(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高濃度タンパク質製剤の粘度低下
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20240404BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240404BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240404BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240404BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240404BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240404BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240404BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20240404BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/12
A61K9/19
A61K9/14
A61K38/00
A61K39/395 A
A61K39/395 M
(21)【出願番号】P 2020556852
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2019059780
(87)【国際公開番号】W WO2019201904
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデブラント,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クログ,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツラー,タンヤ
(72)【発明者】
【氏名】ギュベリ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ツィルマン,マルティン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-505789(JP,A)
【文献】国際公開第2017/194577(WO,A1)
【文献】特表2016-534141(JP,A)
【文献】特表2013-525484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0297106(US,A1)
【文献】特表2004-532798(JP,A)
【文献】特表2017-519018(JP,A)
【文献】特表2010-503410(JP,A)
【文献】Biotechnology and Bioengineering,2010年,Vol. 108, No.3,p. 632-636
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に活性なタンパク質を少なくとも50mg/mlから300mg/mlまでの範囲の濃度で含む液体製剤の粘度を低下させる方法であって、タンパク質溶液に、メグルミンまたはオルニチンと、ベンゼンスルホン酸、グルコン酸およびグルクロン酸から選択される対イオンとの組み合せを添加する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
メグルミンおよびベンゼンスルホン酸、オルニチンおよびベンゼンスルホン酸、オルニチンおよびグルコン酸、またはオルニチンおよびグルクロン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メグルミンおよびベンゼンスルホン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
オルニチンおよびベンゼンスルホン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
オルニチンおよびグルコン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
オルニチンおよびグルクロン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
粘度低下賦形剤が等モル量で添加される、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
製剤の粘度が少なくとも12%低下する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも50mg/mlから300mg/mlまでの濃度の薬学的に活性なタンパク質、ならびに、
メグルミンまたはオルニチン、および
ベンゼンスルホン酸、グルコン酸およびグルクロン酸から選択される対イオンを含む、低下した粘度を有する医薬製剤。
【請求項10】
メグルミンおよびベンゼンスルホン酸、オルニチンおよびベンゼンスルホン酸、オルニチンおよびグルコン酸、またはオルニチンおよびグルクロン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加された、請求項
9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
4.5から8.0の範囲のpHを有する、請求項
9または1
0に記載の医薬製剤。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって製造された医薬製剤を凍結乾燥する工程を含む、凍結乾燥粉末を調製する方法。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載の医薬製剤を凍結乾燥する工程を含む、凍結乾燥粉末を調製する方法。
【請求項14】
薬学的に活性なタンパク質、ならびに、メグルミンまたはオルニチンと、ベンゼンスルホン酸、グルコン酸およびグルクロン酸から選択される対イオンとの組み合せを含み、当該組み合せが、希釈剤で再構成したときに粘度を下げるのに有効な量で存在する、請求項13に記載の方法によって製造された凍結乾燥粉末。
【請求項15】
メグルミンおよびベンゼンスルホン酸、オルニチンおよびベンゼンスルホン酸、オルニチンおよびグルコン酸、またはオルニチンおよびグルクロン酸の組み合せが粘度低下賦形剤として添加された、請求項14に記載の凍結乾燥粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度の低下を示す高濃度タンパク質製剤の組成物に関する。調製された製剤に含まれるタンパク質は、凝集および変性に対して安定化されており、よって、患者に投与するまで十分に貯蔵安定である。
【背景技術】
【0002】
技術水準
開発中のほとんどのバイオセラピューティックタンパク質製品は、モノクローナル抗体(mAb)あるいは二重特異性抗体または抗体フラグメントなどの関連するフォーマットである。臨床的に重要な適応症の広い範囲にわたるかかる製品の治療用量はしばしば多い。
【0003】
しかし、ペプチドおよびタンパク質は、従来の有機および無機薬よりも大きく、より複雑であり(すなわち、複雑な3次元構造に加えて複数の官能基を持っている)、かかるタンパク質の製剤は特別な問題をもたらす。これらの問題の1つは、とりわけ高濃度での、タンパク質製剤の粘度の上昇である。
【0004】
しかしながら、後者は特に問題であり、なぜなら患者の利便性、コンプライアンス、および全体的な医療費の観点から、得られる製品が少量の皮下注射によって送達されることが非常に望ましいからである。
【0005】
しかし、多い治療用量と非常に望ましい少ない注射量との組み合わせは、しばしば、有効成分の極めて高濃度の製剤の必要性につながる。高濃度で、バイオセラピューティックの安定した水性製剤を達成することは並外れて困難になることがあり、しばしば凝集率、粒子形成、および粘度のかなりの増加につながることがあることはよく知られている。高粘度は、製品の注入性を有意に制限するため、許容できない。
【0006】
抗体および他のタンパク質治療薬は、静脈内(IV)、筋肉内(IM)または皮下(SC)ルートなどによって非経口的に投与することができる。皮下注射は、患者への投与を簡素化する可能性(高速、少量の注射)および治療費の削減(より短い医療支援)により、タンパク質治療薬の送達についてますます注目を集めている。患者のコンプライアンスを確保するために、皮下注射剤形は等張であり、少ない注射量(注射部位あたり<2.0ml)を含有することが望ましい。注射量を減らすために、タンパク質はしばしば1mg/ml~150mg/mlの範囲内で投与される。
【0007】
よって、皮下投与のためのタンパク質製剤の主な開発は、しばしば粘度の課題に関連している。容量制限(<2ml)および用量要件(通常>100mg投与)は、しばしば高濃度のタンパク質製剤を要求する。しかし、すでに述べたように、高濃度では、タンパク質は高粘度の溶液を形成する傾向があり、可溶性および不溶性のタンパク質-タンパク質凝集体の形成により、安定性が問題になり得る。かかる粘度は、
a)製造工程および
b)患者への投与
に対して厳しい課題である。
【0008】
製造工程において、高粘度である高濃度タンパク質製剤は、処理において、特に限外濾過および滅菌濾過において、困難である。
【0009】
mAbベースの治療法は通常、長期間にわたって繰り返し投与され、数mg/kgの投与が必要である。抗体溶液または懸濁液は、静脈内(IV)注入、および皮下(SC)または筋肉内(IM)注射などの非経口ルートで投与できる。ここで、注射溶液において、高粘度が問題である。この問題を解決し、溶液の安定性を向上させるために、通常、高濃度の添加剤および賦形剤も添加される。筋肉内または皮下投与を目的とした製剤に望ましいタンパク質濃度では、長期のタンパク質安定性を達成するために、スクロースおよび塩化ナトリウムなどの高濃度の安定剤が必要である。得られる溶液は、高い射出力(high injection forces)による組織損傷のためにしばしば注射の痛みを引き起こす。したがって、高タンパク質濃度製剤の安定性と浸透圧のために必要な量の安定剤のバランスをとることが重要である。
