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  • 特許-パージ配管器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】パージ配管器具
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/07 20060101AFI20240405BHJP
   F16L 55/033 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
F16L55/07 C
F16L55/033
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121905
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017561
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慶
(72)【発明者】
【氏名】平岡 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】山口 則和
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024772(JP,A)
【文献】特開昭57-015181(JP,A)
【文献】特開2016-002839(JP,A)
【文献】特開2016-017627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/07
F16L 55/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給配管にパージ作業を行う際に用いられるパージ配管器具であって、
ガス供給配管の端部開口部を覆うように設けられる取り外し可能なパージ作業配管と、
前記ガス供給配管の開口部と前記パージ作業配管の開口部とを覆って接続するカップリング式継手と、
前記ガス供給配管と前記パージ作業配管の両方に設けられる穴部を有するリブと、
前記リブの穴部に装着され、前記ガス供給配管と前記パージ作業配管とを接続する接続部材と、
前記パージ作業配管から延びるガス放出配管と、
前記ガス放出配管に設けられるガス放出弁と、
前記ガス放出配管を前記ガス供給配管のスタンションに固定する支持部材と、
を有し、
前記ガス供給配管が施工途中のガス供給配管であり、
施工途中のガス供給配管の品質の確認を行うことを特徴とするパージ配管器具。
【請求項2】
前記接続部材の両端がねじ切りされており、当該ねじ切りされた両端において前記ガス供給配管と前記パージ作業配管とをそれぞれ前記リブの穴部において固定するためのナットを有することを特徴とする請求項1記載のパージ配管器具。
【請求項3】
前記接続部材は、一端のみがねじ切りされており、他端には頭部が構成されており、前記ねじ切りされた一端において前記ガス供給配管と前記パージ作業配管のどちらか一方を前記リブの穴部において固定するためのナットを有することを特徴とする請求項1記載のパージ配管器具。
【請求項4】
前記ガス放出弁のガス放出側にサイレンサーを有することを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載のパージ配管器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パージ配管器具に関し、詳しくはガス供給配管施工工事におけるパージ作業用のパージ配管器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス供給配管の配管工事は、一定の長さの配管基材を溶接してつなぐことで、供給元からユースポイントまでを施工する。このようにして施工した配管は、端面の加工による金属くずの除去、溶接箇所の気密試験、空気の追い出しなどの様々な工程において、窒素などの不活性ガスを用いたパージ作業を行う必要がある。上記工程を行う上で、配管工事においては、施工途中で、配管が長くなる前に部分的なパージ作業を行うことが望ましい。部分的にパージ作業を行うことで、一定区間の品質を確認し、引き続き配管を溶接した後に再度パージ作業を行うことを繰り返すことで、全体の品質を確保していくことができる。
【0003】
パージ作業を行う際には、配管端面にガスを供給するため、当該端面を封じきったり、供給されたガスを抜いたりするための器具を接続しなければならない。そのため、施工途中の部分検査では、配管端面に器具を接続するための工夫が必要である。施工途中の多岐にわたる部分に、フランジなどを溶接し、ネジ止めを複数用いれば強固に器具を接続できるが、検査を実施するまでの工程が多く、効率が悪い。特に半導体生産工場では長蛇の配管接続は溶接が基本となり、パージ作業のために溶接したフランジを後にすべて取り除き、場合によっては取り除いたフランジ部分の配管端面の再加工をして、次の配管の接続を溶接により施工をするといった工程が必要となってしまう。そこで、より簡便で取り外しの効く接続器具が望まれている。なお、特許文献1には配管同士を簡便に接続できる、カップリング式管継手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-190529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に見られるような管継手は、高い引き抜き阻止力(継手が外れないように抗する力)を有するものの、そのために取り付けに要する力がとても大きく、配管外面に加わる力が配管内面の変形を引き起こすことがあった。また、場合によっては、圧力に耐えられずに継手が外れることもあり、特に窒素など不活性ガスを流している場合には、継手が外れてしまうと窒息などの危険があった。そこで、更に高い引き抜き阻止力を有した簡便な継手器具が求められていた。
