(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】変性液状ジエン系ゴム
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240405BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20240405BHJP
C08L 61/04 20060101ALI20240405BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240405BHJP
C08C 19/34 20060101ALI20240405BHJP
C08C 19/28 20060101ALI20240405BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240405BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240405BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L15/00
C08L61/04
C08L7/00
C08C19/34
C08C19/28
C09K3/10 A
C09K3/10 J
B60C1/00 Z
B60C15/06 B
(21)【出願番号】P 2023074882
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2019546720の分割
【原出願日】2018-10-02
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2017195144
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】元田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】金子 周平
(72)【発明者】
【氏名】野笹 友
(72)【発明者】
【氏名】上原 陽介
(72)【発明者】
【氏名】樫岡 雅大
(72)【発明者】
【氏名】上野 慶和
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-035682(JP,A)
【文献】特開2005-226016(JP,A)
【文献】特開2017-014373(JP,A)
【文献】特開昭56-018632(JP,A)
【文献】特開昭57-212239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸無水物に由来する官能基(a)を有し、下記(I)~(III)の要件をすべて満たす変性液状ジエン系ゴム(A)
、固形ゴム(B)、フェノール系樹脂(C)、及び硬化剤(D)を含むタイヤビードフィラー用ゴム組成物であり、
固形ゴム(B)100質量部に対して、変性液状ジエン系ゴム(A)1~20質量部、フェノール系樹脂(C)5~40質量部、硬化剤(D)0.5~2.0質量部含有するタイヤビードフィラー用ゴム組成物。
(I)官能基(a)の官能基当量が400~3,500g/eqの範囲にある。
(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した際、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が5,000~20,000の範囲にある。
(III)38℃における溶融粘度が3Pa・s以上であり、下記Xが6100K以上である。
X(K):ブルックフィールド型粘度計を用いて測定される38℃及び60℃における溶融粘度η(Pa・s)2点を、1/T(K
-1)を横軸、Ln[η/(Pa・s)]を縦軸とするグラフにプロットした際の、該2点を通る直線の傾き。(但し、Tは温度(K)である。)
【請求項2】
前記変性液状ジエン系ゴム(A)が、不飽和カルボン酸無水物変性された液状ジエン系ゴムと下記化学式(2)又は(3)で示される化合物との反応物である請求項1に記載の
タイヤビードフィラー用ゴム組成物。
R
a-OH (2)
(上記式(2)中、R
aは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。)
R
b
2-NH (3)
(上記式(3)中、R
bは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基であり、複数あるR
bは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記固形ゴム(B)が天然ゴムである、請求項1に記載のタイヤビードフィラー用ゴム組成物。
【請求項4】
前記変性液状ジエン系ゴム(A)が、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)を酸無水物に由来する官能基(a)で変性して得られたものであり、その未変性の液状ジエン系ゴム(A’)がイソプレンを重合して得られる重合体である、請求項1に記載のタイヤビードフィラー用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性液状ジエン系ゴム及び変性液状ジエン系ゴムを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固形ゴム、液状ゴム、オイル等を含むゴム組成物は、優れた粘着性を有し、またこれを架橋した架橋物は、被着体等に対し優れた接着性を有するために、従来から、種々の工業用途、例えば自動車用途などで、シーリング材、各種部材の接着剤などとして用いられている(例えば、特許文献1~4参照)。また、このゴム組成物の金属などへの接着性の改善等を行うために、液状ゴムとして官能基で変性した変性液状ゴムを使用する方法が知られている(例えば特許文献2、4参照)。このようなゴム組成物を、上記シーリング材、接着剤等の用途に用いる場合には、ゴム組成物の各成分をまず混合して密封容器等に保存をしておき、使用する際にこの密封容器からカートリッジガン等を用いて、ゴム組成物を基材等に塗布して、このゴム組成物を架橋することにより用いることが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-006272号公報
【文献】特開平05-194922号公報
【文献】特開平05-059345号公報
【文献】特開2004-099651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のゴム組成物では、ポンピング性、耐液垂れ性、加工性、及び反応性に優れ、かつ該ゴム組成物から得られる硬化物のゴム弾性、及び種々の基材への接着性に優れるゴム組成物を作製することは困難であった。本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、ポンピング性、耐液垂れ性、加工性、及び反応性に優れ、得られる硬化物のゴム弾性、機械特性(剛性)、更に種々の基材への接着性も優れる、シーリング材、粘接着剤、タイヤビードフィラーなどに好適に用いられる変性液状ジエン系ゴム及び該変性液状ジエン系ゴムを含むゴム組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが、鋭意検討を行った結果、特定の変性液状ジエン系ゴムを、ゴム組成物に含ませることにより、ポンピング性、耐液垂れ性、加工性、及び反応性に優れ、かつそのゴム組成物から得られる硬化物はゴム弾性、機械特性(剛性)、更に種々の基材への接着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下〔1〕~〔7〕に関する。
〔1〕 酸無水物に由来する官能基(a)を有し、下記(I)~(III)の要件をすべて満たす変性液状ジエン系ゴム(A)。
(I)官能基(a)の官能基当量が400~3,500g/eqの範囲にある。
(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した際、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が5,000~20,000の範囲にある。
(III)38℃における溶融粘度が3Pa・s以上であり、下記Xが6100K以上である。X(K):ブルックフィールド型粘度計を用いて測定される38℃及び60℃における溶融粘度η(Pa・s)2点を、1/T(K-1)を横軸、Ln[η/(Pa・s)]を縦軸とするグラフにプロットした際の、該2点を通る直線の傾き。(但し、Tは温度(K)である。)
〔2〕 変性液状ジエン系ゴム(A)が、不飽和カルボン酸無水物変性された液状ジエン系ゴムと下記化学式(2)又は(3)で示される化合物との反応物である〔1〕に記載の変性液状ジエン系ゴム(A)。
Ra-OH (2)
(上記式(2)中、Raは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。)
Rb
2-NH (3)
(上記式(3)中、Rbは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基であり、複数あるRbは同一でも異なっていてもよい。)
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載の変性液状ジエン系ゴム(A)を含む組成物。
〔4〕 〔1〕又は〔2〕に記載の変性液状ジエン系ゴム(A)と固形ゴム(B)とを含むゴム組成物。
〔5〕 〔4〕に記載のゴム組成物を含むシーリング材。
〔6〕 〔4〕に記載のゴム組成物を含むタイヤビードフィラー用ゴム組成物。
〔7〕 固形ゴム(B)100質量部と、〔1〕又は〔2〕に記載の変性液状ジエン系ゴム(A)1~20質量部と、フェノール系樹脂(C)5~40質量部と、硬化剤(D)0.5~2.0質量部とを含む、〔6〕に記載のタイヤビードフィラー用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポンピング性、耐液垂れ性、加工性、及び反応性に優れるゴム組成物に好適な変性液状ジエン系ゴムが得られ、そのゴム組成物から得られる硬化物はゴム弾性、機械特性(剛性)、更に種々の基材への接着性に優れる。そのため、本発明のゴム組成物は、シーリング材、各種部材の接着、粘接着剤、タイヤビードフィラーなどに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[変性液状ジエン系ゴム(A)]
本発明の変性液状ジエン系ゴム(A)とは、液状の重合体であり、酸無水物に由来する官能基(a)を有し、下記(I)~(III)の要件をすべて満たす物をいう。
(I)官能基(a)の官能基当量が400~3,500g/eqの範囲にある。
(II)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した際、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が5,000~20,000の範囲にある。
(III)38℃における溶融粘度が3Pa・s以上であり、下記Xが6100K以上である。
X(K):ブルックフィールド型粘度計を用いて測定される38℃及び60℃における溶融粘度η(Pa・s)2点を、1/T(K-1)を横軸、Ln[η/(Pa・s)]を縦軸とするグラフにプロットした際の、該2点を通る直線の傾き。(但し、Tは温度(K)である。)
【0009】
このような変性液状ジエン系ゴム(A)と後述する固形ゴム(B)とを含むゴム組成物は、ポンピング性、耐液垂れ性、加工性、及び反応性に優れ、得られる硬化物のゴム弾性、機械特性(剛性)、更に種々の基材への接着性も優れる。ここで、ゴム弾性は例えば貯蔵弾性率で表すことができ、また反応性は官能基の反応性を表し、反応性に優れることで、得られる硬化物の硬度や接着力が優れたものとなる。
【0010】
変性液状ジエン系ゴム(A)は、例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)に酸無水物に由来する官能基(a)に対応する変性化合物を付加することにより製造できる。
変性液状ジエン系ゴム(A)の原料となる上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)としては、共役ジエン(a1)を後述の方法で重合して得られる重合体が好ましい。共役ジエン(a1)としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、及びクロロプレンなどが挙げられる。これら共役ジエンの中でも、ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。これら共役ジエンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
