(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】幼若ホルモンシグナル阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 319/18 20060101AFI20240404BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20240404BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240404BHJP
A01N 43/32 20060101ALI20240404BHJP
A61P 33/14 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
C07D319/18 CSP
A61K31/357
A01P7/04
A01N43/32
A61P33/14
(21)【出願番号】P 2021046116
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】古田 賢次郎
(72)【発明者】
【氏名】粥川 琢巳
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011914(JP,A)
【文献】国際公開第2003/027059(WO,A1)
【文献】特開昭47-034239(JP,A)
【文献】Naoko YAMADA et al.,Anti-juvenile hormone activity of ethyl 4-[(7-substituted 1,4-benzodioxan-6- yl)methyl]benzoates and their effect on the juvenile hormone titer in the hemolymph of the silkworm, Bombyx mori,Journal of Pesticide Science,2016年,41(2),38-43
【文献】Kenjiro FURUTA et al.,Synthesis and anti-juvenile hormone activity of ethyl 4-[(6-substituted 2,2- dimethyl-2H-chromen-7-yl)methoxy benzoates,Journal of Pesticide Science,2010年,35(4),405-411
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A01P、A01N、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、R
1は水素原子、またはC
1-6アルキルであり、
R
2およびR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキルまたはC
1-6アルコキシカルボニルであり、
Xは-CH
2-、または-CO-であり、
Yは-CH
2-、-O-、-NH-である)
で示される化合物またはその塩。
【請求項2】
R
1はC
1-6アルキルであり、R
2はハロゲン原子、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキルまたはC
1-6アルコキシカルボニルであり、R
3は水素原子である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R
1はメチル又はエチルであり、R
2は塩素原子、メチル、t-ブチル、メトキシカルボニル、またはトリフルオロメチルであり、R
3は水素原子である、請求項1又は2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
Xは-CH
2-であり、Yは-O-である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
式Iで示される化合物が、メチル 3-{4-(7-((4-メトキシカルボニルフェニル)メトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メトキシ}フェニル-2E-プロペノエートまたはエチル 3-{4-(7-((4-メトキシカルボニルフェニル)メトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メトキシ}フェニル-2E-プロペノエートである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を含む抗幼若ホルモン剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を有効成分として含有する有害生物防除剤。
【請求項8】
鱗翅目昆虫に用いるための、請求項7に記載の有害生物防除剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4-ベンゾジオキサン環を有する化合物またはその塩、該化合物を含む抗幼若ホルモン剤および該化合物を含有する有害生物防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
幼若ホルモン(Juvenile Hormone)(以下、「JH」と表記する場合がある。)は、セスキテルペノイド骨格を有する昆虫をはじめとする節足動物に固有のホルモンで、胚発生、脱皮・変態、性成熟、休眠等の卵から成体までの全ステージにおける多彩な昆虫特有の生理調節機構を制御する重要な昆虫ホルモンである。例えば、幼虫期においてJHは、脱皮ホルモン(エクジステロイド)と協調的に働くことで、脱皮と変態を制御していることが知られている(非特許文献1)。幼虫から幼虫への脱皮は、体液中にJHが存在している状態で、脱皮ホルモンが分泌されると起き、幼虫から蛹あるいは成虫への変態は、JHが存在しない状態で、脱皮ホルモンが分泌されることで引き起こされることが明らかになっている。また、成虫期では多くの場合、JHは単独で作用し、脂肪体での卵黄形成タンパク質の合成と分泌などの生殖腺成熟作用を示す。この他にもJHは、休眠や社会性昆虫におけるカースト分化など昆虫の各生育段階において非常に重要な役割をはたすことが知られている。そのため、JHを標的とした昆虫成育制御剤は、節足動物に対して高い選択性を有し、ヒトや哺乳動物に対して影響がない、または極めて影響が低く安全性が高い、理想的な有害生物防除剤が得られると考えられる。
【0003】
これまでに、変態阻害活性などJHと同様の生物活性を示すメソプレンやピリプロキシフェンなどの様々なJHアナログが開発されてきた(例えば、特許文献1)が、これらJHアナログは、幼虫期を延長させる効果があり、チョウ目昆虫のような幼虫期が加害ステージである昆虫に対しては、被害をかえって増加させる可能性がある。そのため、JHアナログとは異なり、JHの作用を抑制するJHアンタゴニストの開発が求められている。
【0004】
天然物のJHアンタゴニストとして、カナクギノキ果実に含まれる成分であり下記に化学構造を示すLE3Bが、ネッタイシマカのJH受容体を用いたレポータージーンアッセイにおいてJHアンタゴニスト活性だけでなく、ネッタイシマカの卵巣成熟を抑制することが報告されている(非特許文献2)。一方、合成されたJHアンタゴニストとしては、カイコおよびタバコスズメガの幼虫に対して早熟変態誘導活性を示すエチル 4-[2-(tert-ブチルカルボニルオキシ)ブトキシ]ベンゾエート(ETB)、エチル 4-[(6-置換2,2-ジメチル-2H-クロメン-7-イル)メトキシ]ベンゾエート(KF38)、エチル 4-[(7-置換1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メチル]ベンゾエート(NY03)等が報告されている(非特許文献3~6)。しかし、これらのJHアンタゴニストはいずれも生理活性は低く、実用化には至っていない。本発明者は、カイコ幼虫に対して高い早熟変態誘導活性を示すエチル 3-(4-{[7-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メチル}フェニル)-2-プロペノエート(NY52)を見出しており、カイコ表皮におけるJH初期応答遺伝子の発現を抑制することを明らかにしている(特許文献2)。しかし、NY52は分子レベルでの作用機構に関して不明な点が多く、昆虫体内でJHアンタゴニストとして作用しているか明らかになっていない。
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために培養細胞を使ってJHアゴニスト活性を容易に評価できるJH配列を用いたレポータージーンアッセイ系を見出し、既に報告している(特許文献3、特許文献4)。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-215671号公報
【文献】特開2020-11914号公報
【文献】特開2009-297021号公報
【文献】特開2019-014686号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】S. G. Kamita et al., Insect Biochemistry and Molecular Biology 30, 617-644(2000).
