(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240405BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240405BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K5/13
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2023087893
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】袋田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】亀尾 幸司
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112280170(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111393745(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104987605(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102181099(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102070831(CN,A)
【文献】特表2005-520026(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110819009(CN,A)
【文献】国際公開第2009/038237(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112538209(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004363(US,A1)
【文献】特表2002-525287(JP,A)
【文献】植原弘明、岩田晋弥、関井康雄、高田達雄,密度汎関数法を使用した酸化防止剤の電気トリー抑制作用の解析,電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌),日本,2017年,Vol.137、No.11,p.600-607
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
CAPlus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体と、2,4-ジ-tert-ブチルフェノールと、を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、10~1800質量ppmである、プロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体の含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、50質量部以上である、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、10~1200質量ppmである、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
有機系過酸化物、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤および着色剤からなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
エチレン-α-オレフィン共重合体をさらに含む、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の質量を100質量部としたときに、1~40質量部である、請求項
5に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
無機充填材をさらに含む、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機充填材の含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、1~40質量部である、請求項
7に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項9】
エチレン-α-オレフィン共重合体及び無機充填材をさらに含む、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物は、良好な機械的特性を有し、様々な用途に使用することができる。プロピレン系樹脂組成物は、例えば、自動車の車室内の部材(内装材)を形成する材料として、好適に使用されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プロピレン系樹脂組成物は導電性が低いため、成形加工時などに発生した静電気がなかなか散逸せず、そのため、得られる成形品である製品にゴミやほこりが付着する場合がある。
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、帯電防止性能に優れたプロピレン系樹脂組成物等を提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を進めたところ、ジ-tert-ブチルフェノールをプロピレン系樹脂組成物に適量添加することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
[1]プロピレン系重合体と、ジ-tert-ブチルフェノールと、を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
ジ-tert-ブチルフェノールの含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、10~1800質量ppmである、プロピレン系樹脂組成物。
[2]前記プロピレン系重合体の含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、50質量部以上である、[1]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[3]エチレン-α-オレフィン共重合体をさらに含む、[1]又は[2]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[4]前記エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の質量を100質量部としたときに、1~40質量部である、[3]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[5]無機充填材をさらに含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[6]前記無機充填材の含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、1~40質量部である、[5]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[7]エチレン-α-オレフィン共重合体及び無機充填材をさらに含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯電防止性能に優れたプロピレン系樹脂組成物および当該プロピレン系樹脂組成物の成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明にかかる実施形態について具体的に説明する。本発明は、以下に示される具体的な実施形態に限定されない。
