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特許7467360バイオマスから芳香族化合物を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】バイオマスから芳香族化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/86 20060101AFI20240408BHJP
   C07C 15/067 20060101ALI20240408BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C07C2/86
C07C15/067
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020567000
(86)(22)【出願日】2019-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2019085492
(87)【国際公開番号】W WO2019228132
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/089142
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】パルフレスク,アンドレイ-ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェイピン
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0296600(US,A1)
【文献】特表2012-530035(JP,A)
【文献】Green Chemistry,2014年,16,585-588
【文献】The Journal of Physical Chemistry C,2017年,121,13666-13679
【文献】Catalysis Science & Technoloogy,2013年,3,2580-2586
【文献】ChemSusChem,2018年10月17日,11,3803-3811
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
C01B
C07
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物の製造方法であって、
(1) エチレン及び式(I)
【化1】
の化合物を含む混合物(M1)を調製する工程、
(2) 混合物(M1)を、触媒を含有する反応器に供給する工程であって、前記触媒がBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む工程、
(3) 混合物(M1)の少なくとも一部を反応させて式(II)
【化2】
の芳香族化合物を得るために、混合物(M1)を前記反応器内の前記触媒と接触させる工程、
(4) 式(II)の前記芳香族化合物を含有する反応混合物(M2)を前記反応器から回収する工程、
を含み、
式中、R及びRが互いに独立して、H、又は置換又は非置換の(C~C)アルキルを表し、及び
前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、有機テンプレートを用いない合成法により得られ、
前記有機テンプレートを用いない合成法が、
(A) SiOの1種以上の源、Xの1種以上の源、及び種結晶を含む混合物を調製する工程であって、前記種結晶がBEA型骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む工程、
(B) BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、工程(A)で得られた前記混合物を結晶化させる工程
を含み、
ここでXが3価の元素であり、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、
前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、20~100の範囲のSiO :X モル比を示し、骨格構造の前記SiO :X モル比が、前記ゼオライト材料の 29 Si MAS NMRから決定され、
前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が示すブレンステッド酸部位(BA)の量のルイス酸部位(LA)の量に対するBA:LA比が、1.6~3.4の範囲であり、ここでブレンステッド酸部位及びルイス酸部位の量がそれぞれ、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH -TPD)により決定され、及び
工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる前記混合物が、構造指向剤としての有機テンプレートを含有しない、方法。
【請求項2】
BEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、少なくとも次の反射を含むX線回折パターンを示し、
【表1】
ここで100%は、前記X線粉末回折パターンの20~45°の2θ範囲の最高ピークの強度を意味し、及び
前記BEA型骨格構造がSiO及びXを含み、Xは3価の元素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が、置換又は非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が溶媒システムをさらに含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物及び/又はエチレンがバイオマスに由来する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(2)及び工程(3)において、前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料がH型である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(2)及び工程(3)において、前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、元素として計算され、BEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiO に基づいて5質量%以下の金属AMを含有し、ここで前記金属AMがNaを表す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(2)及び工程(3)において、前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、元素として計算され、BEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて5質量%以下の金属TMを含有し、ここで前記金属TMがPt、Pd、Rh、及びIrを表す、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)及び工程(3)において、前記触媒に含まれるBEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料が、元素として計算され、BEA型骨格構造を有する前記ゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて、5質量%以下のリンを含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(3)における混合物(M1)の前記触媒との接触を、150~350℃の範囲の温度で行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法を連続モード及び/又はバッチモードで行う、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる前記混合物が、元素として計算され、前記混合物に含有される100質量%のSiOに基づいて5質量%以下の炭素を含有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料上でエチレンとフラン化合物とを含む混合物を反応させることを含む、芳香族化合物の製造方法であって、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、有機テンプレートを用いない合成法により得ることができる及び/又は得られる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広く使用されているバルク化学物質の、バイオマスからの持続可能な生産は、高コスト、市場の変動性、及び石油ベース原料の差し迫った枯渇のため、大きな注目を集めている。p-キシレン(PX)は、テレフタル酸(TA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造、及びその後のポリエステル、合成繊維及びプラスチックボトル等の合成のため広範囲にわたり使用されているので、最も重要な特定の当該化学物質の1つである。近年、エチレンと2,5-ジメチルフラン(2,5-DMF)との間のディールス-アルダー反応を使用した再生可能なp-キシレン製造のための有望な経路が提案されている(図1を参照)。特に、2,5-DMF及びエチレンの両方がバイオマスに由来することができ、これによって、それら2,5-DMF及びエチレンの生産の石油への依存を削減する可能性が提供される。
【0003】
US2013/0245316A1は、触媒としてのルイス酸化合物の存在下で再生可能な源及びエチレンからp-キシレンを製造する方法に関するものである。Ni,L.et al.ChemSusChem2017,10,2394は、金属トリフラートを使用したバイオベースの2,5-ジメチルフランからのp-キシレンの合成に関する。Chang,C.-C.et al.Green Chem.2014,16,585は、バイオマス由来のエチレン及びジメチルフランのH-ゼオライトベータとの環化付加反応に関するものである。Cho,H.J.et al.ChemCatChem2017,9,398は、リン含有ゼオライトベータ触媒を使用した、2,5-ジメチルフラン及びエチレンからの再生可能なp-キシレンに関するものである。
【0004】
バイオマスから芳香族化合物を調製するための方法は存在するが、特に反応の活性及び選択性に関して、転化を最適化する必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2013/0245316A1
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ni,L.et al.ChemSusChem2017,10,2394
【文献】Chang,C.-C.et al.Green Chem.2014,16,585
【文献】Cho,H.J.et al.ChemCatChem2017,9,398
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バイオマスから芳香族化合物を製造するための改善された方法、及び特にアルキレンと、フラン又はそのアルキル化誘導体とのディールス-アルダー環化付加反応、及びその後の水の除去を介して芳香族生成物を得る、改善された方法を提供することである。よって、驚くべきことに、有機テンプレートを用いない合成から得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む触媒を用いることにより、特に反応の活性及び選択性に関して、改善された方法が提供されることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って本発明は、芳香族化合物の製造方法であって、
(1) エチレン及び式(I)
【化1】
の化合物を含む混合物(M1)を調製する工程、
(2) 混合物(M1)を、触媒を含有する反応器に供給する工程であって、前記触媒がBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む工程、
(3) 混合物(M1)の少なくとも一部を反応させて式(II)
【化2】
の芳香族化合物を得るために、混合物(M1)を反応器内の触媒と接触させる工程、
(4) 式(II)の芳香族化合物を含有する反応混合物(M2)を反応器から回収する工程、
を含む方法に関し、
式中、R及びRは互いに独立して、H、又は置換又は非置換の(C~C)アルキル、好ましくはH、又は置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくはH、又は置換又は非置換のメチル、及びより好ましくはH、又は非置換のメチルを表し、及び
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料は、有機テンプレートを用いない合成法により得ることができる及び/又は得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、2,5-ジメチルフラン(2,5-DMF)が、エチレンのディールス-アルダー環化付加反応を介して、水の除去によりp-キシレンに転化する環化付加中間体となる反応スキームを示す。
図2図2は、2-メチルフランが、エチレンのディールス-アルダー環化付加反応を介して、水の除去によりトルエンに転化する環化付加中間体となる反応スキームを示す。
図3図3は、フランが、エチレンのディールス-アルダー環化付加反応を介して、水の除去によりベンゼンに転化する環化付加中間体となる反応スキームを示す。
図4図4は、参考例1、参考例2、参考例3、及び市販のゼオライトベータによる、ゼオライトベータ触媒による2,5-ジメチルフラン及びエチレンの転化における反応生成物及び選択性を示す。
図5図5は、参考例2による、ゼオライトベータ触媒上でのエチレン及び2,5-ジメチルフラン(2,5-DMF)、2-メチルフラン(2-MF)、及びフランそれぞれの転化における反応生成物及び選択性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の物理的及び/又は化学的特性、例えばXRDパターンに関して、特別な制限は適用されない。触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料は、少なくとも次の反射を含むX線回折パターンを示すことが好ましく、
