(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】クリーニング装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/10 20060101AFI20240404BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G03G21/10
G03G21/18 114
(21)【出願番号】P 2020012458
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 邦和
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218421(JP,A)
【文献】特開2017-167491(JP,A)
【文献】特開2018-017932(JP,A)
【文献】特開2005-037511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/10
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部に螺旋状にスクリュ部が巻装されて、所定方向に回転してトナーを搬送する搬送スクリュと、
略櫛歯状に形成されて、前記搬送スクリュの回転にともない前記搬送スクリュの前記軸部と前記スクリュ部との間で搖動可能な搖動部材と、
を具備したトナー搬送装置と、
所定の回転方向に回転する像担持体に当接するクリーニングブレードと、
前記クリーニングブレードに対して前記回転方向の上流側で前記像担持体に当接するシール部材と、
を備え、
前記搖動部材は、
前記搬送スクリュの軸方向に対して間隔をあけて並設された複数の張出部と、
前記複数の張出部の自由端側から前記軸部に対して離れる方向にそれぞれ所定角度で屈曲した複数の先端部と、
を具備し、
前記先端部は、その前記軸方向の幅が、少なくとも前記スクリュ部に接触する部分から自由端側に向けて前記軸方向の両側に広がって漸増するように形成
され、
前記先端部は、最も前記像担持体に近づくときに、前記軸方向に直交する断面でみて、前記像担持体と前記クリーニングブレードとの当接位置と、前記像担持体と前記シール部材との当接位置と、を結ぶ仮想線分の中央位置と、前記軸部の軸中心と、を通る仮想線に対して略平行になることを特徴とする
クリーニング装置。
【請求項2】
前記先端部は、その前記軸方向の幅が、前記張出部との境界部から自由端側に向けて前記軸方向の両側に広がって漸増するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の
クリーニング装置。
【請求項3】
前記先端部は、前記張出部との境界部から自由端側に向かう側端部が、前記スクリュ部に略90度で接触することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
クリーニング装置。
【請求項4】
前記先端部は、前記張出部の自由端側から前記軸部に対して離れる方向に略90度で屈曲することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の
クリーニング装置。
【請求項5】
前記搖動部材は、前記搬送スクリュに対して前記軸方向にわたって接触することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の
クリーニング装置。
【請求項6】
前記先端部は、その前記軸方向の幅が、少なくとも前記スクリュ部に接触する部分から自由端側に向けて前記軸方向の両側に左右対称に広がって漸増するように形成されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の
クリーニング装置。
【請求項7】
前記搖動部材は、可撓性を有するシート状部材であって、
前記クリーニングブレードの支持面と、前記搖動部材の支持面と、が略平行であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項8】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1~請求項7のいずれかに記載のクリーニング装置と、前記像担持体と、が一体化されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれかに記載のクリーニング装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃トナーなどのトナーを搬送するトナー搬送装置と、それを備えたクリーニング装置と、それを備えたプロセスカートリッジと、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、クリーニング装置などに、廃トナーなどのトナーを搬送するトナー搬送装置を設置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、感光体ドラムや中間転写ベルトなどの像担持体の表面に残留(付着)した未転写トナーは、クリーニング装置によって回収される。そして、クリーニング装置内に回収された未転写トナーは、クリーニング装置に内設された搬送スクリュ(トナー搬送装置)によって、クリーニング装置の外部に搬送される。そして、外部に排出された未転写トナーは、廃トナー回収容器まで搬送されて、廃トナー回収容器内に廃トナーとして回収される。
【0004】