【0009】
用語の説明
本発明の実施形態について説明するにあたり、まず、共通して用いられる用語について説明する。
【0010】
本明細書において「モノマー単位」とは、モノマー(単量体)を重合して得られる重合体に含まれるモノマー由来の構成単位(残基)を意味している。
【0011】
本明細書において「α-オレフィン」とは、末端側(α位)に炭素-炭素二重結合を有する3個以上の炭素原子からなる炭素原子鎖を含むオレフィンを意味している。
【0012】
本明細書において「極限粘度(単位:dL/g)」は、下記の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて温度135℃で測定される値である。
【0013】
極限粘度は、具体的には、ウベローデ型粘度計を用いて、複数の濃度について還元粘度を測定し、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する「外挿法」により求めることができる。より具体的には、極限粘度は「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の方法を用い、濃度0.1g/dL、0.2g/dLおよび0.5g/dLの3点について還元粘度を測定し、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する方法により求めることができる。
【0014】
本明細書において「メルトフローレート(MFR)」とは、「メルトマスフローレート」を意味しており、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で、JIS K7210-1:2014およびK7210-2:2014に準拠して測定されるメルトフローレートである。
【0015】
本明細書においては、特に断らない限り、「%」は質量%を意味し、「部」は「質量部」を意味している。
【0016】
(プロピレン系樹脂組成物)
本発明の実施形態にかかるプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)と、ジ-tert-ブチルフェノール(B)とを含有するプロピレン系樹脂組成物において、ジ-tert-ブチルフェノール(B)の含有量が、プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、10~1800質量ppmである、プロピレン系樹脂組成物である。
【0017】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は帯電防止特性に優れる。
【0018】
以下、本実施形態のプロピレン系樹脂組成物に含まれうる成分について説明する。
【0019】
プロピレン系重合体(A)
プロピレン系重合体とは、プロピレン単位を、全構成単位(100質量%)に対して50質量%よりも多く含有する重合体である。プロピレン系重合体におけるプロピレン単位は、通常100質量%以下である。
【0020】
プロピレン系重合体の例としては、プロピレン単独重合体;およびプロピレンと当該プロピレンと共重合しうる1種以上の他のモノマーが任意の比率の組み合わせで重合した共重合体が挙げられる。当該共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0021】
プロピレンと共重合しうる他のモノマーの例としては、プロピレン以外のオレフィン(例、エチレン、炭素原子数が4以上であるオレフィン)が挙げられる。オレフィンの炭素原子数は12以下であってよい。
【0022】
炭素原子数が4以上であるオレフィンは、直鎖状のオレフィンであっても、分岐状のオレフィンであってもよい。炭素原子数が4以上であるオレフィンは、環状構造を有するオレフィンであってもよく、例えば、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタンなどの環状構造を有するα-オレフィンであってもよい。
【0023】
プロピレンと共重合しうるプロピレン以外のオレフィンの例としては、プロピレン以外のα-オレフィン(例、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、および1-デセン)が挙げられる。プロピレンと共重合しうるプロピレン以外のオレフィンは、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、および1-デセンであり、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンである。
【0024】
(プロピレン系ランダム共重合体)
プロピレン系ランダム共重合体の例としては、プロピレン単位とエチレン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム重合体(1)ともいう。);プロピレン単位と、炭素原子数が4以上であるα-オレフィン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム重合体(2)ともいう。);および、プロピレン単位と、エチレン単位と、炭素原子数が4個以上のα-オレフィン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム重合体(3)ともいう。)が挙げられる。
【0025】
プロピレン系ランダム共重合体を構成しうる炭素原子数が4以上であるα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数が4~10であるα-オレフィンである。炭素原子数が4~10であるα-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、および1-デセンが挙げられ、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンである。
【0026】
ランダム共重合体(2)の例としては、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、およびプロピレン-1-デセンランダム共重合体が挙げられる。
【0027】
ランダム共重合体(3)の例としては、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-デセン共重合体が挙げられる。
【0028】
ランダム共重合体(1)におけるエチレン単位の含有量は、好ましくは0.1~40質量%である。
【0029】
ランダム共重合体(2)における炭素原子数が4以上であるα-オレフィン単位の含有量は、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0030】
ランダム共重合体(3)におけるエチレン単位および炭素原子数が4以上であるα-オレフィン単位の合計含有量は、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0031】
これらランダム共重合体(1)~(3)におけるプロピレン単位の含有量は、それぞれ、好ましくは60~99.9質量%である。
