(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20240408BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20240408BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61F13/53 300
C08F8/12
C08J9/28 CEY
(21)【出願番号】P 2019238358
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 響
(72)【発明者】
【氏名】木下 章恵
(72)【発明者】
【氏名】中下 将志
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-118117(JP,A)
【文献】特許第3699225(JP,B2)
【文献】特表平08-508527(JP,A)
【文献】特表2002-507975(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
C08F 8/12
C08J 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材と、を有する吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、
前記高分子吸収剤の飽和吸液時体積の、吸液前体積に対する体積増加率が、233%以上567%以下であり、
飽和吸液した前記高分子吸収剤に30g/cm
2荷重を3分間加えた後の荷重後体積の、前記飽和吸液時体積に対する体積減少率が、34%以上48%以下であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
飽和吸液した前記高分子吸収剤に30g/cm
2荷重を3分間加えた後の離水倍率が、65%以上72%以下であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材と、を有する吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、
前記高分子吸収剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2個以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物であり、官能基には少なくとも1個以上の親水基を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤と隣接可能なSAPを有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材と、を有する吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、
前記高分子吸収剤の単位体積当たりの前記連続空孔の空隙の体積が85%以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材と、を有する吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、
前記高分子吸収剤は、0.1~30.0%の架橋重合残基を含有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記連続空孔の平均直径が、1~1000μmであることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い吸収量を有する高吸収性ポリマー(所謂「SAP」)を用いた使い捨ておむつや生理用品等の吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、吸収量が優れたSAPと、吸収速度が優れたパルプ繊維とを組み合わせた吸収体を用いた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、流通や保管、携帯性、装着快適性等の観点からその厚みを薄くすることが望まれている。しかしながら、SAPとパルプ繊維とを組み合わせると、パルプ繊維のパルプ量の多さに起因して、吸収体が嵩高になってしまう課題(薄型化されない課題)がある。
【0005】
一方で、パルプ繊維を排除してSAPのみとすると、パルプ繊維の優れた吸収速度性能が発揮されず、吸収速度が遅い吸収体となってしまう。
【0006】
そのため、パルプ繊維を用いたときよりも薄型化され、パルプ繊維を用いたときと同等以上の吸収速度性能を有する吸収体が望まれる。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、適切な吸収速度性能を有し薄型化された吸収体を備える吸収性物品を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材と、を有する吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、
前記高分子吸収剤の飽和吸液時体積の、吸液前体積に対する体積増加率が、233%以上567%以下であり、
飽和吸液した前記高分子吸収剤に30g/cm
2
荷重を3分間加えた後の荷重後体積の、前記飽和吸液時体積に対する体積減少率が、34%以上48%以下であることを特徴とする吸収性物品である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な吸収速度性能を有し薄型化された吸収体を備える吸収性物品を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
【
図2】
図2Aは、展開状態且つ伸長状態のおむつ1を肌側面側から見た概略平面図である。
図2Bは、
図2A中のX-X矢視で示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、吸収剤Aの製造過程について説明する図である。
【
図4】
図4は、吸収剤Aの拡大倍率50倍のSEM写真である。
【
図5】
図5は、吸収剤Aの拡大倍率100倍のSEM写真である。
【
図6】
図6は、吸収剤Aの拡大倍率500倍のSEM写真である。
【
図7】
図7は、吸収剤Aの拡大倍率1000倍のSEM写真である。
【
図8】
図8は、吸収剤Aの拡大倍率1500倍のSEM写真である。
【
図9】
図9は、無加圧DW法で用いられる測定装置を示した模式図である。
【
図10】
図10は、無加圧DW法における30秒後吸液量を測定した測定結果を示した図である。
【
図11】
図11は、体積増加率測定試験で用いられる測定装置を示した模式図である。
【
図12】
図12は、体積増加率測定試験の試験結果を示した図である。
【
図13】
図13は、体積減少率及び離水倍率測定試験で用いられる測定装置を示した模式図である。
【
図14】
図14は、体積減少率測定試験の試験結果を示した図である。
【
図15】
図15は、離水倍率測定試験の試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材と、を有する吸収性物品であって、
前記高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であることを特徴とする吸収性物品。
【0014】
