(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】アーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子
(51)【国際特許分類】
A21D 2/36 20060101AFI20240408BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240408BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D13/80
(21)【出願番号】P 2021070080
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 早苗
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-278898(JP,A)
【文献】特開2000-083572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンフラワー、粉末状大豆蛋白、デュラム小麦粉からなる群から選択される2種以上の粉状物及び食用油から成るアーモンドプードル代替食感改良組成物であって、配合されている前記各粉状物の配合率は少なくとも2種がそれぞれ粉状物全体中30質量%以上であり、前記食用油は前記粉状物全体100質量部に対して80質量部以上120質量部以下であるアーモンドプードル代替食感改良組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアーモンドプードル代替食感改良組成物を使用した焼き菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
アーモンドプードルは、フィナンシェ等の焼き菓子に風味付けや食感改良等を目的として使用されているが、一般に高価であり、また酸化し易いため冷蔵して保存する等取り扱いが容易ではない。
このため、アーモンドプードルの代替品が求められている。
例えば、アーモンドプードルの代替物として、パン粉、オカラ、油分を必須成分として含み、これらを混合し乾燥して粉状にした生地改良剤が知られている。
必要に応じ、呈味原料、フレーバー、色素、乳化安定剤を添加し生地改良剤の構成とするが、アーモンドフレーバーを使用することでアーモンドプードル代替物となる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、アーモンドプードルに代わる食感改良組成物が求められている。
本発明の目的は、アーモンドプードルのような食感改良効果を有するアーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、コーンフラワー、粉末状大豆蛋白、デュラム小麦粉からなる群から選択される2種以上の粉状物及び食用油を特定の割合で混合することで、アーモンドプードルのような食感改良効果を有するアーモンドプードル代替食感改良組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、コーンフラワー、粉末状大豆蛋白、デュラム小麦粉からなる群から選択される2種以上の粉状物及び食用油から成るアーモンドプードル代替食感改良組成物であって、配合されている前記各粉状物の配合率は少なくとも2種がそれぞれ粉状物全体中30質量%以上であり、前記食用油は前記粉状物全体100質量部に対して80質量部以上120質量部以下であるアーモンドプードル代替食感改良組成物である。
また、これを使用した焼き菓子である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物を焼き菓子に使用することで、アーモンドプードルを使用したような食感改良効果を得ることができる。
アーモンドフレーバーと併用すれば、アーモンドプードルの代替品として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する、コーンフラワー、デュラム小麦粉は、原料となる穀粒を粉砕・篩分けして粉状にすることで調製できるが市販品も使用することができる。
粉末状大豆蛋白は、大豆から大豆油を抽出した後の脱脂大豆を原料とし、精製して粉状にすることで調製できるが市販品も使用することができる。
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物では、コーンフラワー、粉末状大豆蛋白、デュラム小麦粉からなる群から選択される2種以上の粉状物を少なくとも2種がそれぞれ粉状物全体中30質量%以上となるように使用する。
少なくとも2種の粉状物の配合率が30質量%以上ではない場合、例えば、コーンフラワー80質量部、粉末状大豆蛋白20質量部を配合した場合は、粉末状大豆蛋白の配合率が20質量%となり、単独で使用した場合より優れた効果が得られない。
粉状物を2種類配合した場合は、各粉状物は30質量%以上配合されるが、粉状物を3種類使用する場合は、例えば、コーンフラワー60質量部、粉末状大豆蛋白10質量部、デュラム小麦粉30質量部のように、配合率が30質量%未満となる粉状物が配合される場合がある。
【0008】
本発明で使用する食用油は、常温(5~35℃)で液状の食用油であり原料は特に限定されない。
食用油由来の香りをつけたくない場合は、ひまわり、とうもろこし等を原料とするサラダ油が好ましい。
食用油の使用割合は、粉状物全体100質量部に対して80質量部以上120質量部以下である。
食用油の使用割合が粉状物全体100質量部に対して80質量部未満では、口どけが悪くなり不適である。
また、食用油の使用割合が粉状物全体100質量部に対して120質量部を超えると口どけは悪くはならないが、粉状物と食用油が分離し易くなり不適である。
【0009】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は、粉状物と食用油を均一に混合して調製する。
混合方法は、均一に混合できれば特に限定はないが、少量の場合は、へら、しゃもじ等を使用して手で混ぜることができる。
多量に混合する場合は、リボンミキサー、スクリューミキサー等の粉体・液体混合機が使用できる。
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は、アーモンドプードルに比較して酸化され難く常温で1カ月程度保存できる。
【0010】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は、アーモンドプードルを使用する焼き菓子、例えば、フィナンシェ、マドレーヌ等において、アーモンドプードルの一部又は全部の代替として使用でき、アーモンドプードルを使用したときのような食感を得ることができる。
