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特許7467150エーテル化合物およびその誘導体、並びに潤滑油基油
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】エーテル化合物およびその誘導体、並びに潤滑油基油
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/13 20060101AFI20240408BHJP
   C10M 105/18 20060101ALI20240408BHJP
   C10M 105/34 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 69/533 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20240408BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20240408BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C07C43/13 C CSP
C10M105/18
C10M105/34
C07C69/533
C07C69/24
C07C67/08
C10N20:02
C10N30:02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020020222
(22)【出願日】2020-02-08
(65)【公開番号】P2021123575
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591228340
【氏名又は名称】第三化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(72)【発明者】
【氏名】浦田 泰男
(72)【発明者】
【氏名】井坂 哲也
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-107066(JP,A)
【文献】国際公開第2019/055741(WO,A1)
【文献】特開2019-194163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10M
C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される、エーテル化合物またはその誘導体。
【化1】
・・・(I)
(式(I)中、nは1~4であり、Rは、水素または式(II)で表されるアシルであり、Rは、炭素数1~18の炭化水素基である。)
【化2】
・・・(II)
【請求項2】
前記式(I)中、nは、1~4であり、Rは、水素または前記式(II)で表されるアシルであり、Rは、炭素数1~18の直鎖状のアルキル、炭素数3~18の分岐状のアルキル、炭素数4~18の直鎖状のアルケニル、フェニル、シクロへキシルまたはシクロヘキセニルである、請求項1に記載のエーテル化合物またはその誘導体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエーテル化合物またはその誘導体を含有する、潤滑油基油。
【請求項4】
式(I-1)で表されるエーテル化合物。
【化3】
・・・(I-1)
(式(I-1)中、nは、1~4である。)
【請求項5】
請求項4に記載の式(I-1)で表されるエーテル化合物とカルボン酸とをエステル化反応させる工程を含む、エーテル誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油基油に適したエーテル化合物に関し、より詳細には、10-エチル-7-テトラデカノールから合成されるエーテル化合物およびその誘導体並びにこれを配合した潤滑油基油に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は、低温から高温に至るまで幅広い条件で使用されている。近年、産業用用途で使用される潤滑油においては、効率化のために種々の改良が検討されている。たとえば、粘性摩擦によるエネルギー損失を低減するために、摩擦調整剤の利用や潤滑油の低粘度化が行われている。さらに、低温時での対応が求められており、低温時において粘度が小さく、消費電力の省力化に寄与できるものが求められている。このようなニーズに対応するため、高い流動性を備えかつ粘度指数の高い潤滑油基油が提案されている。
【0003】
たとえば、エステルの低温流動性を改善するための化合物として、特許文献1~5には、原料のアルコールに分岐構造を使用したカルボン酸エステルが開示されている。
【0004】
また、特許文献6~7には、アルキル基に分岐構造を有するエーテル化合物が開示されている。
【0005】
特許文献8~9には、特定構造を有するエーテル化合物のエステル誘導体が開示されている。
【0006】
また、特許文献10および11には、二塩基性酸ジエステルが開示されている。
【0007】
また、特許文献12には、ポリα-オレフィンが開示されている。
【0008】
本発明者らは、10-エチル-7-テトラデカノールから誘導されるカルボン酸エステル化合物を新規に提供し、低粘度でありながら低温時においても高い流動性と高い粘度指数を有する潤滑油基油を見出し、先に特許出願した(特許文献5)。本発明は、上記の10-エチル-7-テトラデカノールから合成される新規なエーテル化合物およびその誘導体を提供するものである。また、本発明は、10-エチル-7-テトラデカノールから合成される新規なエーテル化合物およびその誘導体を配合した潤滑油基油を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-146374号公報
