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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】洋上風力発電設備の基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20240404BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20240404BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20240404BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D27/34 A
E02D27/42 Z
E02D27/52 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022010880
(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公開番号】P2023109395
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 孟
(72)【発明者】
【氏名】宮野 展宏
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 健
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-092406(JP,A)
【文献】特開2019-100070(JP,A)
【文献】特開2014-159674(JP,A)
【文献】特表2015-531441(JP,A)
【文献】特開昭63-111395(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104533724(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112027027(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113651238(CN,A)
【文献】特開2017-072021(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105443634(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112610394(CN,A)
【文献】特開2010-150814(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112747070(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/32
E02D 27/34
E02D 27/42
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備を支持し、水底地盤に設置される洋上風力発電設備の基礎構造であって、
前記水底地盤に貫入された複数の杭と、
前記複数の杭に支持され、前記水底地盤上に沿って設置される平板状の第一免震装置と、
前記第一免震装置上に設置される第二免震装置と、を備え、
前記第二免震装置は、
変形可能な材料で筒状に形成された外層部と、
前記外層部の内部に粒状物が充填された内層部と、を有する洋上風力発電設備の基礎構造。
【請求項2】
前記第一免震装置は、鋼板で形成されている請求項1に記載の洋上風力発電設備の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電設備の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着床式洋上風力発電が知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。今後、洋上風力発電設備の基礎は、日本沿岸域の堆積層の下部の比較的硬質な岩盤に設置される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-190152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、欧州で最も実績があるモノパイル基礎は杭径が4m以上と非常に大きく、効率よく岩盤を削孔する機械が存在しないため、比較的硬質な岩盤に設置する場合には施工が困難となる。モノパイル基礎が施工困難な場合の代替案としては、複数杭を有する杭式ジャケット基礎が考えられる。しかし、ジャケット基礎はトラス構造であるため剛性が高く、モノパイル基礎に比べて地震時の振動に対する地盤の減衰効果が小さいという課題がある。その一方で、重力式基礎は堅固な地盤に適用が限られるという課題がある反面、特に短周期振動帯において地盤の減衰効果があることが分かっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、施工性が良いとともに、地震応答を低減することができる洋上風力発電設備の基礎構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る洋上風力発電設備の基礎構造は、洋上風力発電設備を支持し、水底地盤に設置される洋上風力発電設備の基礎構造であって、前記水底地盤に貫入された複数の杭と、前記複数の杭に支持され、前記水底地盤上に沿って設置される平板状の第一免震装置と、前記第一免震装置上に設置される第二免震装置と、を備え、前記第二免震装置は、変形可能な材料で筒状に形成された外層部と、前記外層部の内部に粒状物が充填された内層部と、を有する。