一方、特許文献1には、クリーニング装置内で搬送スクリュによって搬送されるトナーの凝集を防止することを目的として、搬送スクリュの軸部と螺旋羽根(スクリュ部)との間で搖動する櫛歯状のアジテータ(搖動部材)を設置する技術が開示されている。詳しくは、アジテータには、軸方向に間隔をあけて並設された複数の張出部と、複数の張出部の自由端側から屈曲する曲げ部(先端部)と、が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、搬送スクリュの軸部とスクリュ部との間で搖動する櫛歯状の搖動部材を設けて、装置内のトナーを撹拌しているため、装置内でトナーが凝集する不具合を軽減する効果が大いに期待できる。
しかし、特許文献1の技術は、搖動部材(アジテータ)が搬送スクリュに巻き込まれてしまう不具合が生じる可能性があった。そして、そのような不具合が生じてしまうと、装置が駆動ロックしてしまう不具合や、搖動部材が破損してしまう不具合などが生じてしまうことになる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、搖動部材が搬送スクリュに巻き込まれることなく、装置内でトナーが凝集する不具合を軽減することができる、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明におけるクリーニング装置は、軸部に螺旋状にスクリュ部が巻装されて、所定方向に回転してトナーを搬送する搬送スクリュと、略櫛歯状に形成されて、前記搬送スクリュの回転にともない前記搬送スクリュの前記軸部と前記スクリュ部との間で搖動可能な搖動部材と、を具備したトナー搬送装置と、所定の回転方向に回転する像担持体に当接するクリーニングブレードと、前記クリーニングブレードに対して前記回転方向の上流側で前記像担持体に当接するシール部材と、を備え、前記搖動部材は、前記搬送スクリュの軸方向に対して間隔をあけて並設された複数の張出部と、前記複数の張出部の自由端側から前記軸部に対して離れる方向にそれぞれ所定角度で屈曲した複数の先端部と、を具備し、前記先端部は、その前記軸方向の幅が、少なくとも前記スクリュ部に接触する部分から自由端側に向けて前記軸方向の両側に広がって漸増するように形成され、前記先端部は、最も前記像担持体に近づくときに、前記軸方向に直交する断面でみて、前記像担持体と前記クリーニングブレードとの当接位置と、前記像担持体と前記シール部材との当接位置と、を結ぶ仮想線分の中央位置と、前記軸部の軸中心と、を通る仮想線に対して略平行になるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搖動部材が搬送スクリュに巻き込まれることなく、装置内でトナーが凝集する不具合を軽減することができる、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】プロセスカートリッジとその近傍とを示す構成図である。
【
図3】トナー搬送装置の要部を軸方向に示す図である。
【
図8】搖動部材の先端部が搬送スクリュのスクリュ部に接触した状態を示す図である。
【
図9】(A)搖動部材の張出部が搬送スクリュの軸部に接触した状態を示す図と、(B)搖動部材の先端部が搬送スクリュのスクリュ部に接触した状態を示す図と、である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1及び
図2にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1は、実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2は、
図1の画像形成装置1に設置されたイエロー用のプロセスカートリッジ10Y(作像部)の構成を示す断面図である。
なお、4つのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、作像プロセスに用いられるトナーTの色が異なる以外はほぼ同一構造であるので、
図2ではイエロー用のプロセスカートリッジ10Yのみを代表的に図示する。
【0012】
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、を示す。
また、7は転写紙等のシートが収容される給紙装置、9はシートの搬送タイミングを調整するレジストローラ、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成されるプロセスカートリッジ(作像部)、を示す。
また、16は各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム上に形成されたトナー像を中間転写ベルト17上に重ねて転写する1次転写ローラ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、を示す。
また、18は中間転写ベルト17上のトナー像をシート上に転写するための2次転写ローラ、19は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング装置、20はシート上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、を示す。
【0013】
以下、画像形成装置1における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光L(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11(像担持体)上に向けて発せられる。
