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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】裏写り判定装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/32 20060101AFI20240404BHJP
   G03G 15/23 20060101ALI20240404BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240404BHJP
   H04N 1/40 20060101ALI20240404BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H04N1/32 144
G03G15/23
G03G21/00 386
H04N1/40 062
H04N1/387 110
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020068630
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021166337
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】林 俊樹
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206277(JP,A)
【文献】特開2000-118073(JP,A)
【文献】特開2005-094666(JP,A)
【文献】特開2015-194808(JP,A)
【文献】特開2015-085587(JP,A)
【文献】特開2017-065012(JP,A)
【文献】特開2004-328496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/32 - 1/36
1/42 - 1/44
G03G 15/23
21/02
G03G 15/00
15/36
21/00
21/14
21/20
H04N 1/40 - 1/409
H04N 1/38 - 1/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の第一面に形成する第一画像データと、記録媒体の第二面に形成する第二画像データとに基づいて、裏写りによる画像劣化を判定する裏写り判定装置において、
前記記録媒体の第一面に形成する視認困難画像とその周辺とを含む画像領域に重なる前記記録媒体の第二面に形成する視認困難画像の画素数を、前記第一画像データと前記第二画像データとに基づいて算出し、前記画素数が閾値を超えた場合、裏写りによる画像劣化が有ると判定することを特徴とする裏写り判定装置
【請求項2】
求項に記載の裏写り判定装置において、
前記視認困難画像に裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、前記視認困難画像に裏写りによる画像劣化がある旨をユーザーに報知することを特徴とする裏写り判定装置。
【請求項3】
請求項1または2の裏写り判定装置において、
前記記録媒体の種類に基づいて、前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化の判定を行うか否かを決定することを特徴とする裏写り判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の裏写り判定装置において、
前記記録媒体の厚みが規定の厚み以下のとき、前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化の判定を行うことを特徴とする裏写り判定装置。
【請求項5】
裏写り判定部を備え、記録媒体の両面に画像形成可能な画像形成装置において、
前記裏写り判定部として、請求項1乃至4いずれか一項に記載の裏写り判定装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、前記第一画像データ、または、前記第二画像データを180°回転させた補正画像データに基づいて、再度、前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化を判定し、
前記視認困難画像に裏写りによる画像劣化が無いと判定したときは、前記補正画像データに基づいて、前記記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、
前記視認困難画像を所定の方向に移動させた後、再度、前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化を判定し、
前記視認困難画像の裏写りによる画像劣化が無いと判定された位置、または、裏写りが最も少ない位置へ前記視認困難画像を移動させた補正画像データに基づいて、画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において
動後の視認困難画像の位置を示す可視マークを形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏写り判定装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の第一面に形成する第一画像データと、記録媒体の第二面に形成する第二画像データとに基づいて、裏写りによる画像劣化を判定する裏写り判定装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記裏写り判定装置として、記録媒体全体における裏写りによる画像劣化度を数値化し、その数値化した画像劣化度に基づいて、裏写りが目立つ可能性があると判定したときは、ユーザーに警告表示し、片面印刷にするか、両面印刷にするかをユーザーに選択させるものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、記録媒体全体における裏写りによる画像劣化を判定しているため、例えば、記録媒体全体における裏写りによる画像劣化は低くても、記録媒体の片面に印刷される画像のうち、コード画像や透明画像などの特定の画像部の裏写りによる画像劣化が大きい場合がある。
【0005】
