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特許7465790シリコーンハイブリッド樹脂組成物、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】シリコーンハイブリッド樹脂組成物、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240404BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240404BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L83/04
C08L63/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191827
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080638
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】水梨 友之
(72)【発明者】
【氏名】串原 直行
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-239552(JP,A)
【文献】特表2012-509970(JP,A)
【文献】特開昭61-185527(JP,A)
【文献】特開2015-081268(JP,A)
【文献】特開平03-285909(JP,A)
【文献】特開2014-162877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびこれらのシリコーン変性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の硬化性有機樹脂を含む硬化性有機樹脂組成物:100質量部、
(B)JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sである硬化性シリコーン樹脂組成物:1~300質量部、
を含有するものであって、
前記(B)成分のドメイン径が100μm以下であり、
前記(B)成分は、前記(A)成分中での分散体であり、前記(A)成分が前記(B)成分とは異なる反応メカニズムによって硬化する硬化性有機樹脂組成物であり、
さらに前記(A)成分が、(A2)前記(A1)成分の硬化剤:前記(A1)成分中の硬化反応基の合計1当量に対して、前記(A2)成分中の前記硬化反応基との反応性を有する基が0.3~2.0当量となる量を含有するものであることを特徴とするシリコーンハイブリッド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が付加硬化性シリコーン樹脂組成物、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物、ラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物から選ばれる硬化性シリコーン樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンハイブリッド樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A1)成分がエポキシ樹脂及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコーンハイブリッド樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(C)前記(A)成分の硬化促進剤:0.001~10質量部を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコーンハイブリッド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンハイブリッド樹脂組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子、電気部品に用いられる樹脂材料として、機械特性、電気特性、耐熱性、接着性に優れたエポキシ樹脂などの有機樹脂組成物が広く使用されている。
【0003】
しかし、近年の電子部品のパッケージの小型化、薄層化に伴い、これまでの有機樹脂では、弾性率が高いため周辺部材にかかる応力が大きく、熱衝撃試験時にパッケージのクラックや基材との剥離が発生するという問題がある。この問題を解決するため、低弾性率化を目的として、例えばエポキシ樹脂にシリコーン樹脂を均一に相溶させた複合材料や、シリコーン材料をエポキシ基で変性したエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂が開発されてきた(特許文献1、2、3)。しかしながら、このような材料はシリコーン成分がエポキシ樹脂骨格中に取り込まれることにより、弾性率を低下することはできるが、ガラス転移温度(Tg)も同様に低下してしまうという問題がある。
【0004】
また、有機樹脂にアクリルパウダー、シリコーンパウダーなどのゴム粒子を添加することで、樹脂の弾性率を下げ、電子部品のパッケージにかかる応力を低下させる方法が提案されている(特許文献4、5)。
【0005】
この方法だとTgを維持したまま低弾性率化が可能となるが、これらゴム粒子は粒子同士の凝集を防止するため、表面をアルコキシシランやナノ粒子などでコーティングさせているため、ゴム粒子以外の成分も多く、ゴム粒子を樹脂に添加させると粘度が著しく増加し、作業性が悪化するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-104483号公報
【文献】特開2016-084373号公報
【文献】特開2020-23643号公報
【文献】特開2014-84332号公報
【文献】特開2017-115132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、有機樹脂のTgを維持したまま、貯蔵弾性率を低下させ、基材への密着性に優れたシリコーンハイブリッド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、
(A)(A1)エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびこれらのシリコーン変性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の硬化性有機樹脂を含む硬化性有機樹脂組成物:100質量部、
