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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】タンパク質含有造粒物
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/14 20060101AFI20240404BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240404BHJP
   A23L 2/66 20060101ALN20240404BHJP
   A23L 11/60 20210101ALN20240404BHJP
【FI】
A23J3/14
A23L5/00 D
A23L2/00 J
A23L11/60
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019192196
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021065134
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅明
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克亮
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0154358(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243202(US,A1)
【文献】特開2019-170326(JP,A)
【文献】特表2016-500271(JP,A)
【文献】特開2006-180830(JP,A)
【文献】特表2003-520039(JP,A)
【文献】特開平11-299435(JP,A)
【文献】米国特許第06207203(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 1/00 - 7/00
A23F 3/00 - 5/50
A23L 2/00 - 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の総含有量が40質量%以上である、タンパク質含有造粒物であって、
タンニンと、
炭水化物と、
タンパク質主成分としてエンドウタンパク質と、を含み、
前記タンニンは、風味原料中に含まれ、
前記タンニンの含有量と、エンドウタンパク質の含有量の比が、0.01~0.03であり、
前記炭水化物の少なくとも一部は前記風味原料に含まれ、
タンパク質の総含有量に対するエンドウタンパク質の含有量が、70質量%以上であり、
前記風味原料に含まれる炭水化物とは異なる他の炭水化物(単糖類、二糖類を除く)を含む、タンパク質含有造粒物。
【請求項2】
前記風味原料に含まれる炭水化物の含有量が、タンパク質含有造粒物全量に対して1~6質量%であり、
前記風味原料の含有量、及び前記他の炭水化物(単糖類、二糖類を除く)の総含有量と、前記エンドウタンパク質の含有量との比が、0.2~0.7であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項3】
前記風味原料に含まれる炭水化物の含有量が、タンパク質含有造粒物全量に対して7~17質量%であって、
前記風味原料の含有量と、前記エンドウタンパク質の含有量との比が、0.2~0.7であることを特徴とする、請求項1記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項4】
前記タンパク質含有造粒物全量に対して、炭水化物の含有量が25質量%以下であり、
前記タンパク質含有造粒物全量に対して、糖質の含有量が20質量%以下であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項5】
造粒物全量に対するタンニンの含有量が0.3~2.5質量%である、請求項1~4の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項6】
前記風味原料が、ココア、茶及びコーヒーから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項7】
前記造粒物のCarrの流動性指数が35~50である、請求項1~6の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項8】
前記風味原料がメチルキサンチンを含み、
メチルキサンチンの含有量と、エンドウタンパク質の含有量の比が0.004~0.013である、請求項1~7の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項9】
