(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-03
(45)【発行日】2024-04-11
(54)【発明の名称】樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 10/00 20060101AFI20240404BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20240404BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20240404BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
D06M10/00 J
B60R21/235
D06M15/564
D06M15/693
(21)【出願番号】P 2021069850
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】芦田 諒
(72)【発明者】
【氏名】生方 茂
(72)【発明者】
【氏名】平林 佐太央
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-338092(JP,A)
【文献】特許第3191449(JP,B2)
【文献】特表平10-508551(JP,A)
【文献】特開2015-085271(JP,A)
【文献】特開2018-003194(JP,A)
【文献】特開2021-181522(JP,A)
【文献】特開2021-181641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
D03D 1/00 - 27/18
D06M 10/00 - 16/00
D06M 19/00 - 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法であって、
エアーバッグ用基布の片面もしくは両面にコーティング用樹脂を塗布する工程と、
前記コーティング用樹脂が塗布された前記エアーバッグ用基布を加熱成形する工程
を備え、
さらに前記塗布工程の前か前記加熱成形工程の後、もしくはその両方で、総照射線量が30~500kGyとなるように電子線を照射する工程
を行うことを特徴とする樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法。
【請求項2】
前記コーティング用樹脂として熱硬化性液状シリコーンゴム又は熱可塑性ウレタン樹脂分散体のいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載の樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法。
【請求項3】
前記エアーバッグ用基布としてポリアミド繊維又は、ポリエステル繊維から選ばれる繊維で織られた基布を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法により製造された樹脂コーティングエアーバッグ用基布を用いることを特徴とするエアーバッグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法、及びこれを用いたエアーバッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維からなる基布の表面に熱硬化性液状シリコーンゴムや熱可塑性ウレタン樹脂分散体等をコーティングし、加熱成形することでエアーバッグ用基布上に樹脂被膜を形成させた樹脂コーティングエアーバッグ用基布が提案されている。樹脂コーティングをしたエアーバッグ用基布は低燃焼速度性に優れる。また、樹脂コーティングエアーバッグ用基布から製造したカーテンエアーバッグは、エアーバッグ膨張時にインフレーターガスの洩れを抑制することが可能である。また、内圧保持性に優れるため、自動車等のエアーバッグとして好適に用いられている。
【0003】
このような樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法としては、以下のようなものが知られている。例えば、繊維表面に、難燃化剤としてM、D、Q単位からなり、D単位にのみ架橋性官能基を含有するシリコーンレジンを含有する加熱硬化性液状シリコーンゴム組成物を被覆する方法がある(特許文献1)。これにより、難燃性に優れ、且つシリコーンゴム層の機械的強度に優れる基布が得られる。また、繊維表面に、補強性シリカ微粉末と難燃化剤として水酸化アルミニウムを含有する加熱硬化性液状シリコーンゴム組成物を被覆する方法もある(特許文献2)。こうすることで、難燃性に優れ、また表面粘着性の少ない基布が得られる。他にも、繊維表面に、高強度且つ低モジュラスのウレタン樹脂と、エージングに対して安定性の高いポリカーボネートを主骨格に含むウレタン樹脂、及び難燃化剤等を含む熱可塑性ウレタン樹脂分散体を塗布する方法もある(特許文献3)。これによって、難燃性に優れ、且つ内圧保持性に優れた基布が得られる。
【0004】
しかしながら、従来の樹脂コーティングエアーバッグ用基布は、FMVSS-302に規定される燃焼試験に合格するために多量の難燃化剤を配合する必要がある。そのため、エアーバッグ用基布への樹脂コーティング層の接着性が低い、コストが高い、作業性が悪い、保存安定性が低い、環境負荷が大きい等の問題があった。
【0005】
また、液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、電子線で架橋、硬化して得られる接着性及び耐ブロッキング性に優れるシリコーンコーティングエアーバッグ用基布の製造方法(特許文献4)が開示されている。しかし、難燃性に関する結果の記述はなく、エアーバッグ用基布として必要とされる難燃性を満足するものではないと推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/168315号
【文献】特開2010-053493号公報
【文献】特開2010-248678号公報
【文献】特開2015-085271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、繊維等からなるエアーバッグ用基布への樹脂コーティング層の接着性が高く、且つ難燃性に優れる樹脂コーティングエアーバッグ用基布の簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法であって、
エアーバッグ用基布の片面もしくは両面にコーティング用樹脂を塗布する工程と、
前記コーティング用樹脂が塗布された前記エアーバッグ用基布を加熱成形する工程
を備え、
さらに前記塗布工程の前か前記加熱成形工程の後、もしくはその両方で、総照射線量が30~500kGyとなるように電子線を照射する工程
を行う樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法を提供する。
【0009】