【0014】
一方、4つのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11(
図2参照)は、それぞれ、所定方向(反時計方向)に回転(走行)している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電装置12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11の表面は、それぞれのレーザ光Lの照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光Lは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0015】
イエロー成分に対応したレーザ光Lは、紙面左側から1番目の感光体ドラム11(像担持体)の表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電装置12にて帯電された後の感光体ドラム11の表面には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0016】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11の表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11の表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11の表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0017】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面は、それぞれ、現像装置13との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部(1次転写ニップ)に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ16が設置されている。そして、1次転写ローラ16の位置で、中間転写ベルト17の表面に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0018】
そして、転写工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、除電ランプの位置を通過した後に、クリーニング装置14との対向位置に達する。そして、この位置で、クリーニングブレード14aによって感光体ドラム11の表面に付着したトナー(未転写トナー)などの付着物が除去されて、除去されたトナーがクリーニング装置14内に回収される(クリーニング工程である。)。クリーニング装置14内に回収された未転写トナーは、搬送スクリュ15aによってクリーニング装置14の外部に排出(搬送)されて、廃トナー回収容器の内部に廃トナーとして回収される。
その後、感光体ドラム11の表面は、除電ランプの位置を通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0019】
他方、感光体ドラム11上の各色のトナー像が重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、
図1の時計方向に走行して、2次転写ローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写ローラ18との対向位置で、中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像がシートに転写される(2次転写工程である。)。
その後、像担持体としての中間転写ベルト17の表面は、中間転写ベルトクリーニング装置19の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナー(付着物)がクリーニングブレードによって除去されて、その除去された未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング装置19に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0020】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写ローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送されるシートは、給紙装置7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、用紙などのシートを収納する給紙装置7から、給紙ローラ8により給送されたシートが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9(タイミングローラ)に導かれる。レジストローラ9に達したシートは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0021】
そして、フルカラー画像が転写されたシートは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ベルトと加圧ローラとのニップにて、カラー画像(トナー)がシート上に定着される。
そして、定着工程後のシートは、排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0022】
