(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】発光ダイオードの検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20240408BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240408BHJP
【FI】
G01R31/26 F
H01L33/00 K
(21)【出願番号】P 2019085975
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-03-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 亮介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩伸
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】田辺 正樹
【審判官】田邉 英治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-13557(JP,A)
【文献】特開2012-164633(JP,A)
【文献】特開平5-161253(JP,A)
【文献】特開2010-262929(JP,A)
【文献】特開2010-40509(JP,A)
【文献】特開2016-122643(JP,A)
【文献】特開2013-33644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/26-31/27
H01L33/00-33/64
H05B39/00-39/10, 45/00-45/59, 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光ダイオードが直列に接続されたダイオード負荷に一定の電流を流して検査する状態で、何れかの発光ダイオードが短絡しても他の発光ダイオードに故障が誘発されないようにした、発光ダイオードの特性を検査するための発光ダイオードの検査装置であって、
前記ダイオード負荷に接続してなる電源回路と、
前記ダイオード負荷と直列に接続してなるピーク電流制限回路を備えており、
前記ピーク電流制限回路が、
前記ダイオード負荷と
直列に接続してなる電流検出器と、
前記電流検出器の検出電圧で前記ダイオード負荷の電流を制御する電流調整回路とを備え、
前記電流検出器が、抵抗器とコイルとの直列回路を備え、
前記電流調整回路が、
前記ダイオード負荷及び前記電流検出器と直列に接続してなるトランジスタと、
前記トランジスタの入力側に接続してなるコンパレータと、
前記コンパレータの第1の入力端子に基準電圧を入力する基準電圧回路と、を備え、
前記電流検出器に誘導される検出電圧が前記コンパレータの第2の入力端子に入力され、
前記コンパレータの出力が前記トランジスタに入力されて、
前記トランジスタが前記ダイオード負荷の電流を制御するようにしてなる発光ダイオードの検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記トランジスタがFETであることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記基準電圧回路が、基準電圧を変更できる回路であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記電流検出器に誘導される電圧を増幅するサブアンプを備え、
前記サブアンプの出力電圧が前記コンパレータの入力端子に入力されてなることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記コンパレータの出力側と前記トランジスタの入力側との間に、前記コンパレータの出力インピーダンスを低下して出力するバッファーアンプを接続してなることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記電源回路が定電流電源であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記電流検出器がインダクタンスのある巻き線抵抗器であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