【文献】国際公開2017/097645号
【文献】国際公開2017/116900号
【文献】特開2009-185191号公報
【文献】特開2019-194163号公報
【文献】国際公開2004/058928号
【文献】特開2000-319678号公報
【文献】特開2008-179773号公報
【文献】特開2018-80346号公報
【文献】特開2003-34795号公報
【文献】特開2005-154726号公報
【文献】特開2006-176760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
潤滑油基油において、粘度や粘度指数が好適なだけでなく、良好な流動点を有する基油に対する需要が存在する。
【0011】
本発明は、低粘度であり、低温時においても流動性に優れており、かつ高粘度指数のエーテル化合物などの種々の粘度指数を有するエーテル化合物およびその誘導体とこれらの化合物を配合した潤滑油基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、10-エチル-7-テトラデカノールから誘導されたエーテル化合物およびエーテル化合物をエステル化した誘導体が、低粘度でありながら、低温時においても高い流動性と高い粘度指数を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、下記式(I)で表されるエーテル化合物またはその誘導体を提供する。
【0014】
【化1】
・・・(I)
(式(I)中、nは1~20であり、Rは、水素または式(II)で表されるアシルであり、Rは、炭素数1~35の炭化水素基である。)
【0015】
【化2】
・・・(II)
【0016】
また、本発明は、式(I)で表されるエーテル化合物またはその誘導体を提供する。
【0017】
【化3】
・・・(I)
(式(I)中、nは、1~20であり、Rは、水素または、式(II)で表されるアシルであり、Rは、炭素数1~35の直鎖状のアルキル、炭素数3~35の分岐状のアルキル、炭素数4~24の直鎖状のアルケニル、フェニル、シクロへキシルまたはシクロヘキセニルである。)
【0018】
【化4】
・・・(II)
【0019】
また、本発明は、上記式(I)のエーテル化合物またはその誘導体を含む潤滑油基油を提供する。
【0020】
また、本発明は、式(I-1)で表されるエーテル化合物を提供する。
【0021】
【化5】
・・・(I-1)
(式(I-1)中、nは、1~20である。)
【0022】
また、本発明は、上記式(I-1)で表されるエーテル化合物とカルボン酸とをエステル化反応させる工程を含む、エーテル誘導体の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエーテル化合物およびその誘導体は、低粘度であり、低温時においても流動性に優れ、かつ高粘度指数であるため、潤滑油基油として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】参考例2における2&#8722;(2-((テトラヒドロ&#8722;2H&#8722;ピラン&#8722;2&#8722;イル)オキシ)エトキシ)エチル4&#8722;メチルベンゼンスルホネート(3)のH-NMRスペクトルである。
図2】参考例2における2&#8722;(2-((テトラヒドロ&#8722;2H&#8722;ピラン&#8722;2&#8722;イル)オキシ)エトキシ)エチル4&#8722;メチルベンゼンスルホネートの合成(3)の13C-NMRスペクトルである。
図3】実施例1における2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オール(4)のH-NMRスペクトルである。
図4】実施例1における2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オール(4)の13C-NMRスペクトルである。
図5】実施例2におけるドデカン酸2-(2-((10‐エチルテトラデカン‐7‐イル)オキシ)エトキシ)エチル(5)のH-NMRスペクトルである。
図6】実施例2におけるドデカン酸2-(2-((10‐エチルテトラデカン‐7‐イル)オキシ)エトキシ)エチル(5)の13C-NMRスペクトルである。
図7】実施例3における2-エチルヘキサン酸2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エチル(6)のH-NMRスペクトルである。
図8】実施例3における2-エチルヘキサン酸2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エチル(6)の13C-NMRスペクトルである。
図9】実施例4におけるオレイン酸2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エチル(7)のH-NMRスペクトルである。
図10】実施例4におけるオレイン酸2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エチル(7)の13C-NMRスペクトルである。
図11】実施例5における16-エチル-13-ヘキシル-3,6,9,12-テトラオキサイコサン-1-オール(8)のH-NMRスペクトルである。
図12】実施例5における16-エチル-13-ヘキシル-3,6,9,12-テトラオキサイコサン-1-オール(8)の13C-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のエーテル化合物とその誘導体は、下記式(I)で表される。