【0010】
結果として、粘度に起因する技術的ハードルは、大抵、皮下送達のためのタンパク質製剤の開発の失敗につながる。
【0011】
皮下製剤の開発における成功率を高めるために、化学的方法による粘度の低下および制御が、近年かなりの注目を集めている。
多数の出版物および特許出願は、塩のファミリー(主にNaCl)および特別なアミノ酸のファミリー、好ましくはアルギニン、ヒスチジンおよびプロリン、からの賦形剤に言及しており、ある特定の高濃度タンパク質治療薬の粘度を低減させるのに効率的であることが示されている。
【0012】
残念ながら、粘度を低減させるためのこれらのよく知られたアプローチは、おそらくタンパク質製剤の粘度が様々な分子間力の結果であるという事実のために、普遍的に適用できるわけではない。タンパク質分子およびその配合条件に応じて、分子クラウディング、あるいは双極子相互作用あるいは疎水性基または荷電基間の相互作用などの異なる相互作用が粘度に影響を与え得る。その結果、製薬業界は、とりわけ上記のNaClおよびアミノ酸に基づく標準溶液が失敗したときの代替オプションとして、粘度を低下させる賦形剤を強く必要としている。
【0013】
過去に、多数の粘度低減添加剤および賦形剤が研究されてきた。今日、最も有名なものの1つは、ヒスチジン、リジン、およびカンファー-10-スルホン酸に加えて、アルギニンである。Zheng Guo et al(「Structure-Activity Relationship for Hydrophobic Salts as Viscosity-Lowering Excipients for Concentrated Solutions of Monoclonal Antibodies」、 Pharmaceutical Research, vol. 29, no. 11, June 13, 2012, p. 3182-3189)からの研究論文において、粘度低減特性を呈するさらに多くのユニークな分子が記載されている。現在でも、高濃度で粘度問題を呈する全ての治療用タンパク質溶液が、既知の粘度低減賦形剤によって適切に対処できるわけではない。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的
製薬用途を目的としたタンパク質製剤(例えばモノクローナル抗体、融合タンパク質など)は通常、望ましくない凝集に対する安定剤を必要とし、物理的または化学的分解を防ぐ。これらの問題は、このクラスの分子の治療的投与にしばしば望ましい高タンパク質濃度で悪化する。
【0015】
高濃度では、タンパク質は自己会合する傾向があり、高粘度の製剤をもたらし、例えば、注射によるこれらのタンパク質溶液の投与だけでなく、タンジェンシャルフローろ過がバッファー交換およびタンパク質濃度の増加のためにしばしば使用される製造工程も複雑にする。注射およびろ過中に背圧とせん断応力を増加させることにより、治療用タンパク質が潜在的に不安定になるか、または処理時間が長くなる。したがって、バイオ医薬品業界では、粘度低減機能を備えた製剤添加剤および賦形剤、またはそれらの組み合わせに対する高いニーズがある。しかしながら、モノクローナル抗体のようなタンパク質を製剤化するには、タンパク質の変性および生物活性の喪失を回避するために、製剤添加剤および/または賦形剤の慎重な選択を必要とする。
【0016】
しかし、依然として多数の新しい抗体および抗体フォーマットは、適切で革新的な粘度低減添加剤および/または賦形剤、あるいは特定の添加剤/賦形剤の組み合わせ、あるいは標的製剤戦略の開発を必要としている。これらの添加剤/賦形剤は、タンパク質製剤が非経口的、これは静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内または皮下ルートを包含する、に投与されるため、薬学的に安全でなければならない。したがって、これらの製剤に使用できる添加剤は、生理学的に適合性があり、望ましくない副作用有してはならず、いかなる状況においてもアレルギー反応につながってはならず、特に、アナフィラキシー様の副作用を引き起こしてはならない。
【0017】
本発明の主題
本発明の主題は、タンパク質溶液と、粘度を低下させる濃度のメグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩またはそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤とを組み合わせる工程を含む、薬学的に活性なタンパク質の液体高濃度製剤の粘度を低下させる方法である。特に、本発明は、タンパク質の濃度が少なくとも50mg/mlから300mg/mlまでの範囲にある製剤であって、治療用タンパク質が抗体、抗体フラグメント、ミニボディ、修飾抗体、抗体様分子および融合タンパク質の群から選択される、前記製剤に関する。
【0018】
メグルミンを、ベンゼンスルホン酸を対イオンとしてまたはp-トルエンスルホン酸ナトリウムを対イオンとして一緒に添加したときだけでなく、オルニチンと対イオンとしてのベンゼンスルホン酸とを添加した場合、あるいはオルニチンまたは対イオンとしてのp-トルエンスルホン酸ナトリウム、あるいは効果的であるさらなる好適な組み合わせを添加した場合もまた、請求項1または請求項2~10のいずれか一項の方法で特に良好な粘度低減効果が達成される。この効果は、特にこれらの組み合わせが等モル量で添加された場合に達成される。とりわけ言及した前記賦形剤を添加することにより、少なくとも12%の、最適条件下で80%までの粘度の低下が達成され得る。
【0019】
請求項11から21に記載のその特定の態様を備える薬学的に活性なタンパク質またはペプチドの濃縮医薬製剤もまた本発明の目的である。治療用タンパク質は、抗体、抗体フラグメント、ミニボディ、修飾抗体、抗体様分子および融合タンパク質の群から選択してもよい。さらに、請求項11~21の組成物から凍結乾燥粉末を製造するための請求項22から29の方法は本発明の目的である。しかしながら、請求された組成物を含むキットならびに請求項30~34の請求された組成物を含むキットもまた本発明の範囲内であり、その用途もまた本発明の範囲内である。
【0020】
発明の詳細な記載
上で概説したように、高タンパク質濃度は、タンパク質の物理的および化学的安定性に関連する課題、ならびにタンパク質製剤の製造、貯蔵、および投与に困難をもたらす。重大な問題は、処理および/または貯蔵中にタンパク質が凝集して粒子を形成する傾向であり、これがさらなる処理および/または投与中の操作を困難にする。濃度依存性の分解および/または凝集は、より高濃度のタンパク質製剤を開発する上での重大な課題である。非天然タンパク質凝集および粒子形成の可能性に加えて、水溶液中で可逆的自己会合が起こることがあり、これは、何よりも、注射による送達を複雑にする粘度の増加に寄与する。
【0021】
定義
本明細書で一般に使用される用語「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに連結されて、鎖長が少なくとも検出可能な三次構造を生成するのに十分である、ポリペプチドを形成するアミノ酸のポリマーを指す。約100kDaを超える分子量(kDaで表され、「Da」は「ダルトン」を意味し、1kDa=1,000Da)を有するタンパク質は、「高分子量タンパク質」と規定されることがあり、一方分子量が約100kDa未満のタンパク質は「低分子量タンパク質」と規定されることがある。用語「低分子量タンパク質」は、タンパク質と見なされるために必要な少なくとも三次構造の必要条件を欠いている小さなペプチドを除外する。タンパク質の分子量は、当業者に知られている標準的な方法を使用して決定することができ、質量分析(例えば、ESI、MALDI)または既知のアミノ酸配列およびグリコシル化からの計算が挙げられるがこれらに限定されない。タンパク質は、天然または非天然、合成、あるいは半合成であり得る。
【0022】
「本質的に純粋なタンパク質」および「実質的に純粋なタンパク質」は、本明細書で交換可能に使用され、少なくとも約90重量%の純粋なタンパク質、好ましくは少なくとも約95重量%の純粋なタンパク質を含む組成物を指す。「本質的に均質」および「実質的に均質」は、本明細書で交換可能に使用され、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95%の存在するタンパク質が、モノマーおよび可逆的ジ-およびオリゴマー会合体(不可逆的凝集体ではない)の組み合わせである組成物を指す。
【0023】
本明細書で一般に使用される用語「抗体」は、mAbs(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を包含する)、ポリエピトープ特異性を備えた抗体組成物、二重特異性抗体、ダイアボディ、および一本鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv)、単一ドメイン抗体、多価単一ドメイン抗体、Fab融合タンパク質、ならびにそれらの融合を広くカバーする。
【0024】
本明細書で一般に使用される用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、天然に生じる可能性のある少量で存在し得る突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一のエピトープに対して向けられる。例えば、これらは典型的にはKohler et al.(Nature 256: 495, 1975)によって記載されているように、ハイブリドーマ細胞を培養することによって合成され、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)によって作製することができ、またはClackson et al.(Nature 352: 624-628, 1991)およびMarks et al.(J. Mol. Biol. 222: 581-597, 1991)に記載された技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することができる。本明細書に使用されるとき、「mAb」は、具体的には、誘導体化抗体、抗体薬物複合体、および重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体に対応する配列と同一または相同である一方、鎖の残りの部分は、別の種に由来するあるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを包含する(米国特許4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855, 1984)。