前記ダイオード負荷が、複数のレーザーダイオードの直列回路であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の発光ダイオードを直列に接続し、発光ダイオードに定電流を流して検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、特許文献1に記載されるように、電圧-電流特性がリニアに変化しないので、定電流電源に接続し、一定の電流を流して検査される。また、発光ダイオードは、複数個を直列に接続して、定電流を流すことで同時に多数の発光ダイオードを能率よく検査できる。さらに、特許文献2に記載されるように、複数の発光ダイオードを直列に接続している回路構成においても、定電流を流して検査できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-235695号公報
【文献】特開昭58-194383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の発光ダイオードを直列に接続する状態で検査する装置は、定電流電源に接続して各々の発光ダイオードを同時に検査できる。この検査装置は、多数の発光ダイオードを直列に接続して能率よく検査できる。また、複数の発光ダイオードを直列に接続している回路構成においても、全ての発光ダイオードの検査を同時にできる。この検査装置が直列に接続している複数の発光ダイオードに定電流を流して検査する状態で、何れかの発光ダイオードが短絡すると、瞬時的に電流が増加して、正常な発光ダイオードに過電流による弊害を与える。短絡した発光ダイオードの電気抵抗が小さくなって、発光ダイオード直列回路の電気抵抗が小さくなるからである。定電流電源は、電流の増加を検出して電流を一定の電流に制御するが、電流の増加を検出して一定の電流に制御するまでに時間遅れがある。時間遅れは、瞬時的にピーク電流を流す原因となり、ピーク電流が正常な発光ダイオードに過電流による障害を与える。
【0005】
本開示は、以上の弊害を防止することを目的として開発されたもので、本開示の大切な目的は、多数の発光ダイオードを同時に検査しながら、何れかの発光ダイオードの障害が他の発光ダイオードに誘発されるのを抑制して検査できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発光ダイオードの検査装置は、複数の発光ダイオードが直列に接続されたダイオード負荷に一定の電流を流す発光ダイオードの検査装置であって、ダイオード負荷に接続してなる電源回路と、ダイオード負荷と直列に接続してなるピーク電流制限回路を備える。また、ピーク電流制限回路が、ダイオード負荷と直列に接続してなる電流検出器と、電流検出器の検出電圧でダイオード負荷の電流を制御する電流調整回路とを備える。さらに、電流検出器が、抵抗器とコイルとの直列回路からなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、多数の発光ダイオードを同時に検査しながら、何れかの発光ダイオードの障害が他の発光ダイオードに誘発されるのを抑制して検査できる装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかる発光ダイオードの検査装置のブロック図である。
【
図2】ピーク電流制限回路を設けない検査装置の電流波形を示す図である。
【
図3】実施形態にかかるピーク電流制限回路が設けられた検査装置の電流波形を示す図である。
【
図4】他の実施形態に係る発光ダイオードの検査装置のブロック図である。
【
図5】他の実施形態に係る発光ダイオードの検査装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本開示を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体例を示すものであって、本開示を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
(発光ダイオードの検査装置)
図1は、本実施形態にかかる発光ダイオードの検査装置100のブロック図である。発光ダイオード1は、複数個を直列に接続してダイオード負荷10とし、このダイオード負荷10を定電流電源2に接続して、一定の時間、予め設定している定格電流を流して検査される。ダイオード負荷10は、複数の発光ダイオード1を直列に接続して回路基板に実装しているダイオードアレイ、あるいは複数個の発光ダイオード1を脱着できるように電気接続したものが使用される。検査装置100は、直列に接続する発光ダイオード1の個数を多くして、一度に多数の発光ダイオード1を検査できる。複数の発光ダイオード1を直列に接続して検査しているタイミングで、何れかの発光ダイオード1が内部ショートすると、ダイオード負荷10の電気抵抗が低下するので、ダイオード負荷10の電流が増加する。定電流電源2は、電流の増加を検出して設定値に制御するが、増加した電流を設定値に制御するまでに時間遅れがある。応答時間の遅れは、故障しない発光ダイオード1に過大な電流を流して電流による障害を与える弊害がある。とくに、レーザーダイオードは、検査する電流が大きく、過電流で故障しやすい障害がある。
