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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】潜水機及び潜水機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B63G 8/26 20060101AFI20240404BHJP
   B63G 8/22 20060101ALI20240404BHJP
   B63G 8/00 20060101ALI20240404BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B63G8/26
B63G8/22
B63G8/00 B
B63C11/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020089915
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183469
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】有馬 正和
(72)【発明者】
【氏名】太田 稔宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇志
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-020788(JP,A)
【文献】特表2012-532274(JP,A)
【文献】特開2007-276609(JP,A)
【文献】特開2001-247086(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110203362(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63G 8/00 - 8/42
B63C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜水機であって、
第1端と第2端との間を第1軸方向に延びる胴体と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に延びる第1翼とを含み、
前記胴体には、注排水自在なバラストタンクが配され、
前記第1翼には、前記第2軸方向に移動可能なバランスウエイトが配され
前記バランスウエイトの位置を制御するための制御装置をさらに含み、
前記制御装置は、潜入するときに前記胴体の前記第1軸方向が鉛直方向に沿うように、前記バランスウエイトの位置を制御する
潜水機。
【請求項2】
前記第1翼は、前記バラストタンクよりも前記第2端側に設けられる、請求項1に記載の潜水機。
【請求項3】
前記バラストタンクは、前記胴体の前記第1端側に配される、請求項1又は2に記載の潜水機。
【請求項4】
前記第1軸方向及び前記第2軸方向と直交する方向に延びる一対の第2翼をさらに含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の潜水機。
【請求項5】
前記第2翼は、前記第2端側が幅広のデルタ翼形状である、請求項4に記載の潜水機。
【請求項6】
水中で移動するための複数の推進器をさらに含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の潜水機。
【請求項7】
無人で潜水航行自在である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の潜水機。
【請求項8】
第1端と第2端との間を第1軸方向に延びる胴体と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に延びる第1翼とを含み、前記胴体には、注排水自在なバラストタンクが配され、前記第1翼には、前記第2軸方向に移動可能なバランスウエイトが配されている潜水機の運転方法であって、
前記潜水機の潜入時、
前記バラストタンクに注水する潜入注水工程と、
前記バランスウエイトを移動させる潜入バランス工程とを含み、
前記潜入バランス工程は、前記胴体の前記第1軸方向が鉛直方向に沿うように、前記バランスウエイトを移動させる、
潜水機の運転方法。
【請求項9】
第1端と第2端との間を第1軸方向に延びる胴体と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に延びる第1翼とを含み、前記胴体には、注排水自在なバラストタンクが配され、前記第1翼には、前記第2軸方向に移動可能なバランスウエイトが配されている潜水機の運転方法であって、
前記潜水機の浮上時、
前記バラストタンクを排水する浮上排水工程と、
前記バランスウエイトを移動させる浮上バランス工程とを含み、
前記浮上バランス工程は、前記胴体の前記第1軸方向が鉛直方向に沿うように、前記バランスウエイトを移動させる、