【0026】
【化6】
・・・(I)
【0027】
上記式(I)中、nは、1~20であり、Rは、水素または式(II)で表されるアシルであり、Rは、炭素数1~35の炭化水素基である。
【化7】
・・・(II)
【0028】
における炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基であることができる。Rにおける炭化水素基の炭素数は、1~35、好ましくは1~24、より好ましくは1~18である。
【0029】
における炭化水素基は、たとえば直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルケニルであることができる。Rにおいて、直鎖状のアルキルの炭素数は1~35であり、好ましくは1~24であり、より好ましくは1~18である。また、Rにおける、分岐状のアルキルの炭素数は3~35であり、好ましくは3~24であり、より好ましくは3~18である。Rにおける、アルケニルの炭素数は、4~24であり、好ましくは4~18である。
【0030】
また、Rにおける炭化水素基としては、フェニル、シクロヘキシルおよびシクロヘキセニルが挙げられ、シクロヘキセニルの二重結合の位置は任意である。
【0031】
本発明において、アルキルには、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、エイコシル、ヘンイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンチルなどが挙げられる。アルキルは、分岐状であってもよく、分岐の数および位置については、特に限定されない。分岐状のアルキルとしては、t-ブチル、2-エチルヘキシル、2-オクチルが挙げられる。
【0032】
本発明において、アルケニルには、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘンイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル、トリアコンテニルなどが挙げられる。アルケニルおよびその他の不飽和炭化水素基は、分岐状であってもよく、分岐の数および位置は、特に限定されない。また、アルケニルおよびその他の不飽和炭化水素基は、不飽和結合の位置ならびにトランスおよびシス等の異性体については、特に限定されない。
【0033】
本発明のエーテル化合物は、好ましくは下記式(I-1)で表される化合物である。
【0034】
【化8】
・・・(I-1)
(式(I-1)中、nは、1~20である。)
【0035】
本発明のエーテル誘導体は、Rが水素であるエーテル化合物(I)においてRがアシルに置き換えられた誘導体である。したがって、本発明のエーテル誘導体は、下記式(I)で表される。
【0036】
【化9】
・・・(I)
(式(I)中、nは、1~20であり、Rは、式(II)で表されるアシルであり、Rは、炭素数1~35の炭化水素基である。)
【化10】
・・・(II)
【0037】
本発明のエーテル化合物とその誘導体(I)は、上述した構成であることにより、低粘度であるとともに、流動点が低く(約-50℃以下)、低温での流動性が高いという性質を有する。また、本発明のエーテル化合物(I)およびその誘導体は、十分に高い粘度指数を有する。したがって、本発明のエーテル化合物とその誘導体は、潤滑油基油として有用である。
【0038】
また、本発明のエーテル化合物とその誘導体であれば、低い流動点を維持しつつ、Rの炭化水素基の炭素数および形状(直鎖状および分岐状、飽和および不飽和など)を適宜変更することにより、動粘度および粘度指数を所望の範囲に調整することが可能である。
【0039】
本発明のエーテル化合物は、たとえば10-エチル-7-テトラデカノールと下記式(III)の化合物とをエーテル化反応させ、続いて保護基であるTHPを除去することにより製造することができる。
【0040】
【化11】
・・・(III)
(式(III)中、nは、1~20であり、Tsは、パラトルエンスルホニルを表し、THPは、テトラヒドピラニルを表す。)
【0041】
上記式(III)で表される化合物は、たとえばn=2のときは、2&#8722;(2-((テトラヒドロ&#8722;2H&#8722;ピラン&#8722;2&#8722;イル)オキシ)エトキシ)エチル4&#8722;メチルベンゼンスルホネートであることができる。
【0042】
また、式(I-1)で表される本発明のエーテル化合物は、10-エチル-7-テトラデカノールと、たとえば三フッ化ホウ素のような酸触媒とを用いてエチレンオキサイド付加することによって低モル付加体((I-1)においてn=1~3)を合成することができる。
【0043】
【化12】
【0044】
また、エチレンオキサイドの高モル付加体は、低モル付加体((I―1)のn=1~3)を用いて、通常の第1級アルコールのエチレンオキサイド付加反応に利用する塩基触媒、たとえばNaOHなどを用いて合成することができる。
【0045】
【化13】
【0046】
本発明のエーテル誘導体は、Rが水素であるエーテル化合物(I)とカルボン酸とをエステル化反応させることにより製造することができる。
【0047】
上述したエーテル化合物(I-1)のエステル化反応は、通常のエステル化反応に用いることができる任意の方法を用いて行うことができる。また、以下に説明する本発明の製造方法において用いる方法を好適に用いることができる。
【0048】
本発明はまた、上述したエーテル誘導体の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、10-エチル-7-テトラデカノールから誘導されるエーテル化合物とカルボン酸とをエステル化反応させる工程を含む。すなわち、式(I-1)で表されるエーテル化合物とカルボン酸とをエステル化反応させる工程を含む。