(B)JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sである硬化性シリコーン樹脂組成物:1~300質量部、
を含有するものであって、
前記(B)成分は、前記(A)成分中での分散体であり、前記(A)成分が前記(B)成分とは異なる反応メカニズムによって硬化する硬化性有機樹脂組成物であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物は、高Tg、低弾性であり、密着性に優れた硬化物を与えることができる。
【0010】
また、前記(B)成分のドメイン径が100μm以下であることが好ましい。
【0011】
このような(B)成分のドメイン径であれば(A)成分と(B)成分が容易に分離することがない。
【0012】
更に、前記(B)成分が付加硬化性シリコーン樹脂組成物、縮合硬化性シリコーン樹脂組成物、ラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物から選ばれる硬化性シリコーン樹脂組成物であることが好ましい。
【0013】
このような(B)成分であれば、シリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化性が良好なものとなる。
【0014】
加えて、前記(A1)成分がエポキシ樹脂及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0015】
このような(A1)成分であれば、反応の制御が容易であり樹脂の取り扱い性が良好で、(B)成分の硬化性に影響を及ぼしにくい。また、エポキシ樹脂とシリコーン変性エポキシ樹脂を併用することによって(B)成分の分散性を改善できる。
【0016】
さらに(C)前記(A)成分の硬化促進剤:0.001~10質量部を含有するものであることが好ましい。
【0017】
このような(C)成分を含むと、(A)成分が良好に硬化する。
【0018】
さらに前記(A)成分が、(A2)前記(A1)成分の硬化剤:前記(A1)成分中の硬化反応基の合計1当量に対して、前記(A2)成分中の前記硬化反応基との反応性を有する基が0.3~2.0当量となる量を含有するものであることが好ましい。
【0019】
このような(A2)成分を含む場合も、(A)成分が良好に硬化する。
【0020】
加えて、前記(B)成分が前記(A)成分より先に硬化するものであることが好ましい。
【0021】
このようなものであれば、Tgを維持したまま貯蔵弾性率を下げ、基材への密着性も良好な樹脂組成物となる。
【0022】
更に、上記のシリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化物を備えるものである半導体装置を提供する。
【0023】
このような半導体装置のシリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化物は、低弾性であるので、電子部品のパッケージにかかる応力が大きくならない。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物は作業性が良く、高Tg、低弾性であり、耐冷熱衝撃性もあり、密着性に優れた硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、有機樹脂のTgを維持したまま、貯蔵弾性率を低下させ、基材への密着性に優れたシリコーンハイブリッド樹脂組成物が求められていた。
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、硬化性シリコーン樹脂組成物が硬化性有機樹脂組成物中での分散体であり、硬化性有機樹脂組成物が硬化性シリコーン樹脂組成物とは異なる反応メカニズムによって硬化するものであることを特徴とするシリコーンハイブリッド樹脂組成物を使用することで、有機樹脂のTgを維持したまま、低弾性化を達成できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0027】
即ち、本発明は、
(A)(A1)エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびこれらのシリコーン変性樹脂からなる群から選ばれる1種以上の硬化性有機樹脂を含む硬化性有機樹脂組成物:100質量部、
(B)JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sである硬化性シリコーン樹脂組成物:1~300質量部、
を含有するものであって、
前記(B)成分は、前記(A)成分中での分散体であり、前記(A)成分が前記(B)成分とは異なる反応メカニズムによって硬化する硬化性有機樹脂組成物であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物である。
【0028】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[(A)硬化性有機樹脂組成物]
(A)成分はポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂およびそれらのシリコーン変性樹脂の中から選ばれる1種以上の硬化性有機樹脂(A1)を必須成分とする硬化性有機樹脂組成物である。硬化性有機樹脂組成物としては公知のものを使用することができるが、(A)成分は後述する(B)成分とは異なる反応メカニズムによって硬化する硬化性有機樹脂組成物であることを特徴とする。これらの中でも、反応の制御が容易であり、樹脂の取り扱い性が良好なエポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはマレイミド樹脂を含む硬化性有機樹脂組成物が好ましく、さらに、後述する(B)硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性に影響を及ぼしにくいエポキシ樹脂、またはシリコーン変性エポキシ樹脂を含む硬化性有機樹脂組成物が特に好ましい。
【0030】
上記エポキシ樹脂としては、具体的にはトリアジン誘導体エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレイン型エポキシ樹脂、ナフタレン含有エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、エーテル系またはポリエーテル系エポキシ樹脂、オキシラン環含有ポリブタジエン、シリコーン変性エポキシ樹脂などが挙げられ、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、その他のエポキシ樹脂と併用することによって、後述する(B)成分の硬化性シリコーン樹脂組成物との分散助剤的な役割を果たすため、(A)及び(B)成分の分散性を改善することができ、好ましい。