【表1】
ここで100%は、X線粉末回折パターンの20~45°の2θ範囲の最高ピークの強度を意味し、及び
BEA型骨格構造はSiO及びXを含み、Xは3価の元素である。
【0011】
上記で開示したように、R及びRは、互いに独立して、H、又は置換又は非置換の(C~C)アルキル、好ましくはH、又は置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくはH、又は置換又は非置換のメチル、及びより好ましくはH、又は非置換のメチルを表す。R及びRが、互いに独立して、置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくは置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくは置換又は非置換のメチル、より好ましくは非置換のメチルを表すことが好ましい。
【0012】
及びRに関して、特に好ましくは、RがHを表し、及びRが置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくは置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくは置換又は非置換のメチル、及びより好ましくは非置換のメチルを表す。
【0013】
上記で開示したように、混合物(M1)は、エチレンと式(I)
【化3】
の化合物とを含む。
【0014】
式(I)の化合物は、置換又は非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、ここでより好ましくは、式(I)の化合物が、2-メチルフラン及び/又は2,5-ジメチルフラン、好ましくは2,5-ジメチルフランである。
【0015】
エチレン:式(I)の化合物のモル比に関して、特別な制限は適用されない。工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)中のエチレン:式(I)の化合物のモル比は、0.01~1.5、より好ましくは0.05~1、より好ましくは0.08~0.7、より好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.12~0.3、より好ましくは0.14~0.2、及びより好ましくは0.16~0.18の範囲であることが好ましい。
【0016】
従って、特に好ましくは、式(I)の化合物が、置換又は非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここでより好ましくは、式(I)の化合物が2-メチルフラン及び/又は2,5-ジメチルフラン、好ましくは2,5-ジメチルフランであり、及び工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)中のエチレン:式(I)の化合物のモル比が、0.01~1.5、より好ましくは0.05~1、より好ましくは0.08~0.7、より好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.12~0.3、より好ましくは0.14~0.2、及びより好ましくは0.16~0.18の範囲である。
【0017】
工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば水がそこに含まれてよい。工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)は、100質量%の式(I)の化合物に基づいて5質量%以下の水、より好ましくは、100質量%の式(I)の化合物に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の水を含有することが好ましい。特に好ましくは、工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)は、実質的に水を含有しない。
【0018】
上記で開示したように、工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば溶媒システムがそこに含まれてよい。工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)は、溶媒システムをさらに含むことが好ましく、ここで溶媒システムが、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を好ましくは含み、より好ましくは溶媒システムがヘプタンを含み、より好ましくは溶媒システムがヘプタンからなる。
【0019】
工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が溶媒システムをさらに含む場合、工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が、式(I)の化合物の溶液を溶媒システム中に含有することが好ましく、ここで溶媒システムにおける式(I)の化合物の濃度は、0.1~5M、0.5~3M、より好ましくは1~2.5M、より好ましくは1.3~2M、より好ましくは1.4~1.7M、及びより好ましくは1.5~1.6Mの範囲である。
【0020】
従って、特に好ましくは、工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が、溶媒システムをさらに含み、ここで溶媒システムがブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を含み、より好ましくは溶媒システムがヘプタンを含み、より好ましくは溶媒システムがヘプタンからなり、及び工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が、式(I)の化合物の溶液を溶媒システム中に含有し、ここで溶媒システムにおける式(I)の化合物の濃度が0.1~5M、0.5~3M、より好ましくは1~2.5M、より好ましくは1.3~2M、より好ましくは1.4~1.7M、及びより好ましくは1.5~1.6Mの範囲であり、及び式(I)の化合物が、置換又は非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここでより好ましくは、式(I)の化合物が2-メチルフラン及び/又は2,5-ジメチルフラン、好ましくは2,5-ジメチルフランである。
【0021】
工程(2)で混合物(M1)を供給し工程(3)で触媒を接触させる反応器におけるエチレンの分圧に関して、特別な制限は適用されない。工程(2)で混合物(M1)を供給し工程(3)で触媒を接触させる反応器におけるエチレンの分圧は、25℃で測定して0.5~15、より好ましくは0.5~15MPa、より好ましくは1~10MPa、より好ましくは2~8MPa、より好ましくは2.5~6MPa、より好ましくは3~5MPa、及びより好ましくは3.5~4.5MPaの範囲であることが好ましい。
【0022】
式(I)の化合物及び/又はエチレンの起源に関して、特別な制限は適用されず、それは天然又は合成方法に由来してよい。式(I)の化合物及び/又はエチレン、好ましくは式(I)の化合物及びエチレンが、バイオマスに由来することが好ましい。
【0023】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されない。工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料は、H型であることが好ましい。
【0024】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば1種以上の金属、好ましくは1種以上のアルカリ金属及びアルカリ土類金属がそこに含まれてよい。工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料は、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiO に基づいて5質量%以下の金属AM、好ましくは、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属AMを含有することが好ましく、ここで金属AMは、Na、好ましくはNa及びK、より好ましくはアルカリ金属、及びより好ましくはアルカリ及びアルカリ土類金属を表す。
【0025】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば1種以上の金属、好ましくは1種以上の遷移金属がそこに含まれてよい。工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料は、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて5質量%以下の金属TM、好ましくは、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属TMを含有することが好ましく、ここで金属TMは、Pt、Pd、Rh、及びIrを表し、及び好ましくは、第3~12族の遷移金属元素を表す。
【0026】
反応器内に含有される触媒に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば1種以上の金属、好ましくは1種以上のアルカリ金属及びアルカリ土類金属がそこに含まれてよい。工程(2)及び工程(3)において、反応器内の触媒は、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて5質量%以下の金属AM、より好ましくは、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属AMを含有することが好ましく、ここで金属AMは、Na、好ましくはNa及びK、より好ましくはアルカリ金属、及びより好ましくはアルカリ及びアルカリ土類金属を表す。
【0027】
上記で開示したように、反応器内に含有される触媒に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば1種以上の金属、好ましくは1種以上の遷移金属がそこに含まれてよい。反応器内に含有される触媒は、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて5質量%以下の金属TM、好ましくは、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属TMを含有することが好ましく、ここで金属TMは、Pt、Pd、Rh、及びIrを表し、及び好ましくは、第3~12族の遷移金属元素を表す。
【0028】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えばリンがそこに含まれてよい。工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料は、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて、5質量%以下のリン、より好ましくは、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下のリンを含有することが好ましい。
【0029】
上記で開示したように、反応器内に含有される触媒に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えばリンがそこに含まれてよい。工程(2)及び工程(3)において、触媒は、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて5質量%以下のリン、より好ましくは、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属AMを含有することが好ましい。
【0030】
工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触に関して、特別な制限は適用されず、例えば温度の観点からの任意の適した条件を適用してよい。工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触は、150~350℃、より好ましくは200~330℃、より好ましくは230~320℃、より好ましくは250~315℃、より好ましくは270~310℃、より好ましくは280~305℃の範囲、及びより好ましくは290~300℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0031】
上記で開示したように、工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触に関して、特別な制限は適用されず、例えば期間の観点からの任意の適した条件を適用してよい。工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触の期間は、0.5~70時間、より好ましくは1~50時間、より好ましくは3~40時間、より好ましくは5~35時間、より好ましくは10~30時間、より好ましくは15~25時間、より好ましくは18~23時間の範囲、及びより好ましくは19~21時間の範囲であることが好ましい。
【0032】
従って、特に好ましくは、工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触を150~350℃、より好ましくは200~330℃、より好ましくは230~320℃、より好ましくは250~315℃、より好ましくは270~310℃、より好ましくは280~305℃の範囲、及びより好ましくは290~300℃の範囲の温度で行い、及び工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触の期間が、0.5~70時間、より好ましくは1~50時間、より好ましくは3~40時間、より好ましくは5~35時間、より好ましくは10~30時間、より好ましくは15~25時間、より好ましくは18~23時間の範囲、及びより好ましくは19~21時間の範囲である。
【0033】
上記で開示したように、工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触及び工程(4)における反応混合物(M2)の回収に関して、特別な制限は適用されず、例えば反応モードの観点からの任意の適した条件を適用してよい。工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触及び工程(4)における反応混合物(M2)の回収は、連続モード及び/又はバッチモードで、より好ましくはバッチモードで行うことが好ましい。