特定の画像部がコード画像の場合は、コード読み取り装置でコード画像に記録されている情報を正確に読み取れないことで、裏写りによる画像劣化が初めて発覚することがある。また、特定の画像部が透明画像の場合は、赤外光を照射する装置などで特定の光を照射して可視化することで、初めて透明画像の裏写りによる画像劣化が発覚する。このように、画像によっては、特定の装置を用いて初めて裏写りによる画像劣化の不具合が発覚することがあり、このようなことがないように、特定の画像部の裏写りによる画像劣化を未然に防ぐことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、記録媒体の第一面に形成する第一画像データと、記録媒体の第二面に形成する第二画像データとに基づいて、裏写りによる画像劣化を判定する裏写り判定装置において、前記記録媒体の第一面に形成する視認困難画像とその周辺とを含む画像領域に重なる前記記録媒体の第二面に形成する視認困難画像の画素数を、前記第一画像データと前記第二画像データとに基づいて算出し、前記画素数が閾値を超えた場合、裏写りによる画像劣化が有ると判定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の画像部の裏写りによる画像劣化を未然に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図。
図2】裏写り判定制御の制御フロー図。
図3】警告・選択画面の一例示す図。
図4】自動補正を行うか否かを選択する選択画面の一例を示す図。
図5】自動補正を実施すると印刷物が用をなさなくなる一例を示す図。
図6】マークの印刷設定画面の一例を示す図。
図7】(a)は、第二視認困難画像移動前の第二画像データを示す図であり、(b)は、第二視認困難画像Bを移動し、かつ、マークを追加した補正画像データを示す図。
図8】QRコードがK色トナーのみで形成される例で、K色画像部全体を移動させる可視コード画像移動制御を行ったときの不具合を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、画像形成装置であるカラープリンタ(以下「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、画像形成装置としては、視認困難画像用トナーを用いて記録媒体上に視認困難画像を形成するものであれば、特に制限はない。したがって、プリンタ以外にも、複写機、ファクシミリ単体、あるいは、プリンタ、複写機、ファクシミリ、スキャナのうちの少なくとも2つの機能を備えた複合機であってもよい。
【0010】
本実施形態のプリンタが用いる視認困難画像用トナーは、主に、可視画像中に付加情報を埋め込む場合に使用される。例えば、不正コピー防止等の目的で、可視画像用トナーによる可視画像とともに、不可視パターン、地紋などと呼ばれる目視で認識しにくい視認困難画像(人間が一見しても視認できない「COPY」等の文字画像)を記録媒体に形成する場合に使用される。また、例えば、バーコードやQRコード(登録商標)等のコード画像の情報量を増やす目的で、可視画像によるコード画像と視認困難画像によるコード画像とを重ねて記録媒体に形成する場合に使用される。なお、視認困難画像用トナーは、可視画像を形成せずに視認困難画像だけを記録媒体上に形成する場合にも使用されてもよい。
【0011】
視認困難画像とは、後述するように、可視光下で通常の可視画像用トナーよりも透明性が高いトナーによって形成される画像であって、本実施形態ではさらに赤外光等を照射するなどの処理によって、発光、発色等が行われ、視認が容易になるようにされている。
【0012】
視認困難画像用トナーとしては、透明性を有する赤外光吸収トナーや、紫外線を当てると蛍光する透明性の蛍光トナーなど、可視光領域外の光を吸収したり、可視光領域外の光によって可視光領域の光を発光したりするものが挙げられる。本実施形態は、視認困難画像用トナーとして、赤外光吸収トナーを用いる例で説明する。
【0013】
以下の説明において、各部材のトナー別符号として、可視画像用トナーであるブラックトナー(Kトナー)は「K」、可視画像用トナーであるイエロートナー(Yトナー)は「Y」、可視画像用トナーであるマゼンタトナー(Mトナー)は「M」、可視画像用トナーであるシアントナー(Cトナー)は「C」、視認困難画像用トナーである赤外光吸収トナー(IRトナー)は「IR」を用いる。視認困難画像用トナーとしては、可視光下で発色を抑制されているような透明トナー(透明性トナー)が望ましい。また、通常の可視画像用トナーよりも色素含有量が少ない。
【0014】
まず、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
画像形成装置1は、記録媒体の一例としての用紙にトナー像を定着させることにより画像を形成する。画像形成装置は、図1に示すように制御部10、画像読取部11、作像部12、給紙部13、転写部14、定着部15、排紙部16、表示・操作部17、反転搬送部18等を有している。
【0015】
制御部10は、CPU、メインメモリ(MEM-P)などを備え、メインメモリに記憶されたプログラムに従って、データを加工・演算したり、画像読取部11、作像部12、給紙部13、転写部14、定着部15、及び、排紙部16の動作を制御したりするものである。
【0016】
制御部10と通信ネットワークを介して接続されているパソコン1bには、プリンタドライバーがインストールされており、通信ネットワークを介して画像データ等を制御部10に送信する。
【0017】
画像読取部11は、用紙に記載されている画像を光学的に読み取ることにより、画像情報を生成するものである。具体的には、用紙に光を当てて、その反射光をCCD(Charge Coupled Devices)、または、CIS(Contact Image Sensor)等の読取センサで受光することによって画像情報を読み取る。なお、画像情報とは、記録媒体たる用紙に形成させる画像を表す情報であり、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を示す電気的な色分解画像信号を用いて示されたものである。
【0018】
画像読取部11は、コンタクトガラス11aや読取センサ11b等を有している。コンタクトガラス11aは、画像が記載されている用紙が載置されるものである。読取センサ11bは、コンタクトガラス11aに載置されている用紙に記載されている画像の画像情報を読み取るものである。
【0019】
作像部12は、画像読取部11によって読み取られた画像情報、または、ネットワークI/Fによって受信されたパソコン1bからの画像情報に基づいて、転写部14の中間転写ベルト143の表面にトナーを付着させて画像(トナー像)を形成するものである。
【0020】