潜水機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜水機及び潜水機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜水機の深海への潜入時及び浮上時の運転方法が種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、スパイラルターンを画きながら上昇もしくは下降させる水中航走体の昇降操縦方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-086894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の昇降操縦方法では、深海に到達するまでの潜入、及び、深海から回収するときの浮上に時間を要するという問題があった。また、特許文献1の昇降操縦方法では、潜入時及び浮上時に動力を継続的に用いることで、潜入及び浮上に要する時間を短縮することができる。しかしながら、動力源の容量が限定される潜水機では、潜入時及び浮上時に動力を用いると深海での潜航時間が短くなるため、更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、動力を継続的に用いることなく潜入及び浮上に要する時間を短縮可能な潜水機及び潜水機の運転方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、潜水機であって、第1端と第2端との間を第1軸方向に延びる胴体と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に延びる第1翼とを含み、前記胴体には、注排水自在なバラストタンクが配され、前記第1翼には、前記第2軸方向に移動可能なバランスウエイトが配されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の潜水機において、前記第1翼は、前記バラストタンクよりも前記第2端側に設けられるのが望ましい。
【0008】
本発明の潜水機において、前記バラストタンクは、前記胴体の前記第1端側に配されるのが望ましい。
【0009】
本発明の潜水機において、前記第1軸方向及び前記第2軸方向と直交する方向に延びる一対の第2翼をさらに含むのが望ましい。
【0010】
本発明の潜水機において、前記第2翼は、前記第2端側が幅広のデルタ翼形状であるのが望ましい。
【0011】
本発明の潜水機において、前記バランスウエイトの位置を制御するための制御装置をさらに含み、前記制御装置は、潜入するときに前記胴体の前記第1軸方向が鉛直方向に沿うように、前記バランスウエイトの位置を制御するのが望ましい。
【0012】
本発明の潜水機において、水中で移動するための複数の推進器をさらに含むのが望ましい。
【0013】
本発明の潜水機において、無人で潜水航行自在であるのが望ましい。
【0014】
本発明は、上述の潜水機の運転方法であって、前記潜水機の潜入時、前記バラストタンクに注水する潜入注水工程と、前記バランスウエイトを移動させる潜入バランス工程とを含み、前記潜入バランス工程は、前記胴体の前記第1軸方向が鉛直方向に沿うように、前記バランスウエイトを移動させることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上述の潜水機の運転方法であって、前記潜水機の浮上時、前記バラストタンクを排水する浮上排水工程と、前記バランスウエイトを移動させる浮上バランス工程とを含み、前記浮上バランス工程は、前記胴体の前記第1軸方向が鉛直方向に沿うように、前記バランスウエイトを移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の潜水機は、第1端と第2端との間を第1軸方向に延びる胴体と、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に延びる第1翼とを含み、前記胴体には、注排水自在なバラストタンクが配され、前記第1翼には、前記第2軸方向に移動可能なバランスウエイトが配されている。
【0017】
このような潜水機は、バラストタンクとバランスウエイトとにより、胴体の姿勢を鉛直方向に制御することができる。このため、本発明の潜水機は、潜入時及び浮上時に胴体の姿勢を鉛直方向に向けることで流体抵抗を大幅に低減し、動力を継続的に用いることなく潜入及び浮上に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の潜水機の一実施形態を示す斜視図である。
図2】潜水機の断面図である。
図3】潜水機の底面図である。
図4】本発明の潜水機の運転方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図5】潜入工程のフローチャートである。
図6】潜入準備工程を示す模式図である。
図7】潜入注水工程を示す模式図である。
図8】潜入バランス工程を示す模式図である。
図9】潜入終了工程を示す模式図である。
図10】移動工程のフローチャートである。
図11】移動注排水工程を示す模式図である。
図12】浮上工程のフローチャートである。
図13】浮上排水工程を示す模式図である。
図14】浮上バランス工程を示す模式図である。
図15】潜水機が海上まで浮上した状態を示す模式図である。
