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特許7467045基材処理用垂直炉およびその中で使用するライナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】基材処理用垂直炉およびその中で使用するライナー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240408BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 Z
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019144280
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2020027941
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】16/100,012
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】フランス・ウィーガーズ
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-275533(JP,A)
【文献】特開平06-208958(JP,A)
【文献】特開2012-156510(JP,A)
【文献】特開2012-15195(JP,A)
【文献】特開2000-294511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基材を処理するための垂直炉であって、
外側反応チューブと、
前記外側反応チューブの内側に延在するように構成されかつ配置され、実質的に円筒形であり、開いた上端および下端の下部ライナー開口部によって区切られ、基材を備える基材ボートを収容するための内部空間を画定するライナーと、
前記ライナーの外壁と前記反応チューブの内壁との間に画定されるガス通路と、を含み、
前記ライナーが、側面上に少なくとも一つのガス排気孔を含む排気孔の垂直アレイを備え、前記内部空間から前記ガス通路まで延在し、
前記ライナーの外壁および前記反応チューブの前記内壁のうちの少なくとも一つが、前記それぞれの壁から前記ガス通路内に径方向に突出する少なくとも一つのフローデフレクタを備える、垂直炉。
【請求項2】
前記フローデフレクタが、前記ライナーを少なくとも部分的に囲み、そのため前記中心軸の方向におけるガス通路を通るガスの流れが、前記フローデフレクタによって少なくとも一回遮られる、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項3】
前記フローデフレクタが、前記ガス通路の局所幅の少なくとも75%の距離にわたって前記それぞれの壁から径方向に突出する、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項4】
前記フローデフレクタが、前記それぞれの壁にわたって実質的に接線方向に延在する、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項5】
前記フローデフレクタが、前記ライナー内の前記排気孔の垂直アレイのガス排気孔から10mm以内に配置される孔フローデフレクタを備える、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項6】
前記孔フローデフレクタが、前記ライナー内の前記ガス排気孔に対して下側に向かって配置される、請求項5に記載の垂直炉。
【請求項7】
前記孔フローデフレクタが、上部方向に前記反応チューブの中心軸に対して平行に配向された直立リッジを備える、請求項5に記載の垂直炉。
【請求項8】
前記ガス排気孔がスリット形状であり、前記スリットの短い側が前記反応チューブの中心軸に対して平行な方向に配向される、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項9】
前記垂直炉が、前記ライナーの前記内部空間内の中心軸に対して平行に延在するインジェクタを備え、前記内部空間内にプロセスガスを供給する、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項10】
前記ライナーが、前記中心軸に対して平行な前記ガス通路に延在するバルジを備え、前記内部空間内の前記インジェクタを収容する、請求項に記載の垂直炉。
【請求項11】
