(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】相補型スイッチ素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8238 20060101AFI20240404BHJP
H01L 27/092 20060101ALI20240404BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240404BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240404BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240404BHJP
H01L 29/201 20060101ALI20240404BHJP
H01L 21/338 20060101ALN20240404BHJP
H01L 29/812 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
H01L27/092 C
H01L27/092 G
H01L29/78 301J
H01L29/78 301X
H01L29/78 301B
H01L29/06 601L
H01L29/201
H01L29/06 601B
H01L29/80 E
(21)【出願番号】P 2020563343
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050823
(87)【国際公開番号】W WO2020138168
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2018247228
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 克広
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057329(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0293739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0172246(US,A1)
【文献】特開2011-238909(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022777(WO,A1)
【文献】特表2014-525144(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040012(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/092
H01L 29/78
H01L 21/8238
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/201
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のチャネルを有する第1トンネル電界効果トランジスタと、前記第1導電型と異なる第2導電型のチャネルを有する第2トンネル電界効果トランジスタと、を有する相補型スイッチ素子であって、
前記第1トンネル電界効果トランジスタおよび前記第2トンネル電界効果トランジスタは、それぞれ、
(111)面を有し、前記第1導電型にドープされたIV族半導体基板と、
前記(111)面上に配置され、前記(111)面に接続された第1領域と、前記第2導電型にドープされた第2領域とを含むIII-V族化合物半導体ナノワイヤと、
前記IV族半導体基板に接続された第1電極と、
前記第2領域に接続された第2電極と、
前記(111)面と前記第1領域との界面に電界を作用させるゲート電極と、
を有し、
前記第1トンネル電界効果トランジスタでは、前記第2電極がソース電極であり、かつ前記第1電極がドレイン電極であり、
前記第2トンネル電界効果トランジスタでは、前記第1電極がソース電極であり、かつ前記第2電極がドレイン電極である、
相補型スイッチ素子。
【請求項2】
前記IV族半導体基板を構成するIV族半導体は、シリコンまたはゲルマニウムであり、
前記III-V族化合物半導体ナノワイヤを構成するIII-V族化合物半導体は、InAs、InP、GaAs、GaN、InSb、GaSb、AlSb、AlGaAs、InGaAs、InGaN、AlGaN、GaNAs、InAsSb、GaAsSb、InGaSb、AlInSb、InGaAlN、AlInGaP、InGaAsP、GaInAsN、InGaAlSb、InGaAsSbまたはAlInGaPSbであり、
前記III-V族化合物半導体ナノワイヤの長軸は、前記(111)面に対して垂直である、
請求項1に記載の相補型スイッチ素子。
【請求項3】
前記第1トンネル電界効果トランジスタおよび前記第2トンネル電界効果トランジスタは、それぞれ、前記III-V族化合物半導体ナノワイヤの側面上に配置されたゲート誘電体膜をさらに有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート誘電体膜上に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の相補型スイッチ素子。
【請求項4】
第1導電型のチャネルを有する第1トンネル電界効果トランジスタと、前記第1導電型と異なる第2導電型のチャネルを有する第2トンネル電界効果トランジスタと、を有する相補型スイッチ素子であって、
前記第1トンネル電界効果トランジスタおよび前記第2トンネル電界効果トランジスタは、それぞれ、
(111)面を有する第1領域と、前記第1導電型にドープされた第2領域とを含むIV族半導体基板と、
前記(111)面上に配置され、ドープされていないか、または前記第2導電型にドープされたIII-V族化合物半導体ナノワイヤと、
前記III-V族化合物半導体ナノワイヤに接続された第1電極と、
前記第2領域に接続された第2電極と、
前記III-V族化合物半導体ナノワイヤと前記(111)面との界面に電界を作用させるゲート電極と、
を有し、
前記第1トンネル電界効果トランジスタでは、前記第1電極がソース電極であり、かつ前記第2電極がドレイン電極であり、
前記第2トンネル電界効果トランジスタでは、前記第2電極がソース電極であり、かつ前記第1電極がドレイン電極である、
相補型スイッチ素子。
【請求項5】
前記IV族半導体基板を構成するIV族半導体は、シリコンまたはゲルマニウムであり、
前記III-V族化合物半導体ナノワイヤを構成するIII-V族化合物半導体は、InAs、InP、GaAs、GaN、InSb、GaSb、AlSb、AlGaAs、InGaAs、InGaN、AlGaN、GaNAs、InAsSb、GaAsSb、InGaSb、AlInSb、InGaAlN、AlInGaP、InGaAsP、GaInAsN、InGaAlSb、InGaAsSbまたはAlInGaPSbであり、
前記III-V族化合物半導体ナノワイヤの長軸は、前記(111)面に対して垂直である、
請求項4に記載の相補型スイッチ素子。
【請求項6】
前記第1トンネル電界効果トランジスタおよび前記第2トンネル電界効果トランジスタは、それぞれ、前記IV族半導体基板の表面上に配置されたゲート誘電体膜をさらに有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート誘電体膜上に配置されている、
請求項4または請求項5に記載の相補型スイッチ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相補型スイッチ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体マイクロプロセッサおよび高集積回路は、金属-酸化膜-半導体(以下「MOS」という)電界効果トランジスタ(以下「FET」という)などの素子を半導体基板上に集積して製造される。一般的には、相補型MOSFET(以下「CMOS」という)が集積回路の基本素子(スイッチ素子)となる。半導体基板の材料には、IV族半導体であるシリコンが主として使用される。CMOSを構成するトランジスタを小型化することで、半導体マイクロプロセッサおよび高集積回路の集積度および性能を向上させることができる。CMOSを小型化する際の課題の一つは、電力消費量の増大である。電力消費量の増大の主な原因としては、1つのマイクロチップに搭載可能なCMOSの数が増加すること、および短チャネル効果によるリーク電流が増大することの2つが挙げられる。これらのうち、リーク電流の増大は、供給電圧の増大をもたらすことになる。したがって、各CMOSについて、リーク電流を抑制し、動作電圧を低減させる必要がある。
【0003】
CMOSのスイッチ特性を示す指標として、サブ閾値(mV/桁)が用いられる。サブ閾値は、MOSFETをON状態にするための最低駆動電圧に相当する。従来のMOSFETのスイッチ特性は、電子および正孔(キャリア)の拡散現象に基づくものである。したがって、従来のMOSFETでは、サブ閾値スロープの理論的な最小値は60mV/桁であり、これよりも小さなサブ閾値を示すスイッチ特性を実現することはできなかった。
【0004】
この物理的な理論限界を超え、より小さなサブ閾値で動作するスイッチ素子として、トンネルFET(以下「TFET」という)が報告されている(例えば、非特許文献1,2参照)。TFETは、短チャネル効果がなく、かつ高いON/OFF比を低電圧で実現できるため、次世代スイッチ素子の有力な候補と考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Bhuwalka, K.K., Schulze, J. and Eisele, I., "Scaling the vertical tunnel FET with tunnel bandgap modulation and gate workfunction engineering", IEEE transactions on electron devices, Vol.52, No.5, May (2005), pp.909-917.