次に、
図2にて、プロセスカートリッジ10Yについて詳述する。
図2に示すように、プロセスカートリッジ10Yは、像担持体としての感光体ドラム11と、帯電装置12(帯電ローラ)と、現像装置13と、クリーニング装置14と、が一体的にユニットとして構成されている。また、クリーニング装置14には、トナー搬送装置15が内設されている。
【0023】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、表面層(保護層)が順次積層されている。
感光体ドラム11は、駆動モータによって
図2の反時計方向に回転駆動される。
【0024】
図2を参照して、帯電装置12は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなる帯電ローラである。帯電装置12には帯電用電源部から所定の電圧(DC電圧にAC電圧が重畳されたものである。)が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0025】
現像装置13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13bと、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13bに対向する第2搬送スクリュ13cと、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13dと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤Gが担持されることになる。
現像装置13の内部には、現像剤として、キャリアCとトナーTとからなる2成分現像剤Gが収容されている。
【0026】
クリーニング装置14には、像担持体としての感光体ドラム11に当接して感光体ドラム11の表面をクリーニングするクリーニングブレード14a、シール部材としての入口シール14b、クリーニング装置14内に回収された未転写トナーを幅方向(
図2の紙面垂直方向であって、軸方向である。)に搬送するトナー搬送装置15、などが設置されている。
【0027】
クリーニングブレード14aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなる板状部材であって、金属材料からなる支持板(クリーニング装置14のケースに保持されている。)に片持ち支持されている。クリーニングブレード14aは、感光体ドラム11の表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。そして、感光体ドラム11の表面に付着するトナーなどの付着物(シートから生じる紙粉、帯電装置12による放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等の付着物も含むものとする。)がクリーニングブレード14aによって機械的に掻き取られてクリーニング装置14内に回収されることになる。本実施の形態において、クリーニングブレード14aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向にて感光体ドラム11に当接している。
【0028】
シール部材としての入口シール14bは、厚さ0.05~0.15mm程度のポリウレタンゴムなどからなる可撓性を有する略矩形状のシート状部材であって、クリーニング装置14のケースに片持ち支持されている。入口シール14bは、クリーニングブレード14aに対して回転方向上流側(感光体ドラム11の回転方向の上流側である。)で感光体ドラム11の表面に腹当りするように当接している。そして、入口シール14bは、クリーニング装置14の内部に回収されたトナー(未転写トナー)が外部に漏出しないようにシール部材として機能している。
【0029】
図2、
図3に示すように、トナー搬送装置15には、搬送スクリュ15aが設けられている。
搬送スクリュ15aは、軸部15a1に螺旋状にスクリュ部15a2が巻装されたものであって、所定方向に回転してトナー(クリーニング装置14の内部に回収された未転写トナーなどの付着物である。)を搬送するものである。
詳しくは、駆動モータによって搬送スクリュ15aが
図2、
図3の矢印方向に回転駆動されると、クリーニング装置14内のトナーが軸方向(
図2の紙面垂直方向であって、
図3の破線矢印方向である。)に搬送されて、クリーニング装置14の外部の廃トナー搬送路40に向けて
図3の黒矢印方向に排出される。そして、廃トナー搬送路40に排出されたトナーは、廃トナー搬送スクリュ40aによって廃トナー回収容器(不図示)に向けて搬送され回収される。搬送スクリュ15aは、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータからギア列を介して駆動力が入力されて、感光体ドラム11の駆動に連動して
図2の反時計方向に回転駆動される。また、搬送スクリュ15aは、軸部15a1上にスクリュ部15a2が所定のピッチXで形成されている。
なお、本実施の形態において、トナー搬送装置15(クリーニング装置14)には、装置内でトナーが凝集するのを防止するための搖動部材15b(
図4参照)が設置されているが、これについては後で詳しく説明する。
【0030】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、
図2中の矢印方向に回転している。現像装置13内の現像剤Gは、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b及び第2搬送スクリュ13cの矢印方向の回転によって、トナー補給部30からトナー補給口を介して補給されたトナーTとともに撹拌混合されながら長手方向(
図2の紙面垂直方向である。)に循環する。
そして、摩擦帯電してキャリアCに吸着したトナーTは、キャリアCとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤Gは、その後にドクターブレード13dの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤Gは、ドクターブレード13dの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0031】
その後、現像領域において、現像剤G中のトナーTが、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーTが潜像に付着する。
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーTは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11の表面に付着(残留)した未転写のトナーTが、クリーニングブレード14aによってクリーニング装置14内に回収される。その後、クリーニング工程後の感光体ドラム11の表面は除電ランプの位置を通過して、一連の作像プロセスが終了する。
【0032】
ここで、装置本体1に設けられたトナー補給部30は、交換可能に構成されたトナーボトル31と、トナーボトル31を保持・回転駆動するとともに現像装置13に新品トナーTを補給するトナーホッパ部32と、で構成されている。また、トナーボトル31内には、新品のトナーT(
図2では、イエローのトナーである。)が収容されている。また、トナーボトル31の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
なお、トナーボトル31内の新品トナーTは、現像装置13内のトナーT(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像装置13内に適宜に補給されるものである。現像装置13内のトナーTの消費は、現像装置13の第2搬送スクリュ13cの下方に設置された磁気センサによって間接的又は直接的に検知される。
【0033】
以下、本実施の形態において特徴的な、トナー搬送装置15(クリーニング装置14)の構成・動作について説明する。
先に
図2等を用いて説明したように、本実施の形態におけるトナー搬送装置15には、所定方向に回転してトナーを搬送する搬送スクリュ15a(軸部15a1に螺旋状にスクリュ部15a2が巻装されたものである。)が設置されている。
ここで、
図4等に示すように、本実施の形態におけるトナー搬送装置15(クリーニング装置14)には、略櫛歯状に形成された搖動部材15bが設置されている。この搖動部材15bは、厚さ0.075~0.5mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる可撓性を有するシート状部材であって、搬送スクリュ15aの回転にともない搬送スクリュ15aの軸部15a1とスクリュ部15a2との間で搖動可能な部材である。
【0034】
具体的に、搬送スクリュ15aの回転周期に合わせて、搖動部材15bは、その自由端側(装置のケースに支持された支持部15b1以外の部分である。)が、
図4にて両矢印で示すように、スクリュ部15a2に当接する位置(実線で示した位置である。)と、軸部15a1に当接する位置(破線で示した位置である。)と、の間を繰り返し交互に移動することになる。これは、搖動部材15b(後述する張出部15b2及び先端部15b3)の側からみると、その対向位置に、搬送スクリュ15aが回転することにより軸部15a1とスクリュ部15a2とが交互に入れ替わるように現れるためである。なお、搖動部材15bが搖動する動作は、
図7(A)~(D)をも参照することができる。
【0035】
ここで、
図5、
図6、
図8等を参照して、搖動部材15bには、搬送スクリュ15aの軸方向に対して間隔をあけて並設された複数の張出部15b2と、複数の張出部15b2の自由端側(境界部15b4)から軸部15a1に対して離れる方向にそれぞれ所定角度αで屈曲した複数の先端部15b3(曲げ部)と、が設けられている。
そして、搖動部材15bの先端部15b3は、その軸方向(
図4の紙面垂直方向であって、
図5の左右方向である。)の幅が、少なくともスクリュ部15a2に接触する部分から自由端側に向けて漸増するように形成されている。
【0036】
詳しくは、本実施の形態において、先端部15b3は、その軸方向の幅が、張出部15b2との境界部15b4から自由端側に向けて漸増するように形成されている。
さらに具体的に、先端部15b3は、張出部15b2との境界部15b4から自由端側に向かう側端部15b30が、軸方向に対して平行でも垂直でもなく、隣接する先端部15b3に近づく方向に一続きに傾斜している。
また、複数の張出部15b2と先端部15b3とは、
図5に示すように、左右対称に形成されるとともに、搬送スクリュ15aのスクリュピッチXとは異なるピッチW(≠X)にて形成されている。複数の張出部15b2と先端部15b3のピッチWを搬送スクリュのスクリュピッチXと異ならせることで、複数の張出部15b2及び先端部15b3の搖動が同じタイミングにならないようにしている。特に、本実施の形態では、複数の張出部15b2と先端部15b3のピッチWが、搬送スクリュのスクリュピッチXよりも大きくなるように形成している(W>X)。
さらに、
図4に示すように、張出部15b2は、支持部15b1(装置ケースに貼着された部分である。)から軸部15a1までのスパンよりも長くなるように形成されている。また、張出部15b2の幅は、上述したスクリュピッチXよりも短くなるように形成されている。
【0037】
このように構成された搖動部材15bは、
図7(A)~(D)に示すように軸部15a1とスクリュ部15a2とに交互に接触するように搖動して、トナー搬送装置15(クリーニング装置14)内でトナーが凝集する不具合を軽減することになる。
【0038】
詳しくは、まず、
図7(A)、
図9(A)に示すように、搖動部材15bは、その張出部15b2が搬送スクリュ15aの軸部15a1に接触した状態(又は、軸部15a1に接近した状態)である。
そして、その状態から搬送スクリュ15aの回転が進むと、
図7(B)に示すように、搖動部材15bは、その張出部15b2が搬送スクリュ15aのスクリュ部15a2(外周部)に接触した状態になる。このとき、搖動部材15bの先端部15b3が破線で示した領域(感光体ドラム11に近くて搬送スクリュ15aから遠くて、トナーが滞留して凝集しやすい領域である。)に最も近づいた状態になり、その領域のトナーをほぐすことになる(トナーの凝集を防止することになる)。特に、本実施の形態では、先端部15b3が張出部15b2に比べて幅広く形成されているため、トナーをほぐす効果が発揮されやすくなる。
【0039】
さらに、その状態から搬送スクリュ15aの回転が進むと、
図7(C)、
図8、
図9(B)に示すように、搖動部材15bは、その先端部15b3が搬送スクリュ15aのスクリュ部15a2(外周部)に接触した状態になる。
このとき、先端部15b3は、少なくともスクリュ部15a2に接触する部分から自由端側に向けて幅が漸増するように形成されているため、先端部15b3とスクリュ部15a2(外周部)とが所定の交差角θで交差することになる。そのため、そのような交差角θが生じない場合に比べて、搖動部材15b(先端部15b3)が搬送スクリュ15aに巻き込まれにくくなる。したがって、搖動部材15bの巻き込みによって装置が駆動ロックしてしまうような不具合や、搖動部材15bが破損してしまう不具合なども抑止されることになる。
【0040】
さらに、その状態から搬送スクリュ15aの回転が進むと、
図7(D)、
図9(A)に示すように、搖動部材15bは、再び、その先端部15b3が搬送スクリュ15aの軸部15a1に接触した状態(又は、軸部15a1に接近した状態)になる。
以後、搬送スクリュ15aの回転周期に合わせて、
図7(A)~(D)で説明した搖動部材15bの動作が繰り返されることになる。
したがって、搖動部材15bが搬送スクリュ15aに巻き込まれることなく、装置内でトナーが凝集する不具合を軽減することができる。
【0041】
ここで、
図8、
図9(B)を参照して、本実施の形態において、搖動部材15bの先端部15b3は、張出部15b2との境界部15b4から自由端側に向かう側端部15b30が、スクリュ部15a2に略90度で接触するように形成されている。
すなわち、
図7(C)に示すように先端部15b3がスクリュ部15a2の外周に接触するとき、その交差角θがほぼ90度になるように設定されている。
このように構成することで、搖動部材15b(先端部15b3)が搬送スクリュ15aに巻き込まれにくくなる効果が、さらに発揮されやすくなる。
なお、交差角θは、略90度であることが好ましいものの、小さ過ぎずにスクリュ部15a2に巻き込まれない程度の角度(例えば、30度程度)に設定することもできる。
【0042】
また、
図6等を参照して、本実施の形態において、搖動部材15bの先端部15b3は、張出部15b2の自由端側(境界部15b4)から軸部15a1に対して離れる方向に略90度で屈曲している。
すなわち、先端部15b3の屈曲角度αが略90度に設定されている。
このように構成することで、
図7(B)に示すように破線部で囲んだ領域(凝集トナーが生じやすい領域である。)に移動する先端部15b3が、トナーの圧力によって撓みにくくなり、トナーをほぐす効果が発揮されやすくなる。また、搖動部材15bにおいて先端部15b3を形成する際の曲げ加工が簡素化される(加工性が高くなる)。
【0043】
また、本実施の形態において、搖動部材15bは、搬送スクリュ15aに対して軸方向にわたって接触するように形成されている。
すなわち、
図3に示す搬送スクリュ15aの軸方向の範囲の全域に、搖動部材15bが配置されている。
このように構成することで、搬送スクリュ15aによってトナーを搬送する軸方向の全範囲にわたって、トナーの凝集を軽減することができる。
【0044】
また、
図7(B)を参照して、本実施の形態において、搖動部材15bの先端部15b3は、最も感光体ドラム11に近づくとき(最も軸部15a1から離れた搖動位置に移動するときである。)に、軸方向に直交する断面でみて、感光体ドラム11とクリーニングブレード14aとの当接位置と、感光体ドラム11と入口シール14bとの当接位置と、を結ぶ仮想線分Mの中央位置(両端から等距離Aの位置)と、軸部15a1の軸中心と、を通る仮想線Nに対して略平行になるように設定されている。
このように構成することで、
図7(B)に示すように破線部で囲んだ領域(凝集トナーが生じやすい領域である。)に移動する先端部15b3が、トナーの圧力によって撓みにくくなり、トナーをほぐす効果が発揮されやすくなる。