【化14】
・・・(I-1)
(式(I-1)中、nは、1~20である。)
【0049】
本発明におけるエステル化反応させる工程では、カルボン酸と10-エチル-7-テトラデカノールから誘導されるエーテル化合物(I-1)とを、従来公知の任意の方法により脱水縮合させることができる。たとえば、エステル化反応させる工程は、反応系において共沸剤を用い、不活性ガスをフィードし生じた水を除きながらエステル化反応させる方法を用いてもよい。また、通常のエステル化反応と同様に、無触媒法および触媒を用いる方法などを用いることができる。
【0050】
本発明におけるエステル化反応させる工程では、反応蒸留装置およびDean-Starkトラップ管を装着した反応器などを用いることができる。
【0051】
本発明におけるエステル化反応させる工程では、反応系外へ水を除去するため、共沸剤として、エステル化反応において不活性でありかつ水と共沸する有機溶媒等を用いることができる。このような共沸剤としては、たとえばトルエン、エチルベンゼン、ベンゼンおよびシクロヘキサン等を用いることができる。また、エステル化反応において水を除去する方法として、不活性ガスを反応器にフィードして生成する水を除去する方法を利用することも可能である。不活性ガスとして、たとえば窒素ガスなどを用いることができる。
【0052】
本発明におけるエステル化反応させる工程において用いられる触媒としては、たとえば、p-トルエンスルホン酸、スルホン基を含有するイオン交換樹脂、硫酸、リン酸等の鉱酸(無機酸)、チタニウムテトライソプロキシド、チタニウムテトラブトキシド、2-エチルヘキサンスズ、酸化スズ、塩化スズおよび3-フッ化ホウ素エーテル錯体などが挙げられる。反応性の高いカルボン酸を用いる場合には、特に触媒を使用することなしに反応を実施できる。
【0053】
10-エチル-7-テトラデカノールは、2-エチルヘキサノールと2-オクタノールとのゲルベ反応により得ることができる。具体的には、10-エチル-7-テトラデカノールは、特許第6518815号に記載されているように、2-エチルヘキサノールと2-オクタノールとをアルカリ金属水酸化物および脱水素触媒の存在下で加熱縮合することにより製造することができる。
【0054】
2-エチルヘキサノールは、プロピレンのオキソ反応で得られるn-ブチルアルデヒドから、アルドール縮合および水添反応を行うことにより、量産することが可能である。2-オクタノールは、ひまし油中のリシノール酸を分解することにより得ることができ、油化学工業から比較的安価に入手が可能である。
【0055】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどを用いることができる。脱水素触媒としては、ゲルベ反応において通常用いられる金属元素、たとえば亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛、ニッケル、クロム、銅、白金、パラジウム、ルテニウムおよびロジウム等を用いることができる。また、脱水素触媒として、上述した金属元素を担体に担持した固定化触媒を用いることができる。担体としては、アルミナおよび活性炭などを用いることができる。
【0056】
加熱縮合反応は、たとえば常圧条件下において180~230℃で実施することができる。180℃以上であれば、反応速度を速くすることができる。また、230℃以下であれば、目的のアルコール以外の高沸点化合物の生成量を少なくすることができる。また、加熱縮合反応は、反応温度を上げ反応速度を速めるため、加圧条件下において実施してもよい。
【0057】
10-エチル-7-テトラデカノールは、通常の単蒸留装置および精留塔を用いて蒸留により精製することができる。さらに、水素化、吸着剤、抽出、洗浄およびカラムクロマトグラフィーなどの処理を行うことにより、純度を高めることができる。
【0058】
式(I)エーテル化合物および誘導体は、以下に概説する一般的な反応に従って製造することができる。式(I)で表される化合物および誘導体を導く合成手順のうちのいくつかを以下に記載する。
【0059】
【化15】
(式(I)中、nは1~20であり、Rは、水素であり、式(III)中、nは、1~20であり、Tsは、パラトルエンスルホニルを表し、THPは、テトラヒドピラニルを表す。)
【0060】
エーテル誘導体(I)は、10-エチル-7-テトラデカノールと、水酸基の一方の末端にパラトルエンスルホニル基および他方の末端にテトラヒドロピラニル基を有する化合物(III)とから製造する。エーテル化合物(I-1)は、両者をエーテル化させ、次いで保護基のテトラヒドロピラニル基を外すことによって得ることができる。滴下ロートおよびジムロート冷却管を装着した四つ口フラスコに、水素化ナトリウムを加え、反応溶媒として、たとえばテトラヒドロフランおよびN,N-ジメチルホルムアミドを加えて、さらに10-エチル-7-テトラデカノールを50℃~80℃で加える。次いで、水素の発生が終了するまで攪拌し、所望の架橋度nの水酸基の一方の末端にパラトルエンスルホニル基および他方の末端にテトラヒドロピラニル基を有する化合物(III)を40℃~60℃でフィードする。滴下終了後、徐々に室温に戻し、たとえば10時間から20時間の間攪拌する。反応液を真空下濃縮して溶媒留去を行い、ヘプタンで希釈して水で洗浄し、次いで真空下200℃で低沸カットを行い、未反応の10-エチル-7-テトラデカノールの除去を行う。得られた濃縮物をメタノール希塩酸での20℃~50℃での1時間から5時間での攪拌処理で、ジヒドロピランの脱保護が実施できる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0061】