【0025】
「抗体フラグメント」はインタクト抗体の一部を含み、インタクト抗体の抗原結合領域および/または可変領域を包含する。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号;Zapata et al., Protein Eng. 8:1057-1062, 1995を参照);一本鎖抗体分子;多価単一ドメイン抗体;および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を包含する。
【0026】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、主にヒト配列のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525, 1986; Reichmann et al., Nature 332:323-329, 1988;およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596, 1992参照)。
【0027】
これに関連して、用語「治療的に活性なタンパク質」は、簡単に言えば、抗体、抗体フラグメント、ミニボディ、修飾抗体、抗体様分子、および融合タンパク質の群から選択され、および上述のように定義される、タンパク質またはペプチドであることを意味すると理解される。
【0028】
「レオロジー」は物の変形および流れの研究を指し、および「粘度」は物質(典型的には液体)の流れに対する抵抗を指す。粘度はせん断力の概念に関連している;それは流体の異なる層が互いに反対方向に移動するときに、互いにまたは他の表面にせん断力を及ぼす効果として理解できる。粘度にはいくつかの尺度がある。粘度の単位はNs/m2で、パスカル秒(Pa-s)として知られている。粘度は「動(kinematic)」または「絶対(absolute)」であり得る。動粘度は運動量が流体を介して伝達される速度の尺度である。それはストークス(St)で測定される。動粘度は重力の影響下にある流体の抵抗流の尺度である。体積が等しく粘度が異なる2つの流体を同一のキャピラリー粘度計に設置し、重力によって流動させたとき、粘度の高い流体が粘度の低い流体よりもキャピラリーを流れるのに時間がかかる。例えば、ある流体がその流れを完了するのに200秒(s)かかり、別の流体が400秒かかる場合、2番目の流体は動粘度スケールで最初の流体の2倍の粘度と呼ばれる。動粘度の寸法は長さ2/時間である。一般的に、動粘度はセンチストークス(cSt)で表される。動粘度のSI単位はmm2/sであり、これは1cStに等しい。「力学的粘度(dynamic viscosity)」または「単純粘度」と呼ばれることもある「絶対粘度」は、動粘度と流体密度の積である。絶対粘度はセンチポアズ(cP)の単位で表される。絶対粘度のSI単位は、ミリパスカル秒(mPa-s)である、1cP=1mPa-s。
【0029】
粘度は、例えば、所与の剪断速度または複数の剪断速度で粘度計を使用することによって測定してもよい。「外挿されたゼロせん断」粘度は、絶対粘度対せん断速度のプロット上に4つの最高せん断点の最良適合線を作成し、粘度を外挿してゼロせん断に戻すことによって決定できる。あるいは、ニュートン流体に対して、粘度は、複数のせん断速度で粘度値を平均することによって決定できる。粘度は、マイクロ流体粘度計を使用して、単一または複数のせん断速度(流量とも呼ばれる)で測定することもでき、ここで絶対粘度は、液体がチャネルを流れるときの圧力の変化から導き出される。粘度はせん断速度に対するせん断応力に等しくなる。マイクロ流体粘度計で測定された粘度は、いくつかの態様において、外挿されたゼロ剪断粘度、例えば、コーンおよびプレート粘度計を使用して複数の剪断速度で測定された粘度から外挿された粘度と直接比較することができる。
【0030】
「せん断速度」は、流体の1つの層が隣接する層を通過する速度の変化率を指す。速度勾配は、プレートからの距離に伴う速度の変化率である。この単純なケースは、(cm/秒)/(cm)=1/秒の単位でせん断速度(v1-v2)/hの均一な速度勾配を示す。これゆえに、せん断速度の単位は秒の逆数、または一般に時間の逆数である。マイクロ流体粘度計については、圧力と流量の変化はせん断速度に関連している。「せん断速度」とは、物質が変形する速度のことである。タンパク質および粘度低下剤を含む製剤は、対象のサンプルの粘度範囲において粘度を正確に測定するために当業者によって適切に選択されたコーンおよびプレート粘度計およびスピンドルを使用して測定されるとき(すなわち、20cPのサンプルは、DV2T粘度計(Brookfield)に取り付けられたCPE40スピンドルで最も正確に測定される)、典型的には約0.5s-1から約200s-1の範囲の剪断速度で測定される;マイクロ流体粘度計を使用して測定したときは約20s-1より大きく約3,000s-1まで。
【0031】
本明細書で一般に使用される古典的な「ニュートン」流体の場合、粘度は本質的に剪断速度に依存しない。しかしながら「非ニュートン流体」については、粘度はせん断速度の増加とともに減少または増加する、例えば、流体はそれぞれ「剪断減粘性」または「剪断増粘性」である。濃縮された(すなわち、高濃度の)タンパク質溶液についていえば、これは、擬塑性剪断減粘性挙動、すなわち、剪断速度に伴う粘度の低下として現れ得る。
【0032】
本明細書で一般に使用される用語「化学的安定性」は、酸化、脱アミド化、または加水分解などの化学的経路を経る分解に抵抗する製剤中のタンパク質成分の能力を指す。典型的には、4°Cで24か月後に分解される成分が約5%未満の場合、タンパク質製剤は化学的に安定であると見なされる。
【0033】
本明細書で一般に使用される用語「物理的安定性」は、凝集などの物理的劣化に抵抗するタンパク質製剤の能力を指す。物理的に安定である製剤は、許容可能なパーセンテージの生物活性タンパク質剤の不可逆的な凝集体(例えば、二量体、三量体、または他の凝集体)のみを形成する。凝集体の存在は、動的光散乱によって製剤中のタンパク質の平均粒子サイズを測定することを包含する、いくつかの方法で評価し得る。4°Cで24ヶ月後に形成される不可逆的な凝集体が約5%未満の場合、製剤は物理的に安定である見なされる。凝集不純物の許容レベルは、理想的には約2%未満であろう。およそ1%がより典型的であるが、約0.2%という低いレベルが達成可能である。
【0034】
本明細書で一般に使用される用語「安定な製剤」は、製剤が化学的に安定および物理的に安定の両方であることを意味する。安定な製剤は、約95%以上の生物活性タンパク質分子が、4°Cで24ヶ月の保存後、または高温での同等の溶液条件(40°Cで1ヶ月の保管など)後に製剤中に生物活性を保持するものであり得る。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当技術分野で利用可能であり、レビューされている、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee, Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y. (1991)およびJones, A., Adv. Drug Delivery Revs. 10:29-90, 1993。安定性は、ある特定の期間、選択した温度で測定し得る。迅速なスクリーニングのために、例えば、製剤は、40°Cで2週間から1ヶ月間維持してもよく、その時点で、残留生物活性が測定され、安定性を評価するために初期条件と比較される。製剤を2°C~8°Cで保存すべきとき、一般に、製剤は、30℃または40℃で少なくとも1ヶ月間安定および/または2°C~8°Cで少なくとも2年間安定でなければならない。製剤を室温、約25°Cで保存すべきとき、一般に、製剤は、約25℃で少なくとも2年間安定および/または40°Cで少なくとも約6ヶ月間安定でなければならない。凍結乾燥および保存後の凝集の程度は、タンパク質の安定性の指標として使用できる。いくつかの態様において、安定性は、製剤中のタンパク質の粒子サイズを測定することによって評価される。いくつかの態様において、安定性は、標準的な生物学的活性または結合アッセイウェルを使用して、当業者の能力の範囲内で製剤の活性を測定することによって評価され得る。
【0035】
本明細書で一般に使用される用語「粒子サイズ」は、周知の粒子サイズ測定機器、例えば動的光散乱、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、または当業者に知られている他の方法を使用することによって決定されるような、製剤中の生物活性分子粒子の主要な集団の平均直径、またはその粒子サイズ分布を意味する。
【0036】
本明細書で一般に使用される用語「濃縮」または「高濃度」は、少なくとも1mg/ml、とりわけ約10mg/mLより大きい、好ましくは約50mgより大きい、より好ましくは約100mg/mLより大きい、さらにより好ましくは約200mg/mLより大きい、または最も好ましくは約250mg/mLより大きいタンパク質の最終濃度を有する液体タンパク質製剤を表す。
【0037】
本明細書で一般に使用される用語「再構成製剤」は、投与のためにタンパク質を水溶液に溶解または分散するように、乾燥粉末、凍結乾燥、噴霧乾燥または溶媒沈殿されたタンパク質を希釈剤に溶解することによって調製された製剤を指す。
【0038】
「凍結保護剤」は、タンパク質と組み合わされると、凍結乾燥および/またはその後の貯蔵時にタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を有意に低下させる物質である。凍結保護剤は、一般に、「凍結保護量」で予備凍結乾燥製剤に添加される。これは、凍結保護量の凍結保護剤の存在下でタンパク質を凍結乾燥した後、タンパク質が本質的にその物理的および化学的安定性および完全性を保持することを意味する。
【0039】
本明細書で一般に使用される「希釈剤」または「担体」は、薬学的に許容され(すなわち、ヒトまたは別の哺乳動物への投与に対して安全および非毒性)、凍結乾燥後に再構成された水性製剤などの液体製剤の調製に有用な成分である。例示的な希釈剤は、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液、およびそれらの組み合わせを包含する。
【0040】
「防腐剤」は、細菌、真菌、または他の感染性病原体による汚染および/またはそれらの作用を低下させるために、本明細書の製剤に添加することができる化合物である。防腐剤の添加は、例えば、多目的(複数回投与)製剤の製造を容易にし得る。
【0041】
本明細書で一般に使用される「増量剤」は、凍結乾燥混合物に質量を加え、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する化合物である(例えば、開孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)。
【0042】
「治療有効量」は、任意の症状または特有の状態または障害の測定可能な改善または予防をもたらすため、平均余命の測定可能な延長をもたらすため、または一般に患者の生活の質を改善するために必要な最小濃度である。治療有効量は、特定の生物学的に活性な分子および治療される特定の状態または障害に依存する。本明細書に記載のmAbなどの多くのタンパク質の治療有効量は、当技術分野で周知である。まだ確立されていないタンパク質の治療有効量、または追加の障害を治療するために臨床的に適用されるmAbなどの既知のタンパク質で特定の障害を治療するための治療有効量は、医師などの当業者の技術の十分な範囲内にある標準的な技術によって決定し得る。
【0043】
本明細書で一般に使用される用語「注入性(injectability)」または「注射針通過性(syringeability)」は、18~32ゲージの針、任意に薄壁を具備した注射器を介した医薬製剤の注入性能を指す。注入性は、注射に必要な圧力または力、流れの均一性、吸引品質、および目詰まりのないことなどの要因に依存する。液体医薬製剤の注入性は、減粘度製剤の射出力を、粘度低減剤を添加していない標準製剤と比較することによって評価し得る。粘度低減剤を含む製剤の射出力の低下は、その製剤の改善された注入性を反映している。粘度低減剤をほぼ同じ濃度の適切な緩衝液で置き換えることを除いて、他の点では同じ条件下で同じ濃度のタンパク質を有する標準配合物と比較して、射出力が少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%低下したとき、減粘度製剤は改善された注入性を有する。あるいは、液体医薬製剤の注入性は、注射器が同じ力で押し下げられたときに、0.5mL、またはより好ましくは約1mLなどの同じ容量の異なる液体タンパク質製剤を注射するのに必要な時間を比較することによって評価され得る。
【0044】
本明細書で一般に使用される用語「射出力」は、所与の注射速度で所与の針ゲージを具備した所与の注射器を介して所与の液体製剤を押すのに必要な力を指す。射出力は典型的にはニュートンで報告される。例えば、射出力は、250mm/分の注射速度で0.50-インチ27-ゲージ針を具備した内径0.25インチを有する1mLプラスチック注射器を介して液体製剤を押すのに必要な力として測定し得る。試験装置を使用して、射出力を測定できる。同じ条件下で測定したとき、一般に粘度の低い製剤は全体的に低い射出力を必要とする。
【0045】
本明細書で一般に使用される用語「減粘度製剤」は、粘度低減添加剤または薬剤を含まない対応する製剤と比較して、粘度を低下させるための1以上の添加剤の存在によって修飾された、高濃度のmAbなどの高分子量タンパク質または低分子量タンパク質を有する液体製剤を指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「粘度低減剤」は、粘度低減剤が存在しない溶液の粘度と比較して、溶液の粘度を低下させるように作用する化合物を指す。粘度低減剤は、単一の化合物であってもよく、または1以上の化合物の混合物であってもよい。粘度低減剤が2以上の化合物の混合物であるとき、列挙されている濃度は、特に明記しない限り、それぞれ個々の薬剤を指す。例として、粘度低減剤として約0.25Mのベンゼンスルホン酸メグルミンを含む製剤は、0.25Mの濃度のベンゼンスルホン酸と、0.25Mの濃度のメグルミンとを有する溶液である。
【0047】
ある特定の粘度低減剤は、酸性または塩基性官能基を含み、親水性および疎水性領域を示すことがあり、これらは一緒になって、溶液のタンパク質を含むこととの相互作用特性に影響を与える。官能基が完全にまたは部分的にイオン化されているかどうかは、それらが入っている製剤のpHに依存する。特に明記しない限り、イオン化可能な官能基を有する粘度低減剤を含む配合物への言及は、親化合物および任意の可能なイオン化状態の両方を包含する。
【0048】
本明細書で使用される用語「液体製剤」は、許容可能な医薬希釈剤中で供給されるタンパク質であるか、または患者に投与する前に許容可能な医薬希釈剤で再構成されるタンパク質である。
【0049】
バイオシミラーは、微生物細胞(原核生物、真核生物)、ヒトまたは動物起源の細胞株(例えば、哺乳類、鳥類、昆虫)、または動物または植物に由来する組織によって産生することができる。提案されたバイオシミラー製品の発現コンストラクトは、一般に、その参照製品と同じ一次アミノ酸配列をコードする。安全性、純度、または効力に影響を及ぼさないN-またはC-末端の切断などのマイナーな変更は存在し得る。
【0050】
バイオシミラーmAbは、安全性および有効性の両方の点で、物理化学的または生物学的に参照mAbと類似している。バイオシミラーmAbは、標的抗原への結合;Fcガンマ受容体(FcγRI、FcγRII、およびFcγRIII)、FcRn、および補体(C1q)のアイソフォームへの結合;Fab関連機能(例えば、可溶性リガンドの中和、受容体の活性化または遮断);またはFc関連機能(例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、補体依存性細胞傷害、補体活性化)を詳細に調べるアッセイを含む1以上のインビトロ試験を使用して、参照mAbに対して評価できる。インビトロ比較は、薬物動態、薬力学、および/または安全性の類似性を実証するインビボデータと組み合わせることができる。参照mAbに対するバイオシミラーmAbの臨床評価は、薬物動態特性の比較を(例えば、AUC0-inf、AUC0-t、Cmax、tmax、Ctrough);薬力学的エンドポイント;または臨床効果の類似性(例えば:ランダム化並行群間比較臨床試験を使用)を包含することができる。バイオシミラーmAbと参照mAb間の品質比較は確立された手順を使用して評価でき、「Guideline on similar biological medicinal products containing biotechnology-derived proteins as active substance: Quality issues」(EMEA / CHMP / BWP / 49348/2005)、および「Guideline on development, production, characterization and specifications for monoclonal antibodies and related substances」(EMEA / CHMP / BWP / 157653/2007)に記載のものを包含する。
【0051】
バイオシミラーmAbとリファレンスmAbとの違いは、リン酸塩、様々な脂質および炭水化物などの他の生化学的グループをmAbに付着させることによる;アミノ酸の化学的性質を変えることによる(例えば、ホルミル化);または他の多くのメカニズムによる、翻訳後修飾を包含し得る。その他の翻訳後修飾は、製造プロセス操作の結果であり得る-例えば、生成物が還元糖にさらされると糖化が発生することがある。他の場合において、これらの生成物関連の変異体はすべてバイオシミラーmAbに包含される可能性があるため、貯蔵条件は、酸化、脱アミド化、または凝集などのある特定の分解経路を許容し得る。
【0052】
本明細書に使用されるとき、用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される非毒性の酸および塩基から調製される塩を指し、無機酸および塩基、ならびに有機酸および塩基を包含する。
【0053】
本明細書に使用されるとき、用語「アルキル基」は、直鎖、分枝鎖、および環状炭化水素基を指す。特に明記しない限り、用語アルキル基は、1以上の二重結合または三重結合を含む炭化水素基を包含する。少なくとも1つの環系を含むアルキル基は「シクロアルキル」基である。少なくとも1つの二重結合を含むアルキル基は「アルケニル基」であり、少なくとも1つの三重結合を含むアルキル基は「アルキニル基」である。
【0054】
本明細書に使用される用語「アリール」は、縮合環系を包含する芳香族炭素環系を指す。「アリール」基において、環を形成する各原子は炭素原子である。
【0055】
本明細書に使用されるとき、「ヘテロアリール」は、環を形成する原子の少なくとも1つがヘテロ原子である、縮合環系を包含する芳香族環系を指す。さらに、本明細書で使用される用語「複素環」は、縮合環系を包含し、芳香族ではなく、環を形成する原子の少なくとも1つがヘテロ原子である環系を指す。
【0056】
本明細書で使用される用語「ヘテロ原子」は、任意の非炭素または非水素原子である。好ましいヘテロ原子は、酸素、硫黄、および窒素を包含する。
【0057】
製剤
生体適合性のある低粘度のタンパク質溶液、mAbのものなどは、皮下(SC)および筋肉内(IM)注射に有用な量の治療有効量のタンパク質を送達できる、典型的にはSCに対して約2ml以下およびIMに対して約5ml以下、より好ましくはSCに対して約1ml以下およびIMに対して約3ml以下。いくつかの態様においては高分子量タンパク質が好ましいが、タンパク質は一般に任意の分子量を有することができる。他の態様において、タンパク質は低分子量タンパク質である。
【0058】
ここで、本発明は、治療用タンパク質と、粘度を低下させる量の、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩またはそれらの混合物から選択される賦形剤とをタンパク質溶液と等モル量で組み合わせることにより、治療用タンパク質の液体医薬製剤の粘度を低下させる、および/または安定性を改善する方法を提供する。溶液のpH値、タンパク質溶液の濃度、タンパク質の性質、添加された賦形剤の結果として生じる濃度、およびその(それらの)化学的性質に応じて、粘度低下効果は変化する。
【0059】
特に、トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸から選択される対イオンの1つと一緒のメグルミン混合物およびオルニチンの混合物が、例えば(mAbAおよびmAbB)の溶液に、等モル量で濃縮タンパク質溶液に添加される場合、特に良好な粘度低下が達成された。
【0060】
予期せぬことに、アミノ酸オルニチン、ならびにp-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸から選択される負に帯電した対イオンと組み合わせたカチオン性アミノ-糖メグルミンの混合物が、特定の等モル混合物として、モノクローナル抗体または融合タンパク質の高濃度タンパク質液体製剤の粘度を有意に低下させることが実験によって見出された。
【0061】
例示的な態様において、治療用タンパク質は、上述のとおり高タンパク質濃度である。いくつかの態様において、粘度の低下は、粘度低下剤溶液の代わりに緩衝液をタンパク質溶液に同量で添加した対照製剤と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%である。
【0062】
例示的な態様において、治療用タンパク質は、上述のとおり少なくとも50mg/ml、好ましくは75mg/mlより大きい、より好ましくは100mg/mlより大きい高タンパク質濃度である。本明細書で試験され、開示された製剤のタンパク質濃度は、150~280mg/mlの範囲である。いくつかの態様において、粘度の低下は対照製剤と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%である。
【0063】
別の側面において、本発明は、治療用タンパク質と、メグルミン、オルニチン、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、およびベンゼンスルホン酸またはそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤とを含む液体溶液を提供し、ここで該製剤は対照製剤と比較して低下した粘度を表す。例示的な態様において、治療用タンパク質は、上述のとおり高タンパク質濃度であり、本明細書に記載の賦形剤は、粘度を低下させる(重量:体積)濃度で存在する。これらの賦形剤はいずれも、溶解限度までの濃度で使用できる。かかる溶液は、粘度を有意に増加させることなく、安定性をさらに改善し、凝集を低減し、および/または配合物を等張にするのに有効な量の他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0064】
さらなる態様において、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩またはそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤の濃度は、少なくとも約50mM~約300mM、または少なくとも約100mM~約250mM、または少なくとも約140mM~約200mMである。例示的な態様において、賦形剤の濃度は、少なくとも約50、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、250または300mM以上である。他の例示的な態様は、粘度を有意に増加させることなく、製剤を等張にするのに有効な賦形剤の濃度を包含する。例示的な濃度は、少なくとも約150mM以上の濃度を包含し、さらなる態様においては、量は少なくとも約170mM以上である。
【0065】
別の側面において、本発明は、治療用タンパク質と、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩またはそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤とを含む凍結乾燥タンパク質製剤を提供し、ここで該製剤は、推奨量の希釈剤で再構成すると、対照製剤と比較して低下した粘度を示す。例示的な態様において、治療用タンパク質は、上述のとおり高タンパク質濃度である。いくつかの態様において、賦形剤は、希釈剤で再構成したときに粘度を低下させるのに有効な量で存在する(重量:重量濃度)。かかる製剤は、粘度を有意に増加させることなく、安定性をさらに改善し、凝集を低減し、および/または配合物を等張にするのに有効な量の他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0066】
例示的な態様において、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩またはそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤の濃度は、治療用タンパク質1mgあたり少なくとも約1μg、治療用タンパク質1mgあたり約1.0mgまでである。いくつかの態様において、賦形剤の濃度は、治療用タンパク質1mgあたり少なくとも約1、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500または550μgである。他の例示的な態様において、賦形剤の濃度は、治療用タンパク質1mgあたり約600、650、700、750、800、850、900、950または1000μgまでである。
【0067】
さらに別の態様において、本発明は、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩またはそれらの混合物を、本明細書に記載のいずれかの量または濃度の賦形剤として使用することにより、液体製剤中のタンパク質の自己会合を防止する方法を提供する。安定性および貯蔵寿命が改善された(例えば、凝集が減少した)製剤も提供される。
【0068】
本発明はまた、本発明の液体タンパク質製剤と、その投与のための指示書とを、任意に容器、注射器および/または他の投与装置と一緒に含むキットを提供する。本発明はさらに、本発明の凍結乾燥タンパク質製剤と(任意に容器中)、その再構成および投与のための指示書とを、任意に滅菌希釈剤のバイアル、および任意に注射器または他の投与装置と一緒に含むキットを提供する。例示的な容器は、バイアル、チューブ、ボトル、シングルまたはマルチチャンバーのプレフィルドシリンジ、またはカートリッジを包含するが、ウェル内に置かれたすぐに使用できる凍結乾燥製剤または噴霧乾燥製剤を含む96ウェルプレートも包含する。例示的な投与装置は、針の有無にかかわらず注射器、注入ポンプ、ジェット注射器、ペン装置、経皮注射器、または他の無針注射器を包含する。
【0069】
本発明の別の側面は、以下の工程:(1)第1の濃度のメグルミン、オルニチン、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、グルコン酸、グルコロン酸、アミノカプロン酸、カルニチン、およびコハク酸塩またはそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤を含む第1の溶液の粘度を評価する工程、(2)異なる第2の濃度の賦形剤および治療用タンパク質を含む第2の溶液の粘度を評価する工程、および(3)第1の溶液の粘度が低い場合、第1の濃度の賦形剤は、第2の濃度の賦形剤よりも粘度が低下していると決定する工程、を含む、賦形剤の粘度低下濃度をスクリーニングするための方法を提供することである。粘度は、例えば、m-VROC(商標)テクノロジーレオメーター(RheoSense、サンラモン、カリフォルニア、米国)またはAriesARG2cまたはBrookfieldRV-DVIIIレオメーターを使用して決定することができる。
【0070】
凝集を減少させるまたは安定化する賦形剤の濃度をスクリーニングするために、同様の方法が提供される。
【0071】
安定性は多くの方法で評価でき、温度範囲にわたって(熱安定性)および/または期間(貯蔵寿命)および/またはストレスの多い取り扱い状況(物理的な揺れなど)にさらされた後、構造変化をモニタリングすることを包含する。さまざまな濃度の製剤成分を含む製剤の安定性は、さまざまな方法を使用して測定できる。例えば、タンパク質凝集の量は、濁度の視覚的観察、特定の波長での吸光度の測定、サイズ排除クロマトグラフィー(タンパク質の凝集体が本来の活性状態のタンパク質と比較して異なる画分に溶出する)、HPLC、またはその他のクロマトグラフィー法によって測定できる。構造変化を測定する他の方法を使用することができ、示差走査熱量測定(DSC)、例えば変性の温度を決定するために、またはタンパク質のモル楕円率を測定する円二色性(CD)を使用することを包含する。蛍光もまた組成を分析するために使用することができる。蛍光は、光または熱の形でのエネルギーの放出または吸収、および光の極性特性の変化を包含する。蛍光発光はタンパク質に固有であることもあれば、蛍光レポーター分子に起因することもあり、例えば、部分的に折りたたまれていないタンパク質の疎水性ポケットに結合する。レポーター分子の結合の増加は、タンパク質サンプルの蛍光シグナルを検出することでモニターできる。安定性を測定するための他の手段を使用することができ、当業者によく知られている。
【0072】
