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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】加熱装置、画像形成装置及び熱圧着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 515
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020060717
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162608
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-049399(JP,A)
【文献】特開2020-024371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な第1回転部材と、
前記第1回転部材の外周面に接触してニップ部を形成する回転可能な第2回転部材と、
前記第1回転部材を加熱する加熱部材と、
を備える加熱装置であって、
前記加熱部材は、基材と、発熱体と、電極部と、前記発熱体と前記電極部とを接続する導電部と、を有し、
前記第1回転部材は、径方向に重ねられた複数の層を有し、
前記加熱部材の発熱領域における長手方向中央よりも一端側に配置される前記第1回転部材の一部には、前記複数の層の積層数が少ない部分が設けられ、
前記一端側の任意の位置で前記加熱部材に流れる電流の二乗の合計値は、前記長手方向中央を基準に前記一端側の任意の位置とは対称の位置で前記加熱部材に流れる電流の二乗の合計値よりも小さい加熱装置。
【請求項2】
前記積層数の少ない部分が配置される長手方向全領域の各位置で前記加熱部材に流れる電流の二乗の合計値が、前記長手方向中央を基準に前記積層数の少ない部分が配置される長手方向全領域とは対称の領域の各位置で前記加熱部材に流れる電流の二乗の合計値よりも小さい請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
回転可能な第1回転部材と、
前記第1回転部材の外周面に接触してニップ部を形成する回転可能な第2回転部材と、
前記第1回転部材を加熱する加熱部材と、
を備える加熱装置であって、
前記加熱部材は、基材と、発熱体と、電極部と、前記発熱体と前記電極部とを接続する導電部と、を有し、
前記第1回転部材は、径方向に重ねられた複数の層を有し、
前記加熱部材の発熱領域における長手方向中央よりも一端側に配置される前記第1回転部材の一部には、前記複数の層の積層数が少ない部分が設けられ、
前記一端側の任意の位置に対応する前記第1回転部材の部分の温度は、前記長手方向中央を基準に前記一端側の任意の位置とは対称の位置に対応する前記第1回転部材の部分の温度よりも低い加熱装置。
【請求項4】
前記発熱領域に対応する前記第1回転部材の部分の温度のうち、前記一端に対応する前記第1回転部材の部分の温度が最も低い請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1回転部材は、ベース層と、前記ベース層の外周面を被覆する少なくとも1つの層から成る被覆層と、を有し、
前記積層数の少ない部分は、前記ベース層の一部が前記被覆層によって被覆されずに露出する露出部である請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記積層数の少ない部分が配置される長手方向全領域において、前記発熱体が配置されていない請求項1から5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の加熱装置を備える画像形成装置
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の加熱装置を備える熱圧着装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、画像形成装置及び熱圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置として、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2016-62024号公報)には、長手状の基板に、発熱体や電気接点、これらを電気的に接続する導体パターンなどが設けられた板状の加熱部材(ヒータ)を備える定着装置が開示されている。一般的に、定着装置は、加熱部材のほか、互いに対向するローラやベルトなどの一対の回転部材を備えており、加熱部材によって加熱された回転部材同士の間(ニップ部)に未定着着画像が担持された記録媒体が搬送されることにより、記録媒体が加熱され、未定着画像が定着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような導体パターンが基板に設けられている加熱部材においては、発熱体を発熱させる際、導体パターンへの通電により導体パターンでもわずかながら発熱が生じる。このため、加熱部材全体の発熱分布は、導体パターンの発熱の影響を受けることになる。従って、導体パターンの発熱分布にばらつきがあると、それが原因で加熱部材の温度分布にもばらつきが生じる。
【0005】
このように、加熱部材の温度分布にばらつきがあると、加熱部材から受ける回転部材の熱の影響も一様ではなくなる。このため、除電などの目的で一部に被覆層が設けられていない定着ベルトなど、一部に積層数の少ない部分を有する回転部材が、その積層数の少ない部分を加熱部材の温度の高い部分に近づけて配置されると、積層数の少ない部分が熱により劣化しやすくなる懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能な第1回転部材と、前記第1回転部材の外周面に接触してニップ部を形成する回転可能な第2回転部材と、前記第1回転部材を加熱する加熱部材と、を備える加熱装置であって、前記加熱部材は、基材と、発熱体と、電極部と、前記発熱体と前記電極部とを接続する導電部と、を有し、前記第1回転部材は、径方向に重ねられた複数の層を有し、前記加熱部材の発熱領域における長手方向中央よりも一端側に配置される前記第1回転部材の一部には、前記複数の層の積層数が少ない部分が設けられ、前記一端側の任意の位置で前記加熱部材に流れる電流の二乗の合計値は、前記長手方向中央を基準に前記一端側の任意の位置とは対称の位置で前記加熱部材に流れる電流の二乗の合計値よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1回転部材における積層数の少ない部分の劣化を抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】前記定着装置の斜視図である。