【0007】
このように構成された洋上風力発電設備の基礎構造では、第二免震装置の外層部は変形可能な材料で形成されているため、減衰力が大きい。また、第二免震装置の内層部は粒状物が充填されたものであり、所定の重量を有していて、第二免震装置に地震力が作用した際に、地震力と反対向きの復元力を有する。よって、外層部で減衰力を発揮しつつ内層部で復元力を発揮して、地震応答を低減することができる。
また、地震応答が低減できるため、従来のジャケット基礎よりも杭(断面や長さ)をスリム化することができる。
【0008】
また、本発明に係る洋上風力発電設備の基礎構造では、前記第一免震装置は、鋼板で形成されていてもよい。
【0009】
このように構成された洋上風力発電設備の基礎構造では、第一免震装置は鋼板で形成されていて、鋼板の曲げ剛性(EI)はコンクリート製フーチングの曲げ剛性よりも低い。よって、第一免震装置は水底地盤の変動に追従しやすいため、地震応答を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る洋上風力発電設備の基礎構造によれば、施工性が良いとともに、地震応答を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による洋上風力発電設備の基礎構造を模式的に示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による洋上風力発電設備の基礎構造を模式的に示した正面図である。
図3】本発明の一実施形態による洋上風力発電設備の基礎構造を模式的に示した平面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】本発明の一実施形態による洋上風力発電設備の基礎構造の第二免震装置の断面斜視図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例による洋上風力発電設備の基礎構造を模式的に示した平面図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例による洋上風力発電設備の基礎構造を模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による洋上風力発電設備の基礎構造について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、洋上風力発電設備の基礎構造(以下、「基礎構造」と称する)100は、水底地盤G(図2参照)に設置され、不図示の洋上風力発電設備を支持するものである。基礎構造100は、杭基礎101と、下部構造102と、を備えている。杭基礎101は、下部構造102を支持している。基礎構造100は、重力式の減衰特性とモノパイル式の減衰特性とを組み合わせたハイブリット基礎である。
【0014】
杭基礎101は、複数の杭1と、第一免震装置2と、複数の杭頭接合部3と、複数の第二免震装置4と、を有している。
【0015】
図2に示すように、杭1は、上下方向に延びている。図4に示すように、杭1は、円筒状の鋼管11と、鋼管11内の上部に充填されたコンクリート12と、を有している。杭1は、水底地盤Gに貫入されている。本実施形態では、杭1は4本であるが、杭1の本数は3本以上であれば適宜設定可能である。
【0016】
第一免震装置2には、水底地盤Gの地盤面G1に沿って配置されている。第一免震装置2は、鋼板で形成されている。第一免震装置2の板面は、上下方向を向いている。第一免震装置2は、平板状に形成された底板である。図3に示すように、第一免震装置2は、平面視で略矩形状から、各辺の中間が矩形の内側に凹む形状をしている。4本の杭1は、第一免震装置2の平面視で矩形の各頂点に位置している。第一免震装置2は変形可能な鋼板で形成されているため、剛性が低い。これによって、第一免震装置2は水底地盤Gの変動に追従しやすい。
【0017】
図4に示すように、第一免震装置2には、杭1が配置される箇所に、上下方向に貫通する取付孔2aが形成されている。取付孔2aに、杭1の上部が挿通されている。
【0018】
杭頭接合部3は、接合コンクリート部31と、鞘管32と、グラウト材33と、を有している。図1に示すように、接合コンクリート部31は、コンクリートで平面視環状に形成されている。図4に示すように、接合コンクリート部31の内部には、上下方向に貫通する鞘管32が設けられている。
【0019】
鞘管32は、上下方向に延びる管状をしている。本実施形態では、鞘管32は、鋼管である。海中において、鞘管32の内部に杭1の上端部1uが挿通され、鞘管32の内側と杭1の上端部1uとの間に形成された空間にグラウト材33が充填されることで、杭1及び接合コンクリート部31は接合される。グラウト材33の周りは、剛性の高い接合コンクリート部31のコンクリートで覆われている。これによって、杭1及びグラウト材33をコンクリートで拘束することで、杭頭接合部3のグラウト材33に作用する荷重を低減することができる。
【0020】