作像部12は、C(シアン)用画像形成ユニット120C、M(マゼンタ)用画像形成ユニット120M、Y(イエロー)用画像形成ユニット120Y、K(ブラック)用画像形成ユニット120K、及び、IR用画像形成ユニット120IRを備えている。C用画像形成ユニット120Cは、シアン(C)色のトナーを有する現像剤を用いてトナー像を形成するものである。M用画像形成ユニット120Mは、マゼンタ(M)色のトナーを用いてトナー像を形成するものである。Y用画像形成ユニット120Yは、イエロー(Y)色のトナーを用いてトナー像を形成するものである。K用画像形成ユニット120Kは、ブラック(K)色のトナーを用いてトナー像を形成するものである。画像形成ユニット120IRは、特色トナーとして赤外光吸収トナー(IRトナー)を用いてトナー像を形成するものである。
【0021】
以降では、C用画像形成ユニット120C、M用画像形成ユニット120M、Y用画像形成ユニット120Y、K用画像形成ユニット120K、IR用画像形成ユニット120IRのうち、任意の画像形成ユニットを「画像形成ユニット120」と表す。
【0022】
C用画像形成ユニット120Cは、現像剤収容部121C、感光体ドラム122C、帯電部123C、露光部124C、現像部125C、除電部126C、及び、清掃部127Cを備えている。
【0023】
現像剤収容部121Cは、C色のトナーを収容しており、現像部125Cに対してC色のトナーを供給するものである。現像剤収容部121Cに収容されているトナーは、現像剤収容部121C内の搬送スクリューが駆動することによって所定の量だけ現像部125Cに供給される。現像部125Cには、駆動モータによって回転駆動される筒状の現像ローラが配設されており、この現像ローラは現像部125Cのケーシングに設けられた開口から自らの周面の一部をケーシング外に露出させている。そして、その現像ローラの露出箇所を、所定間隔の現像ギャップをあけて感光体ドラム122Cに対向させている。
【0024】
感光体ドラム122Cは、帯電部123Cにより表面が一様に帯電され、制御部10から受け取った画像データに基づき、露光部124Cによって表面に静電潜像が形成されるものである。また、感光体ドラム122Cは、静電潜像が形成された表面に、現像部125Cがトナーを付着させることによってトナー像が形成される。また、感光体ドラム122Cは、中間転写ベルト143に接するように設けられ、中間転写ベルト143との接点で中間転写ベルト143の移動方向と同じ方向に回転するように設けられている。
【0025】
帯電部123Cは、感光体ドラム122Cの表面と接触させて配置された帯電ローラを有している。そして、帯電ローラに電圧を印加することにより、帯電ローラと感光体ドラム122Cとの間で放電を発生させて、感光体ドラム122Cの表面を一様に帯電させる。また、帯電部123Cには、帯電ローラの表面に接触して回転し帯電ローラ表面をクリーニングする帯電クリーニング部材としての帯電クリーニングローラが設けられている。なお、感光体ドラム122Cの表面と帯電ローラとの間に微小な隙間をあけて、感光体ドラム122Cに対し帯電ローラを近接させて配置してもよい。
【0026】
露光部124Cは、帯電部123Cによって帯電された感光体ドラム122Cの表面に、制御部10によって決定されたC色の網点面積率に基づいて光を照射して静電潜像を形成する。現像部125Cは、露光部124Cによって感光体ドラム122Cの表面に形成された静電潜像に対して現像剤収容部121Cに収容されているC色のトナーを付着させることによって現像し、トナー像を形成する。
【0027】
除電部126Cは、中間転写ベルト143に画像が転写された後の感光体ドラム122Cの表面を除電する。清掃部127Cは、除電部126Cによって除電された感光体ドラム122Cの表面に残った転写残トナーを除去する。
【0028】
M用画像形成ユニット120M、Y用画像形成ユニット120Y、K用画像形成ユニット120K、IR用画像形成ユニット120IRの構成は、用いるトナーの色が異なる以外は、C用画像形成ユニット120Cと同様な構成である。
【0029】
給紙部13は、転写部14に対して用紙を供給するものである。給紙部13は、用紙収容部131、給紙ローラ132、及び、レジストローラ134を備えている。用紙収容部131は、記録媒体の一例である用紙を収容している。給紙ローラ132は、用紙収容部131に収容されている用紙を用紙搬送路133の方へ移動させるために回転するように設けられている。このように設けられている給紙ローラ132は、収容されている用紙のうち最上段にある用紙を一枚ずつ繰り出して、用紙搬送路133へ給紙する。給紙ローラ132によって用紙搬送路133に給紙された用紙は、複数の搬送ローラ対135a,135bにより用紙搬送路133を通って転写部14に搬送される。レジストローラ134は、中間転写ベルト143のトナー像が形成されている部分が、転写部14に到達されるタイミングで用紙搬送路133を搬送された用紙を送り出すものである。
【0030】
転写部140は、作像部12によって感光体ドラム122に形成された画像を中間転写ベルト143に一次転写し、中間転写ベルト143に転写された画像を用紙に二次転写するものである。転写部140は、駆動ローラ141、従動ローラ142、中間転写ベルト143、一次転写ローラ144C,144M,144Y,144K,144IR、二次転写対向ローラ145、及び、二次転写ローラ146を備えている。
【0031】
中間転写ベルト143は、駆動ローラ141及び従動ローラ142に掛け渡され、駆動ローラ141の回転とともに感光体ドラム122に接しながら移動するものである。なお、従動ローラ142は、中間転写ベルト143が移動するとともに回転する。中間転写ベルト143が感光体ドラム122に接しながら移動することによって、感光体ドラム122に形成された画像が中間転写ベルト143の表面に転写される。
【0032】
一次転写ローラ144C,144M,144Y,144K,144IRは、中間転写ベルト143を挟んで、それぞれ感光体ドラム122C,122M,122Y,122K,122IRと対向して設けられており、中間転写ベルト143を移動させるように回転する。二次転写ローラ146は、二次転写対向ローラ145との間に中間転写ベルト143と用紙とを挟みこんで回転する。
【0033】
定着部15は、転写部140によって用紙に転写されたトナーを定着させる。定着とは、トナーに熱と圧力を同時に加えることによってトナーの樹脂成分を用紙に溶着させることである。転写部140によって用紙に転写されたトナーに定着処理が行われることによって、用紙上のトナーの状態は安定したものとなる。
【0034】
定着部15は、定着ローラ153とハロゲンヒータ156を有した加熱ローラ154とに張架された定着ベルト152、加圧ハロゲンヒータ155aを内部に有した加圧ローラ155を備えている。加圧ローラ155は、定着ベルト152を介して定着ローラ153を加圧して定着ニップを形成している。