【0032】
プロピレン系重合体(A)は、例えば、重合触媒を用いて下記の重合方法により製造することができる。
【0033】
重合触媒の例としては、チーグラー型触媒系;チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンとを含む触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、それと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、および有機アルミニウム化合物を含む触媒系、触媒成分(例、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物等)を、無機粒子(例、シリカ、粘土鉱物等)に担持し、変性させた触媒系が挙げられる。また、このような触媒系の存在下でエチレンやα-オレフィンなどの単量体を予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。チーグラー・ナッタ型触媒系の例としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
【0034】
このような触媒系の例としては、特開昭61-218606号公報、特開平5-194685号公報、特開平7-216017号公報、特開平9-316147号公報、特開平10-212319号公報、ヘテロファジックプロピレン重合体材料については特開2004-182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0035】
重合方法の例としては、バルク重合、溶液重合、および気相重合が挙げられる。ここで、バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいう。溶液重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
【0036】
重合方法を実施するにあたり、その重合方式の例としては、バッチ式、連続式およびこれらの組み合わせが挙げられる。重合方式は、直列に連結した複数の重合反応槽を用いて行われる多段式であってもよい。
【0037】
重合方法における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系重合体に応じて適宜決定することができる。
【0038】
プロピレン系重合体の製造において、得られたプロピレン系重合体を、残留溶媒や前記オリゴマー等の不純物が揮発し得る温度であって、かつそのプロピレン系重合体が融解する温度よりも低い温度で保持することにより、得られたプロピレン系重合体中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生した超低分子量のオリゴマー等を除去する処理を行ってもよい。残留溶媒やオリゴマー等の不純物の除去方法の例としては、特開昭55-75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法が挙げられる。
【0039】
プロピレン単独重合体は、プロピレン系樹脂組成物の溶融時の流動性と、プロピレン系樹脂組成物を成形した成形体の靱性とを良好にする観点から、極限粘度[η]が、好ましくは0.1~5dL/gであり、より好ましくは0.5~4dL/gであり、さらに好ましくは0.6~3dL/gである。
【0040】
また、プロピレン単独重合体は、分子量分布Mw/Mnが、プロピレン系樹脂組成物の溶融時の流動性と、樹脂組成物を含む成形体の靱性とを良好にする観点から、好ましくは2以上10未満であり、より好ましくは3~8であり、さらに好ましくは3~6である。ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0041】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)として、2種以上のプロピレン系重合体を含んでいてもよい。
【0042】
2種以上のプロピレン系重合体を含む場合における2種以上のプロピレン重合体の組み合わせの例としては、重量平均分子量等が異なる2種以上のプロピレン単独重合体の組み合わせ、及び、ヘテロファジックプロピレン重合体材料が挙げられる。
【0043】
ここで、「ヘテロファジックプロピレン重合体材料」とは、2種以上のプロピレン系重合体を含み、当該2種以上のプロピレン系重合体が相溶せずに、互いに別の相を形成している材料を意味する。
【0044】
ヘテロファジックプロピレン重合体材料の例としては、下記重合体(I)および重合体(II)の組み合わせを含む材料が挙げられる。
【0045】
ここで、重合体(I)は、プロピレン単位を全構成単位の量に対して80質量%を超えて100質量%以下有する重合体である。重合体(I)は、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。重合体(I)におけるプロピレン単位以外のモノマー単位の合計の含有量は、重合体(I)の質量を100質量%としたときに、通常0質量%以上20質量%未満であり、0質量%であってもよく、0.01質量%以上であってもよい。
【0046】
重合体(I)が有していてもよいプロピレン単位以外のモノマー単位の例としては、エチレン単位および炭素原子数が4以上であるα-オレフィン単位が挙げられる。
【0047】
重合体(I)を構成しうる炭素原子数が4以上であるα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数が4~10であるα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンであり、さらに好ましくは1-ブテンである。
【0048】
重合体(I)の例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、重合体(I)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン系樹脂組成物を成形した成形体の剛性を良好にする観点から、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0050】
また、重合体(II)は、プロピレン単位と、エチレン単位および炭素原子数が4以上であるα-オレフィン単位からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位との共重合体である。重合体(II)は、好ましくはプロピレン単位を全構成単位の量に対して0質量%より多く90質量%以下有する重合体であり、より好ましくは0質量%より多く80質量%以下有する重合体である。重合体(II)は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0051】
重合体(II)におけるエチレン単位および炭素原子数が4以上であるα-オレフィン単位の合計の含有量は、重合体(II)の質量を100質量%としたときに、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは、20~60質量%である。
【0052】
重合体(II)を構成しうる、炭素原子数が4以上であるα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数が4~10であるα-オレフィンであり、既に説明した重合体(I)を構成しうるα-オレフィンの例と同様の例が挙げられる。