前記の風味原料に含まれる炭水化物とは異なる他の炭水化物(単糖類、二糖類を除く)が、ペクチン、βグルカン、フルクタン、イヌリン、マルチトール、難消化性オリゴ糖、難消化性デキストリン、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、フコイダン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、及びキチンから選ばれるものである、請求項1~8の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【請求項10】
造粒物全量に対するエンドウタンパク質の含有量が45質量%以上60質量%以下であり、
造粒物の平均粒子径が100~300μmである、請求項1~9の何れか一項に記載のタンパク質含有造粒物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含有造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手軽にタンパク質を補給するための手法として、タンパク質が含まれる粉末や造粒物を水や牛乳に溶かし、飲用する手法が知られている。
当該粉末や造粒物を使用したタンパク質の摂取方法は、食事で同量のタンパク質を補給するよりも手軽であるため、アスリートや、多くの食事が困難である高齢者等の栄養補給源として人気を博している。
【0003】
これまで、数々のタンパク質含有粉末、又は造粒物や、これらの製造技術が開示されてきた。
例えば、特許文献1には、溶解時における口当たりや粘度を改良する目的で、ドライブレンドされた植物タンパク質の少なくとも一部として、噴霧乾燥植物タンパク質を使用した粉末状栄養配合物に関する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、高い栄養源を有し、かつアレルギー反応が起こらない飲料組成物を調合可能な造粒物であって、エンドウタンパク質組成物及び澱粉加水分解物を含有する造粒植物性ミルク粉末が記載されている。
【0005】
特許文献2に記載されているエンドウタンパク質は、大豆タンパク質に代わる新たな植物性タンパク質として、近年研究が進められているタンパク質である。
エンドウタンパク質は、乳タンパク質や大豆タンパク質に含まれるアレルゲンを含んでおらず、またリジンやアルギニン等の必須アミノ酸を豊富に含むことから、注目が集められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-225453号公報
【文献】特表2012-519013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、より手軽に多くのタンパク質を摂取するために、タンパク質の濃度が高いタンパク質含有造粒物が望まれている。
しかし、タンパク質の濃度が高まると、タンパク質に由来する不快な臭いや味が強くなり、飲用には適さないという問題があった。
【0008】
また、粉末は、当該粉末の溶解性、流動性を向上させる目的で、造粒が行われることがある。タンパク質の濃度が高い造粒物を製造しようとすると、粉体の結着に起因する糖類等の炭水化物を多く含むことができなくなるため、結着力が弱く、適度な大きさの造粒物を製造することが困難であった。
【0009】
特に、近年注目を集めているエンドウタンパク質は、現時点で十分に研究が進められておらず、優れた風味を有し、かつ結着力に優れたエンドウタンパク質を含む造粒物は未だ存在していなかった。
【0010】
したがって、本発明は、風味に優れ、かつ結着力に優れた、エンドウタンパク質を含むタンパク質含有造粒物を提供することを課題とする。
【0011】
また、タンパク質の風味を抑制するマスキング効果や、結着性を高める因子の代表的なものとして、ショ糖等の糖類が挙げられる。
しかし、近年のロカボ志向の高まりから、消費者は、糖類を含む糖質(炭水化物のうち、食物繊維を除く成分)が多い製品を敬遠する傾向にあり、特に、タンパク質の補給を目的とするタンパク質含有造粒物において、その傾向は顕著であった。
【0012】
したがって、本発明は、糖質の含有量が少ないながらも、風味に優れ、かつ結着力に優れたタンパク質含有造粒物を提供することをさらなる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の成分を添加したタンパク質含有造粒物が、風味及び結着力に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
タンパク質の総含有量が40質量%以上である、タンパク質含有造粒物であって、