【0034】
方法を行う反応モードに関して、特別な制限は適用されない。方法を、連続モード及び/又はバッチモードで、好ましくはバッチモードで行うことが好ましい。
【0035】
上記で開示したように、芳香族化合物の製造方法は、工程(1)、(2)、(3)、及び(4)を含む。前記方法に関して、方法工程の観点から特別な制限は適用されず、そこにさらなる方法工程が含まれてよい。方法が、
(5) 式(II)の化合物を反応混合物(M2)から分離して、未反応の式(I)の化合物及び/又は未反応のエチレンを含有する混合物(M3)を得る工程
をさらに含むことが好ましい。
【0036】
上記で開示したように、方法が工程(5)を含む場合、やはり方法工程の観点から特別な制限は適用されず、そこにさらなる方法工程が含まれてよい。方法が、
(6) 未反応の式(I)の化合物及び/又は未反応のエチレンを含有する混合物(M3)を工程(1)に再循環させる工程
をさらに含むことが好ましい。
【0037】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されない。触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、10~200、より好ましくは15~150、より好ましくは20~100、より好ましくは25~70、より好ましくは30~65、より好ましくは35~60、より好ましくは38~55、より好ましくは40~50、及びより好ましくは42~46の範囲のSiO:Xモル比を示すことが好ましく、ここで好ましくは、骨格構造のSiO:Xモル比は、元素分析又はゼオライト材料の29Si MAS NMRから、好ましくはゼオライト材料の29Si MAS NMRから決定する。好ましくは、骨格構造のSiO:Xモル比は、実験の項に記載の方法に従って、29Si MAS NMRにより決定する。
【0038】
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の3価の元素Xに関して、特別な制限は適用されない。触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の3価の元素Xは、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはAl、Ga、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましく、Xは、より好ましくはAlである。
【0039】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されない。触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、100~900μmol/g、より好ましくは150~700μmol/g、より好ましくは200~650μmol/g、より好ましくは350~600μmol/g、より好ましくは380~550μmol/g、より好ましくは410~500μmol/g、より好ましくは430~470μmol/g、及びより好ましくは445~450μmol/gの範囲のブレンステッド酸部位(BA)の量を示すことが好ましく、ここでブレンステッド酸部位の量は、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定する。好ましくは、ブレンステッド酸部位の量は、実験の項に記載の方法に従って決定する。
【0040】
上記で開示したように、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されない。触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、100~350μmol/g、より好ましくは110~300μmol/g、より好ましくは120~280μmol/g、より好ましくは140~260μmol/g、より好ましくは150~240μmol/g、より好ましくは160~220μmol/g、より好ましくは170~200μmol/g、及びより好ましくは180~190μmol/gの範囲のルイス酸部位(LA)の量を示すことが好ましく、ここでルイス酸部位の量は、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定する。好ましくは、ルイス酸部位の量は、実験の項に記載の方法に従って決定する。
【0041】
従って、特に好ましくは、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、100~900μmol/g、より好ましくは150~700μmol/g、より好ましくは200~650μmol/g、より好ましくは350~600μmol/g、より好ましくは380~550μmol/g、より好ましくは410~500μmol/g、より好ましくは430~470μmol/g、及びより好ましくは445~450μmol/gの範囲の量のブレンステッド酸部位(BA)を示し、ここでブレンステッド酸部位の量は、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定し、及び触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、100~350μmol/g、より好ましくは110~300μmol/g、より好ましくは120~280μmol/g、より好ましくは140~260μmol/g、より好ましくは150~240μmol/g、より好ましくは160~220μmol/g、より好ましくは170~200μmol/g、及びより好ましくは180~190μmol/gの範囲の量のルイス酸部位(LA)を示し、ここでルイス酸部位の量は、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定する。
【0042】
さらに、特に好ましくは、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が示すブレンステッド酸部位(BA)の量のルイス酸部位(LA)の量に対するBA:LA比が、0.5~8、好ましくは1~5、より好ましくは1.3~4、より好ましくは1.6~3.4、より好ましくは1.8~3、より好ましくは2.0~2.7、より好ましくは2.2~2.6、及びより好ましくは、2.3~2.5の範囲であり、ここでブレンステッド酸部位及びルイス酸部位の量はそれぞれ、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)により、又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定する。
【0043】
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の物理的及び/又は化学的特性、例えばBET表面積に関して、特別な制限は適用されない。ISO9277:2010により決定する触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料のBET表面積が、350~800m/g、より好ましくは400~700m/g、より好ましくは430~650m/g、より好ましくは450~600m/g、より好ましくは460~550m/g、より好ましくは470~530m/g、より好ましくは480~520m/g、及びより好ましくは490~510m/gの範囲であることが好ましい。
【0044】
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の物理的及び/又は化学的特性、例えば総細孔容積に関して、特別な制限は適用されない。BJH法からの窒素吸着により決定する触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の総細孔容積が、0.3~0.5cm/g、好ましくは0.31~0.45cm/g、より好ましくは0.32~0.42cm/g、より好ましくは0.33~0.4cm/g、より好ましくは0.34~0.39cm/g、より好ましくは0.35~0.38cm/g、及びより好ましくは0.36~0.37cm/gの範囲であることが好ましく、ここで総細孔容積は、好ましくは、DIN66134により決定する。
【0045】
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を得ることができる及び/又は得られる、有機テンプレートを用いない合成法に関して、特別な制限は適用されない。有機テンプレートを用いない合成法は、
(A) SiOの1種以上の源、Xの1種以上の源、及び種結晶を含む混合物を調製する工程であって、種結晶がBEA型骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む工程、
(B) BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、工程(A)で得られた混合物を結晶化させる工程
を含むことが好ましく、ここでXは3価の元素であり、及び
工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物は、構造指向剤としての有機テンプレートを含有しない。
【0046】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に関して、特別な制限は適用されず、そこにさらなる成分、例えば炭素が含まれてよい。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物は、元素として計算され、混合物に含有される100質量%のSiOに基づいて5質量%以下の炭素、より好ましくは、元素として計算され、混合物に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の炭素を含有することが好ましい。
【0047】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(B)で得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に関して、特別な制限は適用されず、そこにさらなる成分、例えば1種以上のアルカリ金属Mが含まれてよい。工程(B)で得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、1種以上のアルカリ金属Mを含むことが好ましく、ここでMは、好ましくは、Li、Na、K、Cs、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはLi、Na、K、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属MはNa及び/又はK、より好ましくはNaである。
【0048】
工程(B)で得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、上記で開示したように1種以上のアルカリ金属Mを含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物中のモル比M:SiOに関して、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物中のモル比M:SiOは、0.05~5、より好ましくは0.1~2、より好ましくは0.3~1、より好ましくは0.4~0.8、より好ましくは0.45~0.7、より好ましくは0.5~0.65、及びより好ましくは0.55~0.6の範囲であることが好ましい。
【0049】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源に関して、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源は、1種以上のシリケート、好ましくは1種以上のアルカリ金属シリケートを含むことが好ましく、ここでアルカリ金属が、より好ましくはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属がNa及び/又はKであり、及びより好ましくはアルカリ金属がNaであり、ここでより好ましくは工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が、水ガラス、好ましくはナトリウムシリケート及び/又はカリウムシリケート、より好ましくはナトリウムシリケートを含む。
【0050】
工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が、上記で開示したように1種以上のシリケートを含む場合、そこに含まれるさらなる成分の観点において、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源は、1種以上のシリカ、より好ましくは1種以上のシリカヒドロゾル及び/又は1種以上のコロイダルシリカ、及びより好ましくは1種以上のコロイダルシリカをさらに含むことが好ましい。
【0051】
従って、特に好ましくは、方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が、1種以上のシリケート、好ましくは1種以上のアルカリ金属シリケートを含み、ここでアルカリ金属がより好ましくはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属がNa及び/又はKであり、及びより好ましくはアルカリ金属がNaであり、ここでより好ましくは工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が水ガラス、好ましくはナトリウムシリケート及び/又はカリウムシリケート、より好ましくはナトリウムシリケートを含み、及び工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が1種以上のシリカ、より好ましくは1種以上のシリカヒドロゾル及び/又は1種以上のコロイダルシリカ、及びより好ましくは1種以上のコロイダルシリカをさらに含む。