未変性の液状ジエン系ゴム(A’)は、上記共役ジエン(a1)に加え、芳香族ビニル化合物(a2)を共重合したものであってもよい。芳香族ビニル化合物(a2)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。これら芳香族ビニル化合物の中では、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンが好ましい。
【0012】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)における、共役ジエン(a1)及び芳香族ビニル化合物(a2)に由来する単位の合計に対する芳香族ビニル化合物(a2)単位の割合は、組成物の加工性、接着性等の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0013】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)は、例えば、乳化重合法、又は溶液重合法等により製造できる。
上記乳化重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、所定量の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
【0014】
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及びロジン酸塩などが挙げられる。長鎖脂肪酸塩としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩などが挙げられる。
【0015】
分散媒としては通常、水が使用され、重合時の安定性が阻害されない範囲で、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
【0016】
得られる未変性の液状ジエン系ゴム(A’)の分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0017】
乳化重合の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類などにより適宜設定できるが、通常0~100℃の範囲、好ましくは0~60℃の範囲である。重合様式は、連続重合、回分重合のいずれでもよい。
【0018】
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)を凝固させた後、分散媒を分離することによって未変性の液状ジエン系ゴム(A’)を回収する。次いで水洗、及び脱水後、乾燥することで、上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)が得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展した未変性の液状ジエン系ゴム(A’)として回収してもよい。
【0020】
上記溶液重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、アニオン重合可能な活性金属又は活性金属化合物を使用して、必要に応じて極性化合物の存在下で、共役ジエンを含む単量体を重合する。
【0021】
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0022】
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。
【0023】
アニオン重合可能な活性金属の中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
アニオン重合可能な活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これら有機アルカリ金属化合物の中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。
【0024】
有機アルカリ金属化合物の使用量は、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)及び変性液状ジエン系ゴム(A)の分子量、溶融粘度などに応じて適宜設定できるが、共役ジエンを含む全単量体 100質量部に対して、通常0.01~3質量部の量で使用される。
【0025】
上記有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
【0026】
極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン単位のミクロ構造(例えばビニル含量)を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
【0027】
溶液重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
【0028】
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)を単離できる。
上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)の製造方法としては、上記方法の中でも、溶液重合法が好ましい。
【0029】
このようにして得られた未変性の液状ジエン系ゴム(A’)は、そのまま(水素添加されない状態で)後述する官能基による変性が行われてもよいが、その液状ジエン系ゴム中に含まれる不飽和結合の少なくとも一部を水素添加した後に変性が行われてもよい。
【0030】
上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)は酸無水物に由来する官能基(a)で変性され、変性液状ジエン系ゴム(A)として用いられる。酸無水物に由来する官能基としては、例えば、不飽和カルボン酸無水物基などの酸無水物基、該酸無水物基から誘導される不飽和カルボン酸エステル基、不飽和カルボン酸アミド基、不飽和カルボン酸イミド基等が挙げられる。
【0031】
変性液状ジエン系ゴム(A)の製造方法は特に制限はないが、例えば上記未変性の液状ジエン系ゴム(A’)に、酸無水物に由来する官能基(a)に対応する化合物を変性化合物として付加するグラフト反応により製造することができる。
【0032】
不飽和カルボン酸無水物基に対応する化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステル基に対応する化合物としては、例えば、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
【0033】
不飽和カルボン酸アミド基に対応する化合物としては、例えば、マレイン酸アミド、フマル酸アミド、イタコン酸アミドなどの不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。
不飽和カルボン酸イミド基に対応する化合物としては、例えば、マレイン酸イミド、イタコン酸イミドなどの不飽和カルボン酸イミドなどが挙げられる。
【0034】
これらの中でも、経済性、並びに本発明のゴム組成物及び架橋物としての特性を十分に発揮させる観点から、無水マレイン酸を変性化合物として、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)に付加した無水マレイン酸変性液状ジエン系ゴムが好ましく、無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン及び無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンがより好ましく、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンが更に好ましい。
【0035】
変性化合物を、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)に付加させる方法は特に限定されず、例えば、未変性の液状ジエン系ゴム中に酸無水物に由来する官能基(a)に対応する化合物、例えば不飽和カルボン酸無水物等の酸無水物、更に必要に応じてラジカル触媒を加えて、有機溶媒の存在下又は非存在下に、加熱する方法を採用することができる。
【0036】
上記方法で使用される有機溶媒としては、一般的には炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。これら有機溶媒の中でも、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
【0037】
また、上記方法で使用されるラジカル触媒としては、ジ-s-ブチルペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。これらラジカル触媒の中でも、アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
【0038】
また、上記のように、不飽和カルボン酸無水物を未変性の液状ジエン系ゴム(A’)に付加して不飽和カルボン酸無水物変性液状ジエン系ゴムを得た後に、更にその不飽和カルボン酸無水物変性液状ジエン系ゴムと、Ra-OH (2)(式(2)中、Raは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。)で示される水もしくはアルコール、又はRb
2-NH (3)(式(3)中、Rbは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基であり、複数あるRbは同一でも異なっていてもよい。)で示されるアンモニアもしくはアミンなどを反応させて、不飽和カルボン酸エステル変性液状ジエン系ゴム、不飽和カルボン酸アミド変性液状ジエン系ゴム、又は不飽和カルボン酸イミド変性液状ジエン系ゴムを製造して、これを変性液状ジエン系ゴム(A)として用いてもよい。
【0039】
式(2)及び式(3)で表される化合物としては特に制限はないが、変性反応の容易性などの点から、炭素数1~20のアルコールが好ましく、炭素数1~20の飽和アルコールがより好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3-メチルブタノール及び3-メチル-1,3-ブタンジオールが更に好ましい。
【0040】
更に、不飽和カルボン酸変性液状ジエン系ゴムと反応させる式(2)で表される化合物として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いて、(メタ)アクリロイル基変性液状ジエン系ゴムを製造し、この(メタ)アクリロイル基変性液状ジエン系ゴムを変性液状ジエン系ゴム(A)として用いてもよい。上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これら水酸基含有(メタ)アクリレートの中でも2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
不飽和カルボン酸変性液状ジエン系ゴムと反応させる式(2)及び式(3)で表される化合物としては一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
変性液状ジエン系ゴム(A)の酸無水物に由来する官能基(a)の官能基当量は、400~3,500g/eqの範囲であり、600~2,500g/eqであることが好ましく、700~2,300g/eqであることがより好ましい。変性液状ジエン系ゴム(A)の酸無水物に由来する官能基(a)の官能基当量が上記範囲にあることにより、常温下における耐液垂れ性と高温下におけるポンピング性を両立でき、更に硬化後に種々の基材への優れた接着性と、高い剛性を示す組成物が得られる。なお、本明細書における酸無水物に由来する官能基(a)の官能基当量とは、官能基(a)1個当たりの変性液状ジエン系ゴム(A)の分子量を意味する。
【0042】
官能基(a)の官能基当量が特定の範囲にある変性液状ジエン系ゴム(A)を製造する手法としては、適切な反応温度において、充分な反応時間で、変性化合物を付加する反応を行うことが有効である。例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(A')に無水マレイン酸を付加させる反応における温度は100~200℃が好ましく、120℃~180℃がより好ましい。また反応時間は3~200時間が好ましく、4~100時間がより好ましく、5~50時間が更に好ましい。
【0043】
なお、変性液状ジエン系ゴム(A)中に付加された官能基(a)の官能基当量は、変性化合物の付加反応率を基に算出することもできるし、赤外分光法、核磁気共鳴分光法等の各種分析機器を用いて求めることもできる。
【0044】