このような吸収性物品によれば、適切な吸収速度性能を有し薄型化された吸収体を備える吸収性物品を実現することが可能となる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記高分子吸収剤の飽和吸液時体積の、吸液前体積に対する体積増加率が、233%以上567%以下であることが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、より薄型化された吸収体を備える吸収性物品を実現することが可能となる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、飽和吸液した前記高分子吸収剤に30g/cm2荷重を3分間加えた後の荷重後体積の、前記飽和吸液時体積に対する体積減少率が、34%以上48%以下であることが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、高分子吸収剤が一旦吸液して膨張したとしても荷重により直ぐに離水して薄い状態(コンパクトな状態)へ戻ることが可能となる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、飽和吸液した前記高分子吸収剤に30g/cm2荷重を3分間加えた後の離水倍率が、65%以上72%以下であることが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、高分子吸収剤が一旦吸液して膨張したとしても荷重により直ぐに離水して薄い状態(コンパクトな状態)へ戻ることが可能となる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記高分子吸収剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2個以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物であり、官能基には少なくとも1個以上の親水基を有することが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、水分との親和性が向上し、吸収速度性能をより一層向上させることが可能となる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、連続骨格及び連続空孔を形成しやすくなり、薄型化された吸収体(吸収性物品)を容易に実現することが可能となる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記高分子吸収剤と隣接可能なSAPを有することが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、高分子吸収剤から離水した体液を、吸収体の薄型化(コンパクト性)を殆ど阻害することなく、他剤(SAP)へ適切に吸収させることが可能となる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記高分子吸収剤の単位体積当たりの前記空孔の空隙の体積が85%以上であることが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記高分子吸収剤は、0.1~30.0%の架橋重合残基を含有することが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、体液を吸収すると、連続骨格を伸長させ、連続骨格の伸長に伴って、連続空孔も広がりやすい高分子吸収剤とすることができる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、前記連続空孔の平均直径が、1~1000μmであることが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、毛細管現象によって体液を連続空孔に取り込みやすくなり、吸収体として体液を吸収しやすくなる。
【0033】
===実施形態===
本実施形態にかかる吸収体を用いた吸収性物品の一例として、所謂パンツ型使い捨ておむつを例に挙げて説明する。なお、吸収体を用いた吸収性物品としては、パンツ型使い捨ておむつに限らず、テープ型使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収パッド、ペット用の使い捨ておむつやペット用の吸収パッド等の吸収性物品の吸収体として用いることができる。使い捨ておむつ及び吸収パッド等は、乳幼児用としても大人用としても利用可能である。なお、体液とは、人間だけでなく動物も含めた生物から排出される液体をいう。例えば、汗、尿、便、経血、おりもの、母乳、血液、滲出液等を挙げることができる。
【0034】
===パンツ型使い捨ておむつ1の基本構成===
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
図2Aは、展開状態且つ伸長状態のおむつ1を肌側面側から見た概略平面図である。
図2Bは、
図2A中のX-X矢視で示す概略断面図である。「展開状態」とは、おむつ1の両側部の、腹側部材30の側部30aと背側部材40の側部40aとの接合をそれぞれ分離し、開いておむつ1全体を平面的に展開した状態である。「伸長状態」とは、おむつ1の皺が視認できなくなる程度まで、おむつ1が備える弾性部材を伸長させた状態を示す。具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する腹側部材30等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態を示す。
図2A及び
図2B中のC-C線は左右方向における中心線である。
図2Bでは、便宜上、接着剤を省略して示している。
【0035】
図1に示すように、パンツ型のおむつ1は上下方向と左右方向と前後方向とを有し、おむつ1には胴回り開口部BH及び一対の脚回り開口部LHが形成されている。
図2Aの展開かつ伸長状態のおむつ1の上下方向を「長手方向」といい、長手方向の一方側を「腹側」、他方側を「背側」ともいう。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。また、おむつ1は
図2Bに示すように厚さ方向を有し、厚さ方向において着用者に接触する側を肌側とし、その逆側を非肌側とする。
【0036】
おむつ1は、所謂3ピースタイプであり、吸収性本体10と腹側部材30、背側部材40とを有する。腹側部材30、背側部材40は平面視略長方形状であり、その長手方向が左右方向に沿っている。腹側部材30は、着用者の腹側を覆い、背側部材40は、着用者の背側を覆う。吸収性本体10は平面視略長方形形状である。吸収性本体10の腹側の端部10eaと背側の端部10ebは、それぞれ腹側部材30、背側部材40の肌側面と重ね合されている。
【0037】
図2Aに示すように、展開状態且つ伸長状態のおむつ1は、中心線C-Cに対して左右対称な形状を有している。吸収性本体10の腹側の端部10ea、背側の端部10ebの非肌側面と腹側部材30、背側部材40の肌側面とを接着剤等(不図示)により接合し、腹側部材30と背側部材40とが対向するように吸収性本体10を二つ折りして、腹側部材30の左右方向の両側部30aと背側部材40の左右方向の両側部40aとをサイド溶着部SSで溶着接合することにより、おむつ1はパンツ型となる。
【0038】
腹側部材30及び背側部材40はそれぞれ、柔軟な不織布等からなる肌側シート31、41と非肌側シート32、42と、左右方向に伸縮する複数の糸ゴム35、45を備える。複数の糸ゴム35、45は、上下方向に間隔を空けて並んで配されるとともに、左右方向に伸長した状態で2枚のシート(31と32、41と42)の間に固定されている。したがって、腹側部材30及び背側部材40は左右方向に伸縮可能であり、着用者の胴回りにフィットする。
【0039】
腹側部材30は、肌側から順に肌側シート31、糸ゴム35、非肌側シート32が厚さ方向に重ねられており、ホットメルト等の接着剤等によって互いに接合されている。同様に、背側部材40は、肌側から順に肌側シート41、糸ゴム45、非肌側シート42が厚さ方向に重ねられており、ホットメルト等の接着剤等によって互いに接合されている。
【0040】