図4】前記定着装置の分解斜視図である。
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
図6】前記加熱ユニットの分解斜視図である。
図7】本実施形態に係るヒータの平面図である。
図8】前記ヒータの分解斜視図である。
図9】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図10】前記ヒータの平面図である。
図11】全ての抵抗発熱体を発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図12】一部の発熱部のみを発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図13】定着ベルトの温度分布を示す図である。
図14】定着ベルトの温度分布と露出部との位置関係を示す図である。
図15】ヒータと露出部との位置関係を示す図である。
図16】露出部が配置される長手方向全領域に抵抗発熱体が配置されない例を示す図である。
図17】小型化されたヒータの平面図である。
図18】他のヒータの平面図である。
図19】さらに別のヒータの平面図である。
図20】発熱領域の一端で最も温度が低くなるヒータの別の例を示す図である。
図21】発熱領域の一端で最も温度が低くなるヒータのさらに別の例を示す図である。
図22】他の定着装置の構成を示す図である。
図23】別の定着装置の構成を示す図である。
図24】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0012】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段である。
【0013】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。中間転写ベルト11は、表面に画像を担持してその画像を用紙に転写する転写部材であり、無端状のベルト部材で構成されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0014】
定着部400には、用紙を加熱する加熱装置であって、用紙を加熱することにより用紙上の画像を定着させる定着装置9が設けられている。
【0015】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0016】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0017】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0019】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーやその他の異物はクリーニングブレード5によって除去される。さらに、クリーニングされた各感光体2の表面に対して、保護剤供給装置7によって掻き取られた像担持体保護剤が供給され、感光体2は次の静電潜像の形成に備えられる。
【0020】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0022】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0024】
定着ベルト20は、回転可能に設けられた第1回転部材であって、用紙Pの未定着トナー担持面側(画像形成面側)に配置されて未定着トナーを用紙Pに定着させる定着部材である。定着ベルト20は、例えば、外径が25mmで厚みが40~120μmの筒状基材を有する無端状のベルト部材で構成される。基材の材料は、ポリイミドのほか、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル、SUSなどの金属材料であってもよい。また、耐久性を高めると共に離型性を確保するため、基材の外周面に、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂から成る離型層が設けられてもよい。また、基材と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられてもよい。さらに、基材の内周面に、ポリイミドやPTFEなどから成る摺動層が設けられてもよい。
【0025】
加圧ローラ21は、定着ベルト20とは別の回転可能な第2回転部材であって、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材である。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されて、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ21は、例えば、外径が25mmであって、鉄製の芯金と、この芯金の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層とを有するローラなどにより構成される。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20や、定着ベルト20を介して用紙を加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。導体層52は、発熱部60を有している。
【0027】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0028】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51や第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0029】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0030】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。また、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。ただし、定着ベルト20の外周面の傷付きによる定着品質の低下を回避するため、ヒータ22が接触する面は、定着ベルト20の内周面であることが望ましい。
