(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ポリアリーレンエーテルコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20240408BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C08G65/40
C08G81/00
(21)【出願番号】P 2021513884
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073784
(87)【国際公開番号】W WO2020053078
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マレッツコ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バッケス,レネ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522849(JP,A)
【文献】特表2017-525818(JP,A)
【文献】特表2015-533916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-65/48
C08G 81/00-81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)重合した状態で、
A)イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物、及び
B)少なくとも1種のジクロロジアリールスルホン、ジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む少なくとも1種の二官能性化合物を含む、少なくとも1つのユニット、
を含む少なくとも1つのブロック、
ii)重合した状態で、
C)少なくとも1種のポリアルキレンオキシド
を含む、少なくとも1つのブロック、
を含むポリアリーレンエーテルコポリマー。
【請求項2】
A)イソソルビド、
を含む、請求項1に記載のポリアリーレンエーテルコポリマー。
【請求項3】
C)少なくとも1種のポリエチレンオキシド
を含む請求項1又は2に記載のポリアリーレンエーテルブロックコポリマー。
【請求項4】
C)ポリアルキレンオキシドが、水酸化カリウム溶液を使用した電位差滴定で測定して、200~20000g/モルの数平均質量を有する、
請求項1~3の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマー。
【請求項5】
E)少なくとも1種の3官能性又は3官能性を超えるモノマー
を重合状態で含む、請求項1~4の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマー。
【請求項6】
E)1,1,1-トリスヒドロキシフェニルエタン
を含む、請求項5に記載のポリアリーレンエーテルコポリマー。
【請求項7】
i)一般式I
【化1】
(但し、記号t、q、Q、T、Y、Ar及びAr1の定義は以下のものである:
r: 0又は1、
t、q: 相互に独立して、0、又は1、又は2、又は3、
Q、T、Y: 相互に独立して、各場合において、化学結合、又は-O-、-S-、-SO2-、S=O、C=O、-N=N-、及び-CRaRb-から選ばれる基であり、ここでRa及びRbは、相互に独立して、各場合において、水素原子、又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、C3~C12-シクロアルキル、又はC6~C18-アリール基であり、及びQ、T及びYの少なくとも1つは、-SO2-又は-CO-である
Z: ISOSO、ISOMA又はISOIDから誘導される基、
Ar及びAr1: 相互に独立して、6~18個の炭素原子を有するアリーレン)
の少なくとも1つのユニットを重合状態で含む、少なくとも1つのブロック、
を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマー。
【請求項8】
a)イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物、及び
b)ジクロロジアリールスルホン、ジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む少なくとも1種の二官能性化合物を、
c)少なくとも1種のポリアルキレンオキシド、
と反応させることを含む、ポリアリーレンエーテルコポリマーを製造するための方法。
【請求項9】
モノマーを、少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒の存在下、共沸混合物形成化合物の不存在下に反応させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~7の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマー、又は請求項8又は9に記載の方法に従って得られるポリアリーレンエーテルコポリマーを、コーティング、フィルム、ファイバー、フォーム、薄膜、又は成形物品の製造に使用する方法。
【請求項11】
薄膜の製造に使用するものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~7の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマーの少なくとも1
種を含む、薄膜製造用のドープ溶液。
【請求項13】
請求項1~7の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマーの少なくとも1
種を含むファイバー。
【請求項14】
請求項1~7の何れか1項に記載のポリアリーレンエーテルコポリマーの少なくとも1
種を含む薄膜。
【請求項15】
請求項
14に記載の薄膜を少なくとも1種含む物品。
【請求項16】
請求項
14に記載の薄膜、又は請求項
15に記載の物品を水、体液、又は食品製造における液体との接触に使用する方法。
【請求項17】
請求項
14に記載の薄膜、又は請求項
15に記載の物品を、ガスの分離のために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンヒドロ糖から誘導されるジオールに基づく1つ以上のブロック、及び1つ以上のポリアルキレンオキシドブロックを含むポリアリーレンエーテルスルホン又はケトンコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンエーテルスルホン及びポリアリーレンエーテルケトンは、高機能熱可塑性プラスチックとして分類されている。幾つかの科学的な刊行物では、バイオベースのジオールから誘導されるポリアリーレンエーテルスルホン及びポリアリーレンエーテルケトンの製造と特性が開示されている(非特許文献1:Kricheldorf et al.J Polm.Sci.Part A:Polymer Chemistry,Vol33,2667-2671(1995);非特許文献2:Chatti et al.High Performance Polymers,21:105-118,2009;非特許文献3:Abderrazak et al. Marcromol.Chem.Phys.2013,214,1423-1433;非特許文献4:Belgacem et al.Designed Monomers and Polymers,2016,Vol19,No.3,248-255)。1,4;3,6-ジアンヒドロヘキシトールから誘導されるリアリーレンエーテルスルホンも特許文献1(WO2014/072473)及び特許文献2(US2017/0240708A1)に開示されている。改良された溶融安定性を有し、及び1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンから誘導される10質量%以下のユニットを含む、20質量%(wt%)以下のポリアリーレンエーテルスルホンを含む組成物が、特許文献3(US7163987B2)から公知である。
ポリアルキレンオキシドユニットを含むポリアリーレンエーテルスルホンは例えば、非特許文献5(Hancock,Macromolecules 1996,29,7619)及び特許文献4(EP2739668)から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2014/072473
【文献】US2017/0240708A1
【文献】US7163987B2
【文献】EP2739668
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kricheldorf et al.J Polm.Sci.Part A:Polymer Chemistry,Vol33,2667-2671(1995)
【文献】Chatti et al.High Performance Polymers,21:105-118,2009
【文献】Abderrazak et al. Marcromol.Chem.Phys.2013,214,1423-1433
【文献】Belgacem et al.Designed Monomers and Polymers,2016,Vol19,No.3,248-255)
【文献】Hancock,Macromolecules 1996,29,7619
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示が取り込む問題は、少なくとも1つの-SO2-又は-CO-基を含み、及びイソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物から誘導される新しいポリアリーレンエーテルを提供することにある。更に、上述したポリアリーレンエーテルは、高分子量及び高い親水性を有するべきである。動機付けの一つは、薄膜の製造に適した新しいポリアリーレンエーテルを提供することにあった。高い透過性を組合せた良好な分離特性を有する薄膜が、特に水、体液、又は食品製造における液体と接触させて使用するために、目的として定められた。更に、上述した新しいポリアリーレンエーテルを良好な収率で、工業的に受け入れ可能な反応時間内で製造するための方法も提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、
i)重合した状態で、
A)イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物、及び
B)少なくとも1種のジクロロジアリールスルホン、又はジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む少なくとも1種の二官能性化合物、及び
を含む少なくとも1つのブロック、
ii)重合した状態で、
C)少なくとも1種のポリアルキレンオキシド
を含む、少なくとも1つのブロック、
を含むポリアリーレンエーテルコポリマーが開示される。
【0007】
