第1ヒートブロック331の発熱領域が大きい。したがって第1ヒートブロック331の方が大きな電力を必要とする。
【0061】
換言すると、第1ヒートブロック331の抵抗値を第2ヒートブロック332よりも相対的に小さくする必要がある。仮に第1抵抗発熱体331aを蛇行状に形成して長さを長くすると、抵抗値としては大きくなり、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332を同じ比抵抗の材料ペーストで形成できなくなる。
【0062】
第1ヒートブロック331を短手方向に配列した5列の第1抵抗発熱体331aで形成することで、1列の第1抵抗発熱体331a当たりの発熱量を抑えることができる。ここで、5本の第1抵抗発熱体331aで900Wの発熱量が必要とすると、1本当たりの第1抵抗発熱体331aの発熱量は180Wとなる。第1抵抗発熱体331aの長手方向の長さを216mmとすると、発熱密度[W/mm]は0.83[W/mm]となる。
【0063】
一方、両端の第2ヒートブロック332の第2抵抗発熱体332aでも、1列の第1抵抗発熱体331aと長手方向で同じ発熱量を出すためには、各第2抵抗発熱体332aで180Wずつの発熱量が必要となる。第2抵抗発熱体332aは短手方向に蛇行状に形成することで長さを長くすることができるので、第2抵抗発熱体332aの長手方向の長さを43mmとし、蛇行状に4回折り返して第2抵抗発熱体332aを形成すると、第2抵抗発熱体332aの総長は215mmとなる。
【0064】
したがって、第2抵抗発熱体332aの発熱密度[W/mm]は0.84[W/mm]となり、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332を同じ比抵抗の抵抗体材料で形成可能であることがわかる。これにより、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332を同時にスクリーン印刷することができ、低コスト化に寄与する。
【0065】
第1ヒートブロック331の幅は、例えばA4紙(幅210mm)(小サイズ用紙)を縦方向搬送する場合に対応して、前述のように幅216mm設定することができる。また第2ヒートブロック332の幅は、例えば小サイズ用紙よりも用紙幅が大きいA3紙(幅297mm)(大サイズ用紙)を縦方向搬送する場合に対応して、前述のように幅43mmに設定することができる((297mm-216mm)÷2=40.5mm<43mm)。第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332の境目に、小サイズ用紙の端部を合わせることで、小サイズ用紙の通紙時に第1ヒートブロック331のみ通電して端部温度上昇を抑制することができる。
【0066】
導電ヘッダ337、338と導電線336、339、340、341は、抵抗発熱体331a、332aよりも小さい抵抗値の導体で構成されている。導電ヘッダ337、338と導電線336、339、340、341の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって導電ヘッダ337、338と導電線336、339、340、341が形成されている。
【0067】
本実施形態では、1つの第1ヒートブロック331と2つの第2ヒートブロック332の計3ブロックで構成しているので、温度検知部材の数は最低2つでよい。すなわち、第1ヒートブロック331の領域内の例えば中央に1個の温度検知部材を設け、左右いずれか一方の第2ヒートブロック332の領域内の例えば中央に1個の温度検知部材を設ける。
【0068】
これに対して従来のヒータ部材330’は、
図3Cのように、第1ヒートブロック331に対応する領域に並列接続の5つのヒートブロック331-1~331-5があるので、基本的には合計7個のブロック数に対応して温度検知部材や安全素子を配設しなければならない。したがって、温度検知部材や安全素子によってヒータ部材330’がコストアップするのは勿論のこと、複数の温度検知部材の検出温度に基づいた温度制御が複雑化する。
【0069】
(ヒータ部材の実施形態)
次に、本発明の実施形態に係るヒータ部材330を
図4Aを参照して具体的に説明する。この
図4Aは、基本構造を示す
図3Aのヒータ部材330に、温度検知部材としてのサーミスタTH1、TH2、電流遮断部材(安全素子)としてのサーモスタットS1、S2、電源PWに接続する給電線351~356およびスイッチSW1、SW2を追加したものである。
【0070】