【0032】
[(B)硬化性シリコーン樹脂組成物]
(B)成分はJIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sである硬化性シリコーン樹脂組成物である。硬化性シリコーン樹脂組成物としては公知のものを使用することができる。その具体例としては付加硬化性(ヒドロシリル化反応性)、縮合硬化性(縮合反応性)、ラジカル硬化性(光および熱ラジカル反応性)のシリコーン樹脂組成物、例えばオルガノポリシロキサン組成物等が挙げられる。
【0033】
ここで、(B)成分は上記(A)成分とは異なる反応メカニズムによって硬化する硬化性シリコーン樹脂組成物であることを特徴とする。以下、(B)成分について詳述するとともに、(A)成分と(B)成分の好ましい組み合わせについて説明する。
【0034】
なお、(B)成分として、上記(A)硬化性有機樹脂組成物の中で例示されているような有機樹脂をシリコーン変性した樹脂を含まないことが好ましい。
【0035】
熱ラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物としては、例えば、分子鎖非末端部分及び分子鎖末端部分(片末端又は両末端)のどちらか一方又はその両方にビニル基等のアルケニル基を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のオルガノポリシロキサンを有機過酸化物存在下でラジカル重合させることによって硬化するシリコーン組成物を用いることができる。
【0036】
光ラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物としては、紫外線硬化性シリコーン樹脂組成物及び電子線硬化性シリコーン樹脂組成物を挙げられる。
【0037】
紫外線硬化性シリコーン樹脂組成物としては、例えば、波長200~400nmの紫外線のエネルギーにより硬化するシリコーン樹脂組成物が挙げられる。この場合、硬化機構には特に制限はない。その具体例としてはアクリル基あるいはメタクリル基を有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有するアクリルシリコーン系シリコーン樹脂組成物、メルカプト基含有オルガノポリシロキサンとビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有するメルカプト-ビニル付加重合系シリコーン樹脂組成物、熱硬化性の付加反応型と同じ白金族金属系触媒を用いた付加反応系シリコーン樹脂組成物、エポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンとオニウム塩触媒とを含有するカチオン重合系シリコーン樹脂組成物などが挙げられ、いずれも紫外線硬化性シリコーン樹脂組成物として使用することができる。
【0038】
電子線硬化性シリコーン樹脂組成物としては、ラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサンに電子線を照射することで開始するラジカル重合により硬化するいずれのシリコーン樹脂組成物も使用することができる。
【0039】
これらのラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物に対して、好ましい(A1)成分としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0040】
ラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物に対して、同じラジカル硬化系の(A)成分を使用した場合、(A)成分および(B)成分が同時に硬化し、(B)成分の樹脂骨格中に(A)成分が取り込まれてしまうため、シリコーンハイブリッド樹脂組成物のTgが下がってしまう恐れがある。
【0041】
付加硬化性シリコーン樹脂組成物としては、例えば、上記のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、白金族金属系触媒存在下で反応(ヒドロシリル化反応)させることにより硬化するシリコーン樹脂組成物を用いることができる。
【0042】
ヒドロシリル化反応を促進させる上記触媒として、従来公知であるいずれのものも使用することができる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、HPtCl・pHO,KPtCl,KHPtCl・pHO,KPtCl,KPtCl・pHO,PtO・pHO,PtCl・pHO,PtCl,HPtCl・pHO(ここで、pは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金等の光活性を有する錯体等を例示することができる。これらの触媒は1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。これらの触媒の配合量は、硬化のための有効量でよく、通常、上記(B)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1~500ppm、特に好ましくは0.5~100ppmの範囲である。
【0043】
上記付加硬化性シリコーン樹脂組成物に対して、好ましい(A1)成分としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂が挙げられる。
【0044】
(A1)成分としてポリイミド樹脂も使用することができ、ポリイミド樹脂中にアミノ基の残存が少なければ、アミノ基が付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化を阻害せず、(B)成分が十分に硬化する。
【0045】
また、後述の(A2)硬化剤としてアミン化合物が使用されている場合も、アミン化合物を除いた(A)成分に(B)成分の付加硬化性シリコーン樹脂組成物を分散させ、系中で(B)成分のみを硬化させた後に、アミン化合物を添加することによって、付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化を阻害することなく、アミン化合物含有のシリコーンハイブリッド樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