変性液状ジエン系ゴム(A)の変性化合物の付加反応率は40~100mol%であることが好ましく、60~100mol%であることがより好ましく、80~100mol%であることが更に好ましく、90~100mol%であることがより更に好ましい。付加反応率が上記範囲にあると、得られる変性液状ジエン系ゴム(A)に、変性化合物又は変性化合物に由来する低分子化合物が残存することが少なくなるため、これら化合物に由来する悪影響、例えば無水マレイン酸などの酸性成分に由来すると思われる金属腐食などの悪影響をより抑制することができる。変性化合物の付加反応率は、例えば、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体を変性化合物として用いた場合、変性反応後の試料において洗浄前後の酸価を比較すること等により、未反応の変性化合物の量を算出し、求めることができる。
【0045】
変性液状ジエン系ゴム(A)中に付加された変性化合物量に、厳密な意味での制限はないが、得られるゴム組成物及び架橋物における特性を十分に発揮させる観点から、未変性重合体100質量部に対して0.05~40質量部の範囲が好ましく、0.1~30質量部の範囲がより好ましく、0.1~20質量部の範囲が更に好ましい。付加された変性化合物量が40質量部より多い場合には得られる架橋物の柔軟性及び強度が低下する傾向があり、0.05質量部より低い場合には得られる架橋物の接着性が低下する傾向がある。
【0046】
なお、変性液状ジエン系ゴム(A)中に付加された変性化合物量は、変性化合物の付加反応率を基に算出することもできるし、赤外分光法、核磁気共鳴分光法等の各種分析機器を用いて求めることもできる。
【0047】
この変性液状ジエン系ゴム(A)において、官能基が導入される位置については重合末端であってもよく、重合体鎖の側鎖であってもよい。また上記官能基は1種単独で含まれていてもよく2種以上含まれていてもよい。したがって、変性液状ジエン系ゴム(A)は、変性化合物1種により変性されたものであってもよく、また2種以上の変性化合物で変性されていてもよい。
【0048】
変性液状ジエン系ゴム(A)の数平均分子量(Mn)は5,000~20,000であり、6,000~18,000が好ましく、6,000~16,000がより好ましく、6,000~14,000が更に好ましく、8,000~12,000がより更に好ましい。上記変性液状ジエン系ゴム(A)のMnが前記範囲内であると、成形性に優れ、硬化後に良好なゴム弾性や剛性を示す組成物が得られる。なお、本発明において変性液状ジエン系ゴム(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0049】
変性液状ジエン系ゴム(A)の分子量分布(Mw/Mn)は1.0~2.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.0~1.2が更に好ましく、1.0~1.1がより更に好ましい。Mw/Mnが前記範囲内であると、常温下における耐液垂れ性と高温下におけるポンピング性を両立でき、更に成形性に優れ、低分子量成分のブリードアウトが少ない組成物が得られる。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比を意味する。
【0050】
このような特定の分子量分布にある変性液状ジエン系ゴム(A)を製造する手法としては、後述する変性化合物を付加する反応時における老化防止剤の添加に加えて、未変性の液状ジエン系ゴム(A')を精製し、変性化合物を付加する反応を阻害する成分を十分に除去することが挙げられる。精製する方法としては、水若しくは温水、又は、メタノール、アセトンなどに代表される有機溶媒若しくは超臨界流体二酸化炭素による洗浄が好ましい。
【0051】
また、特定の分子量分布にある変性液状ジエン系ゴム(A)を合成する手法としては、前記洗浄に加えて、変性化合物を付加する反応時における老化防止剤の添加も有効である。この時に用いる好ましい老化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(AO-40)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(AO-80)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox 1520L)、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox 1726)、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート(Sumilizer GS)、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(Sumilizer GM)、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール等のフェノール系老化防止剤;亜りん酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(Irgafos 168)等のリン系老化防止剤;N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(LA-77Y)、N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン(Irgastab FS 042)、ビス(4-t-オクチルフェニル)アミン(Irganox 5057)等のアミン系老化防止剤;ジオクタデシル3,3'-ジチオビスプロピオネート、ジドデシル-3,3’-チオジプロピオネート(Irganox PS800)、ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオン酸]-2,2-ビス[[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロピルオキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル(Sumilizer TP-D)等のイオウ系老化防止剤;6-t-ブチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イルオキシ)プロピル]-2-メチルフェノール(Sumilizer GP)等のフェノール系老化防止剤とリン系老化防止剤との複合老化防止剤;などが挙げられる。また、上記老化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
老化防止剤は、その作用機構からラジカル連鎖禁止型の一次老化防止剤と、過酸化物分解型の二次老化防止剤に分類される。本発明において特定の分子量分布にある変性液状ジエン系ゴム(A)を合成するためには、変性化合物を付加する反応時に発生するラジカルによる副反応を抑制する観点から、一次老化防止剤として作用するフェノール系老化防止剤およびアミン系老化防止剤が好ましい。アミン系老化防止剤を用いて合成した場合、得られる変性液状ジエン系ゴム(A)がゴム組成物の着色の原因となるものの、老化防止効果が高い。そのため、変性液状ジエン系ゴム(A)を後述するタイヤビードフィラー用ゴム組成物の一成分として用いることが好適である。一方、フェノール系老化防止剤はアミン系老化防止剤よりも老化防止効果に劣るものの、上述の着色の問題を生じない。そのため、フェノール系老化防止剤の存在下変性化合物が付加された変性液状ジエン系ゴム(A)は、タイヤビードフィラー用ゴム組成物以外の組成物、例えば、後述するシーリング材用ゴム組成物、エポキシ樹脂組成物の一成分として用いられることが好適である。
【0053】
老化防止剤の添加量は、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)又は変性液状ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0054】
更に、特定の分子量分布にある変性液状ジエン系ゴム(A)を合成する手法としては、変性化合物を付加する反応中の適切な温度管理も有効である。例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)に無水マレイン酸を付加させる反応における温度は、100~200℃が好ましく、120℃~180℃がより好ましい。
【0055】
変性液状ジエン系ゴム(A)のガラス転移温度(Tg)は、共役ジエン(a1)に由来する単位のビニル含量、共役ジエン(a1)の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-100~30℃が好ましく、-100~20℃がより好ましく、-100~10℃が更に好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、ゴム組成物の加工性、接着性が良好となる。また粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。変性液状ジエン系ゴム(A)のビニル含量は99モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることが更に好ましく、20モル%以下であることがより更に好ましく、10モル%以下であることが特に好ましい。また、変性液状ジエン系ゴム(A)のビニル含量は1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましい。また、上記変性液状ジエン系ゴム(A)は1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、「ビニル含量」とは、変性液状ジエン系ゴムに含まれる、共役ジエン(a1)単位の合計100モル%中、1,2-結合又は3,4-結合で結合をしている共役ジエン単位(1,4-結合以外で結合をしている共役ジエン単位)の合計モル%を意味する。ビニル含量は、1H-NMRを用いて1,2-結合又は3,4-結合で結合をしている共役ジエン単位由来のピークと1,4-結合で結合をしている共役ジエン単位に由来するピークの面積比から算出することができる。
【0056】
なお、変性液状ジエン系ゴム(A)のビニル含量は、例えば、未変性の液状ジエン系ゴム(A’)を製造する際に使用する溶媒の種類、必要に応じて使用される極性化合物、重合温度などを制御することにより所望の値とすることができる。
【0057】
上記変性液状ジエン系ゴム(A)の38℃で測定した溶融粘度は、3Pa・s以上であり、好ましくは3~200Pa・sの範囲、より好ましくは3~100Pa・sの範囲、更に好ましくは5~50Pa・sの範囲にある。変性液状ジエン系ゴム(A)の38℃における溶融粘度が前記範囲内であると、変性液状ジエン系ゴム(A)及びその組成物の耐液垂れ性が良好となる。また、上記変性液状ジエン系ゴム(A)の60℃で測定した溶融粘度は本発明の要件を満たす限りにおいて特に限定されないが、好ましくは25Pa・s以下、より好ましくは20Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下である。また、好ましくは1.0Pa・s以上、より好ましくは1.3Pa・s以上、更に好ましくは1.5Pa・s以上である。変性液状ジエン系ゴム(A)の60℃における溶融粘度が前記範囲内であると、変性液状ジエン系ゴム(A)及びその組成物のポンピング性が良好となる。なお、本発明において変性液状ジエン系ゴム(A)の溶融粘度は、後述する実施例に記載した方法で求めた値である。
【0058】
上記変性液状ジエン系ゴム(A)では、X(K)が6100K以上であり、好ましくは6200K以上であり、より好ましくは6400K以上である。また、X(K)は、12000K以下であってもよく、10000K以下が好ましく、9000K以下がより好ましく、8000K以下が更に好ましい。ここで、X(K)は、ブルックフィールド型粘度計を用いて測定される38℃及び60℃における溶融粘度η(Pa・s)2点を、1/T(K-1)を横軸、Ln[η/(Pa・s)]を縦軸とするグラフにプロットした際の、該2点を通る直線の傾きである。
【0059】
一般的に、流体の粘度と温度の関係については以下のアンドレードの式(1)が知られている。
η=A・exp[T-1・E/R] ・・・(1)
(上記式(1)中、ηは温度T(K)における溶融粘度(Pa・s)、Rは気体定数(J・K-1・mol-1)、Eは流動活性化エネルギー(J・mol-1)、Aは定数(Pa・s)である。)
【0060】
本発明のX(K)は、上記式(1)におけるE/Rを近似的に表すものと考えることができ、E/Rは、流動に必要なみかけの活性化エネルギーを気体定数で除した値である。本発明のX(K)が前記範囲内にあると、温度による溶融粘度の変化が大きくなり、常温における耐液垂れ性と高温における流動性を両立した変性液状ジエン系ゴム(A)又はその組成物の設計が可能となる。
【0061】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分は上述した変性液状ジエン系ゴム(A)を含んでいる。本発明でゴム成分とは、変性液状ジエン系ゴム、必要に応じて含まれる未変性の液状ジエン系ゴム、及び必要に応じて含まれる下記固形ゴム(B)からなる成分である。本発明のゴム組成物のゴム成分としては、例えば、上述した変性液状ジエン系ゴム(A)を含む液状ジエン系ゴムのみから構成される場合、変性液状ジエン系ゴム(A)及び下記固形ゴム(B)を含む場合などがある。