肌側シート31、41及び非肌側シート32、42は、それぞれ不織布からなるシートであり、具体的には、スパンボンド不織布である。但し、これに限らず、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等の不織布を用いてもよい。また、本実施形態においては、不織布の構成繊維として熱可塑性樹脂のポリプロピレン(PP)の単独繊維を用いているが、これに限られない。例えば、ポリエチレン(PE)などの他の熱可塑性樹脂の単独繊維を用いても良いし、PE及びPP等の鞘芯構造を有した複合繊維を用いても良い。さらに、肌側シート31、41及び非肌側シート32、42の全てが不織布でなくてもよく、肌側シート31、41又は非肌側シート32、42のいずれか一方については、不織布以外の他の柔らかいシート素材を用いてもよい。
【0041】
吸収性本体10は、トップシート13と、吸収体11と、バックシート15とを備え、それぞれホットメルト等の接着剤によって接着されている。トップシート13は液透過性シートであればよく、親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等を例示できる。バックシート15は液不透過性シートであればよく、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、疎水性のSMS不織布等を例示できる。トップシート13及びバックシート15は吸収体11全体を覆う大きさとする。
【0042】
吸収性本体10は、左右方向の端部に設けられた長手方向に伸縮するレッグギャザーLGと、吸収体11より肌側に設けられた横漏れを防止するための防漏壁部としての立体ギャザーLSGを有する。レッグギャザーLG及び立体ギャザーLSGは、それぞれ長手方向(上下方向)に伸長する弾性部材17、弾性部材18を備えている。
【0043】
吸収体11は、平面視略矩形形状であり、液体を吸収する吸収性コア11cを備える。吸収性コア11cは、高分子吸収剤(吸収剤A)と高吸収性ポリマー(所謂SAP)とを肌側シート部材の一例としてのコアラップ(具体的には親水性のティッシュ)で包んで、略砂時計形状に成形している。高分子吸収剤(吸収剤A)と高吸収性ポリマー(SAP)は、例えば、それぞれ粒状のものを用いることができ、ふるいを用いて、粒子がそれぞれ所定範囲内の粒度を有するものとすることが好ましい。以下の説明では、粒子状の高分子吸収剤(吸収剤A)について説明するが、これに限られない。おむつ1等の吸収性物品に用いる高分子吸収剤(吸収剤A)は、粒子状、微粒子状、ブロック状、シート状、糸状等、使用状態に応じて適宜用いることができる。
【0044】
===高分子吸収剤について===
高分子吸収剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2個以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物であり、官能基には少なくとも1個以上の親水基を有する高分子化合物である。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を備える化合物の架橋重合体の加水分解物であり、少なくとも-COONa基を備える高分子化合物である。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいう。高分子吸収剤は、一分子中に少なくとも1個以上の-COONa基を備えるモノリス状有機多孔質体である。さらに、-COOH基を備えていてもよい。多孔質体の骨格中に、-COONa基が略均一に分布されている。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルと、ジビニルベンゼンとの架橋重合体の加水分解物である高分子吸収剤は、少なくとも-COONa基を有する有機ポリマーによって連続骨格が形成され、骨格間に吸収対象液の吸収場となる連通孔(連続空孔)を有している。また、加水分解処理は、架橋重合体の-COOR基(カルボン酸エステル基)を-COONa基又は-COOH基とするものであることから(
図3)、高分子吸収剤が-COOR基を備えていてもよい。連続骨格を形成する有機ポリマー中の-COOH基及び-COONa基の存在は、赤外分光光度法、弱酸性イオン交換基を定量する方法により分析することにより確認することができる。
【0046】
図3は、吸収剤Aの製造過程について説明する図である。
図3において、上図は、重合の構成原料を示し、中図は、(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体としてのモノリスAを示し、下図は、中図のモノリスAに加水分解及び乾燥処理をした吸収剤Aを示している。
【0047】
以下、高分子吸収剤の一例としての、(メタ)アクリル酸エステルと、ジビニルベンゼンとの架橋重合体の加水分解物(以下、「吸収剤A」ともいう。)について、説明する。高分子吸収剤としては、吸収剤Aに限られず、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であればよい。さらには、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2個以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物であればよい。以下、「モノリスA」とは、加水分解処理がなされる前の(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体からなる有機多孔質体であり、「モノリス状有機多孔質体」ともいう。「吸収剤A」は、加水分解処理及び乾燥処理がなされた後の(メタ)アクリル酸エステルとジビニルベンゼンとの架橋重合体(モノリスA)の加水分解物である。なお、以下の説明において、吸収剤Aは乾燥状態のものをいう。
【0048】
吸収剤Aの構造について説明する。吸収剤Aは、連続骨格と連続空孔を有する。連続骨格を形成する有機ポリマーである吸収剤Aは、
図3に示すように、重合モノマーである(メタ)アクリル酸エステルと、架橋モノマーであるジビニルベンゼンとを用いて、架橋重合させ、得られた架橋重合体(モノリスA)を加水分解することにより得られる。連続骨格を形成する有機ポリマーは、構成単位として、エチレン基の重合残基(以下、「構成単位X」ともいう。)と、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(以下、「構成単位Y」ともいう。)とを備える。連続骨格を形成する有機ポリマー中のエチレン基の重合残基(構成単位X)は、カルボン酸エステル基の加水分解により生成する-COONa基、又は-COOH基と-COONa基を有する。なお、重合モノマーが(メタ)アクリル酸エステルであることから、エチレン基の重合残基(構成単位X)は、-COONa基、-COOH基、及びエステル基とを有する。具体的な例として、メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤Aの製造は、後述する。
【0049】
吸収剤Aにおいて、連続骨格を形成する有機ポリマー中、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(構成単位Y)の割合は、全構成単位に対し、0.1~30モル%、好ましくは0.1~20モル%である。メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤Aにおいては、連続骨格を形成する有機ポリマー中、ジビニルベンゼンの架橋重合残基(構成単位Y)の割合は、全構成単位に対し、約3%であり、0.1~10モル%が好ましく、より好ましくは0.3~8モル%である。連続骨格を形成する有機ポリマー中のジビニルベンゼンの架橋重合残基の割合が、上記範囲未満だと、吸収剤Aの強度が低下し、また、上記範囲を超えると、吸収対象液の吸収量が低下する。
【0050】