前記インジェクタが、前記中心軸に対して前記開口部の反対側に提供される、請求項に記載の垂直炉。
【請求項12】
複数のフローデフレクタが前記ガス通路内に蛇行流れ経路を作り出し、前記フローデフレクタはバッフルを含む、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項13】
前記ライナーが、前記ライナーの前記上端で開いた先細りの上端を有する、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項14】
前記炉が、前記ライナーおよび前記ガス通路内の前記ガス排気孔を介して前記内部空間からガスを除去するよう構成および配置された真空ポンプを備える、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項15】
前記垂直炉が、前記ライナーの前記内部空間内の前記中心軸に対して平行に延在し、プロセスガス供給源に接続されるインジェクタを備える、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項16】
前記プロセスガス供給源が、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)を蒸発させるように構成および配置された前駆体ガス蒸発器を備える、請求項1に記載の垂直炉。
【請求項17】
複数の基材を処理するための垂直炉の外側反応チューブの内部に延在するように構成されたライナーであって、前記ライナーが実質的に円筒形であり、中心軸を有し、開いた上端および下端の下側ライナー開口部によって区切られ、基材を備えた基材ボートを収容するための前記ライナーの内部の内部空間を画定し、前記ライナーが、側面上にガス排気孔の垂直アレイを備え、内部空間から前記ライナーの外側に延在し、前記ライナーが、前記ライナーの外壁から径方向に突出する少なくとも一つのフローデフレクタを備える、ライナー。
【請求項18】
前記フローデフレクタが、前記ライナーの前記外壁から1~5cmの距離にわたって突出する、請求項17に記載のライナー。
【請求項19】
前記フローデフレクタが前記ライナーを少なくとも部分的に囲む、請求項17に記載のライナー。
【請求項20】
前記フローデフレクタが、前記ライナーの外壁にわたって実質的に接線方向に延在する、請求項17に記載のライナー。
【請求項21】
前記フローデフレクタが、前記ライナー内の前記排気孔の垂直アレイのガス排気孔から10mm以内に配置される孔フローデフレクタを備える、請求項17に記載のライナー。
【請求項22】
前記孔フローデフレクタが、前記ライナー内の前記ガス排気孔に対して前記ライナーの下側端に向かって配置される、請求項21に記載のライナー。
【請求項23】
前記孔フローデフレクタが、上端の方向に前記中心軸に対して平行に配向された直立リッジを備える、請求項21に記載のライナー。
【請求項24】
前記ガス排気孔がスリット形状であり、前記スリットの短い側が前記中心軸に対して平行な方向に配向される、請求項17に記載のライナー。
【請求項25】
前記ライナーが、前記中心軸に対して平行に延在するバルジを備え、前記内部空間内のインジェクタを収容する、請求項17に記載のライナー。
【請求項26】
前記バルジが、前記中心軸に対して前記ガス排気孔と反対側に提供される、請求項25に記載のライナー。
【請求項27】
複数のフローデフレクタが、前記ライナーの前記外壁にわたって蛇行流れ経路を作り出し、前記フローデフレクタはバッフルを含む、請求項17に記載のライナー。
【請求項28】
前記ライナーの前記上端が、先細りの上部ライナー開口部を有する、請求項17に記載のライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、半導体基材処理用装置、より具体的には垂直炉およびその中で使用するためのライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直処理炉または反応器は、集積回路のいくつかの製造段階の間、半導体ウエハをバッチ処理するために一般的に使用される。炉が使用され得る処理工程には、酸化、拡散、アニーリング、化学蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)が含まれる。
【0003】
