(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】二次電池の負極用バインダー、二次電池の負極および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240408BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240408BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20240408BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240408BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240408BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240408BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240408BHJP
C08F 236/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/134
C08F236/04
(21)【出願番号】P 2022550003
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2021017579
(87)【国際公開番号】W WO2022114831
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0163138
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164756
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・マン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スンジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジョ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウン・ウ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195552(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132396(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/226035(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/194101(WO,A1)
【文献】特開2016-134241(JP,A)
【文献】特開2016-134242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C08F 236/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃で測定した貯蔵弾性率が100MPa以上である(共)重合体を含
み、
前記貯蔵弾性率は、
前記(共)重合体を含む2mm以下の厚さのフィルムに対して、-60~100℃の温度範囲内で、1Hzの周波数および変形(Strain)振幅0.1%の剪断変形を加え、5℃/分の昇温速度で昇温させて測定され、
前記(共)重合体のガラス転移温度での貯蔵弾性率に対する100℃で測定した貯蔵弾性率の比率が10%以上である、二次電池の負極用バインダー。
【請求項2】
前記負極用バインダーは、
-60~100℃の温度範囲内で、1Hzの周波数および変形(Strain)振幅0.1%の剪断変形を加え、5℃/分の昇温速度で昇温させ、フィルムの動的変形に対する粘弾性挙動を測定する時、粘弾性損失係数(tanδ)の最大ピーク温度(Tp)が0℃以下である、
請求項
1に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項3】
前記負極用バインダーは、(共)重合体を含み、
前記(共)重合体は、繰り返し単位の総重量(100重量%)中、
a)脂肪族共役ジエン系の第1単量体由来の第1繰り返し単位35~60重量%、
b)芳香族ビニル系の第2単量体由来の第2繰り返し単位0.1~25重量%、
c)ニトリル系の第3単量体由来の第3繰り返し単位10~35重量%、および
d)不飽和カルボン酸系の第4単量体由来の第4繰り返し単位15~35重量%を含む、
請求項1
又は2に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項4】
前記第1単量体は、
1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,2-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,4-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-エチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエンおよび7-メチル-1,6-オクタジエンからなる群より選択された1種以上である、
請求項
3に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項5】
前記第2単量体は、
スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなる群より選択された1種以上である、
請求項
3又は
4に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項6】
前記第3単量体は、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびアリルシアニドからなる群より選択された1種以上である、
請求項
3~
5のいずれか一項に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項7】
前記第4単量体は、
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、およびナジン酸からなる群より選択された1種以上である、
請求項
3~
6のいずれか一項に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項8】
前記(共)重合体は、50nm~500nmの平均粒径を有するラテックス(latex)粒子である、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項9】
水性溶媒をさらに含む、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項10】
前記水性溶媒は、
前記(共)重合体100重量部に対して、50~1,000重量部含まれる、
請求項
9に記載の二次電池の負極用バインダー。
【請求項11】
請求項1~1
0のいずれか一項に記載の負極用バインダーを製造する方法であって、
乳化剤および重合開始剤の存在下、単量体混合物を乳化重合して、前記(共)重合体を製造する段階;を含む、
二次電池の負極用バインダーの製造方法。
【請求項12】