更に、所定の方法が、ポリアリーレンエーテルコポリマーを製造するために開示されているが、上記方法は、a)イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物、及びb)ジクロロジアリールスルホン、ジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む少なくとも1種の二官能性化合物を、c)少なくとも1種のポリアルキレンオキシド、と反応させることを含むものである。上述したポリアリーレンエーテルコポリマー、対応してこのようにして得られたポリアリーレンエーテルコポリマーの少なくとも1種を、コーティング、ファイバー、フィルム、フォーム、薄膜、又は成形物品の製造に使用する方法、及び上述したポリアリーレンエーテルコポリマー、対応してこのようにして得られたポリアリーレンエーテルコポリマーの少なくとも1種を含むファイバー又は薄膜も開示されている。更に、ポリアリーレンエーテルコポリマーを含む薄膜を製造するためのドープ溶液が開示されている。更に、上述したポリアリーレンエーテルコポリマーを含むファイバー及び薄膜が開示されている。更に、上記薄膜を少なくとも1つ含む物品が開示されている。更に、上記薄膜を水、体液、又は食品製造における液体との接触に使用する方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以降において、「少なくとも1つ(1種)」は通常、1つ又は2つ以上、例えば3つ又は4つ又は5つ又はこれを超えたものを意味し、ここで「超える」は、複数のもの又は数えることができないものを意味しても良い。例えば、「少なくとも1つ」は、1つ又は2以上の混合を意味しても良い。化学化合物と結び付けて使用する場合、「少なくとも1つ(1種)」は、1つ又は化学的性質である化学構造が異なる2つ又はこれを超える化学化合物が記載されているという意味で使用される。
【0009】
この技術分野の当業者は、任意の(如何なる)ポリマー、これが単ポリマーであっても、コポリマーであっても、本来典型的には、その構造、例えば鎖長さ、分岐の程度、又は末端基の性質で異なっているポリマー性個体の混合であると理解する。この事実は、分布(distribution)としてしばしば記載される。従って以降、ポリマーへの付加語としての「少なくとも1つ(1種)」は、異なるタイプのポリマーが包含されても良く、各タイプが上述したような鎖の分布を有していても良いことを意味する。
【0010】
この技術分野の当業者は更に、如何なるポリマーもモノマー又はオリゴマー又はこれらの混合物から誘導され、そしてポリマーはこれらを反応した、重合状態で含むことを理解する。
【0011】
ここで、ブロック又はポリアルキレンオキシドがアルキレンオキシド又はテトラヒドロフランを含むと記載される場合、このことは、上述したポリアルキレンオキシドは、上述したアルキレンオキシド又はテトラヒドロフランを重合状態、すなわち開環状態で含むという意味に理解される。
【0012】
以下において
化合物Aは、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物であり;
化合物Bは、少なくとも1種のジクロロジアリールスルホン、ジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む、少なくとも1種の二官能性化合物であり;
化合物Cは、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドであり、
化合物Dは、2つのヒドロキシ基を有し、及び化合物Aでなく、及び化合物Cでない、少なくとも1つの化合物であり、
化合物Eは、少なくとも1つの3官能性又はこれを超える官能性化合物であり;
化合物Fは、重合性の鎖に含まれる反応性基に対して反応性である1つの官能基を有する、少なくとも1つの化合物であり、
出発化合物は、重合される前の化合物A、B、C及び存在する場合には、化合物D及び/又は化合物Eであり、
溶媒Lは、少なくとも1種の溶媒である。
【0013】
本開示で有用な適切なポリアリーレンエーテルコポリマーは、化合物A及び化合物Bを含む、少なくとも1つ(1種)のブロックi)を含む。
【0014】
化合物A
化合物Aは、イソソルビド(isosorbide)、イソマンニド(isomannide)、イソイジド(isoidide)、又はこれらの混合物である。化合物Aは、この技術分野の当業者にとって公知である。イソソルビド、イソマンニド、及びイソイジドは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのファミリーに属し、及び式I:
【化1】
のものである。
【0015】
所望の特性、例えばガラス遷移温度及びその調節(modulation)に依存して、ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)に化合物Aとして、上述したジアンヒドロヘキシトールの1つ又は2つの混合物又は3つの全ての混合物を含んでも良い。従って、例えば、これはイソソルビド及びイソマンニド、イソソルビド及びイソイジド、又はイソマンニド及びイソイジドを含んでも良い。イソソルビド、イソマンニド、又はイソイジドのみが含まれることが好ましくても良い。例えば、市販されており、及びポリアリーレンエーテルコポリマーに与えるであろう熱的安定性の理由で、イソソルビドが最も好ましいものであっても良い。反応の容易性の点で、イソイジドが有利性を有していても良い。
【0016】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)に、化合物Aを唯一のジオールとして含んでも良い。更に、少なくとも1つのブロックi)が、二官能性であり、及び2個のヒドロキシ基を有する、化合物Aではなく、及び化合物C(化合物D)ではない、及びポリアリーレンエーテル中に重合状態で含まれるジオールである、少なくとも1つの更なる化合物から誘導されることも可能である。少なくとも1つのブロックi)が、化合物A、C、D及びEの出発材料の合計質量に基づいて、化合物Aの5~100モル%から誘導されることも可能であって良い。少なくとも1つのブロックi)が、化合物A、C、D及びEの出発材料の合計質量に基づいて、25~100モル%、最も好ましくは50~100モル%の化合物Aから誘導されることが更に好ましいものであっても良い。特に、ポリアリーレンエーテルコポリマーが水、食品製造又は医療分野における液体との接触用の製品を製造するために、より特定的には、上記分野における中空ファイバー又は薄膜を製造するために求められている場合、これは、化合物Aを唯一のジオールとして、少なくとも1つのブロックi)中に含むことが有利であっても良い。
【0017】
少なくとも1つのブロックi)は、重合した形態で、ジクロロジアリールスルホン、ジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む、少なくとも1種の二官能性化合物を含む(化合物B)。
【0018】
化合物B
化合物Bは公知であり、又はそれ自体が公知でない場合、これはこの技術分野の当業者にとって公知の方法で調製されても良い。化合物Bは、二官能性化合物である。「二官能性」は、この化合物が、化合物A、C 及び存在する場合には、D及び/又はEに対して反応性の官能基を2つ有していることを意味する。通常、化合物Bは、これが芳香族求核置換内で十分に反応性であれば、如何なる基本的な限定を受けない。
【0019】
化合物Bは、少なくとも1種のジクロロジアリールスルホン又はジクロロジアリールケトン又はこれらの混合物を含む。更に、化合物Bは例えば、二官能性であり、及び-S-、S=O、-N=N-、及び/又は-CRaRb-基を含むポリアリーレンエーテルスルホンコポリマー又はポリアリーレンエーテルケトンコポリマーの調製を可能とする化合物を少なくとも1種含むことができる。
【0020】
ポリアリーレンエーテルコポリマーが、ポリアリーレンエーテルケトンコポリマーである場合、化合物Bは、少なくとも1種の、例えば1種の又は1種を超えるジクロロジアリールケトン、例えば1~3種のジクロロジアリールケトンであることができ、ここで1又は2種のジクロロジアリールケトン、特に1種のジクロロジアリールケトンが好ましいものであっても良い。化合物Bが、少なくとも50モル%の、少なくとも1種のジクロロジアリールケトン、及び50モル%未満の、少なくとも1種のジクロロジアリールスルホンの混合物であることも可能である。例えば、化合物Bは、50モル%から、例えば60モル%~80モル%、又はそれ以上、例えば90モル%の少なくとも1種のジクロロジアリールケトンの混合物であることが可能であり、及び残余は少なくとも1種のジクロロジアリールスルホン、例えば1~3種のジクロロジアリールスルホンであることが可能であり、少なくとも1種のジクロロジアリールスルホンは、例えば1又は2種、特に1種であることが好ましいものであっても良い。
【0021】
ポリアリーレンエーテルコポリマーがポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーである場合、化合物Bは、少なくとも1種の、例えば1種又は1種を超えるジクロロジアリールスルホン、例えば1~3種のジクロロジアリールスルホンであることが可能であり、ここで1又は2種のジクロロジアリールスルホン、特に1種のジクロロジアリールスルホンが好ましいものであっても良い。化合物Bが、少なくとも50モル%の少なくとも1種のジクロロジアリールスルホン、及び50モル%未満の少なくとも1種のジクロロジアリールケトンの混合物であることも可能である。例えば、化合物Bは、50モル%から、例えば60モル%~80モル%、又はそれ以上、例えば90モル%の少なくとも1種のジクロロジアリールスルホンの混合物であることが可能であり、及び残余は少なくとも1種のジクロロジアリールケトン、例えば1~3種のジクロロジアリールケトンであることが可能であり、少なくとも1種のジクロロジアリールケトンは、1又は2種、特に1種であることが好ましいものであっても良い。
【0022】
ポリアリーレンエーテルコポリマーがポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーである場合、適切な化合物Bは特に、少なくとも1種(1種が好ましいものであっても良い)のジクロロジフェニルスルホン、例えば4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジブロモジフェニルスルホン、ビス(2-クロロフェニル)スルホン、2,2’-ジクロロジフェニルスルホン、2,2’-ジフルオロジフェニルスルホンであることが可能であり、特に好ましいものは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンであることが可能である。PESUタイプ(以下参照)のポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーが求められる場合、化合物Bは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)であっても良い。
【0023】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)に加え、少なくとも1つのポリアルキレンオキシドを重合状態で含む少なくとも1つのブロックii)(化合物C)を含む。少なくとも1つのブロックii)が、2種以上のポリアルキレンオキシドの混合物を重合状態で含んでも良い一方で、これが1つのポリアルキレンオキシドを含むことが好ましいものであっても良い。化合物Cに加え、少なくとも1つのブロックii)が、更なる成分を含んでも良い。上記少なくとも1つのブロックii)は典型的には重合状態で、実質的に化合物Cで構成され、及びこのことが好ましいものであっても良い。
【0024】
化合物C