垂直処理炉は、電源によって電力供給される熱抵抗性のある加熱コイルを含み得る。加熱コイル内には、ベルジャー形状とし得る外側反応チューブ、および外側反応チューブ内に実質的に同軸に配置され得る内側反応チューブが提供され得る。内側反応チューブは一般的にライナーと称され得る。外側反応チューブの下端は開いていてもよく、一方でその上端は一般にドーム型構造によって閉じてもよい。ライナーは、その上端および下端両方にライナー開口部を有してもよい。代替的に、底部にライナー開口部があり、ライナーの上端は閉じていてもよい。
【0004】
外側反応チューブおよびライナーの両方の下端は、フランジ上に支持されてもよく、それを介して複数の基材を保持する基材ボートがライナーの内部空間によって形成される反応チャンバに入りかつそこから出ることができる中央開口部を画定してもよい。基材ボートは、断熱性の台座上に支持されてもよく、これはそれがフランジの中央開口部を閉じるように機能することができるドアプレート上に支持され得る。フランジは、ライナー内に配置されたガスインジェクタに接続するガス供給導管と、真空ポンプがライナーの外壁と外側反応チューブの内壁との間に存在するガス通路の下端に接続され得るガス排気導管とをさらに備えてもよい。
【0005】
動作中、複数の基材を有する基材ボートを反応チャンバに導入することができ、またこれは外に出されることができる。その後、プロセスガスは、ガス供給導管およびガスインジェクタを介して反応チャンバに供給されてもよい。プロセスガスは、その中に提供された基材に接触する間、ライナーの内部空間内に流れてもよい。プロセスガスは、ライナーの開いた上端から出て、外側反応チューブの閉じた上端に達してもよく、真空ポンプによるガス排気導管を介して反応チャンバから排出されるように、内側反応チューブと外側反応チューブとの間のガス通路を通って下方向に方向を逆転させることができる。
【0006】
問題は、プロセスガスおよび反応副生成物の濃度が、ガスインジェクタから基材ボートまでの移動の間に変化する場合があることであり得る。このことによって、不均一性が望ましくない基材ボートの異なる位置に位置する基材間の不均一な処理が生じ得る。垂直処理炉に関連するさらなる問題は、反応チャンバの小さな堆積粒子による汚染であり得る。処理中の基材上に付く堆積粒子は、そこから作られる集積回路を動作不能にする場合がある。
【0007】
従って、改善された特性を有する、垂直炉およびその中で使用するためのライナーが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0008】
この発明の概要は、概念の選択を簡略化した形で紹介するように提供する。これらの概念について、以下の本開示の発明を実施するための形態において、さらに詳細に記載する。本発明の概要は、請求項に記載する主題の重要な特徴も、本質的な特徴も特定することを意図しておらず、請求項に記載する主題の範囲を限定するように使用されることも意図していない。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数の基材を処理するための垂直炉が提供され得る。垂直炉は、外側反応チューブ、および外側反応チューブの内部に構成され、かつ配置されるライナーを備え得る。ライナーは実質的に円筒形であり、上端および下端の下部ライナー開口部によって区切られ、基材を備える基材ボートを収容するためのライナー内の内部空間を画定していてもよい。ガス通路は、ライナーの外壁と反応チューブの内壁との間に画定され得る。ライナーは、側面上に少なくとも一つのガス排気孔を有してもよく、内部空間からガス通路へ延在し得る。ライナーの外壁および反応チューブの内壁のうちの少なくとも一つは、それぞれの壁からガス通路内に径方向に突出する少なくとも一つのフローデフレクタを備えてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の基材を処理するための垂直炉の外側反応チューブの内部に延在するよう構成されたライナーが提供されてもよい。ライナーは実質的に円筒形であり、中心軸を有し、上端および下端の下部ライナー開口部によって区切られ、基材を備える基材ボートを収容するためのライナー内の内部空間を画定していてもよい。ライナーは、側面上に少なくとも一つのガス排気孔を有してもよく、内部空間からライナーの外側へ延在し得る。ライナーは、ライナーの外壁から径方向に突出する少なくとも一つのフローデフレクタを備え得る。
【0011】