【文献】S. Lee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 112, 1733-1738 (2015)
【文献】G. B. Staal, Ent. Exp. Appl. 31, 15-23 (1982)
【文献】G. B. Staal, Annu. Rev. Entomol. 20, 417-460 (1975)
【文献】K. Furuta et al., Journal of Pesticide Science, 35(4), 405-411 (2010)
【文献】N. Yamada et al., Journal of Pesticide Science, 41(2), 38-43(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
JHアゴニスト活性化合物は、蛹化及び成虫化を抑制することで次世代の個体群密度を抑制することが可能であると考えられるが、ライフサイクルの長い食害性害虫にこれらJHアゴニスト活性化合物を処理すると、幼虫期間を延長してしまい、かえって食害を増大させてしまう可能性があり問題である。これに対し、JHアンタゴニスト活性化合物は、最も食害が多い終前齢及び終齢幼虫期への脱皮を抑制できる。これにより、早熟変態また
は発育不全を誘導することで食害を最小限に抑制することができ、かつ、次世代の害虫個体群密度を抑制することが可能となる。
【0010】
そこで、本発明は、新規なJHアンタゴニスト活性化合物の創製と、当該化合物を含有する新たな有害生物防除剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するために、JHアンタゴニスト活性化合物の合成探索をテーマとして研究している。この合成探索により得られた化合物の構造活性相関に基づき、さらなる合成展開を重ねた結果、優れたJHアンタゴニスト活性を有する化合物群、すなわち、一般式(I)で表される1,4-ベンゾジオキサン環を有する化合物またはその塩を見出し、上記課題を解決するに至ったものである。優れたJHアンタゴニスト活性を有する化合物は、特許文献3に記載のスクリーニング系を用いて見いだされた。本明細書の開示は、以下の[1]~[8]に記載の発明を包含する。
【0012】
[1]式I:
【0013】
【0014】
(式中、R1は水素原子、またはC1-6アルキルであり、
R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキルまたはC1-6アルコキシカルボニルであり、
Xは-CH2-、または-CO-であり、
Yは-CH2-、-O-、-NH-である)
で示される化合物またはその塩。
【0015】
[2]R1はC1-6アルキルであり、R2はハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキルまたはC1-6アルコキシカルボニルであり、R3は水素原子である、[1]に記載の化合物またはその塩。
【0016】
[3]R1はメチル又はエチルであり、R2は塩素原子、メチル、t-ブチル、メトキシカルボニル、トリフルオロメチルであり、R3は水素原子である、[1]又は[2]に記載の化合物またはその塩。
【0017】
[4]Xは-CH2-であり、Yは-O-である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
[5]式Iで示される化合物が、メチル 3-{4-(7-((4-メトキシカルボニルフェニル)メトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メトキシ}フェニル-2E-プロペノエートまたはエチル 3-{4-(7-((4-メトキシカルボニルフェニル)メトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メトキシ}フェニル-2E-プロペノエートである、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【0018】
[6][1]~[5]のいずれかに記載の化合物を含む抗幼若ホルモン剤。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の化合物を有効成分として含有する有害生物防除剤。
【0019】
[8]鱗翅目昆虫に用いるための、[7]に記載の有害生物防除剤。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一般式(I)で表される1,4-ベンゾジオキサン環を有する化合物またはその塩は、優れたJHアンタゴニスト活性を有する化合物群である。このため、本発明の化合物を有効成分として含有する有害生物防除剤は、節足動物に対して高い選択性を有し、ヒトや哺乳動物に対して安全性が高く、優れた防除効果を有する。
【0021】
さらに、本発明の化合物またはその塩は、節足動物において最も食害が多いとされる幼虫期への脱皮を抑制し、早熟変態または発育不全に誘導できるため、本発明の有害生物防除剤は、農作物の食害と次世代の害虫個体群密度を抑制するという顕著な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】試験例1のJH応答配列を用いたレポータージーンアッセイ系におけるルシフェラーゼ遺伝子の発現抑制率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一般式(I)の定義において、「C1-6アルキル」とは、例えば、メチル、エチル、ノルマルプロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、ターシャリーブチル、ノルマルペンチル、イソペンチル、ターシャリーペンチル、ネオペンチル、2,3-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、ノルマルヘキシル、イソヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、3,3-ジメチルブチル等の直鎖または分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキルを意味する。
【0024】
「C1-6アルコキシ」とは、例えば、メトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、セカンダリーブトキシ、ターシャリーブトキシ、ノルマルペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ターシャリーペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、2,3-ジメチルプロピルオキシ、1-エチルプロピルオキシ、1-メチルブチルオキシ、ノルマルヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、1,1,2-トリメチルプロピルオキシ等の直鎖または分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルコキシを意味する。
【0025】
「C1-6ハロアルキル」とは、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロイソブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモプロピル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル等の直鎖または分岐鎖状の炭素原子数1~6個のアルキルに、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはフッ素原子が置換した基を意味する。
【0026】
「C1-6アルコキシカルボニル」とは、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等の炭素数1~6のアルコキシとカルボニルが結合した基を意味する。
【0027】
「ハロゲン原子」とは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはフッ素原子を意味する。
本発明の一般式(I)で表される化合物の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩等の無機酸塩類、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩類、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、トリメチルアンモニウム等の無機または有機の塩基との塩類を例示することができる。
【0028】
本発明の一般式(I)で表される化合物またはその塩は、その構造式中に1つまたは複数個の不斉中心を有する場合があり、2種以上の光学異性体およびジアステレオマーが存在する場合もあるが、本発明は各々の光学異性体およびそれらが任意の割合で含まれる混合物をも全て包含するものである。また、本発明の一般式(I)で表される化合物およびその塩は、その構造式中に炭素-炭素二重結合に由来する2種の幾何異性体が存在する場合もあるが、本発明は各々の幾何異性体及びそれらが任意の割合で含まれる混合物をも全て包含するものである。
【0029】
