(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240408BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/68 F
(21)【出願番号】P 2020139125
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】前田 勉
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116401(JP,A)
【文献】特開平9-90308(JP,A)
【文献】特開平11-207480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの辺を持つ矩形状の第1面と、該第1面とは反対側に位置する矩形状の第2面と、を有する板状の被加工物を、保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、を用いて加工する際に用いられる被加工物の加工方法であって、
該被加工物の該第2面側が該チャックテーブルの該保持面に保持された状態で、該被加工物の4つの該辺を含む領域の高さを測定して得られる変位情報から、該辺の該保持面に平行なXY平面内での向きと、4つの該辺の該XY平面内での位置を示す4つのXY座標と、を取得する取得ステップと、
該辺の向きと、該4つのXY座標と、に基づき該被加工物を加工する加工ステップと、を含む被加工物の加工方法。
【請求項2】
該取得ステップは、
高さを測定するための測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、Y方向において異なる位置を通りX方向に平行な2つの直線上で該被加工物の1つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、該辺と該2つの直線とが交差する2つの位置を示すXY座標を算出して、該辺の向きを取得する向き取得ステップと、
該向き取得ステップで取得された該辺の向きが該Y方向に対して平行になるように、該XY平面に対して垂直な回転軸の周りの該チャックテーブルの向きを調整した上で、該測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、該X方向に平行な1つの直線上で該被加工物の対向する2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する2つの該辺と該1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第1座標取得ステップと、
該向き取得ステップで取得された該辺の向きが該Y方向に対して垂直になるように、該回転軸の周りの該チャックテーブルの向きを調整した上で、該測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、該X方向に平行な1つの直線上で該被加工物の対向する他の2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する他の2つの該辺と該1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第2座標取得ステップと、
を更に含む請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該取得ステップは、
高さを測定するための測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、Y方向において異なる位置を通りX方向に平行な2つの直線上で該被加工物の対向する2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する2つの該辺と該2つの直線とが交差する3つ以上の位置を示す3つ以上のXY座標を取得する第1座標取得ステップと、
該XY平面に対して垂直な回転軸の周りの該チャックテーブルの向きが、該第1座標取得ステップでの該チャックテーブルの向きに対して垂直な状態で、該測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、該X方向に平行な1つの直線上で該被加工物の対向する他の2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する他の2つの該辺と該1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第2座標取得ステップと、
該第1座標取得ステップで取得され、対向する2つの該辺の一方と該2つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標から、対向する2つの該辺の一方の向きを取得する向き取得ステップと、
該向き取得ステップで取得された該辺の向きに基づき、該第1座標取得ステップで取得され、対向する2つの該辺と該2つの直線の一方とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標と、該第2座標取得ステップで取得された2つのXY座標と、を補正して、補正された4つのXY座標を取得する補正座標取得ステップと、
を更に含む請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
4つの辺を持つ矩形状の第1面と、該第1面とは反対側に位置する矩形状の第2面と、を有する板状の被加工物を、保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、を用いて加工する際に用いられる被加工物の加工方法であって、
該被加工物の該第2面側が該チャックテーブルの該保持面に保持された状態で、該被加工物の1つの該辺を含む領域を撮像して得られる画像から、該辺の該保持面に平行なXY平面内での向きを取得し、該被加工物の4つの該辺を含む領域の高さを測定して得られる変位情報から、4つの該辺の該XY平面内での位置を示す4つのXY座標を取得する取得ステップと、
該辺の向きと、該4つのXY座標と、に基づき該被加工物を加工する加工ステップと、を含む被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形状の表裏面を持つ板状の被加工物を加工する際に用いられる被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの画面を構成する基板のような光学部品は、可視域において透明なガラス板等の被加工物を加工することによって製造される。このような被加工物を加工する際には、例えば、高出力のレーザービームを生成して利用するレーザー加工装置や、砥粒を含む環状の切削ブレードをスピンドルに装着した切削装置等の加工装置が使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらの加工装置は、一般に、被加工物をカメラで撮像して得られる画像から、被加工物に存在するデバイス等のパターンを抽出し、被加工物の加工されるべき位置(加工予定ライン)を確認する。一方で、パターンが存在しない被加工物を加工する場合には、例えば、加工装置が備えるチャックテーブルの決められた位置に被加工物を配置して、被加工物の決められた位置を加工できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加工装置内で被加工物を搬送する搬送機構は、チャックテーブルに対して高い精度で被加工物を搬入できるように構成されているものの、実際に搬入された被加工物の位置と、目標とする被加工物の位置と、の間には、5mm以下のずれが生じることも多い。よって、チャックテーブルの決められた位置に被加工物を配置する上述の方法では、必ずしも十分に高い精度で被加工物を加工できない。