【0035】
定着ベルト152は、PI(ポリイミド)樹脂からなる層厚90[μm]のベース層上に、シリコーンゴムなどの弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端ベルトである。定着ベルト152の弾性層は,層厚が200[μm]程度であって、シリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト152の離型層は、層厚が20[μm]程度であって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等で形成されている。定着ベルト152の表層に離型層を設けることにより、トナー(トナー像)に対する離型性(剥離性)が確保されることになる。
【0036】
トナーを担持した用紙Pは、定着ニップに導かれ、加熱・加圧定着される。定着された用紙Pは、次工程に排出される。
【0037】
なお、定着ローラ153内にハロゲンヒータを有し,定着ベルト152および加熱ローラ154を持たない構成でも構わない。また、本実施形態では、熱源としてハロゲンヒータ156を用いているが、熱源がIHであっても構わない。
【0038】
図1に示すように、排紙部16は、定着部15でトナーが定着された用紙を画像形成装置内から排出するものであり、排紙ローラ162、排紙口163、及び、排紙トレイ164を有している。定着部15によって定着処理された用紙は、排紙搬送路161を通って排紙口163に向かって搬送される。排紙ローラ162は、排紙搬送路161を搬送された用紙を排紙口163から排出し排紙トレイ164に収容する。
【0039】
反転搬送部18は、片面に画像形成された用紙を反転させて、再度、転写部140に対して用紙を供給するものであり、スイッチバック路181、再供給路182を有している。両面モードにおいて、片面にトナーが定着された用紙は、スイッチバック路181に搬送された後、スイッチバックによって上下反転せしめられて再供給路182に送り込まれる。そして、再供給路182を経由した後、用紙搬送路133に再び送り込まれる。その後、転写部14によってもう一方の面にトナー(トナー像)が転写された後、定着部15、排紙部16を順次経由した後、排紙口163から排出される。
【0040】
表示・操作部17は、パネル表示部171及び操作部172を有している。パネル表示部171には設定値や選択画面等が表示される。また、パネル表示部171は、ユーザーからの入力を受け付けるタッチパネル等である。操作部172は、画像形成にかかる諸条件を受け付けるテンキーや、複写開始指示を受け付けるスタートキー等のユーザーが入力をするために操作を行うものである。
【0041】
視認困難画像用トナーであるIRトナーを用いて形成された視認困難画像について、赤外光を照射したとき、おもて面の視認困難画像に裏面の視認困難画像が裏写りする場合がある。このような視認困難画像は、赤外光を照射しないと、ユーザーが目視で出力物の裏写りの状態を確認出来ない。そのため、実際に読み取り装置で視認困難画像を読み取った時点で問題が発覚するというケースが多く、未然に裏写りを防止する対策が求められている。
【0042】
そこで、本実施形態では、特定の画像部である視認困難画像の裏写りを判定して、視認困難画像の裏写りがあると判定したときは、所定の処理を施して、未然に裏写りを防止するようにした。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0043】
図2は、裏写り判定制御の制御フロー図である。
図2に示すように、裏写り判定部たる制御部10は、用紙の両面に画像を形成するとき(S1のYes)、用紙のおもて面に印刷する画像に対応する第一画像データと、用紙の裏面に印刷する画像に対応する第二画像データに基づいて、用紙のおもて面と裏面両方に特定の画像部としての視認困難画像があるか否かを確認する。また、両面印刷する用紙が厚紙か否かを確認する(S2)。なお、厚紙とは、坪量91[g/m](中厚口)以上の紙種のことである。
【0044】
用紙のおもて面および裏面の少なくとも一方に視認困難画像がないとき(S2のNo)は、赤外光を照射したときの視認困難画像の裏写りが発生することがない。従って、このときは、通常の印刷動作で用紙の両面に画像を印刷する(S18)。また、用紙が厚紙のとき(S2のNo)も、裏写りが発生することがないため、通常の印刷動作で用紙の両面に画像を印刷する(S18)。
【0045】
一方、両面印刷する用紙の紙厚が、坪量91[g/m]未満の紙種で、用紙のおもて面と裏面の両方に視認困難画像があるとき(S2のYes)は、第一画像データと第二画像データを用いて、用紙のおもて面に印刷する第一視認困難画像とその周辺領域とを含む画像領域Aに重なる用紙の裏面に印刷する第二視認困難画像Bの画素数α1を算出する(S3)。そして、算出した画素数α1が閾値βを超えているか否かを確認する(S4)。
【0046】
上記閾値βは、上記画像領域Aに重なる第二視認困難画像Bの画素数が互いに異なる複数の印刷物を用意し、IRカメラを用いた目視評価(目視による第一視認困難画像の評価)と、QRコードの第一視認困難画像を印刷し、そのQRコードの読み取り性評価(QRコードに記録された情報を正しく読み取れたか否かの評価)とを行って、決めたものである。
【0047】
また、上記周辺領域は、第一視認困難画像の縁から指定の画素数分だけ離れた位置までの領域である。これは、第二視認困難画像の裏写りによる画像劣化には、裏写りにより第二視認困難画像が第一視認困難画像と重なることによる第一視認困難画像の画像劣化の他に、第二視認困難画像の裏写りにより、第一視認困難画像と白紙部との境界部が不明となることによる第一視認困難画像の画像劣化がある。第一視認困難画像と第二視認困難画像との重なり度合いのみを評価した場合は、例えば、裏写りした第二視認困難画像が第一視認困難画像の真横にあって、第一視認困難画像と白紙部との境界部が不明な場合の画像劣化を検知できないおそれがある。しかし、本実施形態のように、特定の画像部を、第一視認困難画像とその周辺領域とを含む画像領域Aとすることで、第二視認困難画像が、周辺領域にのみ重なる場合も、第二視認困難画像の裏写りによる画像劣化有りと判定することができる。これにより、裏写りにより第二視認困難画像が第一視認困難画像に重なることによる第一視認困難画像の画像劣化のみならず、第二視認困難画像の裏写りによる第一視認困難画像と白紙部との境界部が不明になることによる第一視認困難画像の画像劣化とを解決することができる。
【0048】