吸収剤Aにおいて、連続骨格を形成する有機ポリマーは、構成単位X及び構成単位Yのみからなるものであってもよいし、あるいは、構成単位X及び構成単位Yに加えて、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位、すなわち、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外のモノマーの重合残基を有していてもよい。構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位としては、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、(メタ)アクリル酸グリシジル、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のモノマーの重合残基が挙げられる。また、連続骨格を形成する有機ポリマー中、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位の割合は、全構成単位に対し、0~50モル%、好ましくは0~30モル%である。メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとした吸収剤Aにおいては、連続骨格を形成する有機ポリマー中、構成単位X及び構成単位Y以外の構成単位の割合は、全構成単位に対し、0~50モル%、好ましくは0~30モル%である。
【0051】
吸収剤Aの連続骨格の厚みは0.1~100μmである。吸収剤Aの連続骨格の厚みが0.1μm未満の場合、多孔質の水を取り込むための空間(空孔)が、吸収時に潰れやすくなり、吸収量が低下してしまう恐れがある。一方、連続骨格の厚みが、100μmより厚くなると、液体の吸収が遅くなる恐れがある。なお、吸収剤Aの連続骨格の細孔構造は、連続気泡構造であるため、連続骨格の厚みの測定は、電子顕微鏡測定用の試験片に現れる骨格断面を厚みの評価箇所とする。骨格は、後述の加水分解後の脱水・乾燥処理で取り除かれる水(水滴)同士の間隔で形成されるため、多角形であることが多い。そのため、骨格の厚みは、多角形断面に外接する円の直径の平均値とする。まれに、多角形の中に小さな穴が開いている場合もあるが、その場合は、小さな穴を囲んでいる多角形の断面の外接円を測定する。
【0052】
吸収剤Aは、また、連続空孔の平均直径は、1~1000μmである。吸収剤Aの連続空孔の平均直径が、1μm未満の場合、多孔質の水を取り込むための空間(空孔)が、吸収時に潰れやすくなり、吸収速度が低下してしまう恐れがある。一方、連続空孔の平均直径が、1000μmより厚くなると、液体の吸収速度が低下する恐れがある。なお、吸収剤Aの連続空孔の平均直径は、水銀圧入法によって測定することができ、水銀圧入法によって得られた細孔分布曲線の最大値である。連続空孔の平均直径の測定用サンプルについては、吸収剤Aのイオン形によらず減圧乾燥器によって50℃、18時間以上乾燥させたものをサンプルとして用いる。最終到達圧力を0TORRとする。
【0053】
吸収剤Aは、気泡状のマクロポア同士が重なっている構造を有し(
図4~
図8参照)、この重なる部分は、平均直径1~1000μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは20~100μmの共通の開口(メソポア)となる連続気泡構造体(連続マクロポア構造体)である連続気泡構造を有する。その大部分がオープンポア構造のものである。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1~12個、多くのものは3~10個である。
【0054】
図4は、吸収剤Aの拡大倍率50倍のSEM写真である。
図5は、吸収剤Aの拡大倍率100倍のSEM写真である。
図6は、吸収剤Aの拡大倍率500倍のSEM写真である。
図7は、吸収剤Aの拡大倍率1000倍のSEM写真である。
図8は、吸収剤Aの拡大倍率1500倍のSEM写真である。吸収剤Aは、メタクリル酸ブチルを重合モノマーとし、ジビニルベンゼンを架橋モノマーとする吸収剤Aの一例であり、
図4~
図8の吸収剤Aは、それぞれ2mm角の立方体である。
【0055】
図4~
図8には、吸収剤Aの形態例の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示すが、
図4~
図8に示す吸収剤Aは、多数の気泡状のマクロポアを有しており、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口(メソポア)となる連続気泡構造体となっている。その大部分がオープンポア構造である。メソポアの乾燥状態での平均直径が、上記範囲未満であると、吸収対象液の吸収速度が遅くなり過ぎ、また、上記範囲を超えると、吸収剤Aが脆くなる。吸収剤Aがこのような連続気泡構造となることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、特開平8-252579号公報等に記載されるような粒子凝集型多孔質体に比べて、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。
【0056】
吸収剤Aの細孔(空孔)の全細孔容積は、1~50ml/gが好ましく、好ましくは2~30ml/gである。吸収剤Aの全細孔容積が、0.5ml/g未満の場合、多孔質の水を取り込むための空間(空孔)が、吸収時に潰れやすくなり、吸収量及び吸収速度が低下してしまう恐れがある。また、50ml/gを超えると、吸収剤Aの強度が低下する。なお、全細孔容積は、水銀圧入法で測定することができる。全細孔容積の測定用サンプルは、吸収剤Aのイオン形によらず、減圧乾燥器で50℃の温度のもと、18時間以上乾燥させた吸収剤Aを用いる。最終到達圧力を0TORRとする。
【0057】
以下、吸収剤Aと体液等の液体(以下、「体液」ともいう。)とが接触した場合の様子について説明するが、吸収剤Aを備える吸収体11と体液とが接触した場合も同様である。また、吸収された体液の重量は、体液量に略比例することから、以下において、体液重量を「体液量」ともいう。
【0058】
まず、体液が吸収剤Aと接触すると、毛細管現象によって、吸収剤Aの細孔(空孔)に吸収される。
図4~
図8に示すように、吸収剤Aが備える連続空孔は、複数の細孔(空孔)が互いに連通している空孔であり、外観からも空孔が多数設けられていることを視認することができる。毛細管現象によって、一定量の体液がこの多数の空孔に入り込み、吸収剤Aが体液を吸収する。吸収剤Aに吸収された一定量の体液のうち、一部は、浸透圧によって連続骨格に吸収されて、連続骨格が伸長する。吸収剤Aに吸収された一定量の体液のうち、連続骨格に吸収されていない体液は、空孔内に留められた状態で吸収されている。
【0059】
吸収剤Aは、液体を吸収すると、連続骨格が伸長する性質を有する。この連続骨格の伸長は、ほぼ全方位に亘って伸長する。連続骨格の伸長によって、吸収剤Aの外形が大きくなるのに伴い、各空孔の大きさも大きくなる。空孔の大きさが大きくなると、空孔内の容積が大きくなり、空孔内に留めることができる体液の量が増える。つまり、一定量の体液を吸収して大きくなった吸収剤Aは、毛細管現象によって、さらに所定量の体液を吸収することができる。また、毛細管現象によって体液を吸収するため、吸収剤Aは、体液の吸収を素早く行うことができる。なお、吸収剤Aが吸収した体液について、連続骨格が吸収する体液より空孔内に留められた体液の方が多い。
【0060】
このように、吸収剤Aの体液の吸収の大部分は、毛細管現象によって空孔内に体液を留めることによって行われることから、空孔の体積(全細孔容積)の割合である空隙率(吸収剤Aの体積に対する空孔の空隙の体積)が大きいほど、より多くの体液を吸収できる。この空隙率が、85%以上であることが好ましい。
【0061】
吸収剤Aの空隙率を求める。水銀圧入法によって、得られた吸収剤Aの比表面積は400m2/g、細孔容積は15.5ml/gである。この細孔容積15.5mlは、1gの吸収剤Aの中の細孔の容積である。仮に、吸収剤Aの比重を1g/mlとすると、1gの吸収剤Aの中で占める体積は、それぞれ細孔容積が15.5ml、吸収剤Aが1mlとなる。1gの吸収剤Aの全容積(体積)は、15.5+1[ml]となり、そのうちの細孔容積の比率が空隙率となる。この結果、空隙率は、15.5/(15.5+1)×100≒94%となる。