【0006】
例えば、円形の表裏面を持つ被加工物を加工する場合には、外周縁の3点の位置から円の中心に相当する位置を求めることにより、高い精度で被加工物を加工できる。しかしながら、矩形状の表裏面を持つ被加工物を加工する場合には、このような円形の表裏面を持つ被加工物を加工するための手法をそのまま流用することができなかった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、矩形状の表裏面を持つ板状の被加工物を高い精度で加工できる新たな被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、4つの辺を持つ矩形状の第1面と、該第1面とは反対側に位置する矩形状の第2面と、を有する板状の被加工物を、保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、を用いて加工する際に用いられる被加工物の加工方法であって、該被加工物の該第2面側が該チャックテーブルの該保持面に保持された状態で、該被加工物の4つの該辺を含む領域の高さを測定して得られる変位情報から、該辺の該保持面に平行なXY平面内での向きと、4つの該辺の該XY平面内での位置を示す4つのXY座標と、を取得する取得ステップと、該辺の向きと、該4つのXY座標と、に基づき該被加工物を加工する加工ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【0009】
上述した本発明の一側面において、該取得ステップは、高さを測定するための測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、Y方向において異なる位置を通りX方向に平行な2つの直線上で該被加工物の1つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、該辺と該2つの直線とが交差する2つの位置を示すXY座標を算出して、該辺の向きを取得する向き取得ステップと、該向き取得ステップで取得された該辺の向きが該Y方向に対して平行になるように、該XY平面に対して垂直な回転軸の周りの該チャックテーブルの向きを調整した上で、該測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、該X方向に平行な1つの直線上で該被加工物の対向する2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する2つの該辺と該1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第1座標取得ステップと、該向き取得ステップで取得された該辺の向きが該Y方向に対して垂直になるように、該回転軸の周りの該チャックテーブルの向きを調整した上で、該測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、該X方向に平行な1つの直線上で該被加工物の対向する他の2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する他の2つの該辺と該1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第2座標取得ステップと、を更に含むことがある。
【0010】
また、上述した本発明の一側面において、該取得ステップは、高さを測定するための測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、Y方向において異なる位置を通りX方向に平行な2つの直線上で該被加工物の対向する2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する2つの該辺と該2つの直線とが交差する3つ以上の位置を示す3つ以上のXY座標を取得する第1座標取得ステップと、該XY平面に対して垂直な回転軸の周りの該チャックテーブルの向きが、該第1座標取得ステップでの該チャックテーブルの向きに対して垂直な状態で、該測定器と、該チャックテーブルと、を相対的に移動させることにより、該X方向に平行な1つの直線上で該被加工物の対向する他の2つの該辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する他の2つの該辺と該1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第2座標取得ステップと、該第1座標取得ステップで取得され、対向する2つの該辺の一方と該2つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標から、対向する2つの該辺の一方の向きを取得する向き取得ステップと、該向き取得ステップで取得された該辺の向きに基づき、該第1座標取得ステップで取得され、対向する2つの該辺と該2つの直線の一方とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標と、該第2座標取得ステップで取得された2つのXY座標と、を補正して、補正された4つのXY座標を取得する補正座標取得ステップと、を更に含むことがある。
【0011】
本発明の別の一側面によれば、4つの辺を持つ矩形状の第1面と、該第1面とは反対側に位置する矩形状の第2面と、を有する板状の被加工物を、保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、を用いて加工する際に用いられる被加工物の加工方法であって、該被加工物の該第2面側が該チャックテーブルの該保持面に保持された状態で、該被加工物の1つの該辺を含む領域を撮像して得られる画像から、該辺の該保持面に平行なXY平面内での向きを取得し、該被加工物の4つの該辺を含む領域の高さを測定して得られる変位情報から、4つの該辺の該XY平面内での位置を示す4つのXY座標を取得する取得ステップと、該辺の向きと、該4つのXY座標と、に基づき該被加工物を加工する加工ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面及び別の一側面にかかる被加工物の加工方法では、被加工物の第1面が持ついずれかの辺の向きと、第1面が持つ4つの辺の位置を示す4つのXY座標と、を取得するので、これらに基づいて、被加工物を高い精度で加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、レーザー加工装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、向き取得ステップの概要を示す平面図である。
【
図4】
図4は、被加工物の高さが測定される様子を示す側面図である。
【
図6】
図6は、第1座標取得ステップの概要を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第2座標取得ステップの概要を示す平面図である。
【
図8】
図8は、加工ステップの概要を示す側面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例にかかる被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1変形例にかかる第1座標取得ステップの概要を示す平面図である。