【0031】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持する保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0032】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0033】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型、非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0034】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることにより、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。
【0035】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
【0036】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0037】
定着ベルト20や加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0038】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20やステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0039】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中央よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0040】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0041】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、図の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれた状態で、定着ベルト20の長手方向又は加圧ローラ21の軸方向へ長手状に配置される。また、同様にステー24も、定着ベルト20の長手方向又は加圧ローラ21の軸方向へ長手状に配置される。
【0042】
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0043】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0044】
また、図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中央よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5及び図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、図5及び図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0045】
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0046】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
【0047】
図8に示すように、ヒータ22の基材50上には、第1絶縁層51を介して発熱部60を構成する複数の抵抗発熱体59が配置されている。各抵抗発熱体59は、基材50の長手方向Zに渡って一列に並んで配置されている。なお、本明細書中でいう「基材の長手方向」、「ヒータの長手方向」は、「定着ベルトの長手方向」、及び「加圧ローラの軸方向」と同じ方向を意味する。導体層52は、複数の抵抗発熱体59のほか、複数の電極部61と、複数の給電線(導電部)62と、が設けられている。各抵抗発熱体59は、複数の給電線62を介して複数の電極部61のいずれか2つに電気的に接続されている。図7に示すように、各抵抗発熱体59の全体及び各給電線62の大部分は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。また、各抵抗発熱体59は、互いに間隔をあけて配列されているため、隣り合う抵抗発熱体59同士の間は絶縁領域(第2絶縁層53)が介在している。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続できるように、第2絶縁層53によってほとんど覆われておらず露出した状態となっている。
【0048】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、抵抗発熱体59の材料として、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0049】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0050】
図9は、ヒータ22に給電部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0051】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成されている。また、各コンタクト端子72には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0052】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22及びヒータホルダ23を一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ70によって一緒に保持される。また、この状態で、コネクタ70の各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各コンタクト端子72と各電極部61とが電気的に接続される。また同様に、図9に示すヒータ22の長手方向の端とは反対側の端にある電極部61に対しても、コネクタ70が接続される。これにより、コネクタ70を介して画像形成装置に設けられた電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。
【0053】
以下、図10に基づき、本実施形態に係るヒータ22の構成についてさらに詳しく説明する。
【0054】