【0052】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、Xに関して、上記で開示したようにそれが3価の元素である限り、特別な制限は適用されない。Xは、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくは、Al、Ga、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましく、Xはより好ましくはAlである。
【0053】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるXの1種以上の源に関して、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるXの1種以上の源は、1種以上のアルミネート塩、好ましくはアルカリ金属のアルミネートを含むことが好ましく、ここでアルカリ金属は、好ましくはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属はNa及び/又はKであり、及びより好ましくはアルカリ金属はNaである。
【0054】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物のモル比SiO:Xに関して、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物のモル比SiO:Xは、1~200、より好ましくは5~100、より好ましくは10~50、より好ましくは15~40、より好ましくは20~30、より好ましくは23~25、及びより好ましくは23.5~24の範囲であることが好ましい。
【0055】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に関して、特別な制限は適用されず、さらなる成分、例えば1種以上の溶媒がそこに含まれてよい。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物が1種以上の溶媒をさらに含むことが好ましく、ここで前記1種以上の溶媒は、より好ましくは水、より好ましくは脱イオン水を含み、ここでより好ましくは、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物中にさらに含まれる溶媒として、水、好ましくは脱イオン水を用いる。
【0056】
工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物が、上記で開示したように1種以上の溶媒をさらに含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物のモル比HO:SiOに関して、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物のモル比HO:SiOは、5~100、好ましくは10~50、より好ましくは13~30、より好ましくは15~20、及びより好ましくは17~18の範囲であることが好ましい。
【0057】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えば工程(B)の結晶化を行う混合物の温度に関して、特別な制限は適用されない。工程(B)の結晶化は、混合物の加熱を伴うことが好ましく、より好ましくは温度が80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~140℃、及びより好ましくは115~130℃の範囲である。
【0058】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えば工程(B)の結晶化を行う圧力に関して、特別な制限は適用されない。工程(B)の結晶化は、自己圧力下で、より好ましくはソルボサーマル条件下で、及びより好ましくは水熱条件下で行うことが好ましい。
【0059】
従って、特に好ましくは、工程(B)の結晶化が混合物の加熱を伴い、より好ましくは加熱の温度が80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~140℃、及びより好ましくは115~130℃の範囲であり、及び工程(B)の結晶化を自己圧力下で、より好ましくはソルボサーマル条件下で、及びより好ましくは水熱条件下で行う。
【0060】
工程(B)の結晶化が上記で開示したように混合物の加熱を伴う場合、及び/又は工程(B)の結晶化を上記で開示したように自己圧力下で行う場合、工程(B)で混合物を加熱する期間に関して、特別な制限は適用されない。工程(B)で、混合物を5~200時間、好ましくは20~160時間、より好ましくは60~140時間、及びより好ましくは100~130時間の範囲の期間で加熱することが好ましい。
【0061】
方法が、上記で開示したように工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、そこに含まれるさらなる方法工程に関して、特別な制限は適用されない。BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための有機テンプレートを用いない合成法が、
(C) 工程(B)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を単離する、好ましくは濾過による工程、及び
(D) 工程(B)又は(C)、好ましくは工程(C)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に洗浄する工程、及び/又は、
(E) 工程(B)、(C)又は(D)、好ましくは工程(D)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に乾燥させる工程
をさらに含むことが好ましく、
ここで、工程(C)及び/又は(D)及び/又は(E)は、任意の順序で行うことができ、及び
前記工程のうちの1つ以上を、好ましくは1回以上繰り返す。
【0062】
方法が、上記で開示したように工程(A)、(B)、(C)、任意に工程(D)、及び任意に工程(E)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、そこに含まれるさらなる方法工程に関して、やはり特別な制限は適用されない。BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための有機テンプレートを用いない合成法が、
(F) 工程(C)、(D)、又は(E)で、好ましくは工程(E)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に含有される1種以上のイオン性非骨格要素を、H及び/又はNH に対して、好ましくはNH に対して交換する工程;及び/又は、好ましくは
(G) 工程(C)、(D)、(E)、又は(F)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を乾燥及び/又はか焼する、好ましくは乾燥及びか焼する工程
をさらに含むことが好ましく、
ここで、工程(F)及び/又は(G)を、好ましくは1回以上、好ましくは1~3回、より好ましくは1回又は2回、及びより好ましくは1回繰り返す。
【0063】
方法が、上記で開示したように工程(A)、(B)、(C)、任意に工程(D)、任意に工程(E)、及び任意に工程(F)及び(G)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、そこに含まれるさらなる方法工程に関しても、やはり特別な制限は適用されない。BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための有機テンプレートを用いない合成法が、
(H) 工程(C)、(D)、(E)、(F)、又は(G)で、好ましくは工程(G)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、pHが最大でも5である水溶液で処理する工程、及び
(I) 工程(H)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を単離する、好ましくは濾過による工程、及び/又は、
(J) 工程(H)又は(I)で、好ましくは工程(I)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に洗浄する工程、及び/又は、
(K) 工程(H)、(I)、又は(J)で、好ましくは工程(J)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に乾燥及び/又はか焼する、好ましくは乾燥する工程
をさらに含むことが好ましく、
ここで、工程(I)及び/又は(J)及び/又は(K)は、任意の順序で行うことができ、及び
前記工程の1つ以上を、好ましくは1回以上、好ましくは1~3回、より好ましくは1回又は2回、及びより好ましくは1回繰り返す。
【0064】
方法が、上記で開示したように工程(H)、(I)、任意に工程(J)、及び任意に工程(K)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えば工程(H)でゼオライト材料を処理するために使用する水溶液のpHに関して、水溶液のpHが最大でも5である限り、特別な制限は適用されない。工程(H)でゼオライト材料を処理するために使用する水溶液のpHが、-1.5~3、好ましくは-1.2~2、より好ましくは-1~1.5、より好ましくは-0.8~1、より好ましくは-0.6~0.7、より好ましくは-0.5~0.5、より好ましくは-0.3~0.3、より好ましくは-0.2~0.2、及びより好ましくは-0.1~0.1の範囲であることが好ましい。
【0065】
方法が、上記で開示したように工程(H)、(I)、任意に工程(J)、及び任意に工程(K)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(H)でゼオライト材料を処理するために用いる水溶液の性質に関して、特別な制限は適用されない。工程(H)でゼオライト材料を鉱酸の水溶液を用いて処理することが好ましい。さらに、水溶液中の鉱酸の濃度が、0.05~4M、より好ましくは0.1~3M、より好ましくは0.2~2.5M、より好ましくは0.4~2M、より好ましくは0.6~1.5M、より好ましくは0.8~1.2M、及びより好ましくは0.9~1.1Mの範囲であることが好ましい。
【0066】
上記で開示したように、工程(H)で鉱酸を使用する場合、鉱酸の性質に関して、特別な制限は適用されない。鉱酸が、HF、HCl、HBr、HNO、HPO、HSO、HBO、HClO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはHCl、HBr、HNO、HSO、HClO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはHCl、HNO、HSO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されることが好ましく、ここでより好ましくは鉱酸はHCl及び/又はHNO、好ましくはHNOである。
【0067】
従って、特に好ましくは、工程(H)でゼオライト材料を鉱酸の水溶液を用いて処理する。さらに、水溶液中の鉱酸の濃度が0.05~4M、より好ましくは0.1~3M、より好ましくは0.2~2.5M、より好ましくは0.4~2M、より好ましくは0.6~1.5M、より好ましくは0.8~1.2M、及びより好ましくは0.9~1.1Mの範囲であり、及び鉱酸が、HF、HCl、HBr、HNO、HPO、HSO、HBO、HClO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはHCl、HBr、HNO、HSO、HClO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはHCl、HNO、HSO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは鉱酸がHCl及び/又はHNO、好ましくはHNOであることが好ましい。
【0068】
方法が、上記で開示したように工程(H)、(I)、任意に工程(J)、及び任意に工程(K)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(C)、(D)、(E)、(F)、又は(G)で、好ましくは工程(G)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、pHが最大でも5である水溶液で処理する方式に関して、特別な制限は適用されない。第1の代替法によれば、工程(H)で、ゼオライト材料を水溶液に添加し、及び混合物を、好ましくは30~100℃、より好ましくは35~90℃、より好ましくは40~80℃、より好ましくは45~75℃、より好ましくは50~70℃、及びより好ましくは55~65℃の範囲の温度で加熱することが好ましい。第2の代替法によれば、工程(H)で、ゼオライト材料を水溶液に添加し、及び混合物を、5~40℃、より好ましくは10~35℃、より好ましくは15~30℃、より好ましくは17~25℃、より好ましくは19~23℃、及びより好ましくは20~22℃の範囲の温度で処理することが好ましい。
【0069】
方法が、上記で開示したように工程(H)、(I)、任意に工程(J)、及び任意に工程(K)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えば混合物を工程(H)で処理する期間に関して、特別な制限は適用されない。工程(H)で、混合物を0.1~10時間、より好ましくは0.1~7時間、より好ましくは0.5~5時間、より好ましくは0.5~4.5時間、より好ましくは1~4時間、より好ましくは1~3.5時間、より好ましくは1.5~3時間、及びより好ましくは1.5~2.5時間の範囲の期間、処理することが好ましい。
【0070】
方法が、上記で開示したように少なくとも工程(A)、(B)、(C)、任意に工程(D)、及び任意に工程(E)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えば工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥を行う温度に関して、特別な制限は適用されない。工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥は、80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~140℃、及びより好ましくは115~130℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0071】