タンニンと、
炭水化物と、
タンパク質主成分としてエンドウタンパク質と、を含み、
前記タンニンは、風味原料中に含まれ
前記タンニンの含有量と、エンドウタンパク質の含有量の比が、0.01~0.03であるタンパク質含有造粒物である。
本発明のタンパク質含有造粒物は、タンニンを含む風味原料と、単糖類を除く炭水化物を含み、タンニンの含有量と、エンドウタンパク質の含有量の比を特定の値となるように配合することで、風味及び結着力に優れる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記炭水化物の少なくとも一部は、前記風味原料に含まれる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記風味原料に含まれる炭水化物の含有量が、タンパク質含有造粒物全量に対して6~17質量%であり、前記風味原料の含有量と、前記エンドウタンパク質の含有量との比が、0.2~0.7である。
このような構成のタンパク質含有造粒物は、添加物や、炭水化物の含有量が少なくとも、風味及び結着性に優れる。
【0017】
本発明の別の好ましい形態では、前記風味原料に含まれる炭水化物の含有量が、タンパク質含有造粒物全量に対して1~6質量%であり、
前記風味原料の含有量、及び風味原料に含まれる炭水化物とは異なる他の炭水化物(単糖類、二糖類を除く)の総含有量と、前記エンドウタンパク質の含有量との比が、0.2~0.7である。
【0018】
本発明の好ましい形態では、タンパク質の総含有量に対するエンドウタンパク質の含有量が、70質量%以上である。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記タンパク質含有造粒物全量に対して、炭水化物の含有量が35質量%以下であり、より好ましくは32質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
本発明のタンパク質含有造粒物は、風味、及び結着力に影響を与える炭水化物の含有量が少ない場合であっても、優れた風味及び結着力を有する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記タンパク質含有造粒物全量に対して、糖質の含有量が20質量%以下である。
本発明のタンパク質含有造粒物は、風味及び結着力に特に影響を与える糖質の含有量が少ない場合であっても、優れた風味及び結着力を有する。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記風味原料が、ココア、茶及びコーヒーから選択される1種又は2種以上である。
【0022】
本発明の好ましい形態では、流動層造粒により得られた造粒物である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のタンパク質含有造粒物は、タンパク質の含有量が多く、風味及び結着力に優れる。
本発明のタンパク質含有造粒物は、炭水化物、ひいては糖質の含有量が少ない場合であっても、風味及び結着力に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)タンパク質含有造粒物
本明細書中において、「タンパク質含有造粒物」とは、タンパク質を40質量%以上含む粉体組成物を造粒した、造粒物を意味する(以下、単に造粒物という)。
【0025】
本発明の造粒物は、風味原料、単糖類を除く炭水化物、及びエンドウタンパク質を必須の構成要素として含む。
【0026】
本発明の造粒物におけるタンパク質の含有量は、40質量%以上であれば特に限定されないが、好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは48質量%以上である。
タンパク質含有量の上限も特に限定されないが、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは55質量%以下である。
【0027】
本発明の造粒物における炭水化物(糖類を含む)の含有量の上限は、好ましくは35質量%以下である。
本発明の造粒物は、多くの炭水化物を含むのは好ましくはないが、風味、及び結着性の観点から、少量の炭水化物を含むことが好ましい。
【0028】
本発明の造粒物における糖質の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0029】
なお、本発明の造粒物は、単糖類及び二糖類を含んでも良く、上述した炭水化物の好ましい含有量、又は糖質の好ましい含有量を越えない範囲で含むことが好ましい。
具体的には、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0030】