【文献】Bhuwalka, K.K., Schulze, J. and Eisele, I., "A simulation approach to optimize the electrical parameters of a vertical tunnel FET", IEEE transactions on electron devices, Vol.52, No.7, July (2005), pp.1541-1547.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CMOSのような相補型スイッチ素子をTFETを用いて構成する場合、TFETをMOSFETのように集積化する必要がある。しかしながら、TFETは、ソース領域およびドレイン領域の構造が非対称であるため、ソース領域およびドレイン領域の構造が対称であるMOSFETのように集積化するのは容易ではない。
【0007】
本発明の目的は、容易に集積化することができる、TFETを含む相補型スイッチ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の相補型スイッチ素子は、第1導電型のチャネルを有する第1トンネル電界効果トランジスタと、前記第1導電型と異なる第2導電型のチャネルを有する第2トンネル電界効果トランジスタと、を有する相補型スイッチ素子であって、前記第1トンネル電界効果トランジスタおよび前記第2トンネル電界効果トランジスタは、それぞれ、(111)面を有し、前記第1導電型にドープされたIV族半導体基板と、前記(111)面上に配置され、前記(111)面に接続された第1領域と、前記第2導電型にドープされた第2領域とを含むIII-V族化合物半導体ナノワイヤと、前記IV族半導体基板に接続された第1電極と、前記第2領域に接続された第2電極と、前記(111)面と前記第1領域との界面に電界を作用させるゲート電極と、を有し、前記第1トンネル電界効果トランジスタでは、前記第2電極がソース電極であり、かつ前記第1電極がドレイン電極であり、前記第2トンネル電界効果トランジスタでは、前記第1電極がソース電極であり、かつ前記第2電極がドレイン電極である。
【0009】
本発明の第2の相補型スイッチ素子は、第1導電型のチャネルを有する第1トンネル電界効果トランジスタと、前記第1導電型と異なる第2導電型のチャネルを有する第2トンネル電界効果トランジスタと、を有する相補型スイッチ素子であって、前記第1トンネル電界効果トランジスタおよび前記第2トンネル電界効果トランジスタは、それぞれ、(111)面を有する第1領域と、前記第1導電型にドープされた第2領域とを含むIV族半導体基板と、前記(111)面上に配置され、ドープされていないか、または前記第2導電型にドープされたIII-V族化合物半導体ナノワイヤと、前記III-V族化合物半導体ナノワイヤに接続された第1電極と、前記第2領域に接続された第2電極と、前記III-V族化合物半導体ナノワイヤと前記(111)面との界面に電界を作用させるゲート電極と、を有し、前記第1トンネル電界効果トランジスタでは、前記第1電極がソース電極であり、かつ前記第2電極がドレイン電極であり、前記第2トンネル電界効果トランジスタでは、前記第2電極がソース電極であり、かつ前記第1電極がドレイン電極である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容易に集積化することができる、TFETを含む相補型スイッチ素子を提供することができる。したがって、本発明によれば、電力消費量が少ない半導体マイクロプロセッサおよび高集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る相補型スイッチ素子の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る相補型スイッチ素子の第1TFETおよび第2TFETのバンド構造図である。
【
図3】
図3は、第1TFET(p-TFET)および第2TFET(n-TFET)の電気特性を示すグラフである。
【
図4】
図4Aは、第2TFET(n-TFET)の電気特性を示すグラフであり、
図4Bは、第1TFET(p-TFET)の電気特性を示すグラフである。
【
図5】
図5Aは、実施の形態1に係る相補型スイッチ素子を用いて構成されたインバータの例を示す斜視図であり、
図5Bは、
図5Aに示されるインバータの回路図である。
【
図6】
図6A~Dは、実施の形態1に係る相補型スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る相補型スイッチ素子の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る相補型スイッチ素子の第1TFETおよび第2TFETのバンド構造図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係る相補型スイッチ素子の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る相補型スイッチ素子の第1TFETおよび第2TFETのバンド構造図である。
【
図11】
図11は、第1TFET(n-TFET)および第2TFET(p-TFET)の電気特性を示すグラフである。
【
図12】
図12Aは、実施の形態3に係る相補型スイッチ素子を用いて構成されたインバータの例を示す斜視図であり、
図12Bは、
図12Aに示されるインバータの回路図である。
【
図13】
図13は、フィン型の第1TFET(n-TFET)およびフィン型の第2TFET(p-TFET)の電気特性を示すグラフである。
【
図14】
図14A~Dは、実施の形態3に係る相補型スイッチ素子の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図15】
図15は、実施の形態4に係る相補型スイッチ素子の構成を示す断面図である。
【
図16】
図16は、実施の形態4に係る相補型スイッチ素子の第1TFETおよび第2TFETのバンド構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[実施の形態1]
実施の形態1では、p型に高ドープされたIV族半導体基板の表面から垂直方向にIII-V族化合物半導体ナノワイヤが延在している、本発明に係る相補型スイッチ素子の例を示す。
【0014】
(相補型スイッチ素子の構成)
図1は、実施の形態1に係る相補型スイッチ素子100の構成を示す断面図である。
図1に示されるように、実施の形態1のスイッチ素子100は、少なくとも1つの第1トンネル電界効果トランジスタ(第1TFET)101および少なくとも1つの第2トンネル電界効果トランジスタ(第2TFET)102を有する。
【0015】
第1TFET101は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)であり、第2TFET102は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)である。第1TFET101および第2TFET102は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET101と第2TFET102とでは、ソース電極(
図1において「S」で示す)とドレイン電極(