エーテル誘導体(I)の合成に使用する原料である水酸基の一方の末端にパラトルエンスルホニル基および他方の末端にテトラヒドロピラニル基を有する化合物(III)は、水酸基の片末端をテトラヒドロピラニル基で保護したアルコールをトリエチルアミン存在下でパラトルエンスルホン酸クロライドと反応させることによって合成することができる。また、化合物(III)において両末端に水酸基を有する化合物としては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングルコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングルコール600などの市販の工業製品があり、容易に入手することができる。モノエチレングリコールは、エチレンオキサイドの加水分解反応により製造され、モノエチレングリコールのエチレンオキサイド付加反応によって様々な重合度をもつエチレングリコール重合体が製造される。
【0062】
【化16】
(式(III)中、nは、1~20であり、Tsは、パラトルエンスルホニルを表し、THPは、テトラヒドピラニルを表す)
【0063】
【化17】
(エーテル化合物(I-1)において、式中、nは、1~20であり、Rは、水素である。エテール誘導体(I)において、式中、nは、1~20であり、Rは、炭素数1~35の炭化水素基である)
【0064】
エーテル誘導体(I)は、10-エチル-7-テトラデカノールから誘導されるエーテル化合物(I-1)と所望のRを有するカルボン酸とをエステル化反応させることにより製造することができる。10-エチル-7-テトラデカノールから誘導されるエーテル化合物(I-1)と所望のRを有するカルボン酸と共沸溶剤、たとえばトルエンとを、温度計、撹拌機、窒素導入管およびジムロート型還流冷却管を装着したDean-Starkトラップ管を装着した4つ口フラスコに加え150~230℃、たとえば170~200℃にて加熱する。このとき、窒素ガスをフィードしながら加熱してもよい。また、加熱の際に、反応触媒、たとえばパラトルエンスルホン酸を添加して加熱してもよい。反応によって生成する水は、Dean-Starkトラップ管より除去する。反応完了まで、たとえば2時間~20時間加熱の後、冷却する。次いで、飽和のNaCO水溶液で洗浄後、水洗を行う。次いで、真空下にて200℃で低沸成分の留去を行ない、所望のエステル化合物を得る。引き続き、残存カルボン酸および触媒残渣の除去を目的としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製や活性炭、活性白土を添加して、吸引ろ過により所望のエステル化合物を得る。
【0065】
本発明のエステル化合物の製造方法において、カルボン酸には、炭素数2~36、たとえば炭素数2~25のカルボン酸を用いることができる。
【0066】
脂肪族カルボン酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。直鎖状の脂肪族カルボン酸としては、たとえばエタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、エイコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸およびテトラコサン酸などを用いることができる。
【0067】
分岐状の脂肪族カルボン酸としては、たとえば2-メチルプロパン酸、2-メチルブタン酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、ネオヘプタン酸、2-エチルブタン酸、イソオクタン酸、ネオオクタン酸、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)オクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、ネオノナン酸、イソノナン酸、2-プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸、イソデカン酸、2-ブチルオクタン酸、2-ペンチルノナン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ヘプチルウンデカン酸、2-オクチルドデカン酸、2-ノニルトリデカン酸、2-デシルテトラデカン酸および2-ウンデシルペンタデカン酸などを用いることができる。
【0068】
分岐状の脂肪族カルボン酸として、天然起源の、たとえば分岐位置がα-位でない脂肪酸を用いてもよい。たとえば、オレイン酸またはリノール酸などを原料として重合脂肪酸を製造する際の副生物である混合カルボン酸(たとえば、uniqema社製、商品名:プリソン3505;エメリー社製、エメリー871)を用いてもよい。
【0069】
不飽和カルボン酸としては、たとえばアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3-ブテン酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、4-ペンテン酸、2-エチル-2-ブテン酸、10-ウンデセン酸、cis-9-テトラデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、オレイン酸、trans-9-オクタデセン酸、cis-13-ドコセン酸、trans-13-ドコセン酸、21-トリアコンテン酸、2,4-ヘキサジエン酸、9,12-オクタデカジエン酸、9,11,13-オクタデカトリエン酸、9,11,13-オクタデカトリエン酸、9,12,15-オクタデカトリエン酸および5,8,11,14-エイコサテトラエン酸などを用いることができる。