化合物Cは通常、ジオールであることが可能である。化合物Cは通常、オキシアルキレンユニットから実質的に成ることができる。オキシアルキレンユニットは以降、アルキレンオキシドユニットと記載されても良い。オキシアルキレンユニットは、原則として公知のように、一般式-R1-O-のユニットである。この式中、R1は二価の脂肪族炭化水素基で、この基は任意に、少なくとも1つの更なる置換基を有していても良い。基R1上の、上述した少なくとも1つの置換基は特に、1つ以上のO含有基、例えば1つ以上のOH基を含んでいても良い。化合物Cは当然、2つ以上の異なるオキシアルキレンユニットも含んでいても良い。
【0025】
オキシアルキレンユニットは特に、-(CH2)2-O-、-(CH2)3-O-、-(CH2)4-O-、-CH2-CH(R2)-O-、-CH2-CHOR3-CH2-O-であっても良く、ここで、R2は、アルキル基、特に、C1~C24アルキル、又はアリール基、特に、フェニルであり、及びR3は、水素又はC1~C24アルキルから成る群から選ばれる群である。
【0026】
化合物Cは、更なる構造ユニット、例えばエステル基、カーボネート基、又はアミノ基を含んでいても良い。これらは追加的に、ポリアルキレンオキシドの重合の開始に使用される1種の開始分子又は複数種の開始分子、又はこれらの一部(断片)を含んでいても良い。例は、末端基R2-O-で、ここでR2は、上記に定義したものである。
【0027】
特性を微細に調整するために、化合物Cが、エチレンオキシドユニット-(CH2)2-O-及び/又はプロピレンオキシドユニット-CH2-CH(CH3)-O-を、主たる成分として含み、この一方で、高級アルキレンオキシドユニット、すなわち、炭素原子を3つを超えて、特に4つを超えて有するものが、少量でのみ存在することが好ましいものであっても良い。化合物Cは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドユニットを含むランダムコポリマー、勾配コポリマー、交互コポリマー、又はブロックコポリマーであっても良い。高級アルキレンオキシドユニットの量は通常、化合物Cの分子量(Mn)に基づいて、10質量%を超えることがなく、好ましくは5質量%を超えることがない。化合物Cは、好ましくは、化合物Cの分子量(Mn)に基づいて、少なくとも50質量%のエチレンオキシドユニットを含んでも良く、好ましくは少なくとも75質量%、及びより好ましくは少なくとも90質量%のエチレンオキシドユニットを含んでも良い。化合物Cが純粋なポリオキシエチレンであることが特に極めて好ましい。
【0028】
化合物Cは、原則として公知の態様で得られても良く、又はそれ自体公知の方法を使用して得られても良く、例えば少なくとも1種のアルキレンオキシド及び/又は少なくとも3個の炭素原子を有する環式エーテル及び任意に少なくとも1種の更なる成分を重合させることによって得られても良い。これらは追加的に、少なくとも1種のジアルコール及び/又はポリアルコール、適切な開始剤(starter)及び任意に、少なくとも1種の更なるモノマー性成分を重縮合することによって調製されても良い。
【0029】
少なくとも1種の適切なアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2,3-ブテンオキシド、2-メチル-1,2-プロピレンオキシド(イソブテンオキシド)、1-ペンテンオキシド、2,3-ペンテンオキシド、2-メチル-1,2-ブテン-オキシド、3-メチル-1,2-ブテンオキシド、2,3-ヘキセンオキシド、3,4-ヘキセンオキシド、2-メチル-1,2-ペンテンオキシド、2-エチル-1,2-ブテンオキシド、3-メチル-1,2-ペンテンオキシド、デセンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、スチレンオキシドを含み、又は工業的に入手可能なラフィネート流の酸化物の混合物から形成される。少なくとも1種の環式エーテルの例は、テトラヒドロフランを含む。熟練工は、化合物C及び従って、ブロックii)及びポリアリーレンエーテルコポリマーそれぞれの所望の特性に従って、モノマー及び更なる成分の中から適切な選択を行う。ここで化合物Cの所望の特性の一つは、典型的には、親水性である。
【0030】
化合物Cは、分岐していても良く、又は星形であっても良い。この種の化合物Cは、少なくとも1種の、少なくとも3つのアームを有する開始分子を使用することによって得ることができても良い。適切な開始剤の例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリチリトール、又はエチレンジアミンを含む。
【0031】
化合物Cは、アルキレンオキシドユニットの平均数(number average)が少ないポリアルキレンオキシドであっても良い。所望の特性に依存して、アルキレンオキシドユニットの平均数が高いことも可能である。ポリアルキレンオキシドが、200~20000g/molの数平均質量(number average weight)を有することが好ましいものであっても良い。ポリアルキレンオキシドの数平均分子量は、水酸化カリウム溶液を使用した電位差滴定によって測定可能である。
【0032】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは任意に、化合物Dを含んでも良く、これは化合物Aではなく、及び化合物Cではなく、及び2つのヒドロキシ基を有する少なくとも1つの化合物である。
【0033】
化合物D
化合物Dは、ポリアルキレンオキシドではない、脂肪族化合物であることが可能であり、又は化合物Dは、芳香族化合物であることが可能である。通常、化合物Dは好ましくは、芳香族化合物である。これは例えば、ジヒドロキシアリーレンスルホン、又はジヒドロキシアリーレンケトンであっても良い。以下の化合物は、化合物Dの例であるが、これらは好ましいものであっても良い:
- ジヒドロキシベンゼン、特にヒドロキノン及びレゾルシノール;
- ジヒドロキシナフタレン、特に1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、及び2,7-ジヒドロキシナフタレン;
- ジヒドロキシビフェニル、特に4,4’-ビフェニル、及び2,2’-ビフェノール;
ビスフェニルエーテル、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、及びビス(2- ヒドロキシフェニル)エーテル;
- ビスフェニルプロパン、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;
- ビスフェニルメタン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;
- ビスフェニルスルホン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン;
- ビスフェニルスルフィド、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド;
- ビスフェニルケトン、特にビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン;
ビスフェニルヘキサフルオロプロパン、特に2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン;及び
- ビスフェニルフルオレン、特に9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン。
【0034】
化合物Dは、好ましくは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、特に2,7-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ビフェノール、又はこれらの混合物であっても良い。所定の局面下では、化合物Dがジヒドロキシジフェニルスルホンであることが有利なものであっても良い。
【0035】
化合物Dとして、2種以上のジオールの混合物がポリアリーレンエーテルコポリマー中に含まれても良い一方で、1種類のみが含まれることが好ましいものであっても良く、これはヒドロキノン、又は4,4’-ビフェノールであることが最も好ましいものであっても良い。
【0036】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1種の3官能性又はこれを超える官能性の化合物(化合物E)を含むことが可能である。
【0037】
化合物E
ポリアリーレンエーテルコポリマー中に含まれる、少なくとも1種の3官能性、又はこれを超える官能性の化合物(化合物E)は公知であり、又はそれ自体が公知でない場合には、この技術分野の当業者にとって公知の方法によって調製することができる。化合物Eは、分岐したポリアリーレンエーテルコポリマーをもたらすことが可能である。従って、これは分岐剤であっても良い。開示したポリアリーレンエーテルコポリマーは分岐可能である一方で、これは典型的には架橋されていない。架橋されている場合には従って、その伸長範囲は少なく、又は非常に少ない。化合物Eは、モノマー又はオリゴマーであっても良い。化合物Eは、3つ以上の官能基を有する。官能基の数、及びその性質及び化合物Eの量は、ポリアリーレンエーテルコポリマーの分岐に影響を及ぼし得る。少なくとも1種の化合物Eが、3~6個のこのような官能基を有することが、しばしば好ましい。分岐の程度が低いポリアリーレンエーテルコポリマーが目標とされる場合には、化合物Eが、3又は4個の官能基を有していることがより好ましいものであっても良い。少ない程度の分岐が所望される場合、少なくとも1種の化合物Eが、3官能性化合物であることが特に有利であることが可能である。官能基によって、及びその性質に依存して、少なくとも1種の3官能性、又は3官能性を超える化合物は、化合物A、B、C、及び存在する場合には、化合物Dと反応することが可能である。
【0038】
典型的な、適切な官能基はヒドロキシ基のもので、及びポリアリーレンエーテルコポリマーの製造条件下で置換が可能なものである。官能基の反応性を変えることによって分岐を制御することを所望する場合、このことが有利であることが可能である。化合物Eの全ての官能基が同一であることも可能である。これらは、等しい反応性を示しても良いが、しかし化合物Eの化学的構造に依存して、上述した官能基は、重合反応の間、その反応性で異なっていても良い。ヒドロキシ基、及び/又は塩素族が好ましいものであっても良い。3~6個、特に3又は4個のヒドロキシ基及び/又は塩素族を有する化合物Eが最も好ましいものであっても良い。化合物Eが3個のヒドロキシ基を有すること、従ってこれがトリオールであることが極めて好ましいものであっても良い。
【0039】
化合物Eは、芳香族化合物であることが可能である。ポリアリーレンエーテルコポリマーが、耐高温性、及び/又は殺菌性コーティング、フィルム、ファイバー、フォーム、薄膜又は成形物品の製造用に意図される場合、芳香族化合物が好ましいものであっても良い。
【0040】