この場合、必要に応じて別途アーモンドフレーバーを使用することで、アーモンドプードルを使用したときのような風味を得ることができる。
これ以外は、従来からアーモンドプードルを使用する焼き菓子に使用されている原材料を限定なく使用できる。
【実施例】
【0011】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例1]フィナンシェ
アーモンドプードル25質量部、砂糖75質量部、薄力小麦粉40質量部、卵白60質量部を縦型ミキサーで、低速(回転数:100回転/分)1分間、中速(回転数:175回転/分)1分間混ぜ、これに焦がしバター100質量部を加え、さらに低速(回転数:100回転/分)1分間混ぜフィナンシェ生地を調製した。
この生地50gをフィナンシェ型に入れ、200℃で15分間、オーブンで焼成した後、型から取りだし、フィナンシェを得た。
【0012】
[実施例1~10、比較例1~3]フィナンシェ様焼き菓子 粉状物の配合率
表1に示す割合で粉状物とサラダ油を混合しアーモンドプードル代替食感改良組成物を得た。
表中、配合割合の単位は質量部である。
参考例1において、アーモンドプードルに代えて得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物を使用し、アーモンドフレーバー0.1質量部を加えた以外は、参考例1と同様にしてフィナンシェ様焼き菓子を得た。
【0013】
得られたフィナンシェ様焼き菓子を以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・食感
5点 アーモンドプードルを使用したときとほぼ同じ口溶けで、良い
4点 アーモンドプードルを使用したときよりやや口溶けが劣るが、やや良い
3点 アーモンドプードルを使用したときより口溶けが劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用したときより口溶けが劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用したときより口溶けが非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
また、アーモンドプードル代替食感改良組成物を常温で保存し、30日後に保存性について以下の基準で評価した。
〇 粉状物と食用油が分離していない
× 粉状物と食用油が分離している
得られた評価結果を表1に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0014】
【0015】
[実施例11~12、比較例4~5]フィナンシェ様焼き菓子 食用油の配合率
表2に示す割合で粉状物とサラダ油を混合しアーモンドプードル代替食感改良組成物を得た。
表中、配合割合の単位は質量部である。
参考例1において、アーモンドプードルに代えて得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物を使用し、アーモンドフレーバー0.1質量部を加えた以外は、参考例1と同様にしてフィナンシェ様焼き菓子を得た。
得られたフィナンシェ様焼き菓子を実施例1と同様に評価を行った。
得られた評価結果を表2に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0016】
【0017】
比較例5は、保存性が悪く不適であった。
【0018】
[参考例2]マドレーヌ
アーモンドプードル25質量部、砂糖180質量部、全卵210質量部、はちみつ25質量部を縦型ミキサーで、低速(回転数:100回転/分)1分間混ぜ、薄力粉150質量部とベーキングパウダー4質量部を篩い合わせたものを加え、低速(約100回転/分)1分間混ぜ、生クリーム80質量部、溶かしバター65質量部を加え、低速(回転数:100回転/分)1分間混ぜマドレーヌ生地を調製した。
この生地50gをマドレーヌ型に入れ、190℃で15分間、オーブンで焼成した後、型から取りだし、マドレーヌを得た。
【0019】
[実施例13~22、比較例6~8]マドレーヌ様焼き菓子 粉状物の配合率
表3に示す割合で粉状物とサラダ油を混合しアーモンドプードル代替食感改良組成物を得た。
参考例2において、アーモンドプードルを得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物に代え、さらにアーモンドフレーバー0.2質量部を加えた以外は、参考例2と同様にしてマドレーヌ様焼き菓子を得た。
【0020】
得られたマドレーヌ様焼き菓子を以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・食感
5点 アーモンドプードルを使用したときとほぼ同じ口溶けで、良い
4点 アーモンドプードルを使用したときよりやや口溶けが劣るが、やや良い
3点 アーモンドプードルを使用したときより口溶けが劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用したときより口溶けが劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用したときより口溶けが非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
また、アーモンドプードル代替食感改良組成物を常温で保存し、30日後に保存性について以下の基準で評価した。
〇 粉状物と食用油が分離していない
× 粉状物と食用油が分離している
得られた評価結果を表3に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0021】
【0022】
[実施例23~24、比較例9~10]マドレーヌ様焼き菓子 食用油の配合率
表4に示す割合で粉状物とサラダ油を混合しアーモンドプードル代替食感改良組成物を得た。
表中、配合割合の単位は質量部である。
参考例2において、アーモンドプードルに代えて得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物を使用し、アーモンドフレーバー0.2質量部を加えた以外は、参考例2と同様にしてフィナンシェ様焼き菓子を得た。
得られたフィナンシェ様焼き菓子を実施例13と同様に評価を行った。
得られた評価結果を表4に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0023】
【0024】
比較例10は、保存性が悪く不適であった。
【0025】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物はアーモンドプードルの代替として十分使用可能であった。