但し、第2ヒートブロック332の接続に使用する導電線の長さを短縮するため、給電線356を接続する電極342を新たに追加している。サーモスタットS1、S2は、サーミスタTH1、TH2の故障、制御装置のトライアックの短絡、CPUの故障などでヒータ部材330が異常発熱し、過昇温に至るのを防止する。
【0071】
スイッチSW1、SW2は電源PWに対して並列に配置され、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332を別々にON-OFFすることができる。スイッチSW1が中央の第1ヒートブロック331用であり、スイッチSW2が両端の第2ヒートブロック332用である。
【0072】
図4Aに示すように、第1温度検知部材としてのサーミスタTH1と第1電流遮断部材としてのサーモスタットS1が、取り付け位置のバラツキを考慮して、第1ヒートブロック331のほぼ中央、すなわちヒータ基材360の長手方向および短手方向の両方向でほぼ中央部に配置されている。当該配置領域は最小紙幅の範囲内であって、サーミスタTH1が必ず用紙と摺接する第1ヒートブロック331の温度を検知する。
【0073】
サーモスタットS1はサーミスタTH1の近くに配置されている。サーモスタットS1によって、5列の第1抵抗発熱体331aのいずれかの断線や導電ヘッダ337、338の断線などにより、一部の抵抗発熱体331aのみが異常発熱し過昇温となるのを防止する。
【0074】
サーミスタTH1とサーモスタットS1を、あらゆる用紙サイズの通紙内に配置することで、非通紙部の端部温度上昇の影響を受けないようにできる。これにより、故障による異常発熱時に安全装置により早期の通電遮断が可能となる。非通紙部に配置すると、誤検知防止のため安全装置の作動温度を高く設定する必要があるので、安全性では不利側となる。
【0075】
左側の第2ヒートブロック332のほぼ中央に、第2温度検知部材としてのサーミスタTH2が配置されている。詳しくは、短手方向に並んだ5本の蛇行状に折返された抵抗発熱体331aのうち、中央3本の抵抗発熱体331aの長手方向中央に重なるようにしてサーミスタTH2が配設されている。当該サーミスタTH2は、右側の第2ヒートブロック332に配置することもできるが、ここではスペース的な余裕がある左側の第2ヒートブロック332に配置する。
【0076】
右側の第2ヒートブロック332のほぼ中央に、第2電流遮断部材としてのサーモスタットS2が配置されている。当該サーモスタットS2も、短手方向に並んだ5本の蛇行状に折返された抵抗発熱体332aのうち、中央3本の抵抗発熱体332aの長手方向中央に重なるようにして配設されている。このサーモスタットS2によって、一部の抵抗発熱体332aのみが異常発熱し過昇温に至るのを防止する。
【0077】
図4Aに示すサーミスタTH1、TH2はヒータ基材360の裏面側に設けられ、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332の温度を検知する。サーミスタTH1は第1ヒートブロック331の発熱領域であれば任意の位置に配置可能であるが、サーミスタTH1の取り付け位置のバラツキを考慮して第1ヒートブロック331の短手方向中央部に配置するのが好ましい。さらには長手方向位置については通紙時における非通紙部の温度上昇の影響を受けにくい最小紙幅内に配置するのがさらに好ましい。
【0078】
前記サーミスタTH1、TH2は、ヒータ部材330の基材360の裏面側に設けるほか、第1抵抗発熱体331a、第2抵抗発熱体332aの裏側に設けることもできる。サーミスタTH2は左側の第2ヒートブロック332の裏に設けているが、右側の第2ヒートブロック332の裏側に設けても構わない。
【0079】
図4Aと、従来のヒータ部材330’を示す後述の
図5Aを比較するとわかるように、安全性の確保に必要なサーモスタットの個数が従来の5個(
図5A)から2個(
図4A)となり、3個の削減が可能となる。
図5Aの構成はヒートブロックを長手方向に5分割(ヒートブロック331-1~331-5)し、これらを並列に接続しているので、一部のヒートブロックへの通電が停止すると、長手方向において発熱しない領域と発熱する領域に分かれる。
【0080】
図5Aでは通電が停止したヒートブロック以外のヒートブロックへの通電は継続するため、長手方向に複数の過昇温を検知する部材を配置する必要がある。しかしながら、
図4Aの構成の場合は、第1ヒートブロック331が長手方向に連続して直線状に延びた並列接続の5列の第1抵抗発熱体331aを有することで、5列のうち一部の第1抵抗発熱体331aへの通電が停止しても長手方向に発熱しない領域はできない。このため、長手方向に過昇温を検知する部材を複数配置する必要がない。