前記単量体混合物の総重量(100重量%)中、a)脂肪族共役ジエン系の第1単量体35~55重量%、b)芳香族ビニル系の第2単量体0.1~20重量%、c)ニトリル系の第3単量体15~35重量%、およびd)不飽和カルボン酸系の第4単量体15~35重量%を含む、
請求項1
1に記載の二次電池の負極用バインダーの製造方法。
【請求項13】
前記乳化剤および重合開始剤の存在下、単量体混合物を乳化重合して、前記(共)重合体を製造する段階;は、
多段重合によって行われる、
請求項1
1又は1
2に記載の二次電池の負極用バインダーの製造方法。
【請求項14】
前記乳化剤および重合開始剤の存在下、単量体混合物を乳化重合して、前記(共)重合体を製造する段階;は、
前記乳化剤および前記重合開始剤の存在下、前記a)脂肪族共役ジエン系の第1単量体の全部、前記b)芳香族ビニル系の第2単量体の全部、前記c)ニトリル系の第3単量体の全部、および前記d)不飽和カルボン酸系の第4単量体の一部を1次乳化重合する段階;および
前記1次乳化重合後、前記d)不飽和カルボン酸系の第4単量体の残部を投入し、2次乳化重合する段階;を含む、
請求項1
3に記載の二次電池の負極用バインダーの製造方法。
【請求項15】
前記1次乳化重合段階におけるd)不飽和カルボン酸系の第4単量体の一部、および前記2次乳化重合段階におけるd)不飽和カルボン酸系の第4単量体の残部は、
1:0.1~1:10の重量比である、
請求項1
4に記載の二次電池の負極用バインダーの製造方法。
【請求項16】
請求項1~1
0のいずれか一項に記載の二次電池の負極用バインダーおよび負極活物質を含む、
二次電池の負極合剤。
【請求項17】
前記負極活物質は、炭素質物質およびケイ素化合物からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1
6に記載の二次電池の負極合剤。
【請求項18】
請求項1
6又は1
7に記載の負極合剤を含む、負極合剤層;および
負極集電体を含む、
二次電池の負極。
【請求項19】
請求項
18に記載の負極を含む、
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年11月27日付の大韓民国特許出願第10-2020-0163138号および2021年11月25日付の大韓民国特許出願第10-2021-0164756号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池の負極用バインダー、二次電池の負極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯用コンピュータ、携帯用電話、カメラなどの小型電子機器だけでなく、電気自動車、電力貯蔵装置などの大型電子機器の電源として、二次電池が注目されている。
【0004】
二次電池の負極は、集電体および負極活物質層を含み、ここで、負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0005】
具体的には、負極活物質としては、リチウムの挿入/脱離可能な人造、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきており、放電容量を高めるために、シリコン、スズ、シリコン-スズ合金などを負極活物質として用いるための研究も進められている。
【0006】
ただし、負極活物質の放電容量が大きくなるほど、充放電による体積変化が深刻で、負極接着力を弱め、二次電池の寿命を短縮させる問題がある。
【0007】
これに関連して、負極活物質の体積変化に耐えられる程度の弾性を有するバインダーが要求される。特に、二次電池の寿命を確保するために、電池の実使用温度区間で適切な弾性を有するバインダーを負極に適用する必要がある。また、負極製造時の工程性を確保するためにも、弾性の高いバインダーが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、工程性を改善しながらも負極活物質の体積変化に耐えられる程度の弾性を有し、究極的には二次電池の寿命を確保できる、負極用バインダーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本発明の実施形態では、実使用温度区間での弾性率に優れた二次電池の負極用バインダー、これを含む負極合剤、負極および二次電池を提供する。
【0010】
具体的には、本発明の一実施形態では、100℃で測定した貯蔵弾性率が100MPa以上である(共)重合体を含む、
二次電池の負極用バインダーを提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態では、前記負極用バインダーを製造する方法であって、乳化剤および重合開始剤の存在下、単量体混合物を乳化重合して、前記(共)重合体を製造する段階;を含む、二次電池の負極用バインダーの製造方法を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、前記二次電池の負極用バインダーおよび負極活物質を含む、二次電池の負極合剤を提供する。
【0013】
また、本発明の他の実施形態では、負極合剤を含む、負極合剤層;および負極集電体を含む、二次電池の負極を提供する。
【0014】
また、本発明のさらに他の実施形態では、前記負極を含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
前記一実施形態の二次電池の負極用バインダーは、工程性を改善しながらも負極活物質の体積変化に耐えられる程度の弾性を有し、特に、電池の実使用温度区間で適切な弾性を有することによって、究極的には二次電池の寿命を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0017】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0018】
さらに、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されると言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できることを意味する。
【0019】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0020】
二次電池の負極用バインダー
本発明の一実施形態では、100℃で測定した貯蔵弾性率が100MPa以上である(共)重合体を含む、二次電池の負極用バインダーを提供する。
【0021】
負極用バインダーの物性
動的機械分析は、外部変化を与えた時、回復力または変形率を測定して粘性の性質と弾性の性質を知るのに用いられるものであって、測定された弾性率は貯蔵弾性率と損失弾性率からなる複素数であり、貯蔵弾性率が大きいほど、完全弾性体に近い性質を示す。高分子の機械的物性は、高分子鎖が動く程度に応じて変化し、温度の上昇に応じて高分子鎖の動きが大きくなることにより機械的物性が減少できる。特に、高分子のガラス転移温度前後で機械的物性の減少幅は非常に大きくなる。
【0022】
ここで、貯蔵弾性率は、変形エネルギーが応力として物質の内部に追跡される成分で、その物質の弾性成分を示す。
【0023】
また、一般に温度が上昇するにつれて貯蔵弾性率が低下するが、一実施形態による負極バインダーが(共)重合体を含む場合、温度が上昇しても貯蔵弾性率が大きく低下しない特徴がある。
【0024】