従来の技術を超えて達成される本発明および利点を要約するために、本発明のある目的および利点について、本明細書において上に記載してきた。当然のことながら、必ずしもこうした目的または利点の全てが本発明の任意の特定の実施形態によって達成されなくてもよいことが理解されるべきである。それゆえ、例えば、本明細書に教授または示唆する通り、一つの利点または利点の一群を達成または最適化する形式で、本明細書に教授または示唆されてもよい、他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本発明が具体化または実行されてもよいことを、当業者は認識するであろう。
【0012】
これらの実施形態の全ては、本明細書に開示する本発明の範囲内であることが意図されている。当業者には、これらのおよび他の実施形態は、添付の図面を参照して、以下のいくつかの実施形態の発明を実施するための形態から容易に明らかとなり、本発明は、開示される全ての特定の実施形態にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書は、本発明の実施形態と見なされるものを特に指摘し、明確に主張して、特許請求の範囲で結論付けるものの、本開示の実施形態の利点は、添付の図面と併せて読むと、本開示の実施形態のある例についての記載から、より容易に解明されてもよい。
【0014】
図1図1は、実施形態による垂直炉の例示的な実施形態の概略横断面図である。
図2図2は、さらなる実施形態によるライナーの概略断面上面図を示す。
図3図3は、図2のライナーの概略断面側面図を示す。
図4図4は、図2および3のライナーの側面図を示す。
図5図5は、さらなる実施形態によるライナーの実施形態を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
いくつかの実施形態および実施例を以下に開示するが、本発明が、具体的に開示する本発明の実施形態および/または用途、並びにその明白な変更および均等物を超えて拡大することは、当業者により理解されるであろう。それゆえ、開示する本発明の範囲は、以下に記載し具体的に開示する実施形態によって限定されるべきでないことが意図される。本明細書に示される図は、何らかの特定の材料、構造またはデバイスの実際の図であることを意味せず、本開示の実施形態について記載するために使用される、単に理想化された表現にすぎない。
【0016】
本明細書で使用する通り、「基材」という用語は、使用される場合がある、またはその上にデバイス、回路もしくはフィルムが形成される場合がある、あらゆる下層材料または複数の下層材料を指してもよい。「半導体デバイス構造」という用語は、半導体基材上または半導体基材内に形成される半導体デバイスの能動的または受動的な構成要素の少なくとも一部分を含む、または画定する、処理されたまたは部分的に処理された半導体構造の任意の部分を示し得る。例えば、半導体デバイス構造は、例えば、トランジスタ、メモリ素子、変換器、コンデンサ、抵抗器、導電線、導電性バイア、および導電性コンタクトパッドなど、集積回路の能動的および受動的構成要素を含んでもよい。
【0017】
図1は、実施形態による例示的な垂直炉または反応器1の断面側面を概略的に図示する。炉1は二重管式であり、略ベルジャー形状とし得る外側反応チューブ30と、開放端であり、内側反応チューブとして機能し得るライナー40とを含み得る。外側反応チューブ30は、電力供給源(図示せず)によって給電される熱抵抗性の加熱コイル22などの加熱手段によって囲まれ得る。加熱手段は、外側反応チューブ30を囲む断熱性のスリーブ(図示せず)にさらに固定され得る。反応チューブ30およびライナー40の両方は、略管状を有してもよく、例えば、円形または多角形状であってもよい。ライナー40の外径は、外側反応チューブ30の内径よりも小さくてもよい。したがって、ライナー40は、外側反応チューブ30内に少なくとも部分的に配置され、共通の中心軸Lの周りに実質的に同軸に延在し得る。
【0018】
ガス通路20は、反応チューブ30の内壁32とライナー40の外壁41との間に画定され得る。反応チューブ30およびライナー40が類似した断面形状を有する場合、ガス通路20は、その軸方向の長さに沿って実質的に均一な幅を有し得る。ガス通路の(平均)幅は、典型的には、例えば1~5センチメートルの範囲の数センチメートル程度であってもよい。チューブ30およびライナー40の両方は、石英、炭化ケイ素、シリコンまたは別の適切な耐熱材料で作製され得る。
【0019】
図1に示す構成では、ライナー40は、基材ボート26が受けられる反応チャンバ2を区切り得る。外側反応チューブ30およびライナー40の両方は、フランジ8上のそれらの下端で支持され得る。フランジはステンレス鋼で作製され得る。基材ボート26は、フランジ8内に提供された中央炉開口部10を介して、反応チャンバ2に入るおよび/または出ることができる。