図16】回収工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の潜水機1を示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態の潜水機1は、第1端2aと第2端2bとの間を第1軸方向Xに延びる胴体2と、第1軸方向Xと直交する第2軸方向Zに延びる第1翼3とを含んでいる。
【0020】
図2は、潜水機1の断面図である。図2に示されるように、本実施形態の胴体2には、注排水自在なバラストタンク4が配されている。バラストタンク4は、例えば、図示省略の高圧海水ポンプ、方向制御弁等の流体機械を用いて注排水され得る。流体機械は、例えば、バッテリー等の動力源(図示省略)により駆動される。このようなバラストタンク4は、潜入時に注水し、浮上時に排水することで、水中重量を変化させて潜入及び浮上することができ、潜水機1の姿勢を制御するのにも役立つ。
【0021】
本実施形態の第1翼3には、第2軸方向Zに移動可能なバランスウエイト5が配されている。バランスウエイト5は、回転式モーター6により、第1位置5aから第2位置5bまで第2軸方向Zに移動するのが望ましい。回転式モーター6は、例えば、バッテリー等の動力源(図示省略)により駆動される。
【0022】
バランスウエイト5は、例えば、回転式モーター6により回転する回転軸7と、回転軸7に対して平行に延びるガイドレール8とに沿って移動する。回転軸7は、回転運動を直進運動に変換するためのらせん状に形成された溝を含むのが望ましい。このようなバランスウエイト5は、潜入時及び浮上時に胴体2の姿勢を鉛直方向に制御することに役立つ。なお、バランスウエイト5は、例えば、リニアモーターにより移動させてもよい。
【0023】
このような潜水機1は、バラストタンク4とバランスウエイト5とにより、胴体2の姿勢を鉛直方向に制御することができる。このため、本実施形態の潜水機1は、潜入時及び浮上時に胴体2の姿勢を鉛直方向に向けることで流体抵抗を大幅に低減し、動力を継続的に用いることなく潜入及び浮上に要する時間を短縮することができる。
【0024】
より好ましい態様として、第1翼3は、バラストタンク4よりも第2端2b側に設けられている。このため、第1翼3に配されたバランスウエイト5は、第2端2b側の重心を変更するのが容易であり、胴体2の姿勢を精度よく制御することができる。
【0025】
本実施形態のバラストタンク4は、胴体2の第1端2a側に配されている。このようなバラストタンク4は、注水及び排水することで、胴体2の姿勢を容易に変更することができる。
【0026】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の潜水機1は、無人で潜水航行自在である、いわゆる無人潜水機である。潜水機1は、例えば、予め実装された自律制御プログラムにより運転される。潜水機1は、トランスポンダ9を介して海中での3次元位置を検出するのが望ましい。潜水機1は、例えば、海上の母船からの音響信号を、トランスポンダ9を介して受信することにより運転されてもよい。このような潜水機1は、小型で長時間の潜航が可能であり、深海調査等に好適に用いられる。
【0027】
本実施形態の潜水機1は、バランスウエイト5の位置を制御するための制御装置(図示省略)をさらに含んでいる。制御装置は、潜入するときに胴体2の第1軸方向Xが鉛直方向に沿うように、バランスウエイト5の位置を制御するのが望ましい。
【0028】
図3は、潜水機1の底面図である。図1及び図3に示されるように、本実施形態の潜水機1は、第1軸方向X及び第2軸方向Zと直交する方向Yに延びる一対の第2翼10をさらに含んでいる。このような第2翼10は、水中での潜水機1の姿勢を安定させることに役立つ。
【0029】
第2翼10は、例えば、水よりも小さい密度の材質から形成されている。本実施形態の第2翼10は、第2端2b側が幅広のデルタ翼形状である。このような第2翼10は、第2端2b側の浮力が大きく、胴体2の姿勢を高精度に制御することができる。
【0030】
図1ないし図3に示されるように、本実施形態の潜水機1は、水中で移動するための複数の推進器11をさらに含んでいる。推進器11は、水中で略水平方向に移動するときに好適に用いられる。推進器11は、例えば、バッテリー等の動力源(図示省略)により駆動されるスラスターである。このような推進器11は、動力源の容量に応じて、自由に水中を移動することができる。
【0031】
推進器11は、例えば、胴体2の第1端2a側に配された第1推進器11Aと、胴体2の第2端2b側に配された第2推進器11Bと、第2翼10の下方に配された第3推進器11C及び第4推進器11Dとを含んでいる。
【0032】
第1推進器11A及び第2推進器11Bは、例えば、水中で略水平方向に移動するときに、同じ回転数で回転させることで胴体2の上下方向の位置を変更することができる。また、第1推進器11A及び第2推進器11Bは、異なる回転数で回転又は一方のみを回転させることで胴体2の上下方向の角度を変更することができる。
【0033】
第3推進器11C及び第4推進器11Dは、例えば、水中で略水平方向に移動するときに、同じ回転数で回転させることで胴体2を前進又は後進させることができる。また、第3推進器11C及び第4推進器11Dは、異なる回転数で回転又は一方のみを回転させることで胴体2の左右方向の角度を変更することができる。