3個又は3個を超える数のヒドロキシ基を含む芳香族化合物のタイプの化合物Eとして、以下のものを記載しても良い:フロログリシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシ-5-フェニル)-ヘプテン-2(三量体イソプロペニルフェノール)、4,6-ジメチル-2,4,6-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン(水素化三量体イソプロペニルフェノール)、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゼン、1,1,1-トリス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1,1-トリス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、テトラ-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、1,4-ビス-(4’,4”-ジヒドロキシトリフェニル)-メチル]-ベンゼン及び2,2-ビス-[4,4’-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキシル]-プロパン。不飽和o位を有するp-アルキル置換モノフェノールの、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド生成化合物との反応により調製することが可能な3価又は3価を超えるフェノールも適切なものであっても良く、これは例えば、p-クレソール及びホルムアルデヒドからのトリスフェノール、2,6-ビス-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノールである。適切な芳香族化合物の他の例は、2,6-ビス-(2’-ヒドロキシ-5’-イソプロピル-1―ベンジル)-4-イソプロフェニル1-フェノール、及びビス-ヒドロキシ-3-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル-5-メチルフェニル)-メタンを含む。
【0041】
1,1,1-トリスヒドロキシフェニルエタン(THPE)が、芳香族化合物の局面から特に興味あるものであっても良く、これは、ポリアリーレンエーテルコポリマーの製造の条件下での反応が容易であり、及び工業的入手が容易である。THPEは、化合物A及び化合物Bの間の重合の発達を促進させることが可能であり、及びこの理由で、非常に有利であっても良い。更に、例えば水、又は食品製造における液体との接触において健康安全の局面が重要である分野、又は医療分野において使用するためのポリアリーレンエーテルコポリマーにおいて、THPEが有利に使用されても良い。
【0042】
分岐の質を変化させる目的で、3官能性、又は3官能性を超える異なる官能性の化合物の混合物をポリアリーレンエーテルコポリマー中に含めることが可能である。従って、例えば、2~5種、例えば2~4種の3官能性、又は3官能性を超える官能性の化合物を含めることが可能である。2種又は3種の3官能性、又は3官能性を超える化合物を含めることが好ましいものであって良い。工業的な製造の複雑さの観点から、2種の3官能性、又は3官能性を超える化合物、特に1種のみの3官能性、又は3官能性を超える化合物がそれぞれ含まれることがより好ましいものであっても良い。
【0043】
化合物Eの量は、変化することができる。もし、その量が非常に少ない場合、所定の用途のために、通常ではポリアリーレンエーテルコポリマーの分子量は非常に低い範囲のままであっても良い。更に、効率の高い工業的製造のために、分子量形成は速く行われなくても良い。多過ぎる量は、ゲル状のポリアリーレンエーテルコポリマーの形成をもたらしても良い。このことは、ポリアリーレンエーテルコポリマーの適用性の範囲という局面からは、望ましいものでは無くても良い。従って、ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)に通常、(もし化合物Eが存在するのであれば、)ポリアリーレンエーテルコポリマー中に含まれる化合物A、C、D及びEの合計量に基づいて、0.5~5モル%の化合物E、例えば0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、又は5モル%の化合物Eを含むことが有利である。ここで、これが、化合物A、C、D及びEの合計量に基づいて、0.5~4モル%の化合物Eを含むことが好ましいものであっても良い。これが、ポリアリーレンエーテルコポリマー中に含まれる化合物A、C、D及びEの合計量に基づいて、0.1~3モルの化合物Eを含むことが最も好ましいものであっても良い。
【0044】
ポリアリーレンエーテルコポリマー
ポリアリーレンエーテルコポリマーは、ポリアリーレンエーテルケトンコポリマー又はポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーである。通常、ポリアリーレンエーテルケトンコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)に、アリーレン基を結合する-O-及び-CO-基を含む。ポリアリーレンエーテルケトンコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)中に、O-及び-CO-基のみを含んでも良い。これが、アリーレン基を結合する更なる基を含むことも可能である。このようなアリーレン基を結合する更なる基の例は、-S-、-NN-又はアルキレン基である。ここで、所定量、好ましくは少量の-SO2-基、又は所定量、好ましくは少量の-SO2-基及び少なくとも1種の更なる基を含むポリアリーレンエーテルケトンコポリマーが開示内容に含まれる。この場合、少なくとも1つのブロックi)は、-SO2-基に置換可能な、50モル%未満の理論的に可能な-CO-基を含む。通常、少なくとも1つのブロックi)内に存在する、約30~40モル%以下の理論的に可能な-CO-基が、-SO2-基によって置換される。少なくとも1つのブロックi)に存在する場合には、少なくとも1つのブロックi)に存在する、理論的に可能な-CO-基の、典型的には1モル%以上、好ましくは5モル%以上が-SO2-基によって置換可能である。従って、例えば、ポリアリーレンエーテルケトンコポリマー内に存在する1~20モル%の理論的に可能な-CO-基が、少なくとも1つのブロックi)内で、-SO2-基によって置換可能である。
【0045】
同様に、ポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)内に、アリーレン基を結合する-O-及び-SO2-基のみを含んでも良い。これが、アリーレン基を結合する更なる基を含むことも可能である。-S-、-NN-又はアルキレン基等の基が、その例として記載されても良い。ここで、所定量の-CO-基、又は所定量の-SO2-基及び少なくとも1種の更なる基を、少なくとも1つのブロックi)に含むポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーが開示内容に含まれる。この場合、少なくとも1つのブロックi)内に存在する、50モル%未満の理論的に可能な-SO2-基が、-CO-基によって置換される。通常、少なくとも1つのブロックi)内に存在する、約30~40モル%以下の理論的に可能な-SO2-基が、-CO-基によって置換される。少なくとも1つのブロックi)に存在する場合には、ポリアリーレンエーテルスルホン内に存在する、理論的に可能な-SO2-基の、典型的には1モル%以上、好ましくは5モル%以上が-CO-基によって置換されても良い。従って、例えば、ポリアリーレンエーテルスルホン内に存在する1~20モル%の理論的に可能な-SO2-基が、少なくとも1つのブロックi)内で、-CO-基によって置換可能である。
【0046】
ポリアリーレンエーテルコポリマーが、少なくとも1つのブロックi)中に、一般式Iの少なくとも1つのユニット(ユニットU1)
【化2】
(但し、
記号t、q、Q、T、Y、Ar及びAr
1の定義は以下のようである:
r: 0又は1、
t、q: 相互に独立して、0、又は1、又は2、又は3、
Q、T、Y:各場合において相互に独立して、化学結合、又は-O-、-S-、-SO
2-、S=O、C=O、-N=N-、及び-CR
aR
b-から選ばれる基であり、ここでR
a及びR
bは、相互に独立して、各場合において、水素原子、又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、C3~C12-シクロアルキル、又はC6~C18-アリール基であり、及びQ、T及びYの少なくとも1つは、-SO
2-又はCOであり、
Z: ISOSO、ISOMA又はISOIDから誘導される基であり、
Ar及びAR
1:相互に独立して、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である)
を含むことが好ましいものであっても良い。
【0047】
上述した前提条件内で、Q、T又はYが化学結合である場合、このことは、左側の隣接基及び右側の隣接基は、化学結合を介して相互に直接的に結合して存在していることを意味する。しかしながら、Q、T及びYから成る群の少なくとも1つが-SO2-であるという条件で、式I中のQ、T及びYが、相互に独立して、-O-及び-SO2-から選ばれることが好ましいものであっても良い。Q、T又はYが-CRaRb-である場合、Ra及びRbは相互に独立して、各場合において、水素原子、又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、又はC6~C18-アリール基である。C1~C12-アルキルが、1~12個の炭素原子を有する直鎖状、及び分岐状、飽和アルキル基を含むことが好ましいものであっても良い。以下の部分が特に記載されても良い:C1~C6-アルキル部分、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、2-又は3-メチルフェニル、及び長鎖部分、例えば非分岐ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、及びこれに類似した単分岐した又は複数分岐したもの。上述したC1~C12-アルコキシ基中に使用可能なアルキル部分は例えば、1~12個の炭素原子を有する、上記に定義したアルキル部分である。C3~C12-シクロアルキルは特に、C3~C8-シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル、シクロヘキシルメチル、-ジメチル、及び-トリメチルを含んでも良い。Ar及びAr1は、相互に独立して、2官能性のC6~C18-アリーレン基である。上記又は下記にそれぞれ記載した出発材料から開始して、Arは、求電子攻撃に対して非常に影響を受けやすい電子リッチな芳香族物質から誘導されることが好ましいものであっても良く、ここでこれはヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレンであっても良く、特にこれは、2,7-ジヒドロキシナフタレン、又は4,4’-ジフェノールであっても良い。Ar1は、好ましくは、非置換の二官能性C6-又はC12-アリーレン基であっても良い。二官能性C6~C18-アリーレン基Ar及びAr1が、フェニレン基であり、及び相互に独立して、例えば、1,2-、1,3-、及び1,4-フェニレン、ナフチレン基、例えば、1,6-、1,7-、2,6-、又は2,7-ナフチレン、又はアントラセンから、フェナントレンから、又はナフタセンから誘導される二官能性アリーレン基であることが特に好ましいものであっても良い。Ar及びAr1が、相互に独立して、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、ナフチレン、特に2,7-ジヒドロキシナフチレン、又は4,4’-ビフェニレンであることが好ましいものであっても良い。
【0048】
ポリアリーレンエーテルコポリマーが、少なくとも1つのブロックi)に、式Ia~Idの繰り返しユニットU1の少なくとも1つを含むことが好ましいものであっても良い:
【化3】
【0049】
ここで、xは0.05~1、nは1である。ユニットU1は、ブロックi)内に、統計的方法(statistical manner)で含まれていても良い。
【0050】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは特に好ましくは、少なくとも1つのブロックi)内に、Arが1,4-フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、T及びYがSO2である繰り返しユニットU1を有していても良い。このポリアリーレンエーテルコポリマーは、ポリエーテルスルホン(PESU)タイプポリアリーレンエーテル(それぞれ式Ia又はIb)と記載されても良い。
【0051】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは特に好ましくは、少なくとも1つのブロックi)内に、Arが1,4-フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、TがC(CH3)2であり及びYがSO2である繰り返しユニットU1を有していても良い。このポリアリーレンエーテルコポリマーは、ポリスルホン(PSU)タイプポリアリーレンエーテル(式Ic)と記載されても良い。
【0052】
このポリアリーレンエーテルコポリマーは特に好ましくは、少なくとも1つのブロックi)内に、Arが1,4-フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、Tが化学結合であり、及びYがSO2である繰り返しユニットU1を有していても良い。このポリアリーレンエーテルコポリマーはポリフェニレンスルホン(PPSU)タイプポリアリーレンエーテル(式Id)と記載されても良い。
【0053】
本開示の目的のために、PPSU、PESU及びPSU等の略号は、DIN EN ISO 1043-1:2001に従う。
【0054】
任意に、ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つのブロックi)内に、少なくとも1つの追加的なユニットU2を含んでいても良い。任意に、ポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つの繰り返しユニットU2から成る、少なくとも1つの追加的なブロックiii)を含んでいることも可能である。上述した少なくとも1つの繰り返しユニットU2は、好ましくは、以下の式IIa~IIoのものであることが可能である:
【化4】
【0055】
特に好ましいものであっても良い一般式IIのユニットU2は、IIa、IIg及び/又はIIkである。ユニットU2は、ブロックi)内に、統計的方法で含まれていても良い。
【0056】
少なくとも1つのブロックi)は、好ましくは、平均分子量Mn(数平均)を、2000~70000g/molの範囲、特に好ましくは5000~40000g/molの範囲、及び特に好ましくは7000~30000g/molの範囲に有していても良い。H.G.Eliasによって“An Introduction to Polymer Science”VCH Weinheim、1997、p.125に記載されているように、少なくとも1つのブロックi)の平均分子量は、少なくとも1つのブロックi)を形成するモノマーの割合によって制御及び計算することが可能である。
【0057】
化合物Eを含むポリアリーレンエーテルコポリマーは、少なくとも1つのユニットU3を含む。これは、ユニットU1及び化合物Eから誘導することが可能であり、及び好ましいものであっても良い。
【0058】
この技術分野の当業者は、少なくとも1つのユニットU3は、上述したユニットU1及び上述した化合物Eを、その可能な任意の組合せで構造的に組み込むことを理解する。
【0059】
従って、繰返しユニットU3を含むポリアリーレンエーテルコポリマーの分子構造は、例えば、
PESUタイプのポリアリーレンエーテルコポリマーのために、少なくとも1つのブロックi)中に、式VIa及び/又はVIbを含むものとして、図式的に表すことができる:
【化5】
【0060】
この技術分野の当業者は、少なくとも1つのユニットU1及び少なくとも1つのユニットU3の分子割合は、化合物Eの量に依存することを理解する。ユニットU3は、ブロックi)内に、統計的方法で含まれていても良い。
【0061】
ポリアリーレンエーテルコポリマー中に含まれる、少なくとも1つのブロックii)の全ては、重合状態で、1種のアルキレンオキシド、好ましくはポリエチレンオキシドのホモポリマーから成ることが可能である。
【0062】
少なくとも1つのブロックii)の全て、又は幾つかが、重合状態で、化合物Cから成ることも可能であり、ここで化合物Cは、エチレンオキシドのブロック及びプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はテトラヒドロフランの少なくとも1つのブロックを含むセグメント化コポリマーである。
【0063】
少なくとも1つ(1種)のブロックii)の全てが、一方側で、アルキル又はアリール基でエンドキャップされていても良く、これは、一般構造X-PAO又はPAO-X-PAO(但し、Xはブロックi)を表し、及びPAOはブロックii)を表す)のポリアリーレンエーテルコポリマーをもたらす。ブロックii)がOH基を両方の末端位に有することが可能であり、これは1つのポリマー分子内に複数のブロックii)を含んでも良いポリアリーレンエーテルコポリマーをもたらす。
【0064】
少なくとも1つのブロックii)が、末端位にポリエチレンオキシド(PEO)の区分を含むことが好ましいものであっても良く、ここでポリアルキレンオキシドの区分は、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリブチレンオキシド(PBO)、及びポリ-THF(pTHF)のようなエチレンオキシドとは異なり、好ましくは、中央位に含まれる。少なくとも1つのブロックii)(全てのブロックii)が好ましいものであっても良い)が、構造PEO-PPO-PEO、PEO-PBO-PEO又はPEO-pTHF-PEOを有していることが好ましいものであっても良い。
【0065】
少なくとも1つのブロックii)の鎖長さは、広い範囲で変化することが可能であり、及び通常では、ポリアリーレンエーテルコポリマーの親水性及び重縮合反応における化合物Cの反応性の間のバランスに依存する。
【0066】
少なくとも1つのブロックii)は、例えば、1.1~500個のアルキレンオキシドユニット(単位)を含むことが可能である。少なくとも1つのブロックii)は、好ましくは2~300個、より好ましくは3~150個、更に好ましくは5~100個、及び特に好ましくは10~80個のアルキレンオキシドユニットを含む。
【0067】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは、例えば好ましくは一般式(III)、(IV)又は(V)又はこれらの混合物の少なくとも1つのブロックii)を含むことが可能であるが、混合物は好ましいものではなくても良い:
R-(OCH2-CH2)k-(OCH2-CH2-CH2-CH2)m-(OCH2-CH2)z-O- (III)、
R-(OCH2-CH2)k-(OCH2-CH(CH3))m-(OCH2-CH2)z-O- (IV)、
25
R-(OCH2-CH2)k-(OCH2-CH(CH2CH3))m-(OCH2-CH2)z-O- (V)、
ここで、Rは、水素、又は脂肪族又は芳香族の残基(rest)又は化学結合を示し、ここで、k及びzの数平均は、それぞれの式III、IV又はVに従い、及びブロックコポリマー中に存在する同じ残基Rを有するブロックii)の全体について、独立して、1.1~40であり、及び、mの数平均は、それぞれの式III、IV又はVに従い、及びポリアリーレンエーテルコポリマー中に存在する同じ残基Rを有するブロックii)の全体について、10~500である。
【0068】
ポリアリーレンエーテルコポリマー中に存在する少なくとも1つのブロックii)の全体について、k及びzの数平均が同一であるか、又は差が0.5以下、更に好ましくは0.1以下であることが好ましいものであっても良い。
【0069】
ポリアリーレンエーテルコポリマーの末端基の性質は、特に限定されない。このことは、通常、反応性又は非反応性末端基が末端基として望まれる場合に依存しても良い。反応性末端基は、例えばポリアリーレンエーテルコポリマーを、少なくとも1種の更なるモノマー又はポリマーと重合させて、ブロックコポリマー又はポリマーネットワーク等のコポリマーを生じさせることを所望する場合には、好ましいものであっても良い。可能な末端基は、フェノールOH基末端基、又はフェノラート末端基礎、フェノールアルコキシ末端基(これらの中で、-OCH3末端基が好ましいものであっても良い)、アミノ末端基(これらの中で、-NH2が好ましいものであっても良い)又は塩素末端基である。末端基がフェノール無水末端基であることも可能である。末端基は、1種類のものであることが可能であり、又は相互に異なることが可能である。通常、末端基がCl-、OH-及び/又は-OCH3であることが好ましいものであっても良い。しばしば、不活性末端基がエンドキャップ反応性末端基によって受け入れ可能である。ポリアリーレンエーテルコポリマーが、溶液を介した製造方法、例えば溶液スピニング、又は溶液からのキャスティングによって入手可能な用途のために意図される場合、エンドキャッピングは必要とされなくても良い。エンドキャップされていないポリアリーレンエーテルコポリマーは特に、薄膜の製造に関して有用である。この場合、Cl及び/又はOH末端基を有するポリアリーレンエーテルコポリマーが有利であっても良い。
【0070】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは好ましくは、相対粘度が0.20~1.30dl/g、特に030~0.95dl/gであることが可能である。ポリアリーレンエーテルコポリマーの溶解度に従い、相対粘度は各場合において20℃又は25℃で、フェノール及びジクロロベンゼンの混合物中、又は96%硫酸中、1質量%N-メチルピロリドン溶液中で測定可能である。
【0071】
ポリアリーレンエーテルコポリマーは好ましくは、GPCで測定して、平均分子量(molecular)Mn(数平均)が、2000~75000g/molの範囲、特に、5000~45000g/molの範囲であることが可能である。
【0072】
ポリアリーレンエーテルコポリマーの質量平均モル質量(molar mass)Mwは、80℃で運転される4カラム(事前カラム、ポリエステルコポリマーに基づく3つの分離カラム)を使用して、溶媒としてのジメチルアセトアミド中、標準としての狭く分布したポリメチルメタクリレートに対しての(800~1820000g/molの較正)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、好ましくは10000~200000g/molの範囲であっても良く、特に15000~150000g/molの範囲であっても良く、及び特に好ましくは18000~100000g/molの範囲であっても良い。流量は1ml/分、注入体積は100μlに設定された。測定は、RIディテクターを使用して行われた。
【0073】
開示したポリアリーレンエーテルコポリマーは有利なことには、
a)イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、又はこれらの混合物(化合物A)、及び