【0011】
ところで、定電流電源2は、出力側に直列に半導体スイッチング素子を直列に接続し、この半導体スイッチング素子の内部抵抗を調整して、半導体スイッチング素子の電圧降下値をコントロールして出力電流を制御するアナログ方式と、DC/DCコンバータで出力電流を制御するスイッチング方式とがある。スイッチング方式は、半導体スイッチング素子をオンオフに切り換えるデューティーで定電流特性を実現して高い電力効率を実現できる。ただ、スイッチング方式は、出力電圧のリップルを少なくして綺麗な直流とするために、出力側に大きな静電容量の電解コンデンサが接続されるが、この電解コンデンサは、出力電流を一定値にコントロールする応答速度を相当に遅くする原因となる。電解コンデンサの放電と充電の時間遅れが、出力電流の応答時間を遅らせるからである。高い電力効率のスイッチング方式の定電流電源は、多数の発光ダイオードの検査を少ない消費電力で実現できるが応答時間の遅れが、故障しない発光ダイオードに過電流による損傷を与える弊害がある。アナログ方式の定電流電源は、排出側の電解コンデンサを省略して、半導体スイッチング素子の電圧降下で出力電流を制御して、スイッチング方式よりも応答時間を速くできるが、半導体スイッチング素子の内部抵抗の変化の時間遅れが、応答時間の遅れとなるので、故障しない発光ダイオードの過電流による障害を防止できない。
【0012】
1.実施形態1
(検査装置)
本実施形態の発光ダイオードの検査装置100の回路図を
図1に示す。
検査装置100は、複数の発光ダイオード1を直列に接続しているダイオード負荷10に電流を流す電源回路20と、ダイオード負荷10と直列に接続しているピーク電流制限回路30とを備える。また、ピーク電流制限回路30は、ダイオード負荷10と直列に接続している電流検出器31と、電流検出器31の両端に出力される検出電圧でダイオード負荷10の電流を制御する電流調整回路32とを備える。電流検出器31は、抵抗器4とコイル5との直列回路である。
【0013】
(電源回路)
電源回路20は、ダイオード負荷10に予め制御している電流を流す定電流電源2を備える。電源回路20は、好ましくは定電圧定電流電源を使用する。定電圧定電流電源は、出力電圧を設定値以下に設定しながら、ダイオード負荷10の電流を設定値に制御する。定電流電源2は、好ましくは、ダイオード負荷10に流す電流値を変更する回路を備えている。電流値を変更できる定電流電源2は、ダイオード負荷10に流す電流値、すなわち出力電流を、例えば1A~10Aの範囲で変更して、発光ダイオード1に最適な電流を流して検査する。定電流電源2は、DC/DCコンバータの出力電圧とスイッチング方式又はアナログ方式である。スイッチング方式の定電流電源2は、電力効率を高くしながら、軽量化できる特徴がある。軽量化は、重い電源トランスを省略することで実現できる。この定電流電源2は、オンオフに切り換える半導体スイッチング素子のデューティーで、出力電流を設定値に制御するので、設定電流を大幅に変更でき、しかも発熱量も少なくできる特徴がある。アナログ方式の定電流電源2は、電解コンデンサの出力側に、内部抵抗を変更する半導体スイッチング素子を接続することで、出力電流の応答時間の遅れを少なくできる。
【0014】
(ピーク電流制限回路)
ピーク電流制限回路30の電流調整回路32は、何れかの発光ダイオード1が内部ショートして、ダイオード負荷10の電流が瞬時的に増加するのを制限して、発光ダイオード1の過電流による弊害を防止する。電源回路20を定電流電源2とする検査装置100は、ピーク電流制限回路30の設定電流を、電源回路20の定電流電源2と同じ設定電流とし、あるいはほぼ同じ設定電流とする。この検査装置100は、定電流電源2からダイオード負荷10に設定された一定の電流を供給し、何れかの発光ダイオード1が内部ショートとして、定電流電源2の応答時間の遅れが原因で、ダイオード負荷10にピーク電流が流れると、このピーク電流をピーク電流制限回路30が抑制する。
【0015】
図2の電流特性は、ピーク電流制限回路30を設けない検査装置の電流波形を示している。この図は、複数(たとえば20個)の発光ダイオード1を直列にして、特定の発光ダイオード1の両端を短絡して、ダイオード負荷10に流れる電流が変化する状態を示している。特定の発光ダイオード1が短絡すると、ダイオード負荷10の電気抵抗が減少してピーク電流が流れる。
図2の電流特性において、ピーク電流の時間幅、すなわちピーク電流が減衰するまでの時間幅は約20msec近くになる。ピーク電流が流れる時間は、定電流電源2の応答時間の遅れによって変化するが、発光ダイオード1は過電流の障害を受ける。