前記一実施形態の負極用バインダーが電池の実使用温度区間で適切な弾性を有するかを確認するために、100℃で現れる(共)重合体の貯蔵弾性率を測定することができる。
【0025】
具体的には、前記一実施形態の負極用バインダーに対して、フィルムの動的変形に対する粘弾性挙動を測定して、100℃での(共)重合体の貯蔵弾性率を求めることができる。
【0026】
一実施形態により、前記貯蔵弾性率は、前記(共)重合体を含む2mm以下の厚さのフィルムに対して、-60~100℃の温度範囲内で、1Hzの周波数および変形(Strain)振幅0.1%の剪断変形を加え、5℃/分の昇温速度で昇温させて測定することができる。
【0027】
より具体的には、前記フィルム状の試験片は、前記一実施形態の負極用バインダーを乾燥させて2mm(Thickness)の厚さ以下のフィルム(film)状に製造した後、18mm(長さ:Length)*6mm(幅:Width)の長方形状にパンチングしたものであってもよい。
【0028】
また、前記フィルム状の試験片を動的機械分析器(TA instrument社)に投入し、Film Tensionモードで周波数1Hz、5℃/分で昇温しながら、変形振幅0.1%の剪断変形で各測定温度(-60℃~100℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定することができる。
【0029】
前記一実施形態の負極用バインダーに対して、前記方法でフィルムの動的変形に対する粘弾性挙動を測定して、100℃で測定した貯蔵弾性率を求めると、100MPa以上、102MPa以上、105MPa以上、または108MPa以上であってもよい。その上限は特に限定しないが、500MPa以下、400MPa以下、350MPa以下、または300MPa以下であってもよい。
【0030】
前記100℃で測定した(共)重合体の貯蔵弾性率が100MPa水準以上の場合、二次電池用負極の製造時、負極活物質の多様な体積変化にも耐えられて工程性を改善し、これによって、電池の実使用温度区間で最適な弾性を付与して二次電池の寿命を確保することができる。また、電極の厚さ膨張を抑制する効果がある。
【0031】
また、前記一実施形態の負極用バインダーが電池の実使用温度区間で適切な粘弾性を有するかを確認するために、フィルムの動的変形に対する粘弾性挙動を測定して、粘弾性損失係数(tanδ)の最大ピーク温度(Tp)を求めることができる。
【0032】
具体的には、前記貯蔵弾性率の測定と同様の方法で、フィルムの動的変形に対する粘弾性挙動を測定することができる。
【0033】
前記一実施形態の負極用バインダーに対して、前記方法でフィルムの動的変形に対する粘弾性挙動を測定して、粘弾性損失係数(tanδ)の最大ピーク温度(Tp)を求めると、0℃以下、-3℃以下、-6℃以下、または-9℃以下であってもよい。その下限は特に限定しないが、-60℃以上、-50℃以上、-40℃以下、または-30℃以上であってもよい。
【0034】
したがって、一実施形態により、前記(共)重合体のガラス転移温度は、-60℃~0℃であってもよい。
【0035】
また、一実施形態により、前記(共)重合体のガラス転移温度での貯蔵弾性率に対する100℃で測定した貯蔵弾性率の比率が10%以上であってもよい。より具体的には、前記貯蔵弾性率の比率は、12%以上あるいは15%以上であってもよい。
【0036】
前記一実施形態の負極用バインダーは、上述したような貯蔵弾性率を満足して工程性を改善しながらも負極活物質の体積変化に耐えられる程度の弾性を有し、特に、電池の実使用温度区間で適切な弾性を有することによって、究極的には二次電池の寿命を確保することができる。
【0037】
繰り返し単位の種類および含有量
前記負極用バインダーは、繰り返し単位の種類および含有量がそれぞれ特定の範囲に制御された(共)重合体を含むことができる。
【0038】
本明細書において、前記(共)重合体は、重合体または(共)重合体を意味する。
【0039】
具体的には、前記共重合体は、繰り返し単位の総重量(100重量%)中、a)脂肪族共役ジエン系の第1単量体由来の第1繰り返し単位35~60重量%、b)芳香族ビニル系の第2単量体由来の第2繰り返し単位0.1~25重量%、c)ニトリル系の第3単量体由来の第3繰り返し単位10~35重量%、およびd)不飽和カルボン酸系の第4単量体由来の第4繰り返し単位15~35重量%を含むことができる。
【0040】
このような前記(共)重合体のガラス転移温度は、-60~0℃であってもよい。
【0041】
特に、前記第3繰り返し単位は、分子内にエチレン性不飽和グループとニトリルグループをすべて含む単量体であって、硬度、強度、弾性率を増加させて、電極内寿命の向上に寄与することができる。
【0042】
ただし、前記第3繰り返し単位による効果は、前記繰り返し単位の総重量(100重量%)中、第3繰り返し単位の含有量が10~35重量%の時にようやく発現できる。前記第3繰り返し単位の含有量が10重量%未満の場合、その効果がわずかであり、35重量%超過の場合、むしろバインダー自体の強度を低下させて接着力を低くし、寿命を低下させる問題があるからである。
【0043】
一方、前記第1繰り返し単位は、負極活物質と集電体との間の接着力を向上させる機能をし、前記第2繰り返し単位および前記第4繰り返し単位は、バインダーの強度を高める機能をする。
【0044】
これに関連して、前記第3繰り返し単位の含有量が10~35重量%を満足しても、前記第1~第3繰り返し単位のいずれか1つでも他の物質に代替されるか、前記一実施形態の制限された含有量範囲を満足していない場合(欠如の場合を含む)、負極接着力が低下したり、容量維持率が低下しうる。
【0045】
そこで、前記第1~第4繰り返し単位をすべて含みながらそれぞれの含有量範囲が前記一実施形態の制限された範囲を満足する時、前記繰り返し単位の機能がバランスをとって、工程性を改善しながらも、負極活物質の体積変化に耐えられる程度の弾性を有することができる。
【0046】
特に、前記一実施形態の負極用バインダーは、電池の実使用温度区間で適切な弾性を有し、炭素系負極活物質だけでなく、体積膨張が激しいシリコン系負極活物質と共に適用されても二次電池の寿命を確保することができる。
【0047】
以下、前記各繰り返し単位をより詳しく説明する。
【0048】
第1繰り返し単位
前記第1繰り返し単位は、脂肪族共役ジエン系の第1単量体に由来する。具体的には、前記第1繰り返し単位は、重合時、脂肪族共役ジエン系の第1単量体を投入して形成された(共)重合体の構造単位に相当する。
【0049】
このような第1繰り返し単位が(共)重合体に含まれる場合、前記一実施形態の負極用バインダーは、高温で電解液の膨潤現象が抑制可能であり、ゴム成分による弾力性を有するようになって、負極の厚さを低減することができ、ガス発生現象を減少させるだけでなく、負極活物質と集電体との間の結着力が維持できるように接着力も向上させる役割を果たすことができる。
【0050】
前記脂肪族共役ジエン系単量体である第1単量体としては、炭素数2~20の脂肪族共役ジエン系化合物が使用できる。非制限的な例として、前記脂肪族共役ジエン系の第1単量体は、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,2-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,4-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-エチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエンおよび7-メチル-1,6-オクタジエンからなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、前記脂肪族共役ジエン系の第1単量体として、1,3-ブタジエンが使用できる。