上記画素数α1が閾値β以下の場合(S4のNo)、制御部10は、第二視認困難画像の裏写りによる第一視認困難画像の画像劣化は無しと判定し、通常の印刷動作で用紙の両面に画像を印刷する(S18)。
【0049】
一方、上記画素数α1が閾値βを超えている場合(S4のYes)、制御部10は、第二視認困難画像の裏写りによる第一視認困難画像の画像劣化有りと判定し、表示・操作部17のパネル表示部171に、図3に示すような警告・選択画面を表示する(S5)。なお、パソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に、図3に示すような警告・選択画面を表示してもよい。
【0050】
図3に示すように、警告・選択画面では、裏写りにより視認困難画像が正しく読み取れない旨の報知と、ユーザーに両面印刷を継続するか中止するかを選択させる表示がなされる。ユーザーが中止ボタンを押して、印刷中止を選択した場合(S6のYes)は、印刷動作を中止する(S7)。
【0051】
一方、ユーザーが継続ボタンを押して、印刷継続を選択した場合(S6のNo)は、図4に示すように、第二視認困難画像の形成位置を補正する自動補正を行うか否かをユーザーに選択させる選択画面をパネル表示部171に表示する(S8)。なお、パソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に、図4に示すような選択画面を表示してもよい。
【0052】
ユーザーに自動補正を行うか否かを選択させる理由は、自動補正を実施することで、印刷物が用をなさない場合があるからである。自動補正を実施することで、印刷物が用をなさない例としては、図5に示すように、印刷物1枚当たり、6つの臨時の通行証などが出力され、印刷後に6枚にカットして使用する場合が挙げられる。図5(a)に示すように、各臨時の通行証TA~TFのおもて面には、その臨時の通行証に対応する情報を含む第一視認困難画像Aa~Afを有しており、裏面には、その臨時の通行証に対応する情報を含む第二視認困難画像Ba~Bfを有している。
【0053】
図5(a)に示すように、各第二視認困難画像Ba~Bfの大部分は、第一視認困難画像Aa~Afに重なっている。そのため、図5(a)では、裏写りによる画像劣化有りと判定される。後述する自動補正により、第二画像データを紙面の垂直方向を軸として180°回転させると、図5(b)に示すように、第一視認困難画像Aa~Afと第二視認困難画像Ba~Bfとの重なりが無くなる(画素数α2=0)ので、第二画像データを180°回転させて印刷される。第二画像データを180°回転させて印刷すると、図5(b)に示すように、各第二視認困難画像が、おもて面の対応する臨時通行証の画像領域とは異なる領域に印刷されてしまう。例えば、臨時の通行証TAの裏面に、臨時の通行証TFの情報を含む第二視認困難画像Bfが、印刷されてしまうのである。その結果、用紙をカットして6枚の臨時の通行証を作成し、その臨時の通行証に印刷された第二視認困難画像を読み取り装置で読み取ったときに、読み取った第二視認困難画像の情報が、臨時の通行証に対応しておらず、臨時の通行証としての用をなさないのである。
【0054】
このように、印刷後に複数枚を切り出して使用するような印刷物を印刷する場合には、後述の自動補正を行うことが適切でない場合があるため、ユーザーに自動補正を行うか否かの確認を行うのである。
【0055】
ユーザーが図4に示すNoボタンを押して、自動補正を行わない選択をした場合(S9のNo)は、通常の印刷動作で用紙の両面に画像を印刷する(S18)。一方、ユーザーが図4に示すYesボタンを押して、自動補正を行う選択をした場合(S9のYes)は、制御部10は、自動補正を実行し、第二画像データを180°回転させて、第二視認困難画像の位置を補正する。次に、制御部10は、第二画像データを紙面の垂直方向を軸として180°回転させた補正後の第二画像データと、第一画像データとに基づいて、上述と同様にして、画像領域Aに重なる第二視認困難画像の画素数α2を算出する(S10)。そして、算出した画素数α2が、閾値β以下か否かを確認する(S11)。
【0056】
算出した画素数α2が、閾値β以下のとき(S11のYes)は、第二画像データを180°回転させた補正後の第二画像データに基づいて、用紙の裏面に画像を印刷する(S12)。
【0057】
なお、上述では第二画像データを180°回転させているが、第二視認困難画像のみを、用紙の点対称の位置(用紙の中心を基準にして180°回転させた位置)へ移動させてもよい。また、第二視認困難画像を、用紙の幅方向中央を通る用紙搬送方向に平行な線を対称軸とした線対称の位置へ移動させてもよい。さらには、用紙の搬送方向中央を通る用紙幅方向に平行な線を対称軸とした線対称の位置へ第二視認困難画像を移動させてもよい。
【0058】
なお、元画像に対して180°回転させた画像を印刷する前に、元画像に対して180°回転させた画像を印刷することを、ユーザーに確認する画面をパネル表示部171やパソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に表示してもよい。そして、ユーザーが元画像に対して180°回転させた画像を印刷することを許可した場合は、元画像に対して180°回転させた画像を印刷し、許可しなかった場合は、後述する第二視認困難画像移動制御を実施するようにする。
【0059】
算出した画素数α2が、閾値βを超えて(S11のNo)、裏写りによる画像劣化が解消しないときは、第二視認困難画像を所定の範囲で移動させる第二視認困難画像移動制御を実施する(S13)。なお、上記所定の範囲とは、第二視認困難画像がページ内に収まる範囲である。
【0060】
第二視認困難画像移動制御は、次のような制御である。第二視認困難画像を所定のアルゴリズムにより用紙の長手方向、用紙の幅方向に所定量移動させ、移動後の位置での画像領域Aに重なる画素数を算出し、画素数が閾値β以下となったか否かを確認する。画素数が閾値β以下となった場合は、その位置を、第二視認困難画像の印刷位置とする。画素数が閾値β以下でない場合は、その位置から第二視認困難画像を用紙の幅方向に所定量移動させる。画素数が閾値β以下となるまで、このような動作を繰り返し行う。所定の回数行っても、画素数が閾値β以下となる位置が無かったときは、算出した画素数が最小となる位置を、第二視認困難画像の印刷位置とする。
【0061】
なお、画素数が閾値β以下となる位置が無かったときは、裏写りによる画像劣化はあるが、算出した画素数が最小となる位置を第二視認困難画像の印刷位置として印刷か否かを確認する画面を、パネル表示部171またはパソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に表示してもよい。ユーザーが印刷を許可した場合は、第二視認困難画像を移動して印刷を行い、許可しなかった場合は、元画像で印刷するか、印刷を中止するかをユーザーに選択させるようにしてもよい。