単糖類、及び二糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース及びマルトース等が例示できる。
【0031】
本発明の造粒物の造粒方法は、特に限定されず、湿式造粒法、及び乾式造粒法の何れの方法を用いてもよい。造粒方法としては、例えば、流動層造粒、撹拌造粒、押し出し成形等が例示できる。
本発明の造粒物は、湿式造粒法により造粒された造粒物であることが好ましく、流動層造粒により造粒された造粒物であることがより好ましい。
【0032】
以下、本発明の造粒物に含まれる構成成分、その含有量、及び含有量比について、詳細に説明を加える。
【0033】
(2)タンパク質
本発明の造粒物は、タンパク質主成分として、エンドウタンパク質を含む。
本発明において、「タンパク質主成分」とは、造粒物に含まれる栄養源として主要な成分である。
【0034】
本発明の造粒物は、エンドウタンパク質以外のタンパク質を含んでもよく、例えば、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質、ミルクタンパク質、卵由来タンパク質、コラーゲン等の動物性タンパク質、及び大豆タンパク質等の植物性タンパク質等が挙げられる。また、後述する風味原料に含まれるタンパク質を含んでいてもよい。
この場合、造粒物に含まれるタンパク質全量に対するエンドウタンパク質の含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
単離精製されたタンパク質原料としては、エンドウタンパク質のみを含むことが好ましい。
【0035】
(3)風味原料
本発明の造粒物は、タンニンを含む風味原料を含有する。
本明細書中において「風味原料」とは、植物を主原料とする味、及び/又は香りを付与する目的で使用される原料であって、香料を除くものである。
このような風味原料としては、穀物類、果物類、種子類、茶類等の粉砕物、抽出物、又は抽出物の乾燥粉砕物が例示できる。
【0036】
タンニンを含む風味原料としては、カカオ、コーヒー等の豆類、緑茶、抹茶、紅茶、ウーロン茶、柿の葉等の茶類、ストロベリー、ブルーベリー、ぶどう等の果実類が挙げられる。
【0037】
本発明のタンニン及び単糖類を除く炭水化物を含む風味原料としては、ココアパウダー、抹茶パウダー、コーヒーパウダー及びインスタントコーヒーが好ましい。
本発明の造粒物は、タンパク質を多く含むことから、造粒物の結着性を改善する炭水化物や脂質の含有量が必然的に少なくなる。
炭水化物を含む風味原料を用いることで、タンパク質の含有量が高いことに起因して生じるタンパク質の風味のマスキングを行うと同時に、造粒物の結着性を改善することができる。
【0038】
風味原料中の脂肪分含有量は、特に限定されないが、好ましくは23質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下である。
例えば、風味原料としてココアパウダーを用いる場合、脂肪含有量が11質量%のココアパウダーを用いることが好ましい。
【0039】
風味原料中に含まれるタンニンの含有量は、常法により測定することができる。例えば、フォーリン・チオカルト法、及びフォーリン・デニス法を用いることができる。また、風味原料中に含まれるカフェイン、テオブロミンなどのメチルキサンチンの含有量は、常法により測定することができ、例えば、食品衛生学雑誌Vol.37,No.1(1996)に記載の「HPLCによる食品中のカフェイン、テオブロミン及びテオフィリンの同時分析法」による方法を用いることができる。
【0040】
(4)炭水化物
本発明の造粒物は、炭水化物を含む。
炭水化物の少なくとも一部は、前記風味原料に含まれることが好ましい。
【0041】
また、風味原料に含まれる炭水化物とは異なる炭水化物を含んでもよい。
このような炭水化物としては、ペクチン、βグルカン、フルクタン、イヌリン、マルチトール、難消化性オリゴ糖、難消化性デキストリン、アガロース、アルギン酸、カラギーナン及びフコイダン等の水溶性食物繊維、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、及びキチン等の不溶性食物繊維が例示できる。
【0042】
(5)各成分の含有量、及び比率
本願発明の造粒物は、前記タンニンの含有量と前記エンドウタンパク質の含有量の比が、0.01~0.03である。
上記タンニン/エンドウタンパク質比となるように、エンドウタンパク質、及び風味原料の含有量を適宜調節する。
【0043】
タンニン/エンドウタンパク質比は、好ましくは0.013~0.03であり、より好ましくは0.013~0.024であり、さらに好ましくは0.015~0.024であり、特に好ましくは0.016~0.022である。
タンニン/エンドウタンパク質比を特定の数値範囲内である本発明の造粒物は、より風味に優れ、かつ結着性に優れる。