図10に示すように、本実施形態に係るヒータ22には、7つの抵抗発熱体59A~59Gと、3つの電極部61A~61Cと、これらを接続する4つの給電線62A~62Dと、が設けられている。3つの電極部61A~61Cのうち、2つの電極部61A,61Cは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの一端側(図10における左側)に配置され、残りの1つの電極部61Bは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの他端側(図10における右側)に配置されている。各抵抗発熱体59A~59Gは、一端側に配置される2つの電極部61A,61Cのうちのいずれかと、他端側に配置される1つの電極部61Bに対して、電気的に接続されている。
【0055】
詳しくは、7つの抵抗発熱体59A~59Gのうち、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fは、第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。一方、両端の各抵抗発熱体59A,59Gは、第3給電線62C又は第4給電線62Dを介して第3電極部61Cに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。
【0056】
このような接続構造とすることで、本実施形態では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fで構成される第1発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59A,59Gで構成される第2発熱部60Bとを、互いに独立して発熱制御することが可能である。具体的に、第1電極部61A及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61A,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fが通電し、第1発熱部60Aのみが発熱する。一方、第3電極部61C及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61C,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端の各抵抗発熱体59A,59Gが通電するため、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加して第1電極部61Aと第2電極部61の間及び第3電極部61Cと第2電極部61Bの間でそれぞれ電位差を生じさせた場合は、全ての抵抗発熱体59A~59Gが通電するため、第1の発熱部60A及び第2の発熱部60Bの両方が発熱する。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A3サイズ(通紙幅:297mm)以上の比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることが可能である。
【0057】
ここで、本実施形態に係るヒータ22に生じる温度のばらつき(温度分布偏差)について説明する。
【0058】
一般的に、上記のような抵抗発熱体が給電線を介して電極部に接続されたヒータにおいては、抵抗発熱体を発熱させる際、給電線への通電により給電線でもわずかながら発熱が生じる。従って、給電線の発熱分布によっては、ヒータの温度分布にばらつきが生じる虞がある。特に、画像形成装置の高速化に伴い、発熱量を増大させるべく発熱体へ流れる電流を大きくすると、給電線で生じる発熱量も大きくなるため、その影響を無視できなくなる。
【0059】
図11では、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対して電流が20%ずつ流れた場合に、抵抗発熱体59A~59Gごとに区画された各ブロック内で発生する各給電線62A,62B,62Dの発熱量とその合計値を示す。ここで、基材50の抵抗発熱体59が設けられている面に沿って長手方向Zと交差する方向Y(図10参照)を、基材50の「短手方向」と称すると、本実施形態では、各給電線62A,62B,62Dの短手方向Yに伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることから無視し、長手方向Zに伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、図11の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、算出された発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0060】
【数1】
【0061】
発熱量の算出方法について、図11における第1ブロック及び第2ブロックを例に説明すると、第1ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が100%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が80%、第2給電線62Bに流れる電流が20%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(6400+400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0062】
そして、各ブロックの合計発熱量を縦軸に表したものが、図11中のグラフである。このグラフを見てわかるように、各給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなる。また、中央に対して対称のブロック同士(例えば、第1ブロックと第7ブロック)における各給電線の合計発熱量も異なっている。このように、給電線の発熱分布には基材の長手方向Zに渡ってばらつきがあるため、このばらつきによってヒータの発熱分布にもばらつきが発生する。
【0063】
また、このような給電線の発熱に起因する温度のばらつきは、全ての抵抗発熱体を発熱させる場合(図11に示す例)だけに限らず、一部の抵抗発熱体を発熱させる場合でも発生し得る。特に、ヒータの小型化や画像形成装置の高速化に伴って、給電線に意図しない分流が生じた場合は、温度のばらつきが顕著となる虞がある。また、意図しない分流は、ヒータを短手方向に小型化すべく、給電線の幅をヒータの短手方向に小さくした結果、給電線の抵抗値が大きくなった場合や、画像形成装置を高速化するため、抵抗発熱体の発熱量を増加させるべく、抵抗発熱体の抵抗値を小さくした場合に、発生しやすくなる。すなわち、小型化や高速化に伴って給電線の抵抗値と抵抗発熱体の抵抗値とが相対的に接近した場合は、これまで通電しなかった経路にも通電し得る(意図しない分流が発生し得る)状態となる。