図1において「D」で示す)との位置関係が逆である。
【0016】
第1TFET101は、IV族半導体基板111、絶縁膜112、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113、ゲート誘電体膜114、絶縁保護膜115、第1電極(ドレイン電極)116、第2電極(ソース電極)117およびゲート電極118を有する。III-V族化合物半導体ナノワイヤ113は、ドープされていない第1領域113aおよびn型に高ドープされた第2領域113bからなる。第1TFET101では、第1電極116はドレイン電極であり、第2電極117はソース電極である。第1TFET101では、IV族半導体基板111の(111)面とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0017】
第2TFET102は、IV族半導体基板111、絶縁膜112、III-V族化合物半導体ナノワイヤ123、ゲート誘電体膜124、絶縁保護膜125、第1電極(ソース電極)126、第2電極(ドレイン電極)127およびゲート電極128を有する。III-V族化合物半導体ナノワイヤ123は、ドープされていない第1領域123aおよびn型に高ドープされた第2領域123bからなる。第2TFET102では、第1電極126はソース電極であり、第2電極127はドレイン電極である。第2TFET102では、IV族半導体基板111の(111)面とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ123との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0018】
IV族半導体基板111は、シリコンやゲルマニウムなどのIV族半導体からなり、その上面が(111)面である基板である。IV族半導体基板111は、例えばシリコン(111)基板である。本実施の形態では、IV族半導体基板111は、p型に高ドープされている。IV族半導体基板111の全体がドープされていてもよいし、IV族半導体基板111の一部のみがドープされていてもよい。
【0019】
なお、第1TFET101を構成するIV族半導体基板111と、第2TFET102を構成するIV族半導体基板111とは、電気的または空間的に分離されている。たとえば、第1TFET101を構成するIV族半導体基板111と、第2TFET102を構成するIV族半導体基板111との間に、IV族半導体基板111と異なる伝導形の構造を配置することで、第1TFET101を構成するIV族半導体基板111と、第2TFET102を構成するIV族半導体基板111とを電気的に分離してもよい。また、BOX層の上に互いに非接触となるように形成された2つのシリコン細線構造をそれぞれ第1TFET101を構成するIV族半導体基板111と、第2TFET102を構成するIV族半導体基板111とすることで、第1TFET101を構成するIV族半導体基板111と、第2TFET102を構成するIV族半導体基板111とを空間的に分離してもよい。
【0020】
絶縁膜112は、IV族半導体基板111の2つの面のうちの少なくともIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113およびIII-V族化合物半導体ナノワイヤ123が配置されている面((111)面)を被覆する絶縁性の膜である。IV族半導体基板111の他方の面(III-V族化合物半導体ナノワイヤ113およびIII-V族化合物半導体ナノワイヤ123が配置されていない面)には、絶縁膜112は形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。第1TFET101では、IV族半導体基板111とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113との間、およびIV族半導体基板111と第1電極(ドレイン電極)116との間には、絶縁膜112は存在しない。第2TFET102では、IV族半導体基板111とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ123との間、およびIV族半導体基板111と第1電極(ソース電極)126との間には、絶縁膜112は存在しない。絶縁膜112の例には、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜が含まれる。たとえば、絶縁膜112は、膜厚20nmの酸化シリコン膜である。
【0021】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123は、III-V族化合物半導体からなる、直径2~100nm、長さ50nm~10μmの構造体である。III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123は、IV族半導体基板111の(111)面上に、その長軸が(111)面に垂直になるように配置されている。III-V族化合物半導体は、2つの元素からなる半導体、3つの元素からなる半導体、4つの元素からなる半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。2つの元素からなるIII-V族化合物半導体の例には、InAs、InP、GaAs、GaN、InSb、GaSbおよびAlSbが含まれる。3つの元素からなるIII-V族化合物半導体の例には、AlGaAs、InGaAs、InGaN、AlGaN、GaNAs、InAsSb、GaAsSb、InGaSbおよびAlInSbが含まれる。4つ以上の元素からなるIII-V族化合物半導体の例には、InGaAlN、AlInGaP、InGaAsP、GaInAsN、InGaAlSb、InGaAsSbおよびAlInGaPSbが含まれる。
【0022】
前述のとおり、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123は、ドープされていない第1領域113a,123a(真性半導体)およびn型に高ドープされた第2領域113b,123b(n型半導体)からなる。第1領域113a,123aは、IV族半導体基板111の(111)面に接続されている。第2領域113b,123bは、第2電極117,127に接続されている。III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の第1領域113a,123aおよびIV族半導体基板111の(111)面は、基本的に無転位かつ無欠陥の接合界面を形成する。
【0023】
ゲート誘電体膜114,124は、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の側面の少なくとも一部を被覆する絶縁膜である。本実施の形態では、ゲート誘電体膜114,124は、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の側面全面および、IV族半導体基板111の一方の面(より正確には絶縁膜112)を被覆している。ゲート誘電体膜114,124は、例えばハフニウムアルミネート(HfAlOx)膜などの高誘電体膜である。
【0024】