【
図11】
図11は、第1変形例にかかる第2座標取得ステップの概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態で使用されるレーザー加工装置(加工装置)2を示す斜視図である。なお、
図1では、レーザー加工装置2の一部の構成要素が省略されている。また、以下の説明で用いられるX方向(前後方向、加工送り方向)、Y方向(左右方向、割り出し送り方向)及びZ方向(鉛直方向、切り込み送り方向)は、互いに垂直である。
【0015】
図1に示すように、レーザー加工装置2は、複数の構成要素を支持する基台4を備えている。この基台4の後端部には、上方に突き出た柱状又は壁状の支持構造6が設けられている。また、基台4の前方の角部には、上方に突き出た柱状の収容部4aが設けられている。
【0016】
収容部4aの上面には、開口部が形成されている。収容部4aの内側には、上面の開口部を通じて外部に通じる空間が形成されており、概ね平坦な上面を持つカセット支持台8と、カセット支持台8を昇降させる昇降機構(不図示)と、が収容されている。収容部4aの開口部から露出するカセット支持台8の上面には、複数の被加工物11を収容できるカセット10が載せられる。
【0017】
被加工物11は、例えば、可視域において透明なガラス材料を用いて板状に形成され、4つの辺を持つ矩形状の第1面(表面)11aと、第1面11aとは反対側に位置する矩形状の第2面(裏面)11b(
図4等参照)と、を有している。この被加工物11の第1面11a及び第2面11bには、デバイス等の構造が設けられていない。
【0018】
また、被加工物11の第2面11b側には、被加工物11よりも径の大きいテープ(ダイシングテープ)13が貼付されている。テープ13の外周部分は、被加工物11を囲むように配置された環状のフレーム15に固定されている。つまり、被加工物11は、テープ13を介してフレーム15に支持された状態でカセット10に収容されることになる。
【0019】
ただし、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、シリコンに代表される半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。同様に、被加工物11には、IC(Integrated Circuit)やLED(Light Emitting Diode)等のデバイスが形成されていても良い。更に、被加工物11は、テープ13を介してフレーム15に支持されていなくても良い。
【0020】
収容部4aに隣接する位置には、被加工物11を支持するフレーム15の大まかな位置を合わせることができる位置合わせユニット12が配置されている。位置合わせユニット12は、例えば、Y方向に対して平行な状態を維持しながら接近及び離隔される一対のガイドレールを含む。各ガイドレールは、フレーム15を支持する底面と、この底面に対して垂直な側面と、を有している。
【0021】
例えば、カセット10から搬出されたフレーム15を位置合わせユニット12のガイドレールに乗せ、このガイドレールによってフレーム15をX方向に挟み込むことで、フレーム15(つまり、被加工物11)を所定の位置に合わせることができる。位置合わせユニット12の上方には、フレーム15を搬送するための搬送ユニット14が配置されている。
【0022】
位置合わせユニット12の側方の領域には、移動機構(加工送り機構、割り出し送り機構)16が配置されている。移動機構16は、基台4の上面に固定されY方向に対して概ね平行な一対のY軸ガイドレール18を備えている。Y軸ガイドレール18には、Y軸移動テーブル20がスライドできる態様で取り付けられている。
【0023】
Y軸移動テーブル20の下面側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Y軸ガイドレール18に対して概ね平行なY軸ボールネジ22が回転できる態様で連結されている。Y軸ボールネジ22の一端部には、Y軸パルスモータ24が連結されている。Y軸パルスモータ24でY軸ボールネジ22を回転させれば、Y軸移動テーブル20は、Y軸ガイドレール18に沿ってY方向に移動する。
【0024】
Y軸移動テーブル20の上面には、X方向に対して概ね平行な一対のX軸ガイドレール26が固定されている。X軸ガイドレール26には、X軸移動テーブル28がスライドできる態様で取り付けられている。X軸移動テーブル28の下面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0025】
このナット部には、X軸ガイドレール26に対して概ね平行なX軸ボールネジ30が回転できる態様で連結されている。X軸ボールネジ30の一端部には、X軸パルスモータ32が連結されている。X軸パルスモータ32でX軸ボールネジ30を回転させれば、X軸移動テーブル28は、X軸ガイドレール26に沿ってX方向に移動する。
【0026】
X軸移動テーブル28の上面側には、θテーブル34が設けられている。θテーブル34は、Z方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転できるように構成されたテーブルベース34a(
図4等参照)と、テーブルベース34aに連結されるモータ等の回転駆動源(不図示)と、を含む。テーブルベース34aの上面には、チャックテーブル36が固定される。
【0027】
チャックテーブル36は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属を用いて形成された円盤状の枠体38(
図4等参照)を含む。枠体38の上面側には、円形の開口を上端に持つ凹部38a(
図4等参照)が形成されている。この凹部38aには、セラミックス等を用いて多孔質の円盤状に形成された保持板40(
図4等参照)が固定されている。保持板40の上面は、X方向及びY方向に対して概ね平行であり、テープ13を介して被加工物11の第2面11b側を保持する保持面40aとなる。
【0028】
保持板40の下面側は、枠体38の内部に設けられた流路38bや、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持面40aにテープ13を接触させて、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させれば、被加工物11は、テープ13を介してチャックテーブル36に吸引される。チャックテーブル36の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム15を四方から固定できる4個のクランプ42が配置されている。
【0029】
支持構造6には、その前面から突出する支持アーム6aが設けられている。支持アーム6aの先端部には、照射ヘッド(加工ユニット)44が配置されている。この照射ヘッド44は、例えば、レーザー発振器(加工ユニット)(不図示)でパルス発振されたレーザービーム44a(
図8参照)を下方の対象に照射する。
【0030】
レーザー発振器が生成するレーザービーム44aの波長に特段の制限はないが、本実施形態では、被加工物11を透過する波長のレーザービーム44a(透過性のレーザービーム44a)を生成できるレーザー発振器が使用される。このような波長のレーザービーム44aを、例えば、照射ヘッド44によって被加工物11の内部に集光させることで、被加工物11の内部が改質される。