本発明の一般式(I)におけるR1は、水素原子またはC1-6アルキルであり、中でもC1-6アルキルが好ましく、さらにC1-3アルキルが好ましい、特にC1-2アルキルが好ましい。
【0030】
本発明の一般式(I)におけるR2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルキルまたはC1-6アルコキシカルボニルであり、中でもR2はC1-6アルキルまたはC1-6アルコキシカルボニルで、R3は水素原子であることが好ましく、さらにR2はC1-3アルキルまたはC1-3アルコキシカルボニルで、R3は水素原子であることが好ましく、特にR2はC1-3アルコキシカルボニルで、R3は水素原子であることが好ましい。また、R2が水素原子以外の置換基である場合にはベンゼン環上の4位であることが好ましく、さらにR3も水素原子以外の置換基である場合にはベンゼン環上の2位または3位であることが好ましい。
【0031】
本発明の一般式(I)におけるXは-CH2-、または-CO-であり、中でも-CH2-が好ましい。
本発明の一般式(I)におけるYは-CH2-、-O-または-NH-であり、中でも-O-が好ましい。
【0032】
本発明の一般式(I)で表される化合物またはその塩としては、R1がC1-6アルキル基であり、R2はC1-6アルコキシカルボニルであり、R3は水素原子であり、Xは-CH2-であり、Yは-O-である化合物またはその塩が好ましく、中でも、メチル 3-{4-(7-((4-メトキシカルボニルフェニル)メトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メトキシ}フェニル-2E-プロペノエートまたはエチル 3-{4-(7-((4-メトキシカルボニルフェニル)メトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)メトキシ}フェニル-2E-プロペノエートがより好ましい。
【0033】
本発明の化合物またはその塩は、例えば、下記に示す製造方法によって製造することができるが、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
<製造方法1>
【0034】
【0035】
例えば、3,4-エチレンジオキシベンズアルデヒドを出発原料として、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)などを用いるバイヤービリガー酸化を行い、塩基条件下で加水分解を行うことで6-ヒドロキシ-1,4-ベンゾジオキサン(1)を調製することができる。これを例えばエチルマグネシウムブロミドとパラホルムアルデヒドを用いて変換することにより、アルデヒド(2)を得ることができる。例えば、水酸基をベンゼン環上に様々な置換基を有するベンジルハライド(例えば、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなど)と反応させることで得られる化合物(3)を、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの還元剤を用いてホルミル基を還元してアルコールに変換することができる。該アルコールは、例えばp-クマル酸エステルを用いた光延反応により、化合物(4)に変換することができる。
<製造方法2>
【0036】
【0037】
製造方法1により得られたアルデヒド(2)の水酸基をTBS基で保護して得られるアルデヒド(5)を、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などの還元剤を用いてアルコールに変換することができる。該アルコールは、例えばp-クマル酸エステルを用いた光延反応により、化合物(6)に変換することができる。その後、t-ブチルジメチルシリル(TBS)基を例えばテトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて脱保護した後、ベンゼン環上に様々な置換基を有するベンジルブロミドとの反応を行うことで化合物(4)を得ることができる。
<製造方法3>
【0038】
【0039】
製造方法1により得られたアルデヒド(2)を、例えばヨウ化メチルにより水酸基をメチル基で保護し、得られる化合物(7)を例えばピニック酸化によりカルボン酸(8)に変換することができる。これを塩化チオニルにより酸塩化物とし、4-アミノ桂皮酸エチルと反応させることで化合物(9)を得た。次いで、三臭化ホウ素でメチル基の脱保護を行った後、ベンゼン環上に様々な置換基を有するベンジルハライド(例えば、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなど)との反応を行うことで化合物(10)を得ることができる。
<製造方法4>
【0040】
【0041】
製造方法1により得られたアルデヒド(2)の水酸基をメトキシメチルクロリドにより保護(11)し、(4-メトキシカルボニルベンジル)ホスホン酸ジメチルとホーナー・ワズワース・エモンズ反応をすることで化合物(12)を得た。次いで、接触還元により二重結合を還元した後、水素化アルミニウムリチウム(LAH)を用いてエステルを還元(13)し、二酸化マンガンで酸化することでアルデヒド(14)を得た。その後、メトキシメチル(MOM)基を酸性条件下での加水分解により脱保護した後、ベンゼン環上に様々な置換基を有するベンジルハライド(例えば、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなど)との反応を行うことで化合物(15)を得ることができる。
【0042】
本発明の化合物またはその塩の製造時には、各工程の反応終了後、常法により必要に応じて後処理を行い、生成物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作を、単独または2つ以上の操作を組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、生成物を取り出せばよい。また、取り出した生成物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作を、単独または2つ以上の操作を組み合わせて1回以上行うことで精製してもよい。各工程の生成物は、例えば、核磁気共鳴法(NMR)、赤外分光法(IR)、質量分析法(MS)等、公知の手法により、その化学構造を確認すればよい。
【0043】
本発明の有害生物防除剤は、通常、固体担体、液体担体等の不活性担体と混合し、製剤化して用いられる。本発明の有害生物防除剤は、水和剤、水溶剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤、乳剤、粉剤、粒剤等に製剤化できる。
【0044】
本発明の有害生物防除剤における、JHアンタゴニスト活性を有する有効成分の含有量は、通常0.1~100重量%、好ましくは0.2~90重量%、より好ましくは0.5~80重量%の範囲である。
【0045】
固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物等、並びに合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-66等のナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-プロピレン共重合体等)が挙げられる。
【0046】
液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノキシエタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)、N,N-ジメチルアセトアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」という。)等)、炭酸プロピレン及び植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
【0047】
本発明の有害生物防除剤の製剤化の際には、必要に応じてさらに界面活性剤やその他の製剤用補助剤を添加する。
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。
【0048】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤、着色剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン
酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)、PAP(酸性りん酸イソプロピル)、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、BHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
【0049】
本発明の有害生物防除剤が水和剤、水溶剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤、乳剤に製剤化されている場合には、通常、JHアンタゴニスト活性を有する有効成分の濃度が0.1~10000ppmとなるように水で希釈して施用し、粉剤、粒剤に製剤化されている場合はそのまま施用する。
【0050】
本発明の有害生物防除剤は、農園芸用殺虫剤として優れた効果を有するだけでなく、犬や猫といった愛玩動物、または牛や羊等の家畜に寄生する有害生物に対しても効果を有する。
【0051】