【0044】
造粒物全量に対するエンドウタンパク質の含有量は、好ましくは30~80質量%であり、より好ましくは40~70質量%であり、さらに好ましくは45~60質量%であり、特に好ましくは45~55質量%であり、最も好ましくは50~55質量%である。
【0045】
造粒物全量に対するタンニンの含有量は、好ましくは0.3~2.5質量%、より好ましくは0.6~1.3質量%、さらに好ましくは0.8~1.3質量%、特に好ましくは特に好ましくは0.8~1.2質量%である。
【0046】
風味原料の含有量は、上記タンニン/エンドウタンパク質比が0.01~0.03となるように適宜調整するが、さらに、以下の要件(A)又は(B)を満たすよう配合することが好ましい。
【0047】
(A)タンパク質含有造粒物全量に対して、風味原料に含まれる炭水化物の含有量が、7~17質量%であって、風味原料の含有量とエンドウタンパク質の含有量の比が、0.2~0.7である。
(B)タンパク質含有造粒物全量に対して、風味原料に含まれる炭水化物の含有量が、1~6質量%であって、前記風味原料に含まれる炭水化物とは異なる他の炭水化物(単糖類、二糖類を除く)を含み、前記風味原料の含有量、及び前記他の炭水化物の総含有量と、前記エンドウタンパク質の含有量との比が、0.2~0.7である。
【0048】
上記タンニン/エンドウタンパク質比を0.01~0.03に調整しようとすると、使用する風味原料が有する炭水化物の含有量に応じて、必然的にタンパク質含有造粒物全量に含まれる風味原料中の炭水化物の含有量が決定する。
【0049】
この際、タンパク質含有造粒物全量に対して、風味原料中の炭水化物がある程度の量を占めており、かつ風味原料とエンドウタンパク質の含有量比が特定の割合であれば、より優れた風味、及び結着性に優れた造粒物となる(要件(A))。
一方で、風味原料中の炭水化物が占める割合が少なくとも、優れた風味を有するタンパク質造粒物となるが、本発明の最良の形態と比して結着性が劣る傾向にある。このような場合には、風味原料に含まれる炭水化物とは異なる他の炭水化物(単糖類、二糖類を除く)を加えることで、造粒物の結着性を補強することができる(要件(B))。
【0050】
要件(A)において、タンパク質含有造粒物全量に対する風味原料に含まれるタンパク質の含有量は、好ましくは8~16質量%であり、より好ましくは10~16質量%であり、さらに好ましくは10~14質量であり、特に好ましくは10~13質量%である。
風味原料とエンドウタンパク質の含有量の比は、好ましくは0.3~0.7であり、より好ましくは0.35~0.7であり、さらに好ましくは0.35~0.6であり、特に好ましくは0.35~0.55であり、最も好ましくは0.39~0.52である。
【0051】
前記風味原料が、テオブロミン、及びカフェイン等のメチルキサンチンを含む場合、メチルキサンチンの含有量と、エンドウタンパク質の含有量の比が、好ましくは0.004~0.013であり、より好ましくは0.006~0.013であり、さらに好ましくは0.006~0.011であり、特に好ましくは0.007~0.009である。
【0052】
メチルキサンチンの含有量は、好ましくは0.25~0.6質量%であり、より好ましくは0.3~0.6質量%であり、さらに好ましくは0.3~0.55質量%であり、特に好ましくは0.3~0.5質量%である。
【0053】
メチルキサンチンの含有量を上記範囲内とすることで、タンパク質に由来する味、及び香りをより抑制することでき、より風味に優れた造粒物となる。
【0054】
(6)その他の物性
本発明の造粒物の平均粒子径は、好ましくは100~300μmであり、より好ましくは150~300μmである。
【0055】
なお、本明細書中における平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準平均径D[4,3]を意味する。
【0056】
本発明の造粒物における、Carrの流動性指数は、好ましくは35~50であり、より好ましくは35~45であり、さらに好ましくは35~40である。
【0057】
流動性指数は常法により算出することができる。
具体的には、安息角、崩壊角、スパチュラ角、ゆるみかさ密度、固めかさ密度、凝集度または粒径分布、及び分散度を測定し、これらの測定値から差角、圧縮度、及び均一度を算出し、Carrの示した評価換算指数表に照らしてそれぞれの因子に対する評価指数を求め、各評価指数の和が、流動性指数となる。
【実施例
【0058】
<試験例1>風味原料としてココアパウダーを使用したタンパク質含有造粒物
表1に記載の配合に従って、各原料を混合し、流動層造粒を行うことでタンパク質含有造粒物を得た。
各タンパク質含有造粒物10gを、それぞれ100mLの水に溶解させ、本発明の技術分野に精通する技術者が試飲し、風味を評価した。