【0062】
ゴム成分として固形ゴム(B)を含む場合には、このゴム成分は、液状ジエン系ゴム(A)1~99質量%及び固形ゴム(B)99~1質量%から構成されてもよいが、好ましくは液状ジエン系ゴム(A)1~95質量%及び固形ゴム(B)99~5質量%、より好ましくは液状ジエン系ゴム(A)10~90質量%及び固形ゴム(B)90~10質量%、更に好ましくは液状ジエン系ゴム(A)20~80質量%及び固形ゴム(B)80~20質量%から構成される。液状ジエン系ゴム(A)と固形ゴム(B)との配合割合が上記範囲にあることにより、ゴム組成物の加工性、接着性が良好となる。
【0063】
[固形ゴム(B)]
本発明のゴム組成物で用いる固形ゴム(B)とは、20℃において固形状で取り扱うことができるゴムをいい、固形ゴム(B)の100℃におけるムーニー粘度 ML1+4は通常20~200の範囲にある。上記固形ゴム(B)としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム及びブチルゴムなどが挙げられる。
【0064】
上記固形ゴム(B)の重量平均分子量(Mw)は、得られるゴム組成物の特性を十分に発揮させる観点から、80,000以上であることが好ましく、100,000~3,000,000の範囲内であることがより好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0065】
上記天然ゴムとしては、例えば、SMR、SIR、STR等のTSRやRSS等のタイヤ工業において一般的に用いられる天然ゴム、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムが挙げられる。中でも、品質のばらつきが少ない点、及び入手容易性の点から、SMR20、STR20やRSS#3が好ましい。これら天然ゴムは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
上記ポリイソプレンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン-トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド-コバルト系、トリアルキルアルミニウム-三弗化ホウ素-ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド-ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム-有機酸ネオジム-ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、又は溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(以下、S-SBRともいう。)と同様に有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のポリイソプレンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたポリイソプレンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のポリイソプレンゴムを用いてもよい。
【0067】
ポリイソプレンゴムのビニル含量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%を超えるとゴム組成物の低温での柔軟性が悪化する傾向にある。ビニル含量の下限は特に限定されない。またガラス転移温度はビニル含量によって変化するが、-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下であることがより好ましい。
【0068】
ポリイソプレンゴムの重量平均分子量(Mw)は90,000~2,000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。Mwが上記範囲にある場合、加工性と機械強度が良好となる。
【0069】
上記ポリイソプレンゴムは、本発明の効果を損ねない範囲であれば、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
【0070】
上記ポリブタジエンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン-トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド-コバルト系、トリアルキルアルミニウム-三弗化ホウ素-ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド-ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム-有機酸ネオジム-ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、又はS-SBRと同様に有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のポリブタジエンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたポリブタジエンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のポリブタジエンゴムを用いてもよい。
【0071】
ポリブタジエンゴムのビニル含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。ビニル含量が50質量%を超えるとゴム組成物の低温での柔軟性が悪化する傾向にある。ビニル含量の下限は特に限定されない。またガラス転移温度はビニル含量によって変化するが、-40℃以下であることが好ましく、-50℃以下であることがより好ましい。
【0072】
ポリブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は90,000~2000,000であることが好ましく、150,000~1,500,000であることがより好ましい。Mwが上記範囲にある場合、加工性と機械強度が良好となる。
【0073】
上記ポリブタジエンゴムは、本発明の効果を損ねない範囲であれば、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化錫、四塩化珪素、エポキシ基を分子内に有するアルコキシシラン、又はアミノ基含有アルコキシシランのような変性剤を用いることにより分岐構造又は極性官能基を有していてもよい。
【0074】
スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(以下、SBRともいう。)としては、用途等に応じて適切なものを使用できるが、具体的には、スチレン含量が0.1~70質量%のものが好ましく、5~50質量%のものがより好ましく、10~40質量%のものが更に好ましい。また、ビニル含量が0.1~60質量%のものが好ましく、0.1~55質量%のものがより好ましい。
【0075】
SBRの重量平均分子量(Mw)は100,000~2,500,000であることが好ましく、150,000~2,000,000であることがより好ましく、200,000~1,500,000であることが更に好ましい。上記の範囲である場合、加工性と機械強度を両立することができる。
【0076】
本発明において使用するSBRの示差熱分析法により求めたガラス転移温度は、-95~0℃であることが好ましく-95~-5℃であることがより好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることによって、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。
【0077】
本発明において用いることができるSBRは、スチレンとブタジエンとを共重合して得られる。SBRの製造方法について特に制限はなく、乳化重合法、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、これら製造方法の中でも、乳化重合法、溶液重合法が好ましい。
【0078】
乳化重合スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(以下、E-SBRともいう。)は、公知又は公知に準ずる通常の乳化重合法により製造できる。例えば、所定量のスチレン及びブタジエン単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合することにより得られる。
【0079】
S-SBRは、通常の溶液重合法により製造でき、例えば、溶媒中でアニオン重合可能な活性金属を使用して、所望により極性化合物の存在下、スチレン及びブタジエンを重合する。
【0080】
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は通常、単量体濃度が1~50質量%となる範囲で用いることが好ましい。
【0081】
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。これら活性金属の中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。更にアルカリ金属の中でも、有機アルカリ金属化合物がより好ましく用いられる。
【0082】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量は、要求されるS-SBRの分子量によって適宜決められる。
【0083】
有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
【0084】
極性化合物としては、アニオン重合において、反応を失活させず、ブタジエン部位のミクロ構造やスチレンの共重合体鎖中の分布を調整するために通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0085】
重合反応の温度は、通常-80~150℃、好ましくは0~100℃、更に好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式は、回分式あるいは連続式のいずれでもよい。また、スチレン及びブタジエンのランダム共重合性を向上させるため、重合系中のスチレン及びブタジエンの組成比が特定範囲になるように、反応液中にスチレン及びブタジエンを連続的あるいは断続的に供給することが好ましい。
【0086】
重合反応は、重合停止剤としてメタノール、イソプロパノール等のアルコールを添加して停止できる。重合反応停止後の重合溶液から、直接乾燥やスチームストリッピング等により溶媒を分離して、目的のS-SBRが回収できる。なお、溶媒を除去する前に、予め重合溶液と伸展油とを混合し、油展ゴムとして回収してもよい。
【0087】
上記SBRとしては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、SBRに官能基が導入された変性SBRを用いてもよい。官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0088】
変性SBRの製造方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4-トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N-ビニルピロリドン等の重合末端変性剤又は、特開2011-132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。
【0089】
この変性SBRにおいて、官能基が導入される重合体の位置については重合末端であってもよく、重合体鎖の側鎖であってもよい。
上記スチレン-イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM等)及びブチルゴムとしては、市販品を特に制限なく使用することができる。
【0090】
[フィラー]
本発明のゴム組成物には、フィラーが含まれていてもよい。フィラーとは、機械強度の向上、耐熱性又は耐候性等の物性の改良、硬度の調整、ゴムの増量等を目的として配合されるものである。上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、 炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ろう石クレー、カオリンクレー及び焼成クレー等のクレー、マイカ、ケイソウ土、カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維、カーボン繊維、繊維状フィラー、ガラスバルーン等の無機フィラー、架橋ポリエステル、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体樹脂、又は尿素樹脂等の樹脂から形成された樹脂粒子、合成繊維、及び天然繊維などが挙げられる。