本発明の有害生物防除剤が効力を発揮する節足動物類としては、例えば以下のものが挙げられる。
半翅目害虫:ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、タイワンツマグロヨコバイ(Nephotettix virescens)等のヨコバイ類、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ミカンミドリアブラムシ(Aphis citricola)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pseudo brassicae)、ナシミドリオオアブラムシ(Nippolachnus piri)、コミカンアブラムシ(Toxoptera aurantii)、ミカンクロアブラムシ(Toxoptera citricida)等のアブラムシ類、アオクサカメムシ(Nezara antennata)、ホソハリカメムシ(Cletus punctiger)、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavatus)、チャバネアオカメムシ(Plautia stali)等のカメムシ類、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類、アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、サンホーゼカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)、シトラススノースケール(Unaspis citri)、クワシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis pentagona)、オリーブカタカイガラムシ(Saissetia oleae)、ミカンノカキカイガラムシ(Lepidosaphes beckii)、ルビーロウムシ(Ceroplastes rubens)、イセリヤカイガラムシ(Icerya purchasi)等のカイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等を挙げることができる。
【0052】
鱗翅目害虫:ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、ハイマダラノメイガ(Hellulla undalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)、ワタノメイガ(Notarcha derogata)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)等のメイガ類、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属等のヤガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae)等のシロチョウ類、アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、コドリンガ(Cydia pomonella)等のハマキガ類、モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類、リオネティア属等のハモグリガ類、リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類、コナガ(Plutella xylostella)等のスガ類、ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類、アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)等のヒトリガ類、イガ(Tinea translucens)、コイガ(Tineola bisselliella)等のヒロズコガ類等を挙げることができる。
【0053】
双翅目害虫:アカイエカ(Culex pipiens pallens)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)等のイエカ類、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒトスジシマカ
(Aedes albopictus)等のエーデス属、シナハマダラカ(Anopheles sinensis)等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ(Musca domestica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ヒメイエバエ類、タネバエ(Delia platura)、タマネギバエ(Delia antiqua)等のハナバエ類、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)等のハモグリバエ類、ミバエ類、ノミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類等を挙げることができる。
【0054】
鞘翅目害虫:ウエスタンコーンルートワーム(Diabrotica virgifera virgifera)、サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi)等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等のコガネムシ類、メイズウィービル(Sitophilus zeamais)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、アルファルファタコゾウムシ(Hypera postica)、アズキゾウムシ(Callosobruchuys chinensis)等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等のゴミムシダマシ類、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)等のハムシ類、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)等のエピラクナ類、ナガシンクイムシ類、アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)等を挙げることができる。
【0055】
アザミウマ目害虫:ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ハナアザミウマ(Thrips hawaiiensis)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniellaintonsa)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、カキクダアザミウマ(Ponticulothrips diospyrosi)等を挙げることができる。
【0056】
膜翅目害虫:アリ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、ニホンカブラバチ(Athalia japonica)等のハバチ類等を挙げることができる。
直翅目害虫:ケラ類、バッタ類等を挙げることができる。
【0057】
また本発明の有害生物防除剤は、動物外部寄生虫防除用途に使用することができ、対象となる動物としては、ノミ目、シラミ目、双翅目等の外部寄生虫の宿主となり得る動物が挙げられ、通常、家畜やペットとして飼養されている動物が挙げられる。具体的には、例えば、哺乳綱動物として、イヌ、ネコ、フェレット等の食肉目、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の偶蹄目、マウス、ラット、ハムスター、リス等のげっ歯目、ウサギ等の兎目、サル等の霊長目;鳥綱としては、アヒル等のガンカモ目、ハト等のハト目、オウム等のオウム目等の動物が挙げられる。
【0058】
本発明の有害生物防除剤を動物外部寄生虫防除用途に使用する場合には、スポットオン処理、ポアオン処理等の方法により処理することができる。スポットオン処理とは、通常、宿主動物の肩胛骨背部等の皮膚に液状の製剤を滴下または塗布する方法であり、ポアオン処理とは、通常、宿主動物体の背中線に沿って液状の製剤を注ぐ方法である。動物への処理量は、対象となる動物または防除される外部寄生虫の種類等によっても変わり得るが、対象となる動物の生体重1kg当たり、JHアンタゴニスト活性を有する有効成分に換算して、通常0.05~1000mg/kg、好ましくは0.1~200mg/kgである。
【0059】