【0062】
また、この高分子吸収剤(吸収剤A)は、パルプ繊維と同等以上の吸収速度性能(初期の吸液の速さ)を有している。吸収剤の吸収速度を評価するための測定方法として、無加圧DW(Demand Wettability)法が一般的によく知られている。この無加圧DW法は、例えば、特開2018―39944号に記載されている。高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量(30秒後液吸収量)は、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、パルプ繊維の当該30秒後吸液量(6.8ml/g)と比べて同等以上となっている。
【0063】
以下、
図9及び
図10を用いて、具体的に説明する。
図9は、無加圧DW法で用いられる測定装置を示した模式図である。
図10については、後述する。なお、前述したとおり無加圧DW法は一般的なものなので、本実施の形態に係る無加圧DW法の説明は、特開2018―39944号の記載に則る。しかしながら、一部で異なる部分があるので、当該部分を明らかにして本願発明に係る無加圧DW法を定義する。
【0064】
無加圧DW法は、25℃、湿度50%の室内で、
図9に示す無加圧DW法測定装置50を用いて行う測定方法である。
図9に示した無加圧DW法測定装置50は、ビュレット部52(目盛容量50ml、長さ86cm、内径1.05cm)、導管(内径7mm)、測定台56からなっている。ビュレット部52は、上部にゴム栓51、下部に空気導入管59(先端内径3mm)とコック57が連結されており、さらに、空気導入管59の上部にはコック58がある。ビュレット部52から測定台56までには、導管が取り付けられている。測定台56の中央部には、生理食塩水供給部として直径3ミリの穴があいており、導管が連結されている。
【0065】
この構成の無加圧DW法測定装置50を使用して、まずビュレット部52のコック57と空気導入管59のコック58を閉め、25℃に調節された食塩濃度0.9重量%の生理食塩水53(NaCl水溶液)をビュレット部52上部から入れ、ゴム栓51でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部52のコック57および空気導入管59のコック58を開ける。次に、測定台56に溢れ出た生理食塩水53を拭き取ってから、測定台56の上面と、測定台56中心部の導管口から出てくる生理食塩水53の水面とが同じ高さになるように測定台56の高さの調整を行う。生理食塩水供給部から生理食塩水53を拭き取りながら、ビュレット部52内の生理食塩水53の水面をビュレット部52目盛の一番上(0mlライン)に調整する。
【0066】
引き続き、ビュレット部52のコック57と空気導入管59のコック58を閉め、測定台56上に、生理食塩水供給部が中心になるように木材パルプ100%のティッシュ55(目付15±1gsm、不織布厚み計で測定圧3g/cm2時の厚みが0.1±0.02mm)をのせ、さらにこのティッシュ55の上に、測定台56の生理食塩水供給部を中心に試験対象物(高分子吸収剤)を置く。試験対象物は、円筒形状の容器54に入れられ、その周りが当該容器54により拘束される。その後、ビュレット部52のコック57および空気導入管59のコック58を開ける。
【0067】
試験対象物が吸液し始め、空気導入管59から導入された一つ目の泡がビュレット部52内の生理食塩水53の水面に到達した時点(ビュレット部52内の生理食塩水53の水面が下がった時点)を測定開始時間とし、継続的に、ビュレット部52内の生理食塩水53の減少量(試験対象物が吸液した生理食塩水量)M(ml)を読み取る。吸液開始から所定時間経過後(本実施の形態では、30秒経過後)における試験対象物の吸収量を、DW法による吸収量(ml/g)=M÷試験対象物の重量(g)により求める。
【0068】
なお、特開2018―39944号にも示されているとおり、無加圧DW法においては、通常、測定台56の上にメッシュが置かれ、当該メッシュの上に試験対象物が置かれる。これに対し、本実施形態においては、実際の吸収性物品(おむつ1)に近い状況で試験を実施するために、メッシュに代えて上述したティッシュ55を置くこととしている。すなわち、本願発明に係る無加圧DW法は、測定台56と試験対象物(高分子吸収剤)との間に、目付15±1gsm、かつ、不織布厚み計で測定圧3g/cm2時の厚みが0.1±0.02mmで、木材パルプ100%のティッシュ55を挟んで実施される試験方法である。
【0069】
図10は、無加圧DW法における30秒後吸液量を測定した測定結果を示した図である。高分子吸収剤として4つの高分子吸収剤と、比較例としてパルプ繊維と、参考例としてInfinity粒子体を用意して、各々を試験対象物として、無加圧DW法における30秒後吸液量を測定した。ここで、Infinity粒子体とは、P&G社製の吸収剤であり、高分子吸収剤と似た構造(発泡構造)を備えている。しかしながら、高分子吸収剤とは異なり、吸液して膨張する機能は有していない。
【0070】
高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量は、7.8ml/g以上21.3ml/g以下であり、パルプ繊維の当該30秒後吸液量(6.8ml/g)と比べて同等以上、Infinity粒子体の当該30秒後吸液量(2.3ml/g)と比べてかなり多く(良好と)なっている。
【0071】
そして、前述したように、当該高分子吸収剤が吸収性物品(吸収体11)に適用されるため、本実施の形態に係る吸収性物品(おむつ1)は以下のように特定される。すなわち、吸収性物品(おむつ1)は、連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤と、前記高分子吸収剤よりも肌側に設けられたティッシュと、を有し、高分子吸収剤の、無加圧DW法における30秒後吸液量が、7.8ml/g以上21.3ml/g以下である。そのため、以下に説明するように、適切な吸収速度性能を有し薄型化された吸収体11を備える吸収性物品を実現することが可能となる。
【0072】
従来から、吸収量が優れたSAPと吸収速度が優れたパルプ繊維とを組み合わせた吸収体を用いた吸収性物品が知られている。
【0073】
しかしながら、SAPとパルプ繊維とを組み合わせると、パルプ繊維のパルプ量の多さに起因して、吸収体が嵩高になってしまう課題(薄型化されない課題)がある。そして、かかる場合には、流通や保管、携帯性、装着快適性(装着不快感、通気性の悪さ)等の観点から好ましくない。
【0074】
一方で、パルプ繊維を排除してSAPのみとすると、パルプ繊維の優れた吸収速度性能が発揮されず、吸収速度が遅い吸収体となってしまう。また、吸収速度の遅さを補うために、吸収面を大きくすると、漏れ、装着不快感、肌負荷の増大等の別の問題が生じ得る。
【0075】
これに対し、本実施の形態に係る吸収性物品(おむつ1)においては、パルプ繊維に代えて連続骨格及び連続空孔を備えた高分子吸収剤を用いているので、かかる構造により吸収体11(延いては、吸収性物品)を薄型化(特に、吸液前(膨張前)の吸収体11の薄型化)することが可能となる。さらに、パルプ繊維に代えて、無加圧DW法における30秒後吸液量が7.8ml/g以上21.3ml/g以下である高分子吸収剤を用いているので、パルプ繊維を用いたときと同等以上の吸収速度性能を得る(ティッシュから素早く体液を引き込む)ことが可能となる。
【0076】
したがって、本実施の形態によれば、適切な吸収速度性能を有し薄型化された吸収体11を備える吸収性物品を実現することが可能となる。
【0077】
また、上述したとおり、本実施の形態に係る高分子吸収剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む2個以上のモノマーの架橋重合体の加水分解物であり、官能基には少なくとも1個以上の親水基を有する。
【0078】
そのため、水分との親和性が向上し、吸収速度性能をより一層向上させることが可能となる。
【0079】