このような樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法であれば、繊維等からなるエアーバッグ用基布への樹脂コーティング層の接着性が高く、且つ難燃性に優れる樹脂コーティングエアーバッグ用基布を簡便に製造することができる。
【0010】
このとき、前記コーティング用樹脂として熱硬化性液状シリコーンゴム又は熱可塑性ウレタン樹脂分散体のいずれかを用いることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法には、このようなコーティング用樹脂が好ましい。
【0012】
このとき、前記エアーバッグ用基布としてポリアミド繊維又は、ポリエステル繊維から選ばれる繊維で織られた基布を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法には、このようなエアーバッグ用基布が好ましい。
【0014】
また、本発明では、上記の方法により製造された樹脂コーティングエアーバッグ用基布を用いるエアーバッグの製造方法を提供する。
【0015】
このようなエアーバッグの製造方法であれば、上記のようにして製造した樹脂コーティングエアーバッグ用基布を用いることで、低燃焼速度性に優れており、内圧保持性にも優れるエアーバッグを効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、エアーバッグ用基布の片面もしくは両面にコーティング用樹脂を塗布する工程と、前記コーティング用樹脂が塗布された前記エアーバッグ用基布を加熱成形する工程を備え、前記塗布工程の前か前記加熱成形工程の後、もしくはその両方で、総照射線量が30~500kGyとなるように電子線を照射することで、エアーバッグ用基布への接着性に優れる樹脂コーティング層を有し、且つ難燃性に優れる樹脂コーティングエアーバッグ用基布が簡便に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、繊維等からなるエアーバッグ用基布への樹脂コーティング層の接着性が高く、且つ難燃性に優れる樹脂コーティングエアーバッグ用基布の簡便な製造方法の開発が求められていた。
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するために、種々検討した結果、エアーバッグ用基布に照射線量30~500kGyの電子線を照射後にコーティング用樹脂を塗布し、加熱成形をするか、エアーバッグ用基布にコーティング用樹脂を塗布し、加熱成形後に、照射線量30~500kGyの電子線を照射することで製造された樹脂コーティングエアーバッグ用基布は、エアーバッグ用基布への樹脂層の接着性及び、FMVSS-302に規定される低燃焼速度性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。なお、コーティング用樹脂を塗布する前と加熱成形後の両方で総照射線量が30~500kGyとなる電子線を照射してもよい。
【0019】
即ち、本発明は、樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法であって、
エアーバッグ用基布の片面もしくは両面にコーティング用樹脂を塗布する工程と、
前記コーティング用樹脂が塗布された前記エアーバッグ用基布を加熱成形する工程
を備え、
さらに前記塗布工程の前か前記加熱成形工程の後、もしくはその両方で、総照射線量が30~500kGyとなるように電子線を照射する工程
を行う樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法である。
【0020】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。なお、本明細書中において、粘度は、25℃において、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で回転粘度計により測定した値である。また、重合度は、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度(重量平均分子量)として求めた値である。
【0021】
まず、本発明の樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法において使用するコーティング用樹脂と、エアーバッグ用基布について説明する。
【0022】
<コーティング用樹脂>
本発明に使用するコーティング用樹脂は、エアーバッグ用の基布に塗布できるものであれば特に限定されないが、室温(25℃)にて液状である熱硬化性樹脂又はゴム、もしくは融点が240℃以下の熱可塑性樹脂を水、アルコール等の溶媒に溶解させた分散体であることが好ましい。粘度はJIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度が、100~500,000mPa・sであり、好ましくは300~400,000mPa・sであり、より好ましくは500~300,000mPa・sである。この粘度範囲内であれば、エアーバッグ用基布にコーティング用樹脂を塗布する際に、塗布むらや硬化後の基布への接着力不足などが生じにくいため、好適に用いることができる。
【0023】
上記コーティング用樹脂は100~240℃、好ましくは120~200℃の加熱で0.1~30分、好ましくは0.2~10分で成形できることが望ましい。
【0024】
本発明に使用するコーティング用樹脂は、いかなる樹脂でも使用することができるが、上記の条件を満すものが好ましく、熱硬化性液状シリコーンゴム、または熱可塑性ウレタン樹脂分散体がより好ましく、特に熱硬化性液状シリコーンゴムであることが好ましい。熱可塑性ウレタン樹脂分散体としては、例えば特許文献3に記載のものを用いることができる。以下、熱硬化性液状シリコーンゴムについて詳述する。
【0025】
<熱硬化性液状シリコーンゴム>
本発明に使用する熱硬化性液状シリコーンゴムは上記の条件を満たすものが好ましく、下記の(A)~(E)成分を含む付加硬化型液状シリコーンゴムであることがより望ましい。このような成分を含むシリコーンゴム組成物からシリコーンゴム(硬化物)を得ることができる。
【0026】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有し、重合度が100~2,000のオルガノポリシロキサンである。これは25℃で液状のオルガノポリシロキサンであり、液状シリコーンゴムのベースポリマー(主剤)である。(A)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状等が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造が直鎖状又は分岐鎖状である場合、該オルガノポリシロキサンの分子中においてアルケニル基が結合するケイ素原子の位置は、分子鎖末端(即ち、トリオルガノシロキシ基)及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端に位置する2官能性のジオルガノシロキサン単位又は3官能性のモノオルガノシルセスキオキサン単位)のどちらか一方でも両方でもよい。(A)成分として、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0028】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、通常、炭素数2~8、好ましくは炭素数2~4のものが挙げられる。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基が好ましい。