【0031】
照射ヘッド44のX方向の一方側の領域には、カメラ(撮像ユニット)46が配置されている。カメラ46は、例えば、可視域の光に感度を持つCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の2次元光センサと、結像用のレンズと、を含み、チャックテーブル36によって保持された被加工物11の上面側(第1面11a側)を撮像して、被加工物11が写った画像を生成する。
【0032】
カメラ46のX方向の一方側の領域には、対象までの距離をレーザービームで測定する光学式の変位測定器(測定器)48が配置されている。この変位測定器48は、例えば、下方の対象にレーザービーム48a(
図4参照)を照射する照射ユニットと、対象で反射するレーザービーム48aを受ける受光ユニットと、を含み、チャックテーブル36によって保持された被加工物11の上面(第1面11a)の高さ等を測定して、変位に関する情報(以下、変位情報)を生成する。
【0033】
カセット支持台8を昇降させる昇降機構、位置合わせユニット12、搬送ユニット14、移動機構16のY軸パルスモータ24及びX軸パルスモータ32、θテーブル34の回転駆動源、チャックテーブル36に接続されるバルブ、照射ヘッド44やレーザー発振器、カメラ46、変位測定器48等の構成要素は、それぞれ、制御ユニット50に接続されている。制御ユニット50は、被加工物11の加工に必要な一連の工程に合わせて、上述した各構成要素を制御する。
【0034】
制御ユニット50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置によって構成される演算部50aと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置やフラッシュメモリ等の補助記憶装置によって構成される記憶部50bと、を含むコンピュータである。記憶部50bに記憶されるソフトウェアに従い演算部50a等を動作させることによって、制御ユニット50の機能が実現される。ただし、制御ユニット50の機能は、ハードウェアのみによって実現されても良い。
【0035】
例えば、上述したカセット10から搬出され、位置合わせユニット12で所定の位置に合わせられた被加工物11(フレーム15)は、搬送ユニット14でチャックテーブル36へと搬入され、その第2面11b側を保持面40aによって保持される。この時、被加工物11に貼付されているテープ13の位置の精度や、搬送ユニット14による搬送動作の精度等に起因して、実際にチャックテーブル36に搬入される被加工物11の位置と、目標とする被加工物11の位置と、の間にずれが生じることも多い。
【0036】
そこで、本実施形態では、このような位置のずれの影響を排除できるように被加工物11の向きや位置等の情報を取得した上で、被加工物11を加工する。
図2は、本実施形態にかかる被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態の被加工物の加工方法では、まず、被加工物11の第1面11aが持つ辺の向きを取得する向き取得ステップST11を行う。
図3は、向き取得ステップST11の概要を示す平面図である。なお、
図3では、テープ13等の一部の要素が省略されている。
【0037】
向き取得ステップST11では、まず、被加工物11の少なくとも1つの辺11cを含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、この辺11cの位置を示すXY座標を算出する。
図4は、被加工物11の高さが測定される様子を示す側面図である。なお、
図4では、一部の要素が断面で示されている。
【0038】
例えば、制御ユニット50は、
図4に示すように、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル36をX方向に移動させながら、変位測定器48を作動させて、X方向における位置と、高さと、の関係を得る。つまり、制御ユニット50は、変位測定器48と、チャックテーブル36と、を相対的に移動させて、X方向に平行な直線上で被加工物11の辺11cを含む領域の高さを測定する。
【0039】
図5は、この測定によって得られる変位情報の例を示すグラフである。上述のように、変位測定器48と、チャックテーブル36と、を相対的に移動させて、X方向に平行な直線上で被加工物11の辺11cを含む領域の高さを測定すると、この直線に沿って、被加工物11の厚みのプロファイルに相当する変位情報が得られる。得られた変位情報は、記憶部50bに記憶される。
【0040】
より具体的には、まず、
図3に示す第1直線21aに沿って、被加工物11の辺11cを含む領域の高さを測定する。ここで、第1直線21aと辺11cとが交差する位置Aの高さと、位置Aに隣接する被加工物11の外部の位置の高さと、の間には、大きな差(高低差)が存在する。
【0041】
よって、
図5に示すように、得られた変位情報から高低差が大きい位置を抽出することにより、位置AのX座標(X
1)を算出できる。なお、X方向に対して平行な第1直線21a上の任意の位置のY座標は、いずれも等しい。そのため、測定時のY軸移動テーブル20(チャックテーブル36)の位置を示す情報等を用いることにより、位置AのY座標(Y
1)を算出できる。
【0042】
つまり、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第1直線21aと辺11cとが交差する位置AのX座標(X1)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置AのY座標(Y1)を算出する。算出された位置Aの座標(X1,Y1)は、記憶部50bに記憶される。
【0043】
第1直線21aに沿って被加工物11の辺11cを含む領域の高さを測定した後には、チャックテーブル36(Y軸移動テーブル20)をY方向に移動させた上で、同様の測定を行う。すなわち、Y方向において第1直線21aとは異なる位置を通りX方向に平行な第2直線21bに沿って、被加工物11の辺11cを含む領域の高さを測定する。
【0044】
そして、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第2直線21bと辺11cとが交差する位置BのX座標(X2)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20(チャックテーブル36)の位置を示す情報等を用いて、位置BのY座標(Y2)を算出する。算出された位置Bの座標(X2,Y2)は、記憶部50bに記憶される。
【0045】
なお、本実施形態では、チャックテーブル36の回転軸と、保持面40aに対して平行なXY平面と、が交わる位置を原点(O)として、各位置を示す座標を算出するが、その他の位置が座標系の原点に設定されても良い。
【0046】
位置Aを示す座標(X1,Y1)と、位置Bを示す座標(X2,Y2)と、が算出された後には、これらを用いて、保持面40aに対して平行なXY平面内での辺11cの向きを取得する。例えば、演算部50aは、位置Aの座標(X1,Y1)と、位置Bの座標(X2,Y2)と、に対して三角法を適用し、辺11cとY方向とのなす角度(θ1)を算出する。算出された角度(θ1)は、辺11cの向きとして記憶部50bに記憶される。
【0047】
なお、演算部50aは、辺11cの向きとして、辺11cとX方向とのなす角を算出しても良い。また、本実施形態では、第1直線21aと辺11cとが交差する位置Aの座標と、第2直線21bと辺11cとが交差する位置Bの座標と、を用いて、辺11cの向きを取得しているが、例えば、辺11cに対向する辺11d上の2つの位置の座標を用いて、辺11dの向きを取得しても良い。
【0048】
向き取得ステップST11の後には、
図2に示すように、保持面40aに対して平行なXY平面内で被加工物11の対向する2つの辺の位置を示す2つの座標を取得する第1座標取得ステップST12を行う。
図6は、第1座標取得ステップST12の概要を示す平面図である。なお、
図6でも、テープ13等の一部の要素が省略されている。
【0049】
第1座標取得ステップST12では、まず、向き取得ステップST11で取得された辺11cの向きがY方向に対して平行になるように、制御ユニット50が、XY平面に対して垂直な回転軸の周りにチャックテーブル36の向きを調整する。すなわち、
図3に示す状態から、チャックテーブル36をθ
1の角度(本実施形態では、平面視で時計回りにθ
1の角度)だけ回転させる。これにより、被加工物11の対向する辺11c及び辺11dは、Y方向に対して平行になる。
【0050】
その後、制御ユニット50は、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル36をX方向に移動させながら、変位測定器48を作動させて、X方向における位置と、高さと、の関係を得る。つまり、変位測定器48と、チャックテーブル36と、を相対的に移動させて、X方向に平行な直線上で被加工物11の対向する2つの辺11c及び辺11dを含む領域の高さを測定する。得られた変位情報は、記憶部50bに記憶される。
【0051】
より具体的には、まず、
図6に示す第3直線21cに沿って、被加工物11の対向する辺11c及び辺11dを含む領域の高さを測定する。ここで、第3直線21cと辺11cとが交差する位置C1の高さと、被加工物11の外部において位置C1に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。また、第3直線21cと辺11dとが交差する位置C2の高さと、被加工物11の外部において位置C2に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。
【0052】
よって、得られた変位情報から高低差が大きい位置を抽出することにより、位置C1のX座標(X31)と位置C2のX座標(X32)とを算出できる。なお、X方向に対して平行な第3直線21c上の任意の位置のY座標は、いずれも等しい。そのため、測定時のY軸移動テーブル20(チャックテーブル36)の位置を示す情報等を用いることにより、位置C1及び位置C2のY座標(Y3)を算出できる。
【0053】
つまり、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第3直線21cと辺11cとが交差する位置C1のX座標(X31)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置C1のY座標(Y3)を算出する。算出された位置C1の座標(X31,Y3)は、記憶部50bに記憶される。
【0054】
また、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第3直線21cと辺11dとが交差する位置C2のX座標(X32)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置C2のY座標(Y3)を算出する。算出された位置C2の座標(X32,Y3)は、記憶部50bに記憶される。
【0055】
第1座標取得ステップST12の後には、
図2に示すように、保持面40aに対して平行なXY平面内で被加工物11の対向する他の2つの辺の位置を示す2つの座標を取得する第2座標取得ステップST13を行う。
図7は、第2座標取得ステップST13の概要を示す平面図である。なお、
図7でも、テープ13等の一部の要素が省略されている。
【0056】
第2座標取得ステップST13では、まず、向き取得ステップST11で取得された辺11cの向きがY方向に対して垂直になるように、制御ユニット50が、XY平面に対して垂直な回転軸の周りにチャックテーブル36の向きを調整する。すなわち、
図6に示す状態から、チャックテーブル36を90°の角度(本実施形態では、平面視で時計回りに90°の角度)だけ回転させる。これにより、被加工物11の対向する辺11e及び辺11fは、Y方向に対して平行になる。
【0057】
その後、制御ユニット50は、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル36をX方向に移動させながら、変位測定器48を作動させて、X方向における位置と、高さと、の関係を得る。つまり、変位測定器48と、チャックテーブル36と、を相対的に移動させて、X方向に平行な直線上で被加工物11の対向する他の2つの辺11e及び辺11fを含む領域の高さを測定する。得られた変位情報は、記憶部50bに記憶される。
【0058】
より具体的には、まず、
図7に示す第4直線21dに沿って、被加工物11の対向する辺11e及び辺11fを含む領域の高さを測定する。ここで、第4直線21dと辺11eとが交差する位置D1の高さと、被加工物11の外部において位置D1に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。また、第4直線21dと辺11fとが交差する位置D2の高さと、被加工物11の外部において位置D2に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。
【0059】
よって、得られた変位情報から高低差が大きい位置を抽出することにより、位置D1のX座標(X41)と位置D2のX座標(X42)とを算出できる。なお、X方向に対して平行な第4直線21d上の任意の位置のY座標は、いずれも等しい。そのため、測定時のY軸移動テーブル20(チャックテーブル36)の位置を示す情報等を用いることにより、位置D1及び位置D2のY座標(Y4)を算出できる。
【0060】
つまり、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第4直線21dと辺11eとが交差する位置D1のX座標(X41)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置D1のY座標(Y4)を算出する。算出された位置D1の座標(X41,Y4)は、記憶部50bに記憶される。
【0061】
また、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第4直線21dと辺11fとが交差する位置D2のX座標(X42)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置D2のY座標(Y4)を算出する。算出された位置D2の座標(X42,Y4)は、記憶部50bに記憶される。
【0062】
上述ように、第3直線21cに沿って被加工物11の高さを測定した後、第4直線21dに沿って被加工物11の高さを測定する際には、チャックテーブル36を90°の角度だけ回転させている。そのため、位置C1の座標(X31,Y3)及び位置C2の座標(X32,Y3)と、位置D1の座標(X41,Y4)及び位置D2の座標(X42,Y4)と、をそのまま用いても、被加工物11の位置は適切に表現されない。
【0063】
そこで、第2座標取得ステップST13の後には、
図2に示すように、位置C1の座標(X
31,Y
3)及び位置C2の座標(X
32,Y
3)と、位置D1の座標(X
41,Y
4)及び位置D2の座標(X
42,Y
4)と、の一方を補正して補正座標を取得する補正座標取得ステップST14を行う。
【0064】
具体的には、例えば、演算部50aは、位置D1の座標(X41,Y4)及び位置D2の座標(X42,Y4)のそれぞれを、-90°の角度(本実施形態では、平面視で反時計回りに90°の角度)だけ回転させる演算処理を施し、補正後の位置D1の座標及び位置D2の座標(補正座標)を取得する。取得された補正後の位置D1の座標及び位置D2の座標は、記憶部50bに記憶される。
【0065】
切削装置2の制御ユニット50にとって、被加工物11の形状(第1面11aの形状)は既知である。そのため、このようにして得られる補正後の位置D1の座標及び位置D2の座標、並びに、上述した位置C1の座標(X31,Y3)及び位置C2の座標(X32,Y3)によって、制御ユニット50は、被加工物11の位置を適切に把握できる。
【0066】
なお、本実施形態では、補正された位置D1の座標及び位置D2の座標を取得しているが、補正された位置C1の座標及び位置C2の座標を取得しても良い。この場合には、位置D1の座標(X41,Y4)及び位置D2の座標(X42,Y4)に合わせて、位置C1の座標(X31,Y3)及び位置C2の座標(X32,Y3)のそれぞれを、90°の角度(本実施形態では、平面視で時計回りに90°の角度)だけ回転させる演算処理を施すことになる。
【0067】
補正座標取得ステップST14の後には、上述した一連の取得ステップ(向き取得ステップST11、第1座標取得ステップST12、第2座標取得ステップST13及び補正座標取得ステップST14)において取得された被加工物11の位置及び向きに関する情報を利用して被加工物11を加工する加工ステップST15を行う。すなわち、加工ステップST15では、辺の向きと、各辺の位置を示す4つのXY座標と、に基づいて被加工物11が加工される。
図8は、加工ステップST15の概要を示す側面図である。なお、
図8でも、一部の要素が断面で示されている。
【0068】
本実施形態の加工ステップST15では、加工予定ラインに沿って被加工物11の内部を改質する。具体的には、まず、制御ユニット50が、上述した辺の向きを考慮してチャックテーブル36の向きを調整し、対象となる加工予定ラインをX方向に対して平行にする。次に、制御ユニット50が、上述した4つのXY座標を考慮してチャックテーブル36の位置を調整し、対象の加工予定ラインの延長線の上方に照射ヘッド44の位置を合わせる。
【0069】
そして、
図8に示すように、照射ヘッド44から被加工物11に向けてレーザービーム44aを照射しながら、X方向にチャックテーブル36を移動させる。つまり、チャックテーブル36と照射ヘッド44とを、加工予定ラインに対して平行な方向に相対的に移動させる。ここで、照射ヘッド44は、例えば、レーザービーム44aを被加工物11の内部に集光させるように調整される。
【0070】
このように、被加工物11を透過する波長のレーザービーム44a(透過性のレーザービーム44a)を被加工物11の内部に集光させることで、被加工物11の内部が改質されて、改質層17が形成される。本実施形態では、チャックテーブル36と照射ヘッド44とを相対的に移動させて加工予定ラインにレーザービーム44aを照射しているので、この加工予定ラインに沿って改質層17が形成される。上述の動作は、全ての加工予定ラインに沿って被加工物11が加工されるまで繰り返される。
【0071】
以上のように、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、被加工物11の第1面11aが持つ辺(辺11c)の向きと、第1面11aが持つ4つの辺(辺11c、辺11d、辺11e及び辺11f)のそれぞれの位置(位置C1、位置C2、位置D1及び位置D2)を示す4つのXY座標と、を取得するので、これらに基づいて、被加工物11を高い精度で加工できる。
【0072】
また、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、対象までの距離を測定する変位測定器48を用いて、辺の向きと、4つのXY座標と、を取得するので、例えば、被加工物11が透明な場合や、被加工物11にデバイス等の構造(パターン)が形成されていない場合でも、被加工物11の位置を正確に把握できる。
【0073】
よって、被加工物11を加工する際に、その外周縁にレーザービーム44aを照射したくない場合等には、本実施形態にかかる被加工物の加工方法が極めて有効である。また、本実施形態にかかる被加工物の加工方法によれば、被加工物11の外部に誤ってレーザービーム44aを照射してしまうこと等も防止できる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施できる。
図9は、第1変形例にかかる被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
図9に示すように、第1変形例にかかる被加工物の加工方法では、被加工物11の辺の向きと、被加工物11の4つの辺の位置を示す4つの座標と、を取得するための一連の取得ステップが、上述した実施形態とは異なっている。
【0075】
具体的には、まず、X方向に平行な2つの直線上で被加工物11の対向する2つの辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する2つの辺と2つの直線とが交差する3つ以上の位置を示す3つ以上のXY座標を取得する第1座標取得ステップST21を行う。
図10は、第1変形例にかかる第1座標取得ステップST21の概要を示す平面図である。なお、
図10でも、テープ13等の一部の要素が省略されている。
【0076】
第1変形例の第1座標取得ステップST21では、制御ユニット50が、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル36をX方向に移動させながら、変位測定器48を作動させて、X方向における位置と、高さと、の関係を得る。つまり、変位測定器48と、チャックテーブル36と、を相対的に移動させて、X方向に平行な直線上で被加工物11の対向する2つの辺を含む領域の高さを測定する。得られた変位情報は、記憶部50bに記憶される。
【0077】
より具体的には、まず、
図10に示す第1直線31aに沿って、被加工物11の対向する辺11c及び辺11dを含む領域の高さを測定する。ここで、第1直線31aと辺11cとが交差する位置E1の高さと、被加工物11の外部において位置E1に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。また、第1直線31aと辺11dとが交差する位置E2の高さと、被加工物11の外部において位置E2に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。
【0078】
よって、得られた変位情報から高低差が大きい位置を抽出することにより、位置E1のX座標(X51)と位置E2のX座標(X52)とを算出できる。なお、X方向に対して平行な第1直線31a上の任意の位置のY座標は、いずれも等しい。そのため、測定時のY軸移動テーブル20(チャックテーブル36)の位置を示す情報等を用いることにより、位置E1及び位置E2のY座標(Y5)を算出できる。
【0079】