さらに、本実施の形態に係る高分子吸収剤は、(メタ)アクリル酸エステルと、一分子中に2個以上のビニル基を含有する化合物の架橋重合体の加水分解物であり、且つ、少なくとも1個以上の-COONa基を含有する。
【0080】
そのため、連続骨格及び連続空孔を形成しやすくなり、薄型化された吸収体11(吸収性物品)を容易に実現することが可能となる。
【0081】
前述したとおり、高分子吸収剤の連続骨格は、毛細管現象により体液が連続空孔に入り込むと、当該体液を浸透圧によって一部吸収して伸長する。そして、かかる伸長により空孔を大きくして、さらに体液を取り込む。すなわち、高分子吸収剤は、膨張(体積増加)しつつ、体液を吸収する(換言すれば、膨張して保液量を上げることができる)。そのため、体液吸収前(膨張前)の高分子吸収剤(吸収体11)を薄くすることができる。かかる事項を考察するために、高分子吸収剤の飽和吸液時体積の、吸液前体積に対する体積増加率を測定する以下の試験(以下、体積増加率測定試験と呼ぶ)を行った。
【0082】
以下、
図11及び
図12を用いて、具体的に説明する。
図11は、体積増加率測定試験で用いられる測定装置を示した模式図である。
図12については、後述する。
【0083】
図11に示した体積増加率測定装置60は、試験対象物収容容器61とシャーレ62とからなっている。試験対象物収容容器61は、上端部と下端部に開口部を有するアクリル製の筒状部材の下端部に、ナイロンメッシュ(不図示)を貼付したものである。
【0084】
筒状部材については、内径26mm、長さ80mm、外径38mm、重さ57gである。また、ナイロンメッシュについては、NBCメッシュテック製のN-N0255HD 115を用いている。シャーレ62は、内径97mm、重さ58gの容器である。
【0085】
そして、試験対象物収容容器61に上端部(開口部)から試験対象物63を入れ、入れられた試験対象物63の高さを測定する。そして、計算式(体積=底面積(3.14×(内径(26mm)/2)2)×高さ)により、試験対象物63の体積を求め、これを吸液前体積とする。なお、試験対象物63の上端部が若干湾曲している場合もあり得るが、この場合には、最頂部の高さを測定することとする。また、後述する離水倍率測定試験のために、試験対象物63が入れられた試験対象物収容容器61の重量を測っておく。
【0086】
次に、シャーレ62に、食塩濃度0.9重量%の生理食塩水(NaCl水溶液)を60cc入れ、当該シャーレ62内に(吸液前体積測定済みの)試験対象物63の入った試験対象物収容容器61を置く(
図11参照)。すると、試験対象物63がナイロンメッシュを介して生理食塩水を吸収し始めて、試験対象物63の高さ(体積)が変化していく。この高さ(体積)変化を継続的に目視し、当該高さが安定したところ(つまり、飽和まで吸液したところ)で、試験対象物63の高さを測定する。そして、前記計算式により、試験対象物63の体積を求め、これを飽和吸液時体積とする。なお、本実施の形態においては、吸液し始めてから2分半で試験対象物63の高さが安定することが確認できているため、当該2分半後に当該高さを測定することとしている。また、試験対象物63の上端部が若干湾曲している場合に最頂部の高さを測定する点については、吸液前の測定と同様である。また、後述する離水倍率測定試験のために、飽和まで吸液した試験対象物63が入れられた試験対象物収容容器61の重量を測っておく。
【0087】
図12は、体積増加率測定試験の試験結果を示した図である。高分子吸収剤として3つの高分子吸収剤と、比較例としてパルプ繊維と、参考例としてInfinity粒子体を用意して、各々を試験対象物63として前記吸液前体積及び飽和吸液時体積を測定した(各々の試験対象物63につき、3回ずつ試験を行った)。そして、飽和吸液時体積の吸液前体積に対する体積増加率(後述するように、比較例及び参考例においては、体積が減少してしまっているので、体積減少率となる。双方を合わせて体積変化率と呼ぶ)を求めた。すなわち、当該体積変化率は、飽和吸液時体積÷吸液前体積で求められ、例えば、
図12のパルプ繊維1回目の場合には、13.3÷15.9=0.83となるので、83%となる。
【0088】
高分子吸収剤の体積変化率は233%以上567%以下であり、パルプ繊維とInfinity粒子体の体積変化率は、それぞれ83%以上85%以下、60%以上66%以下である。すなわち、パルプ繊維とInfinity粒子体が吸液により体積減少(縮小)しているのに対し、高分子吸収剤は体積増加(膨張)している。
【0089】
このように、本実施の形態における吸収性物品(おむつ1)においては、飽和吸液時体積の、吸液前体積に対する体積増加率が、233%以上567%以下である高分子吸収剤を用いている。すなわち、顕著に膨張(体積増加)しつつ体液を吸収する高分子吸収剤が用いられているため、体液吸収前(膨張前)の高分子吸収剤(吸収体11)を薄くすることができ、より薄型化された吸収性物品(おむつ1)を実現することが可能となる。
【0090】
前述したとおり、高分子吸収剤(吸収剤A)は、膨張(体積増加)しつつ体液を吸収する(膨張して保液量を上げる)が、当該高分子吸収剤に荷重(圧力)が掛かった際(例えば、おむつ1を着用している着用者が動いた際に着用者による圧が掛かった場合)には、縮小(体積減少)しつつ体液を外部へ放出(以下、便宜上、離水と呼ぶ)する。例えば、高分子吸収剤と共に吸収体11に用いられ得るSAPは、一旦体液を吸収すると圧力が掛かっても殆ど離水することがないが、高分子吸収剤は、縮小(体積減少)しつつ離水しやすい性質を有している。かかる事項を考察するために、高分子吸収剤に加重を加えたときの体積減少率及び離水倍率を測定する以下の試験(以下、体積減少率及び離水倍率測定試験と呼ぶ)を、前述した体積増加率測定試験に引き続いて行った。
【0091】
以下、
図13乃至
図15を用いて、具体的に説明する。
図13は、体積減少率及び離水倍率測定試験で用いられる測定装置(以下、体積減少率等測定装置70と呼ぶ)を示した模式図である。
図14及び
図15については、後述する。
【0092】
図13に示した体積減少率等測定装置70は、上述した試験対象物収容容器61に加えて、加圧部材71及び下敷き用濾紙74を備えている。
【0093】
加圧部材71は、試験対象物63(高分子吸収剤)に接触して押圧する押圧部材72と押圧部材72の上に載せる加重用重り73とを備えている。押圧部材72は、試験対象物収容容器61と同様、上端部と下端部に開口部を有するアクリル製の筒状部材の下端部に、ナイロンメッシュを貼付したものである。筒状部材については、内径19.5mm、長さ120mm、外径25.5mm、重さ28gである。また、ナイロンメッシュについては、試験対象物収容容器61と同様、NBCメッシュテック製のN-N0255HD 115を用いている。
【0094】
加重用重り73は分銅の底部にアクリル製の円柱部材(直径25mm、長さ8mm)及び加重用濾紙を貼付したものであり、その重さは124gである。
【0095】
そして、押圧部材72の上に加重用重り73を載せることにより、計152g(30g/cm2)の加圧部材71が形成されるようになっている。なお、30g/cm2という数値は、おむつ1を着用している着用者が動いた際に掛かる圧を想定している。
【0096】
下敷き用濾紙74は、最下部に位置し、試験対象物収容容器61が置かれるものである。この下敷き用濾紙74については、ADVANTEC社製FILTERPAPERを用いている。
【0097】
体積減少率及び離水倍率測定試験は、前述した体積増加率測定試験に引き続いて行われる。飽和まで吸液した試験対象物63が入れられた試験対象物収容容器61をシャーレ62から取り出し、当該試験対象物収容容器61を下敷き用濾紙74の上に載せる。なお、試験対象物収容容器61を下敷き用濾紙74の上に載せる前に、当該下敷き用濾紙74の重量を測っておく。
【0098】