【0045】
また、
図4等を参照して、本実施の形態では、クリーニングブレード14aの支持面14a1(クリーニングブレード14aの支持板が固定されるケース面である。)と、搖動部材15bの支持面(支持部15b1が貼着されるケース面である。)と、が略平行になっている。
このように構成することで、製造工場で、トナー搬送装置15が内設されたクリーニング装置14を組み立てるときに、軸方向に延在したクリーニングブレード14aと搖動部材15bとの組立作業性が向上することになる。
【0046】
また、先に説明したように、本実施の形態における搖動部材15bは、張出部15b2及び先端部15b3が軸方向に左右対称になるように形成されている。
そのため、感光体ドラム11へのクリーニングブレード14aの巻き込みを防止するために、非画像形成時に感光体ドラム11を僅かな時間だけ逆回転させる「逆転モード」が実行されて、それにともない搬送スクリュ15aも逆回転されてしまうような場合であっても、正転時と同じ理由により、搖動部材15bの先端部15b3が搬送スクリュ15aに巻き込まれにくくなる。したがって、装置の駆動ロックや、搖動部材15bの破損なども防止されることになる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態におけるトナー搬送装置15(クリーニング装置14)は、軸部15a1に螺旋状にスクリュ部15a2が巻装されて所定方向に回転してトナーを搬送する搬送スクリュ15aと、略櫛歯状に形成されて搬送スクリュ15aの回転にともない搬送スクリュ15aの軸部15a1とスクリュ部15a2との間で搖動可能な搖動部材15bと、が設けられている。そして、搖動部材15bは、搬送スクリュ15aの軸方向に対して間隔をあけて並設された複数の張出部15b2と、複数の張出部15b2の自由端側から軸部15a1に対して離れる方向にそれぞれ所定角度αで屈曲した複数の先端部15b3と、が設けられている。そして、搖動部材15bの先端部15b3は、その軸方向の幅が、少なくともスクリュ部15a2に接触する部分から自由端側に向けて漸増するように形成されている。
これにより、搖動部材15bが搬送スクリュ15aに巻き込まれることなく、装置内でトナーが凝集する不具合を軽減することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置13、クリーニング装置14などである。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。これに対して、クリーニング装置14をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、単体で装置本体1に対して着脱可能(交換可能)に設置されるように構成することもできる。そして、このような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
なお、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電装置と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置と、像担持体上をクリーニングするクリーニング装置と、のうち少なくとも1つと、像担持体と、が一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるユニットと定義する。
【0049】
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11の表面に付着した付着物をクリーニングするクリーニング装置14に内設されたトナー搬送装置15に対して本発明を適用した。これに対して、像担持体としての中間転写ベルト17の表面に付着した付着物をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置19に設置されたトナー搬送装置などに対しても、当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、カラー画像形成装置1に設置されたトナー搬送装置15(クリーニング装置14)に対して本発明を適用したが、モノクロ画像形成装置に設置されたトナー搬送装置(クリーニング装置)に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、クリーニング装置14に設置されたトナー搬送装置15に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されず、例えば、現像装置13やトナー補給部30に設置されたトナー搬送装置などであっても、トナー(廃トナーはもちろん、新品トナーやリサイクルトナーなども含む。)を搬送するトナー搬送装置のすべてに対して本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
10Y、10M、10C、10BK プロセスカートリッジ、
11 感光体ドラム(像担持体)、
14 クリーニング装置、
14a クリーニングブレード、
14b 入口シール(シール部材)、
15 トナー搬送装置、
15a 搬送スクリュ、
15a1 軸部、 15a2 スクリュ部、
15b 搖動部材(ほぐし部材)、
15b1 支持部、
15b2 張出部、
15b3 先端部、
15b4 境界部、
15b30 側端部、
M 仮想線分、 N 仮想線。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】