【0029】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した1価の有機基全体に対して、0.001~10モル%であることが好ましく、特に0.01~5モル%程度であることが好ましい。
【0030】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する1価の有機基の例としては、互いに同一又は異種の通常、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~10の1価炭化水素基が挙げられる。1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。
【0031】
(A)成分の重合度は、例えば100~2,000であり、150~1,500が好ましい。重合度が100以上であれば、得られるシリコーンゴムの機械的特性が悪くならず、一方、重合度が2,000以下であれば、得られるシリコーンゴム組成物の粘度が高くならず、コーティング作業性が悪化しない。
【0032】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0033】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、主に(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤(硬化剤)として作用するものである。(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(B)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状(樹脂状)構造等各種のものが挙げられるが、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を有する必要があり、通常2~300個、好ましくは3~200個、より好ましくは4~100個のヒドロシリル基を有することが好ましく、25℃で液状のものが好適に使用される。このようなヒドロシリル基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。
【0034】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
【化1】
【0035】
式(1)中、R1は互いに同一又は異種の、好ましくは炭素数1~10の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。なお、(B)成分は、前記(A)成分とヒドロシリル化反応により付加硬化する成分であることから、R1は、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を含む炭化水素基は含まれない。また、aは0.7~2.1、bは0.001~1.0で、かつa+bが0.8~3.0を満足する正数であり、好ましくは、aは1.0~2.0、bは0.01~1.0で、かつa+bが1.5~2.5を満足する正数である。
【0036】
このような(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサンや、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたもの、式:R2
3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R2
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R2
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R2HSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R2SiO3/2で示されるシロキサン単位若しくは式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。上記式中のR2はアルケニル基以外の1価炭化水素基であり、前記R1と同様の基が例示される。
【0037】
(B)成分の配合量は、(B)成分中のヒドロシリル基が、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル(又は個、以下同様)当たり、1~10モルとなる量であり、好ましくは1.2~9モル、より好ましくは1.5~8モルとなる量である。(A)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、(B)成分中に含まれるヒドロシリル基が1モル以上であれば、付加硬化型液状シリコーンゴムが十分に硬化し、一方、10モル以下であれば、得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に悪化しない。
【0038】
[(C)成分]
(C)成分のシリカ粉末は、補強性充填剤として作用する微粉末である。即ち、付加硬化型液状シリコーンゴムから得られるシリコーンゴム硬化物に強度を付与するもので、シリカ微粉末を補強性充填剤として使用することにより、必要な強度を満足するコーティング膜を形成することが可能となる。(C)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。(C)成分のシリカ粉末は、比表面積(BET法)が50m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは50~400m2/g、さらに好ましくは100~300m2/gである。比表面積が50m2/g以上であれば、満足するような強度特性を付与することができる。
【0039】
このようなシリカ粉末としては、比表面積が例えば上記範囲内であり、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられる。
【0040】
上記シリカ粉末は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の(通常、加水分解性の)有機ケイ素化合物等の表面処理剤で、表面が疎水化処理された表面処理シリカ微粉末を用いることができる。その場合、これらの表面処理シリカ微粉末は、予め粉体の状態で、表面処理剤により、直接表面疎水化処理されたものを用いてもよいし、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)との混練時に表面処理剤を添加して、表面疎水化処理したものを用いてもよい。
【0041】