【0051】
前記第1繰り返し単位は、繰り返し単位の総重量(100重量%)中、35~60重量%含まれる。つまり、前記(共)重合体の製造時、前記第1単量体は、単量体の総重量(100重量%)中、35~55重量%使用できる。
【0052】
例えば、前記繰り返し単位の総重量(100重量%)中、前記第1繰り返し単位は、35重量%以上、37重量%以上、39重量%以上、または40重量%以上で含まれるか、60重量%以下、58重量%以下、56重量%以下、または55重量%以下で含まれる。
【0053】
前記範囲内で前記第1繰り返し単位の含有量が増加する場合、前記第1繰り返し単位に対して前述した効果が向上できる。ただし、前記第1繰り返し単位の含有量が60重量%を超える場合、得られたバインダーの強度が低下する問題が発生しうる。
【0054】
第2繰り返し単位
前記第2繰り返し単位は、芳香族ビニル系の第2単量体に由来する。具体的には、前記第2繰り返し単位は、重合時、上述した第2単量体を投入して形成された(共)重合体の構造単位に相当する。
【0055】
このような第2繰り返し単位が(共)重合体に含まれる場合、前記一実施形態の負極用バインダーは、強度が向上できる。
【0056】
前記芳香族ビニル系の第2単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなる群より選択される1種以上であってもよいし、例えば、スチレンであってもよい。
【0057】
前記第2繰り返し単位は、繰り返し単位の総重量(100重量%)中、0.1~25重量%含まれる。つまり、前記(共)重合体の製造時、前記第2単量体は、単量体の総重量(100重量%)中、0.1~20重量%使用できる。
【0058】
例えば、前記繰り返し単位の総重量(100重量%)中、前記第2繰り返し単位は、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、または2重量%以上で含まれるか、25重量%以下、23重量%以下、21重量%以下、または20重量%以下で含まれる。
【0059】
前記範囲内で前記第2繰り返し単位の含有量が増加する場合、前記第2繰り返し単位に対して前述した効果が向上できる。ただし、前記(共)重合体において前記第2繰り返し単位が25重量%を超えて含まれる場合、バインダーの流動性が低下したり、または接着力が低下する問題が発生しうる。
【0060】
第3繰り返し単位
前記第3繰り返し単位は、ニトリル系の第3単量体に由来する。具体的には、前記第3繰り返し単位は、重合時、上述した第3単量体を投入して形成された(共)重合体の構造単位に相当する。
【0061】
前記ニトリル系の第3単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびアリルシアニドからなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、アクリロニトリルであってもよい。
【0062】
前記第3繰り返し単位は、繰り返し単位の総重量(100重量%)中、10~35重量%含まれる。つまり、前記(共)重合体の製造時、前記第3単量体は、単量体の総重量(100重量%)中、15~35重量%使用できる。
【0063】
例えば、前記繰り返し単位の総重量(100重量%)中、前記第3繰り返し単位は、10重量%以上、11重量%以上、13重量%以上、または15重量%以上で含まれるか、35重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、または25重量%以下で含まれる。
【0064】
前記範囲内で前記第3繰り返し単位の含有量が増加する場合、前記第3繰り返し単位に対して前述した効果が向上できる。ただし、前記(共)重合体において前記第3繰り返し単位が35重量%を超えて含まれる場合、バインダーの流動性が低下したり、または接着力が低下する問題が発生しうる。
【0065】
第4繰り返し単位
前記第4繰り返し単位は、不飽和カルボン酸系の第4単量体に由来する。具体的には、前記第4繰り返し単位は、重合時、上述した第4単量体を投入して形成された(共)重合体の構造単位に相当する。
【0066】
このような第4繰り返し単位が(共)重合体に含まれる場合、前記一実施形態の負極用バインダーは、強度と重合および保管安定性が向上できる。
【0067】
前記不飽和カルボン酸系の第4単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、およびナジン酸からなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、アクリル酸であってもよい。
【0068】
前記第4繰り返し単位は、繰り返し単位の総重量(100重量%)中、15~35重量%含まれる。つまり、前記(共)重合体の製造時、前記第4単量体は、単量体の総重量(100重量%)中、15~35重量%使用できる。
【0069】
例えば、前記繰り返し単位の総重量(100重量%)中、前記第4繰り返し単位は、15重量%以上、17重量%以上、19重量%以上、または20重量%以上で含まれるか、35重量%以下、33重量%以下、31重量%以下、または30重量%以下で含まれる。
【0070】
前記範囲内で前記第4繰り返し単位の含有量が増加する場合、前記第4繰り返し単位に対して前述した効果が向上できる。ただし、前記(共)重合体において前記第4繰り返し単位が35重量%を超えて含まれる場合、バインダーの流動性が低下したり、または電解液との親和力が低下する問題が発生しうる。
【0071】
重合体(ラテックス粒子)の平均粒径
一方、前記一実施形態の負極用バインダーにおいて、前記(共)重合体は、乳化重合により製造されたラテックス(latex)粒子状を有することができる。
【0072】
前記(共)重合体は、50~500nmの平均粒径を有するラテックス粒子であってもよい。
【0073】
前記ラテックス粒子は、50nm以上、または70nm以上、または100nm以上かつ、500nm以下、または400nm以下、または300nm以下、または200nm以下の平均粒径を有するラテックス粒子であってもよい。前記ラテックス粒子の平均粒径が小さすぎると、粘度が高くなり、これを含む合剤層の集電体に対する接着力が弱くなり、逆に、前記ラテックス粒子の平均粒径が大きすぎると、粒子の安定性が低下しうる。
【0074】
前記ラテックス粒子の平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)を利用した粒度分析器(NICOMP AW380、PSS社製造)を用いて測定することができる。
【0075】
具体的には、本明細書において、「平均粒径」は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)によって測定される粒度分布における算術平均粒径を意味するもので、この時、算術平均粒径は、散乱強度(Intensity distribution)平均粒径、体積(Volume distribution)平均粒径、または個数(Number distribution)平均粒径で測定することができ、このうち、散乱強度平均粒径で測定することが好ましい。
【0076】
例えば、常温でインテンシティ(Intensity)測定値が約300(KHz)となるように各負極用バインダーを希釈させた後、動的光散乱法による粒度分析器(NICOMP AW380、PSS社製造)を用いて散乱強度平均粒径を測定することができる。
【0077】
水性溶媒
また、前記一実施形態の負極用バインダーには、上述した(共)重合体つまり、ラテックス粒子のほか、水性溶媒つまり、水が添加されてもよい。
【0078】
前記水性溶媒は、ラテックス粒子の安定性および粘度調節の面から、前記(共)重合体100重量部に対して、約50~約1,000重量部、具体的には約100~約400重量部使用できる。例えば、前記一実施形態の負極用バインダーの総量(100重量%)中、総固形分含有量(total solid content、TSC)が約10~約65%に調節されるように使用できる。
【0079】
前記水性溶媒が過度に少なく使用される場合、ラテックス粒子の安定性が低下する問題点が発生し、溶媒が過度に多く使用される場合、粘度が低下して、バインダーの接着力が弱くなり、これによって、電池の諸性能が低下する問題点が発生しうる。
【0080】
二次電池の負極用バインダーの製造方法
本発明の他の実施形態では、乳化重合を利用して、前述した一実施形態の負極用バインダーを製造する方法を提供する。
【0081】
具体的には、前記乳化重合は、乳化剤および重合開始剤の存在下、単量体混合物を乳化重合して(共)重合体を製造する段階;を含む。
【0082】
より具体的には、前記単量体混合物の総重量(100重量%)中、a)脂肪族共役ジエン系の第1単量体由来の第1繰り返し単位35~60重量%、b)芳香族ビニル系の第2単量体由来の第2繰り返し単位0.1~25重量%、c)ニトリル系の第3単量体由来の第3繰り返し単位10~35重量%、およびd)不飽和カルボン酸系の第4単量体由来の第4繰り返し単位15~35重量%を含むことができる。
【0083】
以下、前記一実施形態の製造方法を詳しく説明し、前述した内容と重複する説明は省略する。
【0084】
乳化重合
また、前記乳化重合は、単一重合または多段重合によって行われる。ここで、単一重合は、使用される単量体を単一反応器に入れて同時に重合させる方法を意味し、多段重合は、使用される単量体を2段以上に順次に重合させる方法を意味する。
【0085】
前記乳化重合が多段重合によって行われる場合、
前記乳化剤および前記重合開始剤の存在下、前記a)脂肪族共役ジエン系の第1単量体の全部、前記b)芳香族ビニル系の第2単量体の全部、前記c)ニトリル系の第3単量体の全部、および前記d)不飽和カルボン酸系の第4単量体の一部を1次乳化重合する段階;および
前記1次乳化重合後、前記d)不飽和カルボン酸系の第4単量体の残部を投入し、2次乳化重合する段階;を含むことができる。
【0086】
前記1次乳化重合段階におけるd)不飽和カルボン酸系の第4単量体の一部、および前記2次乳化重合段階におけるd)不飽和カルボン酸系の第4単量体の残部は、1:0.1~1:10、具体的には1:1~1:8、例えば1:2.5~1:5の重量比であってもよい。
【0087】
また、前記乳化重合は、上述した水性溶媒を含む溶液中にて乳化剤および重合開始剤の存在下で行われる。
【0088】
前記(共)重合体の製造のための乳化重合の重合温度および重合時間は、場合に応じて適切に決定可能である。例えば、重合温度は、約50℃~約200℃であってもよく、重合時間は、約0.5時間~約20時間であってもよい。
【0089】
重合開始剤
前記乳化重合時に使用可能な重合開始剤としては、無機または有機過酸化物が使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを含む水溶性開始剤と、クメンヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどを含む油溶性開始剤とを使用することができる。
【0090】
活性化剤
また、前記重合開始剤と共に、過酸化物の反応開始を促進させるために、活性化剤をさらに含むことができ、このような活性化剤としては、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第1鉄、およびデキストロースからなる群より選択された1種以上が使用できる。
【0091】
乳化剤
そして、前記乳化重合のための乳化剤としては、ナトリウムドデシルジフェニルエーテルジスルホネート、ナトリウムラウリルスルフェート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、ジオクチルナトリウムスルホスクシネートなどの陰イオン系乳化剤、またはポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリエチレンオキシドアルキルエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルアリールエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルアミン、ポリエチレンオキシドアルキルエステルなどの非イオン系乳化剤が使用できる。このような乳化剤は、親水性(hydrophilic)基と疎水性(hydrophobic)基を同時に有している物質で、乳化重合過程で、ミセル(micelle)構造を形成し、ミセル構造内部で各単量体の重合が起こるようにする。好ましくは、前記陰イオン系乳化剤および前記非イオン系乳化剤を単独あるいは2種以上混合して使用することができ、陰イオン乳化剤と非イオン乳化剤とを混合して使用する場合により効果的であり得るが、本発明が必ずしもこのような乳化剤の種類に制限されるわけではない。
【0092】
そして、前記乳化剤は、例えば、前記(共)重合体の製造に使用される単量体成分総100重量部に対して、約0.01~約10重量部、約1~約10重量部、または約3~約5重量部使用できる。
【0093】
負極合剤および負極
本発明のさらに他の実施形態では、前述した一実施形態の負極用バインダーおよび負極活物質を含む負極合剤を提供し、このような負極合剤を含む負極合剤層および負極集電体を含む負極を提供する。
【0094】
前記一実施形態の負極用バインダーを除き、負極合剤および負極に使用される負極活物質、負極集電体などはそれぞれ、一般に知られた構成要素を含むことができる。
【0095】
負極
前記一実施形態の負極用バインダーは、前記負極合剤の全体重量(100重量%)中、1重量%~10重量%、具体的には1重量%~5重量%含まれる。これを満足する時、前記負極活物質の含有量を相対的に高めることができ、負極の放電容量をさらに向上させることができる。
【0096】
一方、前記一実施形態の負極用バインダーは、結着力、機械的物性などにおいて優れた特性を有するので、前記負極合剤の負極活物質として黒鉛系負極活物質が使用される場合はもちろん、それより高容量の負極活物質が使用されても、負極活物質と負極活物質との間、負極活物質と負極集電体との間などの結着力を維持することができ、それ自体の機械的物性によって負極活物質の膨張を抑制することができる。
【0097】
前記一実施形態の負極用バインダーは、黒鉛系負極活物質だけでなく、それより高容量の負極活物質と共に適用されるのに適したものであるので、本発明の一実施形態では、前記負極活物質の種類を特に制限しない。
【0098】
具体的には、前記負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化性炭素などの炭素および黒鉛材料;リチウムと合金可能なAl、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、Pb、Pd、Pt、Tiなどの金属およびこのような元素を含む化合物;金属およびその化合物と炭素および黒鉛材料の複合物;リチウム含有窒化物;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。なかでも、炭素系活物質、ケイ素系活物質、スズ系活物質、またはケイ素-炭素系活物質がさらに好ましく、これらは単独でまたは2以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0099】
負極集電体は、一般に、3μm~500μmの厚さにする。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。また、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用可能である。
【0100】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質、および前記バインダーを含む負極合剤を塗布した後、乾燥および圧延して製造され、必要によっては、導電材、充填材などをさらに添加して製造されてもよい。
【0101】
好ましくは、前記負極は、炭素質物質およびケイ素化合物からなる群より選択された1種以上の負極活物質を含むことができる。
【0102】
ここで、前記炭素質物質は、先に例示された、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、炭素微小球体、石油または石炭系コークス、軟化炭素、および硬化炭素からなる群より選択された1種以上の物質である。そして、前記ケイ素化合物は、Siを含む化合物、つまり、Si、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、前記Si-Q合金、これらの混合物、またはこれらの少なくとも1つとSiO2との混合物を含むことができる。
【0103】
前記導電材は、負極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において化学変化をもたらすことなく電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、単一壁炭素ナノチューブ、多重壁炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0104】
前記充填材は、負極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発することなく繊維状材料であれば特に制限されるわけではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物を使用することができる。
【0105】
正極
前記正極は、正極活物質を含み、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNixMn2-xO4で表現されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0106】
前記正極集電体は、一般に、3μm~500μmの厚さにする。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0107】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、単一壁炭素ナノチューブ、多重壁炭素ナノチューブなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。
【0108】
前記正極には、一般に知られたバインダーが使用できる。その代表例として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0109】
前記負極と前記正極はそれぞれ、活物質およびバインダー、場合によっては、導電材、充填材などを溶媒中にて混合してスラリー状の電極合剤に製造し、この電極合剤をそれぞれの電極集電体に塗布して製造される。このような電極の製造方法は当該分野にて広く知られた内容であるので、本明細書において詳しい説明は省略する。
【0110】
二次電池
本発明のさらに他の実施形態では、前述した一実施形態の負極を含む二次電池が提供される。このような二次電池は、正極;電解質;および負極を含む形態であってもよく、リチウム二次電池で実現できる。
【0111】
前記リチウム二次電池は、正極、分離膜、および負極を含む電極組立体に非水系電解質を含浸させて製造することができる。
【0112】
前記正極および前記負極は、前述した通りである。
【0113】
前記分離膜の場合、負極と正極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するもので、リチウム電池において通常使用されるものであればすべて使用可能である。つまり、電解質のイオン移動に対して低-抵抗でかつ電解液含湿能力に優れたものが使用できる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組み合わせの中から選択されたものであって、不織布または織布形態でも構わない。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータが使用されてもよいし、選択的に単層または多層構造で使用されてもよい。
【0114】
場合によって、前記分離膜上には、電池の安定性を高めるために、ゲルポリマー電解質がコーティングされる。このようなゲルポリマーの代表例としては、ポリエチレンオキシド、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0115】
ただし、前記非水電解質でない固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0116】
前記非水電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩とを含む液体電解質であってもよい。前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たす。
【0117】
前記非水電解質の溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルサルファオキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、エチレンスルファイト、プロピレンスルファイト、テトラヒドロフラン、およびその混合物であってもよく、具体的には、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの線状カーボネートと、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどの環状カーボネートとの混合物であってもよいが、これに限定されない。前記リチウム塩も、通常のリチウム二次電池に使用されるものであれば特別な制限がなく、例えば、過塩素酸リチウム(LiC1O4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、三フッ化メタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド(UN(CF3SO2)2)およびその混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0118】
また、前記電解液には、被膜形成および高温保存特性を向上させるために、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フッ化エチレンカーボネート(FEC)、フッ化プロピレンカーボネート(FPC)、プロペンスルトン(PRS)、プロパンスルトン(PS)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFOP)またはその混合物をさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0119】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用できるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池として使用可能である。
【0120】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみに限定しない。
【0121】
<実施例>
実施例1
(1)負極用バインダーの製造
(a)1,3-ブタジエン(40重量部)、(b1)α-メチルスチレン(5重量部)、(c)アクリロニトリル(25重量部)、および(d1)メタクリル酸(5重量部)を含む単量体混合物;乳化剤としてナトリウムラウリルスルフェート(1.5重量部);そして重合開始剤として過硫酸カリウム(0.5重量部);を、溶媒の水(150重量部)に添加した。
【0122】
前記混合物を60℃まで昇温させた後、60℃を維持し、約4時間重合反応させた後、(d1)メタクリル酸(25重量部)を追加的に入れて約5時間重合反応させた後、ラテックス粒子状の(共)重合体および水を含むバインダーを得た。
【0123】
これによって得られた実施例1のバインダーは、全体固形分含有量が30%であり、粒度分析器(NICOMP AW380、PSS社製造)を用いて測定されたラテックス粒子の平均粒径は167nmであった。
【0124】
(2)負極合剤の製造
負極活物質として人造黒鉛(85.38重量部)、シリコンオキシド(11重量部)導電材としてカーボンブラック(1重量部)、単一壁炭素ナノチューブ(0.02重量部)、前記実施例1のバインダー(1.6重量部)、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(1重量部)を使用し、これらを分散媒の水中にて1時間撹拌して混合した。この時、全体固形分含有量が45重量%となるようにスラリー状を調節して、実施例1の負極合剤を得た。
【0125】
(3)負極の製造
10μmの厚さの銅箔を用意して、これを負極集電体とした。コンマコーター(comma coater)を用いて、前記実施例1の負極合剤を前記負極集電体の一面あたり7.0mg/cm2のローディング(loading)量にして両面に塗布し、80℃のオーブン(oven)にて10分間熱風乾燥した後、総厚さが93μmとなるようにロール-プレス(roll-press)した。これによって、実施例1の負極を得た。
【0126】
(4)二次電池の製造
対極としてリチウムメタルを使用した。具体的には、実施例1の負極および前記リチウムメタルの間に分離膜を挿入して組立てた後、電解液を注入し、当業界にて通常知られた方法によりリチウムイオン半電池(half cell)を完成した。
【0127】
前記電解液としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)とジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)との混合溶媒(EC:PC:DEC=3:2:5の重量比)に、LiPF6が1Mの濃度となるように溶解させ、追加的にビニレンカーボネート(vinylene carbonate、VC)を2wt(%)添加させたものを使用した。
【0128】
実施例2
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、実施例2の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0129】
具体的には、実施例2では、1,3-ブタジエン(53重量部)、(b2)スチレン(5重量部)、(c)アクリロニトリル(19重量部)、および(d1)メタクリル酸(計24重量部、初期5重量部/後半19重量部)を使用した。
【0130】
実施例3
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、実施例3の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0131】
具体的には、実施例3では、(a)1,3-ブタジエン(55重量部)、(b1)α-メチルスチレン(5重量部)、(c)アクリロニトリル(20重量部)、(d2)アクリル酸(初期5重量部)、および(d1)メタクリル酸(後半17重量部)を使用した。
【0132】
実施例4
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、実施例4の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0133】
具体的には、実施例4では、(a)1,3-ブタジエン(48重量部)、(b2)スチレン(2重量部)、(c)アクリロニトリル(25重量部)、および(d1)メタクリル酸(計25重量部、初期10重量部/後半15重量部)を使用した。
【0134】
実施例5
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、実施例5の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0135】
具体的には、実施例5では、(a)1,3-ブタジエン(40重量部)、(b2)スチレン(20重量部)、(c)アクリロニトリル(15重量部)、および(d1)メタクリル酸(計25重量部、初期5重量部/後半20重量部)を使用した。
【0136】
比較例1
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、比較例1の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0137】
具体的には、比較例1では、(a)1,3-ブタジエン(50重量部)、(c1)アクリロニトリル(25重量部)、および(d1)メタクリル酸(25重量部)を使用した。
【0138】
比較例2
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、比較例2の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0139】
具体的には、比較例2では、(a)1,3-ブタジエン(45重量部)、(b2)スチレン(25重量部)、(c1)アクリロニトリル(25重量部)、および(d1)メタクリル酸(5重量部)を使用した。
【0140】
比較例3
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、比較例3の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0141】
具体的には、比較例3では、(a)1,3-ブタジエン(40重量部)、(b2)スチレン(58重量部)、および(d2)アクリル酸(2重量部)を使用した。
【0142】
比較例4
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、比較例4の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0143】
具体的には、比較例4では、(a)1,3-ブタジエン(40重量部)、(c)アクリロニトリル(30重量部)、および(d1)メタクリル酸(30重量部)を使用した。
【0144】
比較例5
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、比較例5の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0145】
具体的には、比較例5では、(a)1,3-ブタジエン(40重量部)、(b2)スチレン(30重量部)、および(d1)メタクリル酸(30重量部)を使用した。
【0146】
比較例6
単量体混合物の組成を変更した点を除き、実施例1と同様の方法で重合して、比較例6の負極用バインダー、負極合剤、負極および二次電池を製造した。
【0147】
具体的には、比較例6では、(a)1,3-ブタジエン(45重量部)、(b2)スチレン(40重量部)、(c)アクリロニトリル(5重量部)、および(d1)メタクリル酸(5重量部)を使用した。
【0148】
前記実施例1~5および比較例1~6の各負極用バインダーの組成を下記表1にまとめた。
【0149】
下記表1にて、第1単量体は(a)1,3-ブタジエン、第2単量体は(b1)α-メチルスチレンまたは(b2)スチレン、第3単量体は(c)アクリロニトリル、第4単量体は(d1)メタクリル酸または(d2)アクリル酸をそれぞれ示すものである。
【0150】
また、単量体の含有量は、単量体の総重量(100重量%)中の含有量(重量%)を基準とする。
【0151】
【0152】
実験例1:負極用バインダーの評価
前記実施例1~5および比較例1~6の各負極用バインダーを次の条件で評価し、その結果を下記表2に記録した。
【0153】
粘弾性損失係数(tanδ)および貯蔵弾性率:各負極用バインダーをフィルム状の試験片に成形した後、動的機械分析器(TA instrument社)を用いて粘弾性挙動を測定した。
【0154】
具体的には、負極用バインダーを乾燥させて2mm(Thickness)の厚さ以下のフィルム(film)状に製造した後、18mm(Length)*6mm(Width)の長方形状にパンチングして試験片を製造した。
【0155】
つまり、負極用バインダーをテフロン(登録商標)モールド(Teflon mold)に入れて24時間常温で乾燥後、再度80℃の温度で24時間熱風乾燥して、2mm(Thickness)の厚さ以下のフィルム(film)状に製造した。以後、前記大きさの長方形状にパンチングして試験片を製造した。
【0156】
前記試験片を動的機械分析器(TA instrument社)に投入し、Film Tensionモードで周波数1Hz、5℃/分で昇温しながら、変形振幅0.1%の剪断変形で各測定温度(-60℃~100℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定した。
【0157】
前記測定過程で、粘弾性損失係数(tanδ)の最大値到達時の温度(ピーク値)を確認して下記表2にtanδ(Tp)として記載し、また、100℃での貯蔵弾性率(Storage modulus)を測定して下記表2に示した。
【0158】
また、ガラス転移温度(Tp)での貯蔵弾性率値を100℃での貯蔵弾性率値で割って、(共)重合体のガラス転移温度(つまり、Tp)での貯蔵弾性率に対する100℃で測定した貯蔵弾性率の比率を求めた。
【0159】
参照として、動的機械分析器は、試料特性上、DSCで確認が難しいガラス転移温度の挙動を確認することができる。結果値から、tanδピーク値が高いほど、Tgが高くて硬く、強度が高く、tanδピーク値が低いほど、Tgが低く、柔軟である。
【0160】
ラテックス粒子の平均粒径:常温でインテンシティ(Intensity)測定値が約300(KHz)となるように各負極用バインダーを希釈させた後、動的光散乱法による粒度分析器(NICOMP AW380、PSS社製造)を用いて平均粒径を測定した。
【0161】
具体的には、負極用バインダーに蒸留水を添加して希釈させた後、粒度分析器(NICOMP AW380、PSS社製造)に投入して、5分後に測定された平均粒径を記録した。
【0162】
ここで、平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)によって測定される粒度分布における算術平均粒径を意味するもので、この時、算術平均粒径は、散乱強度平均粒径に相当する。
【0163】
【0164】
前記表2によれば、前記比較例1~6に比べて、前記実施例1~5の貯蔵弾性に優れていることが分かる。
【0165】
具体的には、前記比較例1~6は、前記第1~第4単量体のいずれか1つが使用されなかったり、前記第1~第4単量体の使用量が前記一実施形態で制限された範囲を満足しておらず、100℃で測定した貯蔵弾性率が100MPa未満と低く、粘弾性も劣ることが確認される。
【0166】
また、比較例1~6は、各(共)重合体のガラス転移温度での貯蔵弾性率に対する100℃で測定した貯蔵弾性率の比率が0.1以下(つまり、10%以下)と確認された。
【0167】
それに対し、前記実施例1~5は、前記第1~第4単量体を含みかつ、その使用量が前記一実施形態で制限された範囲を満足することによって、100℃で測定した貯蔵弾性率が100MPa以上であり、粘弾性損失係数(tanδ)の最大ピーク温度(Tp)が0℃以下となることが確認される。
【0168】
また、実施例1~5は、各(共)重合体のガラス転移温度での貯蔵弾性率に対する100℃で測定した貯蔵弾性率の比率が0.1以上(つまり、10%以上)であることを確認した。
【0169】
実験例2:負極および二次電池評価
前記実施例1~5および比較例1~6に対して、それぞれ次の条件で負極およびリチウム二次電池を評価し、その結果を下記表3に記録した。
【0170】
二次電池の30サイクル後の容量維持率:25℃の恒温チャンバ内で、前記各製造されたコイン型リチウム二次電池に対して、0~1Vの電圧範囲で、0.1Cで充電し、0.1Cで放電する過程を30回繰り返し、これによる容量維持率(30サイクルの容量維持率)を下記表3にまとめた。
【0171】
負極接着力:前記実施例および比較例の各負極に対して、5回以上の剥離強度を測定した後、平均値を求めて、その平均値を下記表2に示した。ここで、剥離強度は、張力測定器(Stable Micro System社、TA-XT)を用いて、幅20mmの接着テープに負極を付着させた後、180゜の剥離角度で負極からテープを引き剥がす時に必要な力(gf)を測定したものである。
【0172】
【0173】
このような結果から、本発明の一実施形態の場合、温度が上昇しても貯蔵弾性率が大きく低下せず、負極活物質の体積変化に耐えられる弾性を示して、実使用温度区間で最適な弾性を付与することができる。また、前記一実施形態の場合、工程性を改善し、電極の厚さ膨張を抑制可能で、優れた二次電池の寿命を確保することができる。
【0174】
前記一実施形態の説明とともに、前記実施例1~5の例示を参照して、各単量体の含有量および単量体の含有量比率を制御することによって、比較例1~6に比べて負極用バインダーの弾性を調節し、究極的には二次電池の寿命を目的の範囲に調節することも可能であることを意味する。