本発明の有害生物防除剤により防除可能な外部寄生虫としては、前述した宿主動物の外部寄生虫として知られている種々の有害節足動物が挙げられ、具体的には、イエバエ(Musca domestica)、ノイエバエ(Musca hervei)、クロイエバエ(Musca bezzii)、ノサシバエ(Haematobia irritans)、ツメトゲブユ(Simulium iwatens)、ウシヌカカ(Culicoides oxystoma)、アカウシアブ(Tabanus chrysurus)、アカイエカ(Culex pipiens)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)等の双翅目害虫、ウシジラミ(Haematopinus eurysternus)、ヒツジジラミ(Damalinia ovis)等のシラミ目害虫、ネコノミ(Ctenocephalides felis)、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis)等のノミ目害虫等を挙げることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例として、化合物の合成例と物性データおよび試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、化合物の物性データとして1H-NMR(BURUKER社製AV400、400MHz、内部標準物質:TMS)データを使用した。
【0061】
[実施例1]6-ヒドロキシ-1,4-ベンゾジオキサン(1)の調製
3,4-エチレンジオキシベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)(0.67g,3.9mmol)をCH2Cl2(10mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液にmCPBA(4.2g,4.7mmol)を加え、50℃で終夜撹拌した。反応液にn-ヘキサンを加えて濾過し、濾液を減圧濃縮した。得た残渣をメタノール(10mL)に溶解させ,1N水酸化ナトリウム水溶液(3mL)を加え,室温で終夜撹拌した。反応液に1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、化合物(1)(0.53g,85%)を得た。
【0062】
1H NMR (CDCl3) δ: 4.22 (4H, m, OCH2CH2O), 4.75 (1H, br, OH), 6.33 (1H, dd, J=2.9, 8.8 Hz, フェニル), 6.39 (1H, d, J=2.9 Hz, フェニル), 6.72 (1H, d, J=8.8 Hz, フェニル)。
【0063】
[実施例2]7-ヒドロキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(2)の調製
化合物(1)(0.50g,3.2mmol)をTHF(5mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に3MメチルマグネシウムブロミドTHF溶液(5.4mL,16mmol)を滴下し、室温で30分撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、得た残渣をベンゼン(15mL)に溶解させた。続いて、ヘキサメチルリン酸トリアミド(1.47g,8.2mmol)、パラホルムアルデヒド(1.5g)を加え、80℃で4時間加熱した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物(2)(0.36g,61%)を得た。
【0064】
1H-NMR (CDCl3) δ: 4.30 (4H, m, OCH2CH2O), 6.45 (1H, s, フェニル), 7.01 (1H, s, フェニル), 9.66 (1H, s, OH), 10.92 (1H, s, CHO)。
[実施例3]7-(4-メチルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(3a)の調製
化合物(2)(0.20g,1.1mmol)をDMF(5mL)に溶解させ、無水炭酸ナトリウム(0.18g,1.3mmol)、4-メチルベンジルクロリド(東京化成工業株式会社製)(0.19g,1.3mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を1N水酸化ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣にジエチルエーテルを加えて再結晶を行い、化合物(3a)(0.27g,86%)を得た。
【0065】
1H-NMR (CDCl3) δ: 2.33 (3H, s,CH3), 4.24 (4H, m, OCH2CH2O), 5.06 (1H, s OCH2), 6.53 (1H, s, フェニル), 6.95 (2H, d, J=8.7 Hz, フェニル), 7.15 (2H, d, J=7.8 Hz, フェニル), 7.26 (2H, d, J=8.0 Hz, フェニル), 7.28 (1H, s, フェニル), 10.35 (1H, s, CHO)。
【0066】
[実施例4]7-(4-t-ブチルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(3b)の調製
標題の化合物は化合物(3a)と同様の方法で合成した。
【0067】
収率69%, 1H-NMR (CDCl3) δ:1.33 (9H, s, CH3), 4.26 (4H, m, OCH2CH2O), 5.05 (2H, s, OCH2), 6.55 (1H, s, フェニル), 7.35 (2H, d, J=8.0 Hz, フェニル), 7.38 (1H, s, フェニル), 7.42 (1H, d, J=8.0 Hz, フェニル),10.35 (1H, s, CHO)。
【0068】
[実施例5]7-(4-クロロベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(3c)の調製
標題の化合物は化合物(3a)と同様の方法で合成した。
【0069】
収率83%, 1H-NMR (CDCl3) δ: 4.26 (4H, m, OCH2CH2O), 5.06 (1H, s OCH2), 6.49 (1H, s, フェニル), 7.36 (4H, s, フェニル), 7.38 (1H, s, フェニル), 10.33 (1H, s, CHO)。
【0070】
[実施例6]メチル (E)-3-(4-{[7-(4-メチルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4a)の調製
化合物(3a)(0.27g,0.95mmol)をMeOH(10mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(0.036g,0.95mmol)を加え室温で1時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣をTHF(5mL)に溶解させて氷水冷却し、トリフェニルホスフィン(0.24g,0.92mmol)、4-ヒドロキシクマル酸メチル(東京化成工業株式会社製)(0.16g,0.92mmol)を加え、アゾジカルボン酸ビス(2-メトキシエチル)(東京化成工業株式会社製)(0.22g,0.92mmol)をゆっくり滴下した後、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物(4a)(0.07g,22%)を得た。
【0071】
1H-NMR (CDCl3) δ: 2.34 (3H, s,CH3), 3.79 (3H, s, OCH3), 4.21 (4H, m, OCH2CH2O), 4.98 (2H, s, OCH2), 5.06 (2H, s, OCH2), 6.30 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.53 (1H, s, フェニル), 6.95 (2H, d, J=8.7 Hz, フェニル), 7.15 (2H, d, J=8.0 Hz, フェニル), 7.26 (2H, d, J=8.0 Hz, フェニル), 7.28 (1H, s, フェニル), 7.44 (2H, d, J=8.7 Hz, フェニル), 7.64 (1H, d, J=16.0 Hz, CH)。
【0072】
[実施例7]メチル (E)-3-(4-{[7-(4-t-ブチルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4b)の調製
標題の化合物は化合物(4a)と同様の方法で合成した。
【0073】
収率29%, 1H-NMR (CDCl3) δ: 1.32 (9H, s, CH3), 3.79 (3H, s, OCH3), 4.22 (2H, m, OCH2CH2O), 4.99 (2H, s, OCH2), 5.07 (1H, s, OCH2), 6.30 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.54 (1H, s, フェニル), 6.95(1H, s, フェニル),6.96 (2H, d, J=4.2 Hz, フェニル), 7.31 (2H, d, J=4.2 Hz, フェニル), 7.37 (2H, d, J=8.6 Hz, フェニル), 7.44 (2H, d, J=8.6 Hz, フェニル), 7.64 (1H, d, J=16.0 Hz,CH)。
【0074】
[実施例8]メチル (E)-3-(4-{[7-(4-クロロベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4c)の調製
標題の化合物は化合物(4a)と同様の方法で合成した。
【0075】