絶縁保護膜115,125は、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123、ゲート誘電体膜114,124およびゲート電極118,128を被覆する、絶縁樹脂からなる膜である。絶縁樹脂の種類は、特に限定されないが、例えばBCB樹脂である。
【0025】
第1電極116,126は、IV族半導体基板111上に配置されており、IV族半導体基板111(p型半導体)に接続されている。第1電極116,126は、例えばTi/Au合金膜である。第1電極116,126は、IV族半導体基板111の2つの面のうちIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123が配置されている面に配置されていてもよいし、IV族半導体基板111のもう一方の面(III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123が配置されていない面)に配置されていてもよい。第1TFET101では、第1電極116はドレイン電極として機能する。一方、第2TFET102では、第1電極126はソース電極として機能する。
【0026】
第2電極117,127は、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123および絶縁保護膜115,125上に配置されており、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の第2領域113b,123b(n型半導体)に接続されている。第2電極117,127は、例えばTi/Au合金膜またはGe/Au/Ni/Au合金膜である。第1TFET101では、第2電極117はソース電極として機能する。一方、第2TFET102では、第2電極127はドレイン電極として機能する。
【0027】
ゲート電極118,128は、IV族半導体基板111とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の第1領域113a,123aとの接合界面に電界を作用させることができるように配置されている。本実施の形態では、ゲート電極118,128は、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の第1領域113a,123aの周囲を覆うようにゲート誘電体膜114,124上に配置されている。ゲート電極118,128は、例えばTi/Au合金膜である。
【0028】
第1TFET101および第2TFET102では、IV族半導体基板111の(111)面とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113,123の第1領域113a,123aとの接合界面がトンネル層として機能する。前述のとおり、第1TFET101および第2TFET102は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET101と第2TFET102とでは、ソース電極(
図1において「S」で示す)とドレイン電極(
図1において「D」で示す)との位置関係が逆である。本発明者は、このように電極の位置を入れ替えるだけで、
図2に示されるように、第1TFET101は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)として動作し、第2TFET102は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)として動作することを見出した。
図3は、第1TFET101(p-TFET)および第2TFET102(n-TFET)の電気特性を示すグラフである。このグラフに示されるように、第1TFET101および第2TFET102のサブ閾値は、いずれも40mV/桁以下であった。
【0029】
図4Aは、室温の第2TFET102(n-TFET)における、ゲート電圧V
Gと、ドレイン電流I
Dまたはゲート電流I
Gとの関係を、ソース電極に対するドレイン電極の電位V
DSごとに示すグラフである。また、
図4Bは、室温の第1TFET101(p-TFET)における、ゲート電圧V
Gと、ドレイン電流I
Dとの関係を、ソース電極に対するドレイン電極の電位V
DSごとに示すグラフである。これらのグラフから、ソース電極に対するドレイン電極の電位V
DSを変化させても、第1TFET101および第2TFET102のサブ閾値は、第2TFET102では最小で21mV/桁、平均で40mV/桁以下であり、第1TFET101では最小で6mV/桁、平均で40mV/桁であることがわかる。また、ソース電極とドレイン電極を入れ替えることで同一構造で相補スイッチング動作ができることもわかる。
【0030】
本実施の形態に係るスイッチ素子100では、1または2以上の第1TFET101と、1または2以上の第2TFET102とを適切に接続することで、各種相補型スイッチ素子として機能させることができる。
図5Aは、相補型スイッチ素子100を用いて構成されたインバータの例を示す斜視図であり、
図5Bは、
図5Aに示されるインバータの回路図である。
図5Aでは、BOX層の上に相補型スイッチ素子100を形成した例を示しており、絶縁膜112、ゲート誘電体膜114,124、絶縁保護膜115,125を省略している。
図5Aでは、BOX層の上に互いに非接触となるように形成された2つのシリコン細線構造を、それぞれ第1TFET101を構成するIV族半導体基板111と、第2TFET102を構成するIV族半導体基板111としている。
【0031】
(相補型スイッチ素子の製造方法)
本実施の形態に係るスイッチ素子100の製造方法は、特に限定されない。第1TFET101および第2TFET102は、例えば国際公開第2011/040012号に記載の方法で製造されうる。
【0032】
図6A~Dは、スイッチ素子100の製造方法の一例を示す模式図である。第1TFET101および第2TFET102は、同じ手順で同時に作製されるため、
図6A~Dでは、第1TFET101についてのみ示している。以下、
図6A~Dを参照してスイッチ素子100の製造方法について説明する。
【0033】
まず、
図6Aに示されるように、p型に高ドープされているIV族半導体基板111を準備する。このIV族半導体基板111の(111面)上には、熱酸化法などにより絶縁膜112が形成されている。次いで、
図6Bに示されるように、IV族半導体基板111上の絶縁膜112に、フォトリソグラフィー法などを用いて所定の大きさ(例えば直径20nm)の開口部を形成する。次いで、
図6Cに示されるように、MOVPE法により、開口部を通して露出したIV族半導体基板111の(111)面からIII-V族化合物半導体ナノワイヤ113を成長させる。このとき、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113を成長させる前に、交互原料供給変調法によりIV族半導体基板111の(111)面にIII-V族化合物半導体の薄膜を形成することが好ましい(国際公開第2011/040012号参照)。また、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113を形成した直後に、III-V族化合物半導体ナノワイヤ113の第2領域113bをドープして、ドープされていない第1領域113aおよびn型に高ドープされた第2領域113bを形成する。最後に、