【0020】
例えば半導体ウエハなどのスロットと同様に多くの基材27を保持するための、例えば10~200など複数のスロットを含み得る基材ボート26は、シールキャップまたはドアプレート12上に取り付けられ得る台座28上に取り付けられ得る。台座28は、ドアプレート12およびフランジ8の両方のための熱シールドとして作用し、炉1の下部分を介して熱損失を減少させ得る。いくつかの実施形態では、基材ボート26および台座28は、モーター(図示せず)によって回転可能であり得る。
【0021】
反応チャンバ2が確実に気密シールされるように、エラストマーOリング14などのいくつかのシールを、炉1の下部、特に外側反応チューブ30とフランジ8の間、フランジ8とドアプレート12との間に用いることができる。頻繁にまたは継続的に高温に晒されると、エラストマーOリングおよびその他のシールの信頼性が低下し得るため、垂直炉1の下部は、反応チャンバ2の中央部および上部に存在するものよりも低い温度に保たれることが好ましい。
【0022】
垂直炉1は、ガスインジェクタ4をさらに含み得る。ガスインジェクタ4は、反応チャンバ2内に配置されてもよく、基材ボート26の高さまたは軸方向の長さの上に提供される複数のガス注入孔6を含む。ガス供給導管18は、例えば、前駆体および/またはパージガスなどのプロセスガスをガス注入孔6から反応チャンバ2へと導入できるように、可能な限りフランジ8を介してガスインジェクタ4に接続され得る。
【0023】
垂直炉は、LPCVDプロセスに使用され得る。こうしたプロセスでは、例えば、化学式Si(OCを有するテトラエチルオルトケイ酸塩などの前駆体ガスおよび「TEOS」という略語が使用され得る。低圧化学蒸着プロセスで基材上に堆積される酸化ケイ素の原材料としてTEOSを使用し得る。このプロセスは、得られる酸化シリコン層の均一性または密度の観点から特定の利点を提供し得る。代替的に、窒化ケイ素層を、異なる前駆体を用いてLPCVDプロセスで堆積させてもよい。
【0024】
ガスインジェクタ4を離れた後、プロセスガスおよび反応副生成物の濃度が変化し得る。反応チャンバ2からのプロセスガスの放出または排出が、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第8,398,773号に記載されるように、内側反応チューブまたはライナー40の上部開口部を介して達成される場合、プロセスガスおよび反応生成物の濃度は基材のボート26にわたって変化し得る。このことによって、不均一性が望ましくない基材ボート26の異なる位置に位置する基材27間の不均一な処理が生じ得る。
【0025】
基材ボートの異なる位置に位置付けられた基材間の不均一な処理を最小化するために、ガス排気孔19をライナー40に提供して反応チャンバ2からガスを放出または排気してもよい。ガス排気孔を通過した後、ガスは、外側チューブ30とライナー40との間のガス通路20を、真空ポンプ24に接続されたガス排気導管16の方へ向かって下方向に曲がり得る。図1では、このガス排気通路は参照番号21で示される。
【0026】
ガス注入孔6およびガス排気孔19の構成は、ガスインジェクタ4の注入孔6から反応チャンバ2に導入されたプロセスガスは、概して、反応チャンバを通ってガス排気孔19の方に向かって流れる。反応チャンバ内のプロセスガスおよび反応副生成物の経路は、そのためプロセスガスが上部から排出される状況と比較して短くなり得る。これにより、基材ボートの異なる位置に位置する基材間の不均一な処理を最小化することができる。さらに、基材上の水平方向に残った不均一性は、基材ボート26の回転によって緩和され得る。
【0027】
排気されている間、反応性ガスは、フランジ8およびガス排気導管16(図1の実施形態において、フランジ8の一部)を含む炉1の比較的冷たい下部を通って流れるとき、堆積を形成し得る。ガス排気経路21の下流端に隣接する副生成物の堆積それ自体は、反応チャンバ2の汚染を引き起こさない。しかしながら、特定の条件下では、ガス排気経路21の下流端に堆積された材料は、ガス流を再循環することによって、巻き上がり、ガス通路20を介して反応チャンバ2へ逆流し得る。
【0028】