b)ジクロロジアリールスルホン、ジクロロジアリールケトン、又はこれらの混合物を含む少なくとも1種の二官能性化合物(化合物B)を、
c)少なくとも1種のポリアルキレンオキシド(化合物C)、
と反応させることを含む方法によって調製することが可能である。
【0074】
開示した方法は、化合物A、B及びDを化合物Cと反応させることを含むことができる。この方法が、化合物A、B及びEを化合物Cと反応させることを含むことも可能である。更に、この方法が、化合物A、B、D及びEを化合物Cと反応させることを含むことも可能である。最も多くの場合、化合物A、及びBを化合物Cと反応させるか、又は化合物A、B及びEを化合物Cと反応させることを含むことが好ましい。
【0075】
通常、モノマー化合物A、B及び存在するならば、D及び/又はEが、出発材料として使用され、このことは、反応は通常、化合物A、B及び存在するならば、D及び/又はEのプレポリマーから出発しないことを意味する。化合物Cは工程の中で、オリゴマー又はポリマー出発化合物として使用される。
【0076】
出発化合物は、重縮合反応に加入してポリアリーレンエーテルコポリマーが生じ、この反応は典型的には、塩基の少なくとも触媒的量の存在下で行われる。この反応は、溶媒の不存在下で行われても良く、又は溶媒Lの存在下に行われることが好ましいものであっても良い。反応混合物が形成される。反応混合物の成分は通常、同時に反応する。個々の成分は、上流ステップで混合され、及び次に反応されても良い。個々の成分を反応器に導入し、反応器内でこれらを混合し、次いでこれらを反応させることも可能である。反応は1段階で行われることが好ましいものであっても良い。このことは、化合物A及び存在する場合には、化合物D及び化合物B、及び存在する場合には、OH基を運ぶEの脱プロトン化、及びこれらの化合物Cとの縮合反応は、中間生成物の分離無しに、単独反応段階で行われることを意味する。
【0077】
末端基を同時に制御したポリアリーレンエーテルの調製は通常、この技術分野の当業者にとって公知である、及びその詳細を以下に記載する。ポリアリーレンエーテルコポリマーについて、これは例えば(重合前の、すなわち出発化合物としての)化合物A、B、C、及び存在する場合にはD及び/又はEの官能基の量を制御することによって達成することが可能である。使用するべき出発材料の割合は原則として、重縮合反応の化学量論から導出され、これはハロゲン化水素、例えば塩化水素の理論除去を伴って進められ、及びこの技術分野の当業者にとって公知の方法で設定される。
【0078】
通常、相互に反応性である出発化合物の官能基のモル割合は、制御され、又は調節されることが好ましい。従って、塩素族(塩素基)及び塩素に対して反応性の官能基(例えば多くの場合、ヒドロキシ基)のモル割合は、末端基の制御、又は反応速度及び分子量の制御等のファクターに依存して変化することが可能である。これは等モルであることが可能である。別の態様では、塩素基のモル割合は、塩素に対して反応性の官能基(例えば多くの場合、ヒドロキシ基)のものよりも高いものであること、又はその逆のことが可能である。従って例えば、フェノラート末端基を含むポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーであるポリアリーレンエーテルコポリマーの分子量は、化合物Bを超えての化合物AとCの間の化学量論の定義されたオフセットを使用して調節することが可能である。通常、上記モル割合は、約3:1~約1:3、例えば約2:1~約1:2である。より高い分子量を得ることに関し、モル割合は最も多くの場合、等モル、割合である。
【0079】
上述したように、化合物E及びDは、塩素に対して反応性の官能基を有していても良い。化合物Eは、塩素官能基も有していても良い。同様に、化合物Bは2個の塩素基を有していても良く、又は1個の塩素基及び1個の塩素に対して反応性の基を有していても良い。出発化合物の割合、及びこれらと共に官能基の割合は、これに従って選ばれ得る。
【0080】
例えば、フェノールOH末端基の数を増すために、過剰のOH末端基が好ましい。塩素末端基の、フェノールOH末端基に対する割合は、ヒドロキシ官能基を有する出発化合物の過剰状態を制御して設定することによって調節されることが好ましいものであることが可能である。この場合、OH基の塩素基に対する割合はモルベースで、1.005~1.2の範囲であっても良く、特に1.01~1.15の範囲、最も好ましくは1.02~1.1の範囲であっても良い。
【0081】
より安定的な末端基が求められる場合、塩素末端基、特にフェニルクロラインの数を増すことが好ましいものであっても良く、ここで過剰の塩素末端基が好ましい。好ましい実施形態では、官能基及び例えば、多くの場合ヒドロキシであるような基の塩素末端基に対する割合は、塩素含有化合物の過剰状態の制御下での設定によって調節される。この場合好ましくは、モルベースで、塩素のOH基に対する割合は、1.005~1.2の範囲であっても良く、特に1.01~1.15の範囲、最も好ましくは1.02~1.1の範囲であっても良い。
【0082】
好ましくは、重縮合での変換は、少なくとも0.95で、これにより十分に高い分子量が設定できる。
【0083】
原則として、本方法は、溶媒の不存在下に行うことが可能である。特に、ポリアリーレンエーテルコポリマーの非常に明るい色が目的とされる場合、本方法は少なくとも1種の溶媒(溶媒L)の存在下に行われることが最も有利であることが可能である。
本発明において好ましいものであっても良い溶媒Lは、有機、特に非プロトン性極性溶媒である。適切な溶媒Lは、沸点を80~320℃の範囲に有することも可能であり、特に100~280℃の範囲、好ましくは150~250℃の範囲に有する。適切な非プロトン性極性溶媒は、例えば、高沸点エーテル、エステル、ケトン、非対称性ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又はN-エチル-2-ピロリドン(NEP)、又はこれらの任意の組合せである。溶解度を高めるために、溶媒Lは例えば、2~3種の溶媒の混合物であることが可能である。最も多くの場合、2種以上の溶媒を使用すれば十分であり得、又はより好ましくは1種のみの溶媒を使用すれば十分である。
【0084】
溶媒Lは特に、DMAC、NMP、又はNEP又はこれらの任意の混合物であっても良い。好ましくは、本方法は、化合物A、B、C及び存在する場合には、D及び/又はEを上述した非プロトン性極性溶媒、例えばDMAC、NMP、又はNEP又はこれらの任意の混合物中に反応させることを含み、ここで特に、N-メチル-2-ピロリドンが好ましいものであっても良い。ここで、出発化合物A、B、C及び存在する場合にはD及び/又はEの混合物から進めることが好ましいものであっても良い。ポリアリーレンエーテルコポリマー中のブロックの形成を修正するために、所定の化合物A、B、C及び存在する場合にはD及び/又はEを、反応の間の種々の時間で加えることも当然可能である。少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒、例えばDMAC、NMP、又はNEP又はこれらの任意の混合物中の、1種の化合物A、1種の化合物B、及び1種の化合物Cの混合物から出発すること、又は1種の化合物A、1種の化合物B、及び1種の化合物C、及び1種の化合物Eの混合物を使用することが特に好ましいものであっても良く、ここで溶媒はNMPが特に好ましいものであっても良い。
【0085】
反応の間に放出した水を分離するために、トルエン又はクロロベンゼンのような共沸点形成共溶媒を使用しても良い。典型的には、このような共沸点形成共溶媒を使用しないことが好ましいものであっても良い。加熱工程の間、溶媒Lと一緒に水を分離することが通常では好ましいものであっても良い。溶媒Lの損失は、例えばより多くの量の溶媒Lを使用して開始することによって、又は反応の間に溶媒Lを加えることによってアカウントされても良い。反応の間に増加する粘度の制御は、ポリアリーレンエーテルコポリマーの分子量を制御するための手段であることも可能である。
【0086】
開示した方法は通常、化合物A、B、C及び存在する場合にはD及び/又はEを少なくとも1種塩基の存在下に反応させることを含んでも良い。この技術分野の当業者は、化合物Bの塩素置換基に対する反応性を増すために、OH基、例えばフェノールOH基等の官能基が、少なくとも1種の塩基の存在下に反応することが好ましいことを理解する。
【0087】
上述した少なくとも1種の塩基は典型的には、水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩であることが可能である。従って、これは、少なくとも1種の水酸化物及び少なくとも1種の炭酸塩の混合物、又は少なくとも1種の炭酸塩及び少なくとも1種の重炭酸塩の混合物であっても良い。ここで、少なくとも1種の無水アルカリ金属炭酸塩が好ましいものであっても良い。例えば、異なる水酸化物、又は異なる炭酸塩、又は異なる重炭酸塩の混合物を使用することも可能であっても良い。1種類の塩基を使用することが好ましいものであっても良い。1種類の塩基が、アルカリ金属炭酸塩であることが好ましいものであっても良い。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、又はこれらの混合物が好ましいものであっても良く、極めて特定的に、炭酸カリウムが塩基として使用されることが好ましいものであっても良い。クロロベンゼン/スルホラン60/40中、固体の懸濁として測定して、及びMalvern Mastersizer 2000機器を使用して、加重平均粒径(volume-weighted mean particle size)が、100マイクロメーター以下、例えば5~80μm、好ましくは10~60μm、例えば20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、又は55μm、又は5~100μmの範囲の一様でないμmサイズの、特に炭酸カリウムを使用して、反応速度の局面から、及び非常に明るい色を有するポリアリーレンエーテルコポリマーが目的とされる場合(上記のものが所望される)。
【0088】
特に好ましい組合せは、溶媒としてのDMAC、NMP、又はNEP又はこれらの任意の混合物、及び塩基としての炭酸カリウム、特にサイズが100μm未満の炭酸カリウムである。特に好ましいことが可能な組合せの1つは、溶媒としてのNMP、及び塩基としての炭酸カリウム、特にサイズが上述したように測定して、100μm未満、例えば5~80μm、好ましくは10~60μm、たとえば20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、又は55μm、又は5~100μmの範囲の任意の一様でないμmの大きさの炭酸カリウムである。
【0089】
化合物A、B、C、及び存在する場合には、D及び/又はEの反応は、反応が許容可能な速度で進行し、及びポリアリーレンエーテルコポリマーが、許容可能な品質、例えば所望の分子量及び分子量分布で生成される温度で行うことが可能である。通常、本方法は、80~250℃の温度、好ましくは100~220℃の温度で行うことが可能である。本方法が溶媒Lの存在下に、及び環境気圧下に行われる場合、上限温度は通常、溶媒Lの沸点によって決定される。特に、本方法が溶媒の不存在下に行われる場合、反応物質の安定性は、反応温度を制限する因子であることが可能である。
【0090】