【0053】
重合体(II)の例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、およびプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。重合体(II)は、好ましくはプロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体であり、より好ましくはプロピレン-エチレン共重合体である。
【0054】
ヘテロファジックプロピレン重合体材料における重合体(II)の含有量は、重合体(I)および重合体(II)の合計質量を100質量%としたときに、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは1~45質量%であり、さらに好ましくは5~40質量%であり、特に好ましくは7~35質量%である。
【0055】
重合体(I)および重合体(II)は、それぞれ1種の重合体のみからなっていても、2種以上の重合体を含んでいてもよい。
【0056】
ヘテロファジックプロピレン重合体材料の例としては、重合体(I)がプロピレン単独重合体である、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、およびプロピレン単独重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせが挙げられる。
【0057】
また、ヘテロファジックプロピレン重合体材料としては、重合体(I)がプロピレン単位およびプロピレン単位以外のモノマー単位を含む重合体である組み合わせであってもよい。重合体(I)の種類を先に、重合体(II)の種類を後に記載すると、このようなヘテロファジックプロピレン重合体材料の具体例としては、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-オクテン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、および(プロピレン-1-オクテン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせが挙げられる。
【0058】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物に含まれうるヘテロファジックプロピレン重合体材料としては、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、および(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせが好ましく、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせがより好ましい。
【0059】
ヘテロファジックプロピレン重合体材料は、重合体(I)を生成させる前段の重合工程と、前段で生成した重合体(I)が存在した状態で重合体(II)をさらに生成させる重合工程を有する多段重合により製造することができる。重合は、前記プロピレン系重合体の製造に使用可能な触媒として例示した触媒系を用いて行うことができる。
【0060】
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体およびヘテロファジックプロピレン重合体材料からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0061】
プロピレン系重合体(A)は、13C-NMRで測定される、アイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm]分率ともいう。)が、0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましい。プロピレン系重合体のアイソタクチック・ペンタッド分率が1に近いほど、プロピレン系重合体の分子構造の立体規則性が高くなり、プロピレン系重合体の結晶性が高くなる。プロピレン系重合体が共重合体である場合には、共重合体におけるプロピレン単位の連鎖についてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定することができる。
【0062】
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン系樹脂組成物の成形における加工性を良好にする観点から、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1g/10分以上であり、より好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは500g/10分以下であり、より好ましくは400g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分~500g/10分である。
【0063】
なお、本実施形態のプロピレン系重合体(A)の極限粘度は、プロピレン系樹脂組成物の流動性、加工性を良好にする観点から、通常5dL/g未満であり、0.1dL/g以上であり、好ましくは0.5dL/g以上であり、より好ましくは0.7dL/g以上4dL/g未満であり、さらに好ましくは0.8dL/g以上3dL/g未満である。
【0064】
本実施形態において、プロピレン系重合体(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、成形体の外観、伸び特性を良好にする観点から、通常、100,000~1,000,000であり、好ましくは500,000~1,000,000である。
【0065】
プロピレン系重合体(A)は、成形性、力学特性を向上させる観点から、分子量分布(Mw/Mn)が、通常10以下であってよく、好ましくは3~8である。
【0066】
ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出することができる。
【0067】
プロピレン系重合体が多段重合で形成された重合体(I)と重合体(II)とからなる重合体材料である場合には、前段の重合で調製した重合体(I)の一部を重合反応器から抜き出してその極限粘度を求め、多段重合により最終的に得られたプロピレン系重合体の極限粘度(以下、([η]Totalという。)を求め、これらの極限粘度の値と、各重合体の含有量とを用いて、後段の重合で形成された重合体の極限粘度を算出することができる。
【0068】
また、重合体(I)と重合体(II)とからなる重合体材料が、重合体(I)が前段の重合工程で得られ、重合体(II)が後段の重合工程で得られる方法によって製造された材料である場合には、重合体(I)および重合体(II)それぞれの含有量、極限粘度数([η]Total、[η]I、[η]II)の測定および算出の手順は、下記のとおりである。
【0069】
前段の重合工程で得た重合体(I)の極限粘度([η]I)、後段の重合工程後の最終重合体(すなわち、重合体(I)と重合体(II)とからなる重合体)の前記の方法で測定した極限粘度([η]Total)、最終重合体に含有される重合体(II)の含有量から、重合体(II)の極限粘度[η]IIを下記式により計算することができる。
【0070】
[η]II=([η]Total-[η]I×XI)/XII
[η]Total:最終重合体の極限粘度(単位:dL/g)
[η]I:重合体(I)の極限粘度(単位:dL/g)
XI:最終重合体に対する重合体(I)の質量比