つまり、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第1直線31aと辺11cとが交差する位置E1のX座標(X51)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置E1のY座標(Y5)を算出する。算出された位置E1の座標(X51,Y5)は、記憶部50bに記憶される。
【0080】
また、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第1直線31aと辺11dとが交差する位置E2のX座標(X52)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置E2のY座標(Y5)を算出する。算出された位置E2の座標(X52,Y5)は、記憶部50bに記憶される。
【0081】
第1直線31aに沿って被加工物11の対向する辺11c及び辺11dを含む領域の高さを測定した後には、チャックテーブル36(Y軸移動テーブル20)をY方向に移動させた上で、同様の測定を行う。すなわち、Y方向において第1直線31aとは異なる位置を通りX方向に平行な第2直線31bに沿って、被加工物11の辺11c及び辺11dを含む領域の高さを測定する。
【0082】
そして、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第2直線31bと辺11cとが交差する位置F1のX座標(X61)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置F1のY座標(Y6)を算出する。算出された位置F1の座標(X61,Y6)は、記憶部50bに記憶される。
【0083】
また、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第2直線31bと辺11dとが交差する位置F2のX座標(X62)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置F2のY座標(Y6)を算出する。算出された位置F2の座標(X62,Y6)は、記憶部50bに記憶される。
【0084】
なお、この第1変形例の第1座標取得ステップST21では、第1直線31a及び第2直線31bと、辺11c及び辺11dと、が交差する4つの位置を示す4つのXY座標を全て取得しているが、本発明では、4つのXY座標のうちのいずれか3つを取得できれば良い。
【0085】
第1座標取得ステップST21の後には、
図9に示すように、X方向に平行な1つの直線上で被加工物11の対向する他の2つの辺を含む領域の高さを測定し、得られる変位情報から、対向する他の2つの辺と1つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標を取得する第2座標取得ステップST22を行う。
図11は、第1変形例にかかる第2座標取得ステップST22の概要を示す平面図である。なお、
図11でも、テープ13等の一部の要素が省略されている。
【0086】
第2座標取得ステップST22では、まず、チャックテーブル36の向きを、上述の第1座標取得ステップST21でのチャックテーブル36の向きに対して垂直に調整する。すなわち、制御ユニット50は、
図10に示す状態から、チャックテーブル36を90°の角度(第1変形例では、平面視で時計回りに90°の角度)だけ回転させる。
【0087】
その後、制御ユニット50は、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル36をX方向に移動させながら、変位測定器48を作動させて、X方向における位置と、高さと、の関係を得る。つまり、変位測定器48と、チャックテーブル36と、を相対的に移動させて、X方向に平行な直線上で被加工物11の対向する他の2つの辺を含む領域の高さを測定する。得られた変位情報は、記憶部50bに記憶される。
【0088】
より具体的には、例えば、
図11に示す第3直線31cに沿って、被加工物11の対向する辺11e及び辺11fを含む領域の高さを測定する。ここで、第3直線31cと辺11eとが交差する位置G1の高さと、被加工物11の外部において位置G1に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。また、第3直線31cと辺11fとが交差する位置G2の高さと、被加工物11の外部において位置G2に隣接する位置の高さと、の間には、大きな差が存在する。
【0089】
よって、得られた変位情報から高低差が大きい位置を抽出することにより、位置G1のX座標(X71)と位置G2のX座標(X72)とを算出できる。なお、X方向に対して平行な第3直線31c上の任意の位置のY座標は、いずれも等しい。そのため、測定時のY軸移動テーブル20(チャックテーブル36)の位置を示す情報等を用いることにより、位置G1及び位置G2のY座標(Y7)を算出できる。
【0090】
つまり、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第3直線31cと辺11eとが交差する位置G1のX座標(X71)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置G1のY座標(Y7)を算出する。算出された位置G1の座標(X71,Y7)は、記憶部50bに記憶される。
【0091】
また、演算部50aは、測定によって得られる変位情報を用いて、第3直線31cと辺11fとが交差する位置G2のX座標(X72)を算出し、測定時のY軸移動テーブル20の位置を示す情報等を用いて、位置G2のY座標(Y7)を算出する。算出された位置G2の座標(X72,Y7)は、記憶部50bに記憶される。
【0092】
第2座標取得ステップST22の後には、
図9に示すように、第1座標取得ステップST21で取得され、対向する2つの辺の一方と2つの直線とが交差する2つの位置を示す2つのXY座標から、対向する2つの辺の一方の向きを取得する向き取得ステップST23を行う。
【0093】
例えば、演算部50aは、辺11cと第1直線31aとが交差する位置E1の座標(X51,Y5)と、辺11cと第2直線31bとが交差する位置F1の座標(X61,Y6)と、に対して三角法を適用し、辺11cとY方向とのなす角度(θ2)を算出する。算出された角度(θ2)は、辺11cの向きとして記憶部50bに記憶される。
【0094】
なお、演算部50aは、辺11cの向きとして、辺11cとX方向とのなす角を算出しても良い。また、演算部50aは、辺11dと第1直線31aとが交差する位置E2の座標(X52,Y5)と、辺11dと第2直線31bとが交差する位置F2の座標(X62,Y6)と、に対して三角法を適用し、辺11dとY方向又はX方向とのなす角度を算出しても良い。
【0095】
向き取得ステップST23の後には、この向き取得ステップST23で取得された辺の向きに基づき、第1座標取得ステップST21で取得された2つのXY座標と、第2座標取得ステップST22で取得された2つのXY座標と、を補正して補正座標を取得する補正座標取得ステップST24を行う。
【0096】
具体的には、例えば、演算部50aは、辺11cと第1直線31aとが交差する位置E1の座標(X51,Y5)と、辺11dと第1直線31aとが交差する位置E2の座標(X52,Y5)と、のそれぞれを、θ2の角度(本実施形態では、平面視で時計回りにθ2の角度)だけ回転させる演算処理を施し、補正後の位置E1の座標及び位置E2の座標(補正座標)を取得する。取得された補正後の位置E1の座標及び位置E2の座標は、記憶部50bに記憶される。