【0070】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、p-メチル安息香酸、m-メチル安息香酸およびけい皮酸などのモノカルボンが挙げられる。
【0071】
また、芳香族カルボン酸の代わりに、エステル化において反応性の高い相当する酸クロリドを使用することもできる。たとえば、ベンゾイルクロリド、ナフトエ酸クロリド、p-メチル安息香酸クロリド、m-メチル安息香酸クロリドなどのモノカルボンクロリドが挙げられる。
【0072】
また、不飽和カルボン酸および脂肪族カルボン酸を含むカルボン酸として、牛脂脂肪酸、やし油脂肪酸および魚油脂肪酸およびトール油脂肪酸などの動植物脂肪酸を用いてもよい。
【0073】
本発明はまた、本発明のエーテル化合物および誘導体を含有する、潤滑油基油を提供する。本発明の潤滑油基油は、本発明のエーテル化合物および誘導体を主成分とすることができる。本発明の潤滑油基油は、本発明のエーテル化合物およびエーテル誘導体をそれぞれ1種類のみ含有してもよいし、本発明の2種類以上のエーテル化合物もしくはエーテル誘導体の組み合わせを含有してもよい。
【0074】
本発明の潤滑油基油に使用されるエーテル化合物の粘度指数は、たとえば0以上であることができ、好ましくは5以上である。本発明の潤滑油基油に使用されるエーテル誘導体の粘度指数は、たとえば50以上であることができ、70以上、好ましくは100以上である。なお、粘度指数は、JIS K 2269規定の方法で求められる値である。
【0075】
本発明の潤滑油基油の流動点は、-50℃以下であることができる。なお、流動点は、JIS K 2269規定の方法で測定される値である。
【0076】
本発明の潤滑油基油の動粘度は、40℃および100℃の各温度において、それぞれ任意の値であることができる。たとえば40℃において1~100mm/sおよび100℃において1~100mm/sであることができる。動粘度は、ウベローデ粘度計による各温度条件での測定値である。
【0077】
本発明の潤滑油基油は、本発明のエーテル化合物とその誘導体以外の任意の成分をさらに含有してもよい。たとえば、本発明の潤滑油基油は、鉱物油、ポリ-α-オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、動植物油、本発明のエステル化合物以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルなどの他の基油を含有してもよい。
【0078】
本発明の潤滑油基油は、潤滑油組成物に配合することができる。潤滑油組成物には、潤滑油基油以外に、必要に応じて、酸化防止剤、加水分解抑制剤、油性剤、清浄分散剤、消泡剤、防錆剤、抗乳化剤、流動点降下剤および粘度指数向上剤などの添加剤がさらに配合されてもよい。
【実施例
【0079】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施例で用いた測定装置を以下に示す。
【0080】
プロトン核磁気共鳴スペクトルは、日本電子(JNM-ECZ400S : 400MHz)を用い、テトラメチルシランを内部標準として測定した。GC-MSは、(株)島津製作所製GC-MS TQ8040NC、カラムはagilent J&W GCカラム DB5ms30m 膜厚0.25μm。検出は、CI法(反応ガスメタン)を用いた。LC-MSは、(株)島津製作所製Prominence、カラムは、YMC-Triart C8 (150 × 4.6mm,3um)、溶離液は、 A液:アセトニトリル、B液:蒸留水(A液95%:B液5%)検出器は、ion trap type MS positivescanを用いた。
【0081】
動粘度は、ウベローデ粘度計による各温度条件での測定値であり、粘度指数は、JIS K 2269規定の方法で求めた。流動点は、JIS K 2269規定の方法で測定を行った。
【0082】
(参考例1)
10-エチル-7-テトラデカノール(1)の合成
500mLの4つ口フラスコに温度計、撹拌機、滴下ロートおよびジムロート型還流冷却管を付けたDean-Starkトラップ管を装着し、2-エチルヘキサノール(JNC(株)オクタノール)130.2g(1.00mol)、2-オクタノール(和光純薬工業(株)、試薬特級)19.6g(0.15mol)、ステアリン酸亜鉛(和光純薬工業(株)、試薬特級)0.12g(0.2mmol)および85重量%水酸化カリウム(和光純薬工業(株)、試薬特級)4.15gを加えて還流した。反応で生成する水は、Dean-Starkトラップ管より除去した。2-オクタノール14g~15gを反応器内の温度が188℃以下にならないよう滴下ロートにて分割フィードした。2-オクタノールは全体量として93.0g;0.71molを用いた。反応20時間で反応器内の温度は200℃に達した。この時の反応率は、2-エチルヘキサノール基準で69%。選択率は80%であった。反応物は水洗後、ガラス製20段オルダーショーを用いて減圧蒸留を行った。沸点120~130℃(2.3torr;310Pa)の留分を採取した。ガスクロマトグラフィでの純度は98.5%であった。
【0083】
【化18】
【0084】
(参考例2)
2&#8722;(2-((テトラヒドロ&#8722;2H&#8722;ピラン&#8722;2&#8722;イル)オキシ)エトキシ)エチル4&#8722;メチルベンゼンスルホネートの合成(3)