【0064】
例えば、図12に示すように、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)のみに通電した場合に、図の左から2番目の抵抗発熱体59Bを通過した電流の一部が、その先の第2給電線62Bの分岐部Xにて第2電極部61B側とは反対側(図の左側)にも流れる意図しない分流が発生することがある。分流した電流は、図12における左端の抵抗発熱体59Aを通過し、さらに、第3給電線62C、第3電極部61C、第4給電線62Dを介して右端の抵抗発熱体59Gを通過した後、第2給電線62Bに合流する。
【0065】
このように、意図しない分流は、分岐部Xから図12中の一点鎖線K3で示す分岐導電経路を通って第2給電線62Bに至る。また、このような意図しない分流は、本実施形態に係るヒータ22のような、ヒータ22の導電経路が、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)と第1電極部61Aとを接続する第1導電経路(第1導電部)K1と、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fからヒータ22の長手方向のうちの第1方向S1(図12における右方向)に伸びて第2電極部61Bに接続される第2導電経路(第2導電部)K2と、第2導電経路K2から第1方向S1とは反対の第2方向S2(図12における左方向)に分岐して第1導電経路K1を介さずに第2導電経路K2又は第2電極部61Bに接続される第3導電経路(分岐導電経路)K3と、を少なくとも有する構成であれば生じ得る。なお、本実施形態では、第3導電経路(分岐導電経路)K3が、第2給電線62Bの一部(分岐部Xから図12における左側の部分)と、第3給電線62Cと、第4給電線62Dとから成る第3導電部のほか、両端の各抵抗発熱体59A,59G(第2発熱部60B)と、第3電極部61Cと、を含む導電経路で構成されている。また、第3導電経路K3は、抵抗発熱体や電極部を含まない給電線のみの導電経路であってもよい。そのような場合も、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0066】
図12中の表及びグラフに、意図しない分流が発生した場合のブロックごとの各給電線62A,62B,62Dで生じる発熱量及びその合計値を示す。この例では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fへ電流が20%ずつ均等に流れた場合に、そのうちの一部の電流が分岐部Xにおいて5%分流したとして、発熱させるブロック(第2ブロック~第6ブロック)ごとの各給電線62A,62B,62Dの発熱量を算出している。なお、発熱量の算出方法は、図11に示す例で説明した方法と同様である。
【0067】
図12中の表及びグラフに示すように、この場合も、各給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなり、ばらつきが発生する。さらに、図12の場合は、図11とは反対に、グラフの右側のブロックよりも左側のブロックの温度が高くなる温度偏差が生じる。なお、図11及び図12では、電流が一方向に流れる様子を示しているが、ヒータ22に流れる電流は直流でもよいし交流でもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る定着装置においては、ブロックごとの給電線の発熱量のばらつきに起因して、ヒータの温度も長手方向の一端側よりも他端側で高くなる温度偏差が発生する。従って、このような温度偏差があるヒータによって定着ベルトが加熱されると、図13に示すように、加熱される定着ベルト20の温度にもその長手方向Uに渡る温度偏差が発生する。なお、図13では、図11に示すヒータ22の温度偏差を例にしているが、ここでは、ヒータ22が図11とは左右逆に配置されているので、定着ベルト20に生じる温度偏差も図11とは左右逆になっている。
【0069】
ところで、定着ベルトの表面(外周面)に設けられたフッ素樹脂などの離型層は、摩耗により経時的に負極性に帯電しやすくなることがある。その場合、トナーの帯電極性が正極性であると、トナーと離型層との間に静電吸着力が生じ、定着ベルトの外周面にトナーが付着し、画像不良が発生する虞がある。そのため、定着ベルトのベース層(基材)が金属などの導電材料で構成されている場合は、定着ベルトの長手方向の一端側でベース層の一部を露出させ、そのベース層の露出部に除電部材を接触させることにより、定着ベルトの除電を行うようにしている。
【0070】
しかしながら、このようなベース層の一部を露出させた部分(露出部)においては、離型層などの被覆層がある部分に比べて、耐久性が低下する。このため、定着ベルト内にヒータを配置するにあたって、上記のような温度の高い端部側を露出部側に配置すると、耐久性の低い露出部が熱により劣化しやすくなる懸念がある。
【0071】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、定着ベルトの露出部の劣化を抑制するため、定着ベルトに対するヒータの配置を次のようにしている。
【0072】
図14は、本実施形態に係る定着装置の構成を示す正面図である。
【0073】
まず、図14に基づき、本実施形態に係る定着ベルト20の構成について説明する。本実施形態に係る定着ベルト20は、その長手方向Uの一端に、除電の目的で設けられた露出部20aを有している。この場合、定着ベルト20は、金属などの導電材料で構成されたベース層(基材)34と、ベース層34の外周面を被覆する被覆層35と、を有し、定着ベルト20の長手方向一端の一部の領域で、被覆層35が無くベース層34が露出する露出部20aが設けられている。被覆層35は、離型層や弾性層などのいずれか1つの層によって構成されていてもよいし、複数の層が積層されて構成されていてもよい。また、露出部20aは、最大幅の用紙が通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)Wよりも長手方向Uの外側(一端側)に設けられている。
【0074】