(C)成分の通常の処理法としては、公知の技術により表面処理することができ、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に未処理のシリカ微粉末と表面処理剤とを入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、室温(25℃)あるいは熱処理(加熱)下にて混合処理することができる。場合により、水又は触媒(加水分解促進剤等)を使用して表面処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより、表面処理シリカ微粉末を製造し得る。表面処理剤の配合量は、その表面処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよく、通常、未処理のシリカ微粉末100質量部に対し、1~50質量部が好ましく、より好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部とすることができる。
【0042】
表面処理剤として、具体的には、へキサメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール及びヒドロキシペンタメチルジシロキサン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。また、これらで表面疎水化処理した表面処理シリカ微粉末を用いることもできる。表面処理剤としては、シラザン類又はクロロシラン類が好ましい。
【0043】
(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは1~50質量部であり、10~30質量部がより好ましい。配合量が1質量部以上であれば、十分な強度が得られ、配合量が50質量部以下であれば、シリコーンゴム組成物の粘度が高くならず、流動性が低下してコーティング作業が悪化することもない。
【0044】
[(D)成分]
(D)成分のヒドロシリル化反応触媒は、主に(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基と(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進するものである。(D)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このヒドロシリル化反応触媒は、特に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸;アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸と、オレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等が挙げられる。中でも、白金族金属系硬化触媒が好ましい。
【0045】
(D)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよいが、(A)~(C)成分の合計量に対して、触媒金属元素の質量換算で、好ましくは1~500ppm、より好ましくは10~100ppmである。この量が1ppm以上であれば付加反応が著しく遅くなったり、シリコーンゴム組成物が硬化しなかったりすることがなく、500ppm以下であれば、シリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に低下することがない。
【0046】
[(E)成分]
(E)成分は、接着性付与官能基を有する有機ケイ素化合物であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。接着性付与官能基としては、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基(アルコキシシリル基)、ヒドロシリル基、イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられ、シリコーンゴム組成物のエアーバッグ用基布に対する接着性を発現・向上させるために添加するものである。有機ケイ素化合物としては、このような接着性付与官能基を有するものであれば、いかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、1分子中にエポキシ基とケイ素原子に結合したアルコキシ基とをそれぞれ1個以上有する有機ケイ素化合物であることが好ましく、接着発現性の観点からは、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルコキシ基(例えば、トリアルコキシシリル基、オルガノジアルコキシシリル基等)とを有する有機ケイ素化合物、例えば、オルガノシラン、又はケイ素原子数が2~100個、好ましくは4~50個程度の環状若しくは直鎖状のオルガノシロキサンであって、少なくとも1個のエポキシ基と少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルコキシ基とを有するものがより好ましい。
【0047】
エポキシ基は、例えば、グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基;2,3-エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基等のエポキシ含有シクロヘキシルアルキル基等の形で、ケイ素原子に結合していることが好ましい。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基は、ケイ素原子と結合して、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基等を形成していることが好ましい。
【0048】
また、(E)成分は、1分子中にエポキシ基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基以外の官能性基として、例えば、ビニル基等のアルケニル基、アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びヒドロシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能性基を有してもよい。
【0049】
(E)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジエトキシシラン、(2,3-エポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、(2,3-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジメトキシシラン、(2,3-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤(即ち、エポキシ官能性基含有オルガノアルコキシシラン);ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルエトキシシラン等のイソシアネート基含有のシランカップリング剤;トリアリルイソシアヌレートのメトキシシリル変性体等のシランカップリング剤;下記の化学式で示される環状オルガノポリシロキサン、直鎖状オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、これらの2種以上の混合物、あるいはこれらの1種若しくは2種以上の部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0050】