【0081】
(ヒータ部材の変形実施形態)
図4Bの変形例は、第1ヒートブロック331の第1抵抗発熱体331aを
図4Aよりも幅広に形成することで発熱量を稼ぎ、それによって第1抵抗発熱体331aの本数(列数)を5本→4本に減らしたものである。その他は
図4Aと同様である。
【0082】
図4Cの変形例は、スイッチSW1、SW2を直列に配置してスイッチSW1をメインスイッチとしたものである。これにより、スイッチSW1、SW2がONの状態からスイッチSW1のみOFFにすることで第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332を同時に非通電にする。その他は
図4Bと同様である。
【0083】
図4Dは、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332の境目に短手方向に連続する隙間ができないように、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332の端部を傾斜させたものである。こうすることで、第1ヒートブロック331と第2ヒートブロック332の境目に定着ベルト310の温度低下を防止することができる。
【0084】
図5Aは、従来のヒータ部材330’に対するサーミスタTH1、TH2、サーモスタットS1a~S1d、S2の配置状態を示したものである。このヒータ部材330’は、最小紙幅を含む中央の5つのヒートブロック331-1~331-5と、両端部の2つのヒートブロック332の計7個のヒートブロックのうち、サーミスタTH1、TH2を配置したヒートブロック以外のすべてのヒートブロックに、サーモスタットS1a~S1d、S2を配置しなければならない。したがって、サーモスタットの数が多い分だけコストアップとなる。
【0085】
また、
図5Aの構成を電気回路図にしたものが
図5Bである。
図5Bにおいて、抵抗値R1~R7は各ヒートブロック331-1~331-5、332の抵抗を示し、抵抗値r1~r14は導電線336(r14)、337(r10―r13)、339(r1)、341(r2-r8)、343(r9)の抵抗値を示している。
【0086】
ここで、ヒートブロック331-1~331-5、332を簡便のために発熱体1~7と表記して、電極333~335からスタートして各発熱体1~7を経由する電気抵抗値を表すと以下のようになる。
発熱体1:r1+R1+r2+r3+r4+r5+r6+r7+r8
発熱体2:r14+R2+r3+r4+r5+r6+r7+r8
発熱体3:r14+r13+R3+r4+r5+r6+r7+r8
発熱体4:r14+r13+r12+R4+r5+r6+r7+r8
発熱体5:r14+r13+r12+r11+R5+r6+r7+r8
発熱体6:r14+r13+r12+r11+r10+R6+r7+r8
発熱体7:r8+R7+r9
【0087】
ここで導電線336、337、339、343および共通導電線341の抵抗率が同じとすると、左側の第2ヒートブロック332の導電線は、右側の第2ヒートブロック332の導電線より長いため、抵抗値が(r2+r3+r4+r5+r6+r7)だけ大きくなってしまう。このため、スイッチSW2をONした状態で左側の第2ヒートブロック332の方が右側の第2ヒートブロック332より相対的に発熱量が小さくなり、両端の発熱量のばらつきが発生する。
【0088】
また、同様に、中央の5つのヒートブロック331-1~331-5は、右側の第2ヒートブロック332に比べると導電線が長いため、抵抗値が大きくなってしまう。このため、スイッチSW1、SW2をONした状態では各ヒートブロック331-1~331-5は右側の第2ヒートブロック332に比べて発熱量が小さくなり、長手方向で発熱量のばらつきが発生する。
【0089】
そこで、
図5Aに示すように、共通導電線341と導電線336において、ヒートブロック331-1~331-5、332に接続する導電線337、341は、他の導電線より抵抗を小さくする。具体的には、
図5Aに示すように、導電線337、341の幅を広くする。
【0090】
導電線337、341を幅広化する代わりに、或いは幅広化と併せて、導電線の高さ(厚さ)を高く(厚く)したり、導電線337、341に抵抗率の小さい材料を用いたりすることができる。これにより、ヒートブロック331-1~331-5とヒートブロック332の発熱ばらつきを防ぐことができる。この考え方を前述の
図4A~
図4Cにも適用して、共通導電線341の本体部341aを右端部341bよりも幅広に形成することで、長手方向の発熱量のばらつきを抑制することができる。