また、この場合、加圧ローラ21においても、その外周面の一部に、離型層37が無い露出部21aが設けられている。露出部21aでは、導電ゴムなどの導電材料で構成された弾性層36が露出している。この加圧ローラ21の露出部21aを定着ベルト20の露出部20aに接触させることにより、加圧ローラ21を介して定着ベルト20を除電することができる。また、定着ベルト20の露出部20aに加圧ローラ21とは別の除電部材(導電部材)を接触させて除電を行ってもよい。
【0075】
このように、本実施形態に係る定着装置9においては、定着ベルト20の一部に露出部20aが設けられていることにより、定着ベルト20の除電を行うことができ、定着ベルト20が帯電することによる画像不良の発生を防止することが可能である。しかしながら、露出部20aにおいては、定着ベルト20を構成する層の積層数が少なくなるため、耐久性が低下し、熱劣化しやすくなる懸念がある。
【0076】
そこで、本実施形態に係る定着装置9においては、露出部20aの熱劣化を抑制するため、図14に示すように、露出部20aが設けられた定着ベルト20の長手方向Uの一端の温度が、これとは反対の他端の温度よりも低くなるようにしている。すなわち、定着ベルト20の前記一端(露出部20a側の端)の温度が低くなるように、ヒータ22を配置する。これにより、露出部20aが高い温度で加熱されるのを抑制でき、露出部20aの熱劣化を抑制できるようになる。
【0077】
露出部20aが設けられた一端の温度が、これとは反対の他端の温度よりも低くなっていることは、例えば、通紙可能な最大幅の用紙を少なくとも100枚連続通紙した場合に、定着ベルト20の長手方向Uの一端と他端の温度(図14に示す温度t1及び温度t2)を測定することにより確認することができる。
【0078】
また、定着ベルト20における温度測定箇所は、定着ベルト20の長手方向の一端及び他端に限らず、それ以外の部分であってもよい。すなわち、図15に示すように、定着ベルト20の温度分布は、ヒータ22の各抵抗発熱体59A~59Gが配列された発熱領域Hの長手方向の中央cから両端e1,e2に向かって徐々に上昇するように変化するので、発熱領域Hの中央cを基準に互いに対称な位置で定着ベルト20の温度を測定すれば、定着ベルト20の温度分布を把握することが可能である。従って、ヒータ22の発熱領域Hにおける長手方向中央cよりも一端側の任意の位置(例えば、図15に示す位置α1)に対応する定着ベルト20の部分の温度t3と、長手方向中央cを基準に一端側の任意の位置とは対称の位置(例えば、図15に示す位置α2)に対応する定着ベルト20の部分の温度t4を測定してもよい。そして、その場合、発熱領域Hの長手方向中央cよりも一端e1側(露出部20a側)の任意の位置で測定される定着ベルト20の温度t3が、長手方向中央cを基準に対称の位置で測定される定着ベルト20の温度t4よりも低ければよい。なお、上記「発熱領域の位置に対応する定着ベルトの部分」とは、発熱領域の長手方向における特定位置に対して接触又は対向する定着ベルトの部分を意味し、以下で述べる「対応する部分」についても同様である。
【0079】
また、上述のように、ヒータ22の温度は、ヒータ22に流れる電流の二乗の合計値(I)と相関関係があるので、定着ベルト20の温度を測定する方法に代えて、複数の抵抗発熱体59A~59Gごとに区画された各ブロック内に流れる電流の二乗の合計値(I)を測定することによっても、定着ベルト20の温度分布を把握することが可能である。従って、発熱領域Hの長手方向中央cよりも一端e1側の任意の位置(例えば、図15に示す位置α1)と、長手方向中央cを基準に一端e1側の任意の位置とは対称の位置(例えば、図15に示す位置α2)とで、ヒータ22に流れる電流の二乗の合計値を測定し、その結果、露出部20aが配置される側で測定された電流の二乗の合計値が、これとは対称の位置で測定された電流の二乗の合計値よりも小さくなればよい。
【0080】
さらに、露出部20aにおける温度上昇をより確実に抑制するには、図15において、露出部20aが配置される長手方向全領域β1の各位置で測定される定着ベルト20の温度が、長手方向中央cを基準に露出部20aが配置される長手方向全領域β1とは対称の領域β2の各位置で測定される定着ベルト20の温度よりも低いことが好ましい。また、同様の理由から、露出部20aが配置される長手方向全領域β1の各位置でヒータ22流れる電流の二乗の合計値も、長手方向中央cを基準に対称の領域β2の各位置でヒータ22に流れる測定電流の二乗の合計値よりも小さいことが好ましい。なお、露出部20aが配置される長手方向全領域β1に対応するヒータ22の部分のうち、一部の部分において、抵抗発熱体59や給電線62などが無く、電流が流れない領域があってもよい。
【0081】
また、図16に示す例のように、露出部20aが配置される長手方向全領域β1において、全ての抵抗発熱体59A~59Gが配置されないようにしてもよい。すなわち、露出部20aが、発熱領域Hとの間に長手方向Uの間隔Gをあけて配置されるようにしてもよい。これにより、露出部20aへの熱の影響をより効果的に低減でき、露出部20aの温度上昇をより一層抑制できるようになる。また、このような発熱領域Hと露出部20aとの間に長手方向の間隔Gをあける態様は、本実施形態とは反対に、露出部20aが温度の高い端部側(図16における発熱領域Hの長手方向中央cよりも左側)に配置される場合であっても、露出部20aの温度上昇を抑制する一定の効果が期待できる。
【0082】
以上のように、上述の各実施形態に係る定着装置によれば、定着ベルトの温度が低くなる方の端部に露出部を設けることにより、露出部が高い温度で加熱されるのを抑制することができる。これにより、露出部の劣化が抑制され、定着ベルトの耐久性を向上させることができるようになる。
【0083】
ここで、上述の各実施形態に係るヒータにおいては、図11に示すような全ての抵抗発熱体59A~59Gを発熱させた場合と、図12に示すような両端以外の抵抗発熱体59B~59Fを発熱させた場合とでは、より温度が高くなる長手方向の端が異なる(左右逆となる)。このように、温度が高くなる端が、ヒータの発熱態様に応じて左右逆転する構成においては、露出部がより熱の影響を受けやすい図11に示す温度分布に基づいて露出部20aの位置を決定すればよい。すなわち、図11に示すような全ての抵抗発熱体59A~59Gを発熱させる場合の方が定着ベルトの加熱範囲が長手方向に広がり、露出部がより高温になりやすいので、このような場合における露出部の温度上昇の抑制を優先させる方が、露出部の耐久性向上に効果的である。
【0084】