この技術分野の当業者は、反応温度及び時間を、生成する特定のポリアリーレンエーテルコポリマーに使用しても良く、ここで反応温度は、180~205℃の範囲を適用しても良く、及び185~195℃の温度が好ましいものであっても良い。後者の温度では、反応は2~20時間、例えば3~18時間、例としては5~15時間かかっても良い。特に、本方法がNMP等の溶媒L中で行われる場合、上述した条件が好ましいものの一つであっても良い。
【0091】
本方法に、ポリマー鎖中に含まれる反応性基に対して反応性の1つの官能基を有する、少なくとも1つの化合物(化合物F)を使用することが可能であっても良い。
【0092】
化合物F
1種の(所定の)化合物Fが使用されることが好ましいものであっても良い。これにより、ポリアリーレンエーテルコポリマーの鎖長さを制御することが可能であっても良い。通常、化合物Fとの反応に、例えば少なくとも0.9の変換後、重縮合反応が続くことが好ましいものであっても良い。化合物Fが、少なくとも1種の脂肪族有機ハロゲンであることが好ましいものであっても良い。この結果、反応性基の更なる反応が得られ、上記反応性基は末端基、特にヒドロキシ末端基であることが可能である。
【0093】
このポリアリーレンエーテルコポリマーは従って、化合物Fを反応した形態で含む。このようなポリアリーレンエーテルコポリマーは通常、特に更なる処理の過程の間、ポリマー鎖の更なる延長に対して安定化されている。
【0094】
好ましくは、少なくとも1種の脂肪族有機ハロゲン化合物は、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状アルキル基を有する、少なくとも1種のアルキルハロゲン化物、特にアルキルクロリドであり、これは特に、1級アルキルクロリドであることが可能であり、特に好ましくはメチルハロゲン化物、特にメチルクロリドであることが可能である。
【0095】
化合物Fとの反応は好ましくは、90℃~160℃の温度で行われ、特に100℃~150℃の温度で行われる。時間は広く変化させることが可能であり、及び通常少なくとも5分、特に少なくとも15分である。反応時間は通常、好ましくは15分~8時間、特に30分~4時間である。
【0096】
化合物F、より特定的には少なくとも1種の脂肪族有機ハロゲンの反応のために、種々の方法を使用することが可能である。化合物F、より特定的には少なくとも1種の脂肪族有機ハロゲン化合物の使用される量は更に、化学量論的であることが可能であり、又は過剰であることが可能であるが、この過剰は例えば、5倍の過剰以下であることが可能である。例えば、少なくとも1種の脂肪族有機ハロゲンが、特にガスの流の状態の連続的な導入を介して連続的に加えられることが好ましいものであっても良い。
【0097】
化合物Fとの反応は、別個の工程ユニット内で行うことが可能であり、又は好ましいものとして、重縮合反応器内で直接的に行うことが可能である。
【0098】
本方法が、溶媒Lの存在下に、及び反応が完了した後に行われる場合、例えばその中で反応が行われた溶媒Lであることが可能である更なる溶媒L、例えばDMAC、NMP、NEP又はこれらの任意の混合物(ここでNMPが好ましいものであっても良い)が、典型的には混合物を冷却するために加えられる。この反応混合物は例えば、化合物Fが別個の工程ユニットで、又は上述したような重縮合反応器中で、ポリアリーレンエーテルコポリマーと反応可能な温度範囲にまで冷却させることが可能である。この後、反応混合物は、必要であれば更に冷却されても良く、このような場合、約80℃が好ましいものであっても良い。ポリアリーレンエーテルコポリマーが化合物Fと反応しない場合、反応混合物が約80℃に冷却されることが好ましいものであっても良い。この温度では、反応混合物(該反応混合物は典型的には分散物である)は、それぞれの、典型的には反応容器を含む工程ユニットから取り出され、及びこれは少なくとも1つの別個のユニットに移される。上述した別個のユニットは、好ましくは反応の間に形成された塩、例えば塩化カリウムを反応混合物から分離するためのろ過ユニットを含んでも良い。分散物の粘度に依存して、この工程は、数分間、又は数時間、例えば30分~24時間を要しても良い。この時間の間、ろ液は周囲温度(23℃)にまで冷却されても良い。生成物は次に、例えば非溶媒の添加による沈澱によって分離されても良い。これは例えば、水及び少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒の混合物であることが可能である。水と溶媒L、例えばDMAC、NMP、NEP又はこれらの任意の混合物の混合物を使用することが好ましいものであっても良く、ここでNMPが好ましいものであっても良い。ここで、通常では水は、溶媒L、例えばDMAC、NMP、NEP又はこれらの任意の混合物(溶媒Lは、NMPが好ましいものであっても良い)よりも多い量で使用することが可能である。水/NMP混合物(例えば約80/20質量比)中での沈澱が最も好ましいものであっても良い。この沈澱は、酸性媒体、例えば酸を含む水/NMP混合物中でも可能である。適切な酸は例えば、有機又は無機酸、例えばカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、又はクエン酸、及び鉱酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸である。得られた粉は集められ、典型的にはろ過され、そして次に洗浄され、そして最終的に乾燥され、ここで温度は、真空(vacuum)中で80~150℃が使用可能である。
【0099】
上記内容に加え、この技術分野の当業者は、当業者の通常の知識を適用することによって、当業者が入手可能な方法を頼ることができる。ポリアリーレンエーテルスルホンをもたらす製造方法は、例えばHerman F.Mark,“Encyclopedia of Pilemer Science and Technology”、第3版、第4巻、2003年、章“Polysulfones”、第2~8頁、及びHans R.Kircheldorf,“Aromatic Polyethers”、Handbook of Polymer Synthesis、第2版、2005年、第427~443頁に記載されている。OH-末端ポリアリーレンエーテルスルホンの合成に関してのより詳細な内容は例えば、R.Viswanathan,B.C.Johnson,J.E.McGrath,Polymer25(1984)1827に記載されている。分子量に関しての情報は例えば、A.Noshay,M.Matzer,C.N.Merriam,J.Polym.Sci.A-19(1971)3147に記載されている。
【0100】
ここに開示した方法は、化合物Aのポリアリーレンエーテルコポリマーへの導入速度は速いか、又は非常に速いという一般的な利点を有している。更に、高分子量ポリアリーレンエーテルコポリマーは、フッ素含有モノマーを使用する必要なく利用可能である。従って、高分子量ポリアリーレンエーテルコポリマーは、環境に対してより優しく、及びまたより安価に製造することが可能である。更に、高分子量ポリアリーレンエーテルコポリマーの形成は、相当するポリマーの形成よりも速く発生するので、本方法は非常に効率的である。ここに開示したポリアリーレンエーテルコポリマーは特に、薄膜の製造のために、すなわちドープ溶液として使用することが可能である。薄膜生産の工業的製造のために例えば、ポリアリーレンエーテルコポリマーを含むドープ溶液を製造するために、ポリアリーレンエーテルコポリマーを溶解させる時間は低レベルであることが、有利である。
【0101】
本開示の範囲内であり、及び上述した方法によって調製されても良く及び好ましいものであっても良いポリアリーレンエーテルスルホンコポリマー、及びポリアリーレンエーテルケトンコポリマーの幾つかの例を、以下の表1に示す。
【0102】
【0103】
ここに開示した少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマー、又はここに開示した方法によって得ることが可能なポリアリーレンエーテルコポリマー例えば、PPSU、PESU、又はPSUタイプのもの(ここで、ポリアリーレンエーテルコポリマーがイソソルビド及びDCDPSを重合状態で含むことが最も好ましいものであっても良い)を、コーティング、ファイバー、フィルム、フォーム、モールディング、及び/又は薄膜を製造するために使用することも、ここに開示される。5質量%を超えてPAEOを有するコポリマーが、薄膜の製造、又は薄膜用の添加剤のために典型的には適切である。
【0104】
ファイバーは例えば、長さに対して細い、幾分なりとも柔軟性の有る構造体である。ファイバーはコンパクト(中実)又は中空であることが可能である。ファイバーは、円状、又は略円状であることが可能であり、又は種々の断面形状を有することが可能である。これは例えば平坦なものであることが可能である。ファイバーはチューブ状であることも可能である。ファイバーは、滑らかな表面を有していても良く、又はファイバーは、細孔又は穴を有していても良い。ファイバーは例えば、押出し法によって得ることが可能である。少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマー(通常では、1種のポリアリーレンエーテルコポリマーが好ましい)からのファイバーが、紡績方法(spinning method)によって得られることがより好ましいものであっても良い。少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマーへの熱応力が懸念される場合には、溶液からの紡績(spinning)が有利であることが可能である。幾つかのケースでは、溶媒L、例えばDMAC、NMP、又はNEP又はこれらの任意の混合物を含む、又は溶媒Lから成る溶媒を、紡績のために使用することが有利であることが可能である。本方法が、溶媒Lの存在下に行われる場合、紡績は例えば、ポリアリーレンエーテルコポリマーを塩から分離した直後に行うことが可能である。ポリアリーレンエーテルコポリマーを最初に分離し、そして次にこれを溶媒に溶解させて紡績に使用することも可能である。ファイバーの機械的特性を改良するために、少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマー(通常では、1種のポリアリーレンエーテルコポリマーが好ましい)を電解紡糸法によって溶液から紡績(紡糸)することが有利であっても良く、又好ましいものであっても良く、電解紡糸法には磁気電解紡糸法が含まれる。電解紡糸法は例えば、ナノファイバーであるファイバーを製造する場合には、最も好ましいものであっても良い。磁気電解紡糸法は、少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマーから不織布を製造するために使用されても良く、ここで通常では、1種のポリアリーレンエーテルコポリマーからの製造が好ましい。電解紡糸法は、溶解物又は溶液(溶液が好ましいものであっても良い)が導電性であることを必要とするので、塩、全て又は本質的に全ての塩を、反応の後に反応混合物から分離する必要は無くても良い。化合物Cとは別に唯一のジオールとして化合物Aを含むポリアリーレンエーテルコポリマーが、電解紡糸法によるファイバーの製造にとって好ましいものであっても良い。
【0105】