【0097】
なお、演算部50aは、辺11cと第2直線31bとが交差する位置F1の座標(X61,Y6)と、辺11dと第2直線31bとが交差する位置F2の座標(X62,Y6)と、のそれぞれを、θ2の角度(本実施形態では、平面視で時計回りにθ2の角度)だけ回転させる演算処理を施し、補正後の位置F1の座標及び位置F2の座標を取得しても良い。
【0098】
また、演算部50aは、辺11eと第3直線31cとが交差する位置G1の座標(X71,Y7)と、辺11fと第3直線31cとが交差する位置G2の座標(X72,Y7)と、のそれぞれを、θ2-90°の角度(本実施形態では、平面視で時計回りにθ2-90°の角度)だけ回転させる演算処理を施し、補正後の位置G1の座標及び位置G2の座標(補正座標)を取得する。取得された補正後の位置G1の座標及び位置G2の座標は、記憶部50bに記憶される。
【0099】
このようにして取得される補正座標は、辺11cの向きがY方向に対して平行に調整された状態での位置E1、位置E1、位置G1及び位置G2を表す。よって、このような補正座標を用いることで、被加工物11を精度良く加工できるようになる。なお、同様の方法で、辺11cの向きがY方向に対して垂直に調整された状態で各位置を表す補正座標を取得しても良い。
【0100】
補正座標取得ステップST24の後には、上述した一連の取得ステップ(第1座標取得ステップST21、第2座標取得ステップST22、向き取得ステップST23及び補正座標取得ステップST24)において取得された被加工物11の位置及び向きに関する情報を利用して被加工物11を加工する加工ステップST25を行う。すなわち、加工ステップST25では、辺の向きと、各辺の位置を示す4つのXY座標と、に基づいて被加工物11が加工される。加工ステップST25の具体的な手順は、実施形態にかかる加工ステップST15と同じで良い。
【0101】
この第1変形例にかかる被加工物の加工方法でも、被加工物11の第1面11aが持つ辺(辺11c)の向きと、第1面11aが持つ4つの辺(辺11c、辺11d、辺11e及び辺11f)のそれぞれの位置(位置E1、位置E2、位置G1及び位置G2)を示す4つのXY座標と、を取得するので、これらに基づいて、被加工物11を高い精度で加工できる。
【0102】
また、第1変形例にかかる被加工物の加工方法でも、対象までの距離を測定する変位測定器48を用いて、辺の向きと、4つのXY座標と、を取得するので、例えば、被加工物11が透明な場合や、被加工物11にデバイス等の構造(パターン)が形成されていない場合でも、被加工物11の位置を正確に把握できる。
【0103】
よって、被加工物11を加工する際に、その外周縁にレーザービーム44aを照射したくない場合等には、第1変形例にかかる被加工物の加工方法が極めて有効である。また、第1変形例にかかる被加工物の加工方法によれば、被加工物11の外部に誤ってレーザービーム44aを照射してしまうこと等も防止できる。
【0104】
なお、上述した実施形態では、変位測定器48を用いて変位情報を得ることによって、被加工物11の第1面11aが持つ辺の向きを取得しているが、例えば、カメラ46を用いて被加工物11を撮像する方法で、第1面11aが持つ辺の向きを取得することもできる。
【0105】
すなわち、この第2変形例にかかる被加工物の加工方法の向き取得ステップでは、例えば、被加工物11の1つの辺を含む領域をカメラ46で撮像して得られる画像から、演算部50aが、辺の上の2つの位置の座標を算出することで、辺の向きを取得する。その他のステップは、上述した実施形態と同じで良い。
【0106】
また、上述した実施形態及び各変形例では、第1座標取得ステップST12や第1座標取得ステップST21の後に、第2座標取得ステップST13や第2座標取得ステップST22を行っているが、これらの順序は入れ替えられても良い。更に、上述した第1変形例では、第2座標取得ステップST22の後に向き取得ステップST23を行っているが、向き取得ステップST23は、第1座標取得ステップST21の後、第2座標取得ステップST22の前に行われても良い。
【0107】
また、上述した実施形態及び各変形例では、加工ステップST15や加工ステップST25において被加工物11に改質層17を形成しているが、本発明の加工ステップでは、被加工物11がレーザービームでアブレーション加工されても良い。この場合には、被加工物11に吸収される波長のレーザービーム(吸収性のレーザービーム)を生成できるレーザー発振器を備えたレーザー加工装置が使用される。
【0108】
また、本発明の加工ステップでは、砥粒を結合剤で固定して形成される環状の切削ブレード(加工ユニット)を被加工物11に切り込ませる方法で被加工物11を加工することもできる。この場合には、例えば、照射ヘッド44やレーザー発振器の代わりに、環状の切削ブレードが装着されるスピンドル(加工ユニット)を備えた切削装置(加工装置)が使用される。
【0109】
また、上述した実施形態及び各変形例では、対象までの距離をレーザービーム48aで測定する光学式の変位測定器48を使用しているが、このような光学式の変位測定器48の代わりに、背圧センサや超音波センサ等を変位測定器(測定器)として使用することもできる。
【0110】
また、上述した実施形態及び各変形例にかかる被加工物の加工方法は、X方向とY方向との関係を矛盾が生じない範囲で入れ替えた状態で実施されても良い。例えば、上述した実施形態及び各変形例では、チャックテーブル36と変位測定器48とをX方向において相対的に移動させることで、任意の辺を含む領域の高さを測定しているが、チャックテーブル36と変位測定器48とをY方向において相対的に移動させることで、任意の辺を含む領域の高さを測定することもできる。
【0111】
また、上述した実施形態及び各変形例で取得される辺の向きや、4つのXY座標に基づき、被加工物11の任意の位置の座標(例えば、被加工物11の重心の座標)を取得し、その後の被加工物11の加工に利用しても良い。
【0112】
その他、上述した実施形態及び各変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0113】
11 :被加工物
11a :第1面(表面)
11b :第2面(裏面)
11c :辺
11d :辺
11e :辺
11f :辺
13 :テープ(ダイシングテープ)
15 :フレーム
17 :改質層
21a :第1直線
21b :第2直線
21c :第3直線
21d :第4直線
31a :第1直線
31b :第2直線
31c :第3直線
2 :レーザー加工装置(加工装置)
4 :基台
4a :収容部
6 :支持構造
6a :支持アーム
8 :カセット支持台
10 :カセット
12 :位置合わせユニット
14 :搬送ユニット
16 :移動機構(加工送り機構、割り出し送り機構)
18 :Y軸ガイドレール
20 :Y軸移動テーブル
22 :Y軸ボールネジ
24 :Y軸パルスモータ
26 :X軸ガイドレール
28 :X軸移動テーブル
30 :X軸ボールネジ
32 :X軸パルスモータ
34 :θテーブル
34a :テーブルベース
36 :チャックテーブル
38 :枠体
38a :凹部
38b :流路
40 :保持板
40a :保持面
42 :クランプ
44 :照射ヘッド(加工ユニット)
44a :レーザービーム
46 :カメラ(撮像ユニット)
48 :変位測定器(測定器)
48a :レーザービーム
50 :制御ユニット
50a :演算部
50b :記憶部