また、上述の各実施形態に係る定着装置によれば、加熱部材の温度分布のばらつきに起因する定着ベルトの劣化の課題を改善できることにより、温度分布のばらつきが発生しやすい小型のヒータや、高速化のために発熱量を増大させたヒータを用いた構成にも対応できるようになる。
【0085】
このため、本発明は、特に次のような小型のヒータを備える画像形成装置に適用された場合に大きな効果が期待できる。具体的は、図17に示すような基材50の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が、25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合に、大きな効果を期待できる。さらに、このような短手方向の寸法比(R/Q)が、40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することによる効果はより一層大きくなる。
【0086】
このような短手方向寸法比(R/Q)が25%以上又は40%以上となるヒータの場合は、小型化のために基材50の短手方向寸法を小さくした結果、基材50上に配置される各給電線62A~62Dの短手方向寸法も小さくする必要があり、各給電線62A~62Dから生じる発熱量が相対的に大きくなる。具体的に、上記短手方向寸法比(R/Q)の異なる各ヒータに、所定の電圧を印加して発熱させ、表面温度をフリアシステムズ社製の赤外線サーモグラフィ(FLIR T620)を用いて、各ヒータの発熱領域の長手方向中央と端の温度差を測定したところ、下記表1に示すような結果となった。なお、短手方向寸法比(R/Q)が80%以上である場合は、基材50の短手方向寸法に対する抵抗発熱体59の短手方向寸法が占める割合が多くなり過ぎ、給電線の設置スペースを確保することが現実的に困難であるため、測定を保留している。
【0087】
【表1】
【0088】
上記表1を見てわかるように、短手方向寸法比(R/Q)が大きくなるほど、発熱領域の長手方向中央と端の温度差が大きくなる。このことからすると、上記のような、短手方向寸法比(R/Q)が25%以上や40%以上となるヒータの場合は、ヒータの長手方向に渡る温度偏差のばらつきに起因する問題がより顕著となる。従って、このような温度偏差のばらつきが大きいヒータを用いる構成において、上述の各実施形態に係る構成を適用した場合は、より大きな効果が得られるようになる。
【0089】
また、定着装置が備えるヒータは、図17に示すようなブロック状(四角形状)の抵抗発熱体59を有するヒータ22に限らず、図18に示すような、直線を折り返したような形状の抵抗発熱体59を有するヒータ22であってもよい。なお、図18に示すヒータ22の場合、上記抵抗発熱体59の短手方向寸法Rは、折り返されるように形成された抵抗発熱体59の1つの線状の部分の太さではなく、抵抗発熱体59全体の短手方向寸法を意味する。また、図17図18に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形に形成されているため、基材50の短手方向寸法Qは、長手方向Zにおけるどの位置でも同じ寸法であるが、基材50は、長手方向Zの位置によって短手方向寸法Qが変化する形状であってもよい。ただし、その場合は、各抵抗発熱体59A~59Gが配置されている長手方向範囲内(発熱領域内)の基材50の最小の短手方向寸法を、上記基材50の短手方向寸法Qとする。
【0090】
さらに、定着装置が備えるヒータは、図19に示すような1つの抵抗発熱体59が基材50の長手方向Zに伸びるように配置されたものであってもよい。この例では、基材50の長手方向Zに伸びる抵抗発熱体59の一辺(図19における上側の辺)が第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに接続され、基材50の長手方向Zに伸びる抵抗発熱体59の他の辺(図19における下側の辺)が第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに接続されている。また、各電極部61A,61Bは、いずれも基材50の長手方向Zの中央よりも一端側(同じ端側)に配置され、各給電線62A,62Bは基材50の長手方向Zに渡って折り返されることなく(屈曲することなく)配置されている。
【0091】
このようなヒータ22において、各電極部61A,61B間に電位差を生じさせ抵抗発熱体59を発熱させた場合、温度分布のばらつきが発生する。例えば、図19に示す発熱領域Hの長手方向中央cとそれよりも両端e1,e2側の任意の対称位置α1,α2の各位置で、各給電線62A,62Bで流れる電流を、90%、50%、10%とすると、各給電線62A,62Bにおいて生じる発熱量は、図19中の表に示すような値となる。なお、この場合も、発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流の二乗(I)として算出している。
【0092】
図19中の表に示すように、各給電線62A,62Bの合計発熱量は、長手方向の一端側e1(図の右端側)よりも他端側e2(図の左端側)で大きくなるので、上記のようなヒータの温度分布のばらつきに起因する定着ベルトの劣化の課題が発生し得る。そのため、このようなヒータを備える定着装置においても上述の各実施形態に係る構成を適用することにより、定着ベルトの劣化を抑制できるようになる。具体的に、図19に示す例の場合は、発熱領域Hに対応する定着ベルトの部分の温度のうち、発熱領域Hの一端e1が最も温度の低い部分となるので、発熱領域Hの長手方向中央cよりも一端e1側に露出部20aが配置されるようにすればよい。
【0093】
また、図20図21に、発熱領域Hの一端e1で最も温度が低くなるヒータの別の例とさらに別の例を示す。
【0094】
図20図21に示す各例では、複数の抵抗発熱体59A~59Gがヒータ22の長手方向に渡って一列に配列されており、第1電極部61A、第2電極部61B及び第3電極部61Cが発熱領域Hの長手方向中央cを基準に同じ端側(図の左端e2側)に配置されている。すなわち、これらは、図10図11などに示すヒータ22の第2電極部61Bが、ヒータ22の図の左端側に配置された構成である。また、図20に示す例と、図21に示す例とでは、第2給電線62B以外の各給電線62A,62C,62Dと各抵抗発熱体59A~59Gとの接続位置が、ヒータ22の長手方向における抵抗発熱体59の中央Mを基準に互いに反対側となっている点で異なっている。それ以外は、同様の構成である。
【0095】