【0034】
このような推進器11を含む潜水機1は、第1翼3及び第2翼10を動かすことなく進行方向を変更することができるので、第1翼3及び第2翼10の構造を簡素化することができる。
【0035】
図1及び図2に示されるように、潜水機1は、例えば、水質等を計測可能な計測器12を含んでいる。このような潜水機1は、深海での調査に好適に用いられる。本実施形態の潜水機1は、潜入及び浮上に動力を継続的に用いることなく、短時間で潜入及び浮上させることができるので、動力源の容量が限定されていても、長時間の調査を実施することができる。
【0036】
次に、図1ないし図3を参酌しつつ、本実施形態の潜水機1の運転方法が説明される。図4は、本実施形態の潜水機1の運転方法を示すフローチャートである。図4の示されるように、本実施形態の潜水機1の運転方法は、まず、潜水機1を潜入させる潜入工程S1が行われる。
【0037】
図5は、潜入工程S1のフローチャートである。図5に示されるように、本実施形態の潜入工程S1は、潜水機1の潜入時、まず、潜入準備工程S11が行われる。
【0038】
図6は、潜入準備工程S11を示す模式図である。図6に示されるように、潜入準備工程S11では、例えば、潜水機1が母船(図示省略)から海上に投入される。本実施形態の潜入準備工程S11では、バラストタンク4が排水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも上方に位置するように胴体2の第1軸方向Xを傾斜させ、第1端2aを海上に突出させることができる。
【0039】
図5に示されるように、本実施形態の潜入工程S1は、潜入準備工程S11の後に、バラストタンク4に注水する潜入注水工程S12が行われる。
【0040】
図7は、潜入注水工程S12を示す模式図である。図7に示されるように、本実施形態の潜入注水工程S12では、バラストタンク4が注水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも下方に位置するように胴体2の第1軸方向Xを傾斜させ、潜入を開始することができる。
【0041】
図5に示されるように、本実施形態の潜入工程S1は、潜入注水工程S12の後に、バランスウエイト5を移動させる潜入バランス工程S13が行われる。
【0042】
図8は、潜入バランス工程S13を示す模式図である。図8に示されるように、本実施形態の潜入バランス工程S13では、バラストタンク4が注水された状態であり、バランスウエイト5が第2位置5bに位置している。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも下方に位置する状態で、胴体2の第1軸方向Xを鉛直方向に向けることができ、潜入時の流体抵抗を低減することができる。
【0043】
潜入バランス工程S13は、胴体2の第1軸方向Xが鉛直方向に沿うように、バランスウエイト5を移動させるのが望ましい。潜入バランス工程S13では、例えば、第1軸方向Xが鉛直方向を超える場合に、バランスウエイト5を第2位置5bから第1位置5a側に移動させて第1軸方向Xが鉛直方向を維持するように制御している。このような潜入バランス工程S13は、海流等の外乱が生じた場合にも、第1軸方向Xを鉛直方向に維持することができるので、潜入時の流体抵抗を最も小さくすることができる。
【0044】
図5に示されるように、本実施形態の潜入工程S1は、潜入バランス工程S13により目的の深度に達したときに、バランスウエイト5を第1位置5aに移動させる潜入終了工程S14が行われる。
【0045】
図9は、潜入終了工程S14を示す模式図である。図9に示されるように、本実施形態の潜入終了工程S14では、バラストタンク4が注水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも下方に位置する状態で、胴体2の第1軸方向Xが潜入注水工程S12と同程度の傾斜に変更することができ、移動工程S2にスムーズに移行することができる。
【0046】
図4の示されるように、本実施形態の潜水機1の運転方法は、潜入工程S1に続いて、水中を移動させる移動工程S2が行われる。
【0047】
図10は、移動工程S2のフローチャートである。図10に示されるように、本実施形態の移動工程S2は、潜水機1の水中移動時、まず、移動注排水工程S21が行われる。
【0048】
図11は、移動注排水工程S21を示す模式図である。図11に示されるように、本実施形態の移動注排水工程S21では、バラストタンク4が一部排水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。移動注排水工程S21は、胴体2の第1軸方向Xが略水平方向に沿うように、バラストタンク4の水量を調整するのが望ましい。これにより潜水機1は、胴体2の第1軸方向Xを略水平方向に維持することができ、進行方向への移動時の流体抵抗を低減することができる。
【0049】
図10に示されるように、本実施形態の移動工程S2は、移動注排水工程S21で胴体2の第1軸方向Xを進行方向に維持した状態で、推進器11を駆動する移動推進工程S22が行われる。
【0050】