例えば、処理された基材27を保持する一つの基材ボート26を反応チャンバ2から放出した後に、新しいバッチの基材27を有する別の基材ボートを反応チャンバ2に入れるとき、反応チャンバ2が大気圧になり、真空ポンプ24が一時的に停止し得る。同様に冷たい未処理基材27を有する新しい比較的冷たい基材ボート26の比較的温かい反応チャンバ2への導入によって、反応チャンバ内、特には外側反応チューブ30、ライナー40、および基材ボート26の著しい温度勾配が生じ得る。これらの温度勾配は、圧力勾配および/またはガス密度勾配を誘発する場合があり、これは次いで、ライナー40上の対流を促す。これらの流れは、ガス通路20、ガス排気孔19を介して、排気経路21の下流端からの粒子の移動を促進し、反応器チャンバ2に戻すことができる。このようにして、粒子は新規に導入された基材ボート26の基材27上に付着し得る。
【0029】
このような堆積の逆流を防止するために、ライナー40の外壁41および/または外側反応チューブ30の内壁32は、フローデフレクタ50を備えていてもよい。フローデフレクタは、中央軸Lに対して略径方向にそれぞれの壁からガス通路20内に突出し得る。
【0030】
図1の垂直炉1において、外側反応チューブ30およびライナー40は両方ともフローデフレクタ50を備えても良い。フローデフレクタは、ガス通路20内に径方向に突出する環状バッフル52の形態であってもよい。フローデフレクタ50は、ガス通路20の軸方向長さの半分の地点に、それらとガスが通過する壁32、41との間の狭いZ型ギャップを画定するように相互に十分に近接して提供されてもよい。フローデフレクタ50のバッフル52は、ライナー40を部分的にまたは完全に囲んでもよく、そのため、中心軸に対するガス流の角度位置に関係なく、それらは中央軸Lの方向のガス通路20を通るガスの流れを必ず妨げる。
【0031】
確実に逆流を効率的に阻害するために、フローデフレクタは、好ましくは例えば1~5cmなど十分な距離だけガス通路20の中へと突出し得る。「十分な距離」とは正確には、特にガス通路20の(局所的な)幅に、すなわち、外側反応チューブ30の内壁32とライナー40の外壁41との間の(局所的)距離に依存し得る。概して、フローデフレクタは、ガス通路20の局所幅の少なくとも75%の径方向の距離にわたって提供される壁から径方向に突出し得ることが好ましい。
【0032】
例えば、外側反応チューブ30およびライナー40が、中央軸Lに沿って25ミリメートルの均一幅を有するシリンダージャケット形状のガス通路20を画定する場合、フローデフレクタ50は、ガス通路20の中へ少なくとも19ミリメートル(すなわち、0.75*25mm)の径方向距離に延在し得ることが好ましい。例えば5mmなど、ライナー40がわずかに軸外に配置されている場合、そのため、ガス通路20の幅が20~30mmの接線方向に変化し、フローデフレクタ50がガス通路20内に突出する距離は、例えば15~23mmの間でそれに応じて変化し得る。
【0033】
ライナー40は、ライナーの上端で開いた先細りの上端54を有してもよい。開いた先細りの上端54は、基材ボート26がライナー40の内部空間内に移動する時に、基材ボート26の上部が通過できるように、例えば310~350mmの直径など、十分に大きな開口部を有し得る。開いた先細りの上端54は、開いた先細り上端からの処理中の排気を阻止するために十分小さい場合もある。排気は、処理中に排気孔19を通して達成され得ることが好ましい場合がある。
【0034】
外側反応チューブ30およびライナー40は通常、個別に製造され、かつ炉1の二重管構造を形成するために後の段階で組み立てられ得る。こうした組立を可能するため、その間にライナー40が外側反応チューブ30に注意深く移動され、二つの構成要素間の少なくとも数ミリメートルの隙間が望ましい場合がある。隙間は、少なくとも2ミリメートルであることが好ましく、2~8ミリメートルの範囲であることがより好ましい。したがって、フローデフレクタは、それが設けられている壁から、ガス通路20の局所幅マイナス少なくとも2ミリメートル以内の径方向距離にわたって、または少なくともガス通路20の局所幅マイナス8mmの径方向の距離にわたって突出することが好ましい。
【0035】
図2~5を参照して図示されるように、フローデフレクタ50は、例えばバッフルなど、複数の部品から構成されてもよく、これは異なる軸方向位置に提供されてもよく、その部品は共に内側チューブ40を囲む。複数のバッフルが、外側反応チューブ30および/またはライナー40の壁32、41上に提供され得る。こうしたフローデフレクタ50のいくつかの実施形態を図2~5を参照してここで説明する。図2図5に図示した実施形態では、フローデフレクタ50のバッフル52は、ライナー40の外壁41上に提供され、このライナーは単独で示されることに、まえもって留意されたい。しかしながら、当業者であれば、類似のパターンのバッフルが、代替的にまたは追加的に、外側反応チューブ30の内壁32上に提供され得ることを理解するであろう。