図20及び図21の各表に、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対して電流が20%ずつ流れた場合の、各ブロック内で発生する各給電線62A,62B,62C,62Dの発熱量とその合計値を示す。なお、この場合も、発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流の二乗(I)として算出している。
【0096】
図20及び図21の各表に示すように、いずれの例においても、各給電線62A,62B,62C,62Dの合計発熱量は、長手方向の一端側e1(図の右端側)よりも他端側e2(図の左端側)で大きくなるので、これらのヒータを備える定着装置においても、最も温度の低い一端e1側に露出部20aが配置されるようにすることにより、露出部20aの劣化を抑制することができる。
【0097】
また、ヒータにおける温度のばらつきを抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
【0098】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(2)を用いて算出することができる。式(2)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、図10に示す上述のヒータ22において、第1電極部61Aと第2電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(3)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0099】
【数2】
【0100】
また、画像形成装置が備える定着装置は、上述の定着装置に限らず、図22図24に示すような定着装置であってもよい。以下、図22図24に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0101】
図22に示す定着装置9は、定着ベルト20の加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されている点において、上述の定着装置とは異なっている。この場合、押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0102】
次に、図23に示す定着装置9では、上述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図22に示す定着装置9と同じ構成である。
【0103】
続いて、図24に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とが分けて構成されている。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側にも、ニップ形成部材91とステー93が配置され、ニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92が配置されている。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0104】
このような、図22図24に示すような定着装置を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、上記のような露出部を有する定着ベルトの耐久性を向上させることができるようになり、小型化や高速度化に対応できるようになる。
【0105】
上述の各実施形態では、本発明について、除電の目的で長手方向の一端に露出部を有する定着ベルトを例に説明したが、本発明は、このような露出部を有する定着ベルトに限らず、長手方向の一部において積層数の少ない部分を有する回転部材であれば、定着ベルト以外の回転部材にも適用可能である。すなわち、回転部材が、径方向に重ねられた複数の層を有し、加熱部材の発熱領域における長手方向中央よりも一端側に、積層数の少ない部分が配置される場合は、その一端側の任意の位置における回転部材の温度が、長手方向中央を基準に一端側の任意の位置とは対称の位置における回転部材の温度よりも低くなるようにすることにより、積層数の少ない部分の劣化を抑制することが可能である。
【0106】
また、上記一端側(積層数の少ない部分側)の任意の位置で加熱部材に流れる電流の二乗の合計値が、長手方向中央を基準に一端側の任意の位置とは対称の位置で加熱部材に流れる電流の二乗の合計値よりも小さくなるようにしてもよい。あるいは、積層数の少ない部分が配置される長手方向全領域において、発熱体が配置されないようにしてもよい。このようにすることにより、上述の各実施形態と同様に、積層数の少ない部分の温度上昇を抑制し、回転部材の耐久性を向上させることが可能となる。
【0107】
また、積層数の少ない部分は、回転部材の長手方向の端部を含む領域に設けられた部分である場合に限らず、端部から長手方向内側(中央側)へ離れた位置に設けられた部分であってもよい。
【0108】
また、積層数の少ない部分は、回転部材を構成する複数の層のうち、少なくとも最も外側の層を部分的に有しない場合に限らず、少なくとも最も内側の層を部分的に有しない場合であってもよい。
【0109】
また、上述の各実施形態では、本発明を加熱装置の一例である定着装置に適用した場合を例に説明したが、本発明は定着装置に適用される場合に限らない。例えば、インクジェット式の画像形成装置において、用紙を加熱して用紙上のインク(液体)を乾燥させる乾燥装置などの加熱装置にも本発明を適用可能である。
【0110】
さらに、本発明は、画像形成装置のほか、フィルムなどの被覆部材を用紙などのシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置が備える加熱装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(第1回転部材)
20a 露出部(積層数の少ない部分)
21 加圧ローラ(第2回転部材)
22 ヒータ(加熱部材)
59 抵抗発熱体(発熱体)
60 発熱部
61 電極部
62 給電線(導電部)
100 画像形成装置
200 画像形成部
c 発熱領域の長手方向中央
e1 発熱領域の長手方向一端
e2 発熱領域の長手方向他端
H 発熱領域
K1 第1導電経路
K2 第2導電経路
K3 第3導電経路(分岐導電経路)
P 用紙(記録媒体)
S1 第1方向
S2 第2方向
Y ヒータ(基材)の短手方向
Z ヒータ(基材)の長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【文献】特開2016-62024号公報
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