図6Dに示されるように、ゲート誘電体膜114、絶縁保護膜115、第1電極116、第2電極117およびゲート電極118を形成する。
【0034】
(効果)
本実施の形態に係るスイッチ素子100では、第1TFET101(p-TFET)および第2TFET102(n-TFET)は、実質的に同一の構成を有する。したがって、本実施の形態に係るスイッチ素子100は、TFETを含む相補型スイッチ素子でありながらも容易に集積化されうる。
【0035】
[実施の形態2]
実施の形態2では、n型に高ドープされたIV族半導体基板の表面から垂直方向にIII-V族化合物半導体ナノワイヤが延在している、本発明に係る相補型スイッチ素子の例を示す。
【0036】
(相補型スイッチ素子の構成)
図7は、実施の形態2に係る相補型スイッチ素子200の構成を示す断面図である。実施の形態1のTFETと同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0037】
図7に示されるように、実施の形態2のスイッチ素子200は、少なくとも1つの第1トンネル電界効果トランジスタ(第1TFET)201および少なくとも1つの第2トンネル電界効果トランジスタ(第2TFET)202を有する。
【0038】
第1TFET201は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)であり、第2TFET202は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)である。第1TFET201および第2TFET202は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET201と第2TFET202とでは、ソース電極(
図7において「S」で示す)とドレイン電極(
図7において「D」で示す)との位置関係が逆である。
【0039】
第1TFET201は、IV族半導体基板211、絶縁膜112、III-V族化合物半導体ナノワイヤ213、ゲート誘電体膜114、絶縁保護膜115、第1電極(ドレイン電極)116、第2電極(ソース電極)117およびゲート電極118を有する。III-V族化合物半導体ナノワイヤ213は、ドープされていない第1領域213aおよびp型に高ドープされた第2領域213bからなる。第1TFET201では、第1電極116はドレイン電極であり、第2電極117はソース電極である。第1TFET201では、IV族半導体基板211の(111)面とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ213との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0040】
第2TFET202は、IV族半導体基板211、絶縁膜112、III-V族化合物半導体ナノワイヤ223、ゲート誘電体膜124、絶縁保護膜125、第1電極(ソース電極)126、第2電極(ドレイン電極)127およびゲート電極128を有する。III-V族化合物半導体ナノワイヤ223は、ドープされていない第1領域223aおよびp型に高ドープされた第2領域223bからなる。第2TFET202では、第1電極126はソース電極であり、第2電極127はドレイン電極である。第2TFET202では、IV族半導体基板211の(111)面とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ223との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0041】
IV族半導体基板211は、シリコンやゲルマニウムなどのIV族半導体からなり、その上面が(111)面である基板である。IV族半導体基板211は、例えばシリコン(111)基板である。本実施の形態では、IV族半導体基板211は、n型に高ドープされている。IV族半導体基板211の全体がドープされていてもよいし、IV族半導体基板211の一部のみがドープされていてもよい。
【0042】
なお、第1TFET201を構成するIV族半導体基板211と、第2TFET202を構成するIV族半導体基板211とは、電気的または空間的に分離されている。たとえば、第1TFET201を構成するIV族半導体基板211と、第2TFET202を構成するIV族半導体基板211との間に、IV族半導体基板211と異なる伝導形の構造を配置することで、第1TFET201を構成するIV族半導体基板211と、第2TFET202を構成するIV族半導体基板211とを電気的に分離してもよい。また、BOX層の上に互いに非接触となるように形成された2つのシリコン細線構造をそれぞれ第1TFET201を構成するIV族半導体基板211と、第2TFET202を構成するIV族半導体基板211とすることで、第1TFET201を構成するIV族半導体基板211と、第2TFET202を構成するIV族半導体基板211とを空間的に分離してもよい。
【0043】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ213,223は、III-V族化合物半導体からなる、直径2~100nm、長さ50nm~10μmの構造体である。III-V族化合物半導体ナノワイヤ213,223は、IV族半導体基板211の(111)面上に、その長軸が(111)面に垂直になるように配置されている。III-V族化合物半導体は、2つの元素からなる半導体、3つの元素からなる半導体、4つの元素からなる半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。
【0044】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ213,223は、ドープされていない第1領域213a,223a(真性半導体)およびp型に高ドープされた第2領域213b,223b(p型半導体)からなる。第1領域213a,223aは、IV族半導体基板211の(111)面に接続されている。第2領域213b,223bは、第2電極117,127に接続されている。III-V族化合物半導体ナノワイヤ213,223の第1領域213a,223aおよびIV族半導体基板211の(111)面は、基本的に無転位かつ無欠陥の接合界面を形成する。
【0045】
第1TFET201および第2TFET202では、IV族半導体基板211の(111)面とIII-V族化合物半導体ナノワイヤ213,223の第1領域213a,223aとの接合界面がトンネル層として機能する。前述のとおり、第1TFET201および第2TFET202は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET201と第2TFET202とでは、ソース電極(
図7において「S」で示す)とドレイン電極(
図7において「D」で示す)との位置関係が逆である。本発明者は、このように電極の位置を入れ替えるだけで、
図8に示されるように、第1TFET201は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)として動作し、第2TFET202は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)として動作することを見出した。したがって、1または2以上の第1TFET201と、1または2以上の第2TFET202とを適切に接続することで、各種相補型スイッチ素子として機能させることができる。