実施した実験において、まず、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩のみの粘度低減能を6種類の抗体(mAbA、mAbB、mAbC(IgG2)、mAbD、mAbE、mAbF)と1つの融合タンパク質(FusionA)とを組み合わせて試験する。タンパク質の濃度は、98mg/mlまたは99mg/mlまたは173mg/mlまたは177mg/mlまたは200mg/mlまたは220mg/mlまたは260mg/mlまたは270mg/mlのいずれかに調整されて、高粘度レベルを作りだす。
【0073】
すでに上で述べたとおり、これらの製剤のpH値は、それらの有効性およびそれぞれの薬学的に活性なタンパク質の有用性にとって特に重要である。したがって、調査されるタンパク質製剤のpHは、約4.5~約8.0の間の範囲に調整されることが望ましい。含まれるタンパク質またはペプチドの性質に応じて、pH値は、好ましくは、約4.6~約5.4の間の範囲、または約5.4~約7.9の間の範囲に調整される。pHを調整するために使用される緩衝液は、好ましくは、pH5の酢酸緩衝液(25mM)およびpH7のリン酸緩衝生理食塩水(10mM)である。しかしながら、必要ならば、含まれる薬学的に活性なタンパク質と適合性があり、および生理学的に許容される、別の緩衝液を使用することができる。
【0074】
粘度低減剤の濃度は、50mMから500mMの間の範囲で調整される(例1A~E)。チップベースの(微小電気機械システム)キャピラリーレオメーター、m-VROC(商標)(RheoSence、サンラモン、カリフォルニア)を用いて、力学的粘度を測定した。一般に、絶対粘度(絶対粘度係数)とも呼ばれる力学的粘度は、高濃度溶液内のタンパク質分子の自己会合によって決定できる内部抵抗の尺度である。
【0075】
決定された粘度は、メグルミン、オルニチン、カルニチン、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩のみを、ある特定の濃度で、特定の抗体または融合タンパク質と一緒に適用すると、高濃度タンパク質溶液の粘度の測定可能な有意な低下をもたらすことを明確に示している。
【0076】
しかしながら、特に予期せぬことに、実験は、メグルミン、オルニチン、またはカルニチンと、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸、コハク酸塩から選択される対イオンとを組み合わせて添加すると、有意により大きい粘度の低下につながることを示している。
【0077】
すでに指摘したように、とりわけトルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸およびコハク酸塩から選択される対イオンの1つと一緒のメグルミンの混合物またはオルニチンの混合物を、等モル量で濃縮タンパク質溶液、例えば(mAbAおよびmAbB)の溶液、に添加する場合、特に良好な粘度低下が達成される。
【0078】
さらなる実験において、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、グルコン酸、グルクロン酸、アミノカプロン酸またはコハク酸を負の対イオンとして組み合わせた、カチオン性アミノ糖メグルミンまたはアミノ酸オルニチンまたはカルニチンのいずれかの混合物の、高濃度抗体溶液(mAbAおよびmAbB)の粘度を低下させる可能性を調査した。
【0079】
さらなる実験において、p-トルエンスルホン酸ナトリウムまたはベンゼンスルホン酸を負に帯電した対イオンとして組み合わせた、カチオン性アミノ糖メグルミンまたはアミノ酸オルニチンのいずれかの混合物の、高濃度抗体溶液(mAbAおよびmAbB)の粘度を低下させる可能性を調査した。これらの各研究について、等モル量のこれらの賦形剤の混合物を加えた。ここでは、150mMの濃度で特に良好な結果が見られた(例2A~C)。
【0080】
すべてのモデル抗体は、pH7の10mMリン酸緩衝生理食塩水中、約100mg/ml、一部は約150mg/ml、とりわけ200mg/mlより大きい、および特に220mg/ml(mAbB)および270mg/mL(mAbA)のかなり高い濃度で配合した。チップベースの(微小電気機械システム)キャピラリーレオメーター、m-VROC(商標)(RheoSence、サンラモン、ァリフォルニア)を用いて粘度を測定した。
【0081】
すべての場合において、カチオン性アミノ糖メグルミンまたはアミノ酸オルニチンと、p-トルエンスルホン酸ナトリウムまたはベンゼンスルホン酸のような負に帯電した対イオンとの150mMの濃度の、特定の等モル混合物が、高濃度の抗体溶液で測定された粘度の有意な低下を示す。
【0082】
メグルミンおよびL-オルニチン塩酸塩の粘度低減能を、3つの異なるタイプの抗体(キメラIgG1、ヒトIgG2、ヒト化IgG4)を含む濃縮溶液で試験する。これらの溶液の平均濃度は、99mg/ml、173mg/ml、または177mg/mlであった。
【0083】
実験において、両方の賦形剤が、それぞれ150mMの濃度でタンパク質溶液に添加されたときに、抗体製剤の粘度を有意に低下できることがわかった。
【0084】
また、mAbDがタンパク質として含まれている溶液において、各150mMのp-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の添加は、粘度の有意な低下を引き起こす。
【0085】
さらにまた、mAbD-含有溶液への150mMD-グルコン酸ナトリウム塩の添加は粘度の低減につながる。L-オルニチン塩酸塩またはメグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウムまたはベンゼンスルホン酸との等モルの組み合わせの使用は、高濃度抗体溶液(mAbDおよびmAbE)の粘度を著しく減らした。加えて、実施された実験によって示されるように、本明細書で言及された助剤の他の様々な組み合わせは、高濃度抗体溶液の粘度を低下させる。 したがって、ここで言及されている賦形剤の組み合わせは網羅的ではなく、対応する結果につながる他の可能な組み合わせがある。
【0086】
実験はまた、ここで言及された賦形剤の添加からもたらされるさらなる有利な効果を示した。通常、数週間の貯蔵期間後でも確実な効果を得るために薬剤製剤で使用されているため、適切な貯蔵実験を実施し、タンパク質の安定性を確認した。
【0087】
例えば、モノマーの量で示されるmAbDの安定性は、150mMメグルミン、150mML-オルニチン塩酸塩、または各75mMのL-オルニチン塩酸塩とp-トルエンスルホン酸ナトリウムの等モルの組み合わせの添加により、加速安定性試験中に改善することができる。
【0088】
この点に関して、様々なタンパク質溶液の粘度を低減させる試みは、特定の溶液に含まれるタンパク質に応じて、異なる添加剤が最良の安定化および粘度の低下をもたらすことを示した。
【0089】
これに関連して、タンパク質mAbDに対する最良の製剤は5mMリン酸緩衝液、146mMスクロース、0.05g/Lポリソルベート80、75mML-オルニチン塩酸塩、および75mMp-トルエンスルホン酸ナトリウム-を含み、ミリQ水に溶解して、pH7.2に調整した組成物である。
【0090】
次にMAbEに対する最良の製剤は、20mM酢酸緩衝液、0.1g/Lポリソルベート80、150mMメグルミンを含み、ミリQ水に溶解してpH5.0に調整した組成物、およびMAbFに対する最良の製剤は20mM酢酸緩衝液、205mMスクロース、75mMメグルミン、75mMD-グルコン酸ナトリウム塩を含み、ミリQ水に溶解し、pH5.5に調整した組成物である。
【0091】
好ましい態様:
本発明の特に好ましい態様は、メグルミン、オルニチン、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸、グルコン酸、グルコロン酸、アミノカプロン酸、カルニチン、およびコハク酸塩からなる群から選択される賦形剤を、上述の高濃度タンパク質溶液に、粘度低下のために、単独でまたは組み合わせて添加することにある。特に好ましくは、対イオンとしてベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸ナトリウムのどちらかと組み合わせたメグルミンの添加が、良好な粘度低下につながる。本発明の別の好ましい態様において、対イオンとしてベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸ナトリウムと組み合わせたオルニチンもまた、良好な粘度低下につながる。したがって、濃縮タンパク質溶液の粘度低下は、メグ>メグ-p-トルエンスルホン酸ナトリウム>p-トルエンスルホン酸ナトリウム>ベンゼンスルホン酸>オルニチン>これらの賦形剤の他のすべての組み合わせが好ましい。
【0092】
溶液調製物の配合および凍結乾燥は、上述の方法および以下の例に開示される方法によって実施することができる。
【0093】
本記載は、当業者が本発明を包括的に実施することを可能にする。したがって、さらなるコメントがなくても、当業者は、上の記載を最も広い範囲で利用することができると想定される。
【0094】
本発明は好ましい態様に関連して記載されてきたが、添付される請求項に定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって本発明に様々な修正、追加および変更を行うことができることが理解されるべきである。
【0095】
不明な点がある場合は、引用され、および当業者に知られている出版物および特許文献を参考にすべきであることが理解される。したがって、引用された文書は、本説明の開示内容の一部と見なされ、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】例1A)25mM酢酸緩衝液pH5.0中に配合した高濃度mAbA溶液(260mg/ml)における、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩およびp-トルエンスルホン酸ナトリウムの粘度低下効果
【
図2】例1B)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.0中に配合した高濃度mAbA溶液(260mg/mL)における、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果
【
図3】例1C)PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbB溶液(200mg/mL)における、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩およびp-トルエンスルホン酸ナトリウムの粘度低下効果。
【
図4】例1D)リン酸緩衝液pH7中に260mg/mL(+/-2.7%)で配合した高濃度mAbC溶液に対するメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果
【
図5】例1E)リン酸緩衝液pH7中に200mg/mL(+/-5.0%)で配合した融合Aに対するメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果
【
図6】例2A)PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbA溶液(270mg/ml)における、累積濃度150mMの賦形剤メグルミンとベンゼンスルホン酸(1:1)、メグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)の組み合わせの粘度低下効果
【
図7】例2B)PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbA溶液(270mg/ml)における、累積濃度150mMの賦形剤L-オルニチン塩酸塩とベンゼンスルホン酸(1:1)、L-オルニチン塩酸塩とp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)の組み合わせの粘度低下効果
【
図8】例2C)PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbB溶液(220mg/mL)における、賦形剤L-オルニチン塩酸塩とベンゼンスルホン酸(1:1)、L-オルニチン塩酸塩とp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)、メグルミンとベンゼンスルホン酸(1:1)、メグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)の組み合わせの粘度低下効果
【
図9】例3)リン酸緩衝液pH7.2中に配合した高濃度mAbD溶液(100mg/ml)における、賦形剤メグルミンとグルコン酸(1:1)、メグルミングルクロシン酸(1:1)、オルニチンとグルコン酸(1:1)、オルニチングルコルシン酸(1:1)の組み合わせの粘度低下効果
【
図10】例4に記載されているとおりの、ポリソルベート80を含む酢酸緩衝液(pH5.0)中の各賦形剤について75mMの等モル濃度の2つの賦形剤の組み合わせを含む溶液での170mg/mLの濃度に希釈されたmAbEの濃縮タンパク質溶液の粘度低下効果。
【
図11】例3に記載されているとおりの、スクロースおよびポリソルベート80を含むリン酸緩衝液(pH7,2)中の各賦形剤について75mMの等モル濃度の2つの賦形剤の組み合わせを含む溶液での100mg/mLの濃度に希釈されたmAbDの濃縮タンパク質溶液の粘度低下効果。
【
図12】例4に記載されているとおりの、ポリソルベート80を含む酢酸緩衝液(pH5.0)中の各賦形剤について75mMの等モル濃度の2つの賦形剤の組み合わせを含む溶液での170mg/mLの濃度に希釈されたmAbEの濃縮タンパク質溶液の粘度低下効果
【
図13】例5に記載されているとおりの、スクロースを含む酢酸緩衝溶液(pH5.5)中の各賦形剤について75mMの等モル濃度の2つの賦形剤の組み合わせを含む溶液での約180mg/mlの濃度に希釈されたmAbFの濃縮タンパク質溶液の粘度低下効果
【
図14】さまざまな添加剤の存在下での25°Cおよび60%RHでのmAbDの12週間にわたる安定性試験。(略語:MG=メグルミン;OM=L-オルニチン一塩酸塩;NTS=p-トルエンスルホン酸ナトリウム;w/o=なし、これは賦形剤なしの市場配合物を意味する)
【0097】
よりよく理解するために、および本発明を説明するために、本発明の保護の範囲内にある例を下に提示する。これらの例は、可能なバリアントを説明するのにも役立つ。
【0098】
さらにまた、当業者には言うまでもなく、所与の例および記載の残りの部分の両方において、組成物中に存在する成分量は、全体としての組成に基づいて、常に合計100重量%またはモル%まで添加され、表示されたパーセント範囲からより高い値が発生する場合でも、このパーセンテージを超えることはできない。したがって、別様に明記しない限り、%データは、体積データに示されている比率を除いて、重量%またはモル%である。
【0099】
例
例1: 高濃度タンパク質溶液中のメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果
-例1A) 260mg/mlのタンパク質濃度でのmAbAの粘度は、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩、およびp-トルエンスルホン酸ナトリウムによって有意に低減されるが、50mMのベンゼンスルホン酸では低下しない。
-例1B) 緩衝液およびpHの環境変化のため、mAbAの粘度もまた、賦形剤としてのベンゼンスルホン酸(150mM)によって有意に低下する。
-例1C) 200mg/mlのタンパク質濃度でのmAbBの粘度は、500mMのメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、およびp-トルエンスルホン酸ナトリウムによって有意に低下した粘度を示している。
-例1D) mAbCについて、賦形剤ベンゼンスルホン酸は150mMで明確な粘度低下効果を表す。調査した他の賦形剤についても、低下効果が見られた。
-例1E) 融合タンパク質「融合A」について、すべての賦形剤に対してわずかな粘度低下効果しか見られなかった。ベンゼンスルホン酸だけが50mMの濃度でより強力な低下を示す。
【0100】
例1A) 図1に示される、25mM酢酸緩衝液pH5.0中に配合した高濃度mAbA溶液(260mg/ml)における、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩およびp-トルエンスルホン酸ナトリウムの粘度低下効果。
緩衝液調製:
-25mM酢酸ナトリウム三水和物および25mM氷酸をミリQ水に溶解し、必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHを5.0(±0.1)に調整した。
【0101】
試料調製:
-50mMのメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、およびベンゼンスルホン酸の賦形剤溶液を、25mM酢酸緩衝液pH5.0中に調製した。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHを調整した。
-関連する賦形剤を含む濃縮mAbA溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)で緩衝液と上記の関連する賦形剤溶液とを交換すること、および溶液の量を低下させてタンパク質を濃縮することにより調製した。その後、濃縮タンパク質溶液を、上記の適切な賦形剤溶液を使用して260mg/mlに希釈した。
【0102】
粘度測定:
-粘度測定には、m-VROCTM(商標)Technology(RheoSense、サンラモン、カリフォルニア、米国)を使用した。
測定は、500μlシリンジおよび5000s-1のせん断速度を使用して行った。必要なサンプル量は200μlであり、試料は3回試験した。
【0103】
例1B) 図2に示される、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.0中に配合した高濃度mAbA溶液(260mg/mL)における、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果。
緩衝液調製:
-緩衝液は、ミリQ水に溶解した0.01Mリン酸緩衝液、0.0027M塩化カリウム、および0.137M塩化ナトリウムを含んでいた。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHを7.0(±0.1)に調整した。
【0104】
試料調製:
-150mMのメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の賦形剤溶液をPBSpH7.0中に調製した。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHを調整した。
-関連する賦形剤を含む濃縮mAbA溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)で緩衝液と上記の関連する賦形剤溶液とを交換すること、および溶液の量を低下させてタンパク質を濃縮することにより調製した。その後、濃縮タンパク質溶液を、上記の適切な賦形剤溶液を使用して260mg/mlに希釈した。
粘度測定は、例1A)に記載されているとおりに行った。
【0105】
例1C) 図3に示される、PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbB溶液(200mg/mL)における、メグルミン、L-オルニチン塩酸塩およびp-トルエンスルホン酸ナトリウムの粘度低下効果。
緩衝液調製:
-緩衝液の調製は、例1B)に記載されているとおりに行った。
試料調製:
-500mMのメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の賦形剤溶液をPBSpH7.0中に調製した。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHを調整した。
-関連する賦形剤を含む濃縮mAbB溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)で緩衝液と上記の関連する賦形剤溶液とを交換すること、および溶液の量を低下させてタンパク質を濃縮することにより調製した。その後、濃縮タンパク質溶液を、上記の適切な賦形剤溶液を使用して200mg/mlに希釈した。
粘度測定は、例1A)に記載されているとおりに行った。
【0106】
例1D) 図4に示される、リン酸緩衝液pH7中に260mg/mL(+/-2.7%)で配合した高濃度mAbC溶液に対するメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果。
緩衝液調製:
-100mMリン酸ナトリウム、2.7mM塩化カリウムおよび137mM塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液を調製した。
試料調製:
-150mMのメグルミン、L-オルニチン、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の賦形剤溶液をリン酸緩衝液中に調製した。pH値を確認し、必要ならば、塩酸または水酸化ナトリウムを使用して7.0(±0.1)に調整した。
-71mg/mlのmAbC(約147kDa)のタンパク質溶液を洗浄し、150mMの対応する賦形剤を含むリン酸緩衝液pH7で濃縮した。
-洗浄およびmAbCの260mg/mlまでの濃縮は、30kDaMWCOを備えた超遠心フィルターユニットを使用して行った。
mVROC法は、例1A)に記載されているとおりに行った。
【0107】
例1E) 図5に示される、リン酸緩衝液pH7中に200mg/mL(+/-5.0%)で配合した融合Aに対するメグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の粘度低下効果。
緩衝液調製:
-100mMリン酸ナトリウム、2.7mM塩化カリウムおよび137mM塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液を調製した。
試料調製:
-50mMのメグルミン、L-オルニチン、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸の賦形剤溶液をリン酸緩衝液中に調製した。pH値を確認し、必要ならば、塩酸または水酸化ナトリウムを使用して7.0(±0.1)に調整した。
-50mg/mlの融合A(約51kDa)のタンパク質溶液を洗浄し、300mMの対応する賦形剤を含むリン酸緩衝液pH7で濃縮した。
-洗浄およびmAbDの200mg/mlまでの濃縮は、2,000×gで30kDaMWCOを備えた超遠心フィルターユニットを使用して行った。
mVROC法は、例1A)に記載されているとおりに行った。
【0108】
例2 高濃度タンパク質溶液中の2つの賦形剤(メグルミン、L-オルニチン塩酸塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウムおよびベンゼンスルホン酸)の組み合わせの粘度低下効果
-例2A)は、メグルミンとベンゼンスルホン酸またはメグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウム(それぞれがPBSpH7中に75mMで存在する)の組み合わせを使用した、270mg/ml(+/-2.6%)の濃度のmAbAの粘度低下を示す。
-例2B)は、L-オルニチン塩酸塩とベンゼンスルホン酸(両方とも緩衝液中に75mMで存在する)の賦形剤の組み合わせを使用した、mAbAに対するより強力な粘度低下効果を表す。L-オルニチン塩酸塩とp-トルエンスルホン酸ナトリウムの組み合わせも低下効果を有する。
-例2C)は、調査された賦形剤のすべての組み合わせについて、pH7でPBS緩衝液中、220mg/mlの濃度のmAbBの粘度の明らかな低下を示す。最も大きな影響は、メグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウム(両方とも75mM)の組み合わせにより引き起こされ、PBS中、純粋なmAbBの粘度が125mPa*sから37.7mPa*sに低下した。
【0109】
例2A) 図6に示される、PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbA溶液(270mg/ml)における、累積濃度150mMの賦形剤メグルミンとベンゼンスルホン酸(1:1)、メグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)の組み合わせの粘度低下効果。
緩衝液調製:
-緩衝液の調製は、例1B)に記載されているとおりに行った。
試料調製:
-75mMメグルミンと75mMベンゼンスルホン酸または75mMp-トルエンスルホン酸ナトリウムとを含む賦形剤溶液をPBSpH7.0中に調製した。必要ならば、塩酸または水酸化ナトリウムを使用してpHを調整した。
-関連する賦形剤の組み合わせを含む濃縮mAbA溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)で緩衝液と上記の賦形剤の組み合わせとを交換すること、および溶液の量を低下させてタンパク質を濃縮することにより調製した。その後、濃縮タンパク質溶液を、上記の適切な賦形剤の組み合わせ溶液を使用して270mg/mlに希釈した。
粘度測定は例1A)に記載されているとおりに行った。
【0110】
例2B) 図7に示される、PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbA溶液(270mg/ml)における、累積濃度150mM賦形剤L-オルニチン塩酸塩とベンゼンスルホン酸(1:1)、L-オルニチン塩酸塩とp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)の組み合わせの粘度低下効果。
緩衝液調製:
-緩衝液の調製は、例1B)に記載されているとおりに行った。
試料調製:
-75mML-オルニチン塩酸塩と75mMベンゼンスルホン酸または75mMp-トルエンスルホン酸ナトリウムとを含む賦形剤溶液をPBSpH7.0中に調製した。必要ならば、塩酸または水酸化ナトリウムを使用してpHを調整した。
-残りの試料調製備は例2A)に記載されているとおりに行った。
粘度測定は例1A)に記載されているとおりに行った。
【0111】
例2C) 図8~10に示される、PBSpH7.0中に配合した高濃度mAbB溶液(220mg/mL)における、賦形剤L-オルニチン塩酸塩とベンゼンスルホン酸(1:1)、L-オルニチン塩酸塩とp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)、メグルミンとベンゼンスルホン酸(1:1)、メグルミンとp-トルエンスルホン酸ナトリウム(1:1)の組み合わせの粘度低下効果。
緩衝液調製:
-緩衝液の調製は、例1B)に記載されているとおりに行った。
試料調製:
-75mML-オルニチン塩酸塩と75mMベンゼンスルホン酸、75mML-オルニチン塩酸塩と75mMp-トルエンスルホン酸ナトリウム、75mMメグルミンと75mMベンゼンスルホン酸、75mMメグルミンと75mMp-トルエンスルホン酸ナトリウムの賦形剤溶液をPBSpH7.0中に調製した。必要ならば、塩酸または水酸化ナトリウムを使用してpHを調整した。
-関連する賦形剤の組み合わせを含む濃縮mAbB溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)で緩衝液と上記の賦形剤の組み合わせとを交換すること、および溶液の量を低下させてタンパク質を濃縮することにより調製した。その後、濃縮タンパク質溶液を、上記の適切な賦形剤の組み合わせ溶液を使用して220mg/mLに希釈した。
粘度測定は例1A)に記載されているとおりに行った。
【0112】
例3
緩衝液調製:
緩衝液はミリQ水に溶解した5mMリン酸緩衝液、146mMスクロース、0.05g/Lポリソルベート80を含む。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHをpH7.2(±0.05)に調整する。
試料調製:
賦形剤溶液は、上述したリン酸緩衝液中で150mMの濃度で調製する。
2つの賦形剤の組み合わせは、リン酸緩衝液中に各賦形剤に対して75mMの等モル濃度で調製する。
濃縮MAbD溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)を使用して、それぞれの賦形剤溶液とのバッファー交換によって調製する。
濃縮タンパク質溶液は、上記の対応する賦形剤溶液で100mg/mLに希釈する。
粘度測定は例1A)に記載されているとおりに行った。
【0113】
例4
緩衝液調製:
20mM酢酸緩衝液、0.1g/Lポリソルベート80を含む緩衝溶液は、ミリQ水に溶解して調製する。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHをpH5.0(±0.05)に調整する。
試料調製:
賦形剤溶液は、上述した酢酸緩衝液中、150mMの濃度で調製する。
2つの賦形剤の組み合わせは、酢酸緩衝液中に各賦形剤に対して75mMの等モル濃度で調製する。
濃縮MAbE溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)を使用して、それぞれの賦形剤溶液とのバッファー交換によって調製する。
濃縮タンパク質溶液は、上述した対応する賦形剤溶液で170mg/mLの濃度に希釈する。
粘度測定は例1A)に記載されているとおりに行った。
【0114】
例5
緩衝液調製:
緩衝液はミリQ水に溶解した20mM酢酸緩衝液、205mMスクロースを含んでいた。必要ならば、HClまたはNaOHを使用してpHをpH5.5(±0.05)に調整した。
試料調製:
賦形剤溶液は、上述した酢酸緩衝液中、150mMの濃度で調製する。
2つの賦形剤の組み合わせは、リン酸緩衝液中に各賦形剤に対して75mMの等モル濃度で調製した。
濃縮MAbF溶液は、超遠心フィルター(30kDaMWCO)を使用してそれぞれの賦形剤溶液とのバッファー交換によって調製する。
濃縮タンパク質溶液は、上記の対応する賦形剤溶液で180mg/mLに希釈する。
粘度測定は例1A)に記載されているとおりに行った。