方法が、上記で開示したように、少なくとも工程(A)、(B)、(C)、任意に工程(D)、及び任意に工程(E)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えば工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥を行う期間に関して、特別な制限は適用されない。工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥は、1~120時間、好ましくは5~96時間、より好ましくは8~72時間、より好ましくは10~60時間、より好ましくは12~48時間、より好ましくは14~42時間、より好ましくは16~36時間、より好ましくは18~30時間、より好ましくは20~24時間、及びより好ましくは21~23時間の範囲の期間、行うことが好ましい。
【0072】
従って、特に好ましくは、方法が、上記で開示したように少なくとも工程(A)、(B)、(C)、任意に工程(D)、及び任意に工程(E)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥を、80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~140℃、及びより好ましくは115~130℃の範囲の温度で行い、及び工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥を、1~120時間、好ましくは5~96時間、より好ましくは8~72時間、より好ましくは10~60時間、より好ましくは12~48時間、より好ましくは14~42時間、より好ましくは16~36時間、より好ましくは18~30時間、より好ましくは20~24時間、及びより好ましくは21~23時間の範囲の期間、行う。
【0073】
方法が、上記で開示したように、少なくとも工程(F)及び(G)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えばか焼を行う工程(G)及び/又は(K)(工程(K)が該当する場合)でのか焼の温度に関して、特別な制限は適用されない。工程(G)及び/又は(K)(工程(K)が該当する場合)での、より好ましくは工程(G)でのか焼は、250~1,000℃、好ましくは300~900℃、より好ましくは350~850℃、より好ましくは400~800℃、より好ましくは450~750℃、より好ましくは500~700℃、及びより好ましくは550~650℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0074】
方法が、上記で開示したように、少なくとも工程(F)及び(G)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、条件、例えばか焼を行う工程(G)及び/又は(K)(工程(K)が該当する場合)でのか焼の期間に関して、特別な制限は適用されない。工程(G)及び/又は(K)(工程(K)が該当する場合)での、より好ましくは工程(G)でのか焼は、0.5~36時間、より好ましくは1~24時間、より好ましくは1.5~18時間、より好ましくは2~12時間、より好ましくは2.5~9時間、より好ましくは3~7時間、より好ましくは3.5~6.5時間、より好ましくは4~6時間、及びより好ましくは4.5~5.5時間の範囲の期間、行うことが好ましい。
【0075】
従って、特に好ましくは、方法が、上記で開示したように、少なくとも工程(F)及び(G)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(G)及び/又は(K)(工程(K)が該当する場合)での、より好ましくは工程(G)でのか焼を、250~1,000℃、好ましくは300~900℃、より好ましくは350~850℃、より好ましくは400~800℃、より好ましくは450~750℃、より好ましくは500~700℃、及びより好ましくは550~650℃の範囲の温度で行い、及び工程(G)及び/又は(K)(工程(K)が該当する場合)での、より好ましくは工程(G)でのか焼を、0.5~36時間、より好ましくは1~24時間、より好ましくは1.5~18時間、より好ましくは2~12時間、より好ましくは2.5~9時間、より好ましくは3~7時間、より好ましくは3.5~6.5時間、より好ましくは4~6時間、及びより好ましくは4.5~5.5時間の範囲の期間、行う。
【0076】
方法が、上記で開示したように、少なくとも工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の物理的及び/又は化学的性質に関して、特別な制限は適用されない。工程(B)で形成されたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料がゼオライトベータを含むことが好ましく、ここで好ましくは、工程(B)で形成されたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料がゼオライトベータである。
【0077】
方法が、上記で開示したように、少なくとも工程(A)及び工程(B)を含む有機テンプレートを用いない合成法を含む場合、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有される種結晶の物理的及び/又は化学的性質に関して、特別な制限は適用されない。工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有される種結晶は、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料、より好ましくはゼオライトベータ、及びより好ましくは本明細書に開示するBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造のための有機テンプレートを用いない合成法により得ることができる及び/又は得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を含むことが好ましい。
【0078】
本発明を、それぞれの従属関係及び後方参照によって示すように、次の実施形態及び実施形態の組み合わせによって、さらに例示する。特に、実施形態の組み合わせが範囲として言及される各例において、例えば「実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法」のような用語の文脈では、この範囲内のすべての実施形態が当業者に明示的に開示されることが意図されており、すなわち、この用語の文言は、「実施形態1、2、3、及び4のいずれか一項に記載の方法」と同義であると当業者には理解されることに留意されたい。よって本発明は、次の実施形態を含み、ここでこれらは、そこに定義されたそれぞれの相互関係によって示される実施形態の特定の組み合わせを含む。
【0079】
1. 芳香族化合物の製造方法であって、
(1) エチレン及び式(I)
【化4】
の化合物を含む混合物(M1)を調製する工程、
(2) 混合物(M1)を、触媒を含有する反応器に供給する工程であって、前記触媒がBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む工程、
(3) 混合物(M1)の少なくとも一部を反応させて式(II)
【化5】
の芳香族化合物を得るために、混合物(M1)を反応器内の触媒と接触させる工程、
(4) 式(II)の芳香族化合物を含有する反応混合物(M2)を反応器から回収する工程、
を含み、
式中、R及びRが互いに独立して、H、又は置換又は非置換の(C~C)アルキル、好ましくはH、又は置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくはH、又は置換又は非置換のメチル、及びより好ましくはH、又は非置換のメチルを表し、及び
触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、有機テンプレートを用いない合成法により得ることができる及び/又は得られる、方法。
【0080】
2. BEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、少なくとも次の反射を含むX線回折パターンを示し、
【表2】

ここで100%が、X線粉末回折パターンの20~45°の2θ範囲の最高ピークの強度を意味し、及び
BEA型骨格構造がSiO及びXを含み、Xは3価の元素である、実施形態1に記載の方法。
【0081】
3. R及びRが、互いに独立して、置換又は非置換の(C~C)アルキル、好ましくは置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくは置換又は非置換のメチル、より好ましくは非置換のメチルを表す、実施形態1又は2に記載の方法。
【0082】
4. RがHを表し、及びRが置換又は非置換の(C~C)アルキル、好ましくは置換又は非置換の(C~C)アルキル、より好ましくは置換又は非置換のメチル、及びより好ましくは非置換のメチルを表す、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
5. 式(I)の化合物が、置換又は非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくは、非置換のフラン、2-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、ここでより好ましくは、式(I)の化合物が、2-メチルフラン及び/又は2,5-ジメチルフラン、好ましくは2,5-ジメチルフランである、実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
6. 工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)中のエチレンの、式(I)の化合物に対するエチレン:式(I)の化合物のモル比が、0.01~1.5、好ましくは0.05~1、より好ましくは0.08~0.7、より好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.12~0.3、より好ましくは0.14~0.2、及びより好ましくは0.16~0.18の範囲である、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
7. 工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が、100質量%の式(I)の化合物に基づいて5質量%以下の水、好ましくは、100質量%の式(I)の化合物に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の水を含有する、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
8. 工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が、溶媒システムをさらに含有し、ここで溶媒システムが、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を好ましくは含み、より好ましくは溶媒システムがヘプタンを含み、より好ましくは溶媒システムがヘプタンからなる、実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
9. 工程(1)で調製し工程(3)で反応させる混合物(M1)が、式(I)の化合物の溶液を溶媒システム中に含有し、ここで溶媒システムにおける式(I)の化合物の濃度が、0.1~5M、0.5~3M、より好ましくは1~2.5M、より好ましくは1.3~2M、より好ましくは1.4~1.7M、及びより好ましくは1.5~1.6Mの範囲である、実施形態8に記載の方法。
【0088】
10. 工程(2)で混合物(M1)を供給し工程(3)で触媒を接触させる反応器におけるエチレンの分圧が、25℃で測定して0.5~15、好ましくは0.5~15MPa、より好ましくは1~10MPa、より好ましくは2~8MPa、より好ましくは2.5~6MPa、より好ましくは3~5MPa、及びより好ましくは3.5~4.5MPaの範囲である、実施形態1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
11. 式(I)の化合物及び/又はエチレン、好ましくは式(I)の化合物及びエチレンがバイオマスに由来する、実施形態1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
12. 工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料がH型である、実施形態1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
13. 工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiO に基づいて5質量%以下の金属AM、好ましくは、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属AMを含有し、ここで金属AMがNa、好ましくはNa及びK、より好ましくはアルカリ金属、及びより好ましくはアルカリ及びアルカリ土類金属を表す、実施形態1から12のいずれか一項に記載の方法。



【0092】
14. 工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて5質量%以下の金属TM、好ましくは、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属TMを含有し、
ここで金属TMがPt、Pd、Rh、及びIrを表し、及び好ましくは第3~12族の遷移金属元素を表す、実施形態1から13のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
15. 工程(2)及び工程(3)において、反応器内の触媒が、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて5質量%以下の金属AM、好ましくは、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属AMを含有し、