【0006】
以上の点に鑑みて、本発明は、引き抜き阻止力が高くかつ比較的簡便な、ガス供給配管施工工事におけるパージ配管器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、ガス供給配管をパージ作業を行う際に用いられるパージ配管器具であって、ガス供給配管の端部開口部を覆うように設けられるパージ作業配管と、前記ガス供給配管の開口部と前記パージ作業配管の開口部とを覆って接続するカップリング式継手と、前記ガス供給配管と前記パージ作業配管の両方に設けられる穴部を有するリブと、前記リブの穴部に装着され、前記ガス供給配管と前記パージ作業配管とを接続する接続部材と、前記パージ作業配管から延びるガス放出配管と、前記ガス放出配管に設けられるガス放出弁と、前記ガス放出配管を前記ガス供給配管のスタンションに固定する支持部材と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の第2の発明は、前記第1の発明において、前記接続部材の両端がねじ切りされており、当該ねじ切りされた両端において前記ガス供給配管と前記パージ作業配管とをそれぞれ前記リブの穴部において固定するためのナットを有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の第3の発明は、前記第1の発明において、前記接続部材は、一端のみがねじ切りされており、他端には頭部が構成されており、前記ねじ切りされた一端において前記ガス供給配管と前記パージ作業配管とを固定するためのナットを有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第4の発明は、前記第1~第3の発明のいずれかにおいて、前記ガス放出弁のガス放出側にサイレンサーを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパージ配管器具によれば、大きな圧力がかかっても外れることのないような高い引き抜き阻止力を有しており、また、従来と比べて、カップリング式継手と接続部材及びリブを用いて接続するという、構成が比較的簡便なものとなっており、配管への最小限の加工でパージ作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一形態例であるパージ配管器具を接続したガス供給配管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一形態例であるパージ配管器具1を接続したガス供給配管2を示す。当該パージ配管器具1は、パージ作業配管3、ガス放出配管4、カップリング式継手5、接続部材6、リブ7、支持部材8、ガス放出弁9、圧力計10、サイレンサー11から概略構成されている。
【0014】
パージ作業配管3は、ガス供給配管施工工事の施工中のガス供給配管2の端部開口部を覆うように設けられる配管であり、パージガスが流通されるものである。パージガスは、窒素などの不活性流体であって、図示しないパージガス供給源から供給される。上記形態例において、当該パージ作業配管3はドーム形状に作られている。また、ガス供給配管2は、既存のスタンション(支持構造)12によって周囲から支持されている。
【0015】
ガス放出配管4は、前記パージ作業配管3に流通されたパージガスを外部へ放出するための配管であり、後述するガス放出弁9や圧力計10と接続されている。また、ガス供給配管2の既存のスタンション12とは、後述する支持部材8をもって接続されている。
【0016】
カップリング式継手5は、ガス供給配管2とパージ作業配管3とを接続する部材であり、特許文献1などにも見られるような、幅広のリング状部材を締結部材で締め付ける構成となっている公知のカップリング式継手である。
【0017】
接続部材6は、ガス供給配管2とパージ作業配管3とを接続する際に用いられる棒状の部品であり、上記形態例においては寸切ボルトが用いられる。当該寸切ボルトは、両端がねじ切りされているものが用いられている。
【0018】
リブ7は、前記接続部材6を穴部において締結するために用いられる部材であり、ガス供給配管2とパージ作業配管3の両方に、周方向に等間隔で4箇所溶接されて設けられている。当該リブ7が配管側面にスポット溶接によって設けられていることで、ガス供給配管2とパージ作業配管3のそれぞれの配管への加工(配管内面への影響)を最小限にしてパージ作業を行うことができ、パージ作業後の継続する配管接続に影響を及ぼさないようになっている。また、当該リブ7が設けられる場所の中間点にはマーキング14が設けられており、当該マーキング14を利用してカップリング式継手5の長さを計測し、ガス供給配管2とパージ作業配管3とが離間していないことを確認することができるようになっている。