【0091】
(他の定着装置の構成)
【0092】
本発明は、上述の定着装置のほか、
図6、
図7に示すような定着装置にも適用可能である。
図6に示す定着装置300は、定着ベルト310に対して加圧ローラ320側とは反対側に、押圧ローラ370が配置されており、この押圧ローラ370とヒータ部材330とによって定着ベルト310を挟んで加熱するように構成されている。
【0093】
一方、加圧ローラ320側では、定着ベルト310の内周にニップ形成部材380が配置されている。ニップ形成部材380は、ステー350によって支持されており、ニップ形成部材380と加圧ローラ320とによって定着ベルト310を挟んでニップ部Nを形成している。
【0094】
図7に示す定着装置300では、定着ベルト310のほかに加圧ベルト390が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320に対して定着ベルト310側とは反対側に、ニップ形成部材380とステー381とを配置し、これらニップ形成部材380とステー381を内包するように加圧ベルト390を回転可能に配置している。
【0095】
そして、加圧ベルト390と加圧ローラ320との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱及び加圧して画像を定着する。その他は、
図2に示す定着装置300と同じ構成である。
【0096】
以上、種々の定着装置の構成について説明したが、本発明に係るヒータ部材は薄肉定着ベルトを直接加熱する型式の定着装置の他、ヒータ部材を内周に配設したヒートローラ型式の定着装置にも適用可能である。また本発明に係るヒータ部材は、定着装置にのみ適用されるものではない。例えば、本発明に係るヒータ部材は、用紙に塗布されたインクを乾燥させるために、インクジェット方式の画像形成装置に搭載される乾燥装置や、インクジェットプリントヘッドのヒータにも適用可能である。
【0097】
さらに、本発明に係るヒータ部材は、ベルト部材によって用紙などのシートを搬送しながら、そのシートの表面に被覆部材としてのフィルムを熱圧着する被覆装置(ラミネータ)にも適用可能である。また、本発明に係るヒータ部材は、ベルト部材を加熱するベルト加熱装置に限らず、ベルト部材を備えていない加熱装置にも適用可能である。また前記ヒータ部材の抵抗発熱体は、シート状、蛇行状の他、櫛歯状、渦巻状等の任意の形状で形成可能である。
【0098】
また第1ヒートブロック331の第1抵抗発熱体331aの本数は必要に応じて増減変更可能である。さらに第1ヒートブロック331は、ヒータ基材360の長手方向中央部に1つだけ配置するほか、複数ブロックでも配設可能であって、例えば従来のヒートブロック数以下で配設することができる。
【符号の説明】
【0099】
1Y,1M,1C,1Bk:作像ユニット 2:感光体(像担持体)
3:帯電装置 4:現像装置
4a:現像剤担持体 5:ドラムクリーニング装置
5a:クリーニングブレード 6:露光装置
6a:ミラー 7:給紙装置
7a:ミラー 8:転写装置
10:排紙装置 11:中間転写ベルト
12:一次転写ローラ 13:二次転写ローラ
14:用紙搬送路 15:タイミングローラ
50:用紙給送装置 60:給紙ローラ
100:画像形成装置 103:画像形成装置本体
250:レジストローラ対 300:定着装置
310:定着ベルト 320:加圧ローラ
321:鉄製芯金 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330、330’:ヒータ部材 330a:基材層
330b、330e:絶縁層 330c:発熱部
330d:導体層 331:第1ヒートブロック
331a:第1抵抗発熱体 332:第2ヒートブロック
332a:第2抵抗発熱体 333~335、342:電極
336、339、340、341:導電線 337、338:導電線(導電ヘッダ)
344:ヒータホルダ 350:ステー351~356:給電線
360:ヒータ基材 370:押圧ローラ
380:ニップ形成部材 381:ステー
390:加圧ベルト Lb:レーザ光
N:転写ニップ N:ニップ部
N1:加熱ニップ(第1ニップ部) N2:定着ニップ(第2ニップ部)
P:用紙 PW:電源
R1~R7:抵抗値 S1、S2、S1a~S1d:サーモスタット
SW1、SW2:スイッチ TH1、TH2:サーミスタ
TM:転写手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【文献】特許第4512232号公報
【文献】特許第6336026号公報