【0016】
ピーク電流制限回路30は、ピーク電流を抑制して過電流による発光ダイオード1の障害を抑制する。ピーク電流制限回路30の電流調整回路32は、電流検出器31がピーク電流を検出するタイミングで内部抵抗を増加してピーク電流を抑制するトランジスタ3と、電流検出器31がピーク電流を検出するタイミングでトランジスタ3の内部抵抗を大きくするコンパレータ33を備えている。コンパレータ33は、電流検出器31から入力される検出電圧を基準電圧に比較して、電流検出器31がピーク電流を検出して検出電圧が高くなるタイミングでトランジスタ3の内部抵抗を大きくする信号をトランジスタ3に出力する。
【0017】
(電流検出器)
電流検出器31は、抵抗器4とコイル5を直列に接続している。
図1の電流検出器31は、抵抗器4と直列にコイル5を接続している。この電流検出器31は、抵抗器4の電気抵抗と、コイル5のインダクタンスを最適値に調整できる。ただ、電流検出器31には、抵抗線を碍子などの絶縁材の表面にコイル状に巻き付けた巻き線抵抗器を使用することができる。巻き線抵抗器は、抵抗線の抵抗率と長さで電気抵抗を調整して、抵抗線の巻き回数でインダクタンスを調整する。巻き線抵抗器は、抵抗器とコイルとが一体構造であるが、等価回路において、抵抗器とコイルは直列に接続される。
【0018】
抵抗器4は、流れる電流に比例して両端の電圧が高くなる。コイル5は、ピーク電流が流れて電流が急激に変化するタイミングで、電流検出器31の検出電圧を高くして、ダイオード負荷10のピーク電流を抑制する。コイル5は、ピーク電流が発生するタイミングで両端の誘導電圧を高くする。とくに、ピーク電流の立ち上がり時において検出電圧を高くする。ピーク電流がコイル5の両端に誘導する電圧(E)が、以下の式で示すように、コイル5のインダクタンス(L)に比例して大きくなるからである。
E=L×di/dt
【0019】
ただし、以上の式において、diは電流の変化量、dtは電流が変化する時間で、di/dtはピーク電流が単位時間に増加する割合を示している。ピーク電流は、立ち上がり時に急激に電流が増加するので、このタイミングでdi/dtが極めて大きくなって、誘導電圧が相当に高くなる。したがって、抵抗器4と直列にコイル5を接続している電流検出器31は、ピーク電流が流れる瞬間、とくにピーク電流の立ち上がりタイミングにおいて、コイル5の両端の誘導電圧が高くなって、検出電圧が高くなる。瞬時的に大きくなった検出電圧は、コンパレータ33の入力端子に入力される。
【0020】
(電流調整回路)
電流調整回路32は、電流検出器31から入力される検出電圧でダイオード負荷10に流れる電流を制御する。電流調整回路32は、ダイオード負荷10にピーク電流が流れて、電流検出器31から入力される検出電圧が瞬時的に高くなると、電流を制限してピーク電流を抑制する。電流検出器31は、ピーク電流の立ち上がり時に検出電圧を高くするので、電流調整回路32は、検出電圧が高くなるタイミング、すなわちダイオード負荷10にピーク電流が流れるタイミングで効果的に電流を抑制する。電流調整回路32は、トランジスタ3の内部抵抗を大きくしてダイオード負荷10のピーク電流を抑制する。したがって、ダイオード負荷10と直列に接続しているトランジスタ3を備え、さらに電流検出器31から入力される検出電圧でトランジスタ3の内部抵抗を制御するコンパレータ33を備える。
【0021】
(トランジスタ)
トランジスタ3は、好ましくはFETを使用する。とくに、優れた大電流特性のMOSFETが適している。FETは入力抵抗が大きく、オン抵抗が小さくて効率よく電流をコントロールできるからである。ただ、トランジスタ3はFETに限らず入力信号で内部抵抗をコントロールできる全てのトランジスタ、たとえばバイポーラトランジスタやIGBT等も使用できる。FETは入力電圧で内部抵抗がコントロールされる。FETは、入力電圧を高くして内部抵抗を小さく、入力電圧を低下して内部抵抗を大きくできる。
【0022】
(コンパレータ)
コンパレータ33は、電流検出器31から入力される検出電圧を基準電圧に比較して、トランジスタ3の内部抵抗をコントロールする。
図1のコンパレータ33は差動アンプ6を備えている。差動アンプ6は、出力側をトランジスタ3の入力側に接続して、出力電圧でトランジスタ3の内部抵抗をコントロールする。差動アンプ6は、第1の入力端子6Aには基準電圧を入力する基準電圧回路34を接続して、第2の入力端子6Bには電流検出器31の検出電圧を入力している。差動アンプ6は、第1の入力端子6Aと第2の入力端子6Bの差電圧を増幅し、あるいは増幅することなくトランジスタ3に出力する。差動アンプ6は、第1の入力端子6Aを+側入力端子、第2の入力端子6Bを-側入力端子としている。基準電圧回路34は、基準電圧を変更できる回路として、ピーク電流制限回路30の設定電流を変更できる。
