(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240409BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240409BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20240409BHJP
D06C 23/00 20060101ALI20240409BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41J2/01 203
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 501
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41M5/00 132
D06B11/00 A
D06C23/00
D06P5/30
(21)【出願番号】P 2019177376
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】関口 聖之
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敬詞
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-023361(JP,A)
【文献】特開平10-000768(JP,A)
【文献】特開平06-218990(JP,A)
【文献】特開2013-075385(JP,A)
【文献】特開2018-183949(JP,A)
【文献】特開2015-168147(JP,A)
【文献】特開2017-105159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00- 5/52
D06P 1/00- 7/00
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクと、前記インクを吐出するヘッドと、凝集剤を含む前処理液と、前記前処理液を吐出するヘッドと、を有し、
前記前処理液を吐出するヘッドは、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記前処理液を吐出し、
天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が、10μm以上短いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記天然繊維を主成分とする布帛及び前記合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクの液滴間の着弾距離が、10μm以上100μm以下である請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクと、前記インクを吐出するヘッドと、を有し、
天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、
凝集剤を含む前処理液が塗布されているとともに合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が、10μm以上短いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記天然繊維を主成分とする布帛及び前記合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクの液滴間の着弾距離が、10μm以上100μm以下である請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記布帛を保持する布帛保持部材を有し、
前記ヘッドはノズル面を備え、前記天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ノズル面と前記布帛保持部材との距離よりも、前記合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ノズル面と前記布帛保持部材との距離が短いことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記インクの25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が32mN/m以上45mN/m以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記布帛の成分を検知する検知手段を有する請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記布帛の種類及び/又は前記布帛の成分を入力する入力部を有する請求項1から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記検知手段又は前記入力部により得た前記布帛の情報をもとに、前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離を変更する請求項8又は9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクと、前記インクを吐出するヘッドと、凝集剤を含む前処理液と、前記前処理液を吐出するヘッドと、を有し、
前記前処理液を吐出するヘッドは、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記前処理液を吐出し、
天然繊維からなる布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を含む布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクを吐出するヘッドと、凝集剤を含む前処理液を吐出するヘッドと、を有し、
前記前処理液を吐出するヘッドは、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記前処理液を吐出し、
天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短いことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有し、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
【0003】
近年では、家庭用のみならず、織物や編物等ファブリックに対しても、捺染可能なことを特徴とするインクジェット記録方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、Tシャツ等の衣類に直接印字する、いわゆるDTG(Direct to Garment)分野では、従来の綿や綿・ポリエステル混紡メディアだけでなく、スポーツウェア向けの需要が急増しており、ポリエステルメディア対応性が求められている。このような動向は、DTG分野のみならず、捺染分野全体に認められ、巻出巻取機構を備えたインクジェット印刷機においても、綿やポリエステルを始めとする様々な素材のファブリックに対して、発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
【0005】
例えばインクを布帛に印捺する前に当該布帛に前処理液を施し、インクを布帛表面にとどめる方法(特許文献2)や、布帛の厚みに応じてインクの粘度と布帛の搬送速度を制御することにより、布帛の表面にインクをとどめる方法(特許文献3)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来のインクジェット記録方法では天然繊維における発色性は市場で許容されるレベルにあるものの、合成繊維を含む布帛においては、インクが布帛の内部にまで浸透してしまい、著しく発色性が悪化するという課題があった。
また、特許文献1または特許文献2に開示されているいずれの手段を用いた場合も、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維を主成分とする布帛においては、着弾したインクが繊維上に濡れ広がりにくく画像濃度のむらが悪化するという課題があった。
【0007】
従って天然繊維と合成繊維という繊維種の異なる布帛において、高い画像濃度と画像濃度むらの抑制を両立する捺染方法の開発が求められている。
【0008】
上記実情を鑑み、本発明は、天然繊維を主成分とする布帛および合成繊維を主成分とする布帛の両方において、高発色かつ画像濃度むらの少ない画像が得られる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクと、前記インクを吐出するヘッドと、凝集剤を含む前処理液と、前記前処理液を吐出するヘッドと、を有し、
前記前処理液を吐出するヘッドは、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記前処理液を吐出し、
天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記インクを吐出するヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短いことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然繊維を主成分とする布帛および合成繊維を主成分とする布帛の両方において、高発色かつ画像濃度むらの少ない画像が得られる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の画像形成装置の実施形態における搬送方向と垂直な方向の断面模式図である。
【
図2】本発明の画像形成装置の実施形態における平面模式図である。
【
図3】本発明の画像形成装置の実施形態における他の平面模式図である。
【
図4】本発明の画像形成装置の実施形態における側面模式図である。
【
図5】本発明の画像形成装置の実施形態における他の側面模式図である。
【
図6】本発明の画像形成装置の実施形態における他の平面模式図である。
【
図7】本発明の画像形成装置の実施形態における要部模式図である。
【
図8】本発明の画像形成装置の実施形態における他の要部模式図である。
【
図9】本発明の実施形態における画像形成のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
【0013】
合成繊維を主成分とする布帛では、天然繊維を主成分とする布帛よりも繊維の特性上、繊維間の空隙が大きくインクが生地内部に浸透しやすく、また、繊維上に着弾したインクが濡れにくい。そのため、合成繊維を主成分とする布帛では布帛表面の繊維を顔料で被覆することができず、天然繊維を主成分とする布帛に対する記録モードと同一方式でインクを付与した場合、画像濃度の低下や、画像濃度のむらが発生してしまう。
【0014】
そこで本発明では、合成繊維を主成分とする布帛においてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離を、天然繊維を主成分とする布帛においてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも短くすることにより、繊維間の空隙の大きな合成繊維を主成分とする布帛においても、布帛表層の繊維に着弾する液滴が増加し、画像濃度を向上させることができる。また、合成繊維を主成分とする布帛においてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離を、天然繊維を主成分とする布帛においてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも短くすることにより、合成繊維を主成分とする布帛では天然繊維を主成分とする布帛よりも生地表層の繊維にインクが着弾しやすく、画像濃度を向上させることができる。また、液滴間の間隔を短くすることにより、インクの濡れ広がりにくい合成繊維を主成分とする布帛においても、インクの着弾位置のばらつきの影響を受けにくくなるため、より密に、かつ正確に均等にインクを着弾させることができ、画像濃度むらの抑制に好適である。
【0015】
さらに25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が50mN/m以下のインクを用いることで、合成繊維を主成分とする布帛においても繊維上でのインクの濡れ広がりを促進し、布帛のような凹凸が大きくインクの着弾位置ばらつきが発生しやすい記録媒体においても画像濃度むらを抑制することが可能である。また、25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上とすることで、天然繊維を主成分とする布帛においても、インクが布帛の内部にまで浸透してしまうことを抑制し、画像濃度を高く保つことができる。
【0016】
本実施形態では、天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短くなるようにする。このようにするには、適宜変更することが可能であるが、例えば、天然繊維を主成分とする布帛に記録を行う第一記録モードと、合成繊維を主成分とする布帛に記録を行う第二記録モードを設ける。
【0017】
以下、第一記録モードと第二記録モードを有する構成を例に挙げて説明する。第一記録モードでは天然繊維を主成分とする布帛に対してインクを吐出し、第二記録モードでは合成繊維を主成分とする布帛に対してインクを吐出する。本実施形態では、第一記録モードにおいてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、第二記録モードにおいてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短い。
【0018】
第二記録モードにおいてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が、第一記録モードにおいてヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも10μm以上短いとき、画像濃度むらの抑制により好適である。
【0019】
第一記録モード及び前記第二記録モードにおいてヘッドから連続して吐出されるインクの液滴間の着弾距離が10μm以上100μm以下であるとき、織り方や編み方により凹凸の異なる布帛においても十分な画像の鮮鋭性が得られるため好適である。
【0020】
合成繊維を主成分とする布帛においてヘッドから吐出されるインクの滴サイズを、天然繊維を主成分とする布帛においてヘッドから吐出されるインクの滴サイズよりも大きくすることにより、合成繊維を主成分とする布帛においても、布帛表面の繊維に吐出されたインク滴がひっかかりやすく、画像濃度を向上させることができる。したがって、第二記録モードにおいて吐出されるインクの滴サイズが、第一記録モードにおいて吐出されるインクの滴サイズよりも大きいとき、画像濃度の向上により好適である。
【0021】
第二記録モードにおいて吐出されるインクの滴サイズが、第一記録モードにおいて吐出されるインクの滴サイズよりも、1滴あたりの容量として3pL以上大きいとき、画像濃度の向上により好適である。
【0022】
第一記録モード及び前記第二記録モードにおいて吐出されるインクの滴サイズが、1滴あたりの容量として5pL以上30pL以下であるとき、インクの吸水性の高い布帛においても十分な画像濃度と鮮鋭性が得られるため好適である。
【0023】
第一記録モードのときのヘッドと布帛との距離よりも、第二記録モードのときのヘッドと布帛との距離が短いとき、合成繊維を主成分とする布帛では天然繊維を主成分とする布帛よりも着弾位置精度を向上させることができるため画像濃度むらの抑制に好適である。なお、「ヘッドと布帛との距離」とあるのは、特に断りのない限り、ヘッドのノズル面と布帛との距離を意味し、ノズル面はヘッドにおけるノズルが形成された面である。
【0024】
第一記録モードのときのヘッドと布帛との距離よりも、第二記録モードのときのヘッドと布帛との距離が1mm以上短いとき、画像濃度むらの抑制により好適である。
【0025】
第一記録モード及び第二記録モードにおけるヘッドと布帛との距離が0.5mm以上5mm以下であるとき、吐出信頼性の向上と画像濃度むらの抑制により好適である。
【0026】
本実施形態の画像形成装置は、布帛を保持する布帛保持部材(例えばプラテン)を有していてもよく、第一記録モードのときのノズル面と布帛保持部材との距離よりも、第二記録モードのときのノズル面と布帛保持部材との距離が短いとき、画像濃度むらの抑制により好適である。
【0027】
25℃において、前記インクの寿命時間15m秒の動的表面張力が32mN/m以上45mN/m以下であるとき、天然繊維を主成分とする布帛の画像濃度の向上だけでなく、合成繊維を主成分とする布帛の画像濃度むらの抑制に好適である。
【0028】
<天然繊維を主成分とする布帛>
本発明における、天然繊維を主成分とする布帛としては、天然繊維を質量割合で50%以上含む布帛を指す。天然繊維の種類としては、以下に限定されないが、綿、麻、絹、羊毛等が挙げられる。
【0029】
<合成繊維を主成分とする布帛>
本発明における、合成繊維を主成分とする布帛としては、合成繊維を質量割合で50%よりも多く含む布帛を指す。合成繊維の種類としては、以下に限定されないが、ポリエステル、ナイロン、レーヨン等が挙げられる。
【0030】
天然繊維を主成分とする布帛の目付は、例えば80~250g/m2であり、好ましくは100~220g/m2である。
合成繊維を主成分とする布帛の目付は、例えば60~230g/m2であり、好ましくは80~200g/m2である。
【0031】
本発明の第一の実施形態を説明する。
本実施形態の画像形成装置の記録モードには、少なくとも、天然繊維を主成分とする布帛に記録を行う第一記録モードと、合成繊維を主成分とする布帛に記録を行う第二記録モードが存在する。画像形成装置は、第一記録モードと第二記録モードを切替可能である。
【0032】
画像形成装置には、記録モードのデフォルト値が設定されており、デフォルト設定値は第一記録モードと、第二記録モードのいずれに設定されていてもよいが、第一記録モードをデフォルト値とする例で説明を行う。
【0033】
第一記録モードと第二記録モードの切り替えは、印字対象である記録媒体(布帛)の組成(種類や成分等)に応じて変更される。布帛の組成を、画像形成装置内に布帛の組成を検知する検知手段により検知してもよく、人が使用する布帛の組成を入力あるいはあらかじめ装置内に設定されている記録媒体種選択ボタン等で入力するなどがあげられる。また、布帛の組成の入力ではなく、第一記録モード又は第二記録モードを直接選択してもよい。画像形成装置はタッチパネル等の入力部を備えていてもよく、入力部により布帛の種類や布帛の成分等を入力できるようにしてもよい。
【0034】
本実施形態では、記録モード選択画面において、第二記録モードを選択した場合、布帛に対してヘッドから吐出する連続したインクの液滴間の着弾距離を、より近くするように変更する。
液滴間の着弾距離とは、隣り合うインクのドットの中心部間の距離である。
上記液滴間の着弾距離をより近くするとは、換言すると、隣り合うインクのドットの位置の距離を短くするように設定を変更する。このとき、着弾距離の変更は、公知の方法を用いることができる。ヘッドの駆動周波数を変更することや、ヘッドを備えるキャリッジの走査速度を遅くすることや、記録媒体の送り量を小さくすることなどがあげられる。
【0035】
次に本発明の第二の実施形態を説明する。
第二の実施形態では、第二記録モードを選択した場合、布帛に対してヘッドから吐出するインクの吐出速度を、より遅くするように設定を変更する。このとき、吐出速度の変更は、公知の方法を用いることができる。ヘッドの駆動周波数を変更することや、圧電体に印加する電圧を変更することなどがあげられる。
この第二の実施形態によれば、合成繊維を主成分とする布帛に対しても、高発色かつ画像濃度むらの少ない画像が得られる。
【0036】
次に本発明の第三の実施形態を説明する。
第三の実施形態では、第二記録モードを選択した場合、布帛に対してヘッドから吐出するインクの滴サイズを、第一記録モードにおけるインクの滴サイズよりも大きくなるような変更を行う。このとき、滴サイズの変更には、公知の方法を用いることができる。例えば、ヘッドがピエゾ式の場合、ピエゾに付加する電圧を大きくすることや、ピエゾの引き込み量を大きくすること、インクを合一させることなどがあげられる。サーマル式のヘッドを用いた場合であっても、公知の方法を用いることができる。
【0037】
インクの滴サイズの測定方法としては、布帛に着弾する直前の滴をカメラで複数方向から撮影し、体積を算出することで測定する。インクを合一させるものは合一後の滴を撮影して測定する。
また、インクの滴サイズの測定方法としては、以下の方法も可能である。まず、フィルム等の非浸透メディアやシリコンオイルに画像を出力し、画像の出力前後における重量変化を測定する。次いで、吐出した滴数で割り、一滴当たりの重量に換算する。そして、インクの密度を計測し、インク滴を球とみなして球の体積の公式を用いて一滴あたりの直径を見積もることにより、滴サイズを求める。
【0038】
次に、本発明の第四の実施形態を説明する。
第四の実施形態では、第二記録モードを選択した場合、記録媒体である布帛とヘッドの距離を短くする変更を行う。このとき、ヘッドと記録媒体との距離の変更は、公知の方法を用いることができる。記録媒体を保持するプラテンを上昇させることや、ヘッドを備えるキャリッジを下げるなどの手段が用いられる。
【0039】
なお、ヘッドと記録媒体との距離は、ヘッドのノズル面と、記録媒体におけるノズル面側の表面との距離を計測することで求められる。この他にも、ヘッドとプラテンとの距離の初期値を記憶しておき、記録媒体の厚みやプラテンの上昇距離、キャリッジの下降距離等に基づいて求めるようにしてもよい。本実施形態では、ノズル面と記録媒体との距離は、ノズル面とプラテンとの距離と連動しており、ノズル面と記録媒体との距離が短くなれば、ノズル面とプラテンとの距離も短くなる。また、ノズル面と記録媒体との距離が長くなれば、ノズル面とプラテンとの距離も長くなる。
【0040】
次に、本発明の画像形成装置の具体例を
図1に示す。
図1において、記録媒体は紙面の奥行方向(又は手前方向)に搬送されるものであり、
図1は記録媒体の搬送方向と垂直な方向における断面模式図である。
【0041】
図1では、キャリッジ10、第1のヘッド11、第2のヘッド12、キャリッジ走査レール13、排気部14、プラテン15(布帛保持部材)、支持部材16、プラテン移動台17、メンテナンスユニット18が図示されている。
【0042】
プラテン15は、記録媒体を保持する部材であり、大きさ等は適宜変更可能である。また、プラテン15は支持部材16により支持されている。本実施形態におけるプラテン15は昇降機能を有しており、図中(B)方向に昇降可能である。これにより、ノズル面とプラテンとの距離やノズル面と記録媒体との距離を変更可能である。
【0043】
プラテン移動台17は、プラテン15を移動させる機構であり、プラテン15を垂直方向(図中、(B)で示される矢印方向)に移動させることも可能であり、この他にも記録媒体の搬送方向に移動させることも可能である。
【0044】
メンテナンスユニット18は、ヘッドのメンテナンスを行う機構であり、キャップや吸引ポンプ、空吐出受けなどで構成される。
【0045】
キャリッジ10は、第1のヘッド11、第2のヘッド12を有する筐体であり、ヘッドの他にも、エンコーダセンサ、移動ベルト、昇降機構等を備える。昇降機構により、キャリッジ10は図中、(B)方向に昇降可能であり、これにより、ノズル面とプラテンとの距離やノズル面と記録媒体との距離を変更可能である。
キャリッジ走査レール13は、キャリッジ10を記録媒体の搬送方向とは垂直の方向に移動させるためのレールである。
【0046】
なお、記録媒体の搬送方向とは垂直の方向を主走査方向とも称することがあり、主走査方向は図中(A)の矢印で示されている。また、記録媒体の搬送方向を副走査方向とも称することがあり、主走査方向と副走査方向は直交する。
【0047】
第1のヘッド11は前処理液を吐出するヘッドであり、必要に応じて設けられる。第2のヘッドは本発明に使用されるインクを吐出するヘッドである。第1のヘッド11は、記録媒体の搬送方向における第2のヘッドよりも上流側に備えられている。なお、第1のヘッド11と第2のヘッド12を区別なく説明する場合は単にヘッドと称することがある。
【0048】
排気部14は、装置本体22の気体を、装置本体22外へと排気するための機構である。例えば、ファンを有していてもよく、モーターに接続されたファンなどからなる。
【0049】
図2は、本実施形態の画像形成装置の平面模式図であり、キャリッジ10とプラテン15の移動前を示す図である。
図示されるように、キャリッジ10は、第1のヘッド11と第2のヘッド12を備えている。なお、
図2ではキャリッジ走査レール13は省略している。
また、プラテン15は、プラテン移動レール19に沿って移動する。
【0050】
図3は、本実施形態の画像形成装置における他の平面模式図であり、
図2におけるキャリッジ10とプラテン15が移動したときの状態を示す図である。
図示されるように、プラテン15はプラテン移動レール19に沿って移動するものであり、図中(C)で示される矢印方向に移動する。記録媒体はプラテン15上に保持されて移動するため、プラテン15の移動方向と記録媒体の搬送方向は一致する。
また、図示されるように、第2のヘッド12は記録媒体の搬送方向において第1のヘッド11よりも下流側に配置されている。
【0051】
プラテン15が図中(C)で示される矢印方向に移動し、キャリッジ10に近づいた辺りで、キャリッジ10が主走査方向(図中(A)方向)に走査しながら、ヘッドから液体が吐出される。このとき、先に第1のヘッド11から記録媒体に向けて前処理液を吐出し、その後に第2のヘッド12から記録媒体に向けてインクを吐出する。
【0052】
図4は、本実施形態の画像形成装置における側面模式図であり、
図5は、
図4の要部拡大模式図である。
本実施形態の排気部14は、第1のヘッド11とプラテン15(又は記録媒体)との間における気体が、記録媒体の搬送方向における上流側に流れるように配置されていることが好ましい。また、
図4の矢印(D)に示すように、装置本体22の内部の気体が外部に排出されるようにしている。
【0053】
これにより、
図5に示すように、プラテン15と各ヘッドとの間の空間の流れ方向は、第2のヘッド12から第1のヘッド11に向かう方向になる(
図5中の(D)で示される矢印方向)。言い換えると、第1のヘッド11とプラテン15(又は記録媒体)との間における気体が記録媒体の搬送方向の上流側に流れる。
【0054】
このため、第1のヘッド11近傍で発生する前処理液ミストが第2のヘッド12に到達しにくくなり、前処理液ミストが第2のヘッド12のノズル形成面に付着し、インクが凝集することを防ぐことができる。また、インクの凝集を防ぐことにより、吐出信頼性が向上する。
【0055】
なお、
図5に示すように、第2のヘッド12とプラテン15(又は記録媒体)との間の空間の流れについても、記録媒体の搬送方向の上流側に流れるとしてもよい。
【0056】
また、本実施形態における他の平面模式図を
図6に示す。
図6は、
図3における平面図に気体の流れ(D)を図示したものである。
図示されるように、本実施形態の液体を吐出する装置では、排気部14は複数設けられている。本実施形態において、複数の排気部14は、全て記録媒体の搬送方向(図中(C))において第1のヘッド11よりも上流側に配置されている。
これにより、気体の排気方向が記録媒体の搬送方向の上流に向かうこととなり、上述した効果を発揮することができる。
【0057】
なお、記録媒体の位置を固定し、キャリッジが上流と下流に搬送される構成としてもよい。この場合、本実施形態における「記録媒体の搬送方向の上流及び下流」とは、ヘッドとの相対的な搬送方向として考えてよい。すなわち、記録媒体の搬送方向の上流側とあるのは、ヘッドの搬送方向の下流側にあたり、記録媒体の搬送方向の下流側とあるのは、ヘッドの搬送方向の上流側にあたる。
【0058】
次に、本実施形態における画像形成装置の要部模式図を
図7に示す。
図7では、前処理液をノズルから吐出する第1のヘッド11、インクをノズルから吐出する第2のヘッド12、記録媒体30を保持するプラテン15(布帛保持部材)、記録媒体30を加熱する加熱手段40が図示されている。
【0059】
また、第1のヘッド11のノズル面11a、第2のヘッド12のノズル面12aが図示されており、ノズル面12aと記録媒体30との距離を図中(a)で示している。さらにノズル面12aとプラテン15との距離を図中(b)で示している。図中(a)を第1のギャップ距離などと称してもよく、図中(b)を第2のギャップ距離などと称してもよい。プラテンやキャリッジの昇降機能等により、ギャップ距離は変更可能である。
【0060】
本実施形態における画像形成装置の他の要部模式図を
図8に示す。
図8は
図7と同様の図である。図示されるように、記録媒体である布帛は生地や材質の特性等により波打つ場合がある。この場合、ノズル面12a側に最も高い部分と、ノズル面12aとの距離(図中(a))を測定して、第1のギャップ距離を求める。また、距離(a)は毛羽立ち部分を除いて測定する。例えば測定前に押圧部材等により平滑にしてから測定する。
【0061】
記録媒体の厚みは3.5mm以下であることが好ましい。これにより、布帛の毛羽立ちが影響して着弾精度が落ちたり、記録媒体の加熱された部分が立ち上がってノズルに近くなり、ノズルへの熱伝導を引き起こして不吐出が生じたりする現象を防止できる。
なお、記録媒体の厚みは、毛羽立ち部分を除いて測定する。また、測定前に押圧部材等により平滑にしてから測定する。
【0062】
また、本実施形態の画像形成装置の構成例として、25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクを吐出するヘッドを有するとしてもよい。この場合においても上記と同様に、天然繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を主成分とする布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短い。
【0063】
図9は、本実施形態における画像形成のフロー図である。
図9は、画像形成装置が備える入力部に入力された布帛の情報をもとに布帛の種類を判別する形態である。
まず、布帛を画像形成装置にセットする(S100)。
次に布帛が天然繊維を主成分とするか、合成繊維を主成分とするか、を入力部に入力された布帛の情報に基づいて判別する(S101)。
布帛が天然繊維である場合、第一記録モードが選択され(S102)、インクの滴サイズ、着弾距離および/またはヘッド-布帛間距離が調整され(S103)、布帛に対してインクを吐出し、画像が形成される(S104)。
一方、布帛が合成繊維である場合、第二記録モードが選択され(S105)、インクの滴サイズ、着弾距離および/またはヘッド-布帛間距離が調整され(S106)、布帛に対してインクを吐出し、画像が形成される(S107)。
【0064】
なお、上記の例では、画像形成装置が備える入力部に入力された布帛の情報をもとに布帛の種類を判別し、ヘッドと布帛との距離等を変更しているが、これに限られるものではなく、検知手段により布帛の成分を検知するようにしてもよい。布帛の組成を画像形成装置内に設けられた検知手段により検知し、これに基づいてヘッドと布帛との距離等を変更するようにしてもよい。なお、このような検知手段は公知であり、当業者であれば適宜選択が可能である。
【0065】
続いて、本発明に使用されるインクについて説明する。
【0066】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0067】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0068】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0069】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0070】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0071】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0072】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0073】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0074】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0075】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0077】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0078】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0079】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0080】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0082】
【0083】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0084】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0085】
【0086】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
CnF2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH2-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0087】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0088】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0089】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0090】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0091】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0092】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0093】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0094】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0095】
本発明においては、インクの25℃における寿命時間15m秒における動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下となるように設計されなければならない。動的表面張力は、界面活性剤の種類や添加量により制御することが可能である。
【0096】
動的表面張力の測定は周知慣用の方法を用いて測定することができるが、本発明では最大泡圧法によって測定されるものであることが好ましい。最大法圧法による動的表面張力の測定器は市販されており、例えばDynoTeter(SITA社製)などが挙げられる。
最大泡圧法とは、測定する液体に浸漬させたプローブの先端部分から気泡を放出させ、泡を放出するために必要な最大圧力から表面張力を求める方法である。
気泡の半径がプローブ先端の半径に等しくなるとき、最大圧力を示し、このときのインクの動的表面張力σは次式で表される。
【0097】
σ=(ΔP・r)/2
(ここで、rはプローブ先端の半径、ΔPは気泡にかかる最大圧力と最小値との差である)
【0098】
また、本発明でいう寿命時間とは、最大泡圧法において、気泡がプローブから離れて、新しい表面が形成されてから次の最大泡圧までの時間を言う。
【0099】
上記実施形態では、天然繊維を主成分とする布帛及び合成繊維を主成分とする布帛として説明しているが、本発明では以下のような実施形態も可能である。
すなわち、本実施形態の画像形成装置は、25℃において寿命時間15m秒の動的表面張力が30mN/m以上50mN/m以下のインクと、前記インクを吐出するヘッドと、を有し、天然繊維からなる布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離よりも、合成繊維を含む布帛に対して前記インクを吐出するときの前記ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離が短いことを特徴とする。
【0100】
本実施形態において、「天然繊維からなる布帛」とは、天然繊維を質量割合で100%含む布帛を指す。また、本実施形態においても第一記録モードと第二記録モードを有していてもよく、上述の第一記録モードは天然繊維からなる布帛に対してインクを吐出し、上述の第二記録モードは合成繊維を含む布帛に対してインクを吐出する。本実施形態においても天然繊維からなる布帛および合成繊維を含む布帛の両方において、高発色かつ画像濃度むらの少ない画像が得られる。なお、上記実施形態の構成や好ましい構成は本実施形態においても適用可能であり、説明を省略する。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。部は質量部を示す。
【0102】
<ブラック顔料分散体の調製>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散体(顔料濃度:15質量%)を得た。
・カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製) ・・・15部
・アニオン性界面活性剤(商品名:パイオニンA-51-B、竹本油脂株式会社製) ・・・2部
・イオン交換水 ・・・83部
【0103】
[樹脂粒子分散液の製造]
以下手順により樹脂粒子分散液を得た。
まず、攪拌機、温度計、及び還流管を備えた500mLのセパラブルフラスコに、T5651(ポリカーボネートジオール、旭化成製)50部、ジメチロールプロピオン酸3部、イソホロンジイソシアネート24部、モレキュラーシーブにより脱水処理したアセトン42部を仕込み、窒素気流下にて70℃まで昇温した後、2-エチルヘキサン酸スズを200ppm加え、系内のイソシアネート濃度を測定しながら70℃にて3時間~10時間反応させた。次いで、系内の温度を40℃まで下げ、必要に応じてトリエチルアミンを添加した後300rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水140部を添加し、1時間攪拌した後、イソホロンジアミン2部を加え、3時間~6時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、エバポレーターにて溶媒を留去し、イオン交換水により固形分30%になるように調整することで樹脂粒子分散液を得た。
【0104】
[前処理液の調製]
以下の処方で材料を混合し、一時間撹拌した後、1.2μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過し、前処理液を得た。
プロピレングリコール 25部
トリエチレングリコール 5部
Wet 270(Evonik社製) 0.5部
BYK348(ビックケミー社製) 0.5部
Envirogem AD01(AIR PRODUCT社製) 0.5部
プロキセルLV:Benzisothiazolin-3-one溶液(ロンザジャパン社製) 0.3部
塩化マグネシウム・6水和物 5部
イオン交換水 残部(合計100部)
【0105】
[ブラックインクの調製]
下記表1の処方(質量%)において各成分を混合し、ブラックインク1~7を調製した。
【0106】
【0107】
インク1~7は上記表1に示したとおりの比率(質量%)で混合し、一時間撹拌した後、1.2μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過して得たものである。
なお、表中の材料は以下を表す。
・サーフィノール420:アセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製)
・BYK348:シリコーン系界面活性剤(ビックケミー社製)
・AD01:Envirogem AD01(AIR PRODUCT社製)
・プロキセルLV:Benzisothiazolin-3-one溶液(ロンザジャパン社製)
得られたインク1~7の25℃における寿命時間15m秒の動的表面張力は表1に示すとおりである。
【0108】
天然繊維を主成分とする布帛の評価用画像の作成には、
図1~7で示した画像形成装置を用いた。
前記画像形成装置に前処理液、ブラックインクを充填し、トムス社製綿Tシャツ(Printstar 085‐CVT、ホワイト)に、付着量1.5mg/cm
2でブラックインクを塗布してべた画像を形成し、160℃に設定したヒートプレスにて1分間乾燥させることで各評価用画像を得た。
【0109】
合成繊維を主成分とする布帛の評価用画像の作成には、
図1~7で示した画像形成装置を用いた。
前記画像形成装置に前処理液、ブラックインクを充填し、トムス社製ポリエステルTシャツ(glimmer 00300‐ACT、ホワイト)に、付着量0.5mg/cm
2で前処理液を均一に塗布した後、未乾燥状態のまま付着量1.5mg/cm
2でブラックインクを塗布してべた画像を形成し、160℃に設定したヒートプレスにて1分間乾燥させることで各評価用画像を得た。
【0110】
インクの滴サイズは、駆動電圧を制御することにより調整した。
ヘッドから連続して吐出される液滴間の着弾距離は、駆動周波数を制御することにより調整した。
またプラテンの昇降機能を制御することにより、ヘッドと前記布帛との距離(ギャップ)を表2に示すように調整した。
ヘッドと前記布帛との距離(ギャップ)は布帛の毛羽立ちを除いて測定した。ここでは、押圧部材により布帛を平滑にしてから測定を行った。
【0111】
[画像濃度の評価]
得られた各評価用画像について、X-rite exactを用いて測色し、画像ODを評価した。
〔評価基準〕
A:ODが1.3以上
B:ODが1.25以上1.3未満
C:ODが1.20以上1.25未満
D:ODが1.20未満
【0112】
[画像濃度むらの評価]
得られた各評価用画像について、以下の基準により評価した。
〔評価基準〕
A:画像濃度むらが認められず明瞭である
B:画像濃度むらがほぼ認められない
C:画像濃度むらがやや認められるが実用可能なレベルである
D:画像濃度むらがはっきりと認められ実用に耐えないレベルである
【0113】
結果を表2に示す。なお比較例1は、第二記録モードを選択せず、第一記録モードによりポリエステル繊維に対し画像形成を行った例である。
【0114】
【0115】
表2の結果から、各実施例の画像形成装置は、天然繊維を主成分とする布帛および合成繊維を主成分とする布帛の両方において、高発色かつ画像濃度むらの少ない画像を提供できることが分かった。
【符号の説明】
【0116】
10 キャリッジ
11 第1のヘッド
12 第2のヘッド
13 キャリッジ走査レール
14 排気部
15 プラテン
16 支持部材
17 プラテン移動台
18 メンテナンスユニット
19 プラテン移動レール
22 装置本体
30 記録媒体
40 加熱手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【文献】特開2017-51952号公報
【文献】特開2011-246856号公報
【文献】特開2015-150829号公報