ここで金属AMが、Na、好ましくはNa及びK、より好ましくはアルカリ金属、及びより好ましくはアルカリ及びアルカリ土類金属を表す、実施形態1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
16. 反応器内に含有される触媒が、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて5質量%以下の金属TM、好ましくは、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属TMを含有し、
ここで金属TMがPt、Pd、Rh、及びIrを表し、及び好ましくは第3~12族の遷移金属元素を表す、実施形態1から15のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
17. 工程(2)及び工程(3)において、触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて、5質量%以下のリン、好ましくは、元素として計算され、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料の骨格構造中に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下のリンを含有する、実施形態1から16のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
18. 工程(2)及び工程(3)において、触媒が、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて5質量%以下のリン、好ましくは、元素として計算され、100質量%の触媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の金属AMを含有する、実施形態1から17のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
19. 工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触を、150~350℃、好ましくは200~330℃、より好ましくは230~320℃、より好ましくは250~315℃、より好ましくは270~310℃、より好ましくは280~305℃の範囲、及びより好ましくは290~300℃の範囲の温度で行う、実施形態1から18のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
20. 工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触の期間が、0.5~70時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは3~40時間、より好ましくは5~35時間、より好ましくは10~30時間、より好ましくは15~25時間、より好ましくは18~23時間の範囲、及びより好ましくは19~21時間の範囲である、実施形態1から19のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
21. 工程(3)における混合物(M1)の触媒との接触及び工程(4)における反応混合物(M2)の回収を、連続モード及び/又はバッチモードで、好ましくはバッチモードで行う、実施形態1から20のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
22. 方法を、連続モード及び/又はバッチモードで、好ましくはバッチモードで行う、実施形態1から21のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
23. 方法が、
(5) 式(II)の化合物を反応混合物(M2)から分離して、未反応の式(I)の化合物及び/又は未反応のエチレンを含有する混合物(M3)を得る工程
をさらに含む、実施形態1から22のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
24. 方法が、
(6) 未反応の式(I)の化合物及び/又は未反応のエチレンを含有する混合物(M3)を工程(1)に再循環させる工程
をさらに含む、実施形態23に記載の方法。
【0103】
25. 触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、10~200、好ましくは15~150、より好ましくは20~100、より好ましくは25~70、より好ましくは30~65、より好ましくは35~60、より好ましくは38~55、より好ましくは40~50、及びより好ましくは42~46の範囲のSiO:Xモル比を示し、ここで好ましくは、骨格構造のSiO:Xモル比が、元素分析又はゼオライト材料の29Si MAS NMRから、好ましくはゼオライト材料の29Si MAS NMRから決定される、実施形態1から24のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
26. 触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の3価の元素Xが、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、Xが好ましくはAlである、実施形態1から25のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
27. 触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、100~900μmol/g、好ましくは150~700μmol/g、より好ましくは200~650μmol/g、より好ましくは350~600μmol/g、より好ましくは380~550μmol/g、より好ましくは410~500μmol/g、より好ましくは430~470μmol/g、及びより好ましくは445~450μmol/gの範囲のブレンステッド酸部位(BA)の量を示し、
ここでブレンステッド酸部位の量が、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定される、実施形態1から26のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
28. 触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、100~350μmol/g、好ましくは110~300μmol/g、より好ましくは120~280μmol/g、より好ましくは140~260μmol/g、より好ましくは150~240μmol/g、より好ましくは160~220μmol/g、より好ましくは170~200μmol/g、及びより好ましくは180~190μmol/gの範囲のルイス酸部位(LA)の量を示し、
ここでルイス酸部位の量が、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定される、実施形態1から27のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
29. 触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が示すブレンステッド酸部位(BA)の量のルイス酸部位(LA)の量に対するBA:LA比が、0.5~8、好ましくは1~5、より好ましくは1.3~4、より好ましくは1.6~3.4、より好ましくは1.8~3、より好ましくは2.0~2.7、より好ましくは2.2~2.6、及びより好ましくは、2.3~2.5の範囲であり、
ここでブレンステッド酸部位及びルイス酸部位の量がそれぞれ、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH3-TPD)により、又はトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRにより決定される、実施形態1から28のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
30. ISO9277:2010により決定する触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料のBET表面積が、350~800m/g、好ましくは400~700m/g、より好ましくは430~650m/g、より好ましくは450~600m/g、より好ましくは460~550m/g、より好ましくは470~530m/g、より好ましくは480~520m/g、及びより好ましくは490~510m/gの範囲である、実施形態1から29のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
31. BJH法からの窒素吸着により決定する触媒に含まれるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の総細孔容積が、0.3~0.5cm/g、好ましくは0.31~0.45cm/g、より好ましくは0.32~0.42cm/g、より好ましくは0.33~0.4cm/g、より好ましくは0.34~0.39cm/g、より好ましくは0.35~0.38cm/g、及びより好ましくは0.36~0.37cm/gの範囲であり、
ここで総細孔容積は、好ましくは、DIN66134により決定される、実施形態1から30のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
32. 有機テンプレートを用いない合成法が、
(A) SiOの1種以上の源、Xの1種以上の源、及び種結晶を含む混合物を調製する工程であって、種結晶がBEA型骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む工程、
(B) BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を得るために、工程(A)で得られた混合物を結晶化させる工程
を含み、
ここでXが3価の元素であり、及び
工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物が、構造指向剤としての有機テンプレートを含有しない、実施形態1から31のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
33. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物が、元素として計算され、混合物に含有される100質量%のSiOに基づいて5質量%以下の炭素、好ましくは、元素として計算され、混合物に含有される100質量%のSiOに基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下、及びより好ましくは0.0001質量%以下の炭素を含有する、実施形態1から32のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
34. 工程(B)で得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料が、1種以上のアルカリ金属Mを含み、ここでMが、好ましくは、Li、Na、K、Cs、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはLi、Na、K、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属MがNa及び/又はK、より好ましくはNaである、実施形態32又は33のいずれかに記載の方法。
【0113】
35. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物中のモル比M:SiOが、0.05~5、好ましくは0.1~2、より好ましくは0.3~1、より好ましくは0.4~0.8、より好ましくは0.45~0.7、より好ましくは0.5~0.65、及びより好ましくは0.55~0.6の範囲である、実施形態34に記載の方法。
【0114】
36. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が、1種以上のシリケート、好ましくは1種以上のアルカリ金属シリケートを含み、ここでアルカリ金属が、好ましくはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属がNa及び/又はKであり、及びより好ましくはアルカリ金属がNaであり、ここでより好ましくは工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が、水ガラス、好ましくはナトリウムシリケート及び/又はカリウムシリケート、より好ましくはナトリウムシリケートを含む、実施形態32から35のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
37. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるSiOの1種以上の源が、1種以上のシリカ、好ましくは1種以上のシリカヒドロゾル及び/又は1種以上のコロドシリカ、及びより好ましくは1種以上のコロイダルシリカをさらに含む、実施形態32から36のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
38. Xが、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、Xが好ましくはAlである、実施形態32から37のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
39. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有されるXの1種以上の源が、1種以上のアルミネート塩、好ましくはアルカリ金属のアルミネートを含み、ここでアルカリ金属が、好ましくはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群から選択され、より好ましくはアルカリ金属がNa及び/又はKであり、及びより好ましくはアルカリ金属がNaである、実施形態32から38のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
40. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物のモル比SiO:Xが、1~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~50、より好ましくは15~40、より好ましくは20~30、より好ましくは23~25、及びより好ましくは23.5~24の範囲である、実施形態32から39のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
41. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含まれる種結晶の量が、混合物中の100質量%のSiOの1種以上の源に基づいて、SiOとして計算して、0.1~30質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~10質量%、より好ましくは1.5~5質量%、より好ましくは2~4質量%、及びより好ましくは2.5~3.5質量%の範囲である、実施形態32から40のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
42. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物が1種以上の溶媒をさらに含み、ここで前記1種以上の溶媒が、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水を含み、ここでより好ましくは、工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物中にさらに含まれる溶媒として、水、好ましくは脱イオン水を用いる、実施形態32から41のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
43. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物のモル比HO:SiOが、5~100、好ましくは10~50、より好ましくは13~30、より好ましくは15~20、及びより好ましくは17~18の範囲である、実施形態42に記載の方法。
【0122】
44. 工程(B)の結晶化が混合物の加熱を伴い、好ましくは加熱の温度が80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~140℃、及びより好ましくは115~130℃の範囲である、実施形態32から43のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
45. 工程(B)の結晶化を自己圧力下で、好ましくはソルボサーマル条件下で、及びより好ましくは水熱条件下で行う、実施形態32から44のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
46. 工程(B)で混合物を5~200時間、好ましくは20~160時間、より好ましくは60~140時間、及びより好ましくは100~130時間の範囲の期間で加熱する、実施形態44又は45に記載の方法。
【0125】
47. BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための有機テンプレートを用いない合成法が、
(C) 工程(B)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を単離する、好ましくは濾過による工程、及び
(D) 工程(B)又は(C)、好ましくは工程(C)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に洗浄する工程、及び/又は、
(E) 工程(B)、(C)又は(D)、好ましくは工程(D)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に乾燥させる工程
をさらに含み、
ここで、工程(C)及び/又は(D)及び/又は(E)を、任意の順序で行うことができ、及び
前記工程のうちの1つ以上を、好ましくは1回以上繰り返す、実施形態32から46のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
48. BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための有機テンプレートを用いない合成法が、
(F) 工程(C)、(D)、又は(E)で、好ましくは工程(E)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料に含有される1種以上のイオン性非骨格要素を、H及び/又はNH に対して、好ましくはNH に対して交換する工程;及び/又は、好ましくは
(G) 工程(C)、(D)、(E)、又は(F)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を乾燥及び/又はか焼する、好ましくは乾燥及びか焼する工程
をさらに含み、
ここで、工程(F)及び/又は(G)を、好ましくは1回以上、好ましくは1~3回、より好ましくは1回又は2回、及びより好ましくは1回繰り返す、実施形態47に記載の方法。
【0127】
49. BEA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための有機テンプレートを用いない合成法が、
(H) 工程(C)、(D)、(E)、(F)、又は(G)で、好ましくは工程(G)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、pHが最大でも5である水溶液で処理する工程、及び
(I) 工程(H)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を単離する、好ましくは濾過による工程、及び/又は、
(J) 工程(H)又は(I)で、好ましくは工程(I)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に洗浄する工程、及び/又は、
(K) 工程(H)、(I)、又は(J)で、好ましくは工程(J)で得られたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を、任意に乾燥及び/又はか焼する、好ましくは乾燥する工程
をさらに含み、
ここで、工程(I)及び/又は(J)及び/又は(K)を、任意の順序で行うことができ、及び
前記工程の1つ以上を、好ましくは1回以上、好ましくは1~3回、より好ましくは1回又は2回、及びより好ましくは1回繰り返す、実施形態47又は48に記載の方法。
【0128】
50. 工程(H)でゼオライト材料を処理するために使用する水溶液のpHが、-1.5~3、好ましくは-1.2~2、より好ましくは-1~1.5、より好ましくは-0.8~1、より好ましくは-0.6~0.7、より好ましくは-0.5~0.5、より好ましくは-0.3~0.3、より好ましくは-0.2~0.2、及びより好ましくは-0.1~0.1の範囲である、実施形態49に記載の方法。
【0129】
51. 工程(H)でゼオライト材料を鉱酸の水溶液を用いて処理し、ここで溶液中の鉱酸の濃度が0.05~4M、好ましくは0.1~3M、より好ましくは0.2~2.5M、より好ましくは0.4~2M、より好ましくは0.6~1.5M、より好ましくは0.8~1.2M、及びより好ましくは0.9~1.1Mの範囲である、実施形態49又は50に記載の方法。
【0130】
52. 鉱酸が、HF、HCl、HBr、HNO、HPO、HSO、HBO、HClO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはHCl、HBr、HNO、HSO、HClO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から、より好ましくはHCl、HNO、HSO、及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは鉱酸がHCl及び/又はHNO、好ましくはHNOである、実施形態51に記載の方法。
【0131】
53. 工程(H)でゼオライト材料を水溶液に添加し、及び混合物を、好ましくは30~100℃、より好ましくは35~90℃、より好ましくは40~80℃、より好ましくは45~75℃、より好ましくは50~70℃、及びより好ましくは55~65℃の範囲の温度で加熱する、実施形態49から52のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
54. 工程(H)で、ゼオライト材料を水溶液に添加し、及び混合物を、5~40℃、より好ましくは10~35℃、より好ましくは15~30℃、より好ましくは17~25℃、より好ましくは19~23℃、及びより好ましくは20~22℃の範囲の温度で処理する、実施形態49から52のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
55. 工程(H)で、混合物を0.1~10時間、好ましくは0.1~7時間、より好ましくは0.5~5時間、より好ましくは0.5~4.5時間、より好ましくは1~4時間、より好ましくは1~3.5時間、より好ましくは1.5~3時間、及びより好ましくは1.5~2.5時間の範囲の期間処理する、実施形態49から54のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
56. 工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥を、80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~140℃、及びより好ましくは115~130℃の範囲の温度で行う、実施形態47から55のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
57. 工程(E)及び/又は(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(E)、(G)及び(K)での乾燥を、1~120時間、好ましくは5~96時間、より好ましくは8~72時間、より好ましくは10~60時間、より好ましくは12~48時間、より好ましくは14~42時間、より好ましくは16~36時間、より好ましくは18~30時間、より好ましくは20~24時間、及びより好ましくは21~23時間の範囲の期間行う、実施形態47から56のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
58. 工程(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(G)でのか焼を、250~1,000℃、好ましくは300~900℃、より好ましくは350~850℃、より好ましくは400~800℃、より好ましくは450~750℃、より好ましくは500~700℃、及びより好ましくは550~650℃の範囲の温度で行う、実施形態48から57のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
59. 工程(G)及び/又は(K)での、好ましくは工程(G)でのか焼を、0.5~36時間、より好ましくは1~24時間、より好ましくは1.5~18時間、より好ましくは2~12時間、より好ましくは2.5~9時間、より好ましくは3~7時間、より好ましくは3.5~6.5時間、より好ましくは4~6時間、及びより好ましくは4.5~5.5時間の範囲の期間行う、実施形態48から58のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
60. 工程(B)で形成されたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料がゼオライトベータを含み、ここで好ましくは、工程(B)で形成されたBEA型骨格構造を有するゼオライト材料がゼオライトベータである、実施形態32から59のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
61. 工程(A)で調製し工程(B)で結晶化させる混合物に含有される種結晶が、BEA型骨格構造を有するゼオライト材料、好ましくはゼオライトベータ、及びより好ましくは実施形態32から59のいずれか一項に定義するBEA型骨格構造を有するゼオライト材料の製造のための有機テンプレートを用いない合成法により得ることができる及び/又は得られるBEA型骨格構造を有するゼオライト材料を含む、実施形態32から60のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
図面の説明
図1は、2,5-ジメチルフラン(2,5-DMF)が、エチレンのディールス-アルダー環化付加反応を介して、水の除去によりp-キシレンに転化する環化付加中間体となる反応スキームを示す。3-メチル-シクロペンタノンへの、及び1-n-プロピル-4-メチルベンゼンへのさらなるアルキル化の主要な副反応も示す。
【0141】
図2は、2-メチルフランが、エチレンのディールス-アルダー環化付加反応を介して、水の除去によりトルエンに転化する環化付加中間体となる反応スキームを示す。オリゴマーへの、環化付加物の異性化によるエポキシドへの、生成物のさらなるアルキル化を介する1-エチル-4-メチルベンゼンへの、及び二量化を介するオリゴマーへの主要な副反応も示す。
【0142】
図3は、フランが、エチレンのディールス-アルダー環化付加反応を介して、水の除去によりベンゼンに転化する環化付加中間体となる反応スキームを示す。二量化を介したオリゴマーへの、環化付加物の異性化を介したケトンへの、及びエチルベンゼンへのさらなるアルキル化の主要な副反応も示す。
【0143】
図4は、参考例1(Si/Al=7)、参考例2(Si/Al=22)、参考例3(Si/Al=36)、及び市販のゼオライトベータ(Si/Al=19)による、ゼオライトベータ触媒による2,5-ジメチルフラン及びエチレンの転化における反応生成物及び選択性を示す。この図では、転化率、p-キシレン及びアルキル化生成物1-n-プロピル-4-メチルベンゼンに対する選択性、及びp-キシレンの収率(「★」で示す)を%単位で示す。
【0144】
図5は、参考例2(Si/Al=22)による、ゼオライトベータ触媒上でのエチレン及び2,5-ジメチルフラン(2,5-DMF)、2-メチルフラン(2-MF)、及びフランそれぞれの転化における反応生成物及び選択性を示す。この図では、転化率、p-キシレン及び副生成物(アルキル化及び異性化された副生成物及びオリゴマー)に対する選択性、及びp-キシレンの収率(「★」で示す)を%単位で示す。