収率28%, 1H-NMR (CDCl3) δ: 3.79 (3H, s, OCH3), 4.22 (2H, m, OCH2CH2O), 4.99 (2H, s, OCH2), 5.05 (1H, s, OCH2), 6.30 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.48 (1H, s, フェニル), 6.95(1H, s, フェニル),6.97 (2H, d, J=8.6 Hz, フェニル), 7.30 (4H, s, フェニル), 7.45 (2H, d, J=8.6 Hz, フェニル), 7.65 (1H, d, J=16.0 Hz,CH)。
【0076】
[実施例9]7-t-ブチルジメチルシリルオキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(5)の調製
化合物(2)(0.50g,3.2mmol)をDMF(5mL)に溶解させ、t-ブチルジメチルシリルクロリド(0.38g,2.5mmol)、イミダゾール(0.17g,2.5mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物(5)(0.42g,86%)を得た。
【0077】
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.25 (6H, s, SiCH3), 1.00 (9H, s, CH3), 4.26 (4H, m, OCH2CH2O), 6.36 (1H, s, フェニル), 7.32 (1H, s, フェニル), 10.25 (1H, s, CHO)。
[実施例10]メチル (E)-3-(4-{[7-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(6a)の調製
化合物(5)(0.20g,0.67mmol)をMeOH(10mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(0.025g,0.67mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣をTHF(10mL)に溶解させ、氷水冷却し、p-クマル酸メチル(0.27g,1.5mmol)、トリフェニルホスフィン(0.40g,1.5mmol)を加えた後、1.9Mアゾジカルボン酸ジエチルトルエン溶液(東京化成工業株式会社)(0.80mL,1.5mmol)をゆっくり滴下し、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製し、化合物(6a)(0.10g,32%)を得た。
【0078】
1H NMR (CDCl3) δ: 0.22 (1H, s, SiCH3), 0.95 (1H, s, CH3), 3.78(3H, s, OCH3), 4.23 (4H, m, OCH2CH2O), 4.95 (1H, s, OCH2), 6.29 (1H, d, J=16.0 Hz, フェニル), 6.40 (1H, s, フェニル), 6.68 (1H, s, フェニル), 6.90 (2H, d, J=8.8 Hz), 7.46 (2H, d, J=8.8 Hz, フェニル), 7.45 (1H, d, J=16.0 Hz, CH)。
【0079】
[実施例11]エチル (E)-3-(4-{[7-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(6b)の調製
標題の化合物は化合物(6a)と同様の方法で合成した。
【0080】
収率24%, 1H NMR (CDCl3) δ: 0.21 (1H, s, SiCH3), 0.95 (1H, s, CH3), 1.33 (1H, t, J=7.2 Hz, CH3), 4.23 (6H, m, OCH2CH2O, OCH2), 4.97 (2H, s, OCH2), 6.29 (1H, d, J=16.0 Hz, フェニル), 6.39 (1H, s, フェニル), 6.68 (1H, s, フェニル), 6.94 (2H, d, J=8.8 Hz), 7.42 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 7.45 (2H, d, J=8.8 Hz, フェニル)。
【0081】
[実施例12]メチル (E)-3-(4-{[7-(4-トリフルオロメチルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4d)の調製
化合物(6a)(0.10g,0.23mmol)をTHF(15mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に1.0MテトラブチルアンモニウムフルオリドTHF溶液(2.3mL,2.3mmol)と酢酸(0.14g,2.3mmol)の混合液をゆっくり滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣をTHF(10mL)に溶解させ、4-トリフルオロメチルベンジルブロミド(東京化成工業株式会社製)(0.083g,0.34mmol)、炭酸カリウム(0.048g,0.34mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物(4d)(0.015g,13%)を得た。
【0082】
1H NMR (CDCl3) δ: 3.79(3H, s, OCH3),4.22 (4H, m, OCH2CH2O), 5.07 (2H, s, OCH2), 5.09 (2H, s, OCH2), 6.31 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.48 (1H, s, フェニル), 6.95 (1H, s), 6.97 (2H, d, J=3.7 Hz, フェニル), 7.46 (2H, d, J=8.7 Hz, フェニル), 7.48 (2H, d, J=3.7 Hz, フェニル), 7.59 (2H, d, J=8.7 Hz, フェニル), 7.65 (1H, d, J=16.0 Hz, CH)。
【0083】
[実施例13]メチル (E)-3-(4-{[7-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4e)の調製
標題の化合物は化合物(4d)と同様の方法で合成した。
【0084】
収率11%, 1H NMR (CDCl3) δ: 3.79(3H, s, OCH3),3.91(3H, s, OCH3),4.22 (4H, m, OCH2CH2O), 5.08 (2H, s, OCH2), 5.09 (2H, s, OCH2), 6.30 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.48 (1H, s, フェニル), 6.95 (1H, s, フェニル), 6.97 (2H, d, J=3.7 Hz, フェニル), 7.47 (4H, m, フェニル), 7.65 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 8.00 (2H, d, J=8.7 Hz, フェニル)。
【0085】
[実施例14]メチル (E)-3-(4-{[7-(3-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4f)の調製
標題の化合物は化合物(4d)と同様の方法で合成した。
【0086】
収率11%, 1H NMR (CDCl3) δ: 3.79(3H, s, OCH3),3.90(3H, s, OCH3),4.22 (4H, m, OCH2CH2O), 5.07 (2H, s, OCH2), 5.08 (2H, s, OCH2), 6.30 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.51 (1H, s, フェニル), 6.95 (1H, s, フェニル), 6.96 (2H, d, J=3.7 Hz, フェニル), 7.46 (3H, m, フェニル), 7.57 (1H, d, J=8.7 Hz, フェニル), 7.65 (1H, d, J=16.0 Hz, CH). 7.97 (1H, m, フェニル), 8.06 (1H, s, フェニル)。
【0087】
[実施例15]エチル (E)-3-(4-{[7-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル]メトキシ}フェニル)-2-プロペノエート(4g)の調製
標題の化合物は化合物(4d)と同様の方法で合成した。
【0088】
収率13%, 1H NMR (CDCl3) δ: 1.33 (1H, t, J=7.2 Hz, CH3), 4.23 (6H, m, OCH2CH2O, OCH2), 5.07 (2H, s, OCH2), 5.08 (2H, s, OCH2), 6.29 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.47 (1H, s, フェニル), 6.94 (1H, s, フェニル), 6.96 (2H, d, J=4.3 Hz, フェニル), 7.45 (4H, m, フェニル), 7.65 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 8.06 (2H, d, J=8.8 Hz,フェニル)。
【0089】
[実施例16]7-メトキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(7)の調製