【0046】
(相補型スイッチ素子の製造方法)
本実施の形態に係るスイッチ素子200の製造方法は、特に限定されない。実施の形態2のスイッチ素子200は、実施の形態1のスイッチ素子100と同様の手順で作製することができる。
【0047】
(効果)
本実施の形態に係るスイッチ素子200では、第1TFET201(n-TFET)および第2TFET202(p-TFET)は、実質的に同一の構成を有する。したがって、本実施の形態に係るスイッチ素子200は、TFETを含む相補型スイッチ素子でありながらも容易に集積化されうる。
【0048】
[実施の形態3]
実施の形態3では、p型に低ドープされたIV族半導体基板の表面から斜めの方向にIII-V族化合物半導体ナノワイヤが延在している、本発明に係る相補型スイッチ素子の例を示す。
【0049】
(相補型スイッチ素子の構成)
図9は、実施の形態3に係る相補型スイッチ素子300の構成を示す断面図である。
図9に示されるように、実施の形態3のスイッチ素子300は、少なくとも1つの第1トンネル電界効果トランジスタ(第1TFET)301および少なくとも1つの第2トンネル電界効果トランジスタ(第2TFET)302を有する。
【0050】
第1TFET301は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)であり、第2TFET302は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)である。第1TFET301および第2TFET302は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET301と第2TFET302とでは、ソース電極(
図9において「S」で示す)とドレイン電極(
図9において「D」で示す)との位置関係が逆である。
【0051】
第1TFET301は、IV族半導体基板311、III-V族化合物半導体ナノワイヤ312、絶縁膜(ゲート誘電体膜)313、第1電極(ソース電極)314、第2電極(ドレイン電極)315およびゲート電極316を有する。絶縁膜313の一部の領域は、ゲート誘電体膜としても機能する。IV族半導体基板311は、ドープされていない第1領域311aおよびn型に高ドープされた第2領域311bを含む。第1TFET301では、第1電極314はソース電極であり、第2電極315はドレイン電極である。第1TFET301では、IV族半導体基板311の(111)面311cとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ312との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0052】
第2TFET302は、IV族半導体基板311、III-V族化合物半導体ナノワイヤ322、絶縁膜(ゲート誘電体膜)323、第1電極(ドレイン電極)324、第2電極(ソース電極)325およびゲート電極326を有する。絶縁膜323の一部の領域は、ゲート誘電体膜としても機能する。IV族半導体基板311は、ドープされていない第1領域321aおよびn型に高ドープされた第2領域321bを含む。第2TFET302では、第1電極324はドレイン電極であり、第2電極325はソース電極である。第2TFET302では、IV族半導体基板311の(111)面321cとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ322との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0053】
IV族半導体基板311は、シリコンやゲルマニウムなどのIV族半導体からなり、その上面が(100)面である基板である。IV族半導体基板311は、例えばシリコン(100)基板である。本実施の形態では、IV族半導体基板311は、p型に低ドープされている。第1TFET301では、IV族半導体基板311の2つの面のうちIII-V族化合物半導体ナノワイヤ312が配置されている面には、ドープされていない第1領域311a(真性半導体)およびn型に高ドープされた第2領域311b(n型半導体)が互いに隣接するように形成されている。第1領域311aは、(100)面だけでなく(111)面311cも有する。同様に、第2TFET302でも、IV族半導体基板311の2つの面のうちIII-V族化合物半導体ナノワイヤ322が配置されている面には、ドープされていない第1領域321a(真性半導体)およびn型に高ドープされた第2領域321b(n型半導体)が互いに隣接するように形成されている。第1領域321aは、(100)面だけでなく(111)面321cも有する。
【0054】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322は、III-V族化合物半導体からなる、直径2~100nm、長さ50nm~10μmの構造体である。III-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322は、IV族半導体基板311の(111)面311c,321c上に、その長軸が(111)面311c,321cに垂直になるように配置されている。III-V族化合物半導体は、2つの元素からなる半導体、3つの元素からなる半導体、4つの元素からなる半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。2つの元素からなるIII-V族化合物半導体の例には、InAs、InP、GaAs、GaN、InSb、GaSbおよびAlSbが含まれる。3つの元素からなるIII-V族化合物半導体の例には、AlGaAs、InGaAs、InGaN、AlGaN、GaNAs、InAsSb、GaAsSb、InGaSbおよびAlInSbが含まれる。4つ以上の元素からなるIII-V族化合物半導体の例には、InGaAlN、AlInGaP、InGaAsP、GaInAsN、InGaAlSb、InGaAsSbおよびAlInGaPSbが含まれる。
【0055】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322は、ドープされていないか、またはp型に低ドープされている。本実施の形態では、III-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322は、p型に低ドープされている。III-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322およびIV族半導体基板311の(111)面311c,321cは、基本的に無転位かつ無欠陥の接合界面を形成する。
【0056】
絶縁膜313,323は、IV族半導体基板311の第1領域311a,321aの表面((100)面)の全部および第2領域311b,321bの表面((100)面)の一部を少なくとも被覆する絶縁性の膜である。前述の通り、絶縁膜313,323の一部の領域は、ゲート誘電体膜として機能する。本実施の形態では、絶縁膜313,323は、第1領域311a,321aの表面の全部、第2領域311b,321bの表面の一部、およびIV族半導体基板311の第1電極314,324の下に位置する部分を被覆している。絶縁膜313,323は、例えばハフニウムアルミネート(HfAlOx)膜などの高誘電体膜である。