2000mLのナスフラスコに、2-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オール(2)174g(910mmol)、トリエチルアミン334mL(2.4mol)、パラトルエンスルホニルクロライド208g (1.1mol)、ジメチルアミノピリジン5.4g(44.2mmol)およびテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)、試薬特級)340mLを加え、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液に酢酸エチル400mLを加え、水(200mL×3回)で有機層を水洗後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮物330gを、シリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘプタン/酢酸エチル=1:1)を用いて精製し、化合物(3)278g(収率89%)を得た。この化合物(3)のH-NMRスペクトルを図1に、13C-NMRスペクトルを図2に示す。なお、2-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オールは、日本特許第6190240号公報に記載の方法で合成した。簡潔には、ジエチレングリコールおよび3,4-ジヒドロ-2H-ピランのTHFと塩化メチレン(400mL)との混合溶液に、p-トルエンスルホン酸一水和物を-10℃にて加え、反応液を1時間撹拌した。反応液に水を加え、エーテルにて分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、減圧下で有機層を濃縮した。濃縮した残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(ヘプタン:酢酸エチル=50:50~0:100)にて精製し、無色液体である2-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オールを得た。
【0085】
【化19】
(式中、THPは、テトラヒドロピラニル、Tsは、パラトルエンスルホニルを示す。)
【0086】
(実施例1)
2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オール(4)の合成
2000mLの3つ口フラスコに温度計、滴下ロートおよびジムロート型還流冷却管を装着し、流動パラフィンに分散60%水素化ナトリウム25g(630mmol)、テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)、試薬特級)100mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業(株)、試薬1級)300mLを加えて懸濁させた。懸濁液を70℃に加温し、10-エチル-7-テトラデカノール(1)160g(660mmol)とテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)、試薬特級)100mLの混合溶液を滴下した。水素の発生が終了するのを確認した後、60℃まで反応液を冷却し、参考例1で合成した(3)152g(440mmol)とテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)、試薬特級)100mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、徐々に室温へと冷却し、一晩攪拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、THFを除去後、ヘプタン500mLを加え、水(300mL×3回)で有機層を水洗後、真空下200℃で低沸成分の留去を行なった。
【0087】
1000mLナスフラスコに得られた濃縮物191g、メタノール300mL、2N塩酸水溶液30mLを加え、40℃に加温し、2時間攪拌し、脱保護反応を行い、反応液を濃縮した。得られた濃縮物は、シリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘプタン)を用いて精製し、化合物(4)93g(2段階収率64%)を得た。GC-MS 329(M-H)。この化合物(4)のH-NMRスペクトルを図3に、13C-NMRスペクトルを図4に示す。
【0088】
【化20】
【0089】
(実施例2)
ドデカン酸2-(2-((10‐エチルテトラデカン‐7‐イル)オキシ)エトキシ)エチル(5)の合成
1000mLの3つ口フラスコに温度計、ジムロート型還流冷却管を取り付けたDean-Starkトラップ管を装着し、n-ドデカン酸(和光純薬工業(株)試薬特級)81g(404mmol)、実施例1で合成した(4)111g(336mmol)、トルエン200 mLおよびp-トルエンスルホン酸一水和物1g(5mmol)を加え、170℃で3時間攪拌した。反応で生成する水は、Dean-Starkトラップ管より除去した。反応終了後、水(100mL×3回)で反応液を水洗し、次いで真空下200℃で低沸成分の留去を行なった。濃縮物をヘプタン200mLと飽和NaCO水溶液(50mL)で洗浄し、次いで得られた有機層を水(300mL×3回)で水洗し、シリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘプタン)を用いて精製し、化合物(5)157g(収率91%)を得た。GC-MS 511(M-H)。この化合物のH-NMRスペクトルを図5に示し、13C-NMRスペクトルを図6に示す。
【0090】
【化21】
【0091】
(実施例3)
2-エチルヘキサン酸2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エチル(6)の合成