また、各タンパク質含有造粒物を肉眼で観察し、その結着性を評価した。結果を表1に示す。
なお、ココアパウダーのタンニン含有量は、フォーリン・チオカルト法により測定した。また、ココアパウダーのテオブロミン、カフェイン含有量は、HPLC法により測定した。
各評価の基準は、以下に示す通りである。
【0059】
<評価基準>
(風味)
◎:タンパク臭が抑制され、風味が良い。
〇:タンパク臭が感じにくく、風味が程良く感じられる。
△:タンパク臭を感じる、又は風味が強い。
×:強いタンパク臭を感じる。
(結着性)
◎:最適な結着性を有し、粒径が揃った造粒が可能である。
〇:適度な結着性を有し、ある程度粒径が揃った造粒ができる。
△:造粒が可能であるが、粒径がまばらである。
×:結着性が悪く、造粒が困難である。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に記載の通り、タンニンとエンドウタンパク質の含有量の比が0.01~0.03である実施例1~4のタンパク質含有造粒物は、タンニンとエンドウタンパク質の含有量の比が0.01未満、又は0.03より大きい比較例1、及び比較例2と比して、風味及び結着性に優れる。
特に、タンニンとエンドウタンパク質の含有量の比が0.016~0.027である実施例2~4は、タンパク臭が抑制され、バランスの良い風味を有している。
また、タンニンとエンドウタンパク質の含有量の比が0.016~0.021である実施例2及び3は、最適な結着性を有し、粒度が揃った造粒が可能である。
【0062】
一方で、比較例1及び2は、造粒が不可能なわけではないが、粒径がまばらとなり、製品適正を満たすものではなかった。
【0063】
<試験例2>風味原料としてインスタントコーヒー、及び抹茶を使用したタンパク質含有造粒物
表2に記載の配合に従って、各原料を混合し、流動層造粒を行うことでタンパク質含有造粒物を得た(実施例5及び6)。これらのタンパク質含有造粒物について、試験例1と同様に、風味及び結着性を評価した。結果を表2に示す。
なお、抹茶及びインスタントコーヒーのタンニン含有量は、フォーリン・デニス法により測定した。また、抹茶及びインスタントコーヒーのテオブロミン、カフェイン含有量は、HPLC法により測定した。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の記載の通り、実施例5及び6のタンパク質含有造粒物は、優れた風味、及び最適な結着性を有する。この結果から、風味原料としてコーヒー、及び抹茶を使用した場合であっても、ココアパウダーを使用した場合と同等の効果を得られることがわかった。
【0066】
ここで、インスタントコーヒー、及び抹茶は、試験例1のココアパウダーと比して、タンニン含有量が多い。
したがって、インスタントコーヒー、及び抹茶を使用した場合に、タンニン/エンドウタンパク質比を0.01~0.03に調整しようとすると、必然的に風味原料の含有量が試験例1と比して少なくなり、結果として風味原料中の炭水化物含有量が少なくなる。
【0067】
本結果から、タンニン含有量が比較的大きい風味原料を用いる場合には、食物繊維等の炭水化物をさらに添加し、タンパク質含有造粒物全体の炭水化物含有量を調節することで、風味及び結着性に優れるタンパク質含有造粒物となることがわかった。
【0068】
<試験例3>糖類が極端に少ないタンパク質含有造粒物
表3に記載の配合に従って、各原料を混合し、流動層造粒を行うことでタンパク質含有造粒物を得た(実施例7、比較例3及び4)。これらのタンパク質含有造粒物について、試験例1と同様に、風味及び結着性を評価した。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に記載の通り、タンニン/エンドウタンパク質比が0.01~0.03の範囲内である実施例7のタンパク質含有造粒物は、糖類がわずか1%しか配合されていなくとも、優れた風味、及び優れた結着性を有していた。
【0071】
一方で、タンニン/エンドウタンパク質比が0.01未満である比較例3は、タンパク臭が強く、粒度がまばらになり、結着性に劣っていた。
【0072】
また、タンニン/エンドウタンパク質比が0.03より大きい比較例4は、タンパク臭がわずかに抑制されているものの、粒度分布が相対的に幅広く、
均一性ならびに結着性に劣っていた。
【0073】
以上の結果から、風味や結着性に対して大きく寄与する糖類が少ない場合であっても、タンニン/エンドウタンパク質比が0.01~0.03であるタンパク質含有造粒物は、優れた風味、及び優れた結着性を有していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、造粒物の調製技術に応用することができる。