そして、加圧部材71を試験対象物63の上に載せる。すなわち、押圧部材72をナイロンメッシュが下側になるように、試験対象物収容容器61内に挿入する。そうすると、ナイロンメッシュが試験対象物63に接触した状態で押圧部材72が試験対象物63上に位置する。そして、当該押圧部材72の上に加重用重り73を載せると、最終的に、試験対象物63には、押圧部材72と加重用重り73の加重が掛かることとなる。
【0099】
すると、試験対象物63に吸収されていた生理食塩水が、試験対象物収容容器61のナイロンメッシュを介して下敷き用濾紙74へ離水し始めて、試験対象物63の高さ(体積)が変化していく(減少していく)。そして、荷重をかけてから3分後に当該高さを測定する。当該高さから、前記計算式により、試験対象物63の体積を求め、これを(飽和吸液した試験対象物63に30g/cm2荷重を3分間加えた後の)荷重後体積とする。なお、試験対象物63の上端部が若干湾曲している場合に最頂部の高さを測定する点については、吸液前の測定等と同様である。
【0100】
また、荷重をかけてから3分後に当該高さと共に下敷き用濾紙74の重量も測定する。そして、測定された重量から加重をかける前の下敷き用濾紙74の重量を引き算することで得られた値を、(飽和吸液した試験対象物63に30g/cm2荷重を3分間加えた後の)離水量とする。
【0101】
図14は、体積減少率測定試験の試験結果を示した図である。体積増加率測定試験と同じ3つの高分子吸収剤を試験対象物63として前記荷重後体積を測定した(各々の試験対象物63につき、3回ずつ試験を行った)。そして、荷重後体積の飽和吸液時体積(体積増加率試験で取得済み、
図12参照)に対する体積減少率を求めた。
図14に示されているとおり、高分子吸収剤の体積減少率は34%以上48%以下であり、高分子吸収剤の体積が半分以下となっている(顕著に減少している)。
【0102】
図15は、離水倍率測定試験の試験結果を示した図である。体積減少率測定試験と同様、3つの高分子吸収剤を試験対象物63として、前記離水量を測定した(各々の試験対象物63につき、3回ずつ試験を行った)。そして、離水量の吸収量に対する比である離水倍率を求めた。吸収量については、前述したとおり、体積増加率測定試験の際に、試験対象物63が入れられた試験対象物収容容器61の重量を吸液前後で測っておいたので、双方の差を取ることによって取得した。
図15に示されているとおり、離水倍率は65%以上72%以下であり、半分以上の割合で離水している(顕著に離水している。なお、SAPの離水倍率は高くても40%程度と言われている)。
【0103】
このように、本実施の形態に係る吸収性物品(おむつ1)においては、飽和吸液した高分子吸収剤に30g/cm2荷重を3分間加えた後の荷重後体積の、飽和吸液時体積に対する体積減少率が34%以上48%以下である高分子吸収剤を用いている。また、飽和吸液した高分子吸収剤に30g/cm2荷重を3分間加えた後の離水倍率が65%以上72%以下である高分子吸収剤を用いている。すなわち、荷重が掛かった際に顕著に離水しつつ顕著に体積が減少する高分子吸収剤が用いられているため、高分子吸収剤(吸収体11)が一旦吸液して膨張したとしても荷重により直ぐに離水して薄い状態(コンパクトな状態)へ戻ることが可能となる(薄い状態となったら、再度吸液可能となる)。
【0104】
また、上述したとおり、本実施の形態に係る吸収性物品(おむつ1)は、高分子吸収剤と隣接可能なSAPを有している。すなわち、吸収体11は高分子吸収剤とSAPとを備えており、SAPは高分子吸収剤よりも保液能力(保液性)が高く膨張しにくい性質を有するため、高分子吸収剤から離水した体液を、吸収体11の薄型化(コンパクト性)を殆ど阻害することなく、他剤(SAP)へ適切に吸収させる(渡す)ことが可能となる。
【0105】
===吸収剤Aの製造方法について===
吸収剤Aは、
図3に示すように、架橋重合工程と加水分解工程を経ることで得ることができる。以下、吸収剤Aの製造方法について説明する。
【0106】
まず、架橋重合用の油溶性モノマーと架橋性モノマーと、界面活性剤と、水と、必要に応じて重合開始剤とを混合して、油中水滴型エマルションを得る。油中水滴型エマルションとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルションを言う。
【0107】
吸収剤Aにおいては、
図3の上図に示すように、油溶性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルとしてメタクリル酸ブチルを用い、架橋性モノマーとして、ジビニルベンゼンを用い、界面活性剤としてソルビタンモノオレエートを用い、重合開始剤としてイソブチロニトリルを用いて架橋重合させたモノリスAを形成する。
【0108】
吸収剤Aにおいては、
図3の上図に示すように、まず、油溶性モノマーとしてメタクリル酸t-ブチル9.2g、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン0.28g、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0g及び重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させる。
【0109】
次に、メタクリル酸t-ブチル/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得る。
【0110】
その後、このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させる。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリスAを得る。このモノリスAの内部構造をSEMにより観察した。
図16Aは、吸収剤Aの破断面のSEM写真である。
図16Bは、
図16Aと同一部分のNa分布のマッピング図である。モノリスAは、連続気泡構造を有しており、連続骨格の厚みは5.4μmであった。水銀圧入法により測定した平均直径は36.2μm、全細孔容積は15.5mL/gであった。
【0111】
なお、全モノマーに対するジビニルベンゼンの含有量は、0.3~10モル%であることが好ましく、0.3~5モル%であることがより好ましい。また、メタアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンの合計に対するジビニルベンゼンの割合が0.1~10モル%であることが好ましく、0.3~8モル%であることがより好ましい。吸収剤Aにおいては、メタアクリル酸ブチルとジビニルベンゼンの合計に対するメタアクリル酸ブチルの割合が、97.0モル%、ジビニルベンゼンの割合が3.0モル%である。
【0112】
界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルション粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動する。油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2~70%の範囲とすることが好ましい。
【0113】
また、モノリスAの気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール、ステアリン酸等のカルボン酸、オクタン、ドデカン、トルエン等の炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルを系内に共存させてもよい。
【0114】
油中水滴型エマルションを形成させる際の混合方法としては、特に制限はない。各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法等の混合方法を採用することができる。エマルションを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、目的のエマルション粒径を得るために、通常のミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーや、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置等から適切な装置を選択することができる。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルション粒径を得るために、攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。これらの混合装置のうち、遊星式攪拌装置はW/Oエマルション中の水滴を均一に生成させることができ、その平均径を幅広い範囲で任意に設定することができる。