XII:最終重合体に対する重合体(II)の質量比
なお、XIおよびXIIは重合時の物質収支から求めることができる。
【0071】
重合体(I)の極限粘度(以下、[η]Iという。)は、好ましくは0.1~5dL/gであり、より好ましくは0.5~4dL/gであり、さらに好ましくは0.6~3dL/gである。
【0072】
重合体(II)の極限粘度(以下、[η]IIという。)は、好ましくは1~10dL/gであり、より好ましくは1.5~9dL/gであり、さらに好ましくは2~8dL/gである。
【0073】
また、[η]IIの[η]Iに対する比([η]II/[η]I)は、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~10である。
【0074】
最終重合体に対する重合体(II)の質量比XIIは、重合体(I)および最終重合体の各々の結晶融解熱量を用いて次式から算出してもよい。
XII=1-(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:最終重合体(重合体(I)および重合体(II))の融解熱量(単位:cal/g)
(ΔHf)P:重合体(I)の融解熱量(単位:cal/g)
【0075】
また、重合体(I)のGPCにより測定された分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1以上10未満であり、より好ましくは2以上7未満であり、さらに好ましくは3以上5未満である。
【0076】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系重合体(A)の含有量は、プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、好ましくは50質量部以上であり、60質量部以上であってよく、70質量部以上であってよく、80質量部以上であってよく、90質量部以上であってよく、99質量部以下であってよく、50~95質量部であってよく、60~95質量部であってよい。
【0077】
ジ-tert-ブチルフェノール(B)
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、ジ-tert-ブチルフェノールを含む。ここで「ジ-tert-ブチルフェノール」の具体例としては、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、及び、3,5-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。
2,4-ジ-tert-ブチルフェノールの構造式を以下に示す。
【化1】
【0078】
本実施形態におけるジ-tert-ブチルフェノールの含有量は、帯電防止性能を発揮させる観点から、プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、10質量ppm以上であり、20質量ppm以上であってよく、50質量ppm以上であってよく、70質量ppmであってよく、100質量ppm以上であってよく、200質量ppm以上であってよく、250質量ppm以上であってよく、300質量ppm以上であってよく、400質量ppm以上であってよい。同様の観点から、ジ-tert-ブチルフェノールの含有量は、プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、1800質量ppm以下であり、1600質量ppm以下であってもよく、1400質量ppm以下であってもよく、1200質量ppm以下であってよく、1000質量ppm以下であってよく、900質量ppm以下であってよく、800質量ppm以下であってよく、700質量ppm以下であってよく、600質量ppm以下であってよい。
【0079】
本実施形態において、ジ-tert-ブチルフェノールの含有量は、プロピレン系樹脂組成物の製造における原料仕込み量に基づいて算出されるが、原料仕込み量が不明の場合等にはプロピレン系樹脂組成物、例えば、ペレットや成形体から測定してもよい。
【0080】
樹脂組成物からジ-tert-ブチルフェノールの含有量を測定する場合、具体的には、プロピレン系樹脂組成物を下記の射出成形条件で成形した成形体を、100℃で15分間加熱したときに発生するジ-tert-ブチルフェノールの量を含有量とすることができる。
射出成形条件:シリンダー温度;200℃、金型温度;40℃、充填圧力;15MPa、保圧;4.3MPa、保圧時間;40秒
【0081】
より具体的には、例えば、本実施形態のプロピレン系樹脂組成物を、従来公知の任意好適な射出成形機を用いて、上記射出成形条件にて射出成形することにより成形体の切削片2gを形成し、切削片を100℃で15分間加熱したときに発生するジ-tert-ブチルフェノールを従来公知の任意好適なガスクロマトグラフ測定装置を用いて検出するガスクロマトグラフ測定を行うことにより定量することができる。
【0082】
プロピレン系樹脂組成物におけるジ-tert-ブチルフェノールの含有量を、上記のとおりとすれば、帯電防止性を高めることができる。
【0083】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、エチレン-α-オレフィン共重合体を含みうる。
【0084】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)においては、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量を100質量%としたときに、エチレンに由来する単量体単位の含有量と炭素原子数4以上であるα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量との合計が100質量%であってよい。
【0085】
炭素原子数が4以上のα-オレフィンとしては、例えば、炭素原子数4~12のα-オレフィンが挙げられる。炭素原子数が4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンおよび1-デセンが挙げられる。炭素原子数が4以上のα-オレフィンとしては、中でも、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが好ましい。上記α-オレフィンは、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタンなどの環状構造を有するα-オレフィンであってもよい。
【0086】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)としては、例えば、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-デセン共重合体、エチレン-(3-メチル-1-ブテン)共重合体、およびエチレンと環状構造を有するα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0087】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)において、炭素原子数が4以上のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量を基準(100質量%)としたときに、1~49質量%であることが好ましく、5~49質量%であることがより好ましく、24~49質量%であることがさらに好ましい。