化合物(2)(0.62g,3.4mmol)をDMF(5mL)に溶解させ、炭酸カリウム(0.57g,4.1mmol)、ヨウ化メチル(0.71g,4.1mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を酸化ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣にn-ヘキサンを加えて再結晶を行い、化合物(7)(0.46g,69%)を得た。
【0090】
1H-NMR (CDCl3) δ: 3.95 (3H, s, OCH3), 4.32 (4H, m, OCH2CH2O), 6.46 (1H, s, フェニル), 7.00 (1H, s, フェニル), 10.89 (1H, s, CHO)。
[実施例17]7-メトキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボン酸(8)の調製
化合物(7)(0.46g,2.3mmol)をTHF(4mL)、t-ブタノール(4mL)および水(2mL)の混合液に溶解させ、2-メチル2-ブテン(1.66g,23mmol)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(1.48g,9.5mmol)、亜塩素酸ナトリウム(0.86g,9.5mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣にジエチルエーテルを加えて再結晶を行い、化合物(8)(0.24g,48%)を得た。
【0091】
1H-NMR (CDCl3) δ: 3.98 (3H, s, OCH3), 4.28 (4H, m, OCH2CH2O), 6.54 (1H, s, フェニル), 7.70 (1H, s, フェニル)。
[実施例18]エチル (E)-3-[4-{(7-メトキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)カルボニルアミノ}フェニル]-2-プロペノエート(9)の調製
化合物(8)(0.60g,0.29mmol)をCH2Cl2(5mL)に溶解させ、塩化チオニル(0.37g,0.32mmol)、およびピリジン数滴を加え、室温で30分間撹拌した。減圧濃縮後、残渣をCH2Cl2(2mL)に溶解させ、4-アミノクマル酸エチル(0.55g,0.29mmol)(L. Matovic et al., Turkish Journal of Chemistry,43(4),1183-1203(2019))とピリジン(0.27g,0.34mmol)を溶解させたCH2Cl2溶液(5mL)にゆっくり滴下した。室温で終夜撹拌した後、反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣にジエチルエーテルを加えて再結晶を行い、化合物(9)(0.98g,90%)を得た。
【0092】
1H NMR (CDCl3) δ: 1.33 (3H, J=7.1 Hz, CH3), 3.98(3H, s, OCH3),4.30 (6H, m, OCH2CH2O, OCH2), 6.37 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.54 (1H, s, フェニル), 7.51 (2H, d, J=8.6 Hz, フェニル), 7.69 (3H, m, フェニル, CH), 7.81 (1H, s, フェニル), 9.90 (1H, br, NH)。
【0093】
[実施例19]エチル (E)-3-(4-[{7-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル}カルボニルアミン]フェニル)-2-プロペノエート(10)の調製
化合物(9)(0.10g,0.026mmol)をCH2Cl2(5mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に1.0M三臭化ホウ素CH2Cl2溶液(1.56mL,0.16mmol)を加え、氷水下で1時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。粗生成物をDMF(5mL)に溶解させ、炭酸カリウム(0.036g,0.026mmol)、4-ブロモメチル安息香酸メチル(東京化成工業株式会社製)(0.060g,0.026mmol)を加えて、50℃で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を1N水酸化ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣にジエチルエーテルを加えて再結晶を行い、化合物(10)(0.091g,67%)を得た。
【0094】
1H NMR (CDCl3) δ: 1.32(3H, t, J=7.8 Hz,CH3),4.28 (6H, m, OCH2CH2O, OCH2), 5.20 (2H, s, OCH2), 6.33 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.61 (1H, s, フェニル), 7.35 (4H, m, フェニル), 7.59 (3H, m, フェニル, CH), 7.85 (1H, s, フェニル), 8.13 (2H, d, J=8.3 Hz, フェニル), 9.88 (1H, br, NH)。
【0095】
[実施例20]7-メトキシメトキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-カルボアルデヒド(11)の調製
化合物(2)(0.20g,1.1mmol)をCH2Cl2(5mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液にジイソプロピルエチルアミン(0.22g,1.7mmol)、メトキシメチルクロリド(0.13g,1.7mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を1N水酸化ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物(11)(0.17g,68%)を得た。
【0096】
1H-NMR (CDCl3) δ: 3.31 (3H, s, OCH3), 4.42 (4H, m, OCH2CH2O), 5.20 (2H, s, OCH2), 6.72 (1H, s, フェニル), 7.36 (1H, s, フェニル), 10.30 (1H, s, CHO)。
[実施例21]メチル (E)-4-[2-{(7-メトキシメトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル}エテニル]ベンゾエート(12)の調製
(4-メトキシカルボニルベンジル)ホスホン酸ジメチル(0.25g,0.91mmol)(R. Whitby et al., RSC Advances, 7(22), 13232-13239 (2017))をCH2Cl2(5mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に水素化ナトリウム(0.021g,0.91mmol)を加えて30分間撹拌した後、化合物(11)(0.17g,0.75mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物(12)(0.23g,85%)を得た。
【0097】
1H NMR (CDCl3) δ: 3.51 (3H, s, OCH3), 3.92 (3H, s, OCH3), 4.25 (1H, m, OCH2CH2O), 5.16 (2H, s, OCH2), 6.71 (1H, s, フェニル), 6.97 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 7.13 (1H, s, フェニル), 7.49(1H, d, J=16.0 Hz, CH), 7.54(2H, d, J=8.4 Hz, フェニル), 8.00 (2H, d, J=8.4 Hz, フェニル)。
【0098】
[実施例22]メチル 4-[2-{(7-メトキシメトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル}エチル]ベンゾエート(13)の調製
化合物(12)(0.23g,0.65mmol)をメタノール(10mL)に溶解させ、触媒量の5%パラジウム炭素を加えて、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。反応液をセライトでろ過し、酢酸エチルで洗浄後、ろ液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、化合物(13)(0.18g,78%)を得た。
【0099】
1H NMR (CDCl3) δ: 2.85 (4H, m, CH2CH2), 3.45 (3H, s, OCH3), 3.90 (3H, s, OCH3), 4.21 (1H, m, OCH2CH2O), 5.05 (2H, s, OCH2), 6.60 (1H, s, フェニル), 6.65 (1H, s, フェニル), 7.22(2H, d, J=8.4 Hz, フェニル), 7.93 (2H, d, J=8.4 Hz, フェニル)。
【0100】