【0023】
以上のピーク電流制限回路30は、以下の動作をしてダイオード負荷10のピーク電流を抑制する。
1.ダイオード負荷10にピーク電流が流れると、ピーク電流に対応して電流検出器31の検出電圧が上昇する。
とくに、ピーク電流の立ち上がり時に電流の変化値が大きくなるので、このタイミングでコイル5に誘導される電圧が高くなって、検出電圧は瞬時的に高くなる。
2.瞬時的に上昇した検出電圧はコンパレータ33である差動アンプ6に設けている第2の入力端子6Bに入力される。
3.差動アンプ6は、第2の入力端子6Bの電圧を第1の入力端子6Aの基準電圧に比較し、第2の入力端子6Bの電圧が高くなると、出力電圧を-側に変化させる。
4.-側に変化した出力電圧は、トランジスタ3の入力側に入力される。
5.入力電圧が-側に変化したトランジスタ3は、内部抵抗を増加させる。
6.内部抵抗の増加したトランジスタ3は、ダイオード負荷10の電流を減少して、ピーク電流を抑制する。
【0024】
ピーク電流制限回路30は、以上の動作をしてダイオード負荷10のピーク電流を抑制するが、抵抗器4に直列に接続しているコイル5が、ピーク電流の立ち上がり時に検出電圧を瞬時的に高くして、このタイミングでトランジスタ3の内部抵抗を瞬時的に増加させる。内部抵抗が瞬時的に増加したトランジスタ3は、ダイオード負荷10に流れるピーク電流を速やかに抑制する。
【0025】
図3は、電流検出器31において、コイル5を抵抗器4に直列に接続している検査装置100におけるダイオード負荷10に流れる電流特性を示している。
図2はコイルを接続しない抵抗器のみの電流検出器を使用する検査装置におけるダイオード負荷に流れる電流波形を示している。
図2に示すように、電流検出器においてコイルを接続しない抵抗器のみから従来の検査装置は、ピーク電流が流れる時間幅が約20msecと相当に長くなって、発光ダイオードが過電流による障害を受ける。これに対して電流検出器31においてコイル5を接続している検査装置100は、
図3に示すように、ピーク電流が流れる時間幅が約100μsecとなって、約1/200に短縮され、さらにピーク電流の最大電流も小さくなって、発光ダイオード1の過電流による障害を防止できる。
【0026】
2.実施形態2
図4は、実施形態2に係る発光ダイオードの検査装置200のブロック図である。この図の検査装置200の電流調整回路32Aは、電流検出器31に誘導される電圧を増幅するサブアンプ7を備える。この検査装置200は、電流検出器31のジュール熱による発熱を小さくして、電流検出器31の温度変化による検出誤差を少なくできる特徴がある。サブアンプ7が、電流検出器31の電圧を増幅してコンパレータ33に入力するので、電流検出器31の電気抵抗とインダクタンスを小さくして、電流検出器31の検出電圧を低くしながら、コンパレータ33には所定の電圧を入力できるからである。たとえば、サブアンプ7の増幅率を10倍とすれば、電流検出器31の電気抵抗とインダクタンスを1/10として、電流検出器31のジュール熱による発熱量を1/10にできる。コンパレータ33は、入力される基準電圧と検出電圧が小さすぎると、高い精度で電流をコントロールするのが難しくなる。たとえば、抵抗器4の電気抵抗を0.2Ω、と仮定すると、ダイオード負荷10の電流値を2Aで検出電圧は0.4Vとなって、この電圧がコンパレータ33に入力される。抵抗器4の電気抵抗を1/10に低下して、0.02Ωとして、ジュール熱の発熱量は小さくできるが、コンパレータ33の入力電圧が0.04Vと低下して、トランジスタ3の内部抵抗を高精度でコントロールするのが難しくなる。電流検出器31の検出電圧を10倍に増幅してコンパレータ33に入力すると、コンパレータ33の入力電圧は0.4Vとなって、電流を高い精度でコントロールできる。
【0027】
3.実施形態3
図5は、実施形態3に係る発光ダイオードの検査装置300のブロック図である。この図の検査装置300の電流調整回路32Bは、コンパレータ33の出力側とトランジスタの入力側との間にバッファーアンプ8を接続している。バッファーアンプ8は、電圧増幅することなく、コンパレータ33の出力をインピーダンス変換してトランジスタ3に入力する。この検査装置300は、バッファーアンプ8でコンパレータ33の出力インピーダンスを低下してトランジスタ3に入力するので、トランジスタ3の入力容量を速やかに充電する。したがって、コンパレータ33の出力信号でトランジスタ3の内部抵抗を速やかコントロールして、ピーク電流をさらに効率よく抑制する。