縮合硬化性シリコーン樹脂組成物としては、例えば、両末端シラノール封鎖オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン又はテトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の加水分解性シラン及び/もしくはその部分加水分解縮合物とを有機錫系触媒等の縮合反応触媒の存在下で反応させることにより硬化するシリコーン樹脂組成物、あるいは両末端がトリアルコキシ基、ジアルコキシオルガノ基、トリアルコキシシロキシエチル基、ジアルコキシオルガノシロキシエチル基等で封鎖されたオルガノポリシロキサンを金属アルコキシド触媒、アミン触媒、有機金属触媒等の縮合反応触媒の存在下で反応させることにより硬化するシリコーン樹脂組成物を用いることができる。
【0047】
これらの縮合硬化性シリコーンに対して、好ましい(A1)成分としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられる。
【0048】
上記硬化性シリコーン樹脂組成物の屈折率としては特に限定はされないが、ケイ素に結合する置換基によって適宜調整することができる。硬化性シリコーン樹脂組成物(硬化性有機ケイ素樹脂組成物)の屈折率としては1.30~1.65となるのが好ましく、1.40~1.58がさらに好ましい。
【0049】
この範囲内であれば硬化性シリコーン樹脂組成物の特性を十分発揮することができ、有機樹脂組成物との組み合わせによりシリコーンハイブリッド樹脂組成物の透明性、反射率を調整することができる。
【0050】
硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度としてはJIS K 7117-1:1999記載の回転粘度計で測定した25℃における粘度が0.01~1,000Pa・sであり、0.1~100Pa・sが好ましい。
【0051】
この粘度範囲を下回ると有機樹脂組成物と混合した際に液滴同士が容易に結合するため、均一に混合することが困難になる恐れがあり、この粘度範囲を上回ると、粘度が高すぎて取扱い性が困難になる恐れがある。
【0052】
また、(B)硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記(A)成分中での分散体であることを特徴とし、そのドメイン径が100μm以下であることが好ましく、0.1~20μmであることがより好ましい。
【0053】
なお、本発明で言う「ドメイン径」とは、本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化物を作製し、その断面についてデジタル顕微鏡および電子顕微鏡を用いて、ドメインの大きさに応じて倍率を適宜調整して観察し、少なくとも100個以上のドメインの中から画像処理により抽出して測定した最大径のことを指すものとする。
【0054】
上記(B)成分を上記(A)成分中での分散体とし、それぞれの成分で異なる硬化メカニズムを使用することによって、上記(B)成分のみを選択的に硬化することができ、それによって好ましいタイミングで樹脂の粘度、フローを適宜調整することができる。また、上記(B)成分の硬化の有無にかかわらず、上記(A)成分の硬化性に悪影響を及ぼすことなく、組成物を低弾性化することができる。仮に上記(A)成分および上記(B)成分の硬化メカニズムが異なる場合でも、分散せず完全に相溶するものを使用すると、上記(B)成分を硬化させた時に組成物自体がゲル化し使用することができなくなる恐れがあるし、弾性率を低下させると同時にTgも同様に低下してしまう場合がある。
【0055】
また、上記(A)成分および上記(B)成分の硬化メカニズムが同一であった場合は、上記(A)成分の骨格中に上記(B)成分が取り込まれるため、Tgの低下を引き起こす恐れがある。
【0056】
上記(B)成分は、上記(A)成分100質量部に対して1~300質量部である。
【0057】
[(C)硬化促進剤]
上記(A)成分の硬化促進剤としては公知のものを使用することができる。上記有機樹脂組成物の硬化促進剤は、上記有機樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化反応を促進させるものであれば特に制限されない。上記硬化促進剤としては、例えば鉛、錫、亜鉛、鉄、ジルコニウム、チタン、セリウム、カルシウム及びバリウムのアルコキシド又はカルボン酸錯体、ケイ酸リチウム塩、ケイ酸ナトリウム塩、ケイ酸カリウム塩等のアルカリ金属のケイ酸塩等の金属化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7などの第3級アミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-フェニル‐4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、トリアリールスルホニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェートなどの光カチオン硬化触媒、ジクミルペルオキシド、n-ブチル-4,4’-ビス(ブチルペロキシ)バレレート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、1,1-ビス(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、2-ブタノンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-アミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロプロピル)ベンゼン、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ブチル-4,4-ジ(tert-ブチルペロキシ)バレレート、3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサンノエート、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ(4-tert-ブチルシクロへキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンジオクタノイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシピバレートなどの熱および光ラジカル開始剤が挙げられる。