【0091】
なお、上記フィラーが粒子状である場合、その粒子の形状は所望の物性等に応じて、球状等種々の形状を取ることができる。また、上記フィラーが粒子状である場合には、所望の物性等に応じて、中実粒子、中空粒子のいずれであってもよく、また複数の材料などで形成されたコアシェル型の粒子であってもよい。またこれらフィラーは、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、シランカップリング剤等種々の化合物により表面処理が施されたものであってもよい。
【0092】
これらフィラーの中でも、得られるゴム組成物及びその架橋物の補強性、価格、取り扱い易さ等の観点からは、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカが好ましく、炭酸カルシウム、カーボンブラックがより好ましい。これらフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するフィラーの含有量は、0.1~1500質量部が好ましく、1~1300質量部がより好ましく、5~1000質量部が更に好ましく、10~800質量部がより更に好ましい。
【0094】
ゴム成分として、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含む本発明のゴム組成物において、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含むゴム成分100質量部に対するフィラーの含有量は、0.1~1500質量部が好ましく、1~1300質量部がより好ましく、5~1000質量部が更に好ましく、10~800質量部がより更に好ましい。フィラーの含有量が前記範囲内であると、ゴム組成物の加工性、接着性が良好である。
【0095】
[オイル]
本発明のゴム組成物には、オイルが含まれていてもよい。オイルとは、主として本発明のゴム組成物の加工性、他の配合剤の分散性を向上するため、またゴム組成物の特性を所望の範囲とするために添加されるものである。上記オイルとしては、鉱物油、植物油、合成油などが挙げられる。
【0096】
鉱物油としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイルなどが挙げられる。植物油としては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油などが挙げられる。合成油としては、例えばエチレン・α-オレフィンオリゴマー、流動パラフィンなどが挙げられる。
【0097】
これらオイルの中でも、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイルが好ましく、ナフテン系オイルがより好ましい。
これらオイルは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するオイルの含有量は0.1~500質量部が好ましく、1~450質量部がより好ましく、5~400質量部が更に好ましく、8~350質量部がより更に好ましい。
【0099】
ゴム成分として、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含む本発明のゴム組成物において、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含むゴム成分100質量部に対するオイルの含有量は0.1~500質量部が好ましく、1~450質量部がより好ましく、5~400質量部が更に好ましく、8~350質量部がより更に好ましい。オイルの含有量が前記範囲内であると、ゴム組成物の加工性、接着性が良好である。
【0100】
[その他の成分]
本発明のゴム組成物は、そのゴム成分を架橋するために更に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、例えば、硫黄、硫黄化合物、酸素、有機過酸化物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、キノン及びキノンジオキシム誘導体、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、エポキシ化合物、金属ハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物、シラン化合物などが挙げられる。硫黄化合物としては、例えば、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどが挙げられる。有機過酸化物としては、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。これら架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記架橋剤は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対し、通常0.1~10質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.8~10質量部含有される。
【0102】
上記架橋剤は、架橋物の力学物性の観点から、ゴム成分として、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含む場合には、固形ゴム(B)及び変性液状ジエン系ゴム(A)とからなるゴム成分100質量部に対し、通常0.1~10質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.8~10質量部含有される。
【0103】
本発明のゴム組成物は、例えばゴムを架橋(加硫)するための架橋剤として硫黄、硫黄化合物等が含まれている場合には、更に加硫促進剤を含有してもよい。加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド-アミン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物などが挙げられる。これら加硫促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
上記加硫促進剤は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対し、通常0.1~15質量部、好ましくは0.1~10質量部含有される。
【0105】
上記加硫促進剤は、ゴム成分として、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含む場合には、固形ゴム(B)及び変性液状ジエン系ゴム(A)とからなるゴム成分100質量部に対し、通常0.1~15質量部、好ましくは0.1~10質量部含有される。
【0106】
本発明のゴム組成物は、例えばゴムを架橋(加硫)するための架橋剤として硫黄、硫黄化合物等が含まれている場合には、更に加硫助剤を含有してもよい。加硫助剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。これら加硫助剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
上記加硫助剤は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対し、通常0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部含有される。
【0108】
上記加硫助剤は、ゴム成分として、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)を含む場合には、固形ゴム(B)及び変性液状ジエン系ゴム(A)とからなるゴム成分100質量部に対し、通常0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部含有される。
【0109】
本発明のゴム組成物では、上記架橋剤、必要に応じて添加される加硫促進剤、及び必要に応じて添加される加硫助剤に替えて、あるいはこれらに加えて、他の架橋剤等により架橋される物であってもよい。
本発明のゴム組成物の他の架橋剤等としては、例えば、フェノール系樹脂(C)および硬化剤(D)の組み合わせ、エポキシ樹脂と3級アミンの組み合わせなどが挙げられる。
フェノール系樹脂(C)および硬化剤(D)の組み合わせは、タイヤビードフィラー用ゴム組成物で用いられることが好適である。フェノール系樹脂(C)および硬化剤(D)については、タイヤビードフィラー用ゴム組成物に関する説明の中で、詳細に説明をする。
エポキシ樹脂および3級アミンの組み合わせは、シーリング材用ゴム組成物で用いられることが好適である。エポキシ樹脂および3級アミンについては、シーリング材に関する説明の中で、詳細に説明をする。
【0110】
本発明のゴム組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で、加工性、流動性等の改良を目的とし、必要に応じて脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、C9系樹脂、ロジン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、フェノール系樹脂等の粘着付与樹脂を含有していてもよい。
【0111】
また、本発明のゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、耐候性、耐熱性、耐酸化性等の向上を目的として、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤、官能基含有化合物、ワックス、滑剤、可塑剤、加工助剤、顔料、色素、染料、その他着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料、分散剤、溶剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0112】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシル系化合物等が挙げられる。
老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。
【0113】
ゴム組成物と被着体との接着性、密着性等を向上させる等するために、官能基含有化合物を添加してもよい。官能基含有化合物としては、例えば、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の官能基含有アルコキシシラン、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリロイルホスフェート、含窒素アクリレート、含窒素メタクリレート等の官能基含有アクリレート及びメタクリレートなどが挙げられる。接着性、密着性の観点からは、上記官能基としては、エポキシ基が好ましい一態様である。
【0114】
顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0115】
帯電防止剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、ポリグリコール及びエチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル-メチルホスホネート、臭素-リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。これら添加剤は1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、上記各成分を均一に混合できれば特に限定されない。ゴム組成物の製造に用いる装置としては、例えば、ニーダールーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の接線式又は噛合式の密閉式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、ローラーなどが挙げられる。上記混合は、常圧下、空気雰囲気下で行うことができるが、混合する際に組成物中に気泡が混在するのを防ぐ観点から、減圧下又は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。このように均一に各成分を分散することにより得られた本発明のゴム組成物は、使用するまで密閉容器等で保存することが好ましい。
【0117】
[タイヤビードフィラー用ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、タイヤビードフィラー用ゴム組成物として用いることが好適な一態様である。かかるタイヤビードフィラー用ゴム組成物には、変性液状ジエン系ゴム(A)及び固形ゴム(B)に加えて、フェノール系樹脂(C)及び硬化剤(D)が含まれていることが好ましい。