【0062】
このようにして、第二視認困難画像の印刷位置が決定したら、ユーザーに移動後の第二視認困難画像の位置がわかるマークの印刷設定画面(図6参照)をパネル表示部171に表示する(S14)。なお、パソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に、図6に示すようなマークの印刷設定画面を表示してもよい。
【0063】
第二画像データを180°回転させて、第二視認困難画像の印刷位置を補正する場合は、用紙の裏面に形成される第二視認困難画像と、他の画像との位置関係は、元画像と変わらないため、第二視認困難画像の位置をおおよそ特定することが可能である。しかし、第二視認困難画像を所定のアルゴリズムにより所定量移動させて第二視認困難画像の印刷位置を補正した場合は、用紙の裏面に形成される第二視認困難画像と、他の画像との位置関係が変更されているため、第二視認困難画像の位置を把握するのは困難である。そのため、特に専用の読み取り装置などで裏面の一部に赤外光を照射して第二視認困難画像を読み取る場合は、補正後の第二視認困難画像の位置がわかなければ、裏面のどこに赤外光を照射してよいかわからず、第二視認困難画像の読み取りに時間を要してしまう。このような事態を避けるために、マーク印刷機能が必要になる。
【0064】
図7(a)は、第二視認困難画像B移動前の第二画像データを示す図であり、図7(b)は、第二視認困難画像Bを移動し、かつ、マークを追加した補正画像データを示す図である。
図7(a)に示すように、QRコードからなる第二視認困難画像Bは、図中一点鎖線で示す第一視認困難画像A1に重なる。そのため、図2の制御フローにおけるステップ4で裏写りによる画像劣化有りと判定される。また、第二視認困難画像Bの斜め上にも第一視認困難画像A2があるため、第二画像データを180°回転させた場合も、図2の制御フローにおけるステップ11で裏写りによる画像劣化有りと判定される。従って、図2の制御フローにおけるステップ14の第二視認困難画像移動制御が実行され、第二視認困難画像は、図7(b)に示す位置へ移動する。
【0065】
図6に示すマークの印刷設定画面にて、ユーザーがマークの印刷を行う設定にした場合(図2のフローにおけるS15のYes)は、第二視認困難画像の周囲にマークが印刷される(S17)。図7(b)では、ユーザーが図6に示す「破線枠」をユーザーが指定した場合を示している。図6に示す「角部L字破線」をユーザーが指定した場合は、第二視認困難画像の周囲4角にL字のマークが形成される。また、図6に示す「角部ドット」をユーザーが指定した場合は、第二視認困難画像の周囲4角にユーザーが設定したサイズのドットが形成される。なお、第二視認困難画像の周囲に形成するマークは、これらに限られるものではない。
【0066】
ユーザーが、図6に示すマークの印刷設定画面において、マーク印刷を行わない設定した場合(図2のS15のNo)は、第二視認困難画像の移動をさせた後、印刷を実行する(S16)。
【0067】
なお、画像データが、視認困難画像のみからなる場合もあり、この場合は、第二画像データを180°回転させて印刷したときに、第二視認困難画像の印刷位置の特定が困難となる場合もある。従って、第二画像データを180°回転させて印刷するときも、第二視認困難画像の位置を示すマークを形成するか否かをユーザーに選択させるようにしてもよい。
【0068】
上述では、図2のステップ8で、ユーザーに自動補正を行うか否かを選択させているが、これに限られない。例えば、自動補正を実施し、自動補正後の画像をパネル表示部171またはパソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に表示して、ユーザーに自動補正後の画像で印刷するか、元画像で印刷するかを選択させるようにしてもよい。
【0069】
また、図2のステップ4で、裏写りによる画像劣化有りと判定したら、ユーザーに自動補正を行うか否かを選択させる制御(図2のステップ8、9)を実施せずに、自動補正を実施し、自動補正後の画像をパネル表示部171またはパソコン1bにインストールされたプリンタドライバの設定画面に表示する。そして、ユーザーに、印刷を中止するか、補正前の元画像で印刷するか、設定画面に表示された自動補正後の画像で印刷するかをユーザーに選択させるようにしてもよい。
【0070】
このように、裏写り判定部たる制御部10が、図2に示す裏写り判定制御を行うことで、視認困難画像の裏写りによる画像劣化を未然に防ぐことができる。これにより、不要な用紙の出力を低減できる。また、裏写りによる読み取りエラーが発覚するまでの時間を削減する事が出来る。さらには、本実施形態では、自動で第二視認困難画像の位置を補正して、視認困難画像の裏写りによる画像劣化が抑制される画像を印刷するので、ユーザーの画像修正にかかる手間を削減することができる。
【0071】
本実施形態では、画像形成装置で、裏写りの判定を行っているが、パソコン1bにインストールされたプリンタドライバで裏写りの判定を行ってもよい。この場合は、プリンタドライバがインストールされたパソコン1bが、裏写り判定装置として機能する。パソコン1bで裏写りの判定を行う場合は、図2のステップ6で印刷中止が選択された場合は、画像形成装置1への印刷指令や、画像データを送信しないようにする。また、図2のステップ9で自動補正が選択された場合は、自動補正された後の画像データを、印刷指令とともに、画像形成装置へ送信する。
【0072】
なお、上述では、用紙の裏面に形成する第二画像データを補正して、第一視認困難画像と第二視認困難画像との重なりを抑制しているが、用紙のおもて面に形成する第一画像データを補正して、第一視認困難画像と第二視認困難画像との重なりを抑制してもよい。具体的には、第一画像データを180°回転させたり、第一視認困難画像を移動させたりして、第一視認困難画像と第二視認困難画像との重なりを抑制する。
【0073】
また、自動補正として、画像データを180°回転させる制御と、第二視認困難画像を移動させる制御とを行っているが、自動補正としては、いずれか一方のみ行うものでもよい。また、上述では、画像領域Aに重なる第二視認困難画像Bの画素数に基づいて重なり度合いを評価しているが、画素に準ずる微小領域に画像データを分割し、画像領域Aに重なる第二視認困難画像Bの微小領域の数に基づいて第二視認交換画像の重なり度合いを評価してもよい。
【0074】