薄膜は例えば、分離層である。薄膜は、不浸透性、部分的に不浸透性、又は選択的に浸透性を意味すると理解しても良く、又は一方向に浸透性の薄膜、又は浸透性膜を意味すると理解しても良い。 薄膜のタイプは通常、限定されない。薄膜は、目視的には細孔を含まず、及び特にガス分離のために使用可能である高密度の薄膜であることが可能である。これは、1~10000nmの範囲の直径を有する細孔を含み、及び主にマイクロ-、超-及びナノろ過に使用される細孔の薄膜であることが可能である。従って、薄膜は例えば、逆浸透(RO)薄膜、前方浸透(FO)薄膜、ナノろ過(NF)薄膜、超ろ過(UF)薄膜、又はミクロろ過(MF)薄膜であっても良い。多くの場合、薄膜は、UF、NF又はMF薄膜であることが好ましいものであっても良い。
【0106】
ここに開示されるポリアリーレンエーテルコポリマーは、種々のフィルター薄膜形状で使用することが可能である。例えばこれは、平坦な薄膜及び/又は毛細管状中空ファイバー薄膜に使用することが可能である。前方浸透膜は、デッドエンドフロー又はクロスフローの状態であっても良い。
【0107】
薄膜は、少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマーを使用して製造されても良く、ここで薄膜は、1種のポリアリーレンエーテルコポリマーから製造されることが好ましいことが可能である。典型的には、薄膜は、この技術分野の当業者にとって公知の方法によって調製されることが可能である。薄膜は例えば、溶液からキャスティング(注型)することによって製造されても良い。ここで、溶媒L、例えばDMAC、NMP、NEP又はこれらの任意の混合物(NMPが好ましいものであっても良い)中の、少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマーのキャスティング溶液を調製することが可能である。ジメチルラクトアミドが溶媒Lとして好ましいものであっても良い。上述したキャスティング溶液は典型的には、洗浄によって薄膜から除去可能な少なくとも1種(多くの場合には好ましくは1種)の化合物を含む。上述した化合物はしばしば、細孔形成剤とも称される。少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマーからの薄膜の製造の目的のために、ポリビニルピロリドン及び/又はポリエチレングリコール(PEG)が、キャスティング溶液中の細孔形成剤として、しばしば利用可能である。
【0108】
この薄膜は、水、体液、又は食品製造における液体との接触に使用することが可能である。同様に、この膜は、ガス分離のために使用することが可能である。
【0109】
従って、膜は固体の分離等の水処理、又は医療技術と関連して使用することが可能である。医療技術又は工業分野では、薄膜は例えば、発酵もろみ液からのワクチン又は抗生物質の回収、実験室グレードの水の精製、水の消毒(ウィルスの除去、内分泌物、又は殺虫剤の除去を含む)に使用することが可能である。薄膜は例えば、透析等の血液処理に関連して使用することが可能である。これは例えば、食品処理装置の製造用に使用することが可能である。
【0110】
食品製造における液体は例えば、ここに開示した薄膜によってクリアにしても良い飲料、例えばアルコール又は非アルコール飲料、例えばフルーツジュース又はビールであることが可能である。同様に、薄膜はミルク又はミルクから誘導される製品の処理に使用しても良い。ポリアリーレンエーテルコポリマーは、薄膜の製造に使用されるドープ溶液の製造に使用することが可能である。ドープ溶液は典型的には、薄膜の製造において、薄膜の特性、例えば親水性又は構造を制御するために、又はこれに影響を与えるために使用される。従って例えば、これは少量で、又は目的を非常に絞って使用することが可能である。このようなドープ溶液は、少なくとも1種のポリアリーレンエーテルコポリマーを含むことが可能である。通常、ドープ溶液は、1種又は2種のみ、好ましくは1種のみのポリアリーレンエーテルコポリマーを含む。ドープ溶液は、ここに開示されたポリアリーレンエーテルコポリマー、又はここに開示された方法によって得ることができるポリアリーレンエーテルコポリマーの任意のもの、例えばPPSU、PESU、又はPSUタイプのものを重合状態で含むことが可能であり、ここでポリアリーレンエーテルコポリマーが、イソソルビド及びDCDPSを重合状態で含むことが最も好ましいものであっても良い。ここで、5質量%を超えるPAEOを有するコポリマーが通常では好ましい。ドープ溶液は通常、ポリアリーレンエーテルコポリマーを溶解させ、及び薄膜の製造の障害にならないか、又は意図的な障害にならない溶媒を含む。溶媒L、例えばDMAC、NMP、NEP又はこれらの任意の混合物で、ここでNMPが好ましいものであっても良い。
【0111】
少なくとも1つの薄膜を含む物品は、例えばろ過システム、例えば透析フィルター装置、モジュールロー、又はモジュールラックであることが可能である。
【0112】
成形物品は本質的に、例えば成型法、射出成型法、押出成形法、カレンダー加工法、回転成形法、発泡法、ブロー成形法、形成法又は接合法によって製造可能な固体幾何学体であることが可能である。
【実施例】
【0113】
以下に記載する実施例は、本発明の更なる説明を提供するが、しかしながら本発明はこれらに限られるものではない。
【0114】
定義及び略号
反応時間:反応混合物が190℃に維持された時間。
【0115】
CA:接触角度
DCDPS:4,4’-ジクロロジフェニルスルホン
DMAC:ジメチルアセトアミド
ISOSO:イソソルビド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
PEO:ポリエチレンオキシド
PESU1:ポリアリーレンエーテルスルホンポリマー、粘度数が、84.0ml/g、Tgが226℃、及びMwが75000GPCg/mol(DMAC、ポリメチルメタクリレート スタンダード)(Ultrason(登録商標)E6020 BASF SE)
PVP: ポリビニルピロリドン
PEG:ポリエチレングリコール
PWP:純水浸透
MWCO:分子量カットオフ(分画分子量)
炭酸カリウムの粒子サイズを、Malvern Mastersizer 2000 instrumentを使用して、クロロベンゼン/スルホレート60/40中で固体の懸濁で測定した。
【0116】
コポリマーの分離及び試験
ろ過した反応混合物を小滴に分かち、及び小滴を沈澱槽に移すことによって、得られたコポリマーを分離した。沈澱溶媒は室温での脱塩水であった。沈澱高さは0.5mであった。スループットは約2.5l/hであった。このように得られたビーズを85℃で20時間、水で抽出した(水のスループット160l/h)。この後、ビーズを減圧下、ガラス遷移温度(Tg)未満で、0.5質量%の残留水分にまで乾燥させた。
【0117】
溶液粘度(V.N.)を、NMP中0.01g/mlポリマーの溶液を使用して25℃で測定した(DIN EN ISO 1628-1(2012年10月))。
【0118】
ポリアリーレンエーテルコポリマー中、イソソビド及びポリエチレンオキシドの含有量をCDCl3溶液上での1H-NMR分析によって測定した。
【0119】
コポリマーのTgを、第2の加熱工程中、10k/分の加熱速度で、DSC測定を使用して測定した。
【0120】
ポリマーの接触角(CA)を、NMP中25%溶液から製造した、それぞれのポリマーフィルム上の水に対して測定した。フィルムを減圧下、80℃で48時間、乾燥させた。測定は、DSA100analyser(Kruess GmbHより)を使用して、23℃で行った。表2に示した値は、10回の測定からの平均値である。
【0121】
本発明に従う実施例1~4-ポリアリーレンエーテルコポリマーの調製及び比較例C1-ポリアリーレンエーテルの調製
一般的手順
撹拌機、ディーン-スターク-トラップ、窒素供給口、及び温度制御を備えた容器中に、DCDPS、ISOSO、(及び存在する場合には)PEO、及び炭酸カリウム(体積平均粒子サイズが9.5μm)を窒素雰囲気下にNMP中で懸濁させた。攪拌下に、混合物を1時間以内に190℃に加熱した。反応中に形成した水は、蒸留によって連続的に除去した。生じる可能性のある溶媒損失をモニターした。混合物を通して窒素をパージし、及び混合物を反応時間にわたって190℃に維持した。この時間の後、1950mlのNMPを加え、混合物を窒素下に、(1時間以内に)室温にまで冷却した。形成した塩化カリウムを除去するために、反応混合物をろ過した。得られたポリマー溶液を次に、水中で沈澱させたが、得られたポリマービーズを分離し、及び温水(85℃)で20時間に亘って抽出した。次にビーズを120℃で24時間に亘り、減圧下(<100mbar)で乾燥させた。使用した量及び材料、及び特性を以下の表2に示す:
【表2】
【0122】
a)ポリアリーレンエーテルコポリマー中に見出されたものとして
本開示に従うポリアリーレンコポリマーを含むISOSOは、より高い粘度数を有し、及び接触角は、比較条件下に調製したポリアリーレンエーテルC1を含むISOSOよりも低いものであった。本開示に従うポリアリーレンコポリマーを含むISOSOについて、反応はより速く進行した。更に、ISOSOの組込み割合はより高いものであった。
【0123】
実施例 薄膜の調製
キャスティング溶液及び薄膜の調製:
390mlのNMP、25gのPVP(Luvite(登録商標)K40)及び50gのPESU1及び35gの本発明1~4に従うそれぞれのポリアリーレンエーテルコポリマー、又はポリマーC1を、撹拌機、窒素供給口、及び温度制御を備えた容器中に。
【0124】
混合物を穏やかに攪拌しながら、澄明な粘性溶液が得られるまで60℃で加熱した。澄明な溶液に達するまでの時間をモニターした(表3)。
【0125】
次に溶液を一晩室温で脱気した。その後、薄膜溶液を60℃で2時間、再加熱し、及び5mm/分の速度で作動するErichsen Coating machineを使用して、キャスティングナイフでガラスプレート上に60℃でキャストした(300ミクロン)。薄膜フィルムを30秒間保持し、その後に25℃で10分間、水中に浸漬した。薄膜をガラスプレートから取り外した後、薄膜を注意深く、水槽中に12時間、移動させた。その後、薄膜を2500ppmのNaOClを含む溶液槽中に、50℃で4.5時間移し、PVPを除去した。この工程の後、薄膜を水を使用して60℃で洗浄し、そして亜硫酸水素ナトリウムの0.5質量%溶液を使用して1度洗浄し、活性塩素を除去した。水を使用した数回の洗浄ステップの後、薄膜を、特徴付けを開始するまで、濡れた状態で保管した。
【0126】
最も多い場合では、少なくとも10×15cm寸法を有する、UF薄膜のミクロ構造特性を有する平坦なシート状の連続フィルムが得られた。薄膜には、頂部薄スキン層(1~3ミクロン)及び下部に細孔性層(厚さ:100~150ミクロン)が存在した。
【0127】
薄膜の特徴付け
直径が60mmの圧力セルを使用して、薄膜のPWPを、超高純度水(無塩水、Millipore UF-systemによってろ過)を使用して試験した。次の試験では、1000~1.000.000g/molの分子量(Mw)、水中PEG/PEOが0.1質量%の濃度をカバーする種々のPEG-スタンダードを、0.15バールでろ過した。供給と浸透のGPC-測定によって、分子量カットオフを測定した。GPC-測定のために、溶液を得られたもの/調製されたものとして使用した。GPC-測定は、35℃で、定常相(stationary phase)として水酸化PMMAを有する2つのカラム、及びRI検出システムを使用して、0.8ml/分の速度で行われた。
【0128】
溶液の組成及び結果を表3に示す。
【0129】
【0130】
ISOSOを含むポリアリーレンエーテルコポリマーから調製した薄膜は、ポリアリーレンエーテルC1のものと比較して、相当する分離特性において、より高い浸透性を示した。
【0131】
本開示に従うポリアリーレンエーテルコポリマーを含むドープ溶液は、より短い時間で調製可能であった。