【化2】
(式中、hは1~10の整数、kは0~40の整数、好ましくは0~20の整数、pは1~40の整数、好ましくは1~20の整数、qは1~10の整数である。R
6の少なくとも一つは-CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3である。)
【0051】
(E)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.25~5質量部である。配合量が0.1質量部以上であれば、得られるシリコーンゴム組成物が充分な接着力を有する。配合量が10質量部以下であれば、シリコーンゴム組成物のチキソ性が高くなりすぎず、流動性が低下せず、コーティング作業性が悪化しない。
【0052】
また、(E)成分がアルケニル基及び/又はヒドロシリル基を含む場合、シリコーンゴム組成物中の(A)成分及び(E)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対する(B)成分及び(E)成分中に含まれるヒドロシリル基の合計量は、1~10モルが好ましく、より好ましくは1.2~9モル、さらに好ましくは1.5~8モルである。シリコーンゴム組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、ヒドロシリル基が1モル以上であれば、シリコーンゴム組成物は十分に硬化し、十分な接着力を有する。一方、これが10モル以下であれば、得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に悪化することがない。
【0053】
[その他の成分]
本発明に使用する付加硬化型液状シリコーンゴムには、前記(A)~(E)成分以外にも、本発明の目的に応じて、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
[(F)成分]
(F)成分の縮合触媒は、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれるものであり、接着促進のために、(E)成分中の接着性付与官能基の縮合助触媒として作用するものである。(F)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(F)成分の具体例としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド等の有機チタン酸エステル;チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトネート等の有機チタンキレート化合物等のチタン系縮合助触媒(有機チタニウム化合物);ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等の有機ジルコニウムエステル、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノ(ブトキシアセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)等の有機ジルコニウムキレート化合物等のジルコニウム系縮合助触媒(有機ジルコニウム化合物);アルミニウムセカンダリーブトキシド等の有機アルミニウム酸エステル、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウムキレート化合物等のアルミニウム系縮合助触媒(有機アルミニウム化合物)が挙げられる。
【0055】
(F)成分は、必要に応じて配合される任意成分であり、配合する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常5質量部以下(例えば0.01~5質量部)程度が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.2~3質量部がさらに好ましい。配合量が0.01質量部以上であれば、得られるシリコーンゴム硬化物は高温高湿下での接着耐久性が低下しにくく、配合量が5質量部以下であれば、得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に低下することがない。
【0056】
[(G)成分]
(G)成分は、25℃でパウダー状の三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジンであり、好適には、3官能性のR3SiO3/2単位(R3は互いに同一又は異種の炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8の1価炭化水素基)及び4官能性のSiO4/2単位から選ばれる少なくとも1種の分岐鎖状シロキサン単位から基本的に構成され、必要に応じて、単官能性のR3
3SiO1/2単位及び/又は2官能性のR3
2SiO2/2単位を任意に含有してもよい、三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(なお、ここでのオルガノ基はアルケニル基も包含し得る。)であり、難燃性向上剤として作用する。但し、このオルガノポリシロキサンレジンはヒドロシリル基を含まない。更に、このオルガノポリシロキサンレジンは、25℃でパウダー状である点において、25℃で液状である(A)成分とは明確に差別化されるものである。
【0057】
この同一又は異種の炭素数1~10の1価炭化水素基;R3としては、上記(A)成分中において例示したアルケニル基及び1価の有機基(非置換もしくは置換の1価炭化水素基)と同様のものが挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、ビニル基であることが好ましい。
【0058】
(G)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した1価の置換基全体に対して0~10モル%であることが好ましく、特に2~8モル%程度であることが好ましい。
【0059】
ここで、(G)成分のオルガノポリシロキサンレジンには、上述したようにR3
3SiO1/2単位及び/又はR3
2SiO2/2単位を任意に含有してもよいが、その合計含有量は、(G)成分のオルガノポリシロキサンレジン中0~70モル%が好ましく、特に0~50モル%とすることが好ましい。
【0060】
また、(G)成分のオルガノポリシロキサンレジンのトルエンを展開溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量は、2,000~50,000が好ましく、特に、4,000~20,000であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、充分な難燃性改善効果が得られ、コーティング作業性が良好なシリコーンゴム組成物の粘度となる。