【0058】
硬化促進剤の添加量としては上記(A)成分100質量部に対して0.001~10質量部であることが好ましく、0.02~5質量部がより好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。
【0059】
[(A2)硬化剤]
上記(A)成分の硬化性有機樹脂組成物は、上記(C)硬化促進剤存在下で硬化させることができるが、上記(A1)硬化性有機樹脂に加えて、(A2)成分として(A1)成分の硬化剤を添加してもよい。例えば上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えばフェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤またはメルカプタン系硬化剤を用いることができる。
【0060】
上記硬化剤は、上記(A1)、(B)、(C)成分と同時に配合してもよく、上記(A1)、(B)、(C)成分を配合し、上記(B)成分を硬化させたのちに(A2)成分を配合してもよい。(A2)成分は上記(A1)成分中の硬化反応基の合計1当量に対して、上記(A2)成分中の上記硬化反応基との反応性を有する基が0.3~2.0当量となる量であることが好ましい。
【0061】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトール変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらを1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂中のフェノール性水酸基当量が、0.3~1.8当量となるのが好ましく、0.5~1.5当量がさらに好ましい。
【0063】
酸無水物系硬化剤としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水メチルハイミック酸無水物、無水ドデセニルコハク酸無水物、無水メチルナジック酸無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0064】
エポキシ樹脂と酸無水物の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、酸無水物当量が、0.5~1.5当量となるのが好ましく、0.6~1.2当量がさらに好ましい。
【0065】
アミン系硬化剤としては、脂肪族ポリアミン;芳香族アミン;及びポリアミノアミド、ポリアミノイミド、ポリアミノエステル、ポリアミノ尿素などの変性ポリアミンが挙げられ、また、第三級アミン系、イミダゾール系、ヒドラジド系、ジシアンジアミド系、メラミン系の化合物も用いることができるが、これらに限定されるものではなく、これらを1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
エポキシ樹脂とアミン系化合物の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、アミン当量が、0.5~1.5当量となるのが好ましく、0.6~1.2当量がさらに好ましい。
【0067】
メルカプタン系硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0068】
エポキシ樹脂とメルカプタン系化合物の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、メルカプト当量が、0.3~1.8当量となるのが好ましく、0.5~1.5当量がさらに好ましい。
【0069】
[その他の添加剤]
その他の添加剤としては、例えば、シリカ、グラスファイバー、ヒュームドシリカ等の補強性無機充填材、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウム等の無機白色顔料、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、セリウム脂肪酸塩、バリウム脂肪酸塩、セリウムアルコキシド、バリウムアルコキシド等の非補強性無機充填材、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化鉄(Fe)、四酸化三鉄(Fe)、酸化鉛(PbO)、酸化すず(SnO)、酸化セリウム(Ce3、CeO)、酸化カルシウム(CaO)、四酸化三マンガン(Mn)、酸化バリウム(BaO)などのフィラーが挙げられ、これらを、上記の(A)~(C)成分の合計100質量部当たり600質量部以下、好ましくは10~400質量部の量で適宜配合することができる。
【0070】
[シリコーンハイブリッド樹脂組成物の製造方法]
本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物は、例えば以下に記載する方法で製造することができる。
【0071】
例えば、(A)硬化性有機樹脂組成物、(B)硬化性シリコーン樹脂組成物、(C)硬化促進剤を、同時または別々に、場合によって熱処理もしくは光照射処理を行いながら混合、撹拌、溶解および/または分散させることにより、混合物を得ることができる。これらの混合、撹拌、分散などの製造装置としては特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えた擂潰機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー、自転公転ミキサー、ビーズミル、超音波ミキサー、共振ミキサー、高速旋回ミキサー等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0072】
上記の方法で製造されたシリコーンハイブリッド樹脂組成物は、上記(A)成分および上記(B)成分が混合方法によらず均一に相溶することがなく、少なくとも100μm以下のドメインとして混合される。シリコーンハイブリッド樹脂組成物中の上記(A)成分および上記(B)成分のドメインは100μm以下であれば好ましく、100μm以下であると上記(A)成分および上記(B)成分が容易に分離しないので、材料特性を十分に発揮することができる。
【0073】
[シリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化方法]