【0057】
第1電極314,324は、IV族半導体基板311上に絶縁膜313,323を介して配置されており、III-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322(p型半導体)に接続されている。第1電極314,324は、例えばTi/Au合金膜である。第1TFET301では、第1電極314はソース電極として機能する。一方、第2TFET302では、第1電極324はドレイン電極として機能する。
【0058】
第2電極315,325は、IV族半導体基板311の第2領域311b,321b上に配置されており、第2領域311b,321b(n型半導体)に接続されている。第2電極315,325は、例えばTi/Au合金膜またはGe/Au/Ni/Au合金膜である。第1TFET301では、第2電極315はドレイン電極として機能する。一方、第2TFET302では、第2電極325はソース電極として機能する。
【0059】
ゲート電極316,326は、IV族半導体基板311の第1領域311a,321aとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322との接合界面に電界を作用させることができるように配置されている。本実施の形態では、ゲート電極316,326は、第1領域311a,321a上の絶縁膜(ゲート誘電体膜)313,323上に配置されている。ゲート電極316,326は、例えばTi/Au合金膜である。
【0060】
第1TFET301および第2TFET302では、IV族半導体基板311の(111)面311c,321cとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ312,322との接合界面がトンネル層として機能する。前述のとおり、第1TFET301および第2TFET302は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET301と第2TFET302とでは、ソース電極(
図9において「S」で示す)とドレイン電極(
図9において「D」で示す)との位置関係が逆である。本発明者は、このように電極の位置を入れ替えるだけで、
図10に示されるように、第1TFET301は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)として動作し、第2TFET302は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)として動作することを見出した。
図11は、第1TFET301(n-TFET)および第2TFET302(p-TFET)の電気特性を示すグラフである。このグラフに示されるように、第1TFET301および第2TFET302のサブ閾値は、いずれも最小50mV/桁であった。
【0061】
本実施の形態に係るスイッチ素子300では、1または2以上の第1TFET301と、1または2以上の第2TFET302とを適切に接続することで、各種相補型スイッチ素子として機能させることができる。
図12Aは、相補型スイッチ素子300を用いて構成されたインバータの例を示す斜視図であり、
図12Bは、
図12Aに示されるインバータの回路図である。
図12Aでは、BOX層の上にフィン型の第1TFET301およびフィン型の第2TFET302を形成することで相補型スイッチ素子300を形成した例を示しており、IV族半導体基板311の一部を省略している。
図13は、フィン型の第1TFET301(n-TFET)およびフィン型の第2TFET302(p-TFET)の電気特性を示すグラフである。このグラフに示されるように、第1TFET301および第2TFET302のサブ閾値は、いずれも40mV/桁以下であった。
【0062】
(相補型スイッチ素子の製造方法)
本実施の形態に係るスイッチ素子300の製造方法は、特に限定されない。第1TFET301および第2TFET302は、例えば国際公開第2011/040012号に記載の方法で製造されうる。
【0063】
図14A~Dは、スイッチ素子300の製造方法の一例を示す模式図である。第1TFET301および第2TFET302は、同じ手順で同時に作製されるため、
図14A~Dでは、第1TFET301についてのみ示している。以下、
図14A~Dを参照してスイッチ素子300の製造方法について説明する。
【0064】
まず、
図14Aに示されるように、IV族半導体基板311を準備する。このIV族半導体基板311には、ドープされていない第1領域311aおよびn型に高ドープされた第2領域311bが形成されている。次いで、
図14Bに示されるように、IV族半導体基板311の第1領域311aに対して異方性エッチングを行い、(111)面311cを露出させる。また、IV族半導体基板311の表面に熱酸化法などにより絶縁膜313を形成する。この絶縁膜313には、IV族半導体基板311の第1領域311aの(111)面311cが露出するように開口部が形成されている。次いで、
図14Cに示されるように、MOVPE法により、第1領域311aの(111)面311cから開口部を通してIII-V族化合物半導体ナノワイヤ312を成長させる。このとき、III-V族化合物半導体ナノワイヤ312を成長させる前に、交互原料供給変調法により第1領域311aの(111)面311cにIII-V族化合物半導体の薄膜を形成することが好ましい(国際公開第2011/040012号参照)。最後に、
図14Dに示されるように、第1電極314、第2電極315およびゲート電極316を形成する。
【0065】
(効果)
本実施の形態に係るスイッチ素子300では、第1TFET301(n-TFET)および第2TFET302(p-TFET)は、実質的に同一の構成を有する。したがって、本実施の形態に係るスイッチ素子300は、TFETを含む相補型スイッチ素子でありながらも容易に集積化されうる。
【0066】
[実施の形態4]
実施の形態4では、n型に低ドープされたIV族半導体基板の表面から斜めの方向にIII-V族化合物半導体ナノワイヤが延在している、本発明に係る相補型スイッチ素子の例を示す。
【0067】
(相補型スイッチ素子の構成)
図15は、実施の形態4に係る相補型スイッチ素子400の構成を示す断面図である。実施の形態3のTFETと同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0068】
図15に示されるように、実施の形態4のスイッチ素子400は、少なくとも1つの第1トンネル電界効果トランジスタ(第1TFET)401および少なくとも1つの第2トンネル電界効果トランジスタ(第2TFET)402を有する。
【0069】
第1TFET401は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)であり、第2TFET402は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)である。第1TFET401および第2TFET402は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET401と第2TFET402とでは、ソース電極(
図15において「S」で示す)とドレイン電極(
図15において「D」で示す)との位置関係が逆である。