【0061】
(G)成分のオルガノポリシロキサンレジンの具体例としては、式:R4
3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R4
2R5SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R4
2SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R4
3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R4
2R5SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R4
2R5SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R4
2SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R4R5SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R4SiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:R5SiO3/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0062】
上記式中のR4はアルケニル基以外の同一又は異種の1価炭化水素基であり、その例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられるが、特にメチル基が好ましい。また、上記式中のR5はアルケニル基であり、その例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基などが挙げられるが、特にビニル基が特に好ましい。
【0063】
本発明に用いられる(G)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して好ましくは0~100質量部であり、1~90質量部であることがより好ましく、3~80質量部であることが特に好ましい。上記範囲の配合量だと十分な難燃性改善効果が得られ、費用対効果に優れる。
【0064】
(G)成分の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0065】
・反応制御剤
反応制御剤は、(D)成分のヒドロシリル化反応触媒に対して、硬化抑制効果を有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを用いることができる。その具体例としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が挙げられる。
【0066】
反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その反応制御剤の化学構造によって異なるため、反応制御剤の配合量は、使用する反応制御剤の各々について、最適な量に調整することが好ましい。最適な量の反応制御剤を添加することにより、シリコーンゴム組成物は室温での長期貯蔵安定性及び硬化性に優れたものとなる。
【0067】
・非補強性充填剤
非補強性充填剤として、例えば、結晶性シリカ(例えば、BET法比表面積が50m2/g未満のシリカ粉)、有機樹脂製中空フィラー、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(いわゆるシリコーンレジンパウダー)、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、カーボンブラック、ケイ藻土、タルク、カオリナイト、ガラス繊維等の充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。
【0068】
・その他の成分
その他にも、例えば、1分子中に1個のケイ素原子に結合した水素原子を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、1分子中に1個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子もケイ素原子に結合したアルケニル基も他の官能性基も含有しない無官能性のオルガノポリシロキサン(いわゆるジメチルシリコーンオイル)、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チキソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤等を配合することができる。1分子中に1個のケイ素原子に結合した水素原子を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、1分子中に1個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサンを含む場合、シリコーンゴム組成物全体として、シリコーンゴム組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対する、SiH基の合計量は、1~10モルが好ましく、より好ましくは1.2~9モル、さらに好ましくは1.5~8モルである。
【0069】
<エアーバッグ用基布>
本発明において、使用するエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)としては特に限定されず、公知のものが用いられ、その具体例としては、6,6-ナイロン、6-ナイロン、アラミド繊維などの各種ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織生地が挙げられる。特に、ポリアミド繊維又は、ポリエステル繊維から選ばれる繊維で織られた基布を用いることが好ましい。
【0070】
次に、本発明の樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法と、エアーバッグの製造方法について説明する。
【0071】
<樹脂コーティングエアーバッグ用基布の製造方法>
本発明では、エアーバッグ用基布の片面もしくは両面にコーティング用樹脂を塗布する工程(塗布工程)と、前記コーティング用樹脂が塗布された前記エアーバッグ用基布を加熱成形する工程(加熱成形工程)を備え、さらに前記塗布工程の前か前記加熱成形工程の後、もしくはその両方で、総照射線量が30~500kGyとなるように電子線を照射する工程(照射工程)を行うことで樹脂コーティングエアーバッグ用基布を製造する。
【0072】
ここで、上記コーティング用樹脂を、エアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)の少なくとも一方の表面、特には一方の表面に塗布し、加熱成形した後、30~500kGyの電子線を照射することが好ましい。また、エアーバッグ用基布の少なくとも一方の表面、特には一方の表面に30~500kGyの電子線を照射し、その後、上記のコーティング用樹脂を少なくとも一方の表面、特には一方の表面に塗布し、加熱成形することが好ましい。