【0118】
本発明のタイヤビードフィラー用ゴム組成物に使用されるフェノール系樹脂(C)としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂などが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂などが挙げられる。また、かかるノボラック型フェノール樹脂としては、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸などにより変性された物、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素で変性された物、ニトリルゴムなどのゴムにより変性された物であってもよい。
【0119】
本発明のタイヤビードフィラー用ゴム組成物に使用される硬化剤(D)としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンなどが挙げられる。中でも、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
【0120】
本発明のゴム組成物をタイヤビードフィラー用ゴム組成物として用いる場合には、固形ゴム(B)100質量部に対して、変性液状ジエン系ゴム(A)の含有量は、成形性と加硫後の剛性や強度の点からは、1~20質量部であることが好ましく、3~15質量部であることがより好ましく、4~12質量部であることが更に好ましい。1質量部より少ない場合には十分な成形性や加硫後の剛性が得られない場合があり、20質量部より多い場合には加硫物の機械強度が低下する場合がある。
【0121】
本発明のゴム組成物をタイヤビードフィラー用ゴム組成物として用いる場合には、固形ゴム(B)100質量部に対して、フェノール系樹脂(C)の含有量は、加硫後の硬度と靭性の点からは、5~40質量部であることが好ましく、15~25質量部であることがより好ましい。5質量部より少ない場合には加硫後の硬度が低下し剛性を損なう場合があり、40質量部より多い場合には靭性を失い、加硫物が脆くなる場合がある。
【0122】
本発明のゴム組成物をタイヤビードフィラー用ゴム組成物として用いる場合には、固形ゴム(B)100質量部に対して、硬化剤(D)の含有量は、加硫後の硬度と低燃費性の点からは、0.5~2.0質量部であることが好ましい。0.5質量部より少ない場合には加硫後の硬度が低下し剛性を損なう場合があり、2.0質量部より多い場合には変形時のエネルギーロスが増加し、燃費が悪化する場合がある。
【0123】
本発明のゴム組成物をタイヤビードフィラー用ゴム組成物として用いる場合には、上記以外の成分として、本発明のゴム組成物に含まれるその他の任意成分(例えば、カーボンブラック、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、オイル、加工助剤、可塑剤、老化防止剤など)を含んでもよい。
【0124】
[シーリング材]
本発明の上記ゴム組成物は、シーリング材用ゴム組成物として用いることが好適な一態様である。シーリング材は、下記の架橋物からなることが好ましい一態様である。シーリング材用ゴム組成物には、変性液状ジエン系ゴム(A)、必要に応じて含まれる固形ゴム(B)に加え、上述した架橋剤等が含まれていることが好ましい。また、シーリング材用ゴム組成物には、上述した架橋剤等に替え、あるいはこれらに加えて、エポキシ樹脂及び3級アミンの組み合わせが含まれるものであってもよい。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジフェニルチオエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。
【0125】
[架橋物]
本発明のゴム組成物を、必要に応じて油面鋼板等の基材等に塗布した後、これを架橋することにより架橋物を得ることができる。ゴム組成物の架橋条件は、その用途等に応じて適宜設定できるが、例えば130℃ ~250℃の温度範囲で、10分~60分間架橋反応を行うことにより、架橋物を作製することができる。例えば、自動車製造ラインで本発明のゴム組成物を用いる場合には、本発明のゴム組成物を各種部材の所望の部位(例えば、複数のフレーム部材のフランジ間の隙間)に塗布した後、車体の電着塗装工程で焼付乾燥を行う際に、その発生する熱により架橋することにより、所望の部位に架橋物を形成させることができる。
【0126】
本発明のゴム組成物から得られる架橋物は接着性に優れ、例えば自動車用部品等に好適に使用できる。
【0127】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の変性液状ジエン系ゴム(A)は、硬化性樹脂(E)とともに硬化性樹脂組成物の一成分として用いることができる。
【0128】
上記硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(E)としては、用途などに応じ、適切な物を選択して用いることができる。一般に、硬化性樹脂(E)は、比較的分子量の小さな硬化性化合物、硬化性のオリゴマー、またはこれらの混合物を含む物であり、硬化性樹脂(E)は、熱、光、触媒等の作用により、硬化反応を起こし、三次元網状構造を形成する。
【0129】
上記硬化性樹脂(E)としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、エステル(メタ)アクリレート樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、イミド樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、アリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。
【0130】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジフェニルチオエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
上記不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソ系不飽和ポリエステル樹脂、イソ系不飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。これら不飽和ポリエステル樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0132】
これら硬化性樹脂(E)の中でも、入手性および硬化物の基本物性の観点などから、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0133】
上記硬化性樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂を硬化性樹脂(E)として含むエポキシ樹脂組成物)では、硬化性樹脂(E)100質量部に対して、変性液状ジエン系ゴム(A)の含有量は、成形性と硬化後の耐熱性、強度、耐衝撃性の点からは、1~20質量部であることが好ましく、3~15質量部であることがより好ましく、4~12質量部であることが更に好ましい。1質量部より少ない場合には十分な成形性や硬化後の耐衝撃性が得られない場合があり、20質量部より多い場合には硬化物の機械強度が低下する場合がある。
【0134】
上記硬化性樹脂組成物では、さらに硬化性樹脂(E)を硬化可能な樹脂硬化剤(F)を含んでいてもよい。例えば、硬化性樹脂(E)がエポキシ樹脂である場合には、かかる硬化剤として、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物系化合物、フェノールノボラック樹脂等の重付加型エポキシ硬化剤;芳香族第3級アミン、イミダゾール系化合物(例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール等)、ルイス酸錯体等の触媒型エポキシ硬化剤等のエポキシ硬化剤を用いることができる。
【0135】
上記硬化性樹脂組成物では、硬化性樹脂(E)100質量部に対して、樹脂硬化剤(F)の含有量は、硬化速度、硬化物の物性の点から、0.5~5.0質量部であることが好ましい。0.5質量部より少ない場合には硬化速度が十分ではなく、硬化物の耐熱性、強度等が損なわれる場合があり、5.0質量部より多い場合には、硬化性樹脂組成物の硬化物の物性に悪影響を与える場合がある。
【0136】
上記硬化性組成物は、上記以外の成分として、本発明のゴム組成物に含まれ得る成分として例示した、フィラー;老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、官能基含有化合物、ワックス、滑剤、可塑剤、加工助剤、顔料、色素、染料、その他着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料、分散剤、溶剤等の添加剤などを含んでいてもよい。
【0137】
上記硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂(E)、変性液状ジエン系ゴム(A)、必要に応じて含まれる樹脂硬化剤(F)などを均一に混合できれば、どのような手法を用いて調製してもよい。例えば、所定の配合量の上記した材料をミキサーなどで十分混合し、次いでミキシングロール、押出し機等によって溶融混練したあと、冷却、粉砕する方法などが挙げられる。
【0138】
上記硬化性組成物は、硬化性樹脂(E)に好適な手段により硬化することにより硬化物を作製できる。例えば、硬化性樹脂(E)を熱により硬化する場合は、その硬化性樹脂(E)を含む硬化性樹脂組成物に適切な温度を選択し、適切な時間で硬化を行えばよい。このように硬化性樹脂組成物を熱により硬化させて硬化物を作製する際の成形方法としては、例えば、トランスファー成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法などが挙げられる。
【0139】
上記硬化性樹脂組成物からは、例えば、耐熱性、耐衝撃性、機械特性に優れた硬化物が得られる。そのため、上記硬化性樹脂組成物および該組成物から得られる硬化物は種々の用途に用いることができる。上記硬化性樹脂組成物および硬化物は、例えば、電気電子分野、建築土木分野、運輸運送分野(自動車分野等)などで使用できる。より具体的な用途としては、例えば、繊維補強複合材用接着剤(コンクリート用繊維補強複合材料用接着剤、自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置用繊維補強複合材料用接着剤、各種スポーツ用品用繊維補強複合材料用接着剤等)、組み立て用接着剤(自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置における部品組み立て用接着剤等)などの各種接着剤;上下水道用防食・防水塗料、金属用防食塗料などの各種塗料;建築土木用塗装プライマー、自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置用の塗装プライマーなどの各種塗装プライマー;金属用ライニング材、コンクリート用ライニング材、タンク類用ライニング材などの各種ライニング材;コンクリート用亀裂補修材などの各種補修材;プリント配線基板、絶縁ボード、半導体封止材、パッケージ材などの各種電気電子部品などが挙げられる。
【実施例】
【0140】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0141】
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下のとおりである。
<変性液状ジエン系ゴム(A)>
後述の製造例1~4で得られた変性液状ジエン系ゴム
<ジエン系ゴム>
合成イソプレンゴム:IR-2200(JSR株式会社製)
後述の比較製造例1~4で得られた(変性)液状ジエン系ゴム
<固形ゴム(B)>
天然ゴム :STR20
ポリブタジエンゴム :ジエンNF35R(旭化成株式会社製)
<フェノール系樹脂(C)>
固形ノボラックレジン:PR12686(住友ベークライト株式会社製)
<硬化剤(D)>
ヘキサメチレンテトラミン:ノクセラーH(大内新興化学工業株式会社製)
<任意成分>
オイル(TDAE):VivaTec500(H&R社製)
ナフテン系オイル :SUNTHENE 250(日本サン石油株式会社製)
カーボンブラック :ダイアブラックH(三菱ケミカル株式会社製)
炭酸カルシウム :白艶華CCR(白石カルシウム社製)
硫黄(1) :ミュークロンOT-20(四国化成工業株式会社)
硫黄(2) :微粉硫黄200メッシュ(鶴見化学工業株式会社製)
加硫促進剤(1) :サンセラーNS-G (三新化学工業株式会社製)
加硫促進剤(2) :ノクセラーDM (大内新興化学工業株式会社製)
加硫促進剤(3) :ノクセラーBG (大内新興化学工業株式会社製)