また、上述では、第一視認困難画像とその周辺領域とを含む画像領域Aと第二視認困難画像Bと重なり度合いを評価して、第一視認困難画像の画像劣化を判定しているが、第一視認困難画像の周辺領域と第二視認困難画像Bと重なりが有るか否かを評価して、第一視認困難画像の画像劣化を判定してもよい。第一視認困難画像の周辺領域と第二視認困難画像Bと重なりがある場合は、第二視認困難画像の裏写りによる第一視認困難画像と白紙部との境界が判別できず、第一視認困難画像を判別できないおそれがある。そのため、第一視認困難画像の周辺領域と第二視認困難画像Bと重なりがあるときは、図2のS6~S17のフローを実行する。このように特定の画像部を、第一視認困難画像の周辺領域のみとすることでも、裏写りにより第二視認困難画像が第一視認困難画像に重なることによる第一視認困難画像の画像劣化のみならず、第二視認困難画像の裏写りによる第一視認困難画像と白紙部との境界部の認識不能の両方を解決することができる。
【0075】
また、上述では特定の画像部として視認困難画像について説明したが、特定の画像部が、可視トナーで形成されたQRコードやバーコードなどの可視コード画像でもよい。このような可視コード画像に裏写りによる画像劣化があると、読み取り装置で情報を正確に読み取れなくなってしまう。そして、実際に読み取り装置で可視コード画像を読み取った時点で問題が発覚するというケースもあり、このような可視コード画像についても、未然に裏写りによる画像劣化を防ぐことが重要である。可視コード画像の場合は、可視コード画像とその周辺領域とを含む画像領域と、その裏面に形成される可視画像との重なり合う画素数を算出する。この可視コード画像は、可視トナーで形成されているので、画像領域と重なり合う画素数を算出する対象は、コード画像ではなくその裏面に形成される可視画像となる。そして、算出した画素数が、閾値を超える場合は、図2のステップ5と同様に、印刷を継続するか、中止するかをユーザーに選択させる図3に示す警告・選択画面を表示する。ユーザーが印刷の継続を選択し、図4に示す選択画面において、自動補正を選択した場合は、第一画像データまたは第二画像データを180°回転させる。次に、上述と同様に、再び、可視コード画像とその周辺領域とを含む画像領域と、その裏面に形成される可視画像との重なり合う画素数を算出する。画素数が閾値以下のときは、第一画像データまたは第二画像データを180°回転させて画像を印刷する。
【0076】
一方、第一画像データまたは第二画像データを180°回転させても、裏写りによる画像劣化が解消されないときは、可視コード画像の移動制御を実施する。視認困難画像の移動制御については、画像データに含まれるIRトナーで形成される視認困難画像に着目し移動させても、画像に影響を及ぼすことがないが、可視コード画像の移動制御は、そのような移動制御を行うと、図8に示すように移動制御後の画像が元画像に対して大きく変更されてしまったり、単色画像以外の画像に関しては色ずれが生じてしまったりする場合がある。
【0077】
図8は、可視コード画像としてのQRコードがK色トナーのみで形成される例で、K色トナーで形成されるK色画像部を移動させた場合を示している。図8に示すように、同じK色トナーで形成された文字画像部(価格:×××円)も同様に移動してしまう事に加えて、絵柄画像部(食品画像部)も色ずれが発生してしまい、図8(b)からわかるように、画像情報が損なわれてしまう。
【0078】
そのため、可視コード画像の移動制御について、可視コード画像のみを移動させる。また、可視コード画像のみを移動させる制御においては、可視コード画像とは反対側の可視画像との重なりだけでなく、可視コード画像と同一面に形成される可視画像とも重ならないように可視コード画像を移動させる。なお、可視コード画像とは反対側の可視画像との重なりだけだはなく、可視コード画像と同一面に形成される可視画像とも重ならない位置に可視コード画像を移動させる制御は、複雑であるため、可視コード画像有する画像データ全体を移動させて、可視コード画像とその裏面の可視画像との重なり合う画素数が最小となる画像データの位置を探すようにしてもよい。しかし、可視コード画像有する画像データ全体を移動させてしまうと、画像の見栄えなどが損なわれるおそれがある。また、余白部が少なく、補正は容易ではない。従って、第一画像データまたは第二画像データを180°回転させても、裏写りによる画像劣化が解消されないときは、可視コード画像の移動制御を実施しないようにしてもよい。
【0079】
これに対して、視認困難画像については、可視画像との重なりにつては、考慮しないでもよく、大きく移動したとしても画像の見栄えなどに影響を及ぼさないので、自動補正制御に好適である。しかし、この可視コード画像についても裏写りによる画像劣化の判定を行うことで、不要な用紙の出力を低減できる。また、裏写りによるコード読み取りエラーが発覚するまでの時間を削減する事ができ、自動補正制御が好適に行えないとしても、十分な効果が期待できる。
【0080】
また、第一画像データまたは第二画像データを180°回転させても、可視コード画像の裏写りによる画像劣化が解消されないときは、両面印刷から片面印刷に切り替えて印刷を行うようにしてもよい。
【0081】
また、特定の画像部として可視コード画像の周辺領域と、裏面に形成される可視画像との重なりがあるか否かを判定し、重なりがある場合は、図2のS5~S17のフローを行うようにしてもよい。このようにしても、裏写りにより裏面に形成される可視画像が可視コード画像に重なることによる可視コード画像の画像劣化のみならず、裏面に形成される可視画像の裏写りによる可視コード画像と白紙部との境界部が不明となることによる可視コード画像の画像劣化の両方を解決することができる。これにより、読み取り装置で、可視コード画像を正しく認識できるとともに、可視コード画像に記録されている情報を正しく読み取ることができる。
【0082】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
用紙などの記録媒体の第一面に形成する第一画像データと、記録媒体の第二面に形成する第二画像データとに基づいて、裏写りによる画像劣化を判定する裏写り判定装置において、第一画像データまたは第二画像データに含まれる特定の画像部の裏写りによる画像劣化を判定する。
これによれば、画像データに含まれる特定の画像部(本実施形態では、IRトナーで形成される視認困難画像や、可視トナーで形成されるバーコードやQRコード(登録商標)などの可視コード画像)の裏写りによる画像劣化を判定することで、特定の画像部に裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、画像形成を中止したり、裏写りによる画像劣化が生じない位置に特定の画像部を移動したりすることが可能となる。これにより、特定の画像部の裏写りによる画像劣化を未然に防ぐことが可能となる。