【0088】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)は、MFR(温度190℃、2.16kgf荷重で測定)が0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。当該MFRは、0.5g/10分以上70g/10分以下であることがより好ましい。
【0089】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)の密度は、成形体の耐衝撃性を向上させる観点から、0.850~0.890g/cm3であることが好ましく、0.850~0.880g/cm3であることがより好ましく、0.855~0.870g/cm3であることがさらに好ましい。
【0090】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)は、重合触媒を用いて、エチレンおよび炭素原子数4以上のα-オレフィンを重合することにより製造することができる。
【0091】
製造のための重合触媒としては、例えば、メタロセン触媒に代表される均一系触媒、およびチーグラー・ナッタ型触媒が挙げられる。
【0092】
均一系触媒としては、例えば、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物とアルキルアルミノキサンとからなる触媒;シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物、当該遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒;並びに無機粒子(シリカ、粘土鉱物等)に、触媒成分(シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物、イオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物等)を担持して変性させた触媒が挙げられる。
【0093】
チーグラー・ナッタ型触媒としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせた触媒が挙げられる。
【0094】
エチレン-α-オレフィン共重合体成分(C)としては、市販品を用いてもよい。市販のエチレン-α-オレフィン共重合体(C)としては、例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社製エンゲージ(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、およびエスプレンSPO(登録商標)が挙げられる。
【0095】
プロピレン系樹脂組成物におけるエチレン-α-オレフィン共重合体(C)の含有量は、プロピレン系樹脂組成物の総量を100質量部としたときに、通常、1質量%以上40質量部以下であり、5質量部以上35質量部以下であることが好ましく、5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0096】
無機充填材(D)
本実施形態にかかるプロピレン系樹脂組成物は、機械的特性、寸法安定性などを良好にする観点から、無機充填材(D)をさらに含みうる。
【0097】
無機充填材(D)の例としては、(i)繊維状無機充填材および(ii)非繊維状無機充填材が挙げられる。本実施形態において、無機充填材(D)は2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下、具体的に説明する。
【0098】
(i)繊維状無機充填材
本実施形態において、繊維状無機充填材は、平均繊維径が0.2μm~20μmであり、平均繊維長が5μm~200μmであり、アスペクト比が10~30であることが好ましい。成形体の剛性を改善し、成形体の外観を改善する観点から、平均繊維径は0.3μm~10μmであり、平均繊維長は7μm~150μmであり、アスペクト比は12~25であることがより好ましい。
【0099】
繊維状無機充填材の平均繊維径、および平均繊維長は、例えば、電子顕微鏡により得られた繊維状無機充填材の画像から、無作為に50本以上を選択して測定した繊維径および繊維長それぞれの平均値であり、アスペクト比はこれらの平均値を用いて算出することができる。
【0100】
繊維状無機充填材の例としては、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、チタン酸カリウム繊維、水酸化マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維が挙げられる。これらのうち、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、ケイ酸カルシウム繊維を用いることが好ましい。
【0101】
繊維状無機充填材はそのまま使用することができる。界面接着性を向上させ分散性をより向上させる観点から、繊維状無機充填材に対し、さらに、例えば、シランカップリング剤、高級脂肪酸金属塩を用いて表面処理して使用してもよい。
【0102】
表面処理に用いられうる高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0103】
本実施形態において、繊維状無機充填材の態様の例としては、粉状、フレーク状、顆粒状が挙げられる。本実施形態においては、前記のいずれの態様の繊維状無機充填材を用いてもよい。取扱い性が良好であることから、繊維状無機充填材としては、顆粒状である繊維状無機充填材を用いることが好ましい。
【0104】
(ii)非繊維状無機充填材
非繊維状無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、硫酸カルシウム、珪砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。成形体の衝撃強度を向上させ、外観を良好にする観点から、タルクを用いることが好ましい。
【0105】
非繊維状無機充填材の平均粒子径は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。ここで、非繊維状無機充填材の平均粒子径は、JIS R1629に規定された方法に従い、レーザー回析法により測定された体積基準の粒子径分布測定データに基づいて決定されるものであり、該粒子径分布測定データにおいて、粒子径が小さい側からの粒子数の累積が50%に達したときの粒子径(50%相当粒子径)を意味する。このように定義される粒子径は、一般に「50%相当粒子径」と称され、「D50」で表記される。
【0106】
非繊維状無機充填材はそのまま使用することができる。界面接着性を向上させ、分散性を向上させる観点から、非繊維状無機充填材に対し、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、界面活性剤で表面を処理して使用してもよい。
【0107】
表面処理に用いられうる界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類が挙げられる。
【0108】
繊維状無機充填材はそのまま使用しても、界面接着性を向上させ、分散性を向上させる観点から、シランカップリング剤、高級脂肪酸金属塩を用いて表面処理して使用してもよい。
【0109】
ポリオレフィン系樹脂組成物における無機充填材の含有量は、プロピレン系樹脂組成物の総量を100質量部としたときに、通常、1質量部以上40質量部以下であり、5質量部以上35質量部以下であることが好ましく、5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0110】