【0115】
油中水滴型エマルションを重合させる重合条件は、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30~100℃で1~48時間、加熱重合させればよい。重合開始剤として過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0~30℃で1~48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノール等の溶剤でソックスレー抽出し、未反応モノマーと残留界面活性剤を除去して
図3の中図に示すモノリスAを得る。
【0116】
続いて、モノリスA(架橋重合体)を加水分解して、吸収剤Aを得る。モノリスAを、臭化亜鉛を入れたジクロロエタンに浸漬させて40℃、24h撹拌した後、メタノール、4%塩酸、4%水酸化ナトリウム水溶液、水の順で接触させて、加水分解を行い、乾燥させた後、ブロック状の吸収剤Aを所定の大きさに粉砕して粒子状の吸収剤Aを得る。
【0117】
モノリスAの加水分解の方法については特に制限はなく、種々の方法で行うことができる。例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフランやイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒、酢酸やプロピオン酸などのカルボン酸系溶媒、あるいは水を溶媒とし、水酸化ナトリウムなどの強塩基と接触させる方法や、塩酸などのハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのブレンステッド酸、あるいは臭化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化チタン(IV)、塩化セリウム/ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウムなどのルイス酸と接触させる方法等が挙げられる。
【0118】
吸収剤Aの連続骨格を形成する有機ポリマーの重合原料のうち、(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸のC1~C10のアルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸のC4アルキルエステルが特に好ましい。(メタ)アクリル酸のC4アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸t-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸n-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸iso-ブチルエステルが挙げられる。
【0119】
架橋重合に用いるモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼンのみであってもよいし、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼンに加えて、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外の他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、イソブテン、ブタジエン、イソブレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、架橋重合に用いる全モノマー中、(メタ)アクリル酸エステル及びジビニルベンゼン以外のモノマーの割合は、0~80モル%が好ましく、0~50モル%がより好ましい。
【0120】
界面活性剤は、ソルビタンモノオレエートに限られない。架橋重合用モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルションを形成できるものであればよい。例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン基ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン基ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン基ソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤、オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0121】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性でも油溶性でもよく、例えば、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0122】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0123】
上記実施の形態においては、高分子吸収剤よりも肌側に設けられた肌側シート部材としてティッシュを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、親水性の不織布であっても構わない。
【0124】
また、上記実施の形態においては、当該肌側シート部材が、高分子吸収剤(吸収剤A)とSAPとを包んで高分子吸収剤(吸収剤A)及びSAPと共に吸収体11を構成するコアラップであることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、高分子吸収剤(吸収剤A)とSAPとを包むコアラップは存在しない場合(このような場合には、トップシート13が当該肌側シート部材に相当)であってもよい。
【0125】
すなわち、肌側シート部材は、液体を一旦受け取って高分子吸収剤(吸収剤A)へ受け渡す機能を有するものであればよい。
【0126】
また、上記実施の形態においては、吸収体11が高分子吸収剤(吸収剤A)とSAPとを備えるものとしたが、これに限られない。吸収体11が高分子吸収剤(吸収剤A)のみから構成されるものであってもよい。また、高分子吸収剤(吸収剤A)と一緒に用いる物質は、SAPのみに限らない。例えば、高分子吸収剤(吸収剤A)とパルプ繊維とを備えた吸収体11や、高分子吸収剤(吸収剤A)とSAPとパルプ繊維とを備えた吸収体11であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 おむつ(パンツ型使い捨ておむつ、吸収性物品)、
10 吸収性本体、10ea 端部、10eb 端部、
11 吸収体、11c 吸収性コア、
13 トップシート、15 バックシート、17 弾性部材、18 弾性部材、
30 腹側部材、30a 側部、
31 肌側シート、32 非肌側シート、35 糸ゴム、
40 背側部材、40a 側部、
41 肌側シート、42 非肌側シート、45 糸ゴム、
50 無加圧DW法測定装置、51 ゴム栓、52 ビュレット部、
53 生理食塩水、54 容器、55 ティッシュ、56 測定台、
57 コック、58 コック、59 空気導入管、
60 体積増加率測定装置、61 試験対象物収容容器、
62 シャーレ、63 試験対象物、
70 体積減少率等測定装置、71 加圧部材、72 押圧部材、
73 加重用重り、74 下敷き用濾紙、
SS 溶着部、LH 脚回り開口部、BH 胴回り開口部、