【実施例
【0145】
実験の項
気孔率の決定
表面積、細孔容積及び細孔径分布は、Micromeritics ASAP-2020分析器で、-196℃でのN吸着/脱着実験によって決定した。各測定の前に、サンプルを400℃及び10-3Pa未満で6時間、ガス放出した。
【0146】
温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH-TPD)及び酸性度の決定
温度プログラムされたNH脱着(NH-TPD)は、化学吸着分析器(FINETECH、Finesorb3010C、中国)を使用して実行し、TCDを使用して排出ガスを検出した。測定前に、サンプルを500℃のHe流で前処理し、所望の温度に冷却した。He中の5000ppmのNH(100ml/分)を100℃で0.5時間導入し、続いてHeを1.5時間パージした後、温度を100~700℃まで10℃/分の速度で上昇させた。
【0147】
温度プログラムされたNH脱着(TPD)プロファイルのデコンボリューション後、すべてのサンプルはそれぞれ、約200℃(低温)、250℃(中温)、及び340℃(高温)を中心とする3つの脱着ピークを示した。後者の2つのピークは、大まかにブレンステッド酸部位(BA)の強弱でのNH脱着に起因する可能性があり、一方で低温ピークはルイス酸部位(LA)でのNH脱着に起因する可能性があった。これに基づいて、ブレンステッド(BA)酸部位及びルイス(LA)酸部位のそれぞれの量、及びB/L比を、脱着シグナルの積分によって算出した。
【0148】
31P MAS NMR測定及びTMPOを使用した酸性度の決定
すべての固体マジックアングルスピニング(MAS)NMR実験は、Agilent DD2-500MHz分光計で行った。31P MAS NMRシングルパルススペクトルは、202.3MHz、速度14kHz、π/4励起パルス1.2μsで、リサイクル遅延10秒で測定された。化学シフトは85%のHPOを基準にした。
【0149】
様々なSi/Al比のH-ベータゼオライトの酸量及び強度をより深く理解するために、31P MAS NMR実験を行った。これは、トリメチルホスフィンオキシド(TMPO)をプローブ分子として使用する、酸性特性を調査するための効果的なツールである。酸部位の種類(ブレンステッド酸又はルイス酸)を区別できるだけでなく、31P-TMPO MAS NMRアプローチは、ゼオライト触媒のブレンステッド酸強度を識別するのにも有用であり、弱酸性、中酸性、強酸性から超酸性の全範囲を網羅することができる。
【0150】
酸性度の定量的測定では、すべてのサンプルの質量を測定し、より長い90秒のパルス遅延を除いて同じ条件で行った既知量の(NHHPOを測定することによってスペクトルを較正した。測定用サンプルの調製中のトリメチルホスフィンオキシド(TMPO、99%、アルファ)の吸着のために、サンプルを最初に真空下で20時間完全に脱水した。その後、無水CHCl中に溶解した既知量のTMPOを、N雰囲気で脱水した固体サンプルを含有する容器に導入し、約50℃で排気してCHCl溶媒を除去した。ゼオライトへのプローブ分子の均一な吸着を確実にするために、それらを165℃で1時間の熱処理にさらに供した。最後に、サンプルをNMRローターに移してから、Nグローブボックス内の気密エンドキャップで密封した。
【0151】
31P MAS NMRのデコンボリューション後、7つのピークが低磁場から高磁場に現れた。約43ppmの物理吸着TMPOに加えて、50~84ppmへの31P NMR化学シフトは、ブレンステッド酸部位又はルイス酸部位の化学吸着TMPOに起因した。より具体的には、約83、69、及び55~62ppmでのピークは、最強、中強度、及び最弱のブレンステッド酸部位に吸着されたTMPOにそれぞれ割り当てられ、65及び50ppmのピークは、ルイス酸部位に吸着されたTMPOに割り当てられる。前記分類に基づいて、ブレンステッド酸(BA)及びルイス(LA)酸部位の総量を定量化し、得られた値に基づいてB/L比を算出した。
【0152】
29Si MAS NMR測定
すべての固体マジックアングルスピニング(MAS)NMR実験は、Agilent DD2-500MHz分光計で行った。29Si MAS NMRスペクトルは、99.3MHzで6mmのMASプローブを使用して、速度4kHz、スキャン数400、リサイクル遅延4秒で回収した。化学シフトは、4,4-ジメチル-4-シラペンタンスルホネートナトリウム(DSS)を基準にした。
【0153】
それぞれの材料の骨格におけるSi/Alモル比は、対応する29Si MAS NMRスペクトルのデコンボリューションによって決定した。
【0154】
参考例1:有機テンプレートを用いないH-BEAの合成
12.693kgの蒸留水を、攪拌手段を備えた60Lのオートクレーブに入れた。0.955kgのNaAlOを5Lの蒸留水に溶解し、攪拌しながらオートクレーブ内の水に加えた。次に、21.447kgのナトリウム水ガラス(26質量%のSiO、8質量%のNaO、及び66質量%のHO)を攪拌しながら加えたところ、混合物の粘度が急激に増加し、その後再び減少した。次に、3.762kgのLudox(登録商標)AS40(40質量%のSiO及び60質量%のHO)を添加し、得られたゲルを200rpmで3時間撹拌した後、0.717kgのゼオライトベータ種の懸濁液(Zeolyst International社、Valley Forge、PA19482、米国から、商品名CP814Cで市販されており、CAS登録番号1318-02-1で、550℃で5時間か焼(か焼温度を得るため1℃/分の加熱上昇を使用した)することにより、H型に転化した)を、100rpmで撹拌しながら1Lの蒸留水中に加えた。このようにして得られた混合物は、アルミノシリケートゲルを含有しており、モル比が1.00のSiO:0.0422のAl:0.291のNaO:17.50のHOであった。反応混合物を、一定の加熱上昇を使用して、100rpmで撹拌しながら3時間で120℃の温度に加熱し、次いで、前記温度を同じ撹拌速度で60時間維持した。反応混合物を室温まで冷却した後、固体を濾過により分離し、蒸留水で繰り返し洗浄してから、120℃で16時間乾燥させて、Naゼオライトベータを得た。生成物のX線回折により、得られた結晶性材料のBEA型骨格構造が確認された。得られた白色結晶性材料は、ゼオライトベータ種材料(Zeolyst社からのCP814C)の結晶化度と比較して、18~25°の範囲の2°シータで93%の結晶化度を示した。
【0155】
1,000gの蒸留水を2Lの反応容器に入れた。次に、参考例1により得られた125gのアンモニウムニトレート及び125gのNa-ゼオライトベータを、漏斗を介して混合物に加え、次いで、これを125gの蒸留水ですすいだ。次に、得られた懸濁液を80℃に加熱し、2時間連続撹拌しながらこの温度に保った。固体を濾過し、次にフィルターケーキを、洗浄水の導電率が20マイクロシーメンス/cm未満になるまで蒸留水で洗浄した。フィルターケーキを120℃で一晩乾燥させて、138.5gのゼオライトベータをそのアンモニウムの形で得た。この手順を、参考例1からのさらなる125gのNa-ゼオライトベータを用いて繰り返し、さらなる131.5gのゼオライトベータをそのアンモニウムの形で得た。最後に、両方のバッチを500℃で5時間(加熱上昇2K/分)か焼する工程により、236gのゼオライトベータをそのH型で得た。
【0156】
1,000gの蒸留水を2Lの反応容器に入れた。次に、最初のアンモニウムイオン交換手順から得られた118gのアンモニウムニトレート及び118gのH-ゼオライトベータを、漏斗を介して混合物に加え、次いで、これを118gの蒸留水ですすいだ。次に、得られた懸濁液を80℃に加熱し、2時間連続撹拌しながらこの温度に保った。固体を濾過し、次にフィルターケーキを、洗浄水の導電率が10マイクロシーメンス/cm未満になるまで蒸留水で洗浄した。フィルターケーキを120℃で一晩乾燥させて、111gのゼオライトベータをそのアンモニウムの形で得た。この手順を、最初のアンモニウムイオン交換手順からの125gのアンモニウムニトレート及びさらなる125gのH-ゼオライトベータを用いて繰り返し、このようにして、さらなる110gのゼオライトベータをそのアンモニウムの形で得た。H-ゼオライトベータのサンプルを結合し、その65gのサンプルを、750℃で5時間(加熱上昇2K/分)のか焼工程により、59.5gのゼオライトベータをそのH型で得た。29Si MAS NMRスペクトルから決定されたH-ゼオライトベータのSi:Alモル比は7であった。
【0157】
参考例2:有機テンプレートを用いない合成から得られたH-BEAの脱アルミニウム
1,250mlの硝酸の1M溶液を、スターラーを備えたビーカーに入れた。参考例1から得られた25gのH-ゼオライトベータを加え、混合物を室温で2時間撹拌した。固体を濾別し、洗浄水の導電率が165マイクロシーメンス/cmになるまで蒸留水で洗浄した。次に、固体を120℃で一晩乾燥させて、23.7gのゼオライトベータを得た。ここで元素分析から、40:2.6のSi:Al質量比を得た。29Si MAS NMRスペクトルから決定された脱アルミニウム化ゼオライトベータのSi:Alモル比は22であった。
【0158】
参考例3:有機テンプレートを用いない合成から得られたH-BEAの脱アルミニウム
1,219mlの硝酸の1M溶液を、スターラーを備えたビーカーに入れた。参考例1から得られた24.38gのH-ゼオライトベータを加え、混合物を室温で5時間撹拌した。固体を濾別し、洗浄水の導電率が65マイクロシーメンス/cmになるまで蒸留水で洗浄した。次に、固体を120℃で一晩乾燥させて、21.4gのゼオライトベータを得た。ここで元素分析から、40:2.1のSi:Al質量比を得た。29Si MAS NMRスペクトルから決定された脱アルミニウム化ゼオライトベータのSi:Alモル比は36であった。
【0159】
実施例1:芳香族化合物の合成
エチレンを有する2,5-ジメチルフラン、2-メチルフラン、又はフランの触媒転化を、50mlのステンレス鋼オートクレーブで行った。反応前に、オートクレーブを窒素でパージし、次に0.3gのH-ベータゼオライトを反応器に入れ、所望の量の2,5-ジメチルフラン、2-メチルフラン又はフランを溶媒とオートクレーブに移した。より具体的には、ヘプタン中のそれぞれの化合物の1.56M溶液を用いた。次に、反応器をエチレンガスで加圧し、混合物を機械式スターラーを用いて1000rpmで攪拌して、システム内での物質移動が確実に容易になるようにし、最終温度まで加熱した。反応において、エチレンの2,5-ジメチルフランに対するモル比は0.18であり、エチレンの2-メチルフランに対するモル比は0.18であり、エチレンのフランに対するモル比は0.16であった。
【0160】
反応後、遠心分離によって液体生成物と固体触媒を分離した。生成物を、30mのHP-5キャピラリカラム及び水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所、GC-2014C)を使用して分析した。生成物は、標準化学物質の保持時間及び応答係数に基づいて識別し、外部標準として既知量のn-デカンを使用して定量した。生成物を、30mのHP-5MSカラムを備えたGC/MS(Agilent社、HP6890/5973MSD)によってさらに識別した。
【0161】
比較のため、有機テンプレートを介した合成(CP814C、NH 型、Zeolyst社)からのSi/Al=19の市販のゼオライトベータを、550℃で4時間のか焼によりH型に転化し、その後、比較試験実行に使用した。29Si MAS NMRスペクトルから決定された市販のゼオライトベータのSi:Alモル比は19であった。
【0162】
試験実験で使用したゼオライトベータ触媒の特性を表1に示す。特に、29Si MAS NMRスペクトルから決定したSi:Alのモル比、温度プログラムされたアンモニアの脱着(NH-TPD)によって、及びトリメチルホスフィンオキシドを使用した31P MAS NMRによってそれぞれ決定したブレンステッド酸部位(BA)の量のルイス酸部位(LA)の量に対するBA:LAの比、NH-TPDによるブレンステッド酸部位及びルイス酸部位の絶対量、及びBET表面積及び総細孔容積を示す。
【0163】
表1:試験実験で使用されたゼオライトベータ触媒の特性
【0164】
【表3】
【0165】
エチレンを有する2,5-ジメチルフランの反応における様々なゼオライトベータ触媒の比較試験の結果を図4に示す。反応は300℃で20時間行い、反応前に反応器をエチレンで加圧して、加熱前に4.0MPaの初期圧力を得た。このように結果から分かるように、全く予想外にも、有機テンプレートを用いない合成から得られるゼオライトベータ上での転化は、テンプレート合成から得られる市販のゼオライトベータよりも実質的に高いことが見出された。特に、結果から分かるように、非常に驚くべきことに、より高い転化率はSi/Alモル比に関連していないが、本発明の方法で使用する触媒の改善された結果は、それらが有機テンプレートを用いない合成法から得られるという事実から得られることが見出された。よって、それぞれ7及び22のSi/Alモル比を示す、有機テンプレートを用いない合成から得られたゼオライトベータサンプルを使用して得られた結果から分かるように、19の、すなわち前述のSi/Alモル比の間にあるSi/Alモル比を有するテンプレート合成から得られる市販のゼオライトベータよりも、両方とも実質的に高い転化率を示すことが見出された。
【0166】
前述の試験に加えて、参考例2からのゼオライトベータを、エチレンの2,5-ジメチルフラン、2-メチルフラン、及びフランとの反応にそれぞれ使用した。その結果を図5に示す。ディールス-アルダー環化付加反応及びその後の水の除去による所望の芳香族生成物への反応経路、及び主要な副生成物への反応経路を、図1~3に示す。図5に示す結果から分かるように、2,5-ジメチルフランの反応では、所望の生成物への転化率及び反応の選択性は、それぞれほぼ100%であるが、エチレンを2-メチルフラン及びフランとそれぞれ反応させると、転化率及び選択性が大幅に低下した。
【0167】
引用文献のリスト
- US2013/0245316A1
- Ni,L. et al.ChemSusChem2017,10,2394
- Chang,C.-C.et al.Green Chem.2014,16,585
- Cho,H.J.et al.ChemCatChem2017,9,398
図1
図2
図3
図4
図5