【0083】
(態様2)
態様1において、特定の画像部が、コード画像である。
これによれば、実施形態で説明したように、裏写りによるコード読み取りエラーが生じるのを未然に防止することが可能となる。
【0084】
(態様3)
態様2において、コード画像が、可視画像であり、コード画像とそのコード画像の周辺とを含む画像領域Aと、記録媒体のコード画像が形成される面とは反対側の面に形成される可視画像との重なり度合いに基づいて、コード画像の裏写りによる画像劣化を判定する。
これによれば、実施形態で説明したように、コード画像のみならず、そのコード画像の周辺を含む画像領域Aを用いて、裏写りによる画像劣化を判定するので、画像が多少狙いの位置からずれて用紙に印刷されても、コード画像の裏写りによるコード読み取りエラーが生じるのを防止することができる。
【0085】
(態様4)
態様3において、画像領域Aに重なる記録媒体のコード画像が形成される面とは反対側の面に形成される可視画像の画素数が閾値を超えた場合、裏写りによる画像劣化が有ると判定する。
これによれば、実施形態で説明したように、コード画像の裏写りによる画像劣化を判定することができる。
【0086】
(態様5)
態様1または2において、特定の画像部が、視認困難画像である。
これによれば、実施形態で説明したように、目視で裏写りによる画像劣化の判断が困難な視認困難画像の裏写りによる画像劣化を判定することができる。
【0087】
(態様6)
態様5において、記録媒体のおもて面などの第一面に形成する第一視認困難画像などの視認困難画像とその周辺とを含む画像領域Aと、記録媒体の裏面などの第二面に形成する第二視認困難画像などの視認困難画像との重なり度合いに基づいて視認困難画像の裏写りによる画像劣化を判定する。
これによれば、実施形態で説明したように、第一面に形成する視認困難画像のみならず、その視認困難画像の周辺を含む画像領域Aを用いて、裏写りによる画像劣化を判定するので、裏写りによる第二面に形成する視認困難画像と第一面の視認困難画像との重なりによる視認困難画像の画像劣化のみならず、裏写りによる視認困難画像と白紙部との境界部が不明となることによる画像劣化とを抑制することができる。
【0088】
(態様7)
態様6において、画像領域Aに重なる記録媒体の第二面に形成する第二視認困難画像Bなどの視認困難画像の画素数が閾値を超えた場合、裏写りによる画像劣化が有ると判定する。
これによれば、実施形態で説明したように、視認困難画像の裏写りによる画像劣化を判定することができる。
【0089】
(態様8)
態様1において、特定の画像部が、視認困難画像またはコード画像の周辺領域である。
これによれば、実施形態で説明したように、裏写りによる第二面に形成する視認困難画像と第一面の視認困難画像との重なりによる視認困難画像の画像劣化のみならず、裏写りによる視認困難画像と白紙部との境界部が不明となることによる画像劣化とを抑制することができる。
【0090】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、特定の画像部に裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、特定の画像部に裏写りによる画像劣化がある旨をユーザーに報知する。
これによれば、特定の画像部に裏写りによる画像劣化がある旨をユーザーに報知することで、ユーザーは、画像形成を中止したり、裏写りによる画像劣化が生じない位置に特定の画像部を移動するなどの画像のレイアウトを変更したりことが可能となる。
【0091】
(態様10)
態様1乃至9いずれかにおいて、記録媒体の種類に基づいて、特定の画像部の裏写りによる画像劣化の判定を行うか否かを決定する。
これによれば、実施形態で説明したように、厚紙など裏写りが発生しない記録媒体の種類のときは、特定の画像部の裏写りによる画像劣化の判定を行いようにでき、無駄な画像劣化の判定を行いようにでき、印刷開始の遅延を抑制できる。
【0092】
(態様11)
態様10において、記録媒体の厚みが規定の厚み以下(本実施形態では、坪量90[g/m]以下の用紙)のとき、特定の画像部の裏写りによる画像劣化の判定を行う。
これによれば、裏写りが発生する厚みの用紙に画像を形成するときに、特定の画像部の裏写りによる画像劣化の判定を行うことができる。
【0093】
(態様12)
制御部10などの裏写り判定部を備え、記録媒体の両面に画像形成可能な画像形成装置において、裏写り判定部として、態様1乃至10いずれかの裏写り判定装置を用いた。
これによれば、特定の画像部に裏写りによる画像劣化があるときは、画像形成動作を中止し、裏写りによる画像劣化がある特定の画像部が印刷されるのを防止することができ、不要な記録媒体への出力を防止することが可能となる。
【0094】
(態様13)
態様12において、特定の画像部の裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、第一画像データ、または、第二画像データを180°回転させた補正画像データに基づいて、再度、特定の画像部の裏写りによる画像劣化を判定し、特定の画像部に裏写りによる画像劣化が無いと判定したときは、補正画像データに基づいて、記録媒体に画像を形成する。
これによれば、実施形態で説明したように、ユーザーの画像修正にかかる手間を削減することができる。
【0095】
(態様14)
態様12において、特定の画像部の裏写りによる画像劣化が有ると判定したときは、特定の画像部を所定の方向に移動させた後、再度、特定の画像部の裏写りによる画像劣化を判定し、特定の画像部の裏写りによる画像劣化が無いと判定された位置、または、裏写りが最も少ない位置へ特定の画像部を移動させた補正画像データに基づいて、画像を形成する。
これによれば、実施形態で説明したように、ユーザーの画像修正にかかる手間を削減することができる。
【0096】
(態様15)
態様14において、特定の画像部が、視認困難画像であり、移動後の視認困難画像の位置を示す可視マークを形成する。
これによれば、実施形態で説明したように、どの位置に視認困難画像が移動したのかを、画像が形成された用紙からユーザーに認識させることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 :画像形成装置
1b :パソコン
10 :制御部
171 :パネル表示部
172 :操作部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【文献】特開2015-15519号公報
図1
図2
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図8