[実施例23]4-[2-{(7-メトキシメトキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル}エチル]ベンズアルデヒド(14)の調製
化合物(13)(0.27g,0.75mmol)をTHF(5mL)に溶解させ、氷水冷却した。この溶液に水素化リチウムアルミニウム(0.029g,0.75mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に氷水を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水した。減圧濃縮した後、残渣をCH2Cl2(5mL)に溶解させ、二酸化マンガン(1.26g,14.4mmol)を加えて、50℃で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、化合物(14)(0.21g,85%)を得た。
【0101】
1H NMR (CDCl3) δ: 2.88 (4H, m, CH2CH2), 3.48 (3H, s, OCH3), 4.28 (1H, m, OCH2CH2O), 5.03 (2H, s, OCH2), 6.57 (1H, s, フェニル), 6.64 (1H, s, フェニル), 7.18 (2H, d, J=8.4 Hz, フェニル), 7.86 (2H, d, J=8.4 Hz, フェニル), 10.30 (1H, s, CHO)。
【0102】
[実施例24]エチル (E)-3-[4-{2-(7-メトキシメトキシ-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)エチル}フェニル]-2-プロペノエート(14b)の調製
ホスホノ酢酸トリエチル(東京化成工業株式会社製)(0.17g,0.75mmol)をエタノール(10mL)に溶解させ、ナトリウムエトキシド(0.052g,0.75mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、化合物(14)(0.21g,0.64mmol)を加えて50℃で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水した。減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、化合物(14b)(0.24g,94%)を得た。
【0103】
1H NMR (CDCl3) δ: 1.33 (3H, t, J=7.8 Hz, CH3), 2.84 (4H, m, CH2CH2), 3.45 (3H, s, OCH3), 4.20 (1H, m, OCH2CH2O), 4.26 (2H, t, J=7.8 Hz, 0OH2),5.05 (2H, s, OCH2), 6.39 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.62 (1H, s, フェニル), 6.66 (1H, s, フェニル), 7.20 (2H, d, J= 8.0 Hz, フェニル), 7.44 (2H, d, J= 8.0 Hz, フェニル), 7.66 (1H, d, J=16.0 Hz, CH)。
【0104】
[実施例25]エチル (E)-3-(4-[2-{7-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-1,4-ベンゾジオキサン-6-イル}エチル]フェニル)-2-プロペノエート(15)の調製
化合物(14)(0.15g,0.37mmol)をエタノール(10mL)に溶解させた後、濃塩酸(1mL)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水した。減圧濃縮した後、残渣をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。粗生成物をDMF(5mL)に溶解させ、炭酸カリウム(0.030g,0.21mmol)、4-ブロモメチル安息香酸メチル(0.050g,0.26mmol)を加えて、50℃で終夜撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を1N水酸化ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。得た残渣にジエチルエーテルを加えて再結晶を行い、化合物(15)(0.068g,36%)を得た。
【0105】
1H NMR (CDCl3) δ: 1.33 (3H, t, J=7.2 Hz, CH3), 2.86 (4H, m, CH2CH2), 3.39 (3H, s, OCH3), 4.21 (1H, m, OCH2CH2O), 4.27 (2H, t, J=7.2 Hz, 0OH2),5.00 (2H, s, OCH2), 6.38 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 6.42 (1H, s, フェニル), 6.65 (1H, s, フェニル), 7.14 (2H, d, J= 8.0 Hz, フェニル), 7.40 (2H, d, J= 8.0 Hz, フェニル), 7.46 (2H, d, J= 8.4 Hz, フェニル), 7.65 (1H, d, J=16.0 Hz, CH), 8.04 (2H, d, J= 8.4 Hz, フェニル)。
【0106】
合成された化合物を表1に示す。
【0107】
【0108】
<試験例1>3齢カイコ幼虫を用いた早熟変態誘導活性の確認試験
供試虫として、カイコ幼虫(春嶺×鐘月)を恒温機の中で明暗12時間ずつ、25±2℃の環境下でシルクメイト2S(日本農産工業社製)を与えて飼育し、3齢脱皮後24時間経過したカイコ幼虫を使用した。この供試虫の胸部背面に、供試化合物を5g/L、0.5g/L、および0.05g/Lとなるようにアセトンを用いて希釈したアセトン溶液を2μLずつ、各供試化合物につき供試虫20頭を処理した。コントロール(Con)は、供試虫にアセトンのみを処理し、処理後は通常と同じ条件で飼育したものとした。試験は各2回実施した。
【0109】
供試化合物の抗JH活性は、早熟変態した供試虫数を試験に供した供試虫数20で除した割合(%)の平均値により評価した。供試化合物とその抗JH活性を、表2に示す。
【0110】
【0111】
表2の結果から、本化合物群は、抗JH活性を示すことが明らかになった。特に化合物(4e)および(4g)において高い生物活性が認められ、供試虫1頭あたり0.01μg処理時において、NY52と同等の生物活性を示すことが確認された。
<試験例2>培養細胞を用いたJHアンタゴニスト活性試験
本発明者が特許文献3に記載した培養細胞を使って、JHアンタゴニスト活性を容易に評価できるJH応答配列を用いたレポータージーンアッセイ系を使用した。詳細については特許文献3に記載された事項を引用するが、以下簡単に説明する。
【0112】
96ウェルプレートにJH-Iを含んだ培地(終濃度1nM)を実験区およびネガティブコントロール実験区に100μlずつ、JH-Iを含まない培地をポジティブコントロール実験区に100μlずつそれぞれ分注した。実験区に化合物(4e)、(4g)、もしくはNY52を溶かしたDMSO溶液を1μlずつ、ネガティブコントロールおよびポジティブコントロール実験区にはDMSOのみを1μlずつ分注した。その後、BmN_JF&AR細胞(5×10
5細胞/ウェル)を含む培地100μlを分注し、密封できるポリ袋に入れて26℃で20時間培養した後、培地を捨て、Passive Lysis Buffer(Promega社)を20μl加え、シェーカーで10分間振盪し、新しい96ウェルプレートに移し替えた。これにDual-Glo Luciferase Assay System(Promega社)を分注し、ルミノメーターARVO(PerkinElmaer社)によってホタルルシフェラーゼ活性(Fluc)およびウミシイタケルシフェラーゼ活性(Rluc)を測定した。化合物のJHアンタゴニスト活性は、以下の計算式で算出した。
(計算式)
アンタゴニスト活性(%)={1-(化合物のFluc/Rluc平均値-Mean
p)/(Mean
n-Mean
p)}×100
Mean
n:ネガティブコントロールのFluc/Rluc平均値
Mean
p:ポジティブコントロールのFluc/Rluc平均値
各実験区をStudent’s t-testにより統計解析を行い(*P<0.05、P>0.05は非表示)、その結果を
図1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0113】
図1に示すように、化合物(4e)により処理すると、ルシフェラーゼ遺伝子の発現がNY52より有意に抑制されることが明らかになった。この結果から、化合物(4e)はJHアンタゴニストとして作用することが確認された。
【0114】
本発明の一般式(I)で表される、新規な1,4-ベンゾジオキサン環を有する化合物またはその塩は、優れたJHアンタゴニスト活性を有する化合物群である。これら化合物群は、化合物(4e)に代表されるように、JHの作用を、低濃度において特異的に抑制する特徴を有するものである。
【0115】
本発明化合物またはその塩は、節足動物において最も食害が多いとされる幼虫期への脱皮を抑制し、早熟変態または発育不全に誘導できる特徴を有するため、本発明の有害生物防除剤は、農作物の食害と次世代の害虫個体群密度を抑制するという顕著な効果を発揮するものである。