実施例1のエステル化反応と同じ装置を用いて、2-エチルヘキサン酸(JNC(株)2-EHS)130g(902mmol)、(4)149g(451mmol)、トルエン200mLおよびp-トルエンスルホン酸一水和物2g(11mmol)を加え、155℃で48時間攪拌した。反応で生成する水は、Dean-Starkトラップ管より除去した。反応終了後、水(100mL×3回)で反応液を水洗し、次いで真空下200℃で低沸成分の留去を行なった。濃縮物にヘプタン200mLと飽和NaCO水溶液(100mL)で洗浄後、得られた有機層を水(300mL×3回)で水洗し、シリカゲルカラムクウロマトグラフ(ヘプタン)を用いて精製し、化合物(6)183g(収率89%)を得た。GC-MS 455(M-H)。この化合物のH-NMRスペクトルを図7に、13C-NMRスペクトルを図8に示す。
【0092】
【化22】
【0093】
(実施例4)
オレイン酸2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エチル(7)の合成
実施例1のエステル化反応と同じ装置を用いて、オレイン酸130g(460mmol)、(4)149g(451mmol)、トルエン200mLおよびp-トルエンスルホン酸一水和物2g(11mmol)を加え、160℃で8時間攪拌した。反応で生成する水は、Dean-Starkトラップ管より除去した。反応終了後、水(100mL×3回)で反応液を水洗し、次いで真空下200℃で低沸成分の留去を行なった。濃縮物にヘプタン200mLと10%NaOH水溶液(50mL)で洗浄後、得られた有機層を水(300mL×3回)で水洗し、シリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘプタン)を用いて精製し、化合物(7)252g(収率94%)を得た。LC-MS m/z 595(M)。この化合物のH-NMRスペクトルを図9に、13C-NMRスペクトルを図10に示す。
【0094】
【化23】
【0095】
(実施例5)
16-エチル-13-ヘキシル-3,6,9,12-テトラオキサイコサン-1-オール(8)の合成
2000mLの3つ口フラスコに温度計、滴下ロートおよびジムロート型還流冷却管を装着し、流動パラフィンに分散60%水素化ナトリウム8.3g(207mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業(株)、試薬1級)300mLを加えて懸濁させた。懸濁液を60℃に加温し、2-(2-((10-エチルテトラデカン-7-イル)オキシ)エトキシ)エタン-1-オール(4)55g(166mmol)とテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)、試薬特級)100mLの混合溶液を滴下した。水素の発生が終了するのを確認した後、40℃まで反応液を冷却し、参考例1で合成した(3)56g(163mmol)とテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)、試薬特級)50mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、徐々に室温へと冷却し、一晩攪拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、THFを除去後、酢酸エチル500mLを加え、水(100mL×5回)で有機層を水洗後、濃縮した。
【0096】
300mLナスフラスコに得られた濃縮物80g、メタノール300mL、2N塩酸水溶液30mLを加え、40℃で2時間攪拌し、反応液を濃縮した。得られた濃縮物は、シリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘプタン:酢酸エチル = 1:1)を用いて精製し、(8)をガスクロ純度で94%含み、と(4)を4%含有するエーテル化合物を68g(2段階収率70%)得た。LC-MS m/z 419(M又はM+H)。この化合物(8)のH-NMRスペクトルを図11に、13C-NMRスペクトルを図12に示す。
【0097】
【化24】
【0098】
(比較例1)
2-エチルヘキサン酸1-ヘキシル-4-エチルオクチル(9)の合成
実施例1のエステル化反応と同じ装置を用いて、2-エチルヘキサン酸(JNC(株)2-EHS)108.0g(749mmol)および10-エチル-7-テトラデカノール140.0g(577mmol)を加え、200~220℃で加熱した。反応で生成する水は、Dean-Starkトラップ管より除去した。23時間反応させた。実施例2と同等の方法で処理を行い、化合物(9)165.0g(収率78%)を得た。
【0099】
【化25】
【0100】
(動粘度、粘度指数および流動点の測定結果)
実施例1~5および参考例1および比較例1の動粘度、粘度指数および流動点を測定した。表1に示すように、実施例1と5のエーテル化合物および実施例2~4のエーテル誘導体は、低粘度であり、十分に高い粘度指数を有することが示された。また、実施例1~5の化合物は、いずれも流動点が-50℃以下で、低温での流動性が高く、参考例1のアルコール化合物と比較して高い粘度指数を有することが示された。
【0101】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のエーテル化合物およびエーテル誘導体は、低温流動性に優れ、良好な流動点、高い粘度指数を有しているため、潤滑油基油として好適に使用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12