【0073】
ここで、コーティング用樹脂をエアーバッグ用基布にコーティングする方法としては、常法を採用することができるが、ナイフコーターによるコーティングが好ましい。コーティング層の厚さ(又は表面塗布量)は特に限定されず、好ましくは5~150g/m2、より好ましくは8~120g/m2、さらに好ましくは10~100g/m2とすることができる。
【0074】
<コーティング用樹脂の加熱成形方法>
コーティング用樹脂の加熱成形方法は、公知の加熱及び成形条件下で公知の成形方法により行うことができる。例えば、熱硬化性液状シリコーンゴムを用いる場合には、加熱硬化を伴って成形することができ、熱可塑性ウレタン樹脂分散体を用いる場合には、加熱しながら賦形して成形することができる。具体的には、例えば、加熱炉で100~240℃、好ましくは120~200℃において、0.1~30分、好ましくは0.2~10分加熱することにより、コーティング用樹脂を成形することができる。
【0075】
<電子線照射方法>
本発明においては、エアーバッグ用基布及び/又は樹脂コーティングエアーバッグ用基布へ、総照射線量30~500kGy、好ましくは50~300kGyの電子線を照射することを特徴とする。この時加速電圧は例えば50~500kV、好ましくは100~300kVである。電子線照射手順として、例えばEC-250型の電子線照射装置(株式会社アイ・エレクトロンビーム製)で電子線照射を実施することができる。エアーバッグ用基布及び/又は樹脂コーティングエアーバッグ用基布へ不活性化されたチャンバ中(<1000ppm酸素)で、電子線照射を実施し、総照射線量30~500kGy、特に総照射線量50~300kGyの電子線を与えることで難燃性を向上している。総照射線量が30kGy未満では、難燃性改善効果が不十分であり、500kGyより大きい総照射線量では、基布や樹脂コーティング層へのダメージが大きく、得られる樹脂コーティングエアーバッグ用基布の機械的強度の低下が起きることがある。また、電子線照射は、バッチ式よりも連続式が好ましい。バッチ式は照射対象物をチャンバの中に入れるときに一時的にチャンバ内酸素濃度が上昇してしまい、電子線による難燃性改善効果が低下する可能性があるためである。
【0076】
<照射線量の算出方法>
電子線の照射線量は下記(2)式より算出することができる。(D:照射線量(kGy)、K:装置毎の固定定数、I:全電子電流(mA)、V:搬送速度(m/min))
D(kGy)=K×I(mA)/V(m/min) (2)
総照射線量はすべての照射工程について上記(2)式により得られたDの総和である。例えば、照射工程が塗布工程の前と加熱成形工程の後の両方で行われる場合は、総照射線量は2つの照射工程について求めたD値の合計となる。なお、一つの照射工程における照射線量も30~500kGyの範囲内である。
【0077】
<エアーバッグの製造方法>
このようにして製造された少なくとも一方の表面に樹脂コーティング層を有するエアーバッグ用基布(樹脂コーティングエアーバッグ用基布)をエアーバッグに加工する際は、少なくともエアーバッグの内面側が樹脂でコーティングされている2枚の平織布(エアーバッグ用基布)の外周部同士を接着剤で貼り合わせ、且つその接着剤層を縫い合わせて作製する方法が挙げられる。また、予め袋織りして作製されたエアーバッグ用基布の外側両面に、上記のように、熱硬化性コーティング用樹脂を所定のコーティング量でコーティングし、所定の硬化条件下で硬化させる方法を採ってもよい。この場合には、袋織りのエアーバッグ用基布を先に、もしくはこれの外側両面にコーティング用樹脂を塗布したものを加熱成形した後に、又はその両方で電子線を照射することで製造した樹脂コーティングエアーバッグ用基布を用いてエアーバッグを製造することになる。なお、ここで用いる接着剤には、公知のものを用いることができるが、シームシーラントと呼ばれるシリコーン系接着剤が接着力や接着耐久性などの面から好適である。
こうして、エアーバッグ用基布上に、樹脂被膜(コーティング層)を有するエアーバッグを得ることができるが、かかるエアーバッグは、低燃焼速度性に優れており、内圧保持性にも優れるため、その産業上の利用価値は極めて高いものである。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明について具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、「部」とは「質量部」を表し、粘度は25℃における回転粘度計による測定値である。
【0079】
<熱硬化性液状シリコーンゴムの調製>
[調製例1]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A1)65質量部、ヘキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部、比表面積がBET法で約300m2/gであるシリカ微粉末(C)(Aerosil 300、日本アエロジル社製)40質量部をニーダー中に投入し、室温にて1時間混合した。その後温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。この後、室温まで降温して分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A1)19質量部、主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位のうちビニルメチルシロキサン単位を5モル%、ジメチルシロキサン単位を95モル%含有し、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された25℃での粘度が約700mPa・sのジメチルポリシロキサン(A2)5質量部を添加して均一になるまで混合し、ベースコンパウンド(I)を得た。
【0080】
[調製例2]
調製例1で得たベースコンパウンド(I)150質量部に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約1,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A3)91質量部、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、25℃での粘度が約5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン(A4)10質量部、(CH3)3SiO1/2単位39.5モル%と(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%とSiO4/2単位54モル%とからなる三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン(G)10質量部、25℃における粘度が45mPa・sであり、分子鎖側鎖にケイ素原子に結合した水素原子を有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(B)(ケイ素原子に結合した水素原子含有量=1.08質量%)12.8質量部、塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液(D)0.45質量部、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(E)0.56質量部、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド(F)0.34質量部、1-エチニルシクロヘキサノール0.09質量部を室温にて1時間混合して、熱硬化性液状シリコーンゴム((A)成分及び(G)成分中のケイ素原子に結合したビニル基に対する(B)成分中のヒドロシリル基のモル比;SiH/SiVi=5.1、25℃での粘度50,000mPa・s)を調製した。