本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物は、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。硬化条件は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱、光照射により硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60~200℃、光照射の場合は、例えば、波長200~400nmの紫外線のエネルギーによって硬化することができる。
【0074】
Tgを維持したまま貯蔵弾性率を下げ、基材への密着性も良好な樹脂組成物とする観点から、上記(B)成分が上記(A)成分より先に硬化するものであることが好ましい。
【0075】
本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物は、上記(A)成分、上記(B)成分および上記(C)成分を混合し、使用することもできるし、少なくとも上記(A)成分および上記(B)成分を混合した状態で、上記(B)成分のみを硬化させ、その後上記(C)成分を添加することによって、上記(A)成分および上記(C)成分中に上記(B)の硬化物を分散させることもできる。特に(C)成分の硬化促進剤が、上記(B)成分の硬化を阻害してしまう場合などは上記(C)成分を添加する前に上記(B)成分を硬化させるという方法が好ましい。
【0076】
上記(B)成分のみを硬化させる場合の硬化条件は、上記(B)成分が上記(A)成分中に分散した状態で、例えば、60~200℃の温度範囲で加熱、もしくは波長200~400nmの紫外線のエネルギーによって上記(B)成分のみを硬化させ、その後上記(C)成分を添加することによって、上記(B)成分のみが硬化したシリコーンハイブリッド樹脂組成物を得ることができる。また上記(A)成分と上記(B)成分および上記(C)成分の混合物の反応メカニズムを変えることによって、上記(A)成分、上記(B)成分および上記(C)成分を混合した後でも、加熱および光照射によって上記(B)成分のみを硬化させることもできる。
【0077】
このような本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物であれば、高Tg、耐冷熱衝撃性、接着性に優れた硬化物を与えるものとなる。
【0078】
[シリコーンハイブリッド樹脂組成物の用途]
本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物であれば、例えば、封止材、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、フィルム、アンダーフィル材、反射防止材、光拡散材、光反射材などの各種用途にも使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
また、本発明では、上記のシリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化物を備えるものである半導体装置を提供する。本発明の半導体装置は例えば上述の本発明のシリコーンハイブリッド組成物の硬化物で半導体素子が封止された半導体装置である。
【実施例
【0080】
以下、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、部は質量部を示し、各成分の粘度は、JIS K 7117-1:1999記載の回転粘度計で測定した25℃における粘度を示す。
【0081】
表1に記載の各成分の説明を以下に示す。
(A1)硬化性有機樹脂
(A-1)
エポキシ樹脂:商品名「JER-828EL」[ビスフェノールA型エポキシ樹脂]、三菱ケミカル株式会社製。10,000mPa・s。
(A-2)
エポキシ樹脂:商品名「TEPIC-S」[イソシアヌレート型エポキシ樹脂]、日産化学株式会社製。常温固体。
(A-3)
シリコーン変性エポキシ樹脂:下記式で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂、信越化学工業株式会社製。18,000mPa・s。
【化1】
(A-4)
エポキシ樹脂:商品名「THI-DE」[脂環式エポキシ樹脂]、JXTGエネルギー株式会社製。20mPa・s。
(A-5)
ポリイミド樹脂:商品名「KJR-657」[ポリイミド樹脂]、信越化学工業株式会社製。1,000mPa・s。
(A-6)
アクリル樹脂:商品名「ライトアクリレートBP-4EAL」[ビスフェノールA型ジアクリレート樹脂]、共栄社化学株式会社製。1200mPa・s。
【0082】
(B)硬化性シリコーン樹脂組成物及びシリコーンゴム粒子
(B-1)
ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂組成物:商品名「LPS-3450/C-3450」[ポリオルガノシロキサンを含むメチルシリコーン樹脂]、信越化学工業製、ヒドロシリル化触媒を含む。LPS-3450:C-3450の5:1混合品。粘度3,500mPa・s、屈折率1.41、硬度タイプA50。
(B-2)
ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂組成物:商品名「LPS-3620A/LPS-3620B」[ポリオルガノシロキサンを含むフェニルメチルシリコーン樹脂]、信越化学工業製、ヒドロシリル化触媒を含む。LPS-3620A:LPS-3620Bの1:1混合品。粘度12,500mPa・s、屈折率1.50、硬度タイプA75。
(B-3)
光ラジカル硬化性シリコーン樹脂組成物:商品名「KJC-7805T-3」[アクリル変性ポリオルガノシロキサンを含むUV硬化型シリコーン樹脂]、信越化学工業製、光重合開始剤を含む。粘度3,500mPa・s、屈折率1.44、硬度タイプA50。
(B-4)
縮合硬化性シリコーン樹脂組成物:商品名「LPS-9417/C-9417」[ポリオルガノシロキサンを含むメチルシリコーン樹脂]、信越化学工業製、縮合触媒を含む。LPS-9417:C-9417の10:1混合品。粘度23,000mPa・s、屈折率1.41、硬度タイプA80。
(B-5)
シリコーンゴム粒子:商品名「KMP-600」、信越化学工業製。
(B-6)
エポキシ変性シリコーン樹脂:エポキシ変性シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製。粘度16,000mPa・s。
【化2】
(B-7)
光ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂組成物:商品名「X-35-501」[ポリオルガノシロキサンを含むメチルシリコーン樹脂]、信越化学工業製、光活性ヒドロシリル化触媒を含む。粘度5,000mPa・s、屈折率1.41、硬度タイプA80。