亜鉛華 :酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製)
ステアリン酸 :ルナックS-20(花王株式会社製)
老化防止剤(1) :ノクラック6C(大内新興化学工業株式会社製)
老化防止剤(2) :アンテージRD(川口化学工業株式会社製)
老化防止剤(3) :ノクラックNS-6(大内新興化学工業株式会社製)
テルペン樹脂 :YS resin Px800(ヤスハラケミカル株式会社製)
エポキシ樹脂(1):Araldite GY-260(ハンツマン・ジャパン株式会社製)
エポキシ樹脂(2):jER828(三菱ケミカル株式会社製)
3級アミン :Ancamine K-54(Evonik社製)
エポキシ硬化剤 :キュアゾール2E4MZ(四国化成工業株式会社製)
【0142】
比較製造例1:液状ポリイソプレン(A’-1)
十分に乾燥した耐圧容器を窒素置換し、この耐圧容器に、シクロヘキサン600g、及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)212gを仕込み、70℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を70℃となるように制御しながら、イソプレン2050gを加えて1時間重合した。その後、メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合溶液(2862g)を得た。得られた重合反応液に水を添加して撹拌し、水で重合反応液を洗浄した。撹拌を終了し、重合溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合反応液を70℃で12時間乾燥することにより、液状ポリイソプレン(以下、「重合体(A’-1)」ともいう)を得た。
【0143】
製造例1:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(A-1)
重合体(A’-1)100質量部に無水マレイン酸5質量部とBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、本州化学工業株式会社製)0.1質量部を添加し、160℃で20時間反応させることにより、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(A-1)(以下、「重合体(A-1)」ともいう)を得た。なお、酸価滴定により求めた無水マレイン酸の反応率は99%以上であり、重合体(A-1)における酸無水物に由来する官能基(a)の当量は2,100g/eqであった。
【0144】
製造例2:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(A-2)
重合体(A’-1)100質量部に無水マレイン酸10質量部とBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、本州化学工業株式会社製)0.1質量部を添加し、160℃で20時間反応させることにより、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(A-2)(以下、「重合体(A-2)」ともいう)を得た。なお、酸価滴定により求めた無水マレイン酸の反応率は99%以上であり、重合体(A-2)における酸無水物に由来する官能基(a)の当量は1,100g/eqであった。
【0145】
製造例3:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン メチルエステル化物(A-3)
重合体(A-1)に、付加された無水マレイン酸基に対して1.05モル当量のメタノールを加え、90℃で10時間反応させることにより、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン メチルエステル化物(A-3)(以下、「重合体(A-3)」ともいう)を得た。なお、赤外吸収スペクトルから算出した、重合体(A-3)中の無水マレイン酸由来官能基の反応率は100%であった。
【0146】
製造例4:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン メチルエステル化物(A-4)
重合体(A-2)に、付加された無水マレイン酸基に対して1.05モル当量のメタノールを加え、90℃で10時間反応させることにより、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン メチルエステル化物(A-4)(以下、「重合体(A-4)」ともいう)を得た。なお、赤外吸収スペクトルから算出した、重合体(A-4)中の無水マレイン酸由来官能基の反応率は100%であった。
【0147】
比較製造例2:液状ポリイソプレン(A’-2)
十分に乾燥した耐圧容器を窒素置換し、この耐圧容器に、n-ヘキサン600g、及びn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)21.9gを仕込み、70℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を70℃となるように制御しながら、イソプレン2050gを加えて1時間重合した。その後、メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合溶液(2672g)を得た。得られた重合反応液に水を添加して撹拌し、水で重合反応液を洗浄した。撹拌を終了し、重合溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合反応液を70℃で12時間乾燥することにより、液状ポリイソプレン(以下、「重合体(A’-2)」ともいう)を得た。
【0148】
比較製造例3:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(A”-1)
十分に乾燥した耐圧容器を窒素置換し、この耐圧容器に、n-ヘキサン600g、及びn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)39.3gを仕込み、70℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を70℃となるように制御しながら、イソプレン2050gを加えて1時間重合した。その後、メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合溶液(2689g)を得た。得られた重合反応液に水を添加して撹拌し、水で重合反応液を洗浄した。撹拌を終了し、重合溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合反応液を70℃で12時間乾燥することにより、液状ポリイソプレン(以下、「重合体(A’-3)」ともいう)を得た。重合体(A’-3)100質量部に無水マレイン酸1.5質量部とBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、本州化学工業株式会社製)0.1質量部を添加し、160℃で20時間反応させることにより、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン(A”-1)(以下、「重合体(A”-1)」ともいう)を得た。なお、酸価滴定により求めた無水マレイン酸の反応率は99%以上であり、重合体(A”-1)における酸無水物に由来する官能基(a)の当量は6,700g/eqであった。
【0149】
比較製造例4:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン メチルエステル化物(A"-
2)
重合体(A’-3)100質量部に無水マレイン酸5質量部とBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、本州化学工業株式会社製)0.1質量部を添加し、160℃で20時間反応させた後、付加された無水マレイン酸基に対して1.05モル当量のメタノールを加え、90℃で10時間反応させることにより、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレン メチルエステル化物(A”-2)(以下、「重合体(A”-2)」ともいう)を得た。なお、酸価滴定により求めた無水マレイン酸の反応率は99%以上であり、重合体(A”-2)における酸無水物に由来する官能基(a)の当量は2,100g/eqであった。また、赤外吸収スペクトルから算出した、重合体(A”-2)中の無水マレイン酸由来官能基の反応率は100%であった。
【0150】
なお、変性液状ジエン系ゴム(A)等の各物性の測定方法及び算出方法は以下の通りである。
【0151】
(数平均分子量及び分子量分布の測定方法)
製造例1~4及び比較製造例1~4で得られた重合体のMn及びMwはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求め、Mw/Mnはこれらの値から算出した。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8320GPC」
・分離カラム :東ソー株式会社製 カラム「TSKgelSuperHZ4000」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7mL/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
【0152】
(ビニル含量)
各製造例で得た液状ジエン系ゴムのビニル含量を、日本電子株式会社製1H-NMR(500MHz)を使用し、サンプル/重クロロホルム=50mg/1mLの濃度、積算回数1024回で測定した。得られたスペクトルのビニル化されたジエン化合物由来の二重結合のピークと、ビニル化されていないジエン化合物由来の二重結合のピークとの面積比から、ビニル含量を算出した。
【0153】
(溶融粘度の測定方法)
製造例1~4及び比較製造例1~4で得られた重合体の38℃及び60℃における溶融
粘度をブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS. INC.製)により測定した。
【0154】
(ガラス転移温度の測定方法)
製造例1~4及び比較製造例1~4で得られた重合体10mgをアルミパンに採取し、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件においてサーモグラムを測定し、DDSCのピークトップの値をガラス転移温度(Tg)とした。
【0155】
(付加反応率)
変性反応後の試料3gにトルエン180mL、エタノール20mLを加えて溶解した後、0.1N水酸化カリウムのエタノール溶液で中和滴定し酸価を求めた。
酸価(meq/g)=(A-B)×F/S
A:中和に要した0.1N水酸化カリウムのエタノール溶液滴下量(mL)
B:試料を含まないブランクでの0.1N水酸化カリウムのエタノール溶液滴下量(mL)
F:0.1N水酸化カリウムのエタノール溶液の力価
S:秤量した試料の質量(g)
【0156】
また、変性反応後の試料をメタノールで4回洗浄(試料1gに対して5mL)して未反応の無水マレイン酸を除去した後、試料を80℃で12時間、減圧乾燥し、上記と同様の方法にて酸価を求めた。下記式に基づき変性化合物の付加反応率を算出した。
〔変性化合物の付加反応率(%)〕=〔洗浄後の酸価(meq/g)〕/〔洗浄前の酸価(meq/g)〕×100
【0157】
(官能基当量)
上記で求めた洗浄後の酸価から、下記式に従い、酸無水物に由来する官能基(a)の当量を算出した。
〔酸無水物に由来する官能基(a)の当量(g/eq)〕=1,000/〔洗浄後の酸価(meq/g)〕
【0158】
(酸無水物基の反応率)
化学式(2)又は(3)で示される化合物と、酸無水物変性液状ジエン系ゴムを反応させた場合における酸無水物基の反応率を、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR-4200(日本分光株式会社製)を用いて測定した反応前後の赤外吸収スペクトルから、下記式に従い算出した。
〔酸無水物基の反応率(%)〕=〔1-(反応後の酸無水物に由来する官能基のピーク強度比)/(反応前の酸無水物に由来する官能基のピーク強度比)〕×100
【0159】
なお、反応に用いた酸無水物が無水マレイン酸の場合は、未反応物のC=O伸縮に由来するピークが1781cm-1付近に出現し、反応前後で不変な重合体の主鎖構造に由来するピークとの強度比を取ることができる。
【0160】
【0161】
(実施例1~7及び比較例1~6)
表2に記載した配合割合(質量部)にしたがって、変性液状ジエン系ゴム(A)又はジエン系ゴム、固形ゴム(B)、フェノール系樹脂(C)、オイル、カーボンブラック、亜鉛華、ステアリン酸及び老化防止剤を、それぞれ密閉式バンバリーミキサーに投入して開始温度50℃、樹脂温度が150℃となるように6分間混練した後、ミキサー外に取り出して室温まで冷却した。次いで、この混合物を再度バンバリーミキサーに入れ、硬化剤(D)、硫黄及び加硫促進剤を加えて開始温度50℃、到達温度100℃となるように75秒間混練することでゴム組成物を得た。