第一免震装置2に設けられた不図示のスタッドジベルが杭頭接合部3の接合コンクリート部31に付着される等の接合手段によって、第一免震装置2は杭頭接合部3の接合コンクリート部31に接合されている。
【0021】
図1に示すように、第二免震装置4は、第一免震装置2上に配置されている。第二免震装置4は、平面視で略矩形状の第一免震装置2の中心から杭1に向かって放射線状に配置されている。第二免震装置4は、4本設置されている。図5に示すように、第二免震装置4は、外層部41と、内層部42と、を有している。
【0022】
外層部41は、変形可能な材料で角筒状に形成されている。本実施形態では、外層部41は、鋼板で形成されている。外層部41の形状は、適宜設定可能である。
【0023】
内層部42は、粒状物が外層部41の内部に充填されたものである。粒状物として、例えば、スラグ、砂、土等を採用することができる。粒状物の飽和単位体積重量は、19kN/m以上であることが好ましい。
【0024】
図4に示すように、第二免震装置4は、溶接またはボルト接合等の接合手段によって、第一免震装置2に接合されている。第二免震装置4の端部は、杭頭接合部3の内部に配置されている。第二免震装置4の端部が鞘管32に溶接されるとともに、第二免震装置4に設けられたスタッドジベル44が接合コンクリート部31に付着される等の接合手段によって、第二免震装置4は杭頭接合部3に接合されている。
【0025】
図1に示すように、下部構造102は、主管5と、支管6と、を備えている。主管5は、第一免震装置2から上方に延びている。主管5は、管状に形成されている。主管5の下端部は、第一免震装置2の上面に接合されている。支管6は、鉛直面に対して傾斜して配置されている。支管6の上端部は、主管5に接合されている。支管6の下端部は、第二免震装置4の上面に接合されている。
【0026】
このように構成された基礎構造100では、第二免震装置4の外層部41は変形可能な材料である鋼板で形成されているため、減衰力が大きい。また、第二免震装置4の内層部42は粒状物が充填されたものであり、所定の重量を有していて、第二免震装置4に地震力が作用した際に、地震力と反対向きの復元力を有する。よって、外層部41で減衰力を発揮しつつ内層部42で復元力を発揮して、地震応答を低減することができる。
【0027】
また、地震応答が低減できるため、従来のジャケット基礎よりも杭(断面や長さ)をスリム化することができる。
【0028】
また、第一免震装置2は鋼板で形成されていて、鋼板の曲げ剛性(EI)はコンクリート製フーチングの曲げ剛性よりも低い。よって、第一免震装置2は水底地盤Gの変動に追従しやすいため、地震応答を低減することができる。
【0029】
また、杭1はジャケット基礎に比べて長さの短い杭であるため、杭を水底地盤Gに貫入して設置する施工を容易に行うことができる。
【0030】
また、第一免震装置2、杭頭接合部3及び第二免震装置4と杭1とを組み合わせることによって、基礎耐力を高めるととともに、基礎構造100の重量を低減させることができる。
【0031】
また、杭1の長さを調整することにより、異なる深さの成層地盤に対応することができる。
【0032】
(変形例)
次に、上記に示す実施形態の変形例による洋上風力発電設備の基礎構造について、主に図6図7を用いて説明する。以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0033】
図6及び図7に示すように、本変形例による基礎構造100Aでは、杭1は、3本である。第一免震装置2Aは、平面視で略三角形状から、各辺の中間が矩形の内側に凹む形状をしている。3本の杭1は、第一免震装置2Aの平面視で矩形の各頂点に位置している。
【0034】
このように構成された基礎構造100Aでは、第二免震装置4の外層部41は変形可能な材料である鋼板で形成されているため、減衰力が大きい。また、第二免震装置4の内層部42は粒状物が充填されたものであり、所定の重量を有していて、第二免震装置4に地震力が作用した際に、地震力と反対向きの復元力を有する。よって、外層部41で減衰力を発揮しつつ内層部42で復元力を発揮して、地震応答を低減することができる。
【0035】
また、地震応答が低減できるため、従来のジャケット基礎よりも杭(断面や長さ)をスリム化することができる。
【0036】
また、杭1の本数が3本であるため、基礎構造100よりもコンパクトな構成とすることができる。
【0037】
以上、本発明に係る洋上風力発電設備の基礎構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0038】
例えば、上記に示す実施形態及び変形例では、第一免震装置は平面視略矩形状または平面視略三角形状をしているが、本発明はこれに限られない。第一免震装置の形状は、平面視略円形状、多角形状等適宜設定可能である。
【0039】
例えば、上記に示す実施形態及び変形例では、下部構造102は、主管5と複数の支管6と備えているが、本発明はこれに限られない。上部基礎の構成は適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 杭
2,A 第一免震装置
3 杭頭接合部3
4 第二免震装置
5 主管
6 支管
41 外層部
42 内層部
100,100A 基礎構造(洋上風力発電設備の基礎構造)
101 杭基礎
102 下部構造
G 水底地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7