【0036】
図2は、一実施形態によるライナー40の断面上面図を示す。ライナー40は、図1のうちの一つなどの垂直炉で使用可能であり得る。ライナー40は、ライナーの中心軸Lに対して外側径方向に延在し得るバルジ55を備え得る。バルジ55は、ライナー40の内部空間内のガスインジェクタ4を収容するために、ライナーの中心軸Lに平行に延在してもよい。バルジ55は、ガス通路20(図1を参照)内に延在してガスインジェクタ4を収容してもよい。
【0037】
ライナー40は、ガス排気孔19を備えてもよい。ライナー40の中心軸Lに対して、ガス排気孔19の反対側に構成されたガスインジェクタ4を有することが有利であり得る。この構成は、プロセスガスがガスインジェクタ4に供給され、ガス排気孔19を介して内部空間から除去される場合に、基材全体上に流れを作り出す。したがって、ライナー40のバルジ55は、中心軸Lに対してガス排気孔19の反対側に構成され得る。
【0038】
ライナー40の外壁41は、ライナー40の周りに外表面41から径方向に突出し得る環状バッフル52の形態のフローデフレクタを備えてもよい。図2に示ように、実施形態では、バッフル52は、外表面41でのバルジ55の位置でほとんど突出し得ず、一方、図1の実施形態は、バッフル52は、ガスインジェクタ4がライナー40に位置するところに実質的に突出している。
【0039】
図3は、図2のライン59に沿ったライナー40の断面側面図を示す。台座28に取り付けられた複数の基材27を保持するための複数のスロットを含む基材ボート26が示される。台座28は、熱シールドを備えてもよく、モーター(図示せず)によって回転可能であり得る。ライナー40の外壁41は、外表面41から径方向に突出し得る環状バッフル52の形態のフローデフレクタを備えてもよい。
【0040】
ライナー40は、ライナー40の上端で開いた先細りの上端54を有してもよい。開いた先細りの上端54は、基材ボート26がライナー40の内部空間内に移動する時に基材ボート26が通過できるように十分に大きい開口部を有してもよい。基材ボートがライナーの内部空間に移動する時、開口部に基材ボート26がないため、開いた先細りの上端は完全に開いていてもよい。利点は、ガス通路20を通るいかなる逆流も、ガス排気孔19を通らず、上部の開口部を通過する可能性が高いことである。したがって、逆流はすべてのフローデフレクタ52を通過し、逆流内の粒子は基材に達する前に妨げられ得る。
【0041】
図4は、図2および3のライナー40の側面図を示す。ガス排気孔19は、内部空間からのガスを放出または排気するためにライナー40内に提供され得る。ライナー40の外壁41は、外表面41から径方向に突出し得る複数の環状バッフル52の形態のフローデフレクタを備えてもよい。
【0042】
フローデフレクタは、ガス排気孔19から10mm以内に配置され得る孔フローデフレクタ56を備え得る。孔フローデフレクタ56は、ガス排気孔19の下側の近くに配置され得る。孔フローデフレクタ56は、上端の方向に中心軸Lに平行に配向された直立リッジ58が提供され得る。ガス排気孔19はスリット形状であってもよい。スリットの短い側は、中心軸Lに平行な方向に向けられてもよい。軸方向Lにおけるライナー40の外側壁41に沿って移動するガス流内の粒子は、フローデフレクタ、孔フローデフレクタ、リッジおよび/またはスリット形状のガス排出孔によって妨げられ、内部空間に粒子が混入するリスクが低減され得る。垂直アレイにおける複数のガス排気孔19がライナー内に提供されてもよい。ライナー40内の複数のガス排気孔19は、ライナーの底部から上部へと増大する断面を有し得る。増大する断面は、アレイのガス排気孔19それぞれに対して、排出されたガスの容積が実質的に等しいように、真空ポンプ24(図1)に対するの距離の増大を補い得る。
【0043】
ライナー40は、ライナー40の上端で開いた先細りの上端54を有してもよい。開いた先細りの上端54は、基材ボート26が通過するのに十分に大きい開口部を有し得る。
【0044】
図5は、一実施形態によるライナー40の実施形態を概略的に図示する。実施形態は、異なる軸方向位置でライナー40の外壁41から径方向に突出し、かつ実質的に接線方向に沿って延在する複数の同一のバッフル52を備えるフローデフレクタ50を特徴とする。バッフル52の各々は、中央軸Lに対して約40°の角度αを通るライナー40の外壁41に沿って接線方向に延在し得る。しかしながら、その他の実施形態では、少なくとも一部のバッフル52での角度αは、例えば、30~90°の範囲など、40°より小さくても大きくてもよい。