【0162】
(ムーニー粘度)
ゴム組成物の加工性の指標として、JIS K6300に準拠し、加硫前のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を130℃で測定した。
なお表2におけるムーニー粘度は、比較例1の値を100とした際の相対値である。数値が小さいほど当該組成物は加工性が良好である。
【0163】
(成形性)
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートを細かく刻み、ロングダイ(2φ/32mm)とショートダイ(2φ/0.25mm)を装着したツインキャピロ R6000(IMATEK社製)に投入し、120℃でせん断速度100/s及び500/sそれぞれにおいて押出し成形を行い、得られたストランドの形状から目視で成形性を評価した。
○:ストランドに寄りが確認されない
×:ストランドに寄りが確認される
【0164】
【0165】
また、得られたゴム組成物をプレス成形(145℃、15~25分)して架橋物(加硫ゴム)シート(厚み2mm)を作製し、下記の方法に基づき、硬度、破断エネルギー及び貯蔵弾性率を評価した。結果を表3に示す。
【0166】
(硬度)
実施例及び比較例で作製した架橋物シートを用いて、JIS K6253に準拠して、タイプD硬度計により硬度を測定した。各実施例及び比較例の数値は、表3の比較例1の値を100とした際の相対値である。なお、数値が大きいほど当該組成物は変形が小さく剛性に優れる。
【0167】
(破断エネルギー)
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートからJISダンベル状3号形試験片を打ち抜き、インストロン社製引張試験機を用いて、JIS K 6251に準じて引張破断エネルギーを測定した。各実施例及び比較例の数値は、表3の比較例1の値を100とした際の相対値である。なお、数値が大きいほど当該組成物は強度に優れる。
【0168】
(貯蔵弾性率)
実施例及び比較例で作製したゴム組成物のシートから縦40mm×横5mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度30℃、周波数10Hz、静的歪み10%、動的歪み2%の条件で、貯蔵弾性率を測定した。各実施例及び比較例の数値は、表3の比較例1の値を100とした際の相対値である。なお、数値が大きいほど当該組成物は変形が小さく剛性に優れる。
【0169】
【0170】
表2及び表3より、まず比較例1と比較例3とを比較すると、ジエン系ゴムとして合成イソプレンゴムを用いた比較例1と比べて、比較製造例2で得られた未変性の液状ポリイソプレンを用いた比較例3の方がムーニー粘度が低く、比較製造例2で得られた未変性の液状ポリイソプレンは本発明の(I)~(III)の要件は満たさないものの、合成イソプレンゴムよりは加工性に優れることがわかる。ここで、表2及び3から、実施例2と比較例1、3とを比較すると、本発明の要件を満たす変性液状ジエン系ゴムを用いている実施例2では、比較例1よりもムーニー粘度が低く加工性については比較例3と同等程度まで改善しながら、比較例3よりも硬度と破断エネルギーが高く機械特性に優れ、特に貯蔵弾性率が大幅に向上されており、剛性にも優れることがわかる。
【0171】
また、本発明の要件を満たす変性液状ポリイソプレンを用いた実施例5、官能基当量が実施例5と同様であり(III)の要件を満たさない比較製造例4で得られた変性液状ポリイソプレンを用いた比較例6、及び比較例1を比較すると、実施例5、比較例6ともに比較例1よりもムーニー粘度が低く加工性が改善されているが、実施例5の方が比較例6よりも更に加工性に優れている。また、貯蔵弾性率についても実施例5、比較例6ともに比較例1よりも十分に改善されているが、実施例5では更に500/sにおける成形性も向上していることがわかる。
【0172】
更に、無水マレイン酸で変性した液状ポリイソプレンを用いた実施例3と、メタノールで更に変性された液状ポリイソプレンを用いた実施例6とを比較すると、500/sの成形性については実施例3の方が優れる一方、貯蔵弾性率については実施例6が優れており、求められる性能に応じて使い分けることも可能である。
【0173】
また、官能基当量が2,100g/eqである実施例5、1,100g/eqである実施例7及び比較例1を比較すると、硬度及び破断エネルギーは実施例5、7ともに比較例1より改善されており、また実施例5と7では硬度、破断エネルギー及び貯蔵弾性率についてはいずれも実施例7が優れる一方、500/sでの成形性は実施例5の方が優れており、本発明の要件を満たす範囲において、適宜官能基当量を調整することにより、物性を改善しつつ求められる性能に応じて使い分けることが可能である。
【0174】
(実施例8~11及び比較例7~9)
表4に記載した配合割合(質量部)にしたがって、変性液状ジエン系ゴム(A)又はジエン系ゴム、テルペン樹脂、老化防止剤、エポキシ樹脂及び3級アミンを配合し、ニーダーを用いて50℃で混練してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、下記の方法に基づき各評価を行った。結果を表5に示す。
【0175】
【0176】
(保持力)
実施例又は比較例で作製したゴム組成物を、被着体である1mm厚ステンレス板(SUS304)に20μm厚で塗工し、120℃で30分間熱処理した後、ゴム組成物層を15mm×12mmのサイズにカットして試験片とし、当該試験片に1kgの重りを取り付けて、25℃又は40℃の条件下にて、JIS Z 0237に準拠して重りが落下するまでの時間を測定した。重りが落下するまでの時間が長いほど、保持力に優れていることを示す。
【0177】
(接着力)
JIS K 6850に準じてせん断接着力の測定を行った。試験材料はステンレス板(SUS304)又はアルミ板(A5052)で、厚さ1mmの物を用いた。組成物を厚さ1mmになるように上記基板に塗布した後、120℃、30分間の条件で架橋して試料を作製し、せん断接着力を測定した。せん断接着力を測定する際の引張り速度は50mm/分とした。比較例8の接着力と比べて、以下の基準で評価した。
A:比較例8の接着力の1.5倍以上
B:比較例8の接着力の0.75倍以上、1.5倍未満
C:比較例8の接着力の0.5倍以上、0.75倍未満
D:比較例8の接着力の0.5倍未満
【0178】
(塗工性)
得られたゴム組成物をカートリッジガンに充填しステンレス板(SUS304)上に塗布した時の、作業性を評価した。塗布し易く、糸引きが無いものを○、粘度が高く塗布しにくく、糸引きするものを×とした。
【0179】
(耐液垂れ性)
得られたゴム組成物をカートリッジガンに充填しステンレス板(SUS304)上に塗布した時の、液垂れを目視で評価した。液垂れが全く無いものを○、液垂れが確認されたものを×とした。
【0180】
【0181】
実施例8~11と比較例7~9とを比較すると、製造例で得られた本願の変性液状ジエン系ゴム(A)を用いると、保持力、接着力、塗工性及び耐液垂れ性を兼ね備えたゴム組成物が得られることが分かる。
【0182】
(実施例12~15及び比較例10~12)
表6に記載した配合割合(質量部)にしたがって、変性液状ジエン系ゴム(A)又はジエン系ゴム、固形ゴム(B)、炭酸カルシウム、ナフテン系オイル、ステアリン酸、亜鉛華及び老化防止剤を配合し、ブラベンダーを用いて50℃で混練した。次いで、硫黄及び加硫促進剤を表6に示す割合で添加し、50℃で混練してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物について、下記の方法に基づき各評価を行った。結果を表7に示す。
【0183】
【0184】
(接着力)
JIS K 6850に準じてせん断接着力の測定を行った。試験材料はステンレス板(SUS304)、アルミ板(A5052)又はポリエチレン板(HDPE、ショアー硬度D60)で、厚さ1mmの物を用いた。組成物を厚さ1mmになるように上記基板に塗布した後、150℃、30分間の条件で架橋して試料を作製し、せん断接着力を測定した。せん断接着力を測定する際の引張り速度は50mm/分とした。比較例11の接着力と比べて、以下の基準で評価した。
A:比較例11の接着力の1.5倍以上
B:比較例11の接着力の0.75倍以上、1.5倍未満
C:比較例11の接着力の0.5倍以上、0.75倍未満
D:比較例11の接着力の0.5倍未満
【0185】
(塗工性)
得られたゴム組成物をカートリッジガンに充填しステンレス板(SUS304)上に塗布した時の、作業性を評価した。塗布し易く、糸引きが無いものを○、粘度が高く塗布しにくく、糸引きするものを×とした。
【0186】
【0187】
実施例12~15と比較例10~12とを比較すると、製造例で得られた本願の変性液状ジエン系ゴム(A)を用いると、接着力及び塗工性を兼ね備えた固形ゴム(B)とのゴム組成物が得られることが分かる。
【0188】
(実施例16~18及び比較例13、14)
表8に記載した配合割合(質量部)にしたがって、変性液状ジエン系ゴム(A)、エポキシ樹脂を自転公転撹拌脱泡機(シンキー株式会社製)で4分間混合し、2分間脱泡した。この混合物に、更にエポキシ樹脂硬化剤を添加し、4分間混合、2分間脱泡することでエポキシ樹脂組成物を得た。注型枠に得られたエポキシ樹脂組成物を流し込んだ後、60℃で4時間、更に昇温速度30℃/時間で150℃まで昇温し、4時間硬化することでエポキシ樹脂硬化物を作製し、下記の方法に基づき粘度、荷重たわみ温度、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみ、アイゾット衝撃強さを評価した。結果を表8に示す。
【0189】
(粘度)
変性液状ジエン系ゴム(A)とエポキシ樹脂との混合物の粘度を、東機産業株式会社製TVE-22LTを用いて、JIS K 7117-2に準じて測定した。測定条件は以下の通りである。
・温度 :23℃
・ロータ :3°×R9.7
・回転数 :0.5rpm
・測定時間 :1分間静置後1分間測定
【0190】
(荷重たわみ温度)
得られたエポキシ樹脂硬化物の荷重たわみ温度を、株式会社安田精機製作所製ヒートデストーションテスターNo.148-HD-PCを用い、JIS K 7191-2(フラットワイズ、A法)に準じて測定した。なお荷重たわみ温度が高いほど、得られたエポキシ樹脂硬化物は耐熱性に優れる。
【0191】
(曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみ)
得られたエポキシ樹脂硬化物の曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみを、インストロン社製万能材料試験機5966型を用い、JIS K 7171に準じて測定した。測定条件は以下の通りである。なお曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみが高いほど、得られたエポキシ樹脂硬化物は曲げ物性に優れる。
・試験片 :80mm×10mm×4mm
・試験速度 :2mm/分
・支点間距離 :64mm
【0192】
(アイゾット衝撃強さ)
得られたエポキシ樹脂硬化物のアイゾット衝撃強さを、株式会社東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機DG-UB型を用い、JIS K 7110に準じて測定した。測定条件は以下の通りである。なおアイゾット衝撃強さが高いほど、得られたエポキシ樹脂硬化物は耐衝撃性に優れる。
・試験片 :80mm×10mm×4mm、ノッチ無し
・測定条件 :ハンマ/1.0J
【0193】
【0194】
実施例16~18と比較例13、14とを比較すると、本発明の要件を満たす変性液状ジエン系ゴム(A)を用いると、耐熱性、曲げ物性、耐衝撃性を兼ね備えたエポキシ樹脂組成物が得られることが分かる。また、本発明の要件を満たす変性液状ジエン系ゴム(A)を用いると、変性液状ジエン系ゴム(A)とエポキシ樹脂との混合物の粘度が低くなる。そのため、エポキシ樹脂組成物を作製する際の作業性、エポキシ樹脂組成物の成形性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明で得られるゴム組成物は、作業性に優れ、またこのゴム組成物から得られる架橋物は接着性にも優れるため、シーリング材、各種部材の接着などに好適に用いることができ、粘接着剤、自動車などの種々の産業用製品、日用品などに有用である。また、本発明のゴム組成物は、タイヤビードフィラーにも好適に用いることができ、有用である。さらに本発明の変性液状ジエン系ゴム(A)を含む硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂の持つ特性を損なうことなく、耐熱性、機械特性、耐衝撃性を向上することが可能であり、有用である。