その他の添加剤(E)
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、既に説明した上記の成分以外に、さらなる任意成分として、その他の各種の添加剤(E)を含んでいてもよい。
【0111】
このような任意成分の添加剤の例としては酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤(例えば、無機顔料、有機顔料)、難燃剤、エラストマー、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、顔料分散剤、発泡剤、発泡核剤、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤、光拡散剤および分子量調整剤が挙げられる。
【0112】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、これらの添加剤を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意成分を任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。
【0113】
添加剤(E)としては、中でも、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤が好適に用いられる。以下、具体的に説明する。なお、本実施形態のプロピレン系樹脂組成物としては、好ましくは、上記成分の他に、有機系過酸化物、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤および着色剤からなる群から選ばれる1種以上をさらに含有するプロピレン系樹脂組成物が挙げられる。
【0114】
プロピレン系樹脂組成物は、既に説明した添加剤以外の添加剤として、樹脂、ゴムといったその他の添加剤を含有してもよい。
【0115】
その他の添加剤としては、例えば、ポリスチレン類(例えばポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、さらにはバイオ原料から抽出された植物由来のモノマーを重合して製造されるPLA樹脂(ポリ乳酸)が挙げられる。
【0116】
(プロピレン系樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、既に説明した各成分を溶融混練することにより製造することができる。溶融混練時の温度は、180℃以上であってよく、180~300℃であってもよく、180~250℃であってもよい。
【0117】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物の製造のための溶融混練における溶融混練装置の例としては、従来公知の任意好適なバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機、二軸異方向回転押出機が挙げられる。
【0118】
溶融混練装置の具体例としては、Coperion製ZSK(登録商標)、東芝機械(株)製TEM(登録商標)、日本製鋼所(株)製TEX(登録商標)、(株)テクノベル製KZW(登録商標)、日本製鋼所(株)製CMP(登録商標)、TEX(登録商標)、神戸製鋼所(株)製FCM(登録商標)、NCM(登録商標)、LCM(登録商標)が挙げられる。
【0119】
原料の混練の順序は特に限定されない。例えば、すべての原料を一括して製造装置に投入することにより混練してもよく、選択された成分のうち、一部の成分を混練した後、得られた混練物と他の成分とを混練してもよい。
【0120】
また、少なくとも2種の成分を含む中間組成物αと、他の原料とを溶融混練してプロピレン系樹脂組成物を製造してもよい。例えば、プロピレン系重合体(A1)及びジ-tert-ブチルフェノールを含む中間組成物αと、ジ-tert-ブチルフェノールを含まないプロピレン系重合体(A2)とを溶融混練してもよい。ここで、プロピレン系重合体(A1)とプロピレン系重合体(A2)とは、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。中間組成物αは、さらに、エチレン-α-オレフィン共重合体及び無機充填材の内の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0121】
中間組成物αは、プロピレン系重合体(A)及びジ-tert-ブチルフェノールを含み、ジ-tert-ブチルフェノールの含有量が、中間組成物の全質量を100質量部としたときに、1800質量ppm超であってよく、このような材料はマスターバッチとして利用されうる。
また、プロピレン系樹脂組成物の製造に原料として供されるプロピレン系重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、無機充填材などの各種成分の少なくとも1種は、リサイクルされたものであってもよい。
【0122】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物の性状は、特に制限されない。本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、例えば、ストランド(フィラメント)状、シート状、平板状またはペレット状の態様とすることができる。ペレット状の形状は、例えば、ストランド状のプロピレン系樹脂組成物を調製した後、適当な長さに裁断することにより製造することができる。
【0123】
(成形体)
本発明は、プロピレン系樹脂組成物を成形した成形体にも関する。すなわち、本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、成形体を形成するための材料として好適に用いることができる。成形体は、プロピレン系樹脂組成物を各種成形方法によって、成形することにより得ることができる。成形体の形状やサイズ等は、適宜、決定すればよい。
【0124】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、例えば、自動車材料、家電材料、モニター用材料、OA機器材料、医療用材料、排水パン、トイレタリー材料、食品包装容器、ボトル、コンテナー、シート、フィルムといった成形体の材料として用いることができる。本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、帯電しにくく、例えば、ゴミなどの付着を抑制できるので、好ましくは車両関連部材の材料、家電材料、レトルトパウチや電子レンジで加熱可能なパウチといった食品包装容器に適用することができる。
【0125】
本実施形態のプロピレン系樹脂組成物は、特に射出成形用材料として用いることが好ましい。
【0126】
以下、本実施形態のプロピレン系樹脂組成物を射出成形用材料として用いて射出成形体とする例について説明する。
【0127】
射出成形体は、本実施形態のプロピレン系樹脂組成物を成形した成形体である。射出成形体は、一般に寸法安定性に優れている。
【0128】
射出成形体は、従来公知の任意好適な射出成形法により製造することができる。射出成形法としては、例えば、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、およびインサート・アウトサート成形法が挙げられる。