【0081】
[実施例1]
エアーバッグ用PA66基布(210デニール)に、電子線照射装置EC-250型(株式会社アイ・エレクトロンビーム製、K値:87)で加速電圧200kV、全電子電流2.3mA、搬送速度1m/min、照射線量200kGyの電子線を照射したのち、調製例2で調製した熱硬化性液状シリコーンゴム(コーティング用樹脂)をナイフコーターで10~20g/m2になるようにコーティング(塗布)し、200℃の乾燥器で1分間加熱硬化(成形)し、樹脂でコーティングされたエアーバッグ用基布を作製した。得られた樹脂コーティングエアーバッグ用基布に関して下記の測定方法に従って、接着性、難燃性の試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0082】
<接着性試験方法>
上記の樹脂コーティングエアーバッグ用基布について、ISO 5981に記載の方法で、スクラブ試験機(SERVONETIC Control Instruments製)を用いて接着性を評価した。600回スクラブ試験を行った後、コーティング部分の破壊状況を目視で確認し、樹脂層がコーティング面から剥離していない場合を合格と評価し、剥離している場合を不合格と評価した。
【0083】
<難燃性試験方法>
上記の樹脂コーティングエアーバッグ用基布について、FMVSS-302(Federal Moter Vehicle Safety Standard-302)に記載の方法で、難燃性を評価した。試験片である基布(幅10cm×長さ35cm)の樹脂コーティング面を上側にして、FMVSS-302に記載の方法で燃焼させた時の炎が消えるまでの燃焼距離及び燃焼時間をN=10で測定した。この燃焼距離と燃焼時間から燃焼速度を計算する。この際、試験片に着火しない又はA標線手前で自己消火するもの、燃焼距離51mm以内(且つ60秒以内)で自己消火するもの、燃焼速度が102mm/min以下のものを合格とし、N=10全ての試験に合格したものを合格、1つでも不合格があったものは不合格を評価した。
【0084】
[実施例2]
実施例1の電子線の照射条件を同じ条件で2回照射することで、総照射線量400kGyにしたこと以外は同様にして樹脂コーティングエアーバッグ用基布を作製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
実施例1の電子線を照射しなかったこと以外は同様にして樹脂コーティングエアーバッグ用基布を作製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例1の電子線の照射条件を同じ条件で5回照射することで、総照射線量1,000kGyにしたこと以外は同様にして樹脂コーティングエアーバッグ用基布を作製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0087】
[実施例3]
エアーバッグ用PA66基布(210デニール)に、調製例2で調製した熱硬化性液状シリコーンゴムをナイフコーターで10~20g/m2になるようにコーティングし、200℃の乾燥器で1分間加熱硬化したのちに、電子線照射装置EC-250型(株式会社アイ・エレクトロンビーム製、K値:87)で加速電圧200kV、全電子電流2.3mA、搬送速度1m/min、照射線量200kGyの電子線を照射することで、樹脂でコーティングされたエアーバッグ用基布を作製した。得られた樹脂コーティングエアーバッグ用基布を実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0088】
[実施例4]
実施例3の電子線の照射条件を加速電圧200kV、全電子電流0.3mA、搬送速度1m/min、照射線量30kGyしたこと以外は同様にして樹脂コーティングエアーバッグ用基布を作製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0089】
[実施例5]
実施例3の電子線の照射条件を加速電圧200kV、全電子電流5.7mA、搬送速度1m/min、照射線量500kGyしたこと以外は同様にして樹脂コーティングエアーバッグ用基布を作製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0090】
[比較例3]
実施例3の電子線の照射条件を同じ条件で5回照射することで、総照射線量1,000kGyにしたこと以外は同様にして樹脂コーティングエアーバッグ用基布を作製し、実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0091】
[実施例6]
エアーバッグ用PA66基布(210デニール)に、電子線照射装置EC-250型(株式会社アイ・エレクトロンビーム製、K値:87)で加速電圧200kV、全電子電流1.1mA、搬送速度1m/min、照射線量100kGyの電子線を照射したのち、調製例2で調製した熱硬化性液状シリコーンゴム(コーティング用樹脂)をナイフコーターで10~20g/m2になるようにコーティング(塗布)し、200℃の乾燥器で1分間加熱硬化(成形)したのちに加速電圧200kV、全電子電流1.1mA、搬送速度1m/min、照射線量100kGyの電子線を照射することで、樹脂でコーティングされたエアーバッグ用基布を作製した。得られた樹脂コーティングエアーバッグ用基布を実施例1と同様に接着性試験、難燃性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0092】
【0093】
比較例1は、電子線の総照射線量が30kGy未満であるため、難燃性が劣る結果となった。また、比較例2、3は、電子線の総照射線量が500kGyを超えているため、接着性と難燃性が劣る結果となった。
【0094】
このように、エアーバッグ用基布の片面もしくは両面にコーティング用樹脂を塗布する工程と、前記コーティング用樹脂が塗布された前記エアーバッグ用基布を加熱成形する工程を備え、さらに前記塗布工程の前か前記加熱成形工程の後、もしくはその両方で、総照射線量が30~500kGyとなるように電子線を照射する工程を行うことで、優れた接着性と難燃性を示す樹脂コーティングエアーバッグ用基布の簡便な製造方法となる。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。