【0083】
(C)硬化促進剤
(C-1)
リン系硬化促進剤:商品名「U-CAT-5003」[第4級ホスホニウムブロマイド]、サンアプロ株式会社製。
(C-2)
光カチオン硬化促進剤:商品名「SPI-210S」[トリアリールスルホニウム・リン系アニオン塩]、サンアプロ株式会社製。
(C-3)
亜鉛系硬化促進剤:商品名「オクトープZn」[2-エチルヘキサン酸Zn]、ホープ製薬株式会社製。
(C-4)
光重合開始剤:商品名「Omnirad 184」[1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン]、IGM Resins B.V.社製。
【0084】
(A2)硬化剤
(D-1)
酸無水物系硬化剤:商品名「HN-5500」[3(4)メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸]、日立化成株式会社製。
(D-2)
アミン系硬化剤:商品名「カヤハードAA」[ジエチルジアミノジフェニルメタン]、日本化薬株式会社製。
【0085】
[実施例1]
(A1)成分として、(A-1)30部、(B)成分として、(B-1)10部、および(C)成分として(C-2)0.1部を混合し、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎」、(株)シンキー製、型番:ARE-310)を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0086】
[実施例2]
(A1)成分として、(A-1)成分30部、(B)成分として、(B-1)30部を100℃で自公転式撹拌装置を用いて撹拌10分、脱泡2分で混練し、混合物を常温に戻した後、(C)成分として(C-1)0.1部、(A2)成分として(D-1)を(A)成分中のエポキシ基の合計個数に対する(D)成分中の酸無水物の合計個数の比が1.0となる量を混合し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0087】
[実施例3]
実施例2で用いた(D-1)成分を(D-2)成分に変更し、(C-1)を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして組成物を調製し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。(D-2)成分の配合量は(A1)成分中のエポキシ基の合計個数に対する(A2)成分中のアミノ基の合計個数の比が1.0となる量で調製を行った。
【0088】
[実施例4]
(A1)成分として、(A-2)30部、(A2)成分として(D-1)を(A1)成分中のエポキシ基の合計個数に対する(A2)成分中の酸無水物の合計個数の比が1.0となる量を混合し、水0.1部を滴下して100℃で3時間撹拌した後、(B)成分として、(B-1)成分30部を滴下して30分撹拌した後、(C)成分として(C-1)0.1部を混合し、均一な白色固体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0089】
[実施例5]
(A1)成分として、(A-3)25部、(A-4)5部、(B)成分として、(B-1)10部、および(C)成分として(C-2)0.1部を混合し、自公転式撹拌装置を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0090】
[実施例6]
実施例1で用いた(B-1)成分を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、均一な乳白色半透明液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0091】
[実施例7]
実施例1で用いた(B-1)成分を(B-3)成分に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0092】
[実施例8]
実施例1で用いた(B-1)成分を(B-4)成分に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0093】
[実施例9]
(A1)成分として、(A-5)30部、(B)成分として、(B-4)10部、および(C)成分として(C-3)0.1部を混合し、自公転式撹拌装置を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、均一な赤褐色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0094】
[実施例10]
(A1)成分として、(A-6)30部、(B)成分として、(B-1)10部を100℃で自公転式撹拌装置を用いて撹拌10分、脱泡2分で混練し、混合物を常温に戻した後、(C)成分として(C-4)を0.1部混合し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0095】
[実施例11]
(A1)成分として、(A-1)28部、(A-3)2部、(B)成分として、(B-7)15部、および(C)成分として(C-2)0.1部を混合し、自公転式撹拌装置を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0096】
[実施例12]
(A1)成分として、(A-1)15部、(A-3)15部、(B)成分として、(B-2)30部を100℃で自公転式撹拌装置を用いて撹拌10分、脱泡2分で混練し、混合物を常温に戻した後、(C)成分として(C-1)0.1部、(A2)成分として(D-1)を(A1)成分中のエポキシ基の合計個数に対する(A2)成分中の酸無水物の合計個数の比が1.0となる量を混合し、自公転式撹拌装置を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、均一な無色透明であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0097】
[実施例13]
実施例2で用いた(A-1)成分を(A-3)成分に変更した以外は、実施例2と同様にして組成物を調製し、均一な白色液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0098】
[比較例1]
実施例1で用いた(B-1)成分を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0099】