【0129】
本実施形態の成形体(射出成形体)は、用途に対応した任意好適な形状および寸法として上記の方法により製造することができる。
【0130】
ここで、射出成形体である車両関連部材の材料用途としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品、およびバンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、ファン、アンダーデフレクター等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品が挙げられる。
【0131】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー等)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料が挙げられる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0133】
実施例及び比較例では、以下の原料を使用した。
【0134】
プロピレン系重合体(A)
プロピレン系重合体(A)として下記ヘテロファジックプロピレン重合材料を準備した。
【0135】
ヘテロファジックププロピレン重合材料(A-1)
ヘテロファジックププロピレン重合材料(A-1)を、特開2004-182981号公報の実施例1に記載の方法によって得られる重合触媒の存在下、気相重合法によって製造した。得られた重合材料の物性は下記のとおりである。
【0136】
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf):32.4g/10分
重合体(I):プロピレン単独重合体成分(P部) 極限粘度:1.00dL/g
重合体(II):プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(EP部)極限粘度:5.0dL/g
プロピレン-エチレンランダム共重合体成分量:16重量%
重合体(II)中のエチレンに由来する構造単位の含有量(重合体(II)の全重量を基準とした、エチレンに由来する単量体単位の含有量):43.0重量%
【0137】
重合体(II)中のエチレンに由来する構造単位の含有量
重合体(II)中のエチレンに由来する構造単位の含有量は、下記の条件で測定した13C-NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules,15,1150-1152(1982))に基づいて求めた。13C-NMRスペクトルは、直径10mmの試験管中でヘテロファジックプロピレン重合材料約200mgを3mLのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させた試料を用い、下記条件で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0138】
極限粘度(単位:dL/g)
極限粘度は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
【0139】
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dL、0.2g/dL及び0.5g/dLの3点について還元粘度を測定する。還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法により、極限粘度数を求める。外挿法による極限粘度数の計算方法は、例えば、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載されている。
【0140】
ジ-tert-ブチルフェノール(B)
関東化学株式会社製の2,4-ジ-tert-ブチルフェノール(B-1)を準備した。
【0141】
ジ-tert-ブチルフェノール(B)
関東化学株式会社製の2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(B-2)を準備した。
【0142】
エチレン-α-オレフィン共重合体(C)
下記のエチレン-1-オクテンランダム共重合体(C-1)を準備した。
ダウ・ケミカル社製「EG8200」
密度:0.870g/cm3
MFR(温度190℃、2.16kgf荷重で測定):5.0g/10分
【0143】
無機充填材(D)
下記無機フィラーを準備した。
タルク(D-1)
林化成製「MW UPN TT-H」
平均粒子径D50[L](レーザー回析法、50%相当粒子径):4.90μm
【0144】
ここで、タルクの平均粒子径D50[L]は、日機装株式会社製 マイクロトラック粒度分析計MT-3300EXIIを用い、JIS R1629に規定された方法に従って、下記の条件にて粒子を分散させたのち、測定した。
【0145】
粒子の分散処理
分散媒:エタノール
装置:ホモジナイザ―
出力:40W
処理時間:10分
【0146】
添加剤(E)
下記添加剤(F-1)、添加剤(F-2)、添加剤(F-3)を準備した。
【0147】
添加剤(F-1)堺化学工業社製「ステアリン酸カルシウム」
【0148】
添加剤(F-2)BASF社製「IRGAFOS168」(リン系酸化防止剤)
【0149】
添加剤(F-3)BASF社製「IRGANOX1010(フェノール系酸化防止剤)
【0150】
(実施例A1~A7、比較例A1~A3、実施例B1~B3)
プロピレン系樹脂組成物の製造
表1~表3の組成の原料を、テクノベル(株)製 二軸混練機KZW-15/45MG(シリンダー内径15.5mm、スクリュー外径15.0mm、L/D=45)を用いて、溶融混練することによりペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0151】
溶融混練の条件は、シリンダー温度200℃;スクリュー回転数500rpm;スクリーンメッシュは100メッシュと50メッシュの2枚重ね;押出量6kg/hrとした。評価結果を表1~表3に示す。
【0152】
体積固有抵抗評価用射出成形体の製造
前記の方法で得られたペレット状のプロピレン系樹脂組成物を、100℃で1時間乾燥させた後、以下の条件で射出成形して、長さ150mm、幅90mm、厚さ3.0mmである平板状の成形体を製造した。
射出成形機:住友重機械工業株式会社製SE130DU(型締力130トン、シリンダー径40mm)
シリンダー温度:220℃
金型温度:50℃
射出速度:20mm/秒
冷却時間:30秒
【0153】
体積固有抵抗の測定(単位:Ω・cm)
得られた平板状の成形体1枚を、JIS-K6911に則り、平板状の成形体用大径電極(東亜ディーケーケー株式会社製 SME-8310)に、該平板上の成形体を設置して、500Vの電圧を印加し、デジタル絶縁計(東亜ディーケーケー株式会社製 DSM-8103)にて1分後の抵抗値を測定し、その値をもとに体積固有抵抗値を算出した。体積固有抵抗値が小さいほど、帯電防止性に優れる。
【0154】
【0155】
【0156】
【要約】
【課題】帯電防止性能に優れるプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体とジ-tert-ブチルフェノールとを含有するプロピレン系樹脂組成物において、ジ-tert-ブチルフェノールの含有量が、プロピレン系樹脂組成物の全質量を100質量部としたときに、10~1800質量ppmである、プロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし