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特許7467824温度制御装置、温度制御方法、プログラム、プローバ及び学習モデル生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】温度制御装置、温度制御方法、プログラム、プローバ及び学習モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240409BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022195042
(22)【出願日】2022-12-06
【審査請求日】2023-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】深野 英志
(72)【発明者】
【氏名】北川 大平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順亮
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/157453(WO,A1)
【文献】特開2018-117095(JP,A)
【文献】特開2019-198928(JP,A)
【文献】特表2009-524050(JP,A)
【文献】国際公開第2022/255030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得するチャック温度取得部と、
前記チャック温度の変化の特徴と、前記チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用され、前記チャック温度が入力された場合に前記入力された前記チャック温度の変化に応じた前記温度変化パターンを出力する分類部と、
前記分類部へ前記チャック温度が入力された場合に前記分類部から出力される前記温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、前記温度制御パラメータを設定する温度制御パラメータ設定部と、
を備え、
前記温度制御パラメータ設定部を用いて設定された前記温度制御パラメータを適用して、前記チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する温度制御装置。
【請求項2】
異なるタイミングにおいて取得された複数の前記チャック温度から、前記チャック温度の変化を導出するチャック温度変化導出部を備えた請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記学習済モデルは、前記チャック温度の変化の特徴を表す特徴量と、前記チャック温度の変化が分類された温度変化パターンと、の対応関係を学習し、
前記分類部は、前記チャック温度の変化の特徴として前記特徴量を取得し、前記特徴量に対応する前記温度変化パターンを出力する請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記温度制御パラメータ設定部は、前記温度変化パターンに対応する調整係数が用いられる前記温度制御パラメータを導出する請求項1から3のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項5】
測定対象のウェーハの種類を含むウェーハ情報を取得するウェーハ情報取得部と、
ウェーハの種類ごとに前記学習がされ生成された複数の前記学習済モデルと、
を備え、
前記分類部は、前記ウェーハ情報取得部を用いて取得されたウェーハ情報に含まれるウェーハの種類に応じて、複数の前記学習済モデルから1つの学習済モデルを選択する請求項1から3のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項6】
コンピュータが、
複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得する工程と、
前記チャック温度の変化の特徴と、前記チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用される分類部を用いて、前記チャック温度が入力された場合に前記入力された前記チャック温度の変化に応じた前記温度変化パターンを出力する工程と、
前記分類部へ前記チャック温度が入力された場合に前記分類部から出力される前記温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、前記温度制御パラメータを設定する工程と、
前記温度制御パラメータを適用して、前記チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する工程と、
を実行する温度制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得する機能と、
前記チャック温度の変化の特徴と、前記チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用される分類部を用いて、前記チャック温度が入力された場合に前記入力された前記チャック温度の変化に応じた前記温度変化パターンを出力する機能と、
前記分類部へ前記チャック温度が入力された場合に前記分類部から出力される前記温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、前記温度制御パラメータを設定する機能と、
前記温度制御パラメータを適用して、前記チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する機能と、を実現させるプログラム。
【請求項8】
複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックと、
プローブ針を有するプローブカードと、
前記ウェーハチャックを前記プローブ針に対して相対移動させる相対移動部と、
前記ウェーハチャックの温度を調整するチャック温度調整装置と、
温度制御パラメータを適用して、前記チャック温度調整装置の動作を制御する温度制御装置と、を備えたプローバであって、
前記温度制御装置は、
前記ウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得するチャック温度取得部と、
前記チャック温度の変化の特徴と、前記チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用され、前記チャック温度が入力された場合に前記入力された前記チャック温度の変化に応じた前記温度変化パターンを出力する分類部と、
前記分類部へ前記チャック温度が入力された場合に前記分類部から出力される前記温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、前記温度制御パラメータを設定する温度制御パラメータ設定部と、
を備え、温度制御パラメータ設定部を用いて設定された前記温度制御パラメータを適用して、前記チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御するプローバ。
【請求項9】
複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度であるチャック温度の変化の特徴と、前記チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルを生成する学習モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハに形成された半導体チップの電気的特性の検査に適用される、温度制御装置、温度制御方法、プログラム、プローバ及び学習モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの表面には、同一の電気素子回路を有する複数の半導体チップが形成されている。各半導体チップは、プローバ及びテスタを備えるウェーハテストシステムを用いて電気的特性が検査される。
【0003】
プローバは、ウェーハチャック上にウェーハを保持した状態において、プローブ針が具備されるプローブカードとウェーハチャックとを相対移動させ、半導体チップの電極パッドに対してプローブ針を電気接続させる。テスタは、プローブ針と電気接続される端子から、半導体チップに対して各種の試験信号を供給し、半導体チップから出力される信号を受信し、受信信号を解析して半導体チップが正常に動作するか否かをテストする。
【0004】
半導体チップは広い用途に使用され、広い温度範囲で使用されるので、半導体チップの検査は、例えば、室温、高温及び低温などの半導体チップが使用されると想定される環境に対応する温度が適用される。なお、ここでいう室温には、常温と称される概念が含まれ得る。低温は、室温に対して相対的に低い温度環境を意味する。同様に、高温は室温に対して相対的に高い温度環境を意味する。
【0005】
プローバのウェーハチャックには、例えば、ヒータ機構、チラー機構及びヒートポンプ機構などを含む温度調整装置が具備されており、温度調整装置を用いてウェーハチャック上に保持されているウェーハに対して加熱又は冷却が実施される。
【0006】
特許文献1は、ウェーハに対して温度センサが具備され、チャック温度制御の外乱要因となるウェーハの温度を直接測定するICテストハンドラが記載される。同文献に記載の装置は、非接触温度計を用いて、ICが収納されるICパッケージの表面温度を測定する。
【0007】
特許文献2は、プローブカードに具備される赤外線センサを用いて、ウェーハの温度を測定する検査装置が記載される。同文献に記載の装置は、電子デバイスを測定する際に、プローブカードに具備される赤外線センサを用いて、電子デバイスの温度が測定される。
【0008】
特許文献3は、テスタから出力される電力に基づきウェーハの発熱量を推定し、ウェーハの発熱量に基づきチャックの温度補正を実施する検査装置が記載される。同文献に記載の装置は、電力供給部から検査対象の電子デバイスへ供給された電力が入力され、電子デバイスへ供給された電力に基づき電子デバイスの発熱量が推定され、電子デバイスの発熱量から電子デバイスとチャックとの温度差が推定され、温度差推定値を用いてチャックの温度が制御される。
【0009】
特許文献1から特許文献3までのそれぞれに記載の装置は、ウェーハの温度、つまり、外乱を測定又は推測し、測定結果又は推測結果を用いて温度制御を実施して、ウェーハの検査における温度制御の性能の向上が図られている。なお、特許文献1に記載のIC、特許文献2、3に記載の電子デバイスは、上記したウェーハに形成された半導体チップに対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-80919号公報
【文献】特開2021-128965号公報
【文献】特開2022-90538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のウェーハに対して温度センサを具備する態様及び特許文献2に記載のプローブカードに温度センサを具備する態様では、プローバのシステムの外部に具備される温度センサが必要となる。設計上の問題などに起因してウェーハやプローブカードに温度センサを装備できないと、精度良く温度制御をできない場合がある。
【0012】
また、特許文献3に記載のテスタから出力される電力に基づきウェーハの発熱量を推定する態様では、テスタから出力される電力はテスタの仕様に依存し、互いに種類が異なる複数のウェーハに対する汎用的な測定が困難である。
【0013】
すなわち、互いに種類が異なる複数のウェーハに対する汎用的な測定を実現するには、チャックの温度など、プローバが直接取得できる係数などの情報を使用して、温度制御を実施する必要がある。
【0014】
また、ウェーハに形成される半導体チップの種類の違いなど、ウェーハの種類の違いに起因して、ウェーハの発熱量及びウェーハの発熱パターンが相違する。そうすると、既存の温度制御パラメータが適用されるウェーハの温度制御では、ウェーハの種類の違いなどの外乱に起因する温度変化が発生する場合、目標温度へ収束するまでの時間の遅れ及び制御量のハンチングなどの発生が懸念される。
【0015】
目標温度へ収束するまでの時間の遅れは、測定のスループットを低下させる原因となる。制御量のハンチングは、温度制御が不安定となり、温度制御の精度の低下が懸念される。温度制御の精度の低下は、不適切なウェーハの検査の原因となる。
【0016】
目標温度へ収束するまでの時間の遅れ等が発生する場合は、測定対象のウェーハごとに温度制御パラメータの調整が必要となる。一方、例えば、チャックの温度制御は、加熱制御及び冷却制御を一括して行っており、温度制御パラメータの決定は容易ではない。また、ウェーハは検査装置を使用するユーザの所有物であり、検査の事前に測定対象のウェーハを用いて温度制御パラメータを調整することは困難であり、測定の際に手動で温度制御パラメータの調整が行われる。そうすると、温度制御パラメータの調整の属人化及び生産性の低下が問題となる。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、チャック温度の制御パラメータの自動調整を実施し得る、温度制御装置、温度制御方法、プログラム、プローバ及び学習モデル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示の第1態様に係る温度制御装置は、複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得するチャック温度取得部と、チャック温度の変化の特徴と、チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用され、チャック温度が入力された場合に入力されたチャック温度の変化に応じた温度変化パターンを出力する分類部と、分類部へチャック温度が入力された場合に分類部から出力される温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、温度制御パラメータを設定する温度制御パラメータ設定部と、を備え、温度制御パラメータ設定部を用いて設定された温度制御パラメータを適用して、チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する温度制御装置である。
【0019】
本開示に係る温度制御装置によれば、チャック温度の変化の特徴とチャック温度の変化のパターンとの対応関係を学習した学習済モデルが適用される分類部を用いて、取得されたチャック温度が分類部へ入力された際に分類部から出力される温度制御パラメータが、チャック温度を調整する温度調整部へ適用される。これにより、チャック温度に基づくチャック温度を調整するチャック温度調整部へ適用される温度制御パラメータの自動調整を実施し得る。
【0020】
温度制御パラメータは、ウェーハチャックを加熱する際に適用される加熱制御パラメータ及びウェーハチャックを冷却するに適用される冷却制御パラメータを備え得る。
【0021】
温度制御パラメータは、複数の構成要素が含まれていてもよい。
【0022】
第2態様に係る温度制御装置は、第1態様に係る温度制御装置において、異なるタイミングにおいて取得された複数のチャック温度から、チャック温度の変化を導出するチャック温度変化導出部を備えてもよい。
【0023】
かかる態様によれば、チャック温度の変化の特徴に基づき、温度制御パラメータを導出し得る。
【0024】
第3態様に係る温度制御装置は、第1態様に係る温度制御装置において、学習済モデルは、チャック温度の変化の特徴を表す特徴量と、チャック温度の変化が分類された温度変化パターンと、の対応関係を学習し、分類部は、チャック温度の変化の特徴として特徴量を取得し、特徴量に対応する温度変化パターンを出力してもよい。
【0025】
かかる態様によれば、チャック温度の変化の特徴が定量化された特徴量に基づき、チャック温度の変化を分類し得る。
【0026】
第4態様に係る温度制御装置は、第1態様から第3態様のいずれか一態様に係る温度制御装置において、温度制御パラメータ設定部は、温度変化パターンに対応する調整係数が用いられる温度制御パラメータを導出してもよい。
【0027】
かかる態様において、温度制御パラメータとしてPID制御パラメータを適用し得る。
【0028】
第5態様に係る温度制御装置は、第1態様から第4態様のいずれか一態様に係る温度制御装置において、測定対象のウェーハの種類を含むウェーハ情報を取得するウェーハ情報取得部と、ウェーハの種類ごとに学習がされ生成された複数の学習済モデルと、を備え、分類部は、ウェーハ情報取得部を用いて取得されたウェーハ情報に含まれるウェーハの種類に応じて、複数の学習済モデルから1つの学習済モデルを選択してもよい。
【0029】
かかる態様によれば、ウェーハの種類に応じて、チャック温度の変化を分類し得る。
【0030】
本開示の第6態様に係る温度制御方法は、コンピュータが、複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得する工程と、チャック温度の変化の特徴と、チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用される分類部を用いて、チャック温度が入力された場合に入力されたチャック温度の変化に応じた温度変化パターンを出力する工程と、分類部へチャック温度が入力された場合に分類部から出力される温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、温度制御パラメータを設定する工程と、温度制御パラメータを適用して、チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する工程と、を実行する温度制御方法である。
【0031】
本開示に係る温度制御方法によれば、本開示に係る温度制御装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0032】
本開示に係る温度制御方法において、第2態様から第5態様のいずれか一態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、温度制御装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う温度制御方法の構成要素として把握することができる。
【0033】
本開示の第7態様に係るプログラムは、コンピュータに、複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得する機能と、チャック温度の変化の特徴と、チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用される分類部を用いて、チャック温度が入力された場合に入力されたチャック温度の変化に応じた温度変化パターンを出力する機能と、分類部へチャック温度が入力された場合に分類部から出力される温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、温度制御パラメータを設定する機能と、温度制御パラメータを適用して、チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する機能と、を実現させるプログラムである。
【0034】
本開示に係るプログラムによれば、本開示に係る温度制御装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0035】
本開示に係るプログラムにおいて、第2態様から第5態様のいずれか一態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、温度制御装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担うプログラムの構成要素として把握することができる。
【0036】
本開示の第8態様に係るプローバは、複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックと、プローブ針を有するプローブカードと、ウェーハチャックをプローブ針に対して相対移動させる相対移動部と、ウェーハチャックの温度を調整するチャック温度調整装置と、温度制御パラメータを適用して、チャック温度調整装置の動作を制御する温度制御装置と、を備えたプローバであって、温度制御装置は、ウェーハチャックの温度を表すチャック温度を取得するチャック温度取得部と、チャック温度の変化の特徴と、チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルが適用され、チャック温度が入力された場合に入力されたチャック温度の変化に応じた温度変化パターンを出力する分類部と、分類部へチャック温度が入力された場合に分類部から出力される温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、温度制御パラメータを設定する温度制御パラメータ設定部と、を備え、温度制御パラメータ設定部を用いて設定された温度制御パラメータを適用して、チャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御するプローバである。
【0037】
本開示に係るプローバによれば、本開示に係る温度制御装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0038】
本開示に係るプローバにおいて、第2態様から第5態様のいずれか一態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、温度制御装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担うプローバの構成要素として把握することができる。
【0039】
本開示の第9態様に係る学習モデル生成方法は、複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持するウェーハチャックの温度であるチャック温度の変化の特徴と、チャック温度の変化が分類された規定の数の温度変化パターンと、の対応関係を学習した学習済モデルを生成する学習モデル生成方法である。
【0040】
本開示に係る学習モデル生成方法によれば、本開示に係る温度制御装置に適用される学習済モデルを提供することが可能である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、チャック温度の変化の特徴とチャック温度の変化のパターンとの対応関係を学習した学習済モデルが適用される分類部を用いて、取得されたチャック温度が分類部へ入力された際に分類部から出力される温度制御パラメータが、チャック温度を調整する温度調整部へ適用される。これにより、チャック温度に基づくチャック温度を調整するチャック温度調整部へ適用される温度制御パラメータの自動調整を実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は実施形態に係るプローバの概略構成図である。
図2図2図1に示すプローバの外観斜視図である。
図3図3はウェーハの上面図である。
図4図4図1に示すプローバの電気的構成を示す機能ブロック図である。
図5図5図4に示すチャック温度制御部の構成例を示す機能ブロック図である。
図6図6図5に示すチャック温度制御部の変形例を示す機能ブロック図である。
図7図7はウェーハ検査中における温度制御パラメータの最適化の模式図である。
図8図8は従来技術に係るチャック温度制御パラメータ調整の模式図である。
図9図9はチャック温度の変化の第1パターンの説明図である。
図10図10はチャック温度の変化の第2パターンの説明図である。
図11図11はチャック温度の変化の第3パターンの説明図である。
図12図12はチャック温度の変化の第4パターンの説明図である。
図13図13はチャック温度の変化のパターンの分類に適用される学習済モデル生成の模式図である。
図14図14図13に示す学習済モデルが適用されるチャック温度の変化のパターンの分類の模式図である。
図15図15はチャック温度制御の具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明については、適宜、省略される。
【0044】
[実施形態に係るプローバの構成例]
図1は実施形態に係るプローバの概略構成図である。図2図1に示すプローバの外観斜視図である。図3はウェーハの上面図である。図1及び図2に示すプローバ10は、ウェーハに形成される複数の半導体チップの電気的特性を検査するウェーハテストシステムに用いられる。プローバ10を用いて検査されるウェーハWを図3に示す。
【0045】
同図には、ウェーハチャック20に支持されるウェーハWの上面が図示される。ウェーハWは、複数の半導体チップ9が形成される。各半導体チップ9には、複数の電極パッド9aが形成される。
【0046】
図1及び図2に示すプローバ10は、図1に示すベース12、Yステージ13、Y移動部14、Xステージ15、X移動部16、Zθステージ17、Zθ移動部18及びウェーハチャック20を備える。また、プローバ10は、図2に示す支柱23、ヘッドステージ24、カードホルダ25及びプローブカード26を備える。更に、プローバ10は、図1に示すウェーハ位置合わせカメラ29、上下ステージ30、針位置合わせカメラ31、クリーニング板32及び温度センサ34を備える。なお、プローバ10の構成は、図1及び図2に示す例に限定されず、適宜、変更等が可能である。
【0047】
ベース12の上面には、Y移動部14を用いて、Yステージ13がY軸方向に移動自在に支持される。Y移動部14は、ベース12の上面においてYステージ13をY軸方向に移動させる。
【0048】
Y移動部14は、例えば、ベース12の上面に配置されるガイドレールであり、Y軸に平行なガイドレール、Yステージ13の下面に配置されるスライダであり、ガイドレールに係合するスライダ、及びYステージ13をY軸方向に移動させるモータ等のアクチュエータを備える。
【0049】
Yステージ13の上面には、X移動部16を用いて、Xステージ15がX軸方向に移動自在に支持される。X移動部16は、Yステージ13の上面においてXステージ15をX軸方向に移動させる。
【0050】
X移動部16は、例えば、Yステージ13の上面に配置されるガイドレールであり、X軸に平行なガイドレール、Xステージ15の下面に配置されるスライダであり、ガイドレールに係合するスライダ、及びXステージ15をX軸方向に移動させるモータ等のアクチュエータを備える。
【0051】
Xステージ15の上面には、Zθステージ17及び上下ステージ30が配置される。Zθステージ17は、Zθ移動部18を備える。Zθステージ17の上面には、ウェーハチャック20が支持される。
【0052】
Zθ移動部18は、例えば、Zθステージ17を昇降させる昇降機構及びZθステージ17をZ軸に対して平行となる回転軸の周りに回転させる回転機構を備える。Zθ移動部18は、Zθステージ17の上面に支持されるウェーハチャック20をZ軸方向に移動させ、かつ、ウェーハチャック20をZ軸に対して平行となる方向の回転軸の周りに回転させる。
【0053】
ウェーハチャック20の上面には、真空吸着等の各種の支持方法を適用してウェーハWが支持される。また、ウェーハチャック20は、チャック温度調整部20aを備える。チャック温度調整部20aは、ウェーハチャック20の温度を調整して、ウェーハチャック20に支持されるウェーハWの温度を調整する。
【0054】
チャック温度調整部20aは、例えば、ヒータ機構、チラー機構及びヒートポンプ機構などの公知の機構が適用される。チャック温度調整部20aは、チャック温度制御部から送信される指令信号に基づき動作が制御される。チャック温度制御部は、符号21を付して図4に図示する。なお、実施形態に記載のチャック温度調整部20aは、ウェーハチャックの温度を調整するチャック温度調整装置の一例である。
【0055】
ウェーハチャック20は、上記したZθステージ17等を用いて、XYZ軸方向に移動自在に支持され、かつ、Z軸に対して平行となる方向の回転軸の周りに回転自在に支持される。上記したZθステージ17等は、X方向、Y方向、Z方向及び回転方向について、ウェーハチャック20に支持されるウェーハWとプローブ針35とを相対移動させる相対移動部として機能する。
【0056】
図2に示す支柱23は、ベース12の上面に具備され、Yステージ13、Xステージ15及びZθステージ17よりも上方の位置において、ヘッドステージ24を支持する。すなわち、ヘッドステージ24は、支柱23を用いてベース12の上面に固定される。
【0057】
ヘッドステージ24の中央部には、カードホルダ25が具備される。カードホルダ25は、プローブカード26の外周を保持する保持穴25aが形成される。プローブカード26は、プローブカード26の保持穴25aへ挿入され、ヘッドステージ24及びカードホルダ25を用いて、ウェーハWに対向する位置に支持される。なお、保持穴25aは図1に図示される。
【0058】
図1に示すプローブカード26は、検査対象の半導体チップ9の電極パッド9aの配置等に応じて配置されるプローブ針35を備える。カードホルダ25及びプローブカード26は、半導体チップ9の種類に応じて交換される。
【0059】
プローブカード26には、プローブ針35と電気的に接続される接続端子が具備される。接続端子はテスタが接続される。テスタは、プローブカード26の接続端子及びプローブ針35を介して、半導体チップ9の電極パッド9aに対して各種の試験信号を供給し、かつ、電極パッド9aから出力される信号を受信する。テスタは、電極パッド9aから出力される信号を解析し、半導体チップ9が正常に動作するか否かをテストする。テスタの構成及びテスト方法は公知技術を適用し得る。ここでは、テスタの構成等の詳細な説明は省略する。なお、接続端子及びテスタの図示を省略する。
【0060】
ウェーハ位置合わせカメラ29は、ウェーハチャック20を用いて支持されるウェーハWの半導体チップ9を撮影する。ウェーハ位置合わせカメラ29を用いて撮影される半導体チップ9の撮影画像は、検査対象の半導体チップ9の電極パッド9aの位置の検出に用いられる。ウェーハ位置合わせカメラ29が配置される位置及びウェーハ位置合わせカメラ29の構造等については特に限定されない。
【0061】
上下ステージ30は、針位置合わせカメラ31及びクリーニング板32が具備される。針位置合わせカメラ31及びクリーニング板32は、プローブカード26等と対向する位置に配置される。また、上下ステージ30は、針位置合わせカメラ31及びクリーニング板32をZ軸方向に移動自在に支持する昇降機構が具備される。上下ステージ30は、昇降機構を動作させて、針位置合わせカメラ31及びクリーニング板32のZ軸方向の位置の調整を実施し得る。なお、Z軸方向に移動自在な昇降機構の図示を省略する。
【0062】
針位置合わせカメラ31及びクリーニング板32は、上下ステージ30を介して、Yステージ13及びY移動部14を用いてY軸方向について移動自在に構成され、かつ、Xステージ15及びX移動部16を用いてX軸方向について移動自在に支持される。すなわち、針位置合わせカメラ31及びクリーニング板32とプローブ針35とは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について相対移動が可能に構成される。
【0063】
針位置合わせカメラ31は、プローブ針35を撮影する。針位置合わせカメラ31を用いて撮影されたプローブ針35の撮影画像は、プローブ針35の先端位置の検出に用いられる。具体的には、プローブ針35の先端位置のXY座標は針位置合わせカメラ31の位置座標に基づき検出され、プローブ針35の先端位置のZ座標は針位置合わせカメラ31の焦点位置に基づき検出される。
【0064】
ウェーハWの半導体チップ9の検査が実施される際に、プローブカード26が交換されるごとに、プローブ針35の先端位置の検出が実施される。規定数の半導体チップ9の検査が実施されるごとに、プローブ針35の先端位置の検出が実施されてもよい。
【0065】
プローブ針35の先端位置の検出では、プローブ針35の先端位置の撮影位置へ針位置合わせカメラ31を移動させ、針位置合わせカメラ31を用いて、プローブ針35の先端位置の撮影が実施され、プローブ針35の先端位置の撮影画像に基づき、プローブ針35の先端位置が検出される。
【0066】
また、ウェーハチャック20を用いて支持される検査対象のウェーハWにおける、半導体チップ9の電極パッド9aの位置の検出が実施される。具体的には、検査対象のウェーハWにおける半導体チップ9の電極パッド9aの撮影位置へウェーハ位置合わせカメラ29を移動させ、ウェーハ位置合わせカメラ29を用いて電極パッド9aが撮影され、電極パッド9aの撮影画像に基づき電極パッド9aの位置が検出される。
【0067】
そして、最初の検査対象の半導体チップ9における電極パッド9aに対して、プローブ針35を電気的に接触させ、テスタを用いて、最初の検査対象の半導体チップ9の検査が実施される。
【0068】
以下、検査対象のウェーハWを移動させ、次の検査対象の半導体チップ9の電極パッド9aに対してプローブ針35を電気的に接触させ、検査対象の半導体チップ9の検査が実施される。この手順を繰り返して、検査対象の複数の半導体チップ9についての検査が順に実施される。プローブ針35の先端は、クリーニング板32を用いて、適宜、クリーニング及び研磨等が実施される。
【0069】
なお、半導体チップ9の具体的な検査方法は、例えば、特開2018-117095号公報に記載される検査方法など、公知の検査方法を適用し得る。ここでは、半導体チップ9の検査方法の詳細な説明は省略する。
【0070】
温度センサ34は、カードホルダ25の下面及びプローブカード26の下面に対向する位置に具備される。カードホルダ25の下面は、カードホルダ25におけるプローブカード26が支持される面に対して反対側の面である。プローブカード26の下面は、プローブカード26のカードホルダ25に支持される面である。
【0071】
温度センサ34の配置例として、Zθステージ17の側面及び上下ステージ30の側面等が挙げられる。温度センサ34は、Yステージ13、Xステージ15、Zθステージ17及び上下ステージ30を用いて、カードホルダ25及びプローブカード26に対して相対移動が自在に支持される。
【0072】
温度センサ34は、例えば、放射エネルギー検出方式を用いた非接触式の温度センサが適用され、カードホルダ25及びプローブカード26の温度の非接触の測定を実施し得る。カードホルダ25及びプローブカード26は、ウェーハチャック20の温度の影響を受けて熱変形し得る。カードホルダ25等の熱変形に伴い、プローブ針35の先端位置が規定に位置に対して変位してしまう。
【0073】
プローバ10は、温度センサ34を用いて、カードホルダ25及びプローブカード26の温度を測定し、カードホルダ25等の熱変形に伴うプローブ針35の先端位置の変位を予測してもよい。例えば、プローバ10はプローブ針35の先端位置の変位として、プローブ針35の先端位置の変位量及び変位方向を予測してもよい。
【0074】
[実施形態に係るプローバの電気的構成例]
図4図1に示すプローバの電気的構成を示す機能ブロック図である。図4には、主として、ウェーハチャック20の温度制御に関する機能、及びプローブ針35とウェーハWにおける半導体チップ9の電極パッド9aとの接触制御に関する機能が図示され、他の機能の図示は、適宜、省略される。
【0075】
制御装置40は、プローバ10の各部を統括制御する。制御装置40は、コンピュータが適用される。制御装置40は、プローバ10の各部の機能に対応する各種のプログラムを実行して、プローバ10の各部の機能を実現する。制御装置40は、プローバ10の本体に配置されてもよいし、プローバ10の外部に配置されてもよい。
【0076】
コンピュータの形態は、サーバであってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよく、ワークステーションであってもよく、また、タブレット端末などであってもよい。コンピュータの形態は、仮想マシンであってもよい。
【0077】
各種のプログラムは、制御装置40に具備される記憶装置に記憶されてもよいし、制御装置40の外部であり、プローバ10の内部に具備される記憶装置に記憶されてもよい。制御装置40は、プローバ10の外部の記憶装置から各種のプログラムを取得してもよい。
【0078】
制御装置40は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成される演算回路を備える。各種のプロセッサの例として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス等が挙げられる。
【0079】
プログラマブル論理デバイスの例として、SPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)等が挙げられる。制御装置40の各種機能は、1つのプロセッサを用いて実現されてもよいし、複数のプロセッサを用いて実現されてもよい。複数のプロセッサは、同種の複数のプロセッサであってもよいし、互いに異なる種類の複数のプロセッサであってもよい。
【0080】
制御装置40は、各種の通信インターフェースを備える。制御装置40は、各種の通信インターフェースを介して、ウェーハ位置合わせカメラ29、針位置合わせカメラ31及び温度センサ34等の周辺機器と通信自在に接続される。通信インターフェースは、USB(Universal Serial Bus)など、各種の規格を適用し得る。通信インターフェースの通信形態は、有線通信及び無線通信のいずれを適用してもよい。
【0081】
制御装置40は、チャック温度制御部21を備える。チャック温度制御部21は、ウェーハチャック20に具備されるチャック温度調整部20aの動作を制御する。チャック温度制御部21は、ウェーハチャック20に具備されるチャック温度センサ20bからチャック温度を取得する。チャック温度制御部21の詳細は後述する。
【0082】
制御装置40は、カード温度取得部42を備える。カード温度取得部42は、温度センサ34から出力されるカードホルダ25の温度及びプローブカード26の温度を取得する。カード温度取得部42は、温度センサ34から出力される出力信号に対応する通信インターフェースを備える。
【0083】
制御装置40は、針位置取得部44を備える。針位置取得部44は、針位置合わせカメラ31から出力されるプローブ針35の先端位置の撮影画像を取得する。針位置取得部44は、プローブ針35の先端位置の撮影画像から、プローブ針35の先端位置の情報を取得する。情報の取得には、元情報を処理して所望の情報を生成する概念が含まれ得る。
【0084】
制御装置40は、移動制御部52を備える。移動制御部52は、X移動部16の動作を制御して、Xステージ15を駆動する。移動制御部52は、Y移動部14の動作を制御して、Yステージ13を駆動する。移動制御部52は、Zθ移動部18の動作を制御して、Zθステージ17を駆動する。
【0085】
移動制御部52は、ウェーハ位置合わせカメラ29から送信される検査対象の半導体チップ9の撮影画像から、検査対象の半導体チップ9の位置を取得する。また、移動制御部52は、針位置取得部44からプローブ針35の先端位置の情報を取得する。
【0086】
移動制御部52は、ウェーハWの検査を実施する際に、Xステージ15、Yステージ13及びZθステージ17を駆動させて、プローブ針35に対してウェーハWを相対移動させ、プローブ針35に対して検査対象の複数の半導体チップ9を順番に接触させる。
【0087】
移動制御部52は、カード温度取得部42を用いて取得されるカードホルダ25の温度及びプローブカード26の温度を取得して、カードホルダ25の温度等の温度変化に起因するプローブ針35の先端位置の変動を補正してもよい。
【0088】
制御装置40は、ウェーハ情報取得部54を備える。ウェーハ情報取得部54は、検査対象のウェーハWの種類を特定するウェーハ情報を取得する。ウェーハ情報は、ウェーハWに形成される半導体チップ9の種類の情報が含まれる。チャック温度制御部21は、ウェーハ情報取得部54を用いて取得されるウェーハ情報に基づき、チャック温度の制御を実施する。ウェーハ情報取得部54は、チャック温度制御部21の構成要素とされてもよい。
【0089】
[チャック温度制御部の構成例]
図5図4に示すチャック温度制御部の構成例を示す機能ブロック図である。チャック温度制御部21は、コンピュータが適用される温度制御装置として構成してもよい。温度制御装置として機能するコンピュータは、図4に示す制御装置40として機能するコンピュータと同様のコンピュータを適用し得る。
【0090】
図5に示すチャック温度制御部21は、チャック温度を使用し、チャック温度調整部20aに適用されるチャック温度制御パラメータの自動調整を行う。チャック温度制御部21は、学習済の学習モデルが具備される。
【0091】
チャック温度制御部21は、チャック温度取得部100、分類部102、学習済モデル記憶部103及びチャック温度制御パラメータ設定部104を備える。チャック温度取得部100は、予め規定されるサンプリング周期を適用してチャック温度を取得する。
【0092】
分類部102は、チャック温度取得部100を用いて取得されるチャック温度に基づき、チャック温度の変化を、予め規定される複数の温度変化パターンに含まれる1つの温度変化パターンに分類する。分類部102は、チャック温度の変化の特徴と、温度変化パターンとの関係を学習データとして、教師あり学習を実施して得られる学習済モデルが適用される。
【0093】
学習済モデル記憶部103は、分類部102に適用される1つ以上の学習済モデルが記憶される。分類部102は、学習済モデル記憶部103から学習済モデルを読み出し、チャック温度の変化の分類を実施する。
【0094】
学習済モデル記憶部103は、複数の種類のウェーハWのそれぞれに対応する複数の学習済モデルが記憶されてもよい。分類部102は、ウェーハ情報取得部54を用いて取得される検査対象のウェーハ情報に対応する1つの学習済モデルを選択し、チャック温度の変化の分類を実施し得る。
【0095】
学習済モデル記憶部103に記憶される学習済モデルは、コンピュータを用いて生成し得る。学習済モデルの生成に適用されるコンピュータは、チャック温度制御部21の外部の装置であってもよいし、チャック温度制御部21に具備される装置であってもよい。
【0096】
チャック温度制御パラメータ設定部104は、チャック温度の入力に応じて分類部102から出力される温度変化パターンを取得し、温度変化パターンに対応するチャック温度制御パラメータを導出する。
【0097】
チャック温度制御パラメータ設定部104は、加熱制御パラメータを導出する加熱制御パラメータ導出部110及び冷却制御パラメータを導出する冷却制御パラメータ導出部112を備える。
【0098】
チャック温度制御パラメータ設定部104は、チャック温度調整部20aに対して、チャック温度制御パラメータとして、加熱制御パラメータ及び冷却制御パラメータを設定する。
【0099】
本実施形態では、チャック温度制御パラメータの例として、PID制御パラメータを例示する。図5に示す加熱制御PIDは、加熱制御パラメータ導出部110であり、加熱制御に適用される加熱制御パラメータとして、PID制御パラメータが導出されることを意味する。また、同図に示す冷却制御PIDは、冷却制御パラメータ導出部112であり、冷却制御に適用される冷却制御パラメータとして、PID制御パラメータが導出されることを意味する。なお、PIDのPは比例を表すProportionalの頭文字であり、Iは積分を表すIntegralの頭文字であり、Dは微分を表すDerivativeの頭文字である。
【0100】
図6図5に示すチャック温度制御部の変形例を示す機能ブロック図である。図6に示すチャック温度制御部21aは、図5に示すチャック温度制御パラメータ設定部104に代わり、チャック温度制御パラメータ設定部104aを備える。
【0101】
チャック温度制御パラメータ設定部104aは、加熱制御パラメータ導出部110a及び冷却制御パラメータ導出部112aを備える。加熱制御パラメータ導出部110aは、分類部102から出力される温度変化パターンを取得し、温度変化パターンに対応する加熱制御パラメータを導出する。また、加熱制御パラメータ導出部110aは、加熱制御パラメータに基づく冷却制御量を導出する。
【0102】
冷却制御パラメータ導出部112aは、加熱制御パラメータ導出部110aから冷却制御量を取得し、冷却制御量に基づき冷却制御パラメータを導出する。チャック温度制御パラメータ設定部104aは、チャック温度調整部20aに対して、チャック温度制御パラメータとして、加熱制御パラメータ及び冷却制御パラメータを設定する。
【0103】
[ウェーハ検査中におけるチャック温度制御の具体例]
図7はウェーハ検査中における温度制御パラメータの最適化の模式図である。図7では、横軸が時間を表し、縦軸がチャック温度を表すグラフ形式を適用して、チャック温度の変化を図示する。1つの半導体チップ9の検査時間において、複数回のチャック温度の取得が実施され、グラフG10等として図示されるがチャック温度の変化が取得される。グラフG10等に示す時間軸に対して平行となる温度範囲は、ウェーハWの検査におけるチャック温度の許容温度範囲を示す。
【0104】
図7に示す1回目コンタクトは、半導体チップ91の検査を表す。半導体チップ91の検査には、規定のチャック温度制御パラメータの初期値が適用され、ウェーハチャック20の温度制御が実施される。なお、図8に示すグラフG10等の曲線は、温度履歴を表す仮想的な曲線である。
【0105】
グラフG10は、半導体チップ91の検査中に取得されたチャック温度の変化を表す。半導体チップ91の検査中とは、半導体チップ91に対するプローブ針35のコンタクトが発生したタイミングから、テスタが測定を終了し、半導体チップ91に対するプローブ針35のコンタクトが外されるタイミングまでの期間である。
【0106】
半導体チップ91の検査中におけるチャック温度の測定は、半導体チップ91の検査のバックグラウンドの処理として実施される。チャック温度の測定は、半導体チップ9とプローブ針35とのコンタクトに応じた実施でなくてもよい。また、複数の半導体チップ9の検査について、連続的に一定のサンプリング周期を適用して、チャック温度のサンプリングが実施されてもよい。
【0107】
半導体チップ91の検査中のチャック温度は、許容温度範囲を外れる場合があり、チャック温度制御パラメータの調整が実施される。図5に示すチャック温度制御パラメータ設定部104は、図7のグラフG10として図示されるチャック温度の変化に対応するチャック温度制御パラメータを導出し、チャック温度調整部20aに対して、導出したチャック温度制御パラメータを設定する。
【0108】
2回目コンタクトとして図示される半導体チップ92の検査では、新たなチャック温度制御パラメータが設定され、ウェーハチャック20の温度制御が実施される。グラフG12は、半導体チップ92の検査中に取得されたチャック温度の変化を表す。
【0109】
半導体チップ92の検査中のチャック温度は、半導体チップ91の検査中のチャック温度と比較して改善されているが、許容温度範囲を外れる場合がある。チャック温度制御パラメータ設定部104は、図7のグラフG12として図示されるチャック温度の変化に対応するチャック温度制御パラメータを導出し、チャック温度調整部20aに対して、取得したチャック温度制御パラメータを設定する。
【0110】
3回目コンタクトとして図示される半導体チップ93の検査では、新たなチャック温度制御パラメータが設定され、ウェーハチャック20の温度制御が実施される。グラフG14は、半導体チップ93の検査中に取得されたチャック温度の変化を表す。
【0111】
半導体チップ93の検査中のチャック温度は、半導体チップ92の検査中のチャック温度と比較して改善され、許容温度範囲に収められる。このようにして、コンタクトするごとにチャック温度制御パラメータが更新され、チャック温度制御パラメータが最適化される。これにより、検査対象のウェーハに最適なチャック温度制御パラメータが選定され、ウェーハチャック20の温度制御が実施される。
【0112】
図8は従来技術に係るチャック温度制御パラメータ調整の模式図である。図8には、グラフ形式を適用して、チャック温度の変化を図示する。なお、図8に示すグラフG1、グラフG2及びグラフG3の横軸は時間を表し、グラフG1等の縦軸はチャック温度を表す。
【0113】
従来技術に係るウェーハチャック20の温度制御では、オペレータがチャック温度の変化を把握して、オペレータの経験的な観点に基づき、チャック温度制御パラメータとして適用されるPID制御パラメータ(K,K,K)の調整が実施されていた。
【0114】
例えば、グラフG1に示すように、サンプリングタイミングt11、サンプリングタイミングt12及びサンプリングタイミングt13のそれぞれにおいてチャック温度Tc11、Tc12及びTc13が取得された場合に、チャック温度制御パラメータとして既に設定されたPID制御パラメータ(K,K,K)のpパラメータK、iパラメータK及びdパラメータKのそれぞれに対して、オペレータの経験的な観点に基づく調整係数C、調整係数C及び調整係数Cが導出され、調整係数(C,C,C)が乗算される新たなPID制御パラメータ(C×K,C×K,C×K)が設定される。
【0115】
また、グラフG2に示すように、サンプリングタイミングt21、サンプリングタイミングt22及びサンプリングタイミングt23のそれぞれにおいてチャック温度Tc21、Tc22及びTc23が取得された場合に、dパラメータKに対して、オペレータの経験的な観点に基づく調整係数Cが導出される。更に、グラフG3に示すように、サンプリングタイミングt31、サンプリングタイミングt32及びサンプリングタイミングt33のそれぞれにおいてチャック温度Tc31、Tc32及びTc33が取得された場合に、iパラメータKに対して、オペレータの経験的な観点に基づく調整係数Cが導出される。すなわち、従来技術に係るチャック温度制御では、ウェーハWの検査中に取得される1つ以上のチャック温度を用いて、オペレータの経験的な観点に基づき、チャック温度制御パラメータが設定されていた。
【0116】
[分類部に適用される学習モデルの説明]
本実施形態に係るチャック温度制御部21は、機械学習を適用してチャック温度制御パラメータの自動調整を実施する。以下に、チャック温度制御部21に適用される機械学習について詳細に説明する。
【0117】
図8には、3種類のチャック温度の変化を例示したが、チャック温度の変化の種類は無数に存在する。無数に存在するチャック温度の変化の全てを対象とする機械学習は困難である。そこで、チャック温度の変化を複数のパターンに分類する学習済モデルを生成して、学習済モデルを図5に示す分類部102へ適用する。
【0118】
図9はチャック温度の変化の第1パターンの説明図である。図9には、横軸が時間を表し、縦軸がチャック温度を表すグラフ形式を適用して、チャック温度の変化を図示する。図9に示すグラフG20、グラフG22、グラフG24及びグラフG26のそれぞれは、チャック温度がハンチングする第1パターンを表す。
【0119】
図10はチャック温度変化の第2パターンの説明図である。図10には図9と同様のグラフ形式を適用して、チャック温度の変化を図示する。図10に示すグラフG30、グラフG32及びグラフG34のそれぞれは、チャック温度の変化の収束時間が長い第2パターンを表す。
【0120】
図11はチャック温度変化の第3パターンの説明図である。図11には図9及び図10と同様のグラフ形式を適用して、チャック温度の変化を図示する。図11に示すグラフG40、グラフG42、グラフG44及びグラフG46のそれぞれは、チャック温度の変化が大きい第3パターンを表す。
【0121】
図12はチャック温度の変化の第4パターンの説明図である。図12には図9から図11と同様のグラフ形式を適用して、チャック温度の変化を図示する。図12に示すグラフG50は、チャック温度が安定している第4パターンを表す。
【0122】
図13はチャック温度の変化のパターンの分類に適用される学習済モデル生成の模式図である。まず、チャック温度の変化を表す複数の温度変化サンプルを、決まった数の特徴量を用いて表し、チャック温度の温度変化のパターンにラベルを付与する。図13には、複数の温度変化サンプルとして、温度変化サンプルSP1、温度変化サンプルSP2、温度変化サンプルSP3、温度変化サンプルSP4、温度変化サンプルSP5及び温度変化サンプルSP6を例示する。
【0123】
チャック温度の変化を特徴量化する際の観点として、温度変化の出だしの方向、温度変化が収束するまでの時間、許容温度範囲から外れた温度の面積、温度変化の変曲点の数、温度変化の周波数及び許容温度範囲から外れた回数などが挙げられる。
【0124】
温度変化の出だしの方向は、最初のサンプリングにおける温度測定値と、2番目のサンプリングにおける温度測定値とから導出される。温度変化の出だしの方向は、温度が上昇する方向を正方向とし、温度が下降する方向を負方向とし得る。
【0125】
許容温度範囲から外れた温度の面積とは、温度変化を表す曲線において許容温度範囲PRからはずれた部分の面積である。温度変化の変曲点の数は、温度変化を表す曲線における変曲点の数である。温度変化の周波数は、温度変化を表す曲線における周波数であり、温度変化を表す曲線に対してフーリエ変換を施して導出される。
【0126】
図13に示すように、温度変化サンプルSP1及び温度変化サンプルSP2は、チャック温度の変化がハンチングする第1パターンのラベルが付与される。同様に、温度変化サンプルSP3及び温度変化サンプルSP4は、チャック温度の変化の収束時間が長い第2パターンのラベルが付与され、温度変化サンプルSP5及び温度変化サンプルSP6は、チャック温度の変化が大きい第3パターンのラベルが付与される。
【0127】
学習済モデル200は、温度変化を表す特徴量と、チャック温度の変化が分類された温度変化パターンとのペアを学習データとして学習を実施して生成される。学習済モデル200は、チャック温度の変化の特徴量が入力されると、チャック温度の変化の特徴量に対応する温度変化パターンが出力される。
【0128】
学習済モデル200に適用される教師あり機械学習のアルゴリズムの例として、k-近傍法、分類木などの決定木、ランダムフォレスト、非線形SVM及びニューラルネットワークなどが挙げられる。なお、SVMは、Support-Vector Machineの省略語である。
【0129】
学習済モデル200は、ウェーハWの種類ごとに学習が実施され、生成される。複数のウェーハWの種類のそれぞれに対応する複数の学習済モデル200は、ウェーハWの種類がインデックスとして付与される。
【0130】
図5に示すチャック温度制御部21は、チャック温度の変化からチャック温度の変化に対応する特徴量を導出する特徴量導出部を備えてもよい。すなわち、分類部102は、特徴量導出部を備え、チャック温度の変化が入力されると、チャック温度の変化に対応する温度変化パターンを出力してもよい。特徴量導出部は、分類部102の構成要素としてもよい。
【0131】
また、チャック温度制御部21は、時系列の順に取得された複数のチャック温度からチャック温度の変化を導出するチャック温度変化導出部を備えてもよい。すなわち、分類部102は、チャック温度変化導出部を備え、時系列の順に複数のチャック温度が入力されると、チャック温度の変化に対応する温度変化パターンを出力してもよい。
【0132】
すなわち、分類部102は、入力されるチャック温度を表す入力データの形式に対応するチャック温度の変化を導出するチャック温度変化導出部を備えてもよい。学習済モデル200は、チャック温度の変化の特徴とチャック温度の変化のパターンとの関係を学習した学習済モデルとして把握し得る。なお、実施形態に記載の学習済モデル200は、チャック温度の変化の特徴とチャック温度の変化が分類された温度変化パターンとの対応関係を学習した学習済モデルの一例である。
【0133】
複数のチャック温度の変化のパターンのそれぞれには、チャック温度制御パラメータに対して適用される調整係数が関連付けされている。図13に示す例では、チャック温度の変化がハンチングする第1パターンには、チャック温度制御パラメータ(K,K,Kd1)に対して適用される調整係数(Cp1,Ci1,Cd1)が対応付けされる。同様に、チャック温度の変化の収束時間が長い第2パターンには、調整係数(Cp2,Ci2,Cd2)が対応付けされ、チャック温度の変化が大きい第3パターンには、調整係数(Cp3,Ci3,Cd3)が対応付けされる。
【0134】
チャック温度の変化のパターンと調整係数との関係は、チャック温度の変化のパターンごとに、チャック温度制御パラメータ(K,K,K)の調整を繰り返し実施し、最終的に安定したチャック温度制御パラメータと、チャック温度制御パラメータの初期値との関係から導出される。なお、実施形態に記載の学習済モデル200を生成する手順は、学習モデル生成方法の一例である。
【0135】
[学習済モデルの運用]
図14図13に示す学習済モデルが適用されるチャック温度の変化のパターンの分類の模式図である。図14には、チャック温度を予め規定される複数の温度変化パターンにおける1つ温度変化パターンに分類し、温度変化パターンに対応する調整係数を導出するチャック温度制御方法の手順を示す。
【0136】
チャック温度取得工程S10では、図5に示すチャック温度取得部100を用いて、チャック温度を取得する。分類工程S12では、図5に示す分類部102は、チャック温度の変化に対応する温度変化パターンを出力する。図14には、温度変化パターンの出力210として、温度変化パターンごとに確からしさを表すスコアが出力される例を示す。
【0137】
チャック温度制御パラメータ取得工程S14では、チャック温度制御パラメータ設定部104は、分類工程S12において分類部102から出力された温度変化パターンに対応するチャック温度制御パラメータを出力する。図14には、温度変化パターンとして、スコアの最高値を有するチャック温度の変化がハンチングする第1パターンが採用され、第1パターンに対応する調整係数(C,C,C)が出力される例を示す。
【0138】
チャック温度制御パラメータ設定部104は、調整係数(C,C,C)が適用される加熱制御パラメータ及び冷却制御パラメータをチャック温度調整部に対して設定する。チャック温度調整部に対して、加熱制御パラメータ及び冷却制御パラメータが設定される工程は、チャック温度制御パラメータ設定工程として、チャック温度制御方法に含まれていてもよい。
【0139】
図14に示すチャック温度取得工程S10の後に、時系列の順に取得された複数のチャック温度からチャック温度の変化を導出する工程が実行されてもよい。チャック温度の変化を導出する工程は、チャック温度取得工程S10と一体に実行されてもよい。
【0140】
チャック温度の変化を導出する工程の後に、チャック温度の変化からチャック温度の変化に対応する特徴量を導出する工程が実行されてもよい。特徴量を導出する工程は、チャック温度の変化を導出する工程と一体に実行されてもよい。
【0141】
分類工程S12の前に、測定対象のウェーハWの種類を判定し、ウェーハWの種類に応じた学習済モデル200を選択する学習モデル選択工程が実行されてもよい。学習モデル選択工程は、分類工程S12と一体に実行されてもよい。
【0142】
[チャック温度制御の具体例]
図15はチャック温度制御の具体例を示す模式図である。図15には、図7と同様に、1枚のウェーハWに含まれる複数の半導体チップ9の検査が順番に実施される場合が図示される。
【0143】
1回目コンタクトとして図示される最初の半導体チップ9の検査には、チャック温度制御パラメータの初期値(Kp0,Ki0,Kd0)が設定される。1回目コンタクトにおいて、例えば、チャック温度の変化がハンチングする第1パターンに分類されると、第1パターンに対応する調整係数(Cp1,Ci1,Cd1)が取得される。
【0144】
2回目コンタクトには、チャック温度制御パラメータ(Cp1×Kp0,Ci1×Ki0,Cd1×Kd0)が設定される。2回目コンタクトにおいて、例えば、チャック温度の変化が、収束時間が長い第2パターンに分類されると、第2パターンに対応する調整係数(Cp2,Ci2,Cd2)が取得される。
【0145】
3回目コンタクトには、チャック温度制御パラメータ(Cp1×Cp2×Kp0,Ci1×Ci2×Ki0,Cd1×Cd2×Kd0)が適用される。図15には、3回目コンタクトにおいて、例えば、チャック温度が安定している第4パターンに分類される場合が図示される。
【0146】
4回目以降のコンタクトでは、チャック温度制御パラメータ(Cp1×Cp2×Kp0,Ci1×Ci2×Ki0,Cd1×Cd2×Kd0)に対して、チャック温度が安定している第4パターンに対応する調整係数(1,1,1)が適用される。調整係数(1,1,1)は、前回コンタクトのチャック温度制御パラメータが変更されない場合に適用される。
【0147】
すなわち、1回目コンタクトの際に取得されたチャック温度の変化に対応するチャック温度制御パラメータ(Kp0,Ki0,Kd0)に対して、最終的に調整係数(Cp1×Cp2,Ci1×Ci2,Cd1×Cd2)が適用されると、安定したチャック温度が実現されるチャック温度制御が実施される。
【0148】
そこで、1回目コンタクトの際に取得されたチャック温度の変化と、安定したチャック温度が実現されるチャック温度制御パラメータの調整係数とを用いて、学習済モデル200の再学習が実施されると、更に、高精度のチャック温度制御を実現し得る。機械学習が適用されるチャック温度制御パラメータの自動調整は、PID制御ループの組み合わせが変化する場合及びPID制御のループ数が増える場合であっても、説明変数を増やすことで対応可能である。
【0149】
図15に示す1回目は、nが整数の場合のn回目として把握される。図15に示す2回目は、jがnを超える整数の場合のj回目として把握される。図15に示す3回目は、kがjを超える整数の場合のk回目として把握される。n回目コンタクトにおけるチャック温度制御パラメータは、初期値(Kp0,Ki0,Kd0)に対して、調整係数(C,C,C)が適用されていてもよい。
【0150】
[チャック温度制御の変形例]
図7に示すウェーハWの検査において、半導体チップ93の検査の後に半導体チップ94の検査が実施され、半導体チップ94の検査中にグラフG14として図示されるチャック温度の変化が取得される場合、図5に示すチャック温度制御部21は、チャック温度制御パラメータの更新を非実施としてもよい。
【0151】
すなわち、チャック温度制御部21は、ウェーハWの検査中に取得されたチャック温度が、規定の許容温度範囲を外れるか否かを判定し、チャック温度が規定の許容温度範囲を外れる場合に、チャック温度制御パラメータの更新を実施してもよい。また、チャック温度が規定の許容温度範囲である場合に、チャック温度制御パラメータの更新を非実施としてもよい。
【0152】
[コンピュータが実行するプログラムの構成例]
図5に示すチャック温度制御部21の各種の機能は、コンピュータがプログラムを実行して実現される。コンピュータが実現する各種の機能の例として、チャック温度を取得する機能、チャック温度の変化を規定のパターンとして分類する機能及びチャック温度の変化のパターンに基づき、チャック温度制御パラメータを取得する機能が挙げられる。プログラムは、非一時的、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体へ記憶される。
【0153】
[実施形態の作用効果]
実施形態に係るプローバに適用されるチャック温度制御は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0154】
〔1〕
ウェーハチャック20の温度変化の特徴とウェーハチャック20の温度変化パターンとを学習した学習済モデル200を用いて、ウェーハチャック20の温度変化の特徴が予め規定される複数の温度変化パターンの1つに分類される。分類された温度変化パターンに対応する温度制御パラメータが導出される。チャック温度を調整するチャック温度調整部20aは、導出された温度制御パラメータが適用される。これにより、ウェーハチャック20の温度変化に応じたウェーハチャック20の自動温度調整が実現される。
【0155】
〔2〕
ウェーハチャック20の温度変化の特徴として、ウェーハチャック20の温度変化の特徴を表す特徴量が適用される。学習モデルは、チャック温度の温度変化の特徴を表す特徴量と、規定の温度変化パターンとの対応関係を学習する。学習済モデルは、チャック温度の温度変化の特徴を表す特徴量が入力されると、特徴量に対応する温度変化パターンが出力される。これにより、無数に存在するチャック温度の温度変化が、予め規定される温度変化パターンへ分類される。
【0156】
〔3〕
互いに異なる種類の複数のウェーハのそれぞれに対応する学習済モデルの中から、検査対象のウェーハに対応する学習済モデルが選択される。これにより、検査対象のウェーハの種類に応じたチャック温度変化の分類が実施される。
【0157】
〔4〕
チャック温度制御パラメータとしてPID制御パラメータが適用される。チャック温度制御パラメータは、既に設定されたPID制御パラメータ(K,K,K)に対して調整係数(C,C,C)が乗算されたPID制御パラメータ(C×K,C×K,C×K)が適用される。これにより、既に設定されたPID制御パラメータに基づく新たなPID制御パラメータが適用されるチャック温度制御が実現される。
【0158】
〔5〕
チャック温度制御パラメータとして、PID制御パラメータ(K,K,K)に対して乗算される調整係数(C,C,C)が導出される。これにより、PID制御に適したチャック温度制御パラメータが導出される。
【0159】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0160】
9 半導体チップ
9a 電極パッド
10 プローバ
12 ベース
13 Yステージ
14 Y移動部
15 Xステージ
16 X移動部
17 Zθステージ
18 Zθ移動部
20 ウェーハチャック
20a チャック温度調整部
20b チャック温度センサ
21 チャック温度制御部
21a チャック温度制御部
23 支柱
24 ヘッドステージ
25 カードホルダ
25a 保持穴
26 プローブカード
29 ウェーハ位置合わせカメラ
30 上下ステージ
31 針位置合わせカメラ
32 クリーニング板
34 温度センサ
35 プローブ針
40 制御装置
42 カード温度取得部
44 針位置取得部
46 ウェーハ情報取得部
52 移動制御部
91 半導体チップ
92 半導体チップ
93 半導体チップ
94 半導体チップ
100 チャック温度取得部
102 分類部
102a 分類部
103 学習済モデル取得部
104 チャック温度制御パラメータ設定部
104a チャック温度制御パラメータ設定部
110 加熱制御パラメータ導出部
110a 加熱制御パラメータ導出部
112 冷却制御パラメータ導出部
112a 冷却制御パラメータ導出部
200 学習済モデル
210 出力
G1 グラフ
G2 グラフ
G3 グラフ
G10 グラフ
G12 グラフ
G14 グラフ
G20 グラフ
G22 グラフ
G24 グラフ
G26 グラフ
G30 グラフ
G32 グラフ
G34 グラフ
G40 グラフ
G42 グラフ
G44 グラフ
G46 グラフ
G50 グラフ
SP1 温度変化サンプル
SP2 温度変化サンプル
SP3 温度変化サンプル
SP4 温度変化サンプル
SP5 温度変化サンプル
SP6 温度変化サンプル
W ウェーハ
【要約】
【課題】チャック温度制御パラメータの自動調整を実施し得る、温度制御装置、温度制御方法、プログラム、プローバ及び学習モデル生成方法を提供する。
【解決手段】温度制御装置(21)は、チャック温度を取得するチャック温度取得部(100)、チャック温度の変化の特徴と温度変化パターンとの対応関係を学習した学習済モデルが適用され、チャック温度が入力された場合に温度変化パターンを出力する分類部(102)、分類部から出力される温度変化パターンに対応する温度制御パラメータを導出し、温度制御パラメータを設定する温度制御パラメータ設定部(104)を備え、温度制御パラメータを適用してチャック温度を調整するチャック温度調整部の動作を制御する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15