[比較例2]
実施例2で用いた(B-1)成分を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして組成物を調製した。
【0100】
[比較例3]
実施例1で用いた(B-1)成分の代わりに、(B-5)成分を5部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0101】
[比較例4]
実施例1で用いた(B-1)成分の代わりに、(B-5)成分を30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を調製した。得られた組成物は半固体状であった。
【0102】
[比較例5]
(A1)成分として、(A-3)30部、(B)成分として、(B-6)30部、および(C)成分として(C-2)0.1部を混合し、自公転式撹拌装置を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、均一な乳白色半透明液体であるシリコーンハイブリッド樹脂組成物が得られた。
【0103】
[比較例6]
実施例10で用いた(B-1)成分の代わりに、(B-3)成分を30部用いたこと以外は、実施例10と同様にして組成物を調製した。
【0104】
[比較例7]
実施例10で用いた(B-1)成分を添加しなかったこと以外は、実施例10と同様にして組成物を調製した。
【0105】
実施例1~13及び比較例1~7で調製した組成物、及びその硬化物の物性を下記の方法で測定した。結果を表1および2に記載した。
【0106】
上記シリコーンハイブリッド樹脂組成物で(C-2)成分又は(C-4)成分を使用した実施例1、5~8、10、11、比較例1、3~7においてはメタルハライド水銀灯を2灯備えるコンベア炉内で(照度40W/cm)で2秒間紫外線を照射した後150℃で4時間硬化させることで各硬化物を得た。それ以外の実施例、比較例に関しては150℃で4時間硬化させることで各硬化物を得た。
【0107】
(1)性状
硬化前の各組成物の流動性を確認した。100mlのガラス瓶に50gの組成物を加え、ガラスビンを横に倒して25℃で10分間静置した。その間に樹脂が流れ出せば液状であると判断した。
【0108】
(2)粘度
25℃における硬化前の各組成物の粘度をJIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した。なお、実施例4は固体状、比較例4は半固体状であったため、粘度の測定は行わなかった。
【0109】
(3)硬さ(タイプD)
上述のように硬化させた硬化物の硬さを、JIS K 6249:2003に準拠して、デュロメータ タイプD硬度計を用いて測定した。
【0110】
(4)接着性
各組成物0.25gを、面積180mmの銅板に底面積が45mmとなるように成形し、上述の方法で硬化させ接着用試験片を作製した。その試験片をボンドテスターDAGE-SERIES-4000PXY(DAGE社製)を用いて、25℃でせん断接着力を測定した。接着試験後に、凝集破壊の部分と剥離部分との割合を求めて、その接着性(破壊モード)を判定した。
(判定基準)
○:接着性が良好である(凝集破壊の割合80%以上)
×:接着性が不良である(凝集破壊の部分80%未満)
【0111】
(5)分散性
各組成物の硬化物の破断面を電子顕微鏡にて観察し、目視評価により、最大ドメイン径を測定した。また、(A)成分((A1)成分及び(A2)成分)の分散性が良好なものを○、分散性が不良なものを×とした。なお、比較例1、2及び7は(B)成分を添加していないので、分散性の評価は行っておらず、比較例6は(B)成分が均一に相溶したので、分散性の評価は行っていない。
【0112】
(6)耐冷熱衝撃性
上記接着試験で使用した試験片を、液槽冷熱衝撃試験機(エスペック社製)を用いて、-40℃~120℃、1,000サイクルの熱衝撃試験に投入した。試験後、上記と同様の条件で接着試験を行い、接着試験後に、凝集破壊の部分と剥離部分との割合を求めて、その接着性を判定した。
(判定基準)
○:接着性が良好である(凝集破壊の割合80%以上)
×:接着性が不良である(凝集破壊の部分80%未満)
【0113】
(7)耐衝撃試験
各組成物の硬化物(50mm×50mm×2mm)へ、43gの鋼球を1mの高さから落下させ、硬化物の破損を観察した。
(判定基準)
○:硬化物がシート形状を維持
×:硬化物が割れ、破損
【0114】
(8)貯蔵弾性率およびガラス転移温度
各シリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化物(10mm×15mm×1mm)を用意し、それらの試験片を動的粘弾性測定装置Q-800(株式会社北浜製作所製)にセットし、25℃から300℃の間で各樹脂組成物の貯蔵弾性率およびTanδを測定した。常温25℃の貯蔵弾性率およびTanδの極大値を示す際の温度をガラス転移温度とした。
【0115】
以上の結果を表1および表2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表1に示されるように、(A1)成分、(B)成分、(C)成分および(A2)成分として本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物を使用した実施例1~13では、概ね白色で、十分な粘度を持つ組成物を得られ、それを硬化させて概ね白色不透明で、分散性、Tg、接着性に優れた硬化物が得られた。これに対し、(B)成分が添加されていない比較例1、2および7では、接着の破壊モードが剥離となり、密着性に劣るものとなった。更に、(B)成分として本発明の粘度の要件を満たさないシリコーンゴム粒子を添加した比較例3では、粘度が上がり作業性および耐衝撃性が悪化した。同様に(B)成分としてシリコーンゴム粒子を添加した比較例4では、粘度が高すぎてサンプルが作製できず、分散性も悪化した。また、(A)成分と(B)成分としてエポキシ変性シリコーン樹脂を使用し同じ反応メカニズムによって硬化させた比較例5では、Tgが大きく低下し、接着の破壊モードが剥離となった。また、(A)成分および(B)成分が、同じ光ラジカル反応によって硬化する比較例6では、(A)成分および(B)成分が均一に相溶したためドメインが確認されず、Tgが大きく低下し、接着の破壊モードが剥離となった。
【0119】
以上のように、本発明のシリコーンハイブリッド樹脂組成物であれば、優れた接着性および耐熱衝撃性を発揮する硬化物を与えることができる。
【0120】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。