【0019】
上記形態例においては、当該リブ7の穴部に上記接続部材6である寸切ボルトを通して両端をナットで固定することでガス供給配管2とパージ工程配管3とが固定される。ガス供給配管2とパージ作業配管3との接続には、接続部材6及びリブ7も用いられている。
【0020】
支持部材8は、ガス供給配管2の既存のスタンション(支持構造)12とガス放出配管4とを接続する部材である。本形態例において当該支持部材8は、前記ガス放出配管4との接続部を有するZ字状の板状部材8aと、当該板状部材8aと上記スタンション12とを接続する配管支持材8bから構成されている。
【0021】
ガス放出弁9は、前記ガス放出配管4に接続される弁であり、パージガスを配管内から外部に放出する際に用いられる。
【0022】
圧力計10は、前記ガス放出配管4に弁13を介して接続されており、パージガスの圧力を計測しガス放出時の圧力を監視するために用いられる。
【0023】
サイレンサー11は、前記ガス放出弁9のガス放出側に接続されており、パージガスの排出時に生じる騒音を軽減するために用いられる。
【0024】
以上のように構成されたパージ配管器具1を、ガス供給配管2に接続する方法については、以下のようにして行われる。
【0025】
まず、パージ作業配管3に、ガス放出配管4、ガス放出弁9、圧力計10、サイレンサー11、弁13を取り付ける。その後、ガス供給配管2の端部開口部に、パージ作業配管3の開口部を合わせ、その合わされた部分を、カップリング式継手5で覆うように締結する。その際、ガス供給配管2とパージ作業配管3の各々に設けられたリブ7の位置を合わせる。その後、当該リブ7の穴部に接続部材6である寸切ボルトを通して、ガス供給配管2とパージ作業配管3の両方の端部においてナットで固定する。
【0026】
このようにしてガス供給配管2とパージ作業配管3とを固定すると、両者にリブ7を溶接して設けるのみという比較的簡便な手法で、両者を固定することができるようになる。そのため、カップリング式継手5の取り付け力を軽減できるので、配管の変形を防ぐことができる。また、寸切ボルトとナットでの固定により、引き抜き阻止力の高い固定を行うことができる。また、パージ作業後は、パージ作業配管3を外して検査を終了し、リブ7の配管からの突出量がわずかであることから、ガス供給配管2にリブ7を残したまま、当該検査の終了したガス供給配管2に新たな配管を接続してガス供給配管工事を継続することができるので、従来のように検査後にフランジの除去や端面加工等の工程が必要でなく、全体的な作業効率が良い。
【0027】
ガス供給配管2とパージ作業配管3とを固定した後は、ガス放出配管4と既存のスタンション12とを、支持部材8を用いて位置合わせを行って固定する。まず、支持部材8の板状部材8aをガス放出配管4に固定した後、配管支持材8bとスタンション12の位置を合わせて、ボルトナットを用いて固定する。この様にすると、パージガスの放出時において、各部がガスの圧力を受けても、支持部材8によって固定されているので、高い引き抜き阻止力を発揮することができる。
【0028】
上記の接続方法によって接続されたパージ配管器具1を用いて、実際にパージ作業を行う際には、ガス供給配管2とパージ作業配管3とを接続部材6で接続した後にパージ作業を行う。パージされたガスについては、パージ作業配管3から、ガス放出配管4及びガス放出弁9、サイレンサー11を経て外部に放出されるようになっている。その際の放出圧力は、圧力計10によって、構成部品の破損や変形などが起こらないように監視される。
【0029】
なお、上記形態例において、接続部材に両端がねじ切りされている寸切ボルトを用いてリブ7の両端でナットを用いてガス供給配管2とパージ作業配管3の両方をナットで締結する構成としたが、上記寸切ボルトについては、一端のみがねじ切りされていて、他端に頭部が設けられている寸切ボルトを用いてもよい。その場合には、一端のみにおいてガス供給配管2とパージ作業配管3のどちらか一方をナットで締結する構成とすることも可能である。
【0030】
また、上記形態例において、サイレンサー11は必須の構成ではなく、周囲の状況に応じて、騒音軽減効果が必要とされる場合にのみ設けられる。また、リブ7について、上記形態例においては各配管に4箇所設けているが、配管の大きさなどを勘案して、4箇所以外の数としてもよい。また、板状部材8aの形状は、必ずしもZ字状でなくとも、スタンション12とガス放出配管4とが固定されるものであれば、どのような形状でもよい。
【符号の説明】
【0031】
1・・・パージ配管器具、2・・・ガス供給配管、3・・・パージ作業配管、4・・・ガス放出配管、5・・・カップリング式継手、6・・・接続部材、7・・・リブ、8・・・支持部材、8a・・・板状部材、8b・・・配管支持材、9・・・ガス放出弁、10・・・圧力計、11・・・サイレンサー、12・・・スタンション(支持構造)、13・・・弁、14・・・マーキング
図1