【0028】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
複数の発光ダイオードが直列に接続されたダイオード負荷に一定の電流を流して検査する状態で、何れかの発光ダイオードが短絡しても他の発光ダイオードに故障が誘発されないようにした、発光ダイオードの特性を検査するための発光ダイオードの検査装置であって、
ダイオード負荷に接続してなる電源回路と、
ダイオード負荷と直列に接続してなるピーク電流制限回路を備えており、
ピーク電流制限回路が、
ダイオード負荷と直列に接続してなる電流検出器と、
電流検出器の検出電圧でダイオード負荷の電流を制御する電流調整回路とを備え、
電流検出器が、抵抗器とコイルとの直列回路を備え、
前記電流調整回路が、
前記ダイオード負荷及び前記電流検出器と直列に接続してなるトランジスタと、
前記トランジスタの入力側に接続してなるコンパレータと、
前記コンパレータの第1の入力端子に基準電圧を入力する基準電圧回路と、を備え、
前記電流検出器に誘導される検出電圧が前記コンパレータの第2の入力端子に入力され、
前記コンパレータの出力が前記トランジスタに入力されて、
前記トランジスタが前記ダイオード負荷の電流を制御するようにしてなる発光ダイオードの検査装置。
(態様2)
態様1に記載する発光ダイオードの検査装置であって、
電流調整回路が、
ダイオード負荷及び電流検出器と直列に接続してなるトランジスタと、
トランジスタの入力側に接続してなるコンパレータと、
コンパレータの第1の入力端子に基準電圧を入力する基準電圧回路と、を備え、
電流検出器に誘導される検出電圧がコンパレータの第2の入力端子に入力され、
コンパレータの出力がトランジスタに入力されて、
トランジスタがダイオード負荷の電流を制御するようにしてなる発光ダイオードの検査装置。
(態様3)
態様2に記載する発光ダイオードの検査装置であって、
トランジスタがFETであることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
(態様4)
態様2または3に記載する発光ダイオードの検査装置であって、
基準電圧回路が、基準電圧を変更できる回路であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
(態様5)
態様2ないし4のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
電流検出器に誘導される電圧を増幅するサブアンプを備え、
サブアンプの出力電圧がコンパレータの入力の入力端子に入力されてなることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
(態様6)
態様2ないし5のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
コンパレータの出力側と前記トランジスタの入力側との間に、コンパレータの出力インピーダンスを低下して出力するバッファーアンプを接続してなることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
(態様7)
態様1ないし6のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
電源回路が定電流電源であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
(態様8)
態様1ないし7のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
電流検出器がインダクタンスのある巻き線抵抗器であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
(態様9)
態様1ないし8のいずれかに記載する発光ダイオードの検査装置であって、
ダイオード負荷が、複数のレーザーダイオードの直列回路であることを特徴とする発光ダイオードの検査装置。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本開示に係る発光ダイオードの検査装置は、複数の発光ダイオードを直列に接続して検査する際に使用する装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
100、200、300…検査装置
1…発光ダイオード
2…定電流電源
3…トランジスタ
4…抵抗器
5…コイル
6…差動アンプ
6A…第1の入力端子
6B…第2の入力端子
7…サブアンプ
8…バッファーアンプ
10…ダイオード負荷
20…電源回路
30…ピーク電流制限回路
31…電流検出器
32、32A、32B…電流調整回路
33…コンパレータ
34…基準電圧回路