【0070】
第1TFET401は、IV族半導体基板411、III-V族化合物半導体ナノワイヤ412、絶縁膜(ゲート誘電体膜)313、第1電極(ソース電極)314、第2電極(ドレイン電極)315およびゲート電極316を有する。絶縁膜313の一部の領域は、ゲート誘電体膜としても機能する。IV族半導体基板411は、ドープされていない第1領域411aおよびp型に高ドープされた第2領域411bを含む。第1TFET401では、第1電極314はソース電極であり、第2電極315はドレイン電極である。第1TFET401では、IV族半導体基板411の(111)面411cとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ412との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0071】
第2TFET402は、IV族半導体基板411、III-V族化合物半導体ナノワイヤ422、絶縁膜(ゲート誘電体膜)323、第1電極(ドレイン電極)324、第2電極(ソース電極)325およびゲート電極326を有する。絶縁膜323の一部の領域は、ゲート誘電体膜としても機能する。IV族半導体基板411は、ドープされていない第1領域421aおよびp型に高ドープされた第2領域421bを含む。第2TFET402では、第1電極324はドレイン電極であり、第2電極325はソース電極である。第2TFET402では、IV族半導体基板411の(111)面421cとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ422との接合界面においてトンネル現象が生じる。
【0072】
IV族半導体基板411は、シリコンやゲルマニウムなどのIV族半導体からなり、その上面が(100)面である基板である。IV族半導体基板411は、例えばシリコン(100)基板である。本実施の形態では、IV族半導体基板411は、n型に低ドープされている。第1TFET401では、IV族半導体基板411の2つの面のうちIII-V族化合物半導体ナノワイヤ412が配置されている面には、ドープされていない第1領域411a(真性半導体)およびp型に高ドープされた第2領域411b(p型半導体)が互いに隣接するように形成されている。第1領域411aは、(100)面だけでなく(111)面411cも有する。同様に、第2TFET402でも、IV族半導体基板411の2つの面のうちIII-V族化合物半導体ナノワイヤ422が配置されている面には、ドープされていない第1領域421a(真性半導体)およびp型に高ドープされた第2領域421b(n型半導体)が互いに隣接するように形成されている。第1領域421aは、(100)面だけでなく(111)面421cも有する。
【0073】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ412,422は、III-V族化合物半導体からなる、直径2~100nm、長さ50nm~10μmの構造体である。III-V族化合物半導体ナノワイヤ412,422は、IV族半導体基板411の(111)面411c,421c上に、その長軸が(111)面411c,421cに垂直になるように配置されている。III-V族化合物半導体は、2つの元素からなる半導体、3つの元素からなる半導体、4つの元素からなる半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。
【0074】
III-V族化合物半導体ナノワイヤ412,422は、ドープされていないか、n型に低ドープされている。本実施の形態では、III-V族化合物半導体ナノワイヤ412,422は、p型に低ドープされている。III-V族化合物半導体ナノワイヤ412,422およびIV族半導体基板411の(111)面411c,421cは、基本的に無転位かつ無欠陥の接合界面を形成する。
【0075】
第1TFET401および第2TFET402では、IV族半導体基板411の(111)面411c,421cとIII-V族化合物半導体ナノワイヤ412,422との接合界面がトンネル層として機能する。前述のとおり、第1TFET401および第2TFET402は、実質的に同一の構成を有するが、第1TFET401と第2TFET402とでは、ソース電極(
図15において「S」で示す)とドレイン電極(
図15において「D」で示す)との位置関係が逆である。本発明者は、このように電極の位置を入れ替えるだけで、
図16に示されるように、第1TFET401は、p型のチャネルを有するTFET(p-TFET)として動作し、第2TFET402は、n型のチャネルを有するTFET(n-TFET)として動作することを見出した。したがって、1または2以上の第1TFET401と、1または2以上の第2TFET402とを適切に接続することで、各種相補型スイッチ素子として機能させることができる。
【0076】
(相補型スイッチ素子の製造方法)
本実施の形態に係るスイッチ素子400の製造方法は、特に限定されない。実施の形態4のスイッチ素子400は、実施の形態3のスイッチ素子300と同様の手順で作製することができる。
【0077】
(効果)
本実施の形態に係るスイッチ素子400では、第1TFET401(p-TFET)および第2TFET402(n-TFET)は、実質的に同一の構成を有する。したがって、本実施の形態に係るスイッチ素子400は、TFETを含む相補型スイッチ素子でありながらも容易に集積化されうる。
【0078】
なお、本実施の形態では、1つのチャネルに対して1つのゲート電極が配置されているシングルゲート型のTFETを有するスイッチ素子について説明したが、それぞれのTFETは、1つのチャネルに対して複数のゲート電極が配置されているマルチゲート型のTFETを有していてもよい。
【0079】
本出願は、2018年12月28日出願の特願2018-247228に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の相補型スイッチ素子は、例えば半導体マイクロプロセッサおよび高集積回路に形成されるスイッチ素子として有用である。
【符号の説明】
【0081】
100,200 相補型スイッチ素子
101,201 第1トンネル電界効果トランジスタ(第1TFET)
102,202 第2トンネル電界効果トランジスタ(第2TFET)
111,211 IV族半導体基板
112 絶縁膜
113,123,213,223 III-V族化合物半導体ナノワイヤ
113a,123a,213a,223a 第1領域
113b,123b,213b,223b 第2領域
114,124 ゲート誘電体膜
115,125 絶縁保護膜
116,126 第1電極
117,127 第2電極
118,128 ゲート電極
300,400 相補型スイッチ素子
301,401 第1トンネル電界効果トランジスタ(第1TFET)
302,402 第2トンネル電界効果トランジスタ(第2TFET)
311,411 IV族半導体基板
311a,321a,411a,421a 第1領域
311b,321b,411b,421b 第2領域
311c,321c,411c,421c (111)面
312,322,412,422 III-V族化合物半導体ナノワイヤ
313,323 絶縁膜(ゲート誘電体膜)
314,324 第1電極
315,325 第2電極
316,326 ゲート電極