【0045】
さらに、バッフル52は、外壁41に対して実質的に垂直に延在してもよい。バッフル52は、ライナー40の高さにわたるバラバラの数の離間した軸方向位置に配置され得る。例えば、図5に示すように、六つのバッフルは、ライナー40の高さにわたって等距離間隔にあってもよい。結果として、ライナー40が図1に示すものと類似した垂直炉1に組み込まれるとき、フローデフレクタ50は、少なくともその全長を共に覆うガス通路20の三つの等しい長さの軸方向に延在する部分(例えば、図示された配向に:ガス通路20の底部、中間部、および上部)の全てに延在するように、ガス通路20の長さにわたってほぼ均一に分布される。
【0046】
図5の実施形態における軸方向位置のそれぞれは、いくつかの接線方向に離間したバッフル52を特徴とし得る。図示したように、一連の、接線方向に等間隔を置いた六つのバッフル52が提供され得る。異なる軸方向位置における一連のバッフル52は、互いに対して回転可能なようにオフセットされており、軸方向Lに見られるような方法で互いに部分的に重なっていてもよく、フローデフレクタ50、すなわち、同時にすべてのバッフル52、がライナー40を少なくとも完全に囲む。実際に、ライナーを複数回取り囲むと考えられ得る。
【0047】
フローデフレクタ50がライナー40を複数回取り囲むように構成されているという事実によって、軸方向Lにライナー40の外壁41に沿って移動するガス流は、フローデフレクタ50の異なるバッフル52によって数回遮られ得る。さらに、フローデフレクタ50は、ライナー40の軸方向長さにわたってほぼ均一に分布されているため、バッフル52を欠いている外壁41の特定の軸方向延在部分はなく、それが比較的強い逆流の発生を促進する理由であり得る。代わりに、フローデフレクタ50は、堆積を移送できる可能性のある軸方向に向けられたフローの発生を分散させる、フロー破断/偏向バッフル52から成るある種の迷路であると考えられ得る。
【0048】
ガス排気孔19は、反応チャンバからガスを放出または排気するためにライナー40内に提供され得る。フローデフレクタは、ライナー40のガス排気孔19から10mm以内に配置され得る孔フローデフレクタ56を備え得る。孔フローデフレクタは、ガス排気孔19に対して下側に向けて配置され得る。ガス排気孔は、スリット形状であってもよく、スリットの短い側は、中心軸Lに平行な方向に配向されてもよい。垂直アレイ内の複数のガス排気孔が、ライナー内に提供されてもよい。ライナー40内の複数のガス排気孔19は、ライナーに沿って底部から上部へと増大する断面を有し得る。
【0049】
実施形態によると、フローデフレクタは、中央軸Lの周りのライナーの外壁に沿ってらせん状に延在するいくつかのバッフルを含み得る。逆流防止の観点から、比較的多数のバッフルを有するフローデフレクタを構築および採用したいと考えるかもしれない。しかしながら、多数のバッフルは、排気経路に沿ったフロー抵抗の増加を意味し得、これは返って熱処理炉の真空ポンプに対する要求を増加させ得る。数値的シミュレーションによって、控えめな数の延在するバッフルの存在によって生じるフロー抵抗の増加は比較的小さく、また実際的に懸念がないことを示している。
【0050】
本発明の例示的な実施形態が上記の添付図面を参照して既に記載されてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことが理解されるべきである。本開示の実施形態への変更は、本発明を実施する当業者によって、図面、本開示および添付の特許請求の範囲から、理解され達成され得る。
【0051】
本明細書全体を通して、「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」とは、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所での「一実施形態では(in one embodiment)」または「一実施形態では(in an embodiment)」の使用は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。さらに、一つ以上の実施形態の特定の特徴、構造、または特性を、新しく明示的に記述されていない実施形態を形成するための適切な任意の方法で組み合わせ得ることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5