本実施形態の移動推進工程S22では、第1推進器11A及び第2推進器11Bを同じ回転数で回転させることで胴体2の上下方向の位置を変更させることができる。また、移動推進工程S22は、第1推進器11A及び第2推進器11Bを異なる回転数で回転又は一方のみを回転させることで胴体2の上下方向の角度を変更させることができる。
【0051】
本実施形態の移動推進工程S22では、第3推進器11C及び第4推進器11Dを同じ回転数で回転させることで、効率よく推進力を発生させることができる。また、移動推進工程S22は、第3推進器11C及び第4推進器11Dを異なる回転数で回転又は一方のみを回転させることで胴体2の左右方向の角度を変更させることができる。
【0052】
図4の示されるように、本実施形態の潜水機1の運転方法は、移動工程S2に続いて、潜水機1を浮上させる浮上工程S3が行われる。
【0053】
図12は、浮上工程S3のフローチャートである。図12に示されるように、本実施形態の浮上工程S3は、潜水機1の浮上時、まず、バラストタンク4を排水する浮上排水工程S31が行われる。
【0054】
図13は、浮上排水工程S31を示す模式図である。図13に示されるように、本実施形態の浮上排水工程S31では、バラストタンク4が排水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも上方に位置するように胴体2の第1軸方向Xを傾斜させ、浮上を開始することができる。
【0055】
図12に示されるように、本実施形態の浮上工程S3は、浮上排水工程S31の次に、バランスウエイト5を移動させる浮上バランス工程S32が行われる。
【0056】
図14は、浮上バランス工程S32を示す模式図である。図14に示されるように、本実施形態の浮上バランス工程S32では、バラストタンク4が排水された状態であり、バランスウエイト5が第2位置5bに位置している。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも上方に位置する状態で、胴体2の第1軸方向Xを鉛直方向に向けることができ、浮上時の流体抵抗を低減することができる。
【0057】
浮上バランス工程S32は、胴体2の第1軸方向Xが鉛直方向に沿うように、バランスウエイト5を移動させるのが望ましい。浮上バランス工程S32では、例えば、第1軸方向Xが鉛直方向を超える場合に、バランスウエイト5を第2位置5bから第1位置5a側に移動させて第1軸方向Xが鉛直方向を維持するように制御している。このような浮上バランス工程S32は、海流等の外乱が生じた場合にも、第1軸方向Xを鉛直方向に維持することができるので、浮上時の流体抵抗を最も小さくすることができる。
【0058】
図12に示されるように、本実施形態の浮上工程S3は、浮上バランス工程S32で海上に浮上したときに、潜水機1を回収する回収工程S33が行われる。
【0059】
図15は、潜水機1が海上まで浮上した状態を示す模式図である。図15に示されるように、本実施形態の浮上バランス工程S32で潜水機1が海上まで浮上したときには、バラストタンク4が排水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。バランスウエイト5は、海上まで浮上する前に第1位置5aに移動させるのが望ましい。これにより潜水機1は、第1端2aが第2端2bよりも上方に位置するように胴体2の第1軸方向Xを傾斜させ、反転することを防止することができる。
【0060】
図16は、回収工程S33を示す模式図である。図16に示されるように、本実施形態の回収工程S33では、バラストタンク4が一部注水された状態であり、バランスウエイト5が第1位置5aに位置している。これにより潜水機1は、胴体2の第1軸方向Xを略水平方向に維持することができ、第1翼3の一部を海上に突出することができる。なお、回収工程S33は、例えば、潜水機1が図6の状態で回収されるのを待機させてもよい。
【0061】
第1翼3には、例えば、回収工程S33において、回収されるのを待機しているときに海上に突出する部分に、ビーコン及びフラッシャー(図示省略)が設けられている。ビーコンは、例えば、人工衛星(図示省略)を介して送信地点を探知させてもよく、母船又は地上局(図示省略)に向けてモールス信号を送信して送信地点を探知させてもよい。フラッシャーは、例えば、LED等を断続的に点滅させて、母船からの視認による探知を容易にしている。このため、本実施形態の潜水機1は、母船による発見、回収が容易である。
【0062】
なお、上述の実施形態では、潜水機1として、無人の潜水機1が例示されたが、潜水機1は、有人のものであってもよい。有人潜水機は、例えば、胴体2が鉛直方向に沿った場合にも搭乗部が水平方向を維持するように構成されてもよいし、搭乗者が固定されていてもよい。このような有人潜水機は、バッテリー等の動力源が限定されていても、潜入及び浮上に要する時間を低減させることができ、深海域での調査、作業等を長時間実施することができる。
【0063】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【符号の説明】
【0064】
1 潜水機
2 胴体
2a 第1端
2b 第2端
3 第